(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144699
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】紫外線ビーム加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231003BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20231003BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20231003BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01L21/78 B
A61L2/10
H01L21/02 D
H01L21/02 C
H01L21/304 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051806
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 充史
【テーマコード(参考)】
4C058
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058EE12
4C058KK02
4C058KK28
5F057AA21
5F057AA31
5F057BA16
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5F063FF01
5F063FF13
5F063FF52
(57)【要約】
【課題】被殺菌物を清浄に保つことが可能な紫外線ビーム加工装置を提供すること。
【解決手段】紫外線ビーム加工装置1は、被照射物200を保持する保持ユニット10と、保持ユニット10に保持された被照射物200に対して紫外線ビーム21を照射して加工を施す紫外線ビーム照射ユニット20と、紫外線ビーム21を拡散させる紫外線ビーム拡散機構と、被照射物200とは異なる被殺菌物60を保持する被殺菌物ホルダ50とを備え、被殺菌物ホルダ50は、紫外線ビーム拡散機構により拡散された紫外線ビーム21が照射される位置に配設されることで、被殺菌物ホルダ50に保持された被殺菌物60を紫外線ビーム21により殺菌することが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ビーム加工装置であって、
被照射物を保持する保持ユニットと、
該保持ユニットに保持された被照射物に対して紫外線ビームを照射して加工を施す紫外線ビーム照射ユニットと、
該紫外線ビームを拡散させる紫外線ビーム拡散機構と、
被照射物とは異なる被殺菌物を保持する被殺菌物ホルダとを備え、
該被殺菌物ホルダは、
該紫外線ビーム拡散機構により拡散された紫外線ビームが照射される位置に配設されることで、該被殺菌物ホルダに保持された被殺菌物を紫外線ビームにより殺菌することが可能であることを特徴とする、紫外線ビーム加工装置。
【請求項2】
該紫外線ビーム拡散機構は、
該紫外線ビームの光路内と光路外との間で移動可能に構成される反射ミラーと、
該反射ミラーにより反射された紫外線ビームを拡散する拡散板と、
を含む、請求項1に記載の紫外線ビーム加工装置。
【請求項3】
該反射ミラーは、該紫外線ビームによって該被照射物を加工していない時間に該紫外線ビームの光路内に挿入されることを特徴とする、請求項2に記載の紫外線ビーム加工装置。
【請求項4】
該被殺菌物ホルダは、
該紫外線ビームが照射される部分は該紫外線ビームを透過する材料で構成され、それ以外の部分は遮光材料により構成されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の紫外線ビーム加工装置。
【請求項5】
該紫外線ビーム加工装置は、
該被照射物を加工するための情報を入力および表示するタッチパネルを備え、
該被殺菌物は、該タッチパネルを操作するためのタッチペンであることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の紫外線ビーム加工装置。
【請求項6】
該紫外線ビーム拡散機構は、該被照射物とは異なる方向へと紫外線ビームを導くとともに、異なる方向に導かれた該紫外線ビームを拡散させることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の紫外線ビーム加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線ビーム加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板、SiC基板等のエピタキシー基板の表面に窒化ガリウム(GaN)等の半導体層(エピタキシャル層)を形成し、この半導体層にLED等の複数の光デバイスが格子状に形成されたストリート(分割予定ライン)によって区画されて形成された光デバイスウエーハは、モース硬度が比較的高く切削ブレードによる分割が困難であることから、一般に紫外線ビームであるレーザビームの照射によって個々の光デバイスに分割される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また最近では、こうした光デバイスを備えた基板を移設基板に接合した後、基板の裏面側から紫外線ビームであるレーザビームを照射して基板と光デバイスとの界面付近に変質層を形成し、この変質層を起点として光デバイスを基板から分離するとともに移設基板へと移し替えるレーザーリフトオフ技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-305420号公報
