(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023144924
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】吹付ノズル及び吹付工法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20231003BHJP
B05B 1/34 20060101ALI20231003BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20231003BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
E02D17/20 104B
B05B1/34 101
B05D1/02 Z
B05D7/24 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052142
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安藤 重裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 智広
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
【テーマコード(参考)】
2D044
4D075
4F033
【Fターム(参考)】
2D044DC05
4D075AA04
4D075CA48
4D075DC05
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB03
4F033AA01
4F033BA04
4F033BA05
4F033BA06
4F033DA01
4F033EA01
4F033KA02
4F033LA09
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】
吐出される吹付材料の濃度分布を均一に制御しつつ吹付材料を効率的に吹付けることが可能な吹付ノズル、及び吹付工法を提供することを課題とする。
【解決手段】
スラリー状の吹付材料を吹き付けるための吹付ノズルであって、内部に流路が形成された筒体と、該筒体の内周面から該筒体の内側に向かって突出する複数の独立した突出部とを備え、前記複数の突出部は、前記筒体の内周面上で螺旋に沿って配置されていることを特徴とする、吹付ノズルによる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー状の吹付材料を吹き付けるための吹付ノズルであって、
内部に流路が形成された筒体と、
該筒体の内周面から該筒体の内側に向かって突出する複数の独立した突出部とを備え、
前記複数の突出部は、前記筒体の内周面上で螺旋に沿って配置されていることを特徴とする、吹付ノズル。
【請求項2】
前記複数の突出部は、前記筒体の中心線方向からみて前記筒体の内周面に等間隔に配置されている、請求項1記載の吹付ノズル。
【請求項3】
前記複数の突出部は、前記筒体の中心線方向からみて前記筒体の内周面に120°の間隔で配置された3個の突出部を含む請求項1記載の吹付ノズル。
【請求項4】
前記筒体の内径Dに対する前記突出部の高さr2の比率(r2/D)が、0.3以上0.55以下である請求項1~3の何れかに記載の吹付ノズル。
【請求項5】
前記突出部の各々は、前記流路の下流側へ向かうにつれて断面積が大きくなる傾斜部を有している請求項1~4の何れかに記載の吹付ノズル。
【請求項6】
前記傾斜部は円錐形状をなし、該円錐形状の中心線は前記円筒の中心線と略平行となるように配置されている、請求項5に記載の吹付ノズル。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の吹付ノズルを用いて吹付材料を吹き付けることを特徴とする吹付工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル等の吹付材料をコンクリート構造物等の施工対象物に吹き付ける吹付工法、及び該吹付工法に使用される吹付ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の補修や補強工事等においては、モルタルなどの吹付材料を施工面に吹付ける吹付工法が実施される場合がある。モルタルの吹付工法においては、具体的には、セメント、骨材、水等で調製したモルタルをポンプ等で圧送し、ホース等の先端に設けた吹付ノズルから該モルタルを吐出させることにより、コンクリート構造物等の施工面にモルタルが吹付けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなモルタルの吹付工法においてモルタルを施工面に厚付けするためには、モルタルの吐出速度を速くする必要があると考えられていた。しかし、従来の吹付ノズルにおいて、モルタルの吐出速度を速くするだけではノズルの中心付近から吐出されるモルタル量が、その周囲へ吐出される量よりも多くなり、モルタルの濃度分布がノズル中心付近に偏った円錐形状となってしまい、施工面に吹き付けられるモルタルの平坦性が低いものとなっていた。また、ノズルから吐出した材料が中心付近に偏っていると、中心付近から吐出される材料自身が施工面に付着した材料を吹き飛ばしてしまい、効率よく厚付けできないという問題があった。
