(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145020
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20231003BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H02M1/08 C
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052284
(22)【出願日】2022-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 裕介
【テーマコード(参考)】
5H730
5H740
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
5H730XC04
5H730XX03
5H730XX12
5H730XX23
5H730XX32
5H730XX42
5H740AA08
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH01
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
(57)【要約】
【課題】ブートストラップコンデンサの充電不足を抑制し、電源停止を抑制することができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】充電制御部171が、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下している場合、放電抵抗R3に直列接続されたトランジスタQ3をオンして出力部11の出力電流を放電抵抗R3に供給する。また、充電制御部171は、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下している場合、ローサイドNMOSトランジスタQ1を常時オフ制御する。また、また、充電制御部171は、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下している場合、スイッチ端子TSWから出力されるパルス信号のデューティサイクルを低下させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を変換した出力電圧を出力する出力部を制御するスイッチング電源装置であって、
互いに直列接続されたローサイドNMOSトランジスタ及びハイサイドNMOSトランジスタと、
前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタを交互にオン制御して、前記出力部を制御する制御部と、
前記ハイサイドNMOSトランジスタを駆動するために、前記ハイサイドNMOSトランジスタのソース電位よりブートストラップコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトさせたブート電圧を生成するブートストラップ部と、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下している、または、低下する可能性があると判定した場合、放電抵抗に直列接続されたスイッチをオンして前記出力部の出力電流を前記放電抵抗に供給する充電制御部とを備えた、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
入力電圧を変換した出力電圧を出力する出力部を制御するスイッチング電源装置であって、
互いに直列接続されたローサイドNMOSトランジスタ及びハイサイドNMOSトランジスタと、
前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタを交互にオン制御して、前記出力部を制御する制御部と、
前記ハイサイドNMOSトランジスタを駆動するために、前記ハイサイドNMOSトランジスタのソース電位よりブートストラップコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトさせたブート電圧を生成するブートストラップ部と、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下している、または、低下する可能性があると判定した場合、前記制御部を制御して、前記ローサイドNMOSトランジスタを常時オフ制御する充電制御部とを備えた、
スイッチング電源装置。
【請求項3】
入力電圧を変換した出力電圧を出力する出力部を制御するスイッチング電源装置であって、
互いに直列接続されたローサイドNMOSトランジスタ及びハイサイドNMOSトランジスタと、
前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタを交互にオン制御して、前記出力部を制御する制御部と、
