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特開2023-144420棒状部材の施工支援方法、棒状部材の施工支援システム、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144420
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】棒状部材の施工支援方法、棒状部材の施工支援システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20231003BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20231003BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20231003BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20231003BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
E21D20/00 Z
E21D9/00
G01B11/26 H
G01B11/00 H
G01C15/00 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051387
(22)【出願日】2022-03-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022年3月01日http://www.tc-iaip.org/dia/2022/
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳
(72)【発明者】
【氏名】淺間 一
(72)【発明者】
【氏名】速水 桃子
(72)【発明者】
【氏名】伊賀上 卓也
(72)【発明者】
【氏名】井倉 幹大
(72)【発明者】
【氏名】樋口 寛
(72)【発明者】
【氏名】ルイ笠原純ユネス
(72)【発明者】
【氏名】谷口 信博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一
(72)【発明者】
【氏名】森野 弘之
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA35
2F065BB08
2F065CC14
2F065CC40
2F065DD03
2F065FF04
2F065JJ03
2F065MM06
2F065MM16
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065QQ43
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定可能とする。
【解決手段】棒状部材1の施工支援方法において、棒状部材1の挿入対象となる地山2の壁面3の撮影画像を取得する工程と、前記撮影画像が示す輝度情報に基づき、前記壁面3に形成済みの挿入孔5を楕円領域として検出する工程と、前記楕円領域に対応する前記撮影画像が示す、当該楕円領域の径及び輝度情報に基づき、前記壁面3における前記挿入孔5の位置と角度を推定する工程を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部材の挿入対象となる壁面の撮影画像を取得する工程と、
前記撮影画像が示す輝度情報に基づき、前記壁面に形成済みの挿入孔を楕円領域として検出する工程と、
前記楕円領域に対応する前記撮影画像が示す、当該楕円領域の径及び輝度情報に基づき、前記壁面における前記挿入孔の位置と角度を推定する工程と、
を含むことを特徴とする棒状部材の施工支援方法。
【請求項2】
前記挿入孔である前記楕円領域を検出する工程において、
前記撮影画像における各領域の輪郭を検出し、前記検出した前記輪郭を楕円形状に近似して、前記各領域を楕円領域に変換する工程と、前記楕円領域それぞれの輝度情報に基づき、前記楕円領域のうち、他の楕円領域又は所定基準よりも暗いものを前記挿入孔と特定する工程を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒状部材の施工支援方法。
【請求項3】
前記挿入孔の位置と角度を推定する工程において、
前記楕円領域の径および前記棒状部材の既知の径に基づき、前記挿入孔の位置を特定し、前記楕円領域の短軸方向における輝度の変遷に基づき、当該挿入孔は前記輝度が暗くなる角度に延びていると特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒状部材の施工支援方法。
【請求項4】
前記挿入孔の位置及び角度の情報を前記棒状部材の施工装置にセットする工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒状部材の施工支援方法。
