(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144398
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ウェーハの研削方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231003BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051346
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
【テーマコード(参考)】
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA12
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
5F057AA11
5F057AA21
5F057BA15
5F057BB03
5F057CA14
5F057CA15
5F057DA08
5F057DA11
5F057EB16
5F057EB18
5F057EB20
5F057FA13
5F057GA03
5F057GA16
5F057GB13
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】ウェーハの裏面側の研削に伴って複数の研削砥石が摩耗する場合であっても、所定の深さを有し、かつ、底面と側面とがなす角が鈍角となる凹部をウェーハの裏面に形成することが可能なウェーハの研削方法を提供する。
【解決手段】研削ステップにおける研削ホイールとウェーハとの第2方向に沿った第2相対速度を、第1方向に沿った研削ホイールとウェーハとの相対的な移動と、第2方向に沿った研削ホイールとウェーハとの相対的な移動と、が同時に開始され、かつ、同時に終了するように設定する。具体的には、この第2相対速度は、任意に設定されるパラメータと、研削ステップに先立って、又は、その途中に把握される複数の研削砥石の摩耗量(研削ステップの前後における複数の研削砥石の厚さの変化量の絶対値)と、を考慮して設定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に複数のデバイスが形成されているウェーハの裏面側を研削することによって所定の深さを有する凹部を形成するウェーハの研削方法であって、
該裏面が露出された状態で該ウェーハを保持する保持ステップと、
複数の研削砥石と該複数の研削砥石が環状に離散して固定されている設置面を有するホイール基台とを有する研削ホイールと、該ウェーハと、の双方を回転させながら、該複数の研削砥石のいずれかと該ウェーハの該裏面の中心とを接触させる接触ステップと、
該接触ステップの後に、該研削ホイールと該ウェーハとの双方を回転させたまま、該ホイール基台の該設置面と該ウェーハの該表面とを第1方向に沿って第1移動量だけ近づけ、かつ、該研削ホイールの回転軸と該ウェーハの中心とを該第1方向に垂直な第2方向に沿って第2移動量だけ近づけることによって、該ウェーハの該裏面側を研削する研削ステップと、を備え、
該第1移動量は、該所定の深さと、該ウェーハを該所定の深さだけ研削した時の該複数の研削砥石の摩耗量と、を加算して得られる距離であり、
該第2移動量は、該複数の研削砥石のそれぞれの該第2方向に沿った幅未満の任意に設定される距離であり、
該研削ステップにおける該研削ホイールと該ウェーハとの該第1方向に沿った第1相対速度は、任意に設定される一定の速度であり、
該研削ステップにおける該研削ホイールと該ウェーハとの該第2方向に沿った第2相対速度は、該第1方向に沿った該研削ホイールと該ウェーハとの相対的な移動と、該第2方向に沿った該研削ホイールと該ウェーハとの相対的な移動と、が同時に開始され、かつ、同時に終了するように、該所定の深さ、該摩耗量、該第2移動量及び該第1相対速度を考慮して設定される一定又は可変の速度であるウェーハの研削方法。
【請求項2】
該摩耗量は、該研削ステップに先立って把握されており、
該第2相対速度は、該第1移動量を該第1相対速度で除算して得られる時間によって、該第2移動量を除算して得られる速度である請求項1に記載のウェーハの研削方法。
【請求項3】
該凹部は、逆円錐台状の第1部分と、該第1部分の側面よりも傾斜が急な側面を有する逆円錐台状の第2部分と、を含み、
該研削ステップは、
該研削ホイールと該ウェーハとの双方が回転した状態で、該ホイール基台の該設置面と該ウェーハの該表面とを該第1方向に沿って第3移動量だけ近づけ、かつ、該研削ホイールの該回転軸と該ウェーハの中心とを該第2方向に沿って第4移動量だけ近づけることによって、該ウェーハの該裏面側に該第1部分を形成する予備研削ステップと、
該予備研削ステップの後に、該第1部分の深さを測定する測定ステップと、
該研削ホイールと該ウェーハとの双方が回転した状態で、該ホイール基台の該設置面と該ウェーハの該表面とを該第1方向に沿って第5移動量だけ近づけ、かつ、該研削ホイールの該回転軸と該ウェーハの中心とを該第2方向に沿って第6移動量だけ近づけることによって、該ウェーハの該裏面側に該第2部分を形成する本研削ステップと、を含み、
該予備研削ステップにおける該第2相対速度は、該所定の深さを該第1相対速度で除算して得られる時間によって、該第2移動量を除算して得られる速度であり、
該第3移動量は、該所定の深さ未満の任意に設定される距離であり、
