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特開2023-144436エラグ酸含有組成物の製造方法及びエラグ酸含有組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144436
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】エラグ酸含有組成物の製造方法及びエラグ酸含有組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20231003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20231003BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20231003BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P35/00
A61P29/00
A61P39/06
A61P3/04
A61P17/00
A61K31/37
A61K8/49
A61K8/9789
A61Q19/02
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051408
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 敏広
(72)【発明者】
【氏名】楠本 雅典
(72)【発明者】
【氏名】青木 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】味方 和樹
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF04
4B018MF07
4B018MF10
4C083AA111
4C083AC841
4C083CC02
4C083EE16
4C083FF01
4C086AA01
4C086CA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA70
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC37
4C088AB12
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC06
4C088BA09
4C088BA10
4C088BA11
4C088BA23
4C088BA32
4C088CA02
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA08
4C088CA22
4C088NA14
4C088ZA70
4C088ZA89
4C088ZB11
4C088ZB26
4C088ZC37
(57)【要約】
【課題】本開示の課題は、エラグ酸の溶解性を向上し得る、新たなエラグ酸含有組成物の製造方法を提供することである。
【解決手段】本実施形態は、エラグ酸を含むモモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を少なくとも含有する溶液を準備する工程、及び前記溶液に加熱処理を施す工程を含む、エラグ酸含有組成物の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラグ酸を含むモモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を少なくとも含有する溶液を準備する工程、及び
前記溶液に加熱処理を施す工程
を含む、エラグ酸含有組成物の製造方法。
【請求項2】
前記原料中に含まれるエラジタンニンを加水分解して更なるエラグ酸を生じさせる加水分解処理を施す工程をさらに含み、前記加水分解処理を施した溶液に加熱処理が施される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記加水分解処理が、酸による加水分解である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶液が、モモタマナ属植物由来原料に含まれるエラグ酸とは別に添加されたエラグ酸をさらに含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
モモタマナ属植物が、コバテイシ(Terminalia catappa)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
モモタマナ属植物由来原料が、モモタマナ属植物の葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料であるか、又はモモタマナ属植物の葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料から抽出媒体により抽出された抽出物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
モモタマナ属植物由来原料が、モモタマナ属植物の葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料から抽出媒体により抽出された抽出物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
抽出媒体が、水、水性媒体、又はこれらの混合溶媒である、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
抽出媒体が、水、アルコール、又は水とアルコールとの混合溶媒である、請求項6~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
加熱処理の温度が、60℃以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
加熱処理の温度が、100℃未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記溶液中の水性媒体が、水、アルコール、又は水とアルコールとの混合溶媒である、請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
加熱処理を施す工程の後に、溶液に濃縮処理を施す工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
加熱処理を施す工程、又は濃縮処理を行う場合は濃縮処理を施す工程によって得られる溶液中に溶解しているエラグ酸の濃度が、50μg/mL以上である、請求項1~13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
加熱処理を施す工程の後、又は濃縮処理を行う場合は濃縮処理を施す工程の後に、溶液に乾燥処理を施し、エラグ酸含有固形物を得る工程をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の製造方法により得られるエラグ酸含有組成物。
【請求項17】
請求項16に記載のエラグ酸含有組成物を含有する医薬品、化粧品、医薬部外品、又は飲食品。
【請求項18】
エラグ酸を可溶化させるためのモモタマナ属植物由来原料の使用であって、
モモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を含有する溶液をエラグ酸の存在下において加熱処理する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エラグ酸含有組成物の製造方法及びエラグ酸含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エラグ酸は抗ガン作用、抗炎症、抗酸化、抗肥満、及び美白効果等の様々な効果が報告されている有望な天然化合物である。
【0003】
例えば、特許文献1では、エラグ酸は、食用油脂類に対する抗酸化作用、微生物に対する抗突然変異作用及びマウス、ラット等の小動物に対する抗腫瘍作用等、優れた生理活性を有し、食品及び医薬産業において有用な化合物であることが記載されている。
【0004】
しかしながら、エラグ酸は、水に対する溶解性が低く、水性の製品への使用が困難である。そこで、エラグ酸の溶解性を向上させるための検討が行われている。
【0005】
例えば、特許文献2では、グァバ葉抽出物を含有し、かつ、固形分中に遊離のエラグ酸を1~5質量%含有する原料と水性媒体とを混合し加熱処理原料を調製する工程、及び、前記加熱処理原料を100~180℃で加熱処理する工程を含む、エラグ酸組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05-331183号公報
【特許文献2】特開2015-033375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の方法では、グァバ葉抽出物を含有し、かつ、固形分中に遊離のエラグ酸を1~5質量%含有する原料に限られている。また、特許文献2の方法では、100~180℃の高温での加熱が必要となる。そのため、エラグ酸の溶解性を向上し得る、新たなエラグ酸含有組成物の製造方法が求められている。
【0008】
そこで、本開示は、上記課題の少なくとも1つに鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、エラグ酸の溶解性を向上し得る、新たなエラグ酸含有組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の態様例は以下の通りである。
【0010】
(1) エラグ酸を含むモモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を少なくとも含有する溶液を準備する工程、及び
前記溶液に加熱処理を施す工程
を含む、エラグ酸含有組成物の製造方法。
(2) 前記原料中に含まれるエラジタンニンを加水分解して更なるエラグ酸を生じさせる加水分解処理を施す工程をさらに含み、前記加水分解処理を施した溶液に加熱処理が施される、(1)に記載の製造方法。
(3) 前記加水分解処理が、酸による加水分解である、(2)に記載の製造方法。
(4) 前記溶液が、モモタマナ属植物由来原料に含まれるエラグ酸とは別に添加されたエラグ酸をさらに含有する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の製造方法。
(5) モモタマナ属植物が、コバテイシ(Terminalia catappa)である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の製造方法。
(6) モモタマナ属植物由来原料が、モモタマナ属植物の葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料であるか、又はモモタマナ属植物の葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料から抽出媒体により抽出された抽出物である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の製造方法。
(7) モモタマナ属植物由来原料が、モモタマナ属植物の葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料から抽出媒体により抽出された抽出物である、(1)~(6)のいずれか1つに記載の製造方法。
(8) 抽出媒体が、水、水性媒体、又はこれらの混合溶媒である、(6)又は(7)に記載の製造方法。
(9) 抽出媒体が、水、アルコール、又は水とアルコールとの混合溶媒である、(6)~(8)のいずれか1つに記載の製造方法。
(10) 加熱処理の温度が、60℃以上である、(1)~(9)のいずれか1つに記載の製造方法。
(11) 加熱処理の温度が、100℃未満である、(1)~(10)のいずれか1つに記載の製造方法。
(12) 前記溶液中の水性媒体が、水、アルコール、又は水とアルコールとの混合溶媒である、(1)~(11)のいずれか1つに記載の製造方法。
(13) 加熱処理を施す工程の後に、溶液に濃縮処理を施す工程をさらに含む、(1)~(12)のいずれか1つに記載の製造方法。
(14) 加熱処理を施す工程、又は濃縮処理を行う場合は濃縮処理を施す工程によって得られる溶液中に溶解しているエラグ酸の濃度が、50μg/mL以上である、(1)~(13)のいずれか1つに記載の製造方法。
(15) 加熱処理を施す工程の後、又は濃縮処理を行う場合は濃縮処理を施す工程の後に、溶液に乾燥処理を施し、エラグ酸含有固形物を得る工程をさらに含む、(1)~(14)のいずれか1つに記載の製造方法。
(16) (1)~(15)のいずれか1つに記載の製造方法により得られるエラグ酸含有組成物。
(17) (16)に記載のエラグ酸含有組成物を含有する医薬品、化粧品、医薬部外品、又は飲食品。
(18) エラグ酸を可溶化させるためのモモタマナ属植物由来原料の使用であって、
モモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を含有する溶液をエラグ酸の存在下において加熱処理する、使用。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、エラグ酸の溶解性を向上し得る、新たなエラグ酸含有組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は、エラグ酸を含むモモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を少なくとも含有する溶液を準備する工程、及び前記溶液に加熱処理を施す工程を含む、エラグ酸含有組成物の製造方法である。
【0013】
本実施形態により、エラグ酸の溶解性を向上し得る、新たなエラグ酸含有組成物の製造方法を提供することができる。本発明者らは、モモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を含有する溶液をエラグ酸の存在下において加熱処理することにより、エラグ酸が可溶化される効果を得ることができることを見出し、本実施形態に至った。モモタマナ属植物由来原料とエラグ酸を含有する溶液を加熱処理することによってエラグ酸可溶化効果が得られる理由としては、原料中に含まれる成分が加熱処理によってエラグ酸に作用し、エラグ酸を可溶化させたものと推測される。原料中に含まれる成分は、包接体の形成、塩の形成、又は会合の形成等を通じてエラグ酸に作用しているものと推測される。なお、当該推測により本実施形態が限定されることはない。
【0014】
以下、本実施形態に係る製造方法について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態は、エラグ酸を含むモモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を少なくとも含有する溶液を準備する工程を有する。
【0016】
