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特開2023-144695感光性組成物、および、半導体集積回路の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144695
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】感光性組成物、および、半導体集積回路の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/075 20060101AFI20231003BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20231003BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G03F7/075 511
G03F7/038 505
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051800
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】井谷 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】サンティリャン ジュリウス ジョセフ スドライ
(72)【発明者】
【氏名】武井 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和之
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197AA24
2H197CA06
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197GA01
2H197HA03
2H225AF16P
2H225AF44P
2H225AM85P
2H225AN39P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CB18
2H225CC01
2H225CC11
(57)【要約】
【課題】優れたエッチング耐性を有する材料を含む感光性組成物、および、該組成物を用いた半導体集積回路の製造方法を提供する。
【解決手段】アリール基とアルキル基を有し、前記アルキル基に対する前記アリール基の比率が30モル%以下である梯子型ポリシルセスキオキサンを含む感光性組成物に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリール基とアルキル基を有し、前記アルキル基に対する前記アリール基の比率が30モル%以下である梯子型ポリシルセスキオキサンを含む感光性組成物。
【請求項2】
前記アルキル基に対する前記アリール基の比率が25モル%以下である請求項1記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンの重量平均分子量が3000以下で、分子量分布が3.0以下である請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンの固形分中の濃度が50質量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
さらに、架橋剤または感光剤を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
ネガ形レジスト材料である請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
高エネルギー線リソグラフィー用感光性組成物である請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記高エネルギー線が、極端紫外線または電子線である請求項7に記載の感光性組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の感光性組成物を基板上に塗布する工程、
前記感光性組成物の薄膜に高エネルギー線を照射し、露光する工程、および、
アルカリ現像液を用いて現像する工程
を含むことを特徴とする半導体集積回路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、および、該感光性組成物を用いた半導体集積回路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の高集積化に伴い、リソグラフィーによる微細加工は、近年、数ナノメートルオーダーの超微細パターン形成が要求されるようになってきている。この要求に伴い、露光波長が短波長化しており、現在では、電子線あるいは次世代のリソグラフィー技術として、波長13.5nmの極端紫外光(EUV)リソグラフィーなどの研究開発が進められている。特にEUVによるパターン微細化の進展に対し、主流のレジスト材料とされている化学増幅型レジストのパターン形成性能が要求仕様に対し不十分になると懸念されている。また、数ナノメートルオーダーの分子サイズに近いパターン形成になると、更なる高精度なパターン形成性能が求められ、新たなレジスト材料が要望されてくる。
【0003】
パターン微細化に伴い、パターン形成に使用する感光性組成物であるレジストの膜厚も薄くする必要がある。このため、レジストの微細パターンをマスクとして下地をエッチング加工する際、レジストのエッチング耐性が不十分になる。さらに、数ナノメートルオーダーの分子サイズに近いパターン形成になると、パターン形成の精度に関わる不規則的に発生する微細な欠陥(「Stochastic欠陥」)という新たな課題が懸念されている。
【0004】
特許文献1には、ポリシルセスキオキサンを含む放射線感応性組成物と、それを用いたパターン形成方法が開示されている。しかしながら、ポジ型レジストを意図しており、露光波長も長波長を想定し、短波長では超微細パターンを形成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-144639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れたエッチング耐性を有する材料を含む感光性組成物、および、該組成物を用いた半導体集積回路の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の梯子型ポリシルセスキオキサンが優れたエッチング耐性を有するとともに、特に微細加工が要求されるパターンの形成に極めて好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、アリール基とアルキル基を有し、前記アルキル基に対する前記アリール基の比率が30モル%以下である梯子型ポリシルセスキオキサンを含む感光性組成物に関する。