該第4移動量は、該予備研削ステップにおける該第2相対速度と、該第3移動量を該第1相対速度で除算して得られる時間と、を乗算して得られる距離であり、
該摩耗量は、該所定の深さと、該第3移動量から該第1部分の深さを減算して得られる距離を該第1部分の深さで除算して得られる値と、を乗算して得られる距離であり、
該第5移動量は、該所定の深さから該第3移動量を減算して得られる距離と、該摩耗量と、を加算して得られる距離であり、
該第6移動量は、該第2移動量から該第4移動量を減算して得られる距離であり、
該本研削ステップにおける該第2相対速度は、該第5移動量を該第1相対速度で除算して得られる時間によって、該第6移動量を除算して得られる速度である請求項1に記載のウェーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面側に複数のデバイスが形成されているウェーハの裏面側を研削することによって所定の深さを有する凹部を形成するウェーハの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、表面側に複数のデバイスが形成されているウェーハを個々のデバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
このウェーハは、製造されるチップの小型化を目的として、その分割に先立って薄化されることがある。ウェーハを薄化する方法としては、例えば、複数の研削砥石と複数の研削砥石が環状に離散して固定されている設置面を有するホイール基台とを有する研削ホイールを用いた研削が挙げられる。この研削は、一般的に、以下の順序で行われる。
【0004】
まず、裏面が露出された状態でウェーハを保持する。次いで、ウェーハの半径よりも長い外径を有する研削ホイールとウェーハとの双方を回転させながら、複数の研削砥石のいずれかとウェーハの裏面の中心とを接触させる。次いで、研削ホイールとウェーハとの双方を回転させたまま、ホイール基台の設置面とウェーハの表面とを研削ホイールの回転軸が延在する方向(以下、「第1方向」ともいう。)に沿って近づける。
【0005】
これにより、ウェーハの裏面側が研削されてウェーハが薄化される。ただし、ウェーハを薄くするとウェーハの剛性が低くなり、その後の工程におけるウェーハの取り扱いが困難になるおそれがある。そこで、ウェーハのうち複数のデバイスと重なる部分のみを薄化するようにウェーハを研削する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この方法においては、ウェーハの半径よりも短い外径を有する研削ホイールを用いて上述のとおりウェーハの裏面側を研削することによって、ウェーハの外周部を残存させるとともにウェーハの裏面に円板状の凹部を形成する。これにより、ウェーハの剛性の低下が抑制され、その後の工程におけるウェーハの取り扱いが容易になる。
【0007】
また、このように研削されたウェーハの裏面側には、表面側に形成されたデバイスに接続される再配線がフォトリソグラフィによって形成されることがある。ここで、上述の凹部がウェーハの裏面に形成されている場合には、凹部の底面と側面とがなす角が直角となる。
【0008】
この場合、フォトリソグラフィにおいて利用されるレジストを溶解するための薬液を凹部から排出する際に当該薬液の一部が凹部の底面の外周近傍に残存するおそれがある。この点を踏まえて、ウェーハの裏面に逆円錐台状の凹部を形成するようにウェーハを研削する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
この方法においては、研削ホイールとウェーハとの双方を回転させたまま、ホイール基台の設置面とウェーハの表面とを第1方向に沿って近づけ、かつ、研削ホイールの回転軸とウェーハの中心とを第1方向に垂直な方向(以下、「第2方向」ともいう。)に沿って近づけることによって、ウェーハの裏面側を研削する。
【0010】
この場合、ウェーハの裏面に形成される凹部の底面と側面とがなす角が鈍角となる。これにより、ウェーハの裏面側にフォトリソグラフィによって再配線が形成される場合であっても、上記の薬液を凹部から排出する際に当該薬液の一部が凹部の底面の外周近傍に残存することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007-19461号公報
【特許文献2】特開2011-54808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
研削ホイールを用いてウェーハを研削すると、複数の研削砥石が摩耗して、複数の研削砥石の厚さが減少する。そのため、複数の研削砥石の摩耗を考慮することなく、ウェーハの裏面側を研削してウェーハの裏面に逆円錐台状の凹部を形成する場合には、この凹部の深さが所定の深さよりも浅くなる。
【0013】
このような場合には、ウェーハの裏面に逆円錐台状の凹部を形成した後に、さらに、研削ホイールとウェーハとの双方を回転させながら、この凹部の深さが所定の深さに至るまで第1方向に沿って研削ホイールとウェーハとを相対的に移動させることによってウェーハの裏面側を研削することがある。
【0014】
ただし、このような手順で所定の深さを有する凹部をウェーハの裏面に形成すると、この凹部の底面と側面の下端部とがなす角が直角となる。この場合、上記の薬液等を凹部から排出する際に当該薬液の一部が凹部の底面の外周近傍に残存するおそれがある。
【0015】