【特許文献2】特開2004-72052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような加工を行うレーザー加工装置は、通常、装置を操作するためのタッチパネルを有しており、また、タッチパネルでの操作を円滑に行うためのタッチペン(スタイラスペン)が付属している。
【0006】
しかしながら、こうした加工装置は工場等に設置され、不特定多数の人が代わる代わる利用するものであるため、タッチペンなどの被殺菌物が微生物やウイルス等で汚染される恐れがあり、不衛生であるという課題があった。
【0007】
本願発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その目的は、被殺菌物を清浄に保つことが可能な紫外線ビーム加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の紫外線ビーム加工装置は、紫外線ビーム加工装置であって、被照射物を保持する保持ユニットと、該保持ユニットに保持された被照射物に対して紫外線ビームを照射して加工を施す紫外線ビーム照射ユニットと、該紫外線ビームを拡散させる紫外線ビーム拡散機構と、被照射物とは異なる被殺菌物を保持する被殺菌物ホルダとを備え、該被殺菌物ホルダは、該紫外線ビーム拡散機構により拡散された紫外線ビームが照射される位置に配設されることで、該被殺菌物ホルダに保持された被殺菌物を紫外線ビームにより殺菌することが可能であることを特徴とする。
【0009】
前記紫外線ビーム加工装置において、該紫外線ビーム拡散機構は、該紫外線ビームの光路内と光路外との間で移動可能に構成される反射ミラーと、該反射ミラーにより反射された紫外線ビームを拡散する拡散板と、を含んでも良い。
【0010】
前記紫外線ビーム加工装置において、該反射ミラーは、該紫外線ビームによって該被照射物を加工していない時間に該紫外線ビームの光路内に挿入されても良い。
【0011】
前記紫外線ビーム加工装置において、該被殺菌物ホルダは、該紫外線ビームが照射される部分は該紫外線ビームを透過する材料で構成され、それ以外の部分は遮光材料により構成されても良い。
【0012】
該紫外線ビーム加工装置は、該被照射物を加工するための情報を入力および表示するタッチパネルを備え、該被殺菌物は、該タッチパネルを操作するためのタッチペンでも良い。
【0013】
前記紫外線ビーム加工装置において、該紫外線ビーム拡散機構は、該被照射物とは異なる方向へと紫外線ビームを導くとともに、異なる方向に導かれた該紫外線ビームを拡散させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、被殺菌物を清浄に保つことが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る紫外線ビーム加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された紫外線ビーム加工装置の紫外線ビーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された紫外線ビーム加工装置の紫外線ビーム照射ユニットの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る紫外線ビーム加工装置の紫外線ビーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態3に係る紫外線ビーム加工装置の紫外線ビーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る紫外線ビーム加工装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る紫外線ビーム加工装置の構成例を示す斜視図である。実施形態1に係る
図1に示された紫外線ビーム加工装置1は、被照射物200に紫外線ビーム21を照射して加工を施す加工装置である。
【0018】
(被照射物)
実施形態1に係る紫外線ビーム加工装置1の加工対象の被照射物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板201とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被照射物200は、
図1に示すように、表面202に互いに交差する分割予定ライン203が複数設定され、分割予定ライン203によって区画された領域にデバイス204が形成されている。
【0019】
デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、又はメモリ(半導体記憶装置)である。
【0020】