【0005】
本発明は、吐出される吹付材料の濃度分布をできるだけ均一に制御しつつ吹付材料を効率よく吹付けることが可能な吹付ノズル、及び吹付工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
スラリー状の吹付材料を吹き付けるための吹付ノズルであって、
内部に流路が形成された筒体と、
該筒体の内周面から該筒体の内側に向かって突出する複数の独立した突出部とを備え、
前記複数の突出部は、前記筒体の内周面上で螺旋に沿って配置されていることを特徴とする、吹付ノズルである。
【0007】
かかる構成の吹付ノズルによれば、圧送された吹付材料は、前記筒体を通過する際に前記複数の独立した突出部と衝突することによって流れる向きが変更され、中心付近とその周囲との速度差が低減された状態となり、該吹付ノズルから吐出された吹付材料は、濃度が均一化された状態となる。これにより、施工面に対して均一な厚みで吹付材料を吹き付けることが可能となる。
【0008】
前記複数の突出部は、前記筒体の中心線方向からみて前記筒体の内周面に等間隔に配置されていてもよく、好ましくは前記筒体の中心線方向からみて前記筒体の内周面に120°の間隔で配置された3個の突出部を含む。
【0009】
かかる構成により、施工面に対してより一層均一な厚みで吹付材料を吹き付けることが可能となる。
【0010】
前記筒体の内径Dに対する前記突出部の高さr2の比率(r2/D)は、0.3以上0.55以下とすることができる。
【0011】
かかる構成により、施工面に対してより一層均一な厚みで吹付材料を吹き付けることが可能となる。
【0012】
前記突出部の各々は、好ましくは、前記流路の下流側へ向かうにつれて断面積が大きくなる傾斜部を有する。
【0013】
かかる構成により、前記筒体の軸方向に向かって流れてきた吹付材料が複数の突出部に衝突する際、より少ない抵抗で吹付材料の流れ方向が変更され、濃度の均一化がより一層効果的なものとなる。
【0014】
前記傾斜部は、好ましくは円錐形状をなし、該円錐形状の中心線は前記円筒の中心と略平行となるように配置されている。
【0015】
かかる構成により、前記筒体の軸方向に向かって流れてきた吹付材料が複数の突出部に衝突する際、より少ない抵抗で流れ方向が変更され、濃度の均一化がより一層効果的なものとなる。
【0016】
また、本発明の一態様としての吹付工法は、上記何れかの吹付ノズルを用いて吹付材料を吹き付けるものである。
【0017】
かかる構成の吹付工法によれば、吹付材料を施工面に対して均一に吹付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、施工面に対して均一な厚みで効率よく吹付材料を吹付けることが可能な吹付ノズル及び吹付工法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態の吹付ノズルを示す一部断面の斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の吹付ノズルを示す軸方向断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の吹付ノズルを軸方向上流側から見た側面図である。
【
図4】
図4は、他実施形態の吹付ノズルを示す軸方向断面図である。
【
図5】
図5は、他実施形態の吹付ノズルを示す軸方向断面図である。
【
図6】
図6は、シミュレーションに用いた一実施形態の吹付ノズルを示す軸方向断面図である。
【
図7】
図7は、実施例5の吹付ノズルを用いたシミュレーション結果を示すものであり、ノズル出口から所定の距離における吹付材料の分布状態を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例10の吹付ノズルを用いたシミュレーション結果を示すものであり、ノズル出口から所定の距離における吹付材料の分布状態を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例11の吹付ノズルを用いたシミュレーション結果を示すものであり、ノズル出口から所定の距離における吹付材料の分布状態を示すグラフである。
