(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145385
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】レジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231003BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20231003BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20231003BHJP
C08F 220/20 20060101ALI20231003BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/004 501
C07D333/76
C08F220/20
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044648
(22)【出願日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2022052470
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐々見 武志
(72)【発明者】
【氏名】提箸 正義
(72)【発明者】
【氏名】山田 健司
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J100
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CA06
2H197CA08
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2H197CA10
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF24P
2H225AF25P
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2H225AF29P
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2H225AH11
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2H225AH50
2H225AJ13
2H225AJ47
2H225AJ48
2H225AJ53
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2H225AN11P
2H225AN31P
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2H225AN62P
2H225AN65P
2H225BA02P
2H225BA26P
2H225BA29P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC03
2H225CC15
4J100AL03P
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100BA03Q
4J100BA50R
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4J100BC03P
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4J100DA39
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4J100GC25
4J100GC35
4J100JA38
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高解像度でラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)、エッチング耐性に優れるレジスト組成物を提供する。
【解決手段】一般式(p-1)、(a-1)、(b-1)の単位を有する樹脂(A)と、一般式(p-2)、(a-1)、(b-1)の単位を有する樹脂(B)と、溶剤(D)を含むレジスト組成物であって、樹脂(A)の含有量は、樹脂(B)の含有量より少ないレジスト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(p-1)で表される繰り返し単位、下記一般式(a-1)で表される酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位、及び下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(A)と、
下記一般式(p-2)で表される繰り返し単位、下記一般式(a-1)で表される酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位、及び下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(B)と、
溶剤(D)と、
を含むレジスト組成物であって、
前記レジスト組成物に含まれる前記樹脂(A)の含有量は、前記樹脂(B)の含有量より少ないものであることを特徴とするレジスト組成物。
【化1】
(一般式(p-1)中、R
1は、水素原子、又はメチル基である。
Z
1は、単結合、フェニレン基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-、-C(=O)-NH-Z
11-、-Z
12-Ph-、-Z
12-O-Ph-、又は-Z
12-C(=O)-O-Ph-である。Z
11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
12は炭素数1~15の炭化水素基、Phはフェニレン基である。
R
2~R
3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基、又はフェニル基である。
M
0-は、非求核性対向イオンである。
一般式(p-2)中、R
4は、水素原子、又はメチル基である。
Z
2は、単結合、フェニレン基、-O-Z
21-、-C(=O)-O-Z
21-、-Z
21-C(=O)-O-、又は-C(=O)-NH-Z
21-である。Z
21は、単結合、炭素数1~20のアルカンジイル基若しくは炭素数2~20のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
M
1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンを示す。
R
5は、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
一般式(a-1)中、R
6は、水素原子、又はメチル基である。
Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する基である。
一般式(b-1)中、R
7は、水素原子、又はメチル基である。
Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、エステル結合、アミド結合、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-である。Z
31は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。
n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。
R
8は、ハロゲン原子、又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状もしくは環状の炭化水素基であって、これらを構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-O-もしくは-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(p-1)中の非求核性対向イオンM
0-は、下記一般式(e-0)で表されることを特徴とする請求項1に記載のレジスト組成物。
【化2】
(一般式(e-0)中、R
8b、R
9は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。
R
10は、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。)
【請求項3】
前記樹脂(A)および前記樹脂(B)がラクトン構造を有する繰り返し単位を含まないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト組成物。
【請求項4】
前記レジスト組成物は、さらに樹脂(C)を含むものであって、該樹脂(C)は酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位を含まないものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記樹脂(C)は下記一般式(c-1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項4に記載のレジスト組成物。
【化3】
(一般式(c-1)中、R
11は、水素原子、又はメチル基である。
X
1は、単結合または2価の連結基であって、炭素数1~10の2価炭化水素基、フッ素化フェニレン基、-O-X
11-、-C(=O)-O-X
11-又は-C(=O)-NH-X
11-のいずれかである。X
11は、炭素数1~20のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。)
【請求項6】
前記レジスト組成物は、下記一般式(e-1)で表されるオニウム塩(E)をさらに含むものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【化4】
(一般式(e-1)中、R
12~R
13は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、フッ素原子を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又はトリフルオロメチル基を示す。
R
14は、水素原子、水酸基、エーテル結合及びエステル結合を含んでもよい炭素数1~20の直鎖状もしくは炭素数3~20の分岐状もしくは環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。
M
2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンを示す。)
【請求項7】
前記溶剤(D)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールジメチルエーテル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンのうち2種または3種から選ばれる混合溶剤であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【請求項8】
パターン形成方法であって、
(i)請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
(ii)前記レジスト膜を波長248nmのKrFエキシマーレーザー、波長193nmのArFエキシマーレーザー、波長13.5nmのEUVリソグラフィー、又は電子ビームにより露光する工程と、
(iii)前記露光したレジスト膜をアルカリ現像液で現像する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特にフラッシュメモリ市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としては、ArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率のレンズ、高屈折率材料を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの極端紫外線(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの二重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)などが候補であり、検討が進められている。
【0003】
高エネルギー線において解像度や寸法制御性を向上させるために、レジスト膜が低感度になる傾向がある。レジスト膜の感度低下は生産性の低下につながり、好ましいことではない。高感度化の要求から、化学増幅型レジスト材料が検討されている。
【0004】
微細化の進行とともに、ラインパターンのエッジラフネス(ラインエッジラフネス:LERやラインウィドスラフネス:LWR)及びホールパターンの寸法均一性(クリティカルディメンションユニフォミティ:CDU)が問題視されている。ベースポリマーの現像液に対する溶解コントラストや酸発生剤の偏在や凝集の影響や、酸拡散の影響が指摘されている。さらにレジスト膜の薄膜化にしたがってLERが大きくなる傾向があり、微細化の進行に伴う薄膜化によるLERやエッチング耐性の劣化は深刻な問題なっている。
【0005】
特許文献1には、ポジ型の微細なラインパターン形成においては、光酸発生剤をアニオンのモノマーでベースポリマーに導入することで、酸拡散を抑えて解像性に優れることが開示されている。
【0006】
特許文献2では光酸発生剤をカチオンでポリマーに導入しているが、酸拡散を抑えることができず、上記のLERの改善は難しいことが開示されている。
【0007】
特許文献3には、α位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸を発生する光酸発生剤を含有する高分子化合物とスルホン酸のα位にフッ素で置換されていないアルカンスルホン酸を発生する酸発生剤とを併用することで、ホールパターンやトレンチパターンの焦点深度と真円性やLWRを改善させることが開示されている。この効果は、α位がフッ素化置換されたアルカンスルホン酸は、フッ素化置換されていないアルカンスルホン酸に比べて酸強度が高いことに起因している。
【0008】
これらの先行技術は、露光によって光酸発生剤から発生した強酸が弱酸オニウム塩と塩交換し、強酸オニウム塩を形成することで酸性度の高い強酸から弱酸に置き換わって酸不安定基の酸発生分解反応を抑制し酸拡散距離を小さくするものであると考察される。つまり、弱酸オニウム塩は露光により生じた強酸に対してクエンチャー(酸失活剤)として機能すると考えられる。アミン類などの含窒素化合物に比べ、弱酸オニウム塩は、一般に不揮発性であるためレジスト膜形成時やパターニングする際のベークプロセス中にレジスト膜表層の濃度変化を防ぐことができ、パターンの矩形形成を良好にする。
【0009】
特許文献4には、アルカンスルホン酸オニウムを用いた場合では、カルボン酸オニウム塩に比べ酸性度が十分低くないためクエンチャー能が低く、解像性、エッジラフネス、焦点深度などが満足できないことが開示されている。
【0010】
感度と解像性のトレードオフの観点から、より解像性やLERやCDUを抑えるために、高露光量域でのパターン形成が望まれることがある。上記のようなアニオンのモノマーでポリマーに導入したポリマーでは、光酸発生剤の分解物が多くなり生成したアニオンのせいでベースポリマーのアルカリ現像液の溶解性が光分解性基を含まないベースポリマーに比べてあがってしまう。露光によるポリマーのアニオン部位のアルカリ現像液への溶解性が、酸不安定基の脱離による溶解性とずれる場合、溶解コントラストを低下させてしまう問題点がある。また酸拡散を抑えるために酸拡散抑制剤の添加量が増えると、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性があがり溶解コントラストが低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009-263487号公報
【特許文献2】特平04-230645号公報
【特許文献3】特開2012-137518号公報
【特許文献4】特開2015-054833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、高露光量領域であっても従来のレジスト材料を上回る高解像度でラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明では、
下記一般式(p-1)で表される繰り返し単位、下記一般式(a-1)で表される酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位、及び下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(A)と、
下記一般式(p-2)で表される繰り返し単位、下記一般式(a-1)で表される酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位、及び下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(B)と、
溶剤(D)と、
を含むレジスト組成物であって、
前記レジスト組成物に含まれる前記樹脂(A)の含有量は、前記樹脂(B)の含有量より少ないものであるレジスト組成物を提供する。
【化1】
(一般式(p-1)中、R
1は、水素原子、又はメチル基である。
Z
1は、単結合、フェニレン基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-、-C(=O)-NH-Z
11-、-Z
12-Ph-、-Z
12-O-Ph-、又は-Z
12-C(=O)-O-Ph-である。Z
11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
12は炭素数1~15の炭化水素基、Phはフェニレン基である。
R
2~R
3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基、又はフェニル基である。
M
0-は、非求核性対向イオンである。
一般式(p-2)中、R
4は、水素原子、又はメチル基である。
Z
2は、単結合、フェニレン基、-O-Z
21-、-C(=O)-O-Z
21-、-Z
21-C(=O)-O-、又は-C(=O)-NH-Z
21-である。Z
21は、単結合、炭素数1~20のアルカンジイル基若しくは炭素数2~20のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
M
1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンを示す。
R
5は、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
一般式(a-1)中、R
6は、水素原子、又はメチル基である。
Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する基である。
一般式(b-1)中、R
7は、水素原子、又はメチル基である。
Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、エステル結合、アミド結合、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-である。Z
31は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。
n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。
R
8は、ハロゲン原子、又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状もしくは環状の炭化水素基であって、これらを構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-O-もしくは-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子で置換されていてもよい。)
【0014】
このようなレジスト組成物であれば、アニオンが導入されたベースポリマーとカチオンが導入されたベースポリマーでポリマー間のイオン性の相互作用のため、見かけの分子量が大きいポリマー複合体を形成させ剛直な膜を形成させることができるため、高露光量領域であっても、アルカリ現像液の溶解性を抑え、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジスト膜を提供できる。
【0015】
また、本発明のレジスト組成物は、前記一般式(p-1)中の非求核性対向イオンM
0-が、下記一般式(e-0)で表されるものであることが好ましい。
【化2】
(一般式(e-0)中、R
8b、R
9は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。
R
10は、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。)
【0016】
このようなレジスト組成物であれば、現像後のパターンの矩形性や、エッジラフネスに優れるレジスト組成物を提供することができる。
【0017】
また、本発明のレジスト組成物は、前記樹脂(A)および前記樹脂(B)がラクトン構造を有する繰り返し単位を含まないものであることが好ましい。
【0018】
このようなレジスト組成物であれば、パターンへのアルカリ現像液のしみこみを抑えることで膨潤を抑制し、更に好ましい形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0019】
また、本発明のレジスト組成物は、さらに樹脂(C)を含むものであって、該樹脂(C)は酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位を含まないものであることが好ましい。
【0020】
このようなレジスト組成物であれば、スピンコートによる塗布レジスト膜のウェハ面内の膜厚均一性を向上させることができる。
【0021】
また、前記樹脂(C)は下記一般式(c-1)で表される繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
【化3】
(一般式(c-1)中、R
11は、水素原子、又はメチル基である。
X
1は、単結合または2価の連結基であって、炭素数1~10の2価炭化水素基、フッ素化フェニレン基、-O-X
11-、-C(=O)-O-X
11-又は-C(=O)-NH-X
11-のいずれかである。X
11は、炭素数1~20のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。)
【0022】
このようなフルオロアルコール構造を有するポリマーを含むレジスト組成物であれば、レジスト膜の塗布均一性を向上させ、アルカリ現像液への溶解を促進させることができる。
【0023】
また、本発明のレジスト組成物は、下記一般式(e-1)で表されるオニウム塩(E)をさらに含むものであることが好ましい。
【化4】
(一般式(e-1)中、R
12~R
13は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、フッ素原子を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又はトリフルオロメチル基を示す。
R
14は、水素原子、水酸基、エーテル結合及びエステル結合を含んでもよい炭素数1~20の直鎖状もしくは炭素数3~20の分岐状もしくは環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。
M
2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンを示す。)
【0024】
このような低分子量の塩を添加することで、アニオンが導入されたベースポリマーとカチオンが導入されたベースポリマーでポリマー間のイオン性相互作用できるポリマー複合体の形成を阻害でき、見かけの分子量を調整できる。
【0025】
また、前記溶剤(D)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールジメチルエーテル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンのうち2種または3種から選ばれる混合溶剤であることが好ましい。
【0026】
このような溶剤を使用すれば、塗布性に優れるレジスト組成物を提供することができる。
【0027】
また、本発明は、
パターン形成方法であって、
(i)上記レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
(ii)前記レジスト膜を波長248nmのKrFエキシマーレーザー、波長193nmのArFエキシマーレーザー、波長13.5nmのEUVリソグラフィー、又は電子ビームにより露光する工程と、
(iii)前記露光したレジスト膜をアルカリ現像液で現像する工程と、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0028】
このようなパターン形成方法であれば、ポリマー複合体を形成し、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のレジスト組成物は、感度と解像性のトレードオフを鑑み、解像性を追求した高露光量域であっても、光酸発生剤のアニオンが導入されたベースポリマーを使用してもアルカリ現像液に対する溶解性を抑え溶解コントラストを維持し、高解像で、露光後の良好なパターン形状とエッジラフネスを示す。従って、特に超LSI製造用あるいはEUV露光用のパターン形成材料として好適なレジスト組成物、特には化学増幅型レジスト組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述のように、高解像度を追求した結果、露光量が増大してもエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジストパターンを形成することができるレジスト組成物の開発が求められていた。
【0031】
上記目的を達成するために鋭意検討をおこなった結果、アニオンが導入されたベースポリマーとカチオンが導入されたベースポリマーでポリマー間のイオン性の相互作用のため、見かけの分子量が大きいポリマー複合体を形成させ剛直な膜を形成でき、高露光量領域であっても、アルカリ現像液の溶解性を抑え、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、パターン形状が良好な微細加工を可能にすることを知見し、本発明に至った。
【0032】
即ち、本発明は、
下記一般式(p-1)で表される繰り返し単位、下記一般式(a-1)で表される酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位、及び下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(A)と、
下記一般式(p-2)で表される繰り返し単位、下記一般式(a-1)で表される酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位、及び下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(B)と、
溶剤(D)と、
を含むレジスト組成物であって、
前記レジスト組成物に含まれる前記樹脂(A)の含有量は、前記樹脂(B)の含有量より少ないものであるレジスト組成物である。
【化5】
(一般式(p-1)中、R
1は、水素原子、又はメチル基である。
Z
1は、単結合、フェニレン基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-、-C(=O)-NH-Z
11-、-Z
12-Ph-、-Z
12-O-Ph-、又は-Z
12-C(=O)-O-Ph-である。Z
11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
12は炭素数1~15の炭化水素基、Phはフェニレン基である。
R
2~R
3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基、又はフェニル基である。
M
0-は、非求核性対向イオンである。
一般式(p-2)中、R
4は、水素原子、又はメチル基である。
Z
2は、単結合、フェニレン基、-O-Z
21-、-C(=O)-O-Z
21-、-Z
21-C(=O)-O-、又は-C(=O)-NH-Z
21-である。Z
21は、単結合、炭素数1~20のアルカンジイル基若しくは炭素数2~20のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
M
1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンを示す。
R
5は、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
一般式(a-1)中、R
6は、水素原子、又はメチル基である。
Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する基である。
一般式(b-1)中、R
7は、水素原子、又はメチル基である。
Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、エステル結合、アミド結合、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-である。Z
31は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。
n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。
R
8は、ハロゲン原子、又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状もしくは環状の炭化水素基であって、これらを構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-O-もしくは-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子で置換されていてもよい。)
【0033】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
[レジスト組成物]
本発明のレジスト組成物は、下記一般式(p-1)で表される繰り返し単位、下記一般式(a-1)で表される酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位、及び下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(A)と、
下記一般式(p-2)で表される繰り返し単位、下記一般式(a-1)で表される酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位、及び下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(B)と、
溶剤(D)と、を含み、前記樹脂(A)の含有量は、前記樹脂(B)の含有量より少ないレジスト組成物を提供する。
【化6】
(一般式(p-1)中、R
1は、水素原子、又はメチル基である。
Z
1は、単結合、フェニレン基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-、-C(=O)-NH-Z
11-、-Z
12-Ph-、-Z
12-O-Ph-、又は-Z
12-C(=O)-O-Ph-である。Z
11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
12は炭素数1~15の炭化水素基、Phはフェニレン基である。
R
2~R
3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基、又はフェニル基である。
M
0-は、非求核性対向イオンである。
一般式(p-2)中、R
4は、水素原子、又はメチル基である。
Z
2は、単結合、フェニレン基、-O-Z
21-、-C(=O)-O-Z
21-、-Z
21-C(=O)-O-、又は-C(=O)-NH-Z
21-である。Z
21は、単結合、炭素数1~20のアルカンジイル基若しくは炭素数2~20のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
M
1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンを示す。
R
5は、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
一般式(a-1)中、R
6は、水素原子、又はメチル基である。
Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する基である。
一般式(b-1)中、R
7は、水素原子、又はメチル基である。
Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、エステル結合、アミド結合、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-である。Z
31は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。
n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。
R
8は、ハロゲン原子、又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状もしくは環状の炭化水素基であって、これらを構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-O-もしくは-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子で置換されていてもよい。)
【0035】
上記高分子化合物は、高エネルギー線や熱などに感応し、酸を発生する。
なお、本発明における高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、電子線、EUV(極端紫外線)、X線、エキシマ-レーザー、ガンマ線、シンクロトロン放射線等が挙げられる。
【0036】
下記のように、それぞれの上記繰り返し単位に応じた特性が、この組成物から得られるレジスト膜に与えられる。
【0037】
繰り返し単位(a-1)の酸不安定基を有する(メタ)アクリル酸エステルはある程度コンパクトな酸不安定基であるほうが、発生した酸で酸不安定基が脱離したあと、アルカリ現像液での膨潤量が少なくパターン倒れが少ない。
【0038】
また、本発明のような光酸発生剤のアニオン部位を高分子化合物に有するレジスト組成物であれば、繰り返し単位(p-2)は従来の添加型の光酸発生剤に比べて、酸拡散を抑える効果が高く、高解像性で露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好なレジスト組成物を提供できる。上記繰り返し単位(p-2)は、酸不安定基を有する(メタ)アクリル酸エステルを150℃以下の温度でベークすることで酸不安定基が脱離できる程度の酸性度を有する。
【0039】
従来は、弱酸性基のアニオン部位を高分子化合物に有することで、レジスト用溶剤の溶解性が著しく悪く、ポリマー合成中に凝集してしまい弱酸性基のアニオン部位を有する繰り返し単位を高比率での導入が困難であった。そのため、本発明はカチオン部位を高分子化合物に有することで溶剤溶解性に優れ、弱酸との塩を形成できる。膜内の分布とプロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好である。
【0040】
本発明のレジスト組成物は、上記の繰り返し単位(p-2)のアニオンが導入されたベースポリマーと繰り返し単位(p-1)のカチオンが導入されたベースポリマーを混合させることでポリマー間のイオン性の相互作用のため、剛直な膜を形成できる。高露光量領域であっても、アルカリ現像液の溶解性を抑え、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、パターン形状が良好である。
【0041】
本発明のレジスト組成物に含まれ得る繰り返し単位(p-1)のクエンチャー成分として、αフルオロアルカンスルホン酸に比べて弱い酸のオニウム塩と組み合わせることで、アミン類などの含窒素化合物に比べ、弱酸オニウム塩は、一般に不揮発性であるためレジスト膜形成時やパターニングする際のベークプロセス中にレジスト膜表層の濃度変化を防ぐことができ、矩形形成を良好にできる。さらに弱酸オニウム塩にα位にフッ素原子をもたないアルカンスルホン酸より酸性度が低くクエンチャー能の高いカルボン酸オニウム塩(e-1)を用いることで、酸拡散を抑える効果が高く、高解像性で露光余裕度があり、プロセス適応性に優れる。弱酸オニウム塩を加えることでアニオンが導入されたベースポリマーとカチオンが導入されたベースポリマーのポリマー間のイオン性の相互作用を阻害し、レジスト性能として適切な複合物として調整できる。
【0042】
アルカリ現像液での溶解コントラストという観点では、本発明のレジスト組成物は、カルボン酸が発生する酸不安定基で保護された(メタ)アクリレートが分解し、アニオン部位が生成するか、露光によりカチオンが分解し、アニオン部位が生成するポリマーがアルカリ現像液中で溶解性が促進する。低露光量でポリマーの酸不安定基が脱離する場合は、露光によりカチオンが分解し、アニオン部位が生成して溶解性への寄与を無視できるが、露光量が大きくなると露光によりカチオンが分解し、アニオン部位が生成して溶解性への寄与を無視できなくなるときがある。
【0043】
繰り返し単位(b-1)のフェノール基はEB、EUVに増感作用があり、アルカリ現像液中での膨潤抑制効果がある。フェノール基を高分子化合物に有することで、レジスト組成物に露光時の二次電子の発生効率と増感作用が高まり、酸発生剤の分解効率が高まって感度が向上する。
【0044】
本発明のレジスト組成物に含まれる溶剤において、極性溶剤の比率を上げることで、上記のアニオンが導入されたベースポリマーとカチオンが導入されたベースポリマーを混合させたものの従来のレジスト用溶剤への溶解性が低くなることを抑え、溶解性を向上させることができる。
【0045】
本発明のレジスト組成物は、上記構成を有することにより、高露光量領域であっても、アルカリ現像液の溶解性を抑え、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、良好なパターン形状を形成できるレジスト組成物となる。
【0046】
以下、本発明のレジスト組成物の各構成成分について説明する。
【0047】
<樹脂(A)>
[繰り返し単位(p-1)]
本発明のレジスト組成物を構成する樹脂(A)は、下記一般式(p-1)を繰り返し単位として有する。
【0048】
【化7】
(一般式(p-1)中、R
1は、水素原子、又はメチル基である。
Z
1は、単結合、フェニレン基、-O-Z
11-、-C(=O)-O-Z
11-、-C(=O)-NH-Z
11-、-Z
12-Ph-、-Z
12-O-Ph-、又は-Z
12-C(=O)-O-Ph-である。Z
11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Z
12は炭素数1~15の炭化水素基、Phはフェニレン基である。
R
2~R
3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基、又はフェニル基である。
M
0-は、非求核性対向イオンである。)
【0049】
繰り返し単位(p-1)を与えるモノマーとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
【0051】
非求核性対向イオンM0-としては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のスルホンイミドのイオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のスルホンメチド、トリフルオロメチルカルボキシレート、ノナフルオロブタンカルボキシレート等のフルオロアルキルカルボキシレート、メチルカルボキシレート、ベンゼンカルボキシレート等のアルキルカルボキシレートが挙げられる。
【0052】
非求核性対向イオンM0-としては構造を以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
【0054】
イオンM0-としては下記一般式(e-0)で表される構造が好ましい。
【0055】
【化10】
(一般式(e-0)中、R
8b、R
9は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。
R
10は、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖状、炭素数3~20の分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。)
【0056】
具体的な(e-0)で表される構造を以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
【0058】
【0059】
カルボン酸は、スルホン酸のα位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸を発生するスルホニウム塩、スルホン酸のα位がフッ素で置換されていないアルカンスルホン酸に比べて酸強度が小さい。このため、カルボン酸のカチオンが、例えば繰り返し単位(p-2)を有する高分子化合物のような高分子化合物に含まれるα位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸と塩交換するため、あたかもクエンチャーのように働く。より酸強度が小さいカルボン酸はクエンチ能が大きくコントラストが増大するため、現像後のパターンの矩形性や、エッジラフネスに優れる。
【0060】
本発明のレジスト組成物を構成する高分子化合物の、全繰り返し単位の和を1としたとき、繰り返し単位(p-1)の組成比(繰り返し単位の比率)は、0<(p-1)≦0.5、好ましくは0.05≦(p-1)≦0.15の範囲である。
【0061】
[繰り返し単位(a-1)]
本発明のレジスト組成物を構成する高分子化合物は、酸の作用で極性が変化する下記一般式(a-1)で表される繰り返し単位を有する。
【化13】
(一般式(a-1)中、R
6は、水素原子、又はメチル基である。
Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する基である。)
【0062】
繰り返し単位(a-1)を与えるモノマーの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化14】
【0063】
[繰り返し単位(b-1)]
本発明のレジスト組成物を構成する高分子化合物は、下記一般式(b-1)で表される繰り返し単位を有する。
【化15】
(一般式(b-1)中、R
7は、水素原子、又はメチル基である。
Z
3は、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、エステル結合、アミド結合、-O-Z
31-、-C(=O)-O-Z
31-又は-C(=O)-NH-Z
31-である。Z
31は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。
n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。
R
8は、ハロゲン原子、又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状もしくは環状の炭化水素基であって、これらを構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-O-もしくは-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子、ハロゲン原子もしくはヘテロ原子で置換されていてもよい。)
【0064】
一般式(b-1)の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化16】
【0065】
フェノール性水酸基を含む化合物は増感効果があるため、本発明のレジスト組成物は、感度とCDUに優れる。
【0066】
[ラクトン構造]
樹脂(A)は、ラクトン構造を有する繰り返し単位を含んでもよい。
また、樹脂(A)は、ラクトン構造を有する繰り返し単位を含まなくてもよい。
【0067】
樹脂(A)がラクトン構造を有しないレジスト組成物であれば、パターンへのアルカリ現像液のしみこみを抑えることで膨潤を抑制し、より好ましい形状のレジストパターンを提供することができる。
【0068】
樹脂(A)中の全繰り返し単位の和を1としたとき、繰り返し単位(p-1)の比率は、0.05≦(p-1)≦0.15が好ましく、繰り返し単位(a-1)の比率は、0.4<(a-1)≦0.7が好ましく、繰り返し単位(b-1)の比率は、0.20<(b-1)≦0.45が好ましい。
【0069】
<樹脂(B)>
[繰り返し単位(p-2)]
本発明のレジスト組成物を構成する樹脂(B)は、下記一般式(p-2)で表される繰り返し単位を有する。
【0070】
【化17】
(一般式(p-2)中、R
4は、水素原子、又はメチル基である。
Z
2は、単結合、フェニレン基、-O-Z
21-、-C(=O)-O-Z
21-、-Z
21-C(=O)-O-、又は-C(=O)-NH-Z
21-である。Z
21は、単結合、炭素数1~20のアルカンジイル基若しくは炭素数2~20のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。
M
1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンを示す。
R
5は、水素原子又はトリフルオロメチル基である。)
【0071】
(p-2)のM1+を除くアニオンを導入した繰り返し単位モノマーの構造として以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
【0073】
M1+のスルホニウムカチオンとして、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、nBuはn-ブチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【0074】
M1+のヨードニウムカチオンとして、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、tBuはtert-ブチル基であり、Phはフェニル基である。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
M
1+のアンモニウムカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化22】
【0079】
本発明のレジスト組成物を構成する高分子化合物の、全繰り返し単位の和を1としたとき、繰り返し単位(p-2)の組成比(繰り返し単位の比率)は、0<(p-2)≦0.5、好ましくは0.1≦(p-2)≦0.25の範囲である。
【0080】
ポリマー主鎖に光酸発生剤のアニオン構造を有することによって酸拡散を小さくし、酸拡散のぼけによる解像性の低下を防止できる。また、酸発生剤が均一に分散することによってエッジラフネス(LER、LWR)が改善される。
【0081】
[繰り返し単位(a-1)]
繰り返し単位(a-1)としては、上述の樹脂(A)のところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0082】
[繰り返し単位(b-1)]
繰り返し単位(b-1)としては、上述の樹脂(A)のところで説明したものと同様のものとすることができる。
【0083】
[ラクトン構造]
樹脂(B)は、ラクトン構造を有する繰り返し単位を含んでもよい。
また、樹脂(B)は、ラクトン構造を有する繰り返し単位を含まなくてもよい。
【0084】
樹脂(B)がラクトン構造を有しないレジスト組成物であれば、パターンへのアルカリ現像液のしみこみを抑えることで膨潤を抑制し、より好ましい形状のレジストパターンを提供することができる。
樹脂(B)中の全繰り返し単位の和を1としたとき、繰り返し単位(p-2)の比率は、0.1≦(p-2)≦0.25が好ましく、繰り返し単位(a-1)の比率は、0.4≦(a-1)<0.7が好ましく、繰り返し単位(b-1)の比率は、0.2<(b-1)≦0.4が好ましい。
【0085】
<樹脂(C)>
本発明のレジスト組成物は、さらに樹脂(C)を含んでもよく、該樹脂(C)は酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる繰り返し単位を含まないものであることが好ましい。樹脂(C)を含むレジスト組成物であれば、スピンコートによる塗布レジスト膜のウェハ面内の膜厚均一性を向上させることができる。
【0086】
また、上記樹脂(C)は下記一般式(c-1)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【化23】
(一般式(c-1)中、R
11は、水素原子、又はメチル基である。
X
1は、単結合または2価の連結基であって、炭素数1~10の2価炭化水素基(メチレン基、エチレン基、フェニレン基など)、フッ素化フェニレン基、-O-X
11-、-C(=O)-O-X
11-又は-C(=O)-NH-X
11-のいずれかである。X
11は、炭素数1~20のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。)
【0087】
このようなフルオロアルコール構造を有するポリマーを添加することで、レジスト膜の塗布均一性を向上させ、アルカリ現像液への溶解を促進させることができる。
【0088】
上記一般式(c-1)で表される繰り返し単位としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化24】
レジスト組成物中の樹脂(A)、樹脂(C)の比率は、前記樹脂(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対し、樹脂(A)の比率は10質量部を超え50質量部未満であることが好ましく、樹脂(C)の比率は、0質量部を超え20質量部未満であることが好ましく、3質量部を超え8質量部未満であることがより好ましい。
【0089】
<オニウム塩(E)>
本発明のレジスト組成物は下記一般式(e-1)で示されるオニウム塩(E)を含んでもよい。
【化25】
(一般式(e-1)中、R
12~R
13は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、フッ素原子を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基、又はトリフルオロメチル基を示す。
R
14は、水素原子、水酸基、エーテル結合及びエステル結合を含んでもよい炭素数1~20の直鎖状もしくは炭素数3~20の分岐状もしくは環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。
M
2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンを示す。)
【0090】
一般式(e-1)中のアニオン構造の具体例としては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化26】
【0091】
【0092】
上記一般式(e-1)のカチオン構造M2+としてのスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンはM1+と同様の構造を示すことができるが、これらに限定されない。
【0093】
これらオニウム塩(E)の添加量は、レジスト組成物中の樹脂(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対し0以上40質量部以下であり、0.1~40質量部であることが好ましく、更には0.1~20質量部であることが好ましい。上記範囲内であれば解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがない。
【0094】
カルボン酸は、スルホン酸のα位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸を発生するスルホニウム塩、スルホン酸のα位がフッ素で置換されていないアルカンスルホン酸に比べて酸強度が小さい。このため、カルボン酸のカチオンが、例えば繰り返し単位(p-2)を有する高分子化合物のような高分子化合物に含まれるα位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸と塩交換するため、あたかもクエンチャーのように働く。より酸強度が小さいカルボン酸はクエンチ能が大きくコントラストが増大するため、現像後のパターンの矩形性や、エッジラフネスに優れる。
【0095】
[溶剤(D)]
本発明で使用される溶剤としては、高分子化合物、光酸発生剤、クエンチャー、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル-2-n-アミルケトン等のケトン類、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、2-ヒドロキシ酪酸エチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0096】
本発明ではこれらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の塩構造含有ポリマーの溶解性が特に優れている1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0097】
本発明のレジスト組成物に含有される溶剤(D)は、極性が高い溶剤の比率が高いことが好ましく、そのような溶剤を用いると、樹脂(A)と樹脂(B)を混合させても溶解性が低くならず、塗布時にストリエーションが発生せず、膜厚の均一性が悪くならない。
【0098】
本発明における有機溶剤の使用量は、樹脂(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対して200~7,000質量部が好適であり、特に300~5,000質量部がより好適である。
【0099】
本発明に含まれる溶剤は、塗布性に優れるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどとの混合溶液が好ましく、有機溶剤の使用量は、この溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に限定すれば、樹脂(A)と樹脂(B)の合計100質量部に対して200~4,000質量部が好適であり、特に300~3,000質量部がより好適である。
【0100】
[その他の成分]
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、他のクエンチャーとして含窒素化合物、界面活性剤などを含むことができる。
【0101】
(含窒素化合物)
本発明は、クエンチャーとして含窒素化合物を添加することもできる。これを添加することにより、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる。このような含窒素化合物としては、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載の一級、二級、三級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物を挙げることができる。また、特許第3790649号公報に記載の化合物のように、一級又は二級アミンをカーバメート基として保護した化合物も挙げることができる。
【0102】
なお、これらクエンチャーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.001~12質量部、特に0.01~8質量部が好ましい。クエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制し、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。また、これらクエンチャーを添加することで基板密着性を向上させることもできる。
【0103】
また、本発明のレジスト組成物は、含窒素置換基を有する光酸発生剤を含んでもよい。このような化合物は、未露光部ではクエンチャーとして機能し、露光部は自身の発生酸との中和によってクエンチャー能を失う、いわゆる光崩壊性塩基として機能する。光崩壊性塩基を用いることによって、露光部と未露光部のコントラストをより強めることができる。光崩壊性塩基としては、例えば特開2009-109595号公報、特開2012-46501号公報等を参考にすることができる。
【0104】
(界面活性剤)
本発明のレジスト組成物中には界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)を挙げることができ、例えば、特開2010-215608号公報や特開2011-16746号公報に記載の(S)定義成分を参照することができる。
水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、上記公報に記載の界面活性剤の中でもFC-4430、サーフロンS-381、サーフィノールE1004、KH-20、KH-30、及び下記構造式(surf-1)にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0105】
【0106】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、上述の記載に拘わらず、上記式(surf-1)のみに適用される。Rは二~四価の炭素数2~5の脂肪族基を示し、具体的には二価のものとしてエチレン、1,4-ブチレン、1,2-プロピレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,5-ペンチレンが挙げられ、三価又は四価のものとしては下記のものが挙げられる。
【0107】
【化29】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0108】
これらの中で好ましく用いられるのは、1,4-ブチレン又は2,2-ジメチル-1,3-プロピレンである。Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは0~3の整数、nは1~4の整数であり、nとmの和はRの価数を示し、2~4の整数である。Aは1、Bは2~25の整数、Cは0~10の整数を示す。好ましくはBは4~20の整数、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書などに詳しい。
【0109】
水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光においてレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する。そのため、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げるために有用であり、また、露光後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)後のアルカリ現像時には可溶化し、欠陥の原因となる異物にもなり難いため有用である。このような界面活性剤は、水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な性質であり、高分子型の界面活性剤であって、疎水性樹脂とも呼ばれる。ドライ露光であっても、表面難溶層の溶解性を改善できるため、欠陥を低減させる。特にアルカリ現像液溶解性を向上させるものが好ましい。また塗布膜の膜厚均一性を向上させる効果もある。
【0110】
樹脂(C)はこのような高分子型界面活性剤であり、以下に示すもの等が挙げられる。
【化30】
【0111】
式中、Re1は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Re2は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~20の、アルキル基若しくはフッ素化アルキル基であり、同一繰り返し単位内のRe2は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、この場合、合計して直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~20の、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。
【0112】
Re3は、水素原子若しくはフッ素原子であり、又はRe4と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3~10の非芳香環を形成してもよい。Re4は、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキレン基であり、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。Re5は、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状の炭素数1~10のアルキル基であり、Re4とRe5とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、この場合、Re4、Re5及びこれらが結合する炭素原子で炭素数3~12の3価の有機基を形成する。Re6は、単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基である。
【0113】
Re7は、それぞれ独立に、単結合、-O-又は-CRe1Re1-である。Re8は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~4のアルキレン基であり、同一繰り返し単位内のRe2と結合して、これらが結合する炭素原子と共に炭素数3~6の非芳香環を形成してもよい。
【0114】
Re9は、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基又は1,4-ブチレン基である。Re10は、直鎖状の炭素数3~6のパーフルオロアルキル基、3H-パーフルオロプロピル基、4H-パーフルオロブチル基、5H-パーフルオロペンチル基又は6H-パーフルオロヘキシル基である。
【0115】
Leは、それぞれ独立に、-C(=O)-O-、-O-又は-C(=O)-Re11-C(=O)-O-であり、Re11は、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~10のアルキレン基である。
【0116】
また、0≦(a’-1)≦1、0≦(a’-2)≦1、0≦(a’-3)≦1、0≦b’≦1、及び0≦c’≦1であり、0<(a’-1)+(a’-2)+(a’-3)+b’+c’≦1である。
【0117】
前記繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。なお、下記式中、R
e1は、前記と同じである。
【化31】
【0118】
前記高分子型界面活性剤のMwは、1,000~50,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましい。この範囲内であれば、表面改質効果が十分であり、現像欠陥を生じたりすることが少ない。
【0119】
前記水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、特開2008-122932号公報、特開2010-134012号公報、特開2010-107695号公報、特開2009-276363号公報、特開2009-192784号公報、特開2009-191151号公報、特開2009-98638号公報、特開2010-250105号公報、特開2011-42789号公報等も参照できる。
【0120】
界面活性剤の配合量は、レジスト固形分100質量部に対し、0~20質量部であるが、配合する場合、その下限は、0.001質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。一方、その上限は、15質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。
【0121】
[パターン形成方法]
本発明は、更に上述したレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成し、マスクを前記レジスト膜にかざし、高エネルギー線を照射して露光した後、アルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、
(i)上記本発明のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、
(ii)前記レジスト膜を波長248nmのKrFエキシマーレーザー、波長193nmのArFエキシマーレーザー、波長13.5nmのEUVリソグラフィー、又は電子ビームにより露光する工程と、
(iii)前記露光したレジスト膜をアルカリ現像液で現像する工程と、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0122】
本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO2,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05~2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60~150℃、1~10分間、好ましくは80~140℃、1~5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーあるいはEUVの如き高エネルギー線を露光量1~200mJ/cm2、好ましくは10~100mJ/cm2となるように照射する。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60~150℃、1~5分間、好ましくは80~140℃、1~3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。更に、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1~3分間、好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0123】
なお、本発明のパターン形成方法の現像液には上述のように0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用いることができる。
【実施例0124】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0125】
各繰り返し単位の構造を以下に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
[ポリマー合成例1]
(ポリマー合成例:PA-1)
窒素雰囲気下、モノマーP1-1を6.6g、モノマーA-1を7.0g、モノマーB-1を6.4g、V-601(2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、和光純薬工業(株)製)0.24g、2-メルカプトエタノール0.2g及びメチルエチルケトン25gをフラスコにとり、単量体-重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコにメチルエチルケトン23gをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、前記単量体-重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌したヘキサン400g中に滴下し、析出したポリマーを濾別した。ポリマーをヘキサン120gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、18gの白色粉末状のポリマーPA-1を得た。
【0132】
[ポリマー合成例2]
(ポリマー合成例:PA-2~PA-21、PB-1~PB-15、P-1、P-2)
ポリマー合成例PA-1と同様の手順により、表1、2に示すモノマー組成と導入比率(モル比)で、ポリマーPA-2~PA-21、ポリマーPB-1~PB-15、P-1、P-2を合成した。
【0133】
【0134】
【0135】
[レジスト組成物の調製]
次に樹脂(A)は、ポリマーPA-1~21で表され、樹脂(B)はポリマーPB-1~15で表される。樹脂(A)と樹脂(B)とを混合させ、そのときの樹脂(A)と樹脂(B)との添加量の合計を100質量部とし、溶剤(D)、樹脂(C)、添加剤(オニウム塩1、オニウム塩2、含窒素化合物)の樹脂(A)と樹脂(B)との添加量の合計を100質量部としたときの添加量を表3,4に質量部で示した。界面活性剤として住友スリーエム(株)製界面活性剤のFC-4430を100ppm溶解させ、溶解後にテフロン(登録商標)製フィルター(孔径0.2μm)で濾過し、下記表3,4に示すレジスト組成物を調製した。
【0136】
表3~5に示す溶剤は以下のとおりである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
EL:乳酸エチル
HBM:4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン
GBL:γ-ブチロラクトン
【0137】
【0138】
オニウム塩1、オニウム塩2の組成、含窒素化合物の組成を以下に示す。
[オニウム塩1]
【化38】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
[動的光散乱法によるDLS粒子径の評価]
動的光散乱法(Dynamic Light Scattering)、以下DLSと称す。1.5wt%に調整したポリマー溶液をDynaPro NanoSter(Wyatt Technology製)の装置を用いて動的光散乱法によるDLS粒子径を測定した。本発明では、ポリマーPA-6とPB-5およびその混合液を以下の表の条件で測定した。ポリマーを混合させることで、ポリマー単体よりもDLS粒子径が大きくなることが確認できポリマー複合体を形成しているとことが予想される。
【0144】
【0145】
[EUV露光パターニング評価(ラインパターン評価)]
本発明のレジスト組成物(R-1~R-23)及び比較用のレジスト組成物(R-24~R-32)を、東京エレクトロン製のクリーントラックLithius ProZを用いてBREWER SCIENCE社製の20nmの膜厚の有機反射防止膜AL-412が成膜された基板上にコーティングし、ホットプレート上に105℃で60秒間ベークし、50nmのレジスト膜を形成した。ASML社製のEUV露光機NXE3400を用いて、マスク上の寸法がピッチ40nmで20nmのライン&スペースパターンを露光し、露光後レジスト組成物毎に適したPEB温度を施した後、2.38%のテトラメチルアンモニウム水溶液をウェハ上に回転させながら吐出させ、合計30秒間現像させ、水でアルカリ溶液を洗い流し、ウェハを高速度で回転させ水を除去した。
【0146】
(感度評価)
作製したレジストパターンを日立ハイテクノロジーズ製のCD-SEM CG-6300で観察し、ピッチ40nmにおいてラインパターンが20nmとなる露光量を最適露光量Eop(mJ/cm2)とした。
【0147】
(ラインワイドラフネス(LWR)評価)
得られたホールパターンを日立ハイテクノロジーズ製のCD-SEM CG-6300で観察し、1本のラインにつきCD幅を32点測長し、1枚のSEM画像から11本のライン幅を測長し、そのCD幅のバラツキをLWRとした。LWRは、その値が小さいほど、寸法均一性が優れることを意味する。3.0以下をLWRが良好とした。
【0148】
本発明のレジスト組成物においても、ポリマー溶液と同様の評価方法でレジスト塗布性を評価した。Rangeが10Å以上なら×、10~5Åなら△、5Å以下なら良好〇とした。その結果を表6,7に示す。
【0149】
[レジスト組成物の塗布性評価]
調製したレジスト組成物を用いて、シリコンウェハ基板上の塗布性を調べた。東京エレクトロン製のクリーントラックLithius ProAPを用いて300mmシリコンウェハ基板上にコーティングし、ホットプレート上に105℃で60秒間ベークし、50nmのレジスト膜を形成した。SCREEN社製の光干渉式膜厚測定装置VM3210を用いて、膜厚を測定した。11点の測長点の最大膜厚と最小膜厚の差をRange(Å)としたとき、Rangeが10Å以上なら×、10~5Åなら△、5Å以下なら〇とした。その結果を表6,7に示す。
【0150】
【0151】
【0152】
表6,7に示した結果より、本発明のレジスト組成物(実施例1~23)は、LWRが3.0以下でLWRが良好であったが、比較例1~9のLWRは3.0超えであった。
【0153】
比較例(比較例1~9)のうち、例えば、比較例1~4のように、樹脂(A)の量が樹脂(B)の量より多いために、樹脂(A)がレジスト固形分の多くを占めるような場合は、強酸性の成分が少ないため、酸脱離基の反応性に乏しくLWR3.0以下の数値範囲を満たさなかった。
【0154】
逆に、比較例5,6のように、樹脂(B)がレジスト固形分の多くを占める場合は、表5における樹脂(B)のDLS粒子径が小さいことから分かるように、露光部分がアルカリ現像液を呼び込み易くなることから、パターン境界面のばらつきが大きくなり、LWR3.0以下の数値範囲を満たさなかった。
【0155