実施形態1において、被照射物200は、
図1に示すように、被照射物200の外径よりも大径な円板状でかつ外縁部に環状フレーム210が貼着された粘着テープ209が表面202の裏側の裏面205に貼着されて、環状フレーム210の開口内に支持される。被照射物200は、分割予定ライン203に紫外線ビーム21が照射されるなどして、個々のデバイス204に分割される。
【0021】
図1に示された紫外線ビーム加工装置1は、被照射物200の表面202から被照射物200を構成する基板201に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のパルス状の紫外線ビーム21の集光点を表面202に設定して、紫外線ビーム21を分割予定ライン203に沿って照射して、被照射物200にアブレーション加工を施す加工装置である。
【0022】
なお、本発明では、被照射物200がサファイア基板、SiC基板等のエピタキシー基板の表面に窒化ガリウム(GaN)等の半導体層(エピタキシャル層)を形成し、この半導体層にLED等の複数の光デバイスが形成され、移設基板に接合された光デバイスウエーハである場合に、紫外線ビーム加工装置1が、基板の裏面側から例えば波長が266nmの紫外線ビーム21を照射して基板と光デバイスとの界面付近に変質層を形成し、この変質層を起点として光デバイスを基板から分離するとともに移設基板へと移し替える所謂リフトオフ加工を施しても良い。
【0023】
紫外線ビーム加工装置1は、
図1に示すように、被照射物200を保持する保持ユニット10と、紫外線ビーム照射ユニット20と、移動ユニット30と、撮像ユニット40と、制御ユニット100とを有する。
【0024】
保持ユニット10は、被照射物200を水平方向と平行な保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持ユニット10は、真空吸引源により吸引されることで、保持面11上に載置された被照射物200を吸引保持する。保持ユニット10の周囲には、被照射物200を開口内に支持する環状フレーム210を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0025】
また、保持ユニット10は、移動ユニット30の回転移動ユニット33により保持面11に対して直交しかつ鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。保持ユニット10は、回転移動ユニット33とともに、移動ユニット30のX軸移動ユニット31により水平方向と平行なX軸方向(加工進行方向に相当)に移動されかつY軸移動ユニット32により水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動される。保持ユニット10は、移動ユニット30により紫外線ビーム照射ユニット20の下方の加工領域と、紫外線ビーム照射ユニット20の下方から離れて被照射物200が搬入、搬出される搬入出領域とに亘って移動される。
【0026】
移動ユニット30は、保持ユニット10と紫外線ビーム照射ユニット20が照射する紫外線ビーム21の集光点とをX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させるものである。X軸方向及びY軸方向は、互いに直交し、かつ保持面11(即ち水平方向)と平行な方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との双方と直交する方向である。
【0027】
移動ユニット30は、保持ユニット10をX軸方向に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニット31と、保持ユニット10をY軸方向に移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット32と、保持ユニット10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット33とを備えている。
【0028】
Y軸移動ユニット32は、保持ユニット10と、紫外線ビーム照射ユニット20の紫外線ビーム21の集光点とをY軸方向に相対的に移動する割り出し送りユニットである。実施形態1では、Y軸移動ユニット32は、紫外線ビーム加工装置1の装置本体2上に設置されている。Y軸移動ユニット32は、X軸移動ユニット31を支持した移動プレート5をY軸方向に移動自在に支持している。
【0029】
X軸移動ユニット31は、保持ユニット10と、紫外線ビーム照射ユニット20の紫外線ビーム21の集光点とをX軸方向に相対的に移動する加工送りユニットである。X軸移動ユニット31は、移動プレート5上に設置されている。X軸移動ユニット31は、保持ユニット10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット33を支持した第2移動プレート6をX軸方向に移動自在に支持している。第2移動プレート6は、回転移動ユニット33、保持ユニット10を支持している。回転移動ユニット33は、保持ユニット10を支持している。
【0030】