この点に鑑み、本発明の目的は、ウェーハの裏面側の研削に伴って複数の研削砥石が摩耗する場合であっても、所定の深さを有し、かつ、底面と側面とがなす角が鈍角となる凹部をウェーハの裏面に形成することが可能なウェーハの研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、表面側に複数のデバイスが形成されているウェーハの裏面側を研削することによって所定の深さを有する凹部を形成するウェーハの研削方法であって、該裏面が露出された状態で該ウェーハを保持する保持ステップと、複数の研削砥石と該複数の研削砥石が環状に離散して固定されている設置面を有するホイール基台とを有する研削ホイールと、該ウェーハと、の双方を回転させながら、該複数の研削砥石のいずれかと該ウェーハの該裏面の中心とを接触させる接触ステップと、該接触ステップの後に、該研削ホイールと該ウェーハとの双方を回転させたまま、該ホイール基台の該設置面と該ウェーハの該表面とを第1方向に沿って第1移動量だけ近づけ、かつ、該研削ホイールの回転軸と該ウェーハの中心とを該第1方向に垂直な第2方向に沿って第2移動量だけ近づけることによって、該ウェーハの該裏面側を研削する研削ステップと、を備え、該第1移動量は、該所定の深さと、該ウェーハを該所定の深さだけ研削した時の該複数の研削砥石の摩耗量と、を加算して得られる距離であり、該第2移動量は、該複数の研削砥石のそれぞれの該第2方向に沿った幅未満の任意に設定される距離であり、該研削ステップにおける該研削ホイールと該ウェーハとの該第1方向に沿った第1相対速度は、任意に設定される一定の速度であり、該研削ステップにおける該研削ホイールと該ウェーハとの該第2方向に沿った第2相対速度は、該第1方向に沿った該研削ホイールと該ウェーハとの相対的な移動と、該第2方向に沿った該研削ホイールと該ウェーハとの相対的な移動と、が同時に開始され、かつ、同時に終了するように、該所定の深さ、該摩耗量、該第2移動量及び該第1相対速度を考慮して設定される一定又は可変の速度であるウェーハの研削方法が提供される。
【0017】
好ましくは、該摩耗量は、該研削ステップに先立って把握されており、該第2相対速度は、該第1移動量を該第1相対速度で除算して得られる時間によって、該第2移動量を除算して得られる速度である。
【0018】
あるいは、該凹部は、逆円錐台状の第1部分と、該第1部分の側面よりも傾斜が急な側面を有する逆円錐台状の第2部分と、を含み、該研削ステップは、該研削ホイールと該ウェーハとの双方が回転した状態で、該ホイール基台の該設置面と該ウェーハの該表面とを該第1方向に沿って第3移動量だけ近づけ、かつ、該研削ホイールの該回転軸と該ウェーハの中心とを該第2方向に沿って第4移動量だけ近づけることによって、該ウェーハの該裏面側に該第1部分を形成する予備研削ステップと、該予備研削ステップの後に、該第1部分の深さを測定する測定ステップと、該研削ホイールと該ウェーハとの双方が回転した状態で、該ホイール基台の該設置面と該ウェーハの該表面とを該第1方向に沿って第5移動量だけ近づけ、かつ、該研削ホイールの該回転軸と該ウェーハの中心とを該第2方向に沿って第6移動量だけ近づけることによって、該ウェーハの該裏面側に該第2部分を形成する本研削ステップと、を含み、該予備研削ステップにおける該第2相対速度は、該所定の深さを該第1相対速度で除算して得られる時間によって、該第2移動量を除算して得られる速度であり、該第3移動量は、該所定の深さ未満の任意に設定される距離であり、該第4移動量は、該予備研削ステップにおける該第2相対速度と、該第3移動量を該第1相対速度で除算して得られる時間と、を乗算して得られる距離であり、該摩耗量は、該所定の深さと、該第3移動量から該第1部分の深さを減算して得られる距離を該第1部分の深さで除算して得られる値と、を乗算して得られる距離であり、該第5移動量は、該所定の深さから該第3移動量を減算して得られる距離と、該摩耗量と、を加算して得られる距離であり、該第6移動量は、該第2移動量から該第4移動量を減算して得られる距離であり、該本研削ステップにおける該第2相対速度は、該第5移動量を該第1相対速度で除算して得られる時間によって、該第6移動量を除算して得られる速度である。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、研削ステップにおける研削ホイールとウェーハとの第2方向に沿った第2相対速度が、第1方向に沿った研削ホイールとウェーハとの相対的な移動と、第2方向に沿った研削ホイールとウェーハとの相対的な移動と、が同時に開始され、かつ、同時に終了するように設定される。
【0020】
具体的には、この第2相対速度は、任意に設定されるパラメータと、研削ステップに先立って、又は、その途中に把握される複数の研削砥石の摩耗量(研削ステップの前後における複数の研削砥石の厚さの変化量の絶対値)と、を考慮して設定される。これにより、本発明においては、所定の深さを有し、かつ、底面と側面とがなす角が鈍角となる凹部をウェーハの裏面に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、研削装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、ウェーハの研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図4】
図4(A)及び
図4(B)のそれぞれは、接触ステップの様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図5】