【
図10】
図10は、比較例の吹付ノズルを用いたシミュレーション結果を示すものであり、ノズル出口から所定の距離における吹付材料の分布状態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一実施形態に係る吹付ノズルについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態に係る吹付ノズルは、吹付材料としてモルタルを用いた吹付工法において好適に使用されるものである。具体的には、セメント、骨材、水等を混合してモルタルを調製した後、該モルタルをポンプ等で加圧してホースを介して圧送し、コンクリート構造物等の施工面に吹付ける、いわゆる湿式モルタル吹付け工法において、例えば前記ホースの先端部分に取り付けて使用される。
【0022】
本実施形態に係る吹付ノズル1は、
図1及び
図2に示すように、モルタル流れ方向上流側から順に、モルタルが圧送されるホースの先端部分(図示せず)と接合される連結部10と、該連結部10の下流側に延設された突起設置部(筒体)20と、該突起設置部20の下流側に延設されたテーパ部30と、該テーパ部の下流側に延設された先端部40とを備える。モルタルは、連結部に接続されたホース等の先端部を介して吹付ノズル1に流入し、突起設置部20、テーパ部30および先端部40を通過した後、先端部40の先端開口部から施工面に向けて吐出される。
【0023】
本実施形態に係る吹付ノズル1は、連結部10、突起設置部20、テーパ部30、および先端部40が、それぞれ円筒形状に形成されるとともに内部にモルタルを流通させうる流路を有している。該流路は、後述する突出部の備えられた領域を除き、軸方向と直交する断面が円形である。なお、連結部10に関しては、該連結部の内側にホースの先端に取り付けた連結用治具が挿入可能に構成され、該ホースの先端部分の流路と突起設置部20の流路とが滑らかに連続するように構成されている。
【0024】
以下の説明においては、吹付ノズルの中心を通る仮想的な中心線に沿った方向を軸方向、該軸方向から見た平面視において前記中心線と交差する方向を径方向、前記平面視において前記中心線を中心として周回する方向を周方向と称することとする。また、モルタルの流れ方向における上流側を単に上流側、モルタルの流れ方向における下流側(吐出側)を単に下流側と称する場合がある。
【0025】
本実施形態に係る吹付ノズル1は、
図1及び
図2に示すように、前記流路の前記突起設置部20に対応する位置において、3つの突出部21を備えており、具体的には、上流側から順に第一突出部21a、第二突出部21b、及び第三突出部21cを備える。各突出部21は、モルタルの流路を構成する筒状の突起設置部20の内周面から径方向内側へ突出した形状を有している。
【0026】
本実施形態における3つの突出部21は互いに独立しており、言い換えると、各突出部21の周縁は突起設置部20の内周面に達しており、突出部21同士は離間している。本実施形態における3つの突出部21は、筒状の突起設置部(筒体)20の内周面上で螺旋に沿って配置されている。即ち、3つの突出部21は、軸方向に離間するとともに周方向にも離間した位置に配置されている。具体的には、3つの突出部21は、
図3に示すように、軸方向上流側から見た際に吹付ノズルの中心線を中心として120°ずつ、周方向にずれた位置に配置されている。すなわち、最も上流側に位置する第一突出部21aは、吹付ノズルの中心線を基準に2時の方向(
図3において右上)に配置され、第一突出部21aの下流側の隣に配された第二突出部21bは、同じく6時の方向(
図3において下方)に配置され、第二突出部21bの下流側の隣に配された第三突出部21cは、同じく10時の方向(
図3において左上)に配置されている。
【0027】
各突出部21は、
図2に示すように、上流側に向いた第一傾斜面211と下流側に向いた第二傾斜面212とを有している。本実施形態における第一傾斜面211及び第二傾斜面212は、それぞれ中心線が突起設置部20の軸方向と略平行な円錐形であり、それぞれの中心線が突起設置部20の内周面上に位置している。言い換えると、各突出部21の第一傾斜面211及び第二傾斜面212は、円錐の一部が突起設置部20の内周面より内側に突出して流路の一部を塞いた状態となっている。
即ち、本実施形態においては、第一傾斜面211が、流路の下流側へ向かうにつれて断面積が大きくなる傾斜部として機能する。なお、ここでいう断面積とは、突出部の径方向断面における外側の輪郭線と内周面の延長線(円弧)とで囲まれた領域の面積を意味し、断面の内部(突出部の内部)が中空であってもその面積に含まれるものとする。