X軸移動ユニット31、及びY軸移動ユニット32は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると移動プレート5,6をX軸方向、又はY軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、移動プレート5,6をX軸方向、又はY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。回転移動ユニット33は、保持ユニット10を軸心回りに回転するモータ等を備える。
【0031】
また、紫外線ビーム加工装置1は、保持ユニット10のX軸方向の位置を検出するための図示しないX軸方向位置検出ユニットと、保持ユニット10のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットとを備える。各位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0032】
次に、紫外線ビーム加工装置1の紫外線ビーム照射ユニット20を説明する。
図2は、
図1に示された紫外線ビーム加工装置の紫外線ビーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。
図3は、
図1に示された紫外線ビーム加工装置の紫外線ビーム照射ユニットの構成を模式的に示す斜視図である。
【0033】
紫外線ビーム照射ユニット20は、保持ユニット10の保持面11に保持された被照射物200に対してパルス状の紫外線ビーム21を集光して照射して、アブレーション加工を施す紫外線ビーム照射手段である。実施形態1では、紫外線ビーム照射ユニット20の一部は、
図1に示すように、装置本体2から立設した立設壁3により支持された支持柱4の先端に配置されている。
【0034】
紫外線ビーム照射ユニット20は、保持ユニット10に保持された被照射物200の基板201に対して吸収性を有する波長の紫外線ビーム21を照射するものである。紫外線ビーム照射ユニット20は、
図2に示すように、パルス状の紫外線ビーム21を出射する発振器22と、発振器22から出射した紫外線ビーム21を集光して被照射物200に照射する集光器である集光レンズ23とを備える。なお、実施形態1では、紫外線ビーム照射ユニット20は、保持ユニット10に保持された被照射物200の基板201に対して吸収性を有する波長の紫外線ビーム21を照射するが、本発明では、紫外線ビーム照射ユニット20が照射する紫外線ビーム21の波長は、被照射物200の基板201に対して吸収性を有する波長に限定されない。
【0035】
また、実施形態1では、紫外線ビーム照射ユニット20は、発振器22と集光レンズ23との間に配設され、発振器22から出射した紫外線ビーム21を集光レンズ23に向けて反射するミラー24を備える。
【0036】
集光レンズ23は、保持ユニット10の保持面11とZ軸方向に対向する位置に配置されている。集光レンズ23は、保持ユニット10に保持された被照射物200に対してパルス状の紫外線ビーム21を集光して照射する集光光学素子である。集光レンズ23は、発振器22から出射されかつミラー24により反射された紫外線ビーム21を透過して、紫外線ビーム21を集光点に集光する。なお、実施形態1では、集光レンズ23は、紫外線ビーム21の集光点を保持ユニット10の保持面11に保持された被照射物200の表面202に集光する。
【0037】
撮像ユニット40は、保持ユニット10に保持された被照射物200を撮像するものである。撮像ユニット40は、対物レンズがZ軸方向に対向するものを撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備えている。実施形態1では、撮像ユニット40は、
図1に示すように、支持柱4の先端に配置されて、対物レンズが集光レンズ23とX軸方向に沿って並ぶ位置に配置されている。
【0038】
撮像ユニット40は、撮像素子が撮像した画像を取得し、取得した画像を制御ユニット100に出力する。また、撮像ユニット40は、保持ユニット10の保持面11に保持された被照射物200を撮像して、被照射物200と紫外線ビーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を取得する。
【0039】
また、紫外線ビーム加工装置1は、装置本体2に取り付けられかつ保持ユニット10、移動ユニット30、紫外線ビーム照射ユニット20及び撮像ユニット40を覆う筐体7(
図1及び
図3に示す)を備える。筐体7は、遮光性を有する材料により構成され、複数の板状の部材により構成されている。
【0040】
制御ユニット100は、紫外線ビーム加工装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被照射物200に対する加工動作を紫外線ビーム加工装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、紫外線ビーム加工装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して紫外線ビーム加工装置1の上述した構成要素に出力して、制御ユニット100の機能を実現する。
【0041】