前記溶液を準備する形態は、特に制限されるものではないが、例えば、少なくともモモタマナ属植物由来原料及び水性媒体を混合して調製することによって前記溶液を準備する形態や、前記溶液を購入することによって準備する形態等を含む。
【0017】
モモタマナ属植物は、エラグ酸を高含量で含有する樹木である。本実施形態において、モモタマナ属植物は、エラグ酸を高含量で含む観点から、コバテイシ(Terminalia catappa)であることが好ましい。
【0018】
本明細書において、エラグ酸は遊離エラグ酸、その塩及び溶媒和物(水和物も含む)を含む意味で用いられる。なお、モモタマナ属植物には、エラグ酸と糖が結合した構造を有するエラジタンニンが多く存在しているが、本明細書では、エラグ酸とエラジタンニンは区別して用いられている。
【0019】
モモタマナ属植物由来原料は、特に制限されるものではないが、例えば、モモタマナ属植物の葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料や、モモタマナ属植物の葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料から抽出媒体により抽出された抽出物等が挙げられる。葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料としては、例えば、切断品、破砕品、磨砕品、粉砕品等を用いることができる。材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
モモタマナ属植物由来抽出物は、葉、果実、幹、及び枝から選択される少なくとも1種の材料から、抽出媒体(例えば、水やエタノール等の水性媒体等)により含有成分を抽出することにより調製することができる。モモタマナ属植物由来原料としては、抽出物を用いることが好ましく、特に、抽出媒体として、水、水性媒体、又はこれらの混合溶媒を用いて抽出した抽出物が好ましい。モモタマナ属植物由来抽出物は、モモタマナ属植物由来のエラグ酸を高含量で含む。
【0021】
モモタマナ属植物由来抽出物は、コバテイシ葉抽出物であることが好ましい。コバテイシ葉は、コバテイシ由来のエラグ酸を高含量で含む材料である。コバテイシ葉抽出物は、抽出媒体として、水、水性媒体、又はこれらの混合溶媒を用いて抽出したものが好ましい。
【0022】
抽出方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、超音波抽出、マイクロ波抽出、固液抽出、液液抽出、浸漬抽出、煎出抽出、浸出抽出、水蒸気蒸留抽出、還流抽出、撹拌抽出等が挙げられる。また、抽出方法は、加熱抽出であってもよいし、常温抽出であってもよいし、冷温抽出であってもよい。抽出温度は、特に制限されるものではないが、抽出効率を高める点から、0℃以上が好ましく、20℃以上が好ましい。また、抽出温度は、例えば、100℃以下である。
【0023】
抽出媒体としては、特に制限されるものではなく、例えば、水(水蒸気を含む)若しくはアルコール等の水性媒体、亜臨界若しくは超臨界二酸化炭素、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、パーム油若しくはラード等の食用油脂が挙げられる。これらの中でも、抽出媒体として、水、水性媒体、又はこれらの混合溶媒を用いることが好ましい。水性媒体としてのアルコールとしては、例えば、エタノール若しくはプロパノール等が挙げられる。抽出媒体としては、例えば、30~70v/v%のエタノール水溶液を用いることもできる。また、上記抽出溶媒に酸やアルカリを添加してpHを調整した溶媒を使用してもよい。抽出媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
抽出物は、抽出した溶液のまま用いてもよいが、必要に応じて、精製、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等)、希釈、濾過等の処理を行ってもよい。さらには、抽出した溶液を、噴霧乾燥、凍結乾燥、濃縮乾固等の処理を行い、乾燥品として用いてもよい。例えば、抽出物は、抽出媒体を含む抽出液として、又は抽出媒体が除去された固形物(例えば凍結乾燥品や噴霧乾燥品)として調製することができる。
【0025】
抽出物中のエラグ酸の含有量は、乾燥重量において、2%以上であることが好ましく、5%以上であることが好ましく、10%以上であることが好ましい。また、抽出物中のエラグ酸の含有量は、乾燥重量において、25%以下であることが好ましく、20%以下であることが好ましく、15%以下であることが好ましい。
【0026】
水性媒体は、水、水と均一に混合する有機溶媒、又はこれらの混合溶媒である。水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、精製水が例示される。水は、塩類、糖類、pH調整剤等の溶質を含むものであってもよい。有機溶媒は、水と均一に混合するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、アルコールが挙げられる。アルコールとしては、エタノール若しくはプロパノール等の一価アルコール、プロピレングリコール若しくはブチレングリコール等の二価アルコール、グリセリン等の三価アルコールが挙げられる。水性媒体としては、例えば、30~70v/v%のエタノール水溶液を用いることができる。水性媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本実施形態の一態様は、前記原料中に含まれるエラジタンニンを加水分解して更なるエラグ酸を生じさせる加水分解処理を施す工程をさらに含んでもよい。この場合、該加水分解処理を施した溶液に後述の加熱処理が施される。前記原料中に含まれるエラジタンニンを加水分解することにより、溶液中のエラグ酸の濃度をさらに向上させることができる。
【0028】
前記加水分解処理は、原料中に含まれるエラジタンニンを加水分解して更なるエラグ酸を生じさせることができれば特に限定されるものではないが、例えば、酸による加水分解や酵素による加水分解等を挙げることができる。当該加水分解は、後述の加熱処理によりさらに促進されてもよい。
【0029】
酸による加水分解について、当該酸は、原料中に含まれるエラジタンニンを加水分解させて、エラグ酸を生成させるために添加するものである。また、当該酸による加水分解は、後述の加熱処理によりさらに促進されてもよい。
【0030】
酸としては、特に制限されるものではないが、例えば、塩酸又は硫酸等が挙げられる。酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
酸による加水分解の場合、溶液のpH(20℃)は、加水分解反応が生じれば特に制限されるものではないが、例えば、5以下である。溶液のpH(20℃)は、エラジタンニンの加水分解反応を効率的に生じさせる観点から、4以下であることが好ましく、3以下であることが好ましく、2以下であることが好ましく、1以下であることが好ましい。
【0032】
酵素による加水分解について、加水分解に用いる酵素としては、エラジタンニンを加水分解させてエラグ酸を生成できるものであれば特に制限されるもではないが、例えば、タンナーゼを挙げることができる。タンナーゼは、例えば、真菌や細菌源から単離または調製することができる。タンナーゼとしては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、リゾプス属のタンナーゼ生産菌を培養して得られるタンナーゼが例示される。中でも、アスペルギルス・オリゼ由来のものが好ましい。溶液中のタンナーゼの濃度は、特に制限されるもではないが、例えば、10Unit/l~500Unit/lであり、好ましくは20Unit/L~150Unit/lである。