【請求項5】
棒状部材の挿入対象となる壁面を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置による撮影で得た撮影画像を取得し、当該撮影画像が示す輝度情報に基づき、前記壁面に形成済みの挿入孔を楕円領域として検出する処理と、前記楕円領域に対応する前記撮影画像が示す、当該楕円領域の径及び輝度情報に基づき、前記壁面における前記挿入孔の位置と角度を推定する処理を実行する情報処理装置と、
を含むことを特徴とする棒状部材の施工支援システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、
前記挿入孔である前記楕円領域を検出する処理において、
前記撮影画像における各領域の輪郭を検出し、前記検出した前記輪郭を楕円形状に近似して、前記各領域を楕円領域に変換する処理と、前記楕円領域それぞれの輝度情報に基づき、前記楕円領域のうち、他の楕円領域又は所定基準よりも暗いものを前記挿入孔と特定する処理を実行するものである、
ことを特徴とする請求項5に記載の棒状部材の施工支援システム。
【請求項7】
前記情報処理装置は、
前記挿入孔の位置と角度を推定する処理において、
前記楕円領域の径および前記棒状部材の既知の径に基づき、前記挿入孔の位置を特定し、前記楕円領域の短軸方向における輝度の変遷に基づき、当該挿入孔は前記輝度が暗くなる角度に延びていると特定するものである、
ことを特徴とする請求項5に記載の棒状部材の施工支援システム。
【請求項8】
前記情報処理装置は、
前記挿入孔の位置及び角度の情報を、前記棒状部材の施工装置にセットする処理をさらに実行するものである、
ことを特徴とする請求項5に記載の棒状部材の施工支援システム。
【請求項9】
情報処理装置において、
棒状部材の挿入対象となる壁面の撮影画像を撮影装置から取得する処理と、
前記撮影画像が示す輝度情報に基づき、前記壁面に形成済みの挿入孔を楕円領域として検出する処理と、
前記楕円領域に対応する前記撮影画像が示す、当該楕円領域の径及び輝度情報に基づき、前記壁面における前記挿入孔の位置と角度を推定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状部材の施工支援方法、棒状部材の施工支援システム、及びプログラムに関するものであり、具体的には、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地山の自然な支保機能を利用したNATM(New Austrian Tunneling Method)工法は、新たな補助工法を適宜採用するなどして、従来の山岳トンネル以外にも適用範囲を広げつつある。
こうしたNATM工法では、地山の掘削や発破等で露出した壁面に、一次覆工のコンクリートを吹き付け、ロックボルトの打設と、二次覆工の覆工コンクリート打設を実施する。こうした施工を行うことで、地山と吹き付けコンクリートとを一体化させ、地山の保持力によってトンネル強度を高めることになる。
【0003】
こうしたロックボルト打設を含むトンネル工事の効率化を図る従来技術としては、例えば、切羽へのコンクリートの鏡吹きによって安全性を確保しつつ、工事作業者が鏡吹きされたコンクリート表面上でその地山状況を視認しながら施工作業を行うことが可能な切羽情報表示方法(特許文献1参照)などが提案されている。
【0004】
この技術は、トンネル切羽の地山の露出面である第1の切羽面の全体を含む領域をデジタルカメラにて撮影する切羽撮影工程と、前記デジタルカメラにて撮影して得られた前記第1の切羽面の全体を含む領域の撮影画像データから前記第1の切羽面の画像部分のデータを切羽面画像データとして抽出し、当該切羽面画像データに基づき、少なくとも前記第1の切羽面の全体の実写画像である切羽面画像を含む切羽情報画像データを生成する切羽情報画像データ生成工程と、前記第1の切羽面にコンクリートを鏡吹きする鏡吹き工程と、前記鏡吹き後の前記コンクリート表面である第2の切羽面に、前記切羽情報画像データの示す画像である切羽情報画像のうち少なくとも前記切羽面画像を、前記第2の切羽面の形状およびサイズに一致させて前記第1の切羽面の実寸大で投影する切羽情報画像投影工程を含む方法にかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-1732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のロックボルトの打設は、吹き付けコンクリートを通して壁面に削孔した孔(モルタル充填済み)に対し、ロックボルトを挿入する作業となる。こうしたロックボルトの挿入は、凹凸のある壁面から孔を見つける作業、ロックボルト先端を孔位置に合わせる作業、及びロックボルト全体を孔に挿入する作業に分かれている。