また、紫外線ビーム加工装置1は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示手段である表示ユニット110と、オペレータが加工条件などを入力する際に用いる入力手段である入力ユニットを備えている。表示ユニット110及び入力ユニットは、制御ユニット100に接続している。入力ユニットは、表示ユニット110に設けられたタッチパネル111を含んでいる。タッチパネル111は、被照射物200をアブレーション加工するための情報である加工条件などを入力するものである。表示ユニット110即ちタッチパネル111は、被照射物200をアブレーション加工するための加工条件などを表示するものである。
【0042】
また、紫外線ビーム加工装置1は、被殺菌物ホルダ50と、紫外線ビーム拡散機構70とを備える。被殺菌物ホルダ50は、被照射物200とは異なる被殺菌物60を保持するものである。なお、実施形態1では、被殺菌物ホルダ50が保持する被殺菌物60は、オペレータが入力ユニットのタッチパネル111を操作するためのタッチペン(スタイラスペンともいう)であるが、本発明では、タッチペンに限定されず、例えば、工具、保護メガネ、又は筆記具などでも良い。
【0043】
被殺菌物ホルダ50は、筐体7に設けられた紫外線ビーム21を透過する透過窓79(
図2に示す)を塞いだ状態で筐体7に取り付けられている。被殺菌物ホルダ50は、上部に開口51を設け有底筒状のホルダ本体52と、ホルダ本体52の開口51を開閉する蓋53とを備える。実施形態1では、蓋53は、ホルダ本体52に取り付けられると開口51を塞ぎ、ホルダ本体52から取り外されることで開口51を開放する。被殺菌物ホルダ50は、ホルダ本体52内に被殺菌物60を収容して、被殺菌物60を保持する。
【0044】
被殺菌物ホルダ50のホルダ本体52は、透過窓79に重なる壁521の中央(紫外線ビーム拡散機構70により紫外線ビーム21が照射される部分に相当)に、紫外線ビーム21を透過する材料で構成された透光性部材523が設けられている。被殺菌物ホルダ50のホルダ本体52は、透過窓79に重なる壁521以外の壁522(紫外線ビーム加工装置1の外側に露出する壁であって、紫外線ビーム拡散機構70により紫外線ビーム21が照射される部分以外の部分に相当)が遮光性を有する材料により構成されている。被殺菌物ホルダ50の蓋53は、遮光性を有する材料により構成されている。
【0045】
紫外線ビーム拡散機構70は、被照射物200とは異なる方向へと紫外線ビーム21を導くとともに、異なる方向に導かれた紫外線ビーム21を拡散させるものである。紫外線ビーム拡散機構70は、反射ミラー71と、拡散板72と、ミラー移動機構73とを備える。反射ミラー71は、ミラー移動機構73により紫外線ビーム照射ユニット20の紫外線ビーム21の光路内と、光路外との間で移動可能に構成(配置)される。なお、実施形態1では、紫外線ビーム拡散機構70は、被照射物200とは異なる方向へと紫外線ビーム21を導くが、本発明では、被照射物200とは異なる方向へと紫外線ビーム21を導かなくても良い。要するに、本発明では、紫外線ビーム拡散機構70は、少なくとも紫外線ビーム21を拡散させれば良い。
【0046】
反射ミラー71は、ミラー移動機構73により紫外線ビーム照射ユニット20の紫外線ビーム21の光路内に配置されると、発振器22が出射しミラー24により反射された紫外線ビーム21を被照射物200とは異なる方向へと反射する。実施形態1では、反射ミラー71は、ミラー移動機構73により紫外線ビーム照射ユニット20の紫外線ビーム21の光路内に配置されると、発振器22が出射しミラー24により反射された紫外線ビーム21を前述した透過窓79即ち被殺菌物ホルダ50に向けて反射する。実施形態1では、反射ミラー71は、ミラー移動機構73により紫外線ビーム照射ユニット20の紫外線ビーム21の光路外に配置されると、発振器22が出射しミラー24により反射された紫外線ビーム21が集光レンズ23により被照射物200に集光されて照射されることを許容する。
【0047】
拡散板72は、反射ミラー71により反射された紫外線ビーム21を拡散する。こうして、被殺菌物ホルダ50に向けて反射された紫外線ビーム21は、拡散板72により拡散され、透過窓79及び壁521の中央の透光性部材523を透過して、被殺菌物ホルダ50のホルダ本体52内の被殺菌物60に照射されて、被殺菌物60を殺菌する。こうして、被殺菌物ホルダ50は、前述した透過窓79を塞ぐ状態で筐体7に取り付けられることで、紫外線ビーム拡散機構70により拡散された紫外線ビーム21が照射される位置に配設される。また、被殺菌物ホルダ50は、紫外線ビーム拡散機構70により拡散された紫外線ビーム21が照射される位置に配設されることで、被殺菌物ホルダ50に保持された被殺菌物60を紫外線ビーム21により殺菌することが可能である。
【0048】
ミラー移動機構73は、被照射物200に紫外線ビーム21を照射して被照射物200にアブレーション加工を施す際には、反射ミラー71を前述した光路外に配置する。ミラー移動機構73は、被照射物200に紫外線ビーム21を照射して被照射物200にアブレーション加工を施していない間には、反射ミラー71を前述した光路内に配置する。なお、被照射物200にアブレーション加工を施していない間は、例えば、被照射物200を交換する間、被照射物200加工前の待機状態の間等である。