【0033】
本実施形態の一態様において、前記溶液が、モモタマナ属植物由来原料に含まれるエラグ酸とは別に添加されたエラグ酸をさらに含有してもよい。本実施形態の一態様は、前記溶液に原料中に含まれるエラグ酸とは別にエラグ酸をさらに添加する工程を含んでいてもよく、それにより、より高いエラグ酸濃度を有するエラグ酸含有組成物を得ることができる。
【0034】
溶液中の添加されるエラグ酸の量に関し、得られるエラグ酸含有組成物中のエラグ酸濃度を高める観点から、添加後の溶液中のエラグ酸の含有量が、固形分基準で、好ましくは5質量%以上となるように、好ましくは6質量%以上となるように、好ましくは7質量%以上となるように、好ましくは8質量%以上となるように、好ましくは9質量%以上となるように、好ましくは10質量%以上となるように、エラグ酸を添加することが好ましい。また、溶液中の添加されるエラグ酸の量に関し、添加後の溶液中のエラグ酸の含有量が、固形分基準で、好ましくは20質量%以下となるように、好ましくは19質量%以下となるように、好ましくは18質量%以下となるように、好ましくは17質量%以下となるように、好ましくは16質量%以下となるように、好ましくは15質量%以下となるように、エラグ酸を添加することが好ましい。
【0035】
エラグ酸の添加は、エラグ酸(遊離エラグ酸、その塩及び溶媒和物を含む)そのものからなる化合物を添加することにより行われてもよいし、エラグ酸を含む材料(例えばある植物からの抽出物)を添加することにより行われてもよい。例えば、エラグ酸は、富士フィルム和光純薬工業(株)から市販されており、また、エラグ酸二水和物は、東京化成工業(株)から市販されている。また、エラグ酸を含む材料としては、例えば、ザクロエラグ酸としてサビンサジャパンコーポレーションから市販されている。
【0036】
加水分解処理を行う態様とエラグ酸をさらに添加する態様は、適宜組み合わせてもよい。これにより、得られるエラグ酸含有組成物は、原料中に含まれるエラグ酸、エラジタンニンの加水分解反応により生じたエラグ酸、及びモモタマナ属植物由来原料に含まれるエラグ酸とは別に添加されたエラグ酸に由来するエラグ酸を含有することができ、より高いエラグ酸濃度を有し得る。
【0037】
溶液中のモモタマナ属植物由来原料(特に抽出物)の含有量は、エラグ酸の溶解性を向上させる点から、固形分基準で、好ましくは60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上である。また、溶液中のモモタマナ属植物由来原料(特に抽出物)の含有量は、好ましくは100質量%以下であり、好ましくは100質量%未満であり、好ましくは99質量%以下である。なお、本明細書におけるモモタマナ属植物由来原料の固形分量は、モモタマナ属植物由来原料が固形物の形態の場合はその乾燥質量、固形物の形態以外の場合(例えば、液状又はペースト状)は、モモタマナ属植物由来原料を105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発成分を除いた後の質量とする。
【0038】
溶液中の固形分の総含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、0.5g/L以上であり、また、50g/L以下である。
【0039】
溶液中には、上記成分以外にもその他の成分を含んでもよい。その他の成分は、本実施形態の効果を妨げない程度に加えることができ、溶液中のその他の成分の含有量は、例えば20質量%以下であり、好ましくは15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、好ましくは1質量%以下である。その他の成分として、例えば、所定量のエラグ酸を溶液中に含有させるために用いたエラグ酸含有液中の有機溶媒が挙げられる。
【0040】
本実施形態は、上記溶液に加熱処理を施す工程を有する。
【0041】
上述の通り、当該加熱処理によって、エラグ酸可溶化効果が得られる。その理由としては、原料中に含まれる成分が、加熱処理によって、包接体の形成、塩の形成、又は会合の形成等を通じてエラグ酸に作用し、エラグ酸を可溶化させたものと推測される。なお、当該推測により本実施形態が限定されることはない。
【0042】
加熱処理の温度は、エラグ酸の溶解性向上の点から、好ましくは60℃以上であり、好ましくは65℃以上であり、好ましくは70℃以上であり、好ましくは75℃以上であり、好ましくは80℃以上である。また、加熱処理の温度は、成分の熱安定性の観点から、好ましくは180℃以下であり、好ましくは170℃以下であり、好ましくは160℃以下である。さらに、加熱処理の温度は、主にエネルギーコストの観点から、好ましくは100℃未満であり、好ましくは99℃以下であり、好ましくは98℃以下である。本実施形態では、加熱処理の温度が100℃未満であっても、優れたエラグ酸の可溶化効果を得ることができる点で特に優れている。加熱処理の時間は、処理方法や温度によっても異なり得るが、例えば、10分~10時間である。これらの温度や時間の条件はあくまで例示であり、温度及び時間の相互の関係や他の要因等を考慮して適宜設定できる。なお、加水分解処理に用いた酵素は、当該加熱処理で失活させることもできる。
【0043】
加熱処理方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用できる。また、加熱は、常圧下及び加圧下で行うことができる。また、蒸気加熱理により加熱処理を行ってもよく、連続式又はバッチ式のスチーマーやオートクレーブ等を使用してもよい。
【0044】
加熱処理を施した溶液は、適宜冷却してもよい。冷却後の溶液温度は、50℃以下であることが好ましく、30℃以下であることが好ましい。冷却方法は、特に制限されるものではなく、例えば、冷却器による冷却や、室温での放置によることができる。
【0045】
加熱処理後に得られる溶液中のエラグ酸濃度は、50μg/mL以上であることが好ましく、60μg/mL以上であることが好ましく、70μg/mL以上であることが好ましく、80μg/mL以上であることが好ましく、90μg/mL以上であることが好ましく、100μg/mL以上であることが好ましい。
【0046】
上記において、溶液を準備する工程、加水分解処理を施す工程、及び加熱処理を施す工程を、本実施形態の工程として少なくとも示したが、それらの順番は、本実施形態の効果が妨げられない限り、特に制限されるものではない。例えば、本実施形態は、溶液を準備する工程、加水分解処理を施す工程、及び加熱処理を施す工程が、別々に行われることを基本的に想定しているが、必ずしもその順番で別々に行われることは必須としない。例えば、本実施形態は、溶液を準備する工程及び加熱処理を施す工程が同時に行われる場合をも含み得る。具体例として、水性媒体を加熱しながらモモタマナ属植物由来原料を添加してもよい。また、例えば、本実施形態は、溶液を準備する工程及び加水分解処理を施す工程が同時に行われる場合をも含み得る。具体例として、水性媒体と酸若しくは酵素とを含む液体中にモモタマナ属植物由来原料を添加してもよい。また、例えば、本実施形態は、加水分解処理を施す工程及び加熱処理を施す工程が同時に行われる場合をも含み得る。具体例として、溶液を加熱しながら酸若しくは酵素を添加してもよい。また、例えば、本実施形態は、溶液を準備する工程、加水分解処理を施す工程及び加熱処理を施す工程が同時に行われる場合をも含み得る。具体例として、水性媒体、酸若しくは酵素を含む液体を加熱しながらモモタマナ属植物由来原料を添加してもよい。またさらに、上記において、前記溶液がモモタマナ属植物由来原料に含まれるエラグ酸とは別に添加されたエラグ酸をさらに含有してもよい形態を示したが、別に添加されるエラグ酸は、溶液を準備する工程における溶液に含有させてもよく、加水分解処理を施す工程における溶液に含有させてもよく、及び加熱処理を施す工程における溶液に含有させてもよく、加熱処理時に別に添加されるエラグ酸が溶液中に存在すれば、特に制限されるものではない。