図5(A)は、研削ステップの一例の様子を模式的に示す一部断面側面図であり、
図5(B)は、
図5(A)に示される研削ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、研削ステップの別の例に含まれる各ステップを模式的に示すフローチャートである。
【
図7】
図7(A)は、予備研削ステップの様子を模式的に示す一部断面側面図であり、
図7(B)は、予備研削ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8(A)は、本研削ステップの様子を模式的に示す一部断面側面図であり、
図8(B)は、予備研削ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図であり、また、
図2は、
図1に示される研削装置の一例を模式的に示す断面図である。なお、
図1及び
図2に示されるX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0023】
図1及び
図2に示される研削装置2は、各構成要素を支持する基台4を有する。この基台4の上面には、X軸方向に沿って延在する直方体状の溝4aが形成されている。そして、溝4aの底面には、それぞれがX軸方向に沿って延在する一対のガイドレール6が設けられている(
図2参照)。一対のガイドレール6の上側には、X軸方向に沿ってスライド可能な態様で直方体状のX軸移動プレート8が取り付けられている。
【0024】
また、一対のガイドレール6の間には、X軸方向に沿って延在するねじ軸10が配置されている。そして、ねじ軸10の後端部には、ねじ軸10を回転させるためのパルスモータ12が連結されている。また、ねじ軸10のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸10の回転に応じて循環するボールを収容するナット部14が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0025】
また、ナット部14は、X軸移動プレート8の下面側に固定されている。そのため、パルスモータ12でねじ軸10を回転させれば、ナット部14とともにX軸移動プレート8がX軸方向に沿って移動する。また、X軸移動プレート8の上には、下端部に従動プーリ16が連結されている回転体と、駆動プーリ(不図示)に連結されているモータ等の回転駆動源(不図示)とが設けられている。
【0026】
また、従動プーリ16と駆動プーリとには、無端ベルト(不図示)が架けられている。さらに、X軸移動プレート8の上には、1つの固定軸(不図示)と、それぞれのZ軸方向に沿った長さが可変な2つの可動軸18とを有する傾き調整機構が設けられている。また、固定軸と2つの可動軸18とは、テーブルベース20の下面側に連結され、テーブルベース20を支持する。
【0027】
このテーブルベース20の中央には貫通孔(不図示)が形成されており、この貫通孔には、下端部に従動プーリ16が連結されている回転体が通されている。そして、この回転体の上端部は、円板状のチャックテーブル22の下面側に連結されている。そのため、従動プーリ16に架けられている無端ベルトを回転させるように駆動プーリに連結されている回転駆動源を動作させると、チャックテーブル22の周方向に沿ってチャックテーブル22が回転する。
【0028】
また、チャックテーブル22は、ベアリング(不図示)を介してテーブルベース20に支持されている。そのため、上述のとおりチャックテーブル22を回転させても、テーブルベース20が回転することはない。他方、傾き調整機構において2つの可動軸18のそれぞれのZ軸方向に沿った長さが調整されると、テーブルベース20のみならず、チャックテーブル22の傾きも調整される。
【0029】
チャックテーブル22は、セラミックス等からなる円板状の枠体24を有する。この枠体24は、円板状の底壁と、この底壁から立設する円筒状の側壁とを有する。すなわち、枠体24の上面側には、底壁及び側壁によって画定される円板状の凹部が形成されている。
【0030】
なお、枠体24の側壁の内径は、後述するウェーハ11の直径よりも僅かに短く、かつ、その外径は、ウェーハ11の直径よりも僅かに長い。また、枠体24の底壁には凹部の底面において開口する流路(不図示)が形成されており、この流路はエジェクタ等の吸引源(不図示)と連通する。
【0031】
さらに、枠体24の上面側に形成されている凹部には、この凹部の直径と概ね等しい直径を有する円板状のポーラス板26が固定されている。このポーラス板26は、例えば、多孔質セラミックスからなる。また、ポーラス板26の上面及び枠体24の側壁の上面は、円錐の側面に対応する形状(中心が外周よりも突出する形状)を有する。
【0032】
そして、枠体24の内部に形成されている流路に連通する吸引源を動作させると、ポーラス板26の上面近傍の空間に吸引力が作用する。そのため、ポーラス板26の上面及び枠体24の側壁の上面は、チャックテーブル22の保持面22aとして機能する(
図1参照)。
【0033】
例えば、表面11aに保護テープ13が貼着されたウェーハ11の裏面11bが上を向くようにウェーハ11がチャックテーブル22の保持面22aに置かれた状態で吸引源を動作させることによって、ウェーハ11がチャックテーブル22に保持される。
【0034】