前記ハイサイドNMOSトランジスタを駆動するために、前記ハイサイドNMOSトランジスタのソース電位よりブートストラップコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトさせたブート電圧を生成するブートストラップ部と、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下している、または、低下する可能性があると判定した場合、前記制御部を制御して、前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタのオンオフ制御のデューティサイクルを低下させる充電制御部とを備えた、
スイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のスイッチング電源装置において、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧と閾値電圧との比較結果を出力する電圧検出部をさらに備え、
前記充電制御部は、前記電圧検出部の比較結果に基づいて前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下していることを判定する、
スイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のスイッチング電源装置において、
起動時であるか否かの判定、前記出力電圧が過電圧であるか否かの判定、パルススキップが発生しているか否かの判定、のうち少なくとも1以上を判定する判定部を備え、
前記充電制御部は、前記判定部の判定結果に基づいて前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下する可能性があると判定する、
スイッチング電源装置。
【請求項6】
入力電圧を変換した出力電圧を出力する出力部を制御するスイッチング電源装置であって、
互いに直列接続されたローサイドNMOSトランジスタ及びハイサイドNMOSトランジスタと、
前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタを交互にオン制御して、前記出力部を制御する制御部と、
前記ハイサイドNMOSトランジスタを駆動するために、前記ハイサイドNMOSトランジスタのソース電位よりブートストラップコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトさせたブート電圧を生成するブートストラップ部と、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧と複数の閾値電圧との比較結果を出力する電圧検出部と、
前記電圧検出部が前記閾値電圧を下回るとの比較結果を出力する毎に、放電抵抗に直列接続されたスイッチをオンして前記出力部の出力電流を前記放電抵抗に供給する第1充電制御、前記制御部を制御して、前記ハイサイドNMOSトランジスタを常時オフ制御する第2充電制御、および、前記制御部を制御して、前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタのオンオフ制御のデューティサイクルを低下させる第3充電制御の少なくとも2つ以上を組み合わせて順次実行する充電制御部とを備えた、
スイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置において、NMOSトランジスタをハイサイド駆動する場合には、ゲート電圧をソース電圧より高くする必要がある。これを実現するために、従来、ブートストラップ部が用いられている(例えば特許文献1)。ブートストラップ部からの供給電圧の大きさは、ブートストラップ部におけるブートストラップコンデンサの両端電圧によって決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、ブートストラップコンデンサの充電が不足し、両端電圧が低下するとハイサイドNMOSトランジスタをオンオフ駆動することができず、スイッチング電源装置の動作が停止して、電源が停止してしまう、という問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブートストラップコンデンサの充電不足を抑制し、電源停止を抑制することができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るスイッチング電源装置は、下記[1]~[6]を特徴としている。
[1]
入力電圧を変換した出力電圧を出力する出力部を制御するスイッチング電源装置であって、
互いに直列接続されたローサイドNMOSトランジスタ及びハイサイドNMOSトランジスタと、
前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタを交互にオン制御して、前記出力部を制御する制御部と、