【0009】
前記アルキル基に対する前記アリール基の比率が25モル%以下であることが好ましい。
【0010】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンの重量平均分子量が3,000以下で、分子量分布が3.0以下であることが好ましい。
【0011】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンの固形分中の濃度は、50質量%以上が好ましい。
【0012】
さらに、架橋剤または感光剤を含むことが好ましい。
【0013】
ネガ形レジスト材料であることが好ましい。
【0014】
高エネルギー線リソグラフィー用感光性組成物であることが好ましい。
【0015】
前記高エネルギー線が、極端紫外線または電子線であることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明は、前記感光性組成物を基板上に塗布する工程、
前記感光性組成物の薄膜に高エネルギー線を照射し、露光する工程、および、
アルカリ現像液を用いて現像する工程
を含むことを特徴とする半導体集積回路の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れたエッチング耐性を有する材料を含む感光性組成物を提供することができる。また、微細加工が要求されるパターンの形成に極めて好適な半導体集積回路の製造方法を提供することができる。特に、極端紫外光(EUV)や電子線のリソグラフィーに最適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の感光性組成物は、アリール基とアルキル基を有し、前記アルキル基に対する前記アリール基の比率が30モル%以下である梯子型ポリシルセスキオキサンを含むことを特徴とする。梯子型ポリシルセスキオキサンを使用すると、ポリシルセスキオキサンの架橋剤を配合しなくても、高エネルギー線の照射によりパターニングが可能となる。
【0019】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンとしては、たとえば以下の化学式で表されるものが挙げられる。
【化1】
【0020】
式中、Rは、水素、または、アルキル基であるが、水素、又は炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、水素、メチル基又はエチル基がより好ましい。RおよびRは、それぞれ独立にアリール基、または、アルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ノルマルオクチル基、イソオクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。なかでも、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基などが挙げられる。なかでも、フェニル基が好ましい。前記梯子型ポリシルセスキオキサンに含まれる置換基の合計を100モル%として、そのうちアリール基の比率は30モル%以下であるが、25モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましい。30モル%を超えると、当該材料のパターニング性能が劣っていく傾向となる。一方、下限は、0モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。
【0021】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンの重量平均分子量は特に限定されないが、3000以下が好ましく、2500以下がより好ましい。下限も特に限定されないが、1000以上が好ましい。分子量分布は、3.0以下が好ましく、2以下がより好ましい。ここで、重量平均分子量Mwと分子量分布Mn/Mwは、ポリスチレン換算ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定することができる。
【0022】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンは、アリール基を有するアルコキシシランとアルキル基を有するアルコキシシランの加水分解縮合物であって、高分子量化されたアルコキシシランである。アリール基を有するアルコキシシランおよびアルキル基を有するアルコキシシランの加水分解縮合反応は、例えば、アリール基を有するアルコキシシランおよびアルキル基を有するアルコキシシランが有するアルコキシ基の加水分解による水酸基の形成、及び、形成された水酸基同士の縮合反応により行われる。これらの反応は、一段階で行うことができる。アリール基を有するアルコキシシランおよびアルキル基を有するアルコキシシラン以外のアルコキシシランを使用する場合において、そのアルコキシシラン中に水酸基が存在する場合には、その水酸基を直接、縮合反応に用いることができる。たとえば、特開平6-306173号公報に記載の方法等を挙げることができる。
【0023】
一般に、ポリシルセスキオキサンは、(RSiO3/2(RSiO)を繰り返し構成単位とし、m、nはそれぞれ(RSiO3/2)、(RSiO)単位のモル比率であって、加水分解、縮合の条件によりラダー型(梯子型)、ランダム型又は他の構造のもの(かご型構造など)が得られることが知られている。本発明では、ラダー型構造を有するものを使用する。ポリシルセスキオキサン誘導体のうちラダー型構造を80重量%以上含有することが好ましく、85重量%以上含有することが好ましく、90重量%以上含有することがさらに好ましい。
【0024】
ポリシルセスキオキサンは、(RSiO3/2)を導くトリアルコキシシランと、(RSiO)を導くジアルコキシシランとを合わせて、加水分解・縮合反応を行うことにより得ることができる。
【0025】
(RSiO3/2)を導くトリアルコキシシランとしては、例えば、フェニルトリメトキシシラン等のアリール基を有するトリアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等のアルキル基を有するトリアルコキシシラン;β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するトリアルコキシシランを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、(RSiO)を導くジアルコキシシランとしては、例えば、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等のアリール基を有するジアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等のアルキル基を有するジアルコキシシラン;γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するジアルコキシシランを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンは、構成単位としてモノアルコキシシラン、テトラアルコキシシランを用いてもよい。アリール基を有するアルコキシシランとしては、メトキシジメチル(フェニル)シラン、トリフェニルメトキシシラン等を挙げることができ、アルキル基を有するアルコキシシランとしてトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシ(ジメチル)オクタデシルシラン、メトキシ(ジメチル)-n-オクチルシラン等を挙げることができる。テトラアルコキシシランとしてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を挙げることができる。