このウェーハ11は、例えば、シリコン等の半導体材料からなり、その表面11a側には複数のデバイスが形成されている。また、保護テープ13は、例えば、樹脂からなり、ウェーハ11の裏面11b側を研削する際のデバイスの破損を防止する。
【0035】
さらに、チャックテーブル22の周囲には、その保持面22aが露出するようにチャックテーブル22を囲む直方体状のテーブルカバー28が設けられている。このテーブルカバー28の幅(Y軸方向に沿った長さ)は基台4の上面に形成されている溝4aの幅と概ね等しい。また、テーブルカバー28の前後には、X軸方向に沿って伸縮可能な防塵防滴カバー30が設けられている。
【0036】
また、基台4の上面のうち溝4aの後方に位置する領域には、四角柱状の支持構造32が設けられている。この支持構造32の前面には、それぞれがZ軸方向に沿って延在する一対のガイドレール34が設けられている。そして、一対のガイドレール34のそれぞれの前側には、Z軸方向に沿ってスライド可能な態様でスライダ36が設けられている(
図2参照)。
【0037】
また、スライダ36の前端部は、直方体状のZ軸移動プレート38の後面側に固定されている。さらに、一対のガイドレール34の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸40が配置されている。そして、ねじ軸40の上端部には、ねじ軸40を回転させるためのパルスモータ42が連結されている。
【0038】
また、ねじ軸40のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸40の回転に応じて循環するボールを収容するナット部44が設けられ、ボールねじが構成されている。また、ナット部44は、Z軸移動プレート38の後面側に固定されている。そのため、パルスモータ42でねじ軸40を回転させれば、ナット部44とともにZ軸移動プレート38がZ軸方向に沿って移動する。
【0039】
Z軸移動プレート38の前側には、研削ユニット46が設けられている。この研削ユニット46は、Z軸移動プレート38の前面に固定されている円筒状の保持部材48を有する。そして、保持部材48の内側には、Z軸方向に沿って延在する円筒状のスピンドルハウジング50が設けられている。
【0040】
また、スピンドルハウジング50の内側には、Z軸方向に沿って延在する円柱状のスピンドル52が設けられている(
図2参照)。このスピンドル52は、回転可能な態様でスピンドルハウジング50に支持され、その上端部は、モータ等の回転駆動源54に連結されている。
【0041】
また、スピンドル52の下端部は、スピンドルハウジング50から露出し、円板状のホイールマウント56に固定されている。そして、ホイールマウント56の下面側には、ボルト等の固定部材(不図示)を用いて、ホイールマウント56の直径と概ね等しい外径を有する環状の研削ホイール58が装着されている。
【0042】
この研削ホイール58は、複数の研削砥石58aと、複数の研削砥石58aが環状に離散して固定されている設置面を有するホイール基台58bとを有する。そして、回転駆動源54を動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として、スピンドル52とともにホイールマウント56及び研削ホイール58が回転する。この時、複数の研削砥石58aは、円環状の軌跡を描く。この軌跡の外径は、ウェーハ11の半径よりも短い。
【0043】
なお、複数の研削砥石58aは、ビトリファイドボンド又はレジンボンド等の結合材に分散されたダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等の砥粒を有する。また、ホイール基台58bは、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム等の金属材料からなる。
【0044】
また、基台4の上面のうち溝4aの側方に位置し、かつ、研削ユニット46に近接する領域には、測定ユニット60が設けられている。この測定ユニット60は、例えば、それぞれの測定子が接触する位置の高さを測定する一対のハイトゲージ60a,60bを有する。
【0045】
ハイトゲージ60aの測定子は、保護テープ13を介してチャックテーブル22に保持されたウェーハ11の裏面11bに接触するように配置可能である。また、ハイトゲージ60bの測定子は、チャックテーブル22の保持面22a(具体的には、枠体24の側壁の上面)に接触するように配置可能である。
【0046】
そのため、ウェーハ11の裏面11b側の研削に先立って、又は、その最中に、このように各ハイトゲージ60a,60bの測定子を配置することによって、測定ユニット60においてウェーハ11の厚さと保護テープ13の厚さとの和を測定することができる。
【0047】
また、ウェーハ11の裏面11b側の研削の前後に、このように各ハイトゲージ60a,60bの測定子を配置することによって、測定ユニット60においてウェーハ11の研削量(ウェーハ11の厚さの変化量)を測定することができる。
【0048】
図3は、研削装置2においてウェーハ11の裏面11b側を研削することによって所定の深さを有する凹部を形成するウェーハの研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0049】
この方法においては、まず、裏面11bが露出された状態でウェーハ11を保持する(保持ステップ:S1)。この保持ステップ(S1)においては、まず、チャックテーブル22を前方に移動させる。具体的には、研削ユニット46から離隔し、かつ、ウェーハ11をチャックテーブル22の保持面22aに搬入可能な位置にチャックテーブル22を位置付けるようにチャックテーブル22を移動させる。