前記ハイサイドNMOSトランジスタを駆動するために、前記ハイサイドNMOSトランジスタのソース電位よりブートストラップコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトさせたブート電圧を生成するブートストラップ部と、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下している、または、低下する可能性があると判定した場合、放電抵抗に直列接続されたスイッチをオンして前記出力部の出力電流を前記放電抵抗に供給する充電制御部とを備えた、
スイッチング電源装置であること。
[2]
入力電圧を変換した出力電圧を出力する出力部を制御するスイッチング電源装置であって、
互いに直列接続されたローサイドNMOSトランジスタ及びハイサイドNMOSトランジスタと、
前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタを交互にオン制御して、前記出力部を制御する制御部と、
前記ハイサイドNMOSトランジスタを駆動するために、前記ハイサイドNMOSトランジスタのソース電位よりブートストラップコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトさせたブート電圧を生成するブートストラップ部と、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下している、または、低下する可能性があると判定した場合、前記制御部を制御して、前記ローサイドNMOSトランジスタを常時オフ制御する充電制御部とを備えた、
スイッチング電源装置であること。
[3]
入力電圧を変換した出力電圧を出力する出力部を制御するスイッチング電源装置であって、
互いに直列接続されたローサイドNMOSトランジスタ及びハイサイドNMOSトランジスタと、
前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタを交互にオン制御して、前記出力部を制御する制御部と、
前記ハイサイドNMOSトランジスタを駆動するために、前記ハイサイドNMOSトランジスタのソース電位よりブートストラップコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトさせたブート電圧を生成するブートストラップ部と、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下している、または、低下する可能性があると判定した場合、前記制御部を制御して、前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタのオンオフ制御のデューティサイクルを低下させる充電制御部とを備えた、
スイッチング電源装置であること。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のスイッチング電源装置において、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧と閾値電圧との比較結果を出力する電圧検出部をさらに備え、
前記充電制御部は、前記電圧検出部の比較結果に基づいて前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下していることを判定する、
スイッチング電源装置であること。
[5]
[1]~[4]の何れか1項に記載のスイッチング電源装置において、
起動時であるか否かの判定、前記出力電圧が過電圧であるか否かの判定、パルススキップが発生しているか否かの判定、のうち少なくとも1以上を判定する判定部を備え、
前記充電制御部は、前記判定部の判定結果に基づいて前記ブートストラップコンデンサの両端電圧が低下する可能性があると判定する、
スイッチング電源装置であること。
[6]
入力電圧を変換した出力電圧を出力する出力部を制御するスイッチング電源装置であって、
互いに直列接続されたローサイドNMOSトランジスタ及びハイサイドNMOSトランジスタと、
前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタを交互にオン制御して、前記出力部を制御する制御部と、
前記ハイサイドNMOSトランジスタを駆動するために、前記ハイサイドNMOSトランジスタのソース電位よりブートストラップコンデンサの両端電圧だけ高圧側にシフトさせたブート電圧を生成するブートストラップ部と、
前記ブートストラップコンデンサの両端電圧と複数の閾値電圧との比較結果を出力する電圧検出部と、
前記電圧検出部が前記閾値電圧を下回るとの比較結果を出力する毎に、放電抵抗に直列接続されたスイッチをオンして前記出力部の出力電流を前記放電抵抗に供給する第1充電制御、前記制御部を制御して、前記ハイサイドNMOSトランジスタを常時オフ制御する第2充電制御、および、前記制御部を制御して、前記ローサイドNMOSトランジスタ及び前記ハイサイドNMOSトランジスタのオンオフ制御のデューティサイクルを低下させる第3充電制御の少なくとも2つ以上を組み合わせて順次実行する充電制御部とを備えた、