【0047】
得られた溶液は、必要に応じて、精製処理、濃縮処理、又は乾燥処理等を施し、エラグ酸含有組成物として得ることができる。
【0048】
本実施形態は、精製処理として、上記加熱処理を施した溶液から、溶解せずに残留する固体部を除去する工程を有してもよい。除去方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、遠心分離、デカンテーション、又はろ過等が挙げられる。
【0049】
本実施形態は、濃縮処理として、上記加熱処理を施した溶液に濃縮処理を施す工程を有してもよい。エラグ酸含有組成物の形態は、溶液の状態でもあってもよく、ペーストの状態であってもよい。溶液の濃縮方法としては、例えば、減圧濃縮(例えば減圧遠心)又は膜濃縮等の一般的な方法が挙げられる。
【0050】
濃縮処理後のエラグ酸含有組成物のエラグ酸濃度は、例えば、500μg/mL以上であり得る。濃縮処理後のエラグ酸含有組成物のエラグ酸濃度は、好ましくは750μg/mL以上であり、好ましくは800μg/mL以上であり、好ましくは850μg/mL以上であり、好ましくは900μg/mL以上であり、好ましくは950μg/mL以上である。本実施形態で得られるエラグ酸含有組成物は、エラグ酸の可溶化効果のため、濃縮後においてもエラグ酸の析出がなく、エラグ酸が溶解した状態で存在し得る。
【0051】
本実施形態は、乾燥処理として、溶液に乾燥処理を施し、エラグ酸含有固形物を得る工程を有してもよい。エラグ酸含有組成物の形態は、粉末若しくは顆粒等の固形物の状態であり得る。媒体を除去する方法としては、例えば、凍結乾燥、蒸発乾固、又は噴霧乾燥等が挙げられる。乾燥工程は、濃縮処理の後に行ってもよい。得られた固形物は、必要に応じて、分級、造粒、粉砕等を行ってもよい。
【0052】
固形物として得られた本実施形態に係るエラグ酸含有組成物は、再び水に添加した場合であっても、エラグ酸の水への溶解性に優れている。これは、本実施形態に係るエラグ酸含有組成物を固形物とした場合においても、エラグ酸が可溶化し易い形態で固形物中に存在していることを示している。
【0053】
本実施形態の一態様は、本実施形態に係る製造方法により得られたエラグ酸含有組成物であり得る。また、本実施形態の一態様は、該エラグ酸含有組成物を含有する医薬品、化粧品、医薬部外品、又は飲食品であり得る。本実施形態において、飲食品とは、一般的な飲食品のほか、医薬品及び医薬部外品以外で健康の維持や増進を目的として摂取できる食品(例えば、健康食品、機能性食品、保健機能食品、又は特別用途食品)を含む意味で用いられる。健康食品には、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント等の名称で提供される食品を含む。保健機能食品は食品衛生法又は食品増進法により定義され、特定の保健の効果や栄養成分の機能、疾病リスクの低減等を表示できる、特定保健用食品及び栄養機能食品が含まれる。飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
【実施例0054】
以下に、本実施形態について実施例を用いて説明する。なお、本実施形態の具体的な態様は実施例の態様に限定されるものではなく、本開示の趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【0055】
[測定方法]
(エラグ酸濃度)
遊離のエラグ酸の定量は、Thermo SCIENTIFIC社製液体クロマトグラフを用い、Waters社製カラムACQUITYTM PREMIER HSS T3(2.1x100mm)を装着し、カラム温度40℃でグラジエント法により行った。移動相A液は0.05%酢酸水溶液、B液は0.05%酢酸含有アセトニトリルとし、250μL/分で送液した。グラジエント条件は下記の通りである。
【0056】
【表1】
【0057】
試料注入量は2μLとし、波長252nmの吸光度により定量した。
【0058】
(pH)
pHは、サンプルの品温を20℃にした後、pHメーター(SPH70、ASONE)を使用し、測定した。
【0059】
(調製例1:50%エタノール抽出物)
モモタマナ属植物として、コバテイシ葉(採取地:平安座島(沖縄県うるま市与那城平安座))の粉砕物を用いた。コバテイシ葉の粉砕物100mgに対して5mLの50%エタノール水溶液を添加して分散液を調製した。次に、該分散液に超音波処理を1時間施した。次に、超音波処理後の分散液をろ過して抽出液を得た。そして、減圧遠心機を使用して抽出液に濃縮処理を施した後、凍結乾燥処理を行い、凍結乾燥品を得た。該凍結乾燥品を、モモタマナ属植物由来抽出物として用いた。下記実験において使用する際は、該凍結乾燥品を50%エタノール水溶液中に10mg/mLの濃度となるように溶解・分散させて調製した抽出物含有液(10mg/mL)を用いた。
【0060】
(調製例2:水抽出物)
モモタマナ属植物として、コバテイシ葉(採取地:平安座島(沖縄県うるま市与那城平安座))の粉砕物を用いた。コバテイシ葉の粉砕物100mgに対して5mLの純水を添加して分散液を調製した。次に、該分散液に超音波処理を1時間施した。次に、超音波処理後の分散液をろ過して抽出液を得た。そして、減圧遠心機を使用して抽出液に濃縮処理を施した後、凍結乾燥処理を行い、凍結乾燥品を得た。該凍結乾燥品を、モモタマナ属植物由来抽出物として用いた。下記実験において使用する際は、該凍結乾燥品を純水中に10mg/mLの濃度となるように溶解・分散させて調製した抽出物含有液(10mg/mL)を用いた。
【0061】
(調製例3:100%エタノール抽出物)
モモタマナ属植物として、コバテイシ葉(採取地:平安座島(沖縄県うるま市与那城平安座))の粉砕物を用いた。コバテイシ葉の粉砕物100mgに対して5mLの100%エタノールを添加して分散液を調製した。次に、該分散液に超音波処理を1時間施した。次に、超音波処理後の分散液をろ過して抽出液を得た。そして、減圧遠心機を使用して抽出液に濃縮処理を施した後、凍結乾燥処理を行い、凍結乾燥品を得た。該凍結乾燥品を、モモタマナ属植物由来抽出物として用いた。下記実験において使用する際は、該凍結乾燥品を100%エタノール水溶液中に10mg/mLの濃度となるように溶解・分散させて調製した抽出物含有液(10mg/mL)を用いた。
【0062】
(調製例4:エラグ酸含有液)
エラグ酸は、富士フィルム和光純薬株式会社製(Cat.No.057-08751)のものを用いた。実験において使用する際は、エラグ酸をピリジン中に1mg/mLの濃度となるように溶解させて調製したエラグ酸含有液(1mg/mL)を用いた。
【0063】
[加水分解処理によるエラグ酸濃度上昇検討]
(実施例1)