【0049】
次に、前述した構成の紫外線ビーム加工装置1の加工動作を説明する。紫外線ビーム加工装置1は、制御ユニット100がオペレータによりタッチパネル111から入力された加工条件を受け付けて登録し、被照射物200が粘着テープ209を介して搬入出領域に位置付けられた保持ユニット10の保持面11に載置される。なお、オペレータが、タッチパネル111から加工条件を入力する際には、被殺菌物60でタッチパネル111を操作する。オペレータは、加工条件の入力を完了すると、被殺菌物60を被殺菌物ホルダ50に収容する。紫外線ビーム加工装置1は、オペレータからの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると、加工動作を開始する。
【0050】
加工動作を開始すると、紫外線ビーム加工装置1は、制御ユニット100がミラー移動機構73を制御して反射ミラー71を紫外線ビーム21の光路外に位置付け、保持ユニット10の保持面11に粘着テープ209を介して被照射物200を吸引保持するとともに、クランプ部12に環状フレーム210を挟持させる。加工動作では、紫外線ビーム加工装置1は、制御ユニット100が移動ユニット30を制御して保持ユニット10を加工領域に移動し、撮像ユニット40で保持ユニット10に吸引保持された被照射物200を撮像して画像を取得し、紫外線ビーム照射ユニット20の集光点と分割予定ライン203とを位置合わせするアライメントを遂行する。
【0051】
加工動作では、紫外線ビーム加工装置1は、制御ユニット100がZ軸移動ユニット34を制御して、紫外線ビーム照射ユニット20の集光点を被照射物200の分割予定ライン203の表面202に位置付ける。加工動作では、紫外線ビーム加工装置1は、制御ユニット100が移動ユニット30を制御して、保持ユニット10と紫外線ビーム照射ユニット20の集光点とを相対的に移動させながら被照射物200の分割予定ライン203に沿って基板201の表面202側からパルス状の紫外線ビーム21を照射する。
【0052】
実施形態1において、加工動作では、紫外線ビーム加工装置1は、紫外線ビーム21が被照射物200の基板201に対して吸収性を有する波長を有しているために、被照射物200の分割予定ライン203にアブレーション加工を施して、表面202から凹の加工溝を形成する。実施形態1において、加工動作では、紫外線ビーム加工装置1は、全ての分割予定ライン203に沿って紫外線ビーム21を照射すると、紫外線ビーム21の照射を停止し、保持ユニット10を搬入出領域に移動する。加工動作では、紫外線ビーム加工装置1は、保持ユニット10を搬入出領域に位置づけ、保持ユニット10の被照射物200の吸引保持を停止し、クランプ部12の環状フレーム210の挟持を解除して、加工動作を終了する。
【0053】
また、紫外線ビーム加工装置1は、被照射物200にアブレーション加工を施していない間、制御ユニット100がミラー移動機構73を制御して反射ミラー71を紫外線ビーム21の光路内に位置付け、発振器22から紫外線ビーム21を出射する。発振器22から出射された紫外線ビーム21は、被殺菌物ホルダ50に保持された被殺菌物60に照射されて、被殺菌物60を殺菌する。
【0054】
以上、説明した実施形態1に係る紫外線ビーム加工装置1は、被照射物200にアブレーション加工を施していない間、被殺菌物ホルダ50に保持された被殺菌物60に対して紫外線ビーム21を照射することで、被殺菌物60を殺菌する。その結果、紫外線ビーム加工装置1は、被殺菌物60を清浄に保つことが可能になるという効果を奏する。また、紫外線ビーム加工装置1は、被照射物200にアブレーション加工を施していない間、被殺菌物60を殺菌するので、オペレータが、殺菌された被照射物200を用いて紫外線ビーム加工装置1を操作することが可能となる。
【0055】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る紫外線ビーム加工装置を図面に基づいて説明する。
図4は、実施形態2に係る紫外線ビーム加工装置の紫外線ビーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。なお、
図4は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
実施形態2に係る紫外線ビーム加工装置1-2は、
図4に示すように、紫外線ビーム拡散機構70-2が紫外線ビーム21を拡散し、保持ユニット10の保持面11に載置された被殺菌物ホルダ50内の被殺菌物60に紫外線ビーム21を照射して、被殺菌物ホルダ50内の被殺菌物60を殺菌するものである。実施形態2に係る紫外線ビーム加工装置1-2の紫外線ビーム拡散機構70-2は、拡散板72が保持ユニット10の保持面11と対向して配置される。また、実施形態2に係る紫外線ビーム加工装置1-2の紫外線ビーム拡散機構70-2は、紫外線ビーム21の光路内に位置付けられた反射ミラー71が被照射物200と異なる方向に反射した紫外線ビーム21を拡散板72に向けて反射するミラー74を備えている。
【0057】