スイッチング電源装置であること。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブートストラップコンデンサの充電不足を抑制し、電源停止を抑制することができるスイッチング電源装置を提供することができる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態における本発明のスイッチング電源装置を組み込んだDC/DCコンバータを示す回路図である。
【
図2】
図2は、正常時におけるハイサイドNMOSトランジスタのオンオフ、ローサイドNMOSトランジスタのオンオフ、スイッチ端子の電位、コイル電流、ブートストラップコンデンサの両端電圧のタイムチャートである。
【
図3】
図3は、デューティが高く、かつ、負荷電流が少ない場合におけるスイッチ端子の電位、コイル電流、ブートストラップコンデンサの両端電圧のタイムチャートである。
【
図4】
図4は、出力電圧が目標電圧を越えた場合における
図1に示す出力電圧、スイッチ端子の電位のタイムチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示す放電部に電流を供給したときにおけるスイッチ端子の電位、コイル電流、ブートストラップコンデンサの両端電圧のタイムチャートである。
【
図6】
図6は、ローサイドNMOSトランジスタを常時オフした場合におけるローサイドNMOSトランジスタのオンオフ、ハイサイドNMOSトランジスタのオンオフ、スイッチ端子の電位、コイル電流、ブートストラップコンデンサの両端電圧のタイムチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態における本発明のスイッチング電源装置を組み込んだDC/DCコンバータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明に関する第1実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
本実施形態のDC/DCコンバータ1は、入力電圧VINを降圧した出力電圧VOUTを負荷2に供給する。入力電圧VINは、直流電源3から供給される。DC/DCコンバータ1は、入力電圧VINを降圧変換して出力電圧VOUTとして出力する出力部11と、出力部11に対してパルス状の入力電圧VINを供給するスイッチング電源装置12と、ブートストラップコンデンサCBとを備えている。
【0012】
出力部11は、コイルL1と、出力コンデンサC1とを備えている。コイルL1は、スイッチング電源装置12のスイッチ端子TSWと、負荷2との間に接続されている。負荷2は、一端がコイルL1に接続され、他端がグランドに接続されている。出力コンデンサC1は、一端がコイルL1及び負荷2の接続点に接続され、他端がグランドに接続されている。
【0013】
スイッチング電源装置12は、ICチップから構成されている。スイッチング電源装置12は、ローサイドNMOSトランジスタQ1(以下、「トランジスタQ1」と略記することもある)、ハイサイドNMOSトランジスタQ2(以下、「トランジスタQ2」と略記することもある)と、ドライバ部(
図1では「DRV」と表記)131,132と、ブートストラップ部14と、出力電圧検出部15と、誤差検出部16と、制御部としてのPWM制御部17と、放電部18と、電圧検出部としてのブート電圧検出部19とを備えている。
【0014】
トランジスタQ1、Q2は、NchのパワーMOSFET(metal-oxide semiconductor field-effect transistor;金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)から構成されている。ローサイドNMOSトランジスタQ1は、ソースがグランドに接続され、ドレインがスイッチ端子TSWに接続される。ハイサイドNMOSトランジスタQ2は、ソースがスイッチ端子TSW及びトランジスタQ1のドレインに接続され、ドレインが入力端子TINに接続されている。入力端子TINには、直流電源3から供給される入力電圧VINが入力されている。
【0015】
図2に示すように、トランジスタQ2がオン、トランジスタQ1がオフすると、スイッチ端子TSWからは入力電圧VINが出力される。これに対して、トランジスタQ2がオフ、トランジスタQ1がオンすると、スイッチ端子TSWからはグランド電位0Vが出力される。トランジスタQ1、Q2を交互にオン制御することにより、スイッチ端子TSWからはHレベルが入力電圧VIN、Lレベルが0Vのパルス信号(=パルス状の入力電圧VIN)が出力される。このパルス信号を出力部11に入力してコイルL1と出力コンデンサC1とで平滑化することにより、パルス信号のデューティに応じた出力電圧VOUTを負荷2に供給することができる。
【0016】
なお、トランジスタQ1、Q2のオンオフ切り替え時には、直流電源3の短絡を防ぐために、トランジスタQ1、Q2の双方がオフするデッドタイムDTが設けられている。デッドタイムDT中は、スイッチ端子TSWの電位は、-0.7V、即ちグランド電位0VからトランジスタQ1の寄生ダイオードの順方向電圧0.7V分、下がった電位となる。