上記調製例1で調製した抽出物含有液(10mg/mL、50%エタノール抽出物含有)50μL(抽出物500μgに相当)とピリジン50μLとを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、抽出物含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLの塩酸(2N)を加えて抽出物含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。次に、該混合溶液を含むチューブをブロックインキュベーターに設置して95℃で4時間インキュベートし、これにより加水分解処理を施した。次に、インキュベート後の混合溶液を周囲環境に放置して室温(23℃)に戻した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物E1を得た。
【0064】
(比較例1)
上記調製例1で調製した抽出物含有液(10mg/mL、50%エタノール抽出物含有)50μL(抽出物500μgに相当)とピリジン50μLとを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、抽出物含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLの純水を加えて混合し、混合溶液を調製した。0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物C1を得た。
【0065】
(比較例2)
純水の代わりにDMSOを加えたこと以外は、比較例1と同様にして、液状組成物C2を得た。
【0066】
(比較例3)
上記調製例4で調製したエラグ酸含有液(1mg/mL)50μL(エラグ酸50μgに相当)と50%エタノール水溶液50μLとを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、エラグ酸含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLの塩酸(2N)を加えてエラグ酸含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。次に、該混合溶液を含むチューブをブロックインキュベーターに設置して95℃で4時間インキュベートした。次に、インキュベート後の混合溶液を周囲環境に放置して室温(23℃)に戻した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物C3を得た。
【0067】
(比較例4)
上記調製例4で調製したエラグ酸含有液(1mg/mL)50μL(エラグ酸50μgに相当)と50%エタノール水溶液50μLとを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、エラグ酸含有粉末を調製した。次に、上記チューブに500μLの純水を加えてエラグ酸含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物C4を得た。
【0068】
(比較例5)
純水の代わりにDMSOを加えたこと以外は、比較例4と同様にして、液状組成物C5を得た。
【0069】
(評価)
得られた液状組成物について、上記測定方法に従ってエラグ酸濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
(考察)
実施例1で得られた液状組成物E1は、モモタマナ属植物由来抽出物に塩酸を加えて調製した混合溶液に加熱による加水分解処理を施して得られたものである。加水分解処理後に得られた溶液中のエラグ酸濃度は、114.5μg/mLであり、高濃度で溶液中に溶解していた。エラグ酸の水への溶解度は約20μg/mLであるため、実施例1では、その溶解度を大きく超えて、エラグ酸が可溶化されていることがわかる。なお、実施例1では、抽出物含有液(10mg/mL)とピリジンとを混合してから減圧遠心処理によって溶媒を除去しているが、当該ピリジンとの混合操作は、条件等の観点から後述の実験例と関連して行ったものであり、本実施形態において省略され得る操作である。
【0072】
比較例1に対する考察として、実施例1の液状組成物E1のエラグ酸濃度は114.5μg/mLであったのに対し、比較例1の液状組成物C1のエラグ酸濃度は27.6μg/mLであった。これは、実施例1では、塩酸存在下での加熱によってモモタマナ属植物由来抽出物に加水分解処理を施すことにより、抽出物中に含有されるエラジタンニンが加水分解されてエラグ酸が生じたとともに、生じたエラグ酸がコバテイシ由来抽出物に含まれる成分の作用によって水中での飽和濃度を超えて可溶化されたためと考えられる。
【0073】
比較例2に対する考察として、比較例2では、エラグ酸の溶解性に優れているDMSOを溶媒として用いているため、比較例2の液状組成物C2のエラグ酸濃度は、抽出物中に元々含まれているエラグ酸の含有量を示していると考えられる。実施例1の液状組成物E1のエラグ酸濃度は114.5μg/mLであり、抽出物中に元々含まれているエラグ酸の含有量を示す比較例2の液状組成物C2のエラグ酸濃度は27.7μg/mLであった。これは実施例1では、抽出物中に含有されるエラジタンニンが加水分解されてエラグ酸が生じたためと考えられる。
【0074】
比較例3の液状組成物C3は、エラグ酸含有液(モモタマナ属植物由来抽出物なし)に塩酸を加えて加熱して得られたものであるが、モモタマナ属植物由来抽出物なしの塩酸中での単なる加熱によっても、高濃度エラグ酸含有組成物は得られないことを示している。比較例4及び5は、純水又はDMSOを用いた場合のコントロールとして示されているが、実施例1では、DMSOを用いた比較例5の液状組成物C5と同程度の高いエラグ酸濃度を達成している。
【0075】
[エラグ酸の可溶性向上検討1]
(実施例A1)
上記調製例4で調製したエラグ酸含有液(1mg/mL)50μL(エラグ酸50μgに相当)と、上記調製例1で調製した抽出物含有液(10mg/mL、50%エタノール抽出物含有)50μL(抽出物500μgに相当)とを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、エラグ酸+抽出物含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLの純水を加えてエラグ酸+抽出物含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。次に、該混合溶液を含むチューブをブロックインキュベーターに設置して95℃で20分インキュベートした。次に、インキュベート後の混合溶液を周囲環境に放置して室温(23℃)に戻した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物E-A1を得た。
【0076】
(実施例A2)
ブロックインキュベーターによる加熱温度を75℃に変えたこと以外は、実施例A1と同様にして、液状組成物E-A2を得た。
【0077】
(実施例A3)
ブロックインキュベーターによる加熱の代わりに、オートクレーブを用いて121℃で加熱したこと以外は、実施例A1と同様にして、液状組成物E-A3を得た。
【0078】
(実施例A4)
ブロックインキュベーターによる加熱温度を55℃に変えたこと以外は、実施例A1と同様にして、液状組成物E-A4を得た。
【0079】
(比較例A1)
ブロックインキュベーターによる加熱を行わずに、室温(23℃)で20分間放置したこと以外は、実施例A1と同様にして、液状組成物C-A1を得た。
【0080】
(実施例B1)