現在これらの作業は、作業員が孔周辺まで赴いて人力で行っている。しかし、粘性の高いモルタルの詰まった細長い孔に、長尺で重いロックボルトを挿入する必要があり、作業性や作業効率が良好とは言えない状況にある。
【0007】
一方では、ロックボルト打設の一連の流れである、壁面での削孔、当該孔へのモルタル注入、及びロックボルト打設を、同一のアームを用いて機械化する手法も様々研究されている。こうした手法によれば、例えば、複数の削孔用削岩機を用いて削孔を行うと同時にロックボルト打設を行う、といった施工を行うため、施工の効率化を図ることができる。
【0008】
しかしながら、正しい孔の位置や挿入角度を壁面上で効率良く自動特定するには至っておらず、ロックボルト先端と孔との位置合わせの自動化は困難なままである。そのため、正しい孔位置や挿入角度とのずれが生じたまま、ロックボルト打設を行うことで、孔中でのロックボルトの変形や破損につながるケースもあった。
【0009】
そこで本発明は、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の棒状部材の施工支援方法は、棒状部材の挿入対象となる壁面の撮影画像を取得する工程と、前記撮影画像が示す輝度情報に基づき、前記壁面に形成済みの挿入孔を楕円領域として検出する工程と、前記楕円領域に対応する前記撮影画像が示す、当該楕円領域の径及び輝度情報に基づき、前記壁面における前記挿入孔の位置と角度を推定する工程と、を含むことを特徴とする。
これによれば、導入コストが高くなりがちなビジュアルサーボ技術を用いた各種従来手法等と異なり、トンネル施工現場への導入が技術及びコストの両面で容易な単眼カメラを採用した手法にて、ロックボルト打設や装薬などの対象となる孔の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定可能となる。また、孔への挿入に伴うロックボルト等の破損や変形の可能性を低減する効果も期待出来る。
【0011】
なお、本発明における棒状部材の施工支援方法の、前記挿入孔である前記楕円領域を検出する工程において、前記撮影画像における各領域の輪郭を検出し、前記検出した前記輪郭を楕円形状に近似して、前記各領域を楕円領域に変換する工程と、前記楕円領域それぞれの輝度情報に基づき、前記楕円領域のうち、他の楕円領域又は所定基準よりも暗いものを前記挿入孔と特定する工程を実行する、としてもよい。
【0012】
これによれば、トンネルの周壁面の撮影画像中に数多の楕円領域が含まれるとしても、精度良好にロックボルト等の挿入孔を特定することができる。ひいては、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、より効率的かつ精度良く特定可能となる。なお、この撮影画像は、1つの挿入孔のみが撮影対象となる条件下での撮影で得られたものを基本的には想定するが、楕円領域が所定基準より暗いものは挿入孔と特定できるため、特定対象の挿入孔の数に関して限定しない。上述の条件とは、具体的には、トンネルの周壁面に対する撮影装置の配置やレンズ方向、焦点距離、画角といった撮影条件が予め調整された環境に対応したものとなる。
【0013】
また、本発明における棒状部材の施工支援方法の、前記挿入孔の位置と角度を推定する工程において、前記楕円領域の径および前記棒状部材の既知の径とに基づき、前記挿入孔の位置を特定し、前記楕円領域の短軸方向における輝度の変遷に基づき、当該挿入孔は前記輝度が暗くなる角度に延びていると特定する、としてもよい。
【0014】
これによれば、撮影装置の座標系からみた画像中の形状(孔に対応する楕円領域)と実際のトンネルの周壁面上の形状(実際の孔のもの)との間での相似関係を、既知の孔径をキーに適宜に踏まえることで、精度良好に孔位置の推定を行える。また、楕円領域における輝度のグラデーションと孔の延伸方向との関係性に基づき、当該孔の(トンネルの周壁面から地山内に向けた)角度を効率良く特定できる。すなわち、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、より効率的かつ精度良く特定可能となる。
【0015】
また、本発明における棒状部材の施工支援方法にて、前記挿入孔の位置及び角度の情報を前記棒状部材の施工装置にセットする工程をさらに含む、としてもよい。
【0016】
このように、挿入孔の位置や角度の情報を、例えば、コンピュータジャンボなどの施工装置にセットすることで、人力によらず、孔へのロックボルト等の挿入が可能となる。このことは、トンネル上部などの高所や危険個所での人手の作業を不要とし、作業員の各種負担やリスクが軽減される。また、孔への挿入に伴うロックボルト等の破損や変形の可能性を低減する効果も期待出来る。ひいては、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、より効率的かつ精度良く特定可能となる。
【0017】