【0028】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンは、構成単位としてアリール基を有するアルコキシシラン及びアルキル基を有するアルコキシシラン以外のアルコキシシランを含んでもよい。この場合、加水分解縮合反応における、アリール基を有するアルコキシシラン及びアルキル基を有するアルコキシシラン以外のアルコキシシランの配合量は、アルコキシシランの総モル数中0.01~5モル%が好ましく、0.05~1モル%がより好ましい。
【0029】
加水分解・縮合反応(hydrolytic condensation)の条件としては、好ましくは30~120℃、1~24時間であり、より好ましくは40~100℃、2~24時間であり、さらに好ましくは50~100℃、3~15時間である。
【0030】
当該加水分解・縮合反応には触媒を使用してもよく、その触媒としては、例えば、塩基性触媒、酸性触媒を挙げることができる。塩基性触媒としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム等を挙げることができる。これらのなかでも、触媒活性が高いことからテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、又は水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、ギ酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、及びp-トルエンスルホン酸等を挙げることが出来る。これらの中でも、触媒活性が高いことから、塩酸、硝酸、ギ酸又は酢酸が好ましく用いられる。
【0031】
当該加水分解縮合反応においては、水を添加することが好ましい。水の添加量はアルコキシシランの合計1モルに対し0.5~5モルが好ましく、1~3モルがより好ましい。
【0032】
また、当該加水分解・縮合反応には必要に応じて溶媒を使用することができる。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチル-1-アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることができる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
前記梯子型ポリシルセスキオキサンの感光性組成物固形分中の濃度は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。50質量%未満では、パターニング不良となる傾向がある。
【0034】
本発明の感光性組成物には、さらに架橋剤または感光剤を配合することができる。架橋剤としては、光酸発生剤により発生した酸を触媒として、アルカリ可溶性樹脂を架橋できるものであれば、特に限定されず、当該技術分野において既知の架橋剤を採用できる。例えば、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、尿素系架橋剤及びグリコールウリル系架橋剤等が挙げられる。
【0035】
メラミン系架橋剤としては、分子内に2以上のメチロール基を有するものであれば、特に限定されない。例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、及びヘキサブトキシブチルメラミン等が挙げられる。 エポキシ系架橋剤としては、分子内に2以上のエポキシ基を有するものであれば、特に限定されない。例えば、脂肪族ポリグリシジルエーテル型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、トリスフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、及び脂環式型エポキシ化合物等のエポキシ化合物;並びにトリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ基を少なくとも2個有する比較的低分子量のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0036】
脂肪族ポリグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のオキシアルキレン部位の繰り返し数が2以上30以下のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0037】
尿素系架橋剤としては、例えば、メチル化尿素樹脂、ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、及びビスブトキシメチル尿素等が挙げられる。 グリコールウリル系架橋剤としては、例えば、ポリメチロール化グリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等が挙げられる。
【0038】
架橋剤の添加量は、梯子型ポリスルセスキオキサン100質量部に対して1~70質量部が好ましく、1~60質量部がより好ましい。70質量部を超えると、露光部の架橋密度が低く、残膜率の減少、形状の劣化、及び/又は耐薬品性に劣る場合があり、1質量部未満では、露光部の溶解速度の上昇により形状の劣化や感度の低下が発生する場合がある。
【0039】