ピリジン50μL(エラグ酸添加なし)と、上記調製例1で調製した抽出物含有液(10mg/mL、50%エタノール抽出物含有)50μL(抽出物500μgに相当)とを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、抽出物含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLの純水を加えて抽出物含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。次に、該混合溶液を含むチューブをブロックインキュベーターに設置して95℃で20分インキュベートした。次に、インキュベート後の混合溶液を周囲環境に放置して室温(23℃)に戻した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物E-B1を得た。
【0081】
(実施例B2)
ブロックインキュベーターによる加熱温度を75℃に変えたこと以外は、実施例B1と同様にして、液状組成物E-B2を得た。
【0082】
(実施例B3)
ブロックインキュベーターによる加熱の代わりに、オートクレーブを用いて121℃で加熱したこと以外は、実施例B1と同様にして、液状組成物E-B3を得た。
【0083】
(実施例B4)
ブロックインキュベーターによる加熱温度を55℃に変えたこと以外は、実施例B1と同様にして、液状組成物E-B4を得た。
【0084】
(比較例B1)
ブロックインキュベーターによる加熱を行わずに、室温(23℃)で20分間放置したこと以外は、実施例B1と同様にして、液状組成物C-B1を得た。
【0085】
(比較例B2)
ピリジン50μL(エラグ酸添加なし)と、上記調製例1で調製した抽出物含有液(10mg/mL、50%エタノール抽出物含有)50μL(抽出物500μgに相当)とを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、抽出物含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLのDMSOを加えて抽出物含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物C-B2を得た。
【0086】
(比較例C1)
上記調製例4で調製したエラグ酸含有液(1mg/mL)50μL(エラグ酸50μgに相当)と、50%エタノール水溶液50μL(抽出物添加なし)とを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、エラグ酸含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLの純水を加えてエラグ酸含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。次に、該混合溶液を含むチューブをブロックインキュベーターに設置して95℃で20分インキュベートした。次に、インキュベート後の混合溶液を周囲環境に放置して室温(23℃)に戻した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物C-C1を得た。
【0087】
(比較例C2)
ブロックインキュベーターによる加熱温度を75℃に変えたこと以外は、比較例C1と同様にして、液状組成物C-C2を得た。
【0088】
(比較例C3)
ブロックインキュベーターによる加熱の代わりに、オートクレーブを用いて121℃で加熱したこと以外は、比較例C1と同様にして、液状組成物C-C3を得た。
【0089】
(比較例C4)
ブロックインキュベーターによる加熱温度を55℃に変えたこと以外は、比較例C1と同様にして、液状組成物C-C4を得た。
【0090】
(比較例C5)
ブロックインキュベーターによる加熱を行わずに、室温(23℃)で20分間放置したこと以外は、比較例C1と同様にして、液状組成物C-C5を得た。
【0091】
(比較例C6)
上記調製例4で調製したエラグ酸含有液(1mg/mL)50μL(エラグ酸50μgに相当)と、50%エタノール水溶液50μL(抽出物添加なし)とを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、エラグ酸含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLのDMSOを加えて、エラグ酸含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物C-C6を得た。
【0092】
(比較例D1)
上記調製例4で調製したエラグ酸含有液(1mg/mL)50μL(エラグ酸50μgに相当)と、上記調製例1で調製した抽出物含有液(10mg/mL、50%エタノール抽出物含有)50μL(抽出物500μgに相当)とを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、エラグ酸+抽出物含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLのDMSOを加えて、エラグ酸+抽出物含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物C-D1を得た。
【0093】
(評価)
<エラグ酸濃度の測定>
得られた液状組成物について、上記測定方法に従ってエラグ酸濃度を測定した。結果を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
<可溶化率の算出>
以上の結果を用いて、実施例A1~A4及び比較例A1における添加したエラグ酸分の可溶化率を算出した。可溶化率の算出には、DMSOを溶媒として用いた場合の可溶化度を基準とした。DMSOを溶媒として用いた場合の可溶化度は、比較例D1の液状組成物C-D1のエラグ酸濃度(101.5μg/mL)から比較例B2の液状組成物C-B2(21.2μg/mL)から引いて得られた値(80.3μg/mL)である。具体的には、実施例又は比較例で得られたエラグ酸濃度から対応する例で得られたエラグ酸濃度を引くことにより添加したエラグ酸が溶解した分の可溶化度を算出し、それを上記80.3μg/mLで除して100を乗じることにより、可溶化率(%)を算出した。なお、実施例A1は実施例B1に対応し、実施例A2は実施例B2に対応し、実施例A3は実施例B3に対応し、実施例A4は実施例B4に対応し、比較例A1は比較例B1に対応する。算出された可溶化率を表4に示す。
【0096】
【表4】
【0097】
(考察)
実施例A1~A4で示されるように、モモタマナ属植物由来抽出物にエラグ酸を添加して加熱することにより、添加したエラグ酸を高濃度で溶解させることできることが確認された。これは、モモタマナ属植物由来抽出物にエラグ酸を可溶化させる成分を含んでおり、その成分の存在下で加熱処理することによりエラグ酸を可溶化できるためと推測される。
【0098】
[エラグ酸の可溶性向上検討2]
(実施例A5)
上記調製例2で調製した抽出物含有液(10mg/mL、水抽出物含有)を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして、液状組成物E-A5を得た。
【0099】
(実施例A6)
ブロックインキュベーターによる加熱の代わりに、オートクレーブを用いて121℃で加熱したこと以外は、実施例A5と同様にして、液状組成物E-A6を得た。
【0100】
(実施例A7)
上記調製例3で調製した抽出物含有液(10mg/mL、100%エタノール抽出物含有)を用いたこと以外は、実施例A1と同様にして、液状組成物E-A7を得た。
【0101】
(実施例A8)
ブロックインキュベーターによる加熱の代わりに、オートクレーブを用いて121℃で加熱したこと以外は、実施例A7と同様にして、液状組成物E-A8を得た。