また、本発明の棒状部材の施工支援システムは、棒状部材の挿入対象となる壁面を撮影する撮影装置と、前記撮影装置による撮影で得た撮影画像を取得し、当該撮影画像が示す輝度情報に基づき、前記壁面に形成済みの挿入孔を楕円領域として検出する処理と、前記楕円領域に対応する前記撮影画像が示す、当該楕円領域の径及び輝度情報に基づき、前記壁面における前記挿入孔の位置と角度を推定する処理を実行する情報処理装置と、を含むことを特徴とする。
【0018】
これによれば、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定可能なシステムを提供できる。
【0019】
なお、本発明の棒状部材の施工支援システムにおいて、前記情報処理装置は、前記挿入孔である前記楕円領域を検出する処理において、前記撮影画像における各領域の輪郭を検出し、前記検出した前記輪郭を楕円形状に近似して、前記各領域を楕円領域に変換する処理と、前記楕円領域それぞれの輝度情報に基づき、前記楕円領域のうち、他の楕円領域又は所定基準よりも暗いものを前記挿入孔と特定する処理を実行するものである、としてもよい。
【0020】
これによれば、トンネルの周壁面の撮影画像中に数多の楕円領域が含まれるとしても、精度良好にロックボルト等の挿入孔を特定するシステムの提供が可能となる。ひいては、当該システムにより、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、より効率的かつ精度良く特定可能となる。なお、この撮影画像は、1つの挿入孔のみが撮影対象となる条件下での撮影で得られたものを基本的には想定するが、楕円領域が所定基準より暗いものは挿入孔と特定できるため、特定対象の挿入孔の数に関して限定しない。上述の条件とは、具体的には、トンネルの周壁面に対する撮影装置の配置やレンズ方向、焦点距離、画角といった撮影条件が予め調整された環境に対応したものとなる。
【0021】
なお、本発明の棒状部材の施工支援システムにおいて、前記情報処理装置は、前記挿入孔の位置と角度を推定する処理において、前記楕円領域の径および前記棒状部材の既知の径とに基づき、前記挿入孔の位置を特定し、前記楕円領域の短軸方向における輝度の変遷に基づき、当該挿入孔は前記輝度が暗くなる角度に延びていると特定するものである、としてもよい。
【0022】
これによれば、撮影装置の座標系からみた画像中の形状(孔に対応する楕円領域)と実際のトンネルの周壁面上の形状(実際の孔のもの)との間での相似関係を、既知の孔径をキーに適宜に踏まえることで、精度良好に孔位置の推定を行うシステムが提供できる。また、当該システムにより、楕円領域における輝度のグラデーションと孔の延伸方向との関係性に基づき、当該孔の(トンネルの周壁面から地山内に向けた)角度を効率良く特定できる。
【0023】
なお、本発明の棒状部材の施工支援システムにおいて、前記情報処理装置は、前記挿入孔の位置及び角度の情報を、前記棒状部材の施工装置にセットする処理をさらに実行するものである、としてもよい。
【0024】
このように、システムが、挿入孔の位置や角度の情報を、例えば、コンピュータジャンボなどの施工装置にセットすることで、人力によらず、孔へのロックボルト等の挿入が可能となる。このことは、トンネル上部などの高所や危険個所での人手の作業を不要とし、作業員の各種負担やリスクが軽減される。また、孔への挿入に伴うロックボルト等の破損や変形の可能性を低減する効果も期待出来る。ひいては、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、より効率的かつ精度良く特定可能となる。
【0025】
また、本発明のプログラムは、情報処理装置において、棒状部材の挿入対象となる壁面の撮影画像を撮影装置から取得する処理と、前記撮影画像が示す輝度情報に基づき、前記壁面に形成済みの挿入孔を楕円領域として検出する処理と、前記楕円領域に対応する前記撮影画像が示す、当該楕円領域の径及び輝度情報に基づき、前記壁面における前記挿入孔の位置と角度を推定する処理と、を実行させるものである。
【0026】
これによれば、ロックボルト打設や装薬などの対象となる孔の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定する機能を情報処理システムに実装可能となる。また、こうした機能を備えた情報処理システムをコンピュータジャンボ等の施工装置と連携させることで、孔へのロックボルト挿入を適宜な精度で効率良く自動化可能となる。このことは、孔へのロックボルト等の挿入に伴い生じていたロックボルト等の破損や変形の可能性を低減する効果にもつながりうる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、トンネル施工時における棒状部材の挿入孔の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態における施工支援方法の適用環境例を示す図である。