【0050】
次いで、ウェーハ11の中心とチャックテーブル22の保持面22aの中心とが重なるように、保護テープ13を介してウェーハ11をチャックテーブル22の保持面22aに搬入する。次いで、ウェーハ11がチャックテーブル22によって保持されるように、チャックテーブル22の枠体24に形成されている流路を介してポーラス板26と連通する吸引源を動作させる。これにより、保持ステップ(S1)が完了する。
【0051】
次いで、研削ホイール58とウェーハ11との双方を回転させながら、複数の研削砥石58aのいずれかとウェーハ11の裏面11bの中心とを接触させる(接触ステップ:S2)。
図4(A)及び
図4(B)のそれぞれは、接触ステップ(S2)の様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【0052】
この接触ステップ(S2)においては、まず、チャックテーブル22を後方に移動させる。具体的には、平面視において、研削ホイール58を回転させた時の複数の研削砥石58aの軌跡の前端Fと、ウェーハ11の裏面11bの中心CとがZ軸方向において重なるようにチャックテーブル22を移動させる(
図4(A)参照)。
【0053】
なお、チャックテーブル22を後方に移動させる前又は後に、必要に応じて、チャックテーブル22の傾きが調整されてもよい。具体的には、チャックテーブル22の保持面22aの中心から後方に延在する母線がX軸方向と平行になるように、チャックテーブル22の傾きが調整されてもよい。
【0054】
次いで、研削ホイール58及びチャックテーブル22の双方を回転させる。次いで、研削ホイール58及びチャックテーブル22を回転させたまま、複数の研削砥石58aの下面がウェーハ11の裏面11bに接触するまで研削ユニット46を下降させる(
図4(B)参照)。これにより、接触ステップ(S2)が完了する。
【0055】
次いで、研削ホイール58とウェーハ11との双方を回転させたまま、ホイール基台58bの設置面とウェーハ11の表面11aとをZ軸方向に沿って第1移動量だけ近づけ、かつ、研削ホイール58の回転軸とウェーハ11の中心とをX軸方向に沿って第2移動量だけ近づけることによって、ウェーハ11の裏面11b側を研削する(研削ステップ:S3)。
【0056】
ここで、第1移動量は、ウェーハ11の裏面11bに形成される凹部の深さ(所定の深さ)と、ウェーハ11を所定の深さだけ研削した時の複数の研削砥石58aの摩耗量と、を加算して得られる距離である。また、第2移動量は、複数の研削砥石58aのそれぞれのX軸方向に沿った幅未満の任意に設定される距離である。
【0057】
また、ウェーハ11を研削する際の研削ホイール58とウェーハ11とのZ軸方向に沿った相対速度(以下、「第1相対速度」ともいう。)は、一般的に、ウェーハ11の加工品質に与える影響が大きい。そのため、研削ステップ(S3)においては、第1相対速度をウェーハ11の研削に適した一定の速度に設定する。
【0058】
さらに、この研削ステップ(S3)における研削ホイール58とウェーハ11とのX軸方向に沿った相対速度(以下、「第2相対速度」ともいう。)は、研削ステップ(S3)に先立って、複数の研削砥石58aの摩耗量が把握されているか否かによって、その設定方法が異なる。
【0059】
以下では、研削ステップ(S3)の形成に先立って複数の研削砥石58aの摩耗量が把握されている場合の第2相対速度の設定方法について説明する。
図5(A)は、この方法に従って第2相対速度が設定された研削ステップ(S3)の様子を模式的に示す一部断面側面図であり、
図5(B)は、
図5(A)に示される研削ステップ(S3)後のウェーハ11を模式的に示す断面図である。
【0060】
この場合、第2相対速度は、第1移動量(ウェーハ11の裏面11bに形成される凹部の深さと複数の研削砥石58aの摩耗量とを加算して得られる距離)を第1相対速度で除算して得られる時間によって、第2移動量を除算して得られる速度と等しくなるように設定される。
【0061】
すなわち、ウェーハ11の裏面11bに形成される凹部の深さをDとし、複数の研削砥石58aの摩耗量をWとし、第2移動量をX0とし、かつ、第1相対速度をZvとすると、第2相対速度Xvは以下の数式(1)で表現される(
図5(A)及び
図5(B)参照)。
【数1】
【0062】
このように第2相対速度が設定された状態で、Z軸方向に沿った研削ホイール58とウェーハ11との相対的な移動と、X軸方向に沿った研削ホイール58とウェーハ11との相対的な移動とが同時に開始されると、これらの移動が同時に終了することになる。これにより、上述した方法においては、所定の深さDを有し、かつ、底面15aと側面15bとがなす角θが鈍角となる逆円錐台状の凹部15がウェーハ11の裏面11bに形成される。
【0063】
以下では、研削ステップ(S3)の形成に先立って複数の研削砥石58aの摩耗量が把握されていない場合の第2相対速度の設定方法について説明する。
図6は、この方法に従って第2相対速度が設定された研削ステップ(S3)に含まれる各ステップを模式的に示すフローチャートである。
【0064】
端的には、この研削ステップ(S3)においては、ウェーハ11の裏面11b側を僅かに研削した後に、この研削によってウェーハ11の裏面11bに形成される凹部の深さを考慮して複数の研削砥石58aの摩耗量を算出する。そして、この研削ステップ(S3)においては、算出された摩耗量を考慮して第2相対速度を設定し直してから所望の深さを有する凹部をウェーハ11の裏面11bに形成する。