実施形態2に係る紫外線ビーム加工装置1-2は、被照射物200にアブレーション加工が施していない間、保持ユニット10の保持面11に被殺菌物ホルダ50の壁521の背面側の壁522が載置される。紫外線ビーム加工装置1-2は、被照射物200にアブレーション加工を施していない間、制御ユニット100がミラー移動機構73を制御して反射ミラー71を紫外線ビーム21の光路内に位置付け、発振器22から紫外線ビーム21を出射する。発振器22から出射された紫外線ビーム21は、被殺菌物ホルダ50の壁521の中央に設けられた透光性部材523を透過して、被殺菌物ホルダ50に保持された被殺菌物60に照射されて、被殺菌物60を殺菌する。
【0058】
実施形態2に係る紫外線ビーム加工装置1-2は、被照射物200にアブレーション加工を施していない間、被殺菌物ホルダ50に保持された被殺菌物60に対して紫外線ビーム21を照射して、被殺菌物60を殺菌するので、実施形態1と同様に、被殺菌物60を清浄に保つことが可能になるという効果を奏する。
【0059】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る紫外線ビーム加工装置を図面に基づいて説明する。
図5は、実施形態3に係る紫外線ビーム加工装置の紫外線ビーム照射ユニットの構成を模式的に示す図である。なお、
図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
実施形態3に係る紫外線ビーム加工装置1-3は、
図5に示すように、紫外線ビーム拡散機構70-3が紫外線ビーム21を拡散し、保持ユニット10の保持面11に載置された被殺菌物ホルダ50内の被殺菌物60に紫外線ビーム21を照射して、被殺菌物ホルダ50内の被殺菌物60を殺菌するものである。実施形態3に係る紫外線ビーム加工装置1-3の紫外線ビーム拡散機構70-3は、ホルダ移動機構75を備え、拡散板72を被殺菌物ホルダ50の壁521の中央に設けている。
【0061】
ホルダ移動機構75は、被殺菌物ホルダ50を保持ユニット10の保持面11上でかつ紫外線ビーム照射ユニット20の紫外線ビーム21の光路内と、保持ユニット10の保持面11上から離間した光路外との間で移動可能に配置するものである。ホルダ移動機構75は、被殺菌物ホルダ50を紫外線ビーム21の光路内に配置すると、保持ユニット10の保持面11に被殺菌物ホルダ50の壁521の背面側の壁522を載置するとともに、拡散板72を集光レンズ23に対向させる。ホルダ移動機構75は、被照射物200に紫外線ビーム21を照射して被照射物200にアブレーション加工を施す際には、被殺菌物ホルダ50を前述した光路外に配置する。ホルダ移動機構75は、被照射物200に紫外線ビーム21を照射して被照射物200にアブレーション加工を施していない間には、被殺菌物ホルダ50を前述した光路内に配置する。
【0062】
実施形態3に係る紫外線ビーム加工装置1-3は、被照射物200にアブレーション加工を施していない間、制御ユニット100がホルダ移動機構75を制御して被殺菌物ホルダ50を保持ユニット10の保持面11上でかつ紫外線ビーム21の光路内に位置付け、発振器22から紫外線ビーム21を出射する。発振器22から出射された紫外線ビーム21は、被殺菌物ホルダ50の壁521に設けられた拡散板72により拡散されて、被殺菌物ホルダ50に保持された被殺菌物60に照射されて、被殺菌物60を殺菌する。
【0063】
実施形態3に係る紫外線ビーム加工装置1-3は、被照射物200にアブレーション加工を施していない間、被殺菌物ホルダ50に保持された被殺菌物60に対して紫外線ビーム21を照射して、被殺菌物60を殺菌するので、実施形態1と同様に、被殺菌物60を清浄に保つことが可能になるという効果を奏する。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に等限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、紫外線ビーム加工装置1は、被照射物である基板に紫外線ビーム21を照射して、基板の濡れ性を工場する所謂紫外線トリートメント装置でも良い。また、本発明では、紫外線ビーム加工装置1は、紫外線ビーム21を照射して基板と光デバイスとの界面付近に変質層を形成し、この変質層を起点として光デバイスを基板から分離するとともに移設基板へと移し替えるリフトオフ加工を施す所謂リフトオフ装置でも良い。また、本発明では、紫外線ビーム加工装置1は、反射ミラー71を紫外線ビーム21の光路内に位置付けてアブレーション加工を施し、反射ミラー71を紫外線ビーム21の光路外に位置付けて被殺菌物60を殺菌しても良い。また、本発明では、紫外線ビーム拡散機構70は、反射ミラー71と拡散板72とが一体化した反射型の拡散板を備えても良い。また、本発明では、拡散板72は、被殺菌物ホルダ50の内部にあっても良いし、壁522の内壁が拡散板72の機能を有してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 紫外線ビーム加工装置
10 保持ユニット
20 紫外線ビーム照射ユニット
21 紫外線ビーム
50 被殺菌物ホルダ
60 被殺菌物
70 紫外線ビーム拡散機構
71 反射ミラー
72 拡散板
111 タッチパネル
200 被照射物
521 壁(紫外線ビームが照射される部分)
522 壁(紫外線ビームが照射される部分以外の部分)