図2】本実施形態における施工支援システムの全体構成例を示す図である。
図3】本実施形態における情報処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4】本実施形態における座標系及び各ベクトルの定義例を示す図である。
図5】本実施形態における施工支援方法のフロー例を示す図である。
図6】本実施形態の撮影画像中における挿入孔内のグラデーションを示す図である。
図7】本実施形態における撮影位置を示す上面図である。
図8】本実施形態における挿入孔の実例を示す図である。
図9】本実施形態におけるチェッカーボード撮影の様子を示す図である。
図10】本実施形態における挿入孔検出結果を示す図である。
図11】本実施形態における楕円の短軸上の輝度状況(条件1)を示す図である。
図12】本実施形態における楕円の短軸上の輝度状況(条件2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<概要>
まず、本実施形態の棒状部材の施工支援方法を適用する環境や、技術の概要について説明する。図1で例示するように、棒状部材であるロックボルト1は、トンネル施工対象となる地山2において、トンネルの周壁面3に設けられた挿入孔5に打設される。この挿入孔5は、トンネルの周壁面3に施工された吹き付けコンクリート6を通して地山2に削孔されたものとなる。また、ロックボルト打設に先立ち、当該挿入孔5の内空には、モルタルが充填される。
【0030】
こうしたロックボルト1の打設は、上述のように削孔された挿入孔5(モルタル充填済み)に対し、ロックボルト1を挿入する作業となる。この作業は、従来であれば人力によって実施されていたが、本実施形態の施工支援方法を適用した環境下では、コンピュータジャンボ60などの施工装置によって、十分な精度で自動化可能である。
【0031】
つまり、施工装置との適宜な連携を図ることで、ロックボルト1の挿入作業を構成する、凹凸のあるトンネルの周壁面3から挿入孔5を見つける作業、ロックボルト1の先端を挿入孔5の開口位置に合わせる作業、及びロックボルト全体を挿入孔5に挿入する作業を自動化しうることとなる。
<システム構成>
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図2は、本実施形態における棒状部材1の施工支援システム100(以下同様)の構成例を示す図である。
【0032】
本実施形態における棒状部材1の施工支援システム100は、トンネル施工時における、ロックボルト1など棒状部材の挿入孔5の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定可能とするシステムである。
【0033】
こうした施工支援システム100は、図2で例示するように、デジタルカメラ20、情報処理装置50、及びコンピュータジャンボ60のうち、少なくともデジタルカメラ20及び情報処理装置50から構成されている。
【0034】
このうちデジタルカメラ20は、一般的に市販されている単眼カメラであって、デプスカメラ等の特殊カメラユニットを採用する必要はない。ただし、トンネルの周壁面3の付近は湧水やモルタルの影響もあって、(厳重な防塵、防水機能等を有しない)一般的なデジタルカメラ20の取り付けには相応の配慮が必要となる。
【0035】
そのため、トンネルの周壁面3から5~10m離間した遠方からの撮影を行う必要がある。そこで、デジタルカメラ20に装着するレンズ21としては、種々の撮影条件に対応可能とするため、焦点距離が可変(例えば70~200mm)の可変焦点レンズを採用すると好適である。
【0036】
このデジタルカメラ20は、撮影データを格納・保持する記憶媒体22を有しており、この記憶媒体22で保持する撮影データ23を、例えばBluetooth(登録商標)などの近接無線通信手段24によって外部装置に配信可能である。本実施形態において、この撮影データの配信先となる外部装置は、情報処理装置50である。
【0037】
勿論、デジタルカメラ20における撮影データを情報処理装置50に配信する手法としては、こうした無線/有線の通信手段に限定しない。
【0038】
トンネル坑内の環境や導入できる各種リソース等の影響で、無線/有線のいずれの通信手段も採用困難な場合、例えば、作業員がデジタルカメラ20の記憶媒体22を取り出し、これをリーダー25にセットすることで情報処理装置50に撮影データを読み取らせるといった手法を採用してもよい。なお、リーダー25は、情報処理装置50に適宜なインターフェイスで接続され、記憶媒体22との間でデータの読み書きが可能な装置である。
【0039】
また、情報処理装置50は、一般的なコンピュータ装置であって、図4で示すように、記憶装置51、メモリ53、演算装置54、入力装置55、出力装置56、及び通信装置57を有している。
【0040】