【0065】
具体的には、この研削ステップ(S3)においては、まず、研削ホイール58とウェーハ11との双方が回転した状態で、ホイール基台58bの設置面とウェーハ11の表面11aとをZ軸方向に沿って第3移動量だけ近づけ、かつ、研削ホイール58の回転軸とウェーハ11の中心とをX軸方向に沿って第4移動量だけ近づけることによって、ウェーハ11の裏面11b側を研削する(予備研削ステップ:S31)
【0066】
図7(A)は、予備研削ステップ(S31)の様子を模式的に示す一部断面側面図であり、
図7(B)は、予備研削ステップ(S31)後のウェーハ11を模式的に示す断面図である。
【0067】
この予備研削ステップ(S31)においては、所定の深さDを第1相対速度Zvで除算して得られる時間によって、第2移動量X0を除算して得られる速度と等しくなるように第2相対速度が設定される。すなわち、予備研削ステップ(S31)における第2相対速度Xv1は以下の数式(2)で表現される。
【数2】
【0068】
また、第3移動量は、ウェーハ11の裏面11bに形成される凹部の深さ(所定の深さD)未満の任意に設定される距離である。また、第4移動量は、予備研削ステップ(S31)における第2相対速度Xv1と、第3移動量を第1相対速度Zvで除算して得られる時間と、を乗算して得られる距離である
【0069】
すなわち、第3移動量をZ1とすると、第4移動量X1は以下の数式(3)で表現される。
【数3】
【0070】
このように第2相対速度が設定された状態で、Z軸方向に沿った研削ホイール58とウェーハ11との相対的な移動と、X軸方向に沿った研削ホイール58とウェーハ11との相対的な移動とが同時に開始されると、これらの移動が同時に終了することになる。これにより、予備研削ステップ(S31)においては、底面17aと側面17bとがなす角θ1が鈍角となる逆円錐台状の凹部(第1部分)17がウェーハ11の裏面11bに形成される(
図7(A)及び
図7(B)参照)。
【0071】
なお、予備研削ステップ(S31)は、測定ユニット60(
図1及び
図2参照)によってウェーハ11の厚さと保護テープ13の厚さとの和が測定された状態で実施される。すなわち、予備研削ステップ(S31)は、ハイトゲージ60aの測定子がウェーハ11の裏面11bに接触し、かつ、ハイトゲージ60aの測定子がチャックテーブル22の保持面22a(具体的には、枠体24の側壁の上面)に接触した状態で実施される。
【0072】
次いで、ウェーハ11の裏面11bに形成された凹部17の深さ(第1部分の深さ)を測定する(測定ステップ:S32)。具体的には、凹部17の深さは、予備研削ステップ(S31)の前に測定ユニット60において測定される上記の和から予備研削ステップ(S31)の後に測定ユニット60において測定される上記の和を減算することによって得られる距離である。
【0073】
また、凹部17の深さが算出できれば、ウェーハ11を所定の深さDだけ研削した時の複数の研削砥石58aの摩耗量Wを算出できる。具体的には、この摩耗量Wは、所定の深さDと、第3移動量Z1から凹部17の深さを減算して得られる距離を凹部17の深さで除算して得られる値と、を乗算して得られる距離である。
【0074】
すなわち、凹部17の深さをD1とすると、摩耗量Wは以下の数式(4)で表現される。
【数4】
【0075】
なお、測定ステップ(S32)は、例えば、研削ホイール58とウェーハ11とが離隔するように研削ユニット46を上昇させてから実施される。あるいは、測定ステップ(S32)は、研削ユニット46を上昇させることなく、予備研削ステップ(S31)の直後に実施されてもよい。また、測定ステップ(S32)は、研削ホイール58とウェーハ11との双方が回転されたまま実施されてもよいし、両者の回転を停止させた状態で実施されてもよい。
【0076】
また、測定ステップ(S32)において研削ホイール58とウェーハ11とが離隔されている場合には、後述する本研削ステップ(S33)に先立って、複数の研削砥石58aの下面がウェーハ11の裏面11bに再び接触するまで研削ユニット46を下降させる。同様に、測定ステップ(S32)において研削ホイール58とウェーハ11との双方の回転が停止されている場合には、後述する本研削ステップ(S33)に先立って、両者を再び回転させる。
【0077】
次いで、研削ホイール58とウェーハ11との双方が回転した状態で、ホイール基台58bの設置面とウェーハ11の表面11aとをZ軸方向に沿って第5移動量だけ近づけ、かつ、研削ホイール58の回転軸とウェーハ11の中心とをX軸方向に沿って第6移動量だけ近づけることによって、ウェーハ11の裏面11b側を研削する(本研削ステップ:S33)。
【0078】
図8(A)は、本研削ステップ(S33)の様子を模式的に示す一部断面側面図であり、
図8(B)は、本研削ステップ(S33)後のウェーハ11を模式的に示す断面図である。
【0079】
ここで、第5移動量は、ウェーハ11の裏面11bに形成される凹部の深さ(所定の深さD)から第3移動量Z1を減算して得られる距離と、ウェーハ11を所定の深さDだけ研削した時の複数の研削砥石58aの摩耗量Wと、を加算して得られる距離である。すなわち、第5移動量Z2は以下の数式(5)で表現される。
【数5】
【0080】