【0102】
(実施例B5)
上記調製例2で調製した抽出物含有液(10mg/mL、水抽出物含有)を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、液状組成物E-B5を得た。
【0103】
(実施例B6)
ブロックインキュベーターによる加熱の代わりに、オートクレーブを用いて121℃で加熱したこと以外は、実施例B5と同様にして、液状組成物E-B6を得た。
【0104】
(実施例B7)
上記調製例3で調製した抽出物含有液(10mg/mL、100%エタノール抽出物含有)を用いたこと以外は、実施例B1と同様にして、液状組成物E-B7を得た。
【0105】
(実施例B8)
ブロックインキュベーターによる加熱の代わりに、オートクレーブを用いて121℃で加熱したこと以外は、実施例B7と同様にして、液状組成物E-B8を得た。
【0106】
(比較例E1)
ブロックインキュベーターによる加熱を行わずに、室温(23℃)で20分間放置したこと以外は、実施例A5と同様にして、液状組成物C-E1を得た。
【0107】
(比較例E2)
ブロックインキュベーターによる加熱を行わずに、室温(23℃)で20分間放置したこと以外は、実施例A7と同様にして、液状組成物C-E2を得た。
【0108】
(比較例E3)
ブロックインキュベーターによる加熱を行わずに、室温(23℃)で20分間放置したこと以外は、実施例B5と同様にして、液状組成物C-E3を得た。
【0109】
(比較例E4)
ブロックインキュベーターによる加熱を行わずに、室温(23℃)で20分間放置したこと以外は、実施例B7と同様にして、液状組成物C-E4を得た。
【0110】
(比較例F1)
上記調製例2で調製した抽出物含有液(10mg/mL、水抽出物含有)を用いたこと以外は、比較例D1と同様にして、液状組成物C-F1を得た。
【0111】
(比較例F2)
上記調製例3で調製した抽出物含有液(10mg/mL、100%エタノール抽出物含有)を用いたこと以外は、比較例D1と同様にして、液状組成物C-F2を得た。
【0112】
(比較例F3)
上記調製例2で調製した抽出物含有液(10mg/mL、水抽出物含有)を用いたこと以外は、比較例B2と同様にして、液状組成物C-F3を得た。
【0113】
(比較例F4)
上記調製例3で調製した抽出物含有液(10mg/mL、100%エタノール抽出物含有)を用いたこと以外は、比較例B2と同様にして、液状組成物C-F4を得た。
【0114】
(評価)
<エラグ酸濃度の測定>
得られた液状組成物について、上記測定方法に従ってエラグ酸濃度を測定した。結果を表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
<可溶化率の算出>
以上の結果を用いて、実施例A5~A8及び比較例E1~E2における添加したエラグ酸分の可溶化率を、上記と同様にして算出した。なお、実施例A5は実施例B5に対応し、実施例A6は実施例B6に対応し、実施例A7は実施例B7に対応し、実施例A8は実施例B8に対応し、比較例E1は比較例E3に対応し、比較例E2は比較例E4に対応する。実施例A5、実施例A6、比較例E1の可溶化率の算出の際に基準としたDMSOを溶媒とした場合の可溶化度は、比較例F1のエラグ酸濃度(105.7μg/mL)から比較例F3のエラグ酸濃度(18.4μg/mL)を引いて得られた値(87.3μg/mL)であり、実施例A7、実施例A8、比較例E2の可溶化率の算出の際に基準としたDMSOを溶媒とした場合の可溶化度は、比較例F2のエラグ酸濃度(123.5μg/mL)から比較例F4のエラグ酸濃度(22.0μg/mL)を引いて得られた値(101.5μg/mL)である。算出された可溶化率を表6に示す。
【0117】
【表6】
【0118】
(考察)
実施例A5~A8で示されるように、水及び100%エタノールによる抽出物を用いた場合であっても、エラグ酸の可溶化率は向上した。結果としては、100%エタノールによる抽出物よりも水による抽出物の方が、エラグ酸の可溶化率は高かった。
【0119】
[エラグ酸の可溶性向上検討3]
(実施例A9)
上記調製例4で調製したエラグ酸含有液(1mg/mL)50μL(エラグ酸50μgに相当)と、上記調製例1で調製した抽出物含有液(10mg/mL、50%エタノール抽出物含有)50μL(抽出物500μgに相当)とを混合した溶液を1.5mLチューブ中に調製した。該チューブ中の溶液に減圧遠心処理を施して溶媒を除去し、抽出物含有粉末を調製した。次に、チューブ中に500μLの純水を加えて抽出物含有粉末と混合し、混合溶液を調製した。次に、該混合溶液を含むチューブをブロックインキュベーターに設置して95℃で20分インキュベートした。次に、インキュベート後の混合溶液を周囲環境に放置して室温(23℃)に戻した。次に、チューブ中の混合溶液を減圧遠心により体積が約1/10になるまで濃縮した。その後、0.45μmのフィルターで混合溶液をろ過して固形物を取り除き、液状組成物E-A9を得た。
【0120】
(実施例A10)
調製例1で調製した抽出物含有液(10mg/mL、50%エタノール抽出物含有)の代わりに調製例2で調製した抽出物含有液(10mg/mL、水抽出物含有)を用いたこと以外は、実施例A9と同様にして、液状組成物E-A10を得た。
【0121】
(評価)
<エラグ酸濃度の測定>
得られた液状組成物について、上記測定方法に従ってエラグ酸濃度を測定した。結果を表7に示す。
【0122】
【表7】
【0123】
(考察)
実施例A9~A10で示されるように、加熱処理したモモタマナ属植物由来抽出物含有組成物をさらに濃縮することにより、さらに高濃度のエラグ酸含有組成物を得られることが確認された。エラグ酸の水への溶解度が約20μg/mLであることを考慮すると、モモタマナ属植物由来抽出物の加熱処理によって得られるエラグ酸の可溶化効果は、著しく顕著なものであることが理解される。
【0124】
本明細書中に記載した数値範囲の上限値及び/又は下限値は、それぞれ任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。例えば、数値範囲の上限値及び下限値を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、数値範囲の上限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、また、数値範囲の下限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。
【0125】
この記載した開示に続く特許請求の範囲は、本明細書においてこの記載した開示に明示的に組み込まれ、各請求項は個別の実施形態として独立している。本開示は独立請求項をその従属請求項によって置き換えたもの全てを含む。さらに、独立請求項及びそれに続く従属請求項から誘導される追加的な実施形態も、この記載した明細書に明示的に組み込まれる。
【0126】
当業者であれば本開示を最大限に利用するために上記の説明を用いることができる。本明細書に開示した特許請求の範囲及び実施形態は、単に説明的及び例示的なものであり、いかなる意味でも本開示の範囲を限定しないと解釈すべきである。本開示の助けを借りて、本開示の基本原理から逸脱することなく上記の実施形態の詳細に変更を加えることができる。換言すれば、上記の明細書に具体的に開示した実施形態の種々の改変及び改善は、本開示の範囲内である。
【0127】
以上、本実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本開示に含まれるものである。