このうち記憶装置51は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)といった不揮発性の記憶素子から構成され、処理に必要なプログラム52やデータ、或いは処理結果を格納するものとなる。
【0041】
なお、記憶装置51で保持するプログラム52は、本実施形態の施工支援システム100を構成する情報処理装置50として必要な機能を実装する為のプログラムである。そのためプログラム52は、後述する各式(式1~式10など)を用いた各種解析やコンピュータジャンボ60への設定処理等を行うアルゴリズムを実装したものとなる。
【0042】
また、メモリ53は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性記憶素子で構成される。
【0043】
また、演算装置54は、記憶装置51に保持されるプログラム52をメモリ53に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPU(Central Processing Unit)である。
【0044】
また、入力装置55は、ユーザからのキー入力や音声入力を受け付けるキーボード、マイク、マウスといった装置である。
【0045】
また、出力装置56は、演算装置54での処理データを表示するディスプレイやスピーカーといった装置である。
【0046】
また、通信装置57は、デジタルカメラ20の近距離無線通信手段24や、適宜なネットワークを介したコンピュータジャンボ60と接続して通信処理を担うインターフェイスカード等を想定する。
【0047】
また、コンピュータジャンボ60は、トンネルの周壁面3における挿入孔5の削孔、当該挿入孔5へのモルタル注入、及び当該挿入孔5へのロックボルト1の打設を、同一のアームを用いて機械化する施工装置である。
【0048】
このコンピュータジャンボ60は、複数のアームと、その先端に備わる削岩機やロックボルトの把持ユニットなどといった機構に加えて、当該機構を制御する制御ユニット61と、外部装置との通信を担う通信ユニット62を備える。
【0049】
コンピュータジャンボ60は、情報処理装置50から、挿入孔5の位置や角度に関する情報設定を受け付けて、制御ユニット61が、この情報設定の内容に応じてアームの移動や固定、削岩機の稼働/停止、ロックボルトの把持、挿入といった動作を自動実行する。
<撮影画像における孔検出>
以上から、本実施形態ではロックボルト1の打設専用機たるコンピュータジャンボ60による、ロックボルト打設作業の機械化を前提として、トンネルの周壁面3にある削孔済みの挿入孔5の位置および角度を、トンネルの周壁面3から所定距離以上の遠方からの、デジタルカメラ20による撮影により推定する技術について説明する。
【0050】
本実施形態においてロックボルト打設は、デジタルカメラ20のカメラ座標系内でロックボルト先端を、検出した挿入孔中心(以後、孔中心と称する)の画像座標(uc,vc)と一致させること、および、ロックボルト1の中心軸を挿入孔5の中心軸と一致させることにより実現できるものとする。よって、上述のカメラ座標系における孔中心の画像座標(uc,vc)および、挿入孔5の中心軸を計測することが求められる。
【0051】
これらの前提のもと、デジタルカメラ20によるトンネルの周壁面3の撮影画像から、挿入孔5の検出を行い、検出した孔径と既知の孔径(挿入孔5に関して規定の孔径)とを用いて挿入孔5の位置および角度を推定する手法を以下に述べる。
【0052】
削孔した挿入孔5の直径は、削孔に用いるロッドの径に依存することから既知とし、削孔した挿入孔5はトンネルの周壁面3に対して垂直であって、トンネルの周壁面3上では真円に見えるとする。また本実施形態では、そうしたトンネルの周壁面3の撮影画像内には、挿入孔5が1つだけ含まれるよう、デジタルカメラ20での撮影範囲を予め設定している前提とする。ただし、撮影画像に含まれうる挿入孔の数について限定するものではない。楕円領域が所定基準より暗いものは挿入孔と特定できるため、特定対象の挿入孔の数に条件を設ける必要はない。
【0053】
ここで、撮影画像内の挿入孔5を特定する手順を、図5のフローに基づき以下に示す。なお、情報処理装置50は、デジタルカメラ20からトンネルの周壁面3の撮影画像のデータを取得し、これを処理対象として記憶装置51またはメモリ53で保持しているものとする。
【0054】
そこで情報処理装置50は、既存のしきい値選定法(例えば、N. Otsu, "A threshold selection method from gray-level histograms, "IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics, vol.9, no.1, pp.62-66,1979)を上述の撮影画像に適用して、2値化画像を作成する(s1)。