また、第6移動量は、第2移動量X0から第4移動量X1を減算して得られる距離である。すなわち、第6移動量X2は以下の数式(6)で表現される。
【数6】
【0081】
さらに、本研削ステップ(S33)における第2相対速度は、第5移動量Z2を第1相対速度Zvで除算して得られる時間によって、第6移動量X2を除算して得られる速度である。すなわち、本研削ステップ(S33)における第2相対速度Xv2は以下の数式(7)で表現される。
【数7】
【0082】
このように第2相対速度が設定された状態で、Z軸方向に沿った研削ホイール58とウェーハ11との相対的な移動と、X軸方向に沿った研削ホイール58とウェーハ11との相対的な移動とが同時に開始されると、これらの移動が同時に終了することになる。これにより、本研削ステップ(S33)においては、底面19aと側面19bとがなす角θ2が鈍角となる逆円錐台状の凹部(第2部分)19がウェーハ11の裏面11bに形成される(
図8(A)及び
図8(B)参照)。
【0083】
以上によって、逆円錐台状の凹部(第1部分)17と逆円錐台状の凹部(第2部分)19とを含み、かつ、所定の深さDを有する凹部21がウェーハ11の裏面11bに形成される。また、第2部分19の底面19aと側面19bとがなす角θ2は、第1部分17の底面17aと側面17bとがなす角θ1よりも小さい。この点について以下に詳述する。
【0084】
まず、第3移動量Z1は第1部分17の深さD1よりも長い距離であるため(Z1>D1)、所定の深さDから第3移動量Z1を減算して得られる距離は所定の深さDから第1部分17の深さD1を減算して得られる距離よりも短くなる(D-Z1<D-D1)。この場合、第3移動量Z1と所定の深さDから凹部(第1部分)17の深さD1を減算して得られる距離との積は、第1部分17の深さD1と所定の深さDから第3移動量Z1を減算して得られる距離との積よりも大きくなる(Z1×(D-D1)>D1×(D-Z1))
【0085】
そのため、上記の数式(7)に含まれる値αは1未満となるため、本研削ステップ(S33)における第2相対速度Xv2は、予備研削ステップ(S31)における第2相対速度Xv2よりも遅くなる。また、予備研削ステップ(S31)及び本研削ステップ(S33)において第1相対速度Zvが共通するから、第2部分19の側面19bは、第1部分17の側面17bよりも傾斜が急になる。その結果、角θ2が角θ1よりも小さくなる。
【0086】
上述したウェーハの研削方法においては、研削ステップ(S3)における研削ホイール58とウェーハ11とのX軸方向に沿った第2相対速度が、Z軸方向に沿った研削ホイール58とウェーハ11との相対的な移動と、Z軸方向に沿った研削ホイール58とウェーハ11との相対的な移動と、が同時に開始され、かつ、同時に終了するように設定される。
【0087】
具体的には、この第2相対速度は、任意に設定されるパラメータと、研削ステップ(S3)に先立って、又は、その途中に把握される複数の研削砥石の摩耗量(研削ステップの前後における複数の研削砥石の厚さの変化量の絶対値)Wと、を考慮して設定される。これにより、上述したウェーハの研削方法においては、所定の深さDを有し、かつ、底面15a,19aと側面15b,19bとがなす角θ,θ2が鈍角となる凹部15,19をウェーハ11の裏面11bに形成することが可能となる。
【0088】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明の内容は上述した内容に限定されない。例えば、本発明は、チャックテーブル22をZ軸方向に沿って移動させる移動機構が設けられ、かつ、研削ユニット46をX軸方向に沿って移動させる移動機構が設けられている研削装置を用いて実施されてもよい。すなわち、本発明においては、研削ホイール58とウェーハ11とがX軸方向及びZ軸方向のそれぞれに沿って相対的に移動できればよく、そのための構造に限定はない。
【0089】
また、複数の研削砥石58aの摩耗量が把握されている場合には、本発明は、一対のハイトゲージ60a,60bを有する測定ユニット60を備えない研削装置を用いて実施されてもよい。また、本発明は、一対のハイトゲージ60a,60bを有する測定ユニット60の換わりに非接触式の測定ユニットを有する研削装置を用いて実施されてもよい。すなわち、本発明においては、ウェーハ11の裏面11bに形成される凹部の深さを測定できればよく、そのための構造に限定はない。
【0090】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0091】
2 :研削装置
4 :基台(4a:溝)
6 :ガイドレール
8 :X軸移動プレート
10:ねじ軸
11:ウェーハ(11a:表面、11b:裏面)
12:パルスモータ
13:保護テープ
14:ナット部
15:凹部(15a:底面、15b:側面)
16:従動プーリ
17:凹部(第1部分)(17a:底面、17b:側面)
18:可動軸
19:凹部(第2部分)(19a:底面、19b:側面)
20:テーブルベース
21:凹部
22:チャックテーブル(22a:保持面)
24:枠体
26:ポーラス板
28:テーブルカバー
30:防塵防滴カバー
32:支持構造
34:ガイドレール
36:スライダ
38:Z軸移動プレート
40:ねじ軸
42:パルスモータ
44:ナット部
46:研削ユニット
48:保持部材
50:スピンドルハウジング
52:スピンドル
54:回転駆動源
56:ホイールマウント
58:研削ホイール(58a:研削砥石、58b:ホイール基台)
60:測定ユニット(60a,60b:ハイトゲージ)