【0028】
上記構成に伴い、各突出部21の上流側部分(第一傾斜面211に対応する部分)では、該突出部21の径方向断面積が、下流側へ向かうにつれて大きくなるように構成されている。反対に、各突出部21の下流側部分(第二傾斜面212に対応する部分)では、該突出部21の径方向断面積が、下流側へ向かうにつれて小さくなるように構成されている。
【0029】
前記突出部21の高さr2、即ち突起設置部20の軸方向断面における内周面から突出部21の径方向における高さは、突起設置部20における流路半径と略同一となるように構成される。具体的には、前記突出部21の高さr2の、流路の内径Dに対する比率(r2/D)は、0.35以上0.55以下であることが好ましい。かかる構成により、該突出部21による効果がより一層発揮されやすくなる。本実施形態では、突出部21の高さは、第一傾斜面211および前記第二傾斜面212を構成する円錐の底面の半径となっている。
【0030】
また、
図2に示すように、該突出部21の中心を通る軸方向断面で見た場合、該突出部21の上流側先端から下流側先端までの軸方向長さd1に対する該突出部21の高さr2の比(r2/d1)は、0.4以上2.5以下であることが好ましい。かかる構成により、突出部21を設置することによる効果がより一層発揮されやすくなる。
【0031】
さらに、隣り合う前記突出部21同士の距離y、例えば、第一突出部21aの上流側端部から隣接する第二突出部21bの上流側端部までの距離yの、突出部21の内周面からの高さr2に対する比(y/r2)は、1以上3.5以下であることが好ましい。かかる構成により、突出部21を設置することによる効果がより一層発揮されやすくなる。
【0032】
本実施形態における突出部21の具体的形状は、前記第一傾斜面211を構成する円錐の頂角が、前記第二傾斜面212を構成する円錐の頂角よりも小さいものである。言い換えると、上流側の傾斜が下流側の傾斜よりも緩やかな形状となっている。また、前記第一傾斜面211と前記第二傾斜面212との間には、軸方向に沿って径方向断面が同一である円柱の一部をなす形状として構成されている。
【0033】
かかる構成の突起設置部20を備えることにより、モルタルが該突起設置部20を通過する際には、該モルタルは先ず第一突出部21aと衝突することとなる。第一突出部21aと衝突したモルタルは、前記第一傾斜面211によって流れ方向が変えられ、具体的には、軸方向から見て前記第一傾斜面211から放射状に広がる方向に向かう速度成分を有するものとなる。
【0034】
第一突出部21aを通過したモルタルは、その後第二突出部21bおよび第三突出部21cと順次衝突し、第一突出部と同様の作用を各突出部から受けながら突起設置部20を通過することとなる。上述のように、第一突出部21a、第二突出部21bおよび第三突出部21cが、互いに突起設置部20の内周面において螺旋に沿って配置されているため、該突起設置部20を通過したモルタルは、全体としては螺旋方向の速度成分をも有するものとなる。
【0035】
すなわち突起設置部20を通過したモルタルは、流路内での流速分布が均一化されたものとなり、しかも螺旋方向の速度成分を有したものとなる。これにより、本実施形態に係る吹付ノズルより吐出したモルタルは、中心から外側にかけてモルタル濃度が均一となり、施工面に均一な厚みのモルタルを塗布することが可能となる。
【0036】
また、前記各突出部21は下流側へ向かうにつれて断面積が大きくなる傾斜部を有しているため、突起設置部20を通過するモルタルに作用する抵抗が小さく、モルタルの圧力損失が増大しにくいという効果がある。
【0037】
突起設置部20の下流側に配置されたテーパ部30は、前記突起設置部20と連続し且つ下流側に向かって流路断面積が小さくなるテーパ形状を有している。具体的には、
図2に示す軸方向断面において、対向する内周面同士がなす角度は、5~15°が好ましい。
【0038】
また、本実施形態における吹付ノズルでは、テーパ部30の下流側に流路内径が軸方向に沿って一定である先端部40が備えられている。該先端部40の内径は、前記突起設置部20の内径に対して0.5~0.7の範囲が好ましい。また、該先端部40の先端は吹付材料が吐出される吐出口となる。最下流に設けられた前記突出部21から該吐出口までの距離xは、突起設置部20の流路内径Dに対する比(x/D)が5以上、10以下となる範囲が好ましい。
【0039】
なお、突出部の形状は上記実施形態のような形状に限定されず、任意の形状とすることができる。具体的には、球体、回転楕円体(長球)、角錐、円錐、又はこれらと近似する任意の形状のうち、その一部または複数を組み合わせたものを採用することができる。