次に、情報処理装置50は、s1で得た2値化画像に対し、輪郭検出の処理(例えば、S. Suzuki and K. Abe, "Topological structural analysis of digitized binary images by border following," Computer Vision, Graphics, and Image Processing, vol.30, no.1, pp.32-46, 1985)を実行する(s2)。
【0055】
また、情報処理装置50は、s2で検出したすべての輪郭に対して楕円フィッティングを行い、そこで得た楕円の中から1つを挿入孔5として決定する(s3)。
【0056】
上述の楕円フィッティングは、次の手順で行うものとする。楕円の式の係数をa1、a2、a3、a4、a5と置くとき、最小2乗法より、式(1)のようにa-[a1、a2、a3、a4、a5]について最小化する。
[式1]
ここで、Nはj番目の輪郭を構成する点の総数とする。
【0057】
よって、求める楕円の中心点(uc,vc)は、式(2)、式(3)、長軸のu軸からの角度θは式(4)と表される。
[式2]
[式3]
[式4]
また、複数の楕円の中からの挿入孔5の決定は、挿入孔5の内側つまり楕円領域が画像で暗く見えることを利用して行う。そのため情報処理装置50は、検出したすべての楕円について、それぞれの楕円内の輝度の平均値を算出する。次に情報処理装置50は、算出した輝度の平均値が最も低い楕円領域を挿入孔5だとして採用する。
<既知の孔径を使用した位置推定>
ここで、本実施形態で想定する座標系および各ベクトルの定義を図4に示す。想定する座標系としては、図4で示すように、画像座標系(u,v)、カメラ座標系(x,y,z)とする。また、上述のs3で決定した楕円の長軸の端点で、Z=S平面上にある点をx1、x2、Z=1平面上にある点をr1、r2とし、楕円の中心点をそれぞれ、Xc(Z=S平面上)、rc(Z=1平面上)とおく。
【0058】
このうち、楕円の中心点Xcを孔位置ベクトルとし、挿入孔5の中心軸と同軸で、挿入孔5の奥行方向のベクトルaを挿入孔5の方向ベクトルとする。
【0059】
ここで、挿入孔5の直径は既知であるため、情報処理装置50は、画像内の挿入孔5の直径と実際の挿入孔5の直径との関係から、挿入孔5の孔位置ベクトルXcを求める(s4)。ここで、図4のように2つの平面上で対応する各楕円同士は相似関係であるから、式(5)、式(6)、式(7)の関係が成り立つ。
[式5]
[式6]
[式7]
また、上述の相似関係より、Zr=Sは式(8)で求められる。
[式8]
よって、情報処理装置50は、式(7)に式(8)を代入することで、孔位置べクトルXcを算出できる。
<孔の角度推定>
既に述べたように、トンネルの周壁面3に削孔した挿入孔5がトンネルの周壁面3に垂直であると、当該トンネルの周壁面3上で真円である。その場合、挿入孔5の形状はデジタルカメラ20による撮影角度によって異なる楕円形状になる。そこで情報処理装置50は、こうした条件を踏まえて、挿入孔5が地山2で延びる角度を推定する(s5)。なお、上述の挿入孔5が地山2で延びる角度とは、カメラ座標系内における挿入孔5の孔口の位置と孔軸の角度を意味する。
【0060】
楕円(s3で挿入孔5として撮影画像中から特定しているもの)の長軸たるu軸からの角度θ(0deg≦θ≦180deg)、当該長軸を軸として楕円を回転させたとき、上述の撮影角度による形状変化により円になる(=円に見えるようになる)角度をφ(-90deg≦φ≦90deg)とすると、情報処理装置50は、挿入孔5の方向ベクトルaを、式(9)に基づき求める。
[式9]
ここで、Rはロドリゲスの公式を用いて法線と角度から算出した回転行列である。また、角度φは、上述の楕円の長軸の長さa、短軸の長さbを用いて式(10)のように求められる。
[式10]
ここで、角度φは回転方向によって正負の2通り考えられるため、角度推定のために一意に定める必要がある。トンネルの周壁面3に開いた挿入孔5を斜めから見た様子を図6に示す。
【0061】
図6で示すように挿入孔5を斜めから見た場合、挿入孔5は長軸の長さが孔直径である楕円となる。このとき、短軸の片側は孔内の壁が孔外の壁と連続していることから、明るく見えるのに対し、反対側は孔内に光が届かず暗く見えるため、グラデーションが生じる。
【0062】
よって、楕円の短軸上のグラデーションのうち、暗い方に挿入孔5の方向ベクトルaが向いていると考えることにより、以下のように角度φを一意に定めることができる。
【0063】
まず情報処理装置50は、s3で特定している楕円の短軸上の画素の輝度情報(撮影画像のデータに付随している)を取得し、最小二乗法により1次の近似式を得る。ここで近似した近似式が示す、直線の傾きが正である場合、φは正であり、一方、当該直線の傾きが負である場合、φは負である。
【0064】