【0017】
ドライバ部131は、
図1に示すように、トランジスタQ1のゲートに接続され、トランジスタQ1のオンオフを駆動する回路である。ドライバ部131は、ゲート駆動用電源(
図1では「LDO」と表記)141からの電源供給を受けて動作する。ドライバ部131は、Hレベルがゲート駆動電圧VG(例えば5V)、Lレベルがグランド電位0となるパルス信号をトランジスタQ1のゲートに対して出力する。ドライバ部131から出力されるパルス信号がHレベルのときにトランジスタQ1がオンし、LレベルのときにトランジスタQ1がオフする。
【0018】
ドライバ部132は、トランジスタQ2のゲートに接続され、トランジスタQ2のオンオフを駆動する回路である。トランジスタQ2は、オンするとソース電位が入力電圧VINと等しくなる。このため、トランジスタQ2のゲートにトランジスタQ1と同様にゲート駆動電圧VGを供給しても、トランジスタQ2のオンを維持することができない。そこで、ドライバ部132は、後述するブートストラップ部14からの電源供給を受けて動作する。ブートストラップ部14は、ブートストラップコンデンサCBを利用して、スイッチ端子TSWの電位(即ちトランジスタQ2のソース電位)にブートストラップコンデンサCBの両端電圧を加算したブート電圧VBを生成する回路である。ブートストラップコンデンサCBの両端電圧は、正常時は後述するようにゲート駆動電圧VGとほぼ等しくなる。
【0019】
ドライバ部132は、Hレベルがブート電圧VB、Lレベルがスイッチ端子TSWの電位となるパルス信号をトランジスタQ2のゲートに出力する。ドライバ部132から出力されるパルス信号がHレベルのときにトランジスタQ2がオンし、LレベルのときにトランジスタQ2がオフする。
【0020】
ブートストラップ部14は、ゲート駆動用電源141と、ダイオードD1とを有している。ゲート駆動用電源141は、入力電圧VINからゲート駆動電圧VGを生成して出力する。ダイオードD1は、アノードにゲート駆動用電源141が接続され、カソードにブート端子TBを介してブートストラップコンデンサCBの一端が接続される。ブートストラップコンデンサCBは、他端がスイッチ端子TSWに接続されている。
【0021】
ドライバ部131がトランジスタQ1のゲートにゲート駆動電圧VG(Hレベルのパルス信号)を供給すると、トランジスタQ1がオンする。ドライバ部132がトランジスタQ2のゲートにスイッチ端子TSWの電位(Lレベルのパルス信号)を供給すると、トランジスタQ2がオフする。トランジスタQ1がオン、トランジスタQ2がオフのとき、スイッチ端子TSWはグランド電位0Vとなる。スイッチ端子TSWがグランド電位0Vとなると、ゲート駆動用電源141からの電流が、ダイオードD1を介してブートストラップコンデンサCBに供給され、ブートストラップコンデンサCBが充電される。これにより、
図2に示すように、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧がゲート駆動電圧VGに向かって上昇する。特に、デッドタイムDT中は、スイッチ端子TSWの電位が-0.7Vとなるため、ブートストラップコンデンサCBの充電が早い。
【0022】
次に、ドライバ部131がトランジスタQ1にグランド電位(Lレベルのパルス信号)を供給すると、トランジスタQ1がオフする。ドライバ部132がトランジスタQ2にブート電圧VB(Hレベルのパルス信号)を供給すると、トランジスタQ2がオンする。この切り替わり時に、スイッチ端子TSWの電位、即ちトランジスタQ2のソース電位が、グランドから入力電圧VINまで上昇する。しかしながら、ブートストラップコンデンサCBは
図2に示すようにゆっくりと放電するものの、その両端電圧はほぼゲート駆動電圧VGを保ったままなので、ブート電圧VBは常にトランジスタQ2のソース電位+ゲート駆動電圧VGとなり、トランジスタQ2のオンが継続する。また、ダイオードD1の働きによりブートストラップコンデンサCBからの電流がゲート駆動用電源141に流れ込むことがない。
【0023】
出力電圧検出部15は、
図1に示すように、出力電圧VOUTに応じた検出電圧VRを後述する誤差検出部16に対して出力する。出力電圧検出部15は、抵抗R1、R2を有する。抵抗R1は一端がグランドに接続され、他端が抵抗R2の一端に接続されている。抵抗R2は、他端がフィードバック端子TFBを介してコイルL1とコンデンサC1との接続点(=出力部11の出力)に接続されている。抵抗R1,R2の接続点には、出力電圧VOUTを抵抗R1、R2で分圧した検出電圧VRが出力される。
【0024】
誤差検出部16は、検出電圧VRと基準電圧VREFとの誤差を増幅した誤差信号VFBをPWM制御部17に出力する。基準電圧VREFは、出力電圧VOUTが目標電圧となったときに出力電圧検出部15から出力される検出電圧VRと等しくなるように設定されている。PWM制御部17は、誤差信号VFBに応じたデューティのパルス信号がドライバ部131,132から出力されるようにドライバ部131,132を制御する。