【0040】
例えば、
図4に示すように、本発明における突出部は、回転楕円体の形状(概ね球体であって軸方向の直径がやや短い形状)を有するものとすることができる。また、
図5に示すように、本発明における突出部は、底面が下流方向に向き、頂点が上流方向に向いた三角錐の形状を有するものとすることができる。
【0041】
一実施形態としての吹付工法は、上記構成の吹付ノズルを用いて吹付材料を施工対象物の施工面に吹き付ける工法である。具体的には、吹付材料を調製する材料調製工程と、調製された吹付材料をポンプ等で加圧してホース等の圧送経路を介して施工場所まで圧送する圧送工程と、圧送経路の先端に取り付けた上記構成の吹付ノズルを介して吹付材料を吐出させ、例えばコンクリート構造物のような施工対象物の施工面に吹き付ける吹付工程と、を備えた、いわゆる湿式吹付工法を採用することができる。
【0042】
また、他の実施形態としては、水以外の材料を混合して粉体材料を調製する粉体材料調製工程と、該粉体材料をホース等の圧送経路を介して施工場所まで圧送する粉体材料圧送工程と、前記粉体材料とは別の圧送経路を介して水を施工場所まで圧送する水圧送工程と、吹付ノズルの手前で粉体材料と水とを混合する混合工程と、混合された吹付材料を上記構成の吹付ノズルを介して施工面に吹き付ける吹付工程と、を備えた、いわゆる乾式吹付工法を採用することもできる。
【0043】
前記吹付材料としては、各種セメント、石膏、細骨材、粗骨材等の無機材料、又は繊維、木質材料、ポリマー等の有機材料などを含むスラリー状の吹付材料を好適に使用でき、特に、モルタルを好適に使用し得る。
【0044】
なお、上記吹付工法における各工程で使用される機器については吹付ノズルを除いていずれもこの分野において公知の機器を採用することができ、具体的な説明は省略する。
【0045】
次に、シミュレーションを用いて本発明の実施形態に係る吹付ノズルの吹付性能を評価した結果について説明する。シミュレーションの対象とした吹付ノズルは、上述したような
図1~3に示した形状(以下、コマ型ともいう)の突出部を有するものと、
図4に示した楕円体形状の突出部を備えたものと、
図5に示した三角錐形状の突出部を備えたものである。コマ型の突出部を備えた吹付ノズルについては、
図6に示す各部分の寸法について、下記表1に示す値を採用したものを実施例1~9として評価を行った。
一方、比較例としては、
図1~3に示した本実施形態の吹付ノズルから、突出部を全て削除した吹付ノズルを用い、その評価を行った。
【0046】
【0047】
シミュレーションの結果は、上記表1に示された通りである。該シミュレーションの結果によると、実施例1~9の何れの吹付ノズルについても、突出部を備えない比較例の吹付ノズルと比較してノズル出口の平均粒子速度が低下していることが分かる。
【0048】
また、実施例5(コマ型)、実施例10(楕円体)、実施例11(三角錐)及び比較例(突出部なし)の吹付ノズルについて、それぞれノズル出口から0.2m、0.4mおよび0.6mにおける軸方向と直交する平面内での粒子分布を計算した結果を
図7~
図10に示す。実施例5、実施例10、実施例11の吹付ノズルでは、
図7、
図8及び
図9に示すように、ノズル出口から吐出した粒子が軸方向と直交する平面内に均一に分布するように広がっていることがわかる。これに対し、突出部を設けていない比較例の吹付ノズルでは、
図10に示すように、ノズル出口から吐出した粒子が中央部に偏って分布していることがわかる。
【0049】
このように、本実施形態の吹付ノズルでは、ノズルから吐出される吹付材料の平均粒子速度が低下するとともに、施工面に均一に広がるような濃度分布で吐出されることとなる。したがって、吹付けた材料を吹き飛ばすことなく、施工面に効率的に厚付けすることが可能となる。
【0050】
尚、本発明に係る吹付ノズルおよび吹付工法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0051】
例えば、上記実施形態の吹付ノズルは、連結部10、突起設置部20、テーパ部30、および先端部40が連続する一の部材で一体的に形成された場合について説明したが、本発明はかかる構成に限定されず、複数の部材を組み合わせて上記構成の吹付ノズルとすることも可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、3つの突出部を備えた吹付ノズルについて説明したが、本発明はかかる構成に限定されず、突出部を4つ以上備えていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…吹付ノズル、10…連結部、20…突起設置部、30…テーパ部、40…先端部、21…突出部