情報処理装置50は、こうして得た、トンネルの周壁面3における挿入孔5の位置と角度の情報を、通信装置57を介してコンピュータジャンボ60に送信し、当該コンピュータジャンボ60に設定する(s6)。コンピュータジャンボ60は、こうした情報を通信ユニット62によって受信し、これを制御ユニット61に受け渡す。制御ユニット61は、これをアームや削岩機等の機構の制御情報としてセットし、トンネルの周壁面3における挿入孔5への孔口にロックボルト1の先端を導き、そのまま適宜な角度にて孔内への挿入を実行することとなる。
<実験条件>
本実施形態の施工支援方法の有効性を検証するため、施工中のトンネルにて実験を行った。各条件時のデジタルカメラ20と挿入孔5の位置関係を図7に、また、計測した挿入孔5を図8に示す。なお、図7で示すように、トンネルの周壁面3における直径47mmの挿入孔5に対し、45deg、90degの位置からデジタルカメラ20による撮影を行った。
【0065】
また、既に述べた前提に基づき、ロックボルト1の挿入孔5は、必ずデジタルカメラ20の画角内に1つのみ収まる条件で実験を行った。
【0066】
なお、実験結果の真値を得るため、各条件において図9のように、挿入孔5の中心にチェッカーボード70の原点を合わせて複数回撮影を行っている。撮影結果からチェッカーボード70の位置と方向を推定し、それぞれの撮影画像から算出した孔位置ベクトルおよび挿入孔5の方向ベクトルを平均して真値とした。
<実験結果>
本実施形態における手法を用いて挿入孔5の検出を行った様子を図10に示す。取得した撮影画像に対して輪郭検出を行い、楕円フィッティングを行ったうえで、楕円領域の輝度の平均が最も暗いものを挿入孔5として検出した。その結果、すべての条件において、正しい挿入孔5を検出できることが確認できた。
【0067】
条件1において検出した楕円の短軸上の輝度、およびその1次近似を図11に、条件2において検出した楕円の短軸上の輝度、およびその1次近似を図12に示す。
【0068】
図11及び図12より、挿入孔5として検出した楕円の短軸上において、輝度のグラデーションが生じていることがわかる。また、輝度に対して最小二乗法を用いて1次近似した直線の傾きから、図11に示した条件1の角度φが正であり、図12に示した条件2の角度φが負であると推定できた。
【0069】
こうした挿入孔5の検出結果を用いて推定した距離とチェッカーボード画像から算出した距離の値の誤差を表1に示す。
[表1]
ここから、挿入孔5の検出結果を用いて推定した孔位置ベクトルのうち、ロックボルト1の打設に重要と考えられるx成分の誤差は±20mmに収まっている。一方、y成分の誤差は目標より大きくなってしまったことがわかる。これは、挿入孔5の検出を行った際に、孔口の加工形状が理想的でなかったことから輪郭が大きく検出されてしまったことに起因すると考えられる。
【0070】
また、ロックボルト1の打設では使用しないz成分の誤差は、輪郭検出結果に大きく依存することから大きくなったと考えられる。
【0071】
また、挿入孔5の検出結果を用いて推定した挿入孔5の方向ベクトルの値とチェッカーボード画像から算出した挿入孔5の方向ベクトルの誤差を表2に示す。
[表2]
このように、挿入孔5の方向ベクトルの推定値と真値にも誤差が生じた。原因として、計測した挿入孔5はトンネルの周壁面3に対して垂直ではなく、切羽面5上の挿入孔5の形状が真円ではなかったことが挙げられる。
【0072】
上の結果のように、孔位置ベクトルの各成分および挿入孔5の方向ベクトルに誤差は生じたものの、挿入孔5の方向を特定することに成功した。
【0073】
以上、本実施形態によれば、トンネル施工時における、ロックボルトや装薬など棒状部材の挿入対象となる孔の位置及び角度を、効率的かつ精度良く特定可能となる。また、こうした孔の位置や角度の情報を、例えば、コンピュータジャンボなどの施工装置にセットすることで、人力によらず、孔へのロックボルト等の挿入が可能となる。このことは、トンネル上部などの高所や危険個所での人手の作業を不要とし、作業員の各種負担やリスクが軽減される。また、孔への挿入に伴うロックボルト等の破損や変形の可能性を低減する効果も期待出来る。
【0074】
本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 ロックボルト(棒状部材)
2 地山
3 トンネルの周壁面(壁面)
5 (ロックボルトの)挿入孔
20 デジタルカメラ(撮影装置)
21 レンズ
22 記憶媒体
23 撮影データ
24 近距離無線通信手段
25 リーダー
50 情報処理装置
51 記憶装置
52 プログラム
53 メモリ
54 演算装置
55 入力装置
56 出力装置
57 通信装置
60 コンピュータジャンボ(棒状部材の施工装置)
61 制御ユニット
62 通信ユニット
100 施工支援システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12