【0025】
上述したDC/DCコンバータ1においては、ブートストラップコンデンサCBの充電が不足すると、トランジスタQ2をオンすることができなくなり、電源供給が停止する、という問題があった。ブートストラップコンデンサCBの充電不足の原因としては、下記が挙げられる。
図3に示すように、例えば、入力電圧VINと出力電圧VOUTとの電位差が小さい場合、スイッチ端子TSWから出力されるパルス信号のデューティが高くなる。デューティが高くなると、スイッチ端子TSWの電位がLow(グランド電位)となる時間が短くなり、ブートストラップコンデンサCBの充電が不足する。
【0026】
また、負荷2に流れる負荷電流(
図2に示すコイルL1のリップル電流ΔIL1の1/2)が少ない場合、トランジスタQ1がオン、トランジスタQ2がオフのときに、コンデンサC1からコイルL1に向かう逆電流が発生する。その後、トランジスタQ1、Q2の双方がオフになると(デッドタイムDTになると)、逆電流がトランジスタQ2の寄生ダイオードを通じて入力端子TINに流れる。このため、
図3に示すように、デッドタイムDT中に、スイッチ端子TSWの電位が入力電圧VIN+寄生ダイオードの順方向電圧0.7V(Hレベル)となる。よって、ブートストラップコンデンサCBの充電時間が短くなり、ブートストラップコンデンサCBの充電が不足する。
【0027】
また、
図4に示すように、出力電圧VOUTが目標電圧を超えるなどして、パルス信号のパルススキップが発生して、スイッチング動作が停止してスイッチ端子TSWがハイインピーダンス状態となると、ブートストラップコンデンサCBの充電が不足する。
【0028】
そこで、本実施形態では、DC/DCコンバータ1は、
図1に示すように、放電部18と、ブート電圧検出部19と、充電制御部171とを備えている。放電部18は、放電抵抗R3と、トランジスタQ3とを備えている。放電抵抗R3は、フィードバック端子TFBとトランジスタQ3のドレインとの間に接続されている。トランジスタQ3は、ソースがグランドに接続され、ゲートが後述する充電制御部171に接続されている。トランジスタQ3がオンすると、出力部11の出力電流を放電抵抗R3に供給することができる。
【0029】
本実施形態では、ブート電圧検出部19は、第1電圧検出器191と、第2電圧検出器192と、第3電圧検出器193と、を備えている。第1~第3電圧検出器191~193は、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧を検出し、検出したブートストラップコンデンサCBの両端電圧と第1~第3閾値電圧(例えば第1閾値電圧=4V、第2閾値電圧=3V、第3閾値電圧=2V)との比較結果を充電制御部171に対して出力する。
【0030】
充電制御部171は、第1~第3電圧検出器191~193の比較結果に基づいてブートストラップコンデンサCBの両端電圧が第1~第3閾値電圧を下回る毎に下記の(A)~(C)の何れか1つを実行して、ブートストラップコンデンサCBの充電量を増やす制御を行う。
【0031】
(A)充電制御部171は、トランジスタQ3をオンして、出力部11の出力電流を放電抵抗R3に向かって電流を流す。この場合、
図3と
図5との比較からも明らかなように、出力電流が増加し、コイルL1に逆電流が流れるのを防ぐことができる。このため、トランジスタQ1、Q2の双方がオフのデッドタイムDT中に、スイッチ端子TSWの電位をLレベル(-0.7V)とすることができる。これにより、ブートストラップコンデンサCBの充電時間を長くすることができ、ブートストラップコンデンサCBの充電量を増やすことができる。
【0032】
(B)充電制御部171は、
図6に示すように、トランジスタQ1が常時オフとなるようにドライバ部131を制御すると共に、トランジスタQ2が誤差信号VFBに応じたデューティでオンオフするようにドライバ部132を制御する。この場合、
図3及び
図6の比較からも明らかなように、トランジスタQ2がオフ期間中、常にデッドタイムDTとなり、スイッチ端子TSWの電位を継続的に-0.7Vとすることができる。このため、ブートストラップコンデンサCBの充電時間を長くすると共に充電を早くすることができ、ブートストラップコンデンサCBの充電量を増やすことができる。
【0033】
(C)充電制御部171は、ドライバ部131,132から出力されるパルス信号のデューティサイクルを強制的に低下させるようドライバ部131,132を制御する。PWM制御部17は、発振器が内蔵され、発振器の発振周波数のパルス信号を誤差信号VFBに応じたデューティに変換してトランジスタQ1、Q2のゲートに出力する。そこで、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下している場合、充電制御部171は、発振器の周波数を下げて、ドライバ部131,132から出力されるパルス信号のデューティサイクルを強制的に低下させる。即ち、トランジスタQ1、Q3のオンオフ制御のデューティサイクルを低下させる。このため、ブートストラップコンデンサCBの充電時間を長くすることができ、ブートストラップコンデンサCBの充電量を増やすことができる。このように、デューティサイクルを強制的に低下させると出力電圧VOUTが低下する恐れがあるが、ブートストラップコンデンサCBの充電不足による電源の遮断という最悪の事態は回避することができる。
【0034】
本実施形態では、充電制御部171は、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が第1閾値電圧を下回ったとき、上記(A)の第1充電制御を実行する。また、充電制御部171は、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が第2閾値電圧を下回ったとき、上記(B)の第2充電制御を実行する。さらに、充電制御部171は、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が第3閾値電圧を下回ったとき、上記(C)の第3充電制御を実行する。
【0035】
上述した実施形態によれば、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下した場合、放電抵抗R3に出力部11の出力電流を流して、出力電流を増やして、ブートストラップコンデンサCBの充電量を増やすことができる。このため、ブートストラップコンデンサCBの充電不足を抑制し、電源停止を抑制することができる。
【0036】
上述した実施形態によれば、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下した場合、ローサイドNMOSトランジスタQ1を常時オフにして、ブートストラップコンデンサCBの充電量を増やすことができる。このため、ブートストラップコンデンサCBの充電不足を抑制し、電源停止を抑制することができる。
【0037】
上述した実施形態によれば、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下した場合、ドライバ部131,132から出力されるパルス信号のデューティサイクルを強制的に低下させて、ブートストラップコンデンサCBの充電量を増やすことができる。このため、ブートストラップコンデンサCBの充電不足を抑制し、電源停止を抑制することができる。
【0038】
上述した実施形態によれば、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が第1閾値電圧~第3閾値電圧を下回る毎に、充電制御部171は(A)の第1充電制御~(C)の第3充電制御を順番に実行する。これにより、より一層精度よく、ブートストラップコンデンサCBの充電不足を抑制し、電源停止を抑制することができる。
【0039】
なお、上述した第1実施形態では、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が第1閾値電圧~第3閾値電圧を下回る毎に(A)~(C)の順に実行していたが、これに限ったものではない。(A)~(C)の順番はどの順でもよい。
【0040】
また、上述した第1実施形態では、ブートストラップコンデンサCBの閾値電圧を3つ設けていたが、これに限ったものではない。閾値電圧を2つ設けて、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が閾値電圧を下回る毎に(A)~(C)のうち2つを順番に実行するようにしてもよい。また、閾値電圧を1つだけ設けて、コンデンサCBの両端電圧が閾値電圧を下回ると(A)~(C)のうち1つを実行するようにしてもよい。
【0041】
また、上述した第1実施形態では、充電制御部171は、(A)の第1充電制御~(C)の第2充電制御の1つを実行していたが、これに限ったものではない。充電制御部171は、(A)の第1充電制御~(C)の第2充電制御の2つ以上を同時に実行するようにしてもよい。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明に関する具体的な第2実施形態について、
図7を参照しながら以下に説明する。なお、
図7において、上述した第1実施形態で既に説明した
図1に示すDC/DCコンバータ1と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0043】
同図に示すように、DC/DCコンバータ1Bは、出力部11と、スイッチング電源装置12Bと、ブートストラップコンデンサCBとを備えている。出力部11、ブートストラップコンデンサCBについては、第1実施形態と同様のためここでは詳細な説明を省略する。
【0044】
スイッチング電源装置12Bは、第1実施形態で既に説明したトランジスタQ1、Q2と、ドライバ部131,132と、ブートストラップ部14と、出力電圧検出部15と、誤差検出部16と、PWM制御部17と、放電部18と、ブート電圧検出部19とに加えて、判定部としての過電圧判定部20、ソフトスタート判定部21およびパルススキップ判定部22と、OR回路23とを備えている。
【0045】
上述した第1実施形態では、充電制御部171は、コンデンサCBの両端電圧を直接検出して、コンデンサCBの両端電圧が低下していると判定して、上記(A)の第1充電制御~(C)の第3充電制御を実行していたが、これに限ったものではない。充電制御部171は、コンデンサCBの両端電圧が低下する可能性がある場合、上記(A)の第1充電制御~(C)の第3充電制御を実行するようにしてもよい。
【0046】
DC/DCコンバータ1には、出力電圧VOUTが過電圧となると、トランジスタQ1、Q2のスイッチング動作を停止させる機能が備わっている。スイッチング動作が停止されると、上述したパルススキップと同様に、ブートストラップコンデンサCBの充電不足が発生し、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下する恐れがある。そこで、本実施形態のスイッチング電源装置12Bは、過電圧判定部20を備えている。過電圧判定部20は、検出電圧VRが過電圧閾値を超えた場合、過電圧であると判定し、その旨をOR回路23に出力する。
【0047】
また、DC/DCコンバータ1の起動時(スタート時)は、ブートストラップコンデンサCBに電荷が蓄積されていないことが多く、また、入力電圧VINが低下していることもある。このため、コンデンサCBの両端電圧が低下する可能性が高い。そこで、本実施形態のスイッチング電源装置12Bは、ソフトスタート判定部21を備えている。DC/DCコンバータ1は、スタート時には基準電圧VREFを設定値よりも低くし、徐々に設定値まで高くするソフトスタート機能が備わっている。ソフトスタート判定部21は、基準電圧VREFが設定値よりも低ければ、ソフトスタート時であると判定し、その旨をOR回路23に出力する。
【0048】
また、上述したように出力電圧VOUTが目標電圧を越えてパルススキップが発生した場合も、ブートストラップコンデンサCBの充電不足が発生し、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下する恐れがある。そこで、本実施形態のスイッチング電源装置12Bは、パルススキップ判定部22を備えている。パルススキップ判定部22は、誤差信号VFBを監視し、出力電圧VOUTが目標電圧に達し、パルススキップが発生していると判定すると、その旨をOR回路23に出力する。
【0049】
OR回路23は、充電制御部171に接続されており、過電圧、ソフトスタート、パルススキップの何れか1つが発生していると判定された場合、その旨を充電制御部171に伝える。充電制御部171は、過電圧、ソフトスタート、パルススキップの何れか1つ以上が発生した場合、ブートストラップコンデンサCBの充電が不足している、または、これから不足する可能性があると判定し、上記(A)の第1充電制御~(C)の第2充電制御の少なくとも1つを実行する。
【0050】
上述した実施形態によれば、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧が低下する可能性が高い場合に、(A)の第1充電制御~(C)の第3充電制御の何れか1つを実行する。このため、ブートストラップコンデンサCBの充電不足を抑制し、電源停止を抑制することができる。
【0051】
なお、上述した第2実施形態によれば、スイッチング電源装置12Bは、過電圧判定部20、ソフトスタート判定部21、パルススキップ判定部22の3つの判定部を有しているが、これに限ったものではない。スイッチング電源装置12Bは、過電圧判定部20、ソフトスタート判定部21、パルススキップ判定部22のうち少なくとも1つ以上を有していればよい。
【0052】
また、上述した第2実施形態では、スイッチング電源装置12Bは、ブート電圧検出部19を有し、ブートストラップコンデンサCBの両端電圧と閾値電圧との比較に基づいて、(A)の第1充電制御~(C)の第3充電制御を実行していたが、これに限ったものではない。スイッチング電源装置12Bは、ブート電圧検出部19を備えていなくてもよく、判定部20~22の判定結果に応じてのみ(A)の第1充電制御~(C)の第3充電制御を実行するようにしてもよい。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
上述した実施形態によれば、出力部11は降圧型から構成されていたが、これに限ったものではない。出力部11は入力電圧を昇圧変換する昇圧型から構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
11 出力部
12 スイッチング電源装置
14 ブートストラップ部
17 PWM制御部(制御部)
19 ブート電圧検出部(電圧検出部)
20 過電圧判定部(判定部)
21 ソフトスタート判定部(判定部)
22 パルススキップ判定部(判定部)
171 充電制御部
CB ブートストラップコンデンサ
Q1 ローサイドNMOSトランジスタ
Q2 ハイサイドNMOSトランジスタ
Q3 トランジスタ(スイッチ)
R3 放電抵抗
VB ブート電圧
VIN 入力電圧
VOUT 出力電圧