感光剤としては、光酸発生剤、光塩基発生剤などが挙げられる。光酸発生剤としては、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物などの、放射線により酸を発生する光酸発生剤を用いることができる。オニウム塩としては、例えばトリフレートあるいはヘキサフレートとのヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられ、ハロゲン含有化合物としては、ハロアルキル基含有炭化水素化合物あるいはハロアルキル基含有複素環式化合物、例えば、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンなどの(トリクロロメチル)-s-トリアジン誘導体や、トリブロモネオペンチルアルコール、ヘキサブロモヘキサンなどの臭素化合物、ヘキサヨードヘキサンなどのヨウ素化合物などが挙げられる。また、ジアゾメタン化合物としては、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニウム)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニウム)ジアゾメタンなどが挙げられる。スルホン化合物としては、例えばβ-ケトスルホン、β-スルホニルスルホン等が挙げられ、スルホン酸化合物としては、アルキル(C12)スルホン酸エステル、ハロアルキル(C12)スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホナート等が挙げられる。
【0040】
感光剤の添加量は、梯子型ポリスルセスキオキサン100質量部に対して0.1~15質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましい。15質量部を超えると、未露光部の溶解速度が低下し、高解像性が得られない場合があり、0.1質量部未満では、硬化不良となり、所望の形状を精度よく形成することが困難になる場合がある。
【0041】
本発明の感光性組成物は、溶媒を含むことが好ましい。溶媒としてはメタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類等が挙げられる。
【0042】
これらの中では、グリコールエーテル類、アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類およびジエチレングリコール類が好ましい。3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルアミルケトン、およびジエチレングリコールエチルメチルエーテルがより好ましい。これらの溶剤は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせても良い。
【0043】
溶媒を配合する場合、全固形分濃度が0.5~60質量%、好ましくは0.5~20質量%となるように調整することが好ましい。
【0044】
本発明の感光性組成物は、ネガ型レジストとして使用することが好ましい。また、本発明の感光性組成物は、活性エネルギー線により露光することができる。活性エネルギー線としては、遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線、ガンマ線、イオンビーム等の粒子線等が挙げられる。なかでも、波長13.5nmなどの極端紫外線や電子線が好ましく、特に高エネルギー線リソグラフィーに好適に使用することができる。
【0045】
また、本発明の半導体集積回路の製造方法は、
前記感光性組成物を基板上に塗布する工程、
前記感光性組成物の薄膜に高エネルギー線を照射し、露光する工程、および、
アルカリ現像液を用いて現像する工程
を含むことを特徴とする。本発明の半導体集積回路の製造方法により、線幅100nm以下の微細なパターンを形成することができる。特に、10nm以下の微細なパターンも形成することができる。
【0046】
前記感光性組成物を基板上に塗布する工程において、基板としてはシリコン基板、ガラス基板、セラミック基板、樹脂基板などが挙げられる。基板は、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などで表面処理、密着性向上を可能にするBrewer Science社製AL412などの有機下地膜を塗布することが好ましい。
【0047】
基板への塗布方法としては、例えば、スピンコート、吹き付け、ディップコート、バーコート、ロールコート、スリットコート等を挙げることができる。この場合の組成物の好ましい条件としては、感光性組成物の粘度は、25℃で1~10mPa・s程度であることが塗布に好都合である。塗膜形成用組成物として使用する場合は、例えば、乾燥膜厚0.01~5μmとなるように塗布し、活性エネルギー線の照射により硬化させることができる。
【0048】
露光工程において使用する高エネルギー線としては、波長6.7~13.5nmの極端紫外線や50~130keVの電子線が挙げられる。描画量は100~3000μC/cmが好ましく、1500~2500μC/cmがより好ましい。
【0049】
現像工程において使用するアルカリ現像液としては、一般的に使用されている現像液を使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等のアルカリ性溶液を現像液として用いることができる。処理条件としては、pH8~14程度で、10~50℃、0.1~10分程度の条件を用いることができる。現像処理後、必要に応じて純水リンスを行うことができる。
【0050】
本発明の製造方法により得られた半導体集積回路において、形成されたパターンの線幅は、100nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
【実施例0051】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0052】
以下に、梯子型ポリシルセスキオキサンの製造例で使用した各種薬品を示す。
(1-1)トリアルコキシシラン
メチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-13)
フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-103)
(1-2)触媒
ギ酸(富士フイルム和光純薬社製)
(1-3)溶媒
特級メタノール(富士フイルム和光純薬社製)
【0053】
(製造例1)
<梯子型ポリシルセスキオキサン1の作製>
各成分の配合量が以下に記載のモル比となるように、室温条件下、100mLナスフラスコに、フェニルトリメトキシシランを6.3g(31.7mmol)、メチルトリメトキシシランを13.0g(95.4mmol)、メタノールを9.7g、水を6.9g(383.3mmol)、ギ酸を0.6g(13.0mmol)を仕込み、還流菅を取り付け、室温で10分攪拌した。続いて12時間還流熟成した後、還流菅を取り外し、100℃で1時間濃縮して梯子型ポリシルセスキオキサン1を得た。得られた梯子型ポリシルセスキオキサン1について、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて重量平均分子量、分子量分布を測定した。
フェニル基の比率:25モル%
重量平均分子量:2,550
分子量分布:1.70
【0054】
(製造例2)
<梯子型ポリシルセスキオキサン2の作製>
各成分の配合量が以下に記載のモル比となるように、室温条件下、100mLナスフラスコに、フェニルトリメトキシシランを4.4g(22.2mmol)、メチルトリメトキシシランを15.0g(110.1mmol)、メタノールを9.7g、水を7.1g(394.4mmol)、ギ酸を0.6g(13.0mmol)を仕込み、還流菅を取り付け、室温で10分間攪拌した。続いて12時間還流熟成した後、還流菅を取り外し、100℃で1時間濃縮して梯子型ポリシルセスキオキサン2を得た。得られた梯子型ポリシルセスキオキサン2について、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて重量平均分子量、分子量分布を測定した。
フェニル基の比率:17モル%
重量平均分子量:2,200
分子量分布:1.64
【0055】
(実施例1~2)
<レジスト材料の調製>
製造例1~2で作製した梯子型ポリシルセスキオキサン1~2(フレーク状)を、それぞれテフロン(登録商標)製乳鉢に入れ、細かい粉状になるまで乳鉢で粉砕した。添加剤等を含有せず、得られた当該材料をプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタートに溶解させて1~2質量%濃度に調製し、室温で2分間撹拌し、実施例1~2のレジスト材料1~2を得た。
【0056】
<レジストのパターニング>
得られたレジスト材料1~2を未表面処理のシリコンウェハ上に1500rpmで回転塗布し、110℃で60秒間加熱乾燥し、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。125keV加速電圧の電子ビーム(EB)描画装置((株)エリオニクス製ELS-F125)を用いて、EB露光を行った。その後、水溶液テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Aq.TMAH)で60秒間現像し、純水で15秒間洗浄した後乾燥を行い、パターンを形成した。
【0057】
形成されたパターンを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S-4800)で観察した。その結果、添加剤等を配合せず、ウェハの表面処理を行わなくても、梯子型ポリシルセスキオキサン1を用いた実施例1ではパターンが出来かけている様子を確認でき、梯子型ポリシルセスキオキサン2を用いた実施例2では32nmの微細なパターンを形成することができた。梯子型ポリシルセスキオキサンにおけるメチル基に対してフェニル基の比が、高解像度化に極めて重要であることがわかった。
【0058】
(実施例3)
<レジストのパターニング>
シリコンウェハの標準的下地を1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理(100℃で20秒間)した後に、実施例2で作製したレジスト材料2を1500rpmで回転塗布した。110℃で60秒間加熱乾燥し、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。最新鋭極紫外線(EUV)露光装置(ASML社製NXE:3400)を用いて、EUV露光を行った。その後、Aq.TMAHで60秒間現像し、純水で15秒間洗浄した後乾燥を行い、パターンを形成した。
【0059】
形成したパターンを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製CG5000)で観察した。その結果、当該材料で初めて16nmパターンを形成することができた。ただし、非常に低感度(200mJ/cm)であって、シリコンウェハとの密着性不足によりパターン倒れが多発していた。
【0060】
(実施例4~5)
<レジストのパターニング>
微細パターン倒れを防止のため、当該材料のシリコンウェハでの密着性を向上させるため、シリコンウェハの表面を、高温度でのHMDS処理(110℃で20秒間)、または、有機系下地膜(Brewer Science社製AL412)を塗布した。これら下地処理した各々シリコンウェハ上に、実施例2で作製したレジスト材料2を1500rpmで回転塗布し、110℃で60秒間加熱乾燥し、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。最新鋭EUV露光装置(ASML社製NXE:3400)を用いて、EUV露光を行った。その後、Aq.TMAHで60秒間現像し、純水で15秒間洗浄した後乾燥を行い、パターンを形成した。
【0061】
形成したパターンを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製CG5000)で観察した。その結果、下地処理をしなかった実施例2と比較してパターンとシリコンウェハ間の密着性が向上した。特に、有機下地膜の上に塗布した当該材料では、下地処理をしなかった実施例2と比較してより微細でマスクに忠実な線幅15nmのパターンを形成することができた。
【0062】
(実施例6~7)
<レジスト溶液の調製>
製造例2で作製した梯子型ポリシルセスキオキサン2(フレーク状)をテフロン(登録商標)製乳鉢に入れ、細かい粉状になるまで乳鉢で粉砕した。得られた材料をプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタートに溶解させて1~2wt%濃度のレジスト溶液に調製し、室温で2分間撹拌した。その後、光酸発生剤であるビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム ペルフルオロ-1-ブタンスルホン酸塩(BBI-109)を2wt%となるように添加し、室温で2分間撹拌し、実施例6のレジスト材料3を得た。
【0063】
<レジストのパターニング>
シリコンウェハをHMDSで処理(110℃で20秒間)した後に、レジスト材料3又は実施例2で作製したレジスト材料2を1500rpmで回転塗布した。110℃で60秒間加熱乾燥し、膜厚30nmのレジスト膜を形成した。125keV加速電圧のEB描画装置((株)エリオニクス製ELS-F125)を用いて、EB露光を行った。その後、Aq.TMAHで60秒間現像し、純水で15秒間洗浄した後乾燥を行い、パターンを作製した。
【0064】
得られたパターンを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S-4800)で観察した。光酸発生剤を配合しなかったレジスト材料2を用いた実施例7では、線幅14nmの微細なパターンを2000μC/cmで形成できたことに対し、光酸発生剤を添加したレジスト材料3を用いた実施例6では同様の14nm微細なパターンが450μC/cmで形成できた。光酸発生剤により解像性を保持しつつ、高感度化が可能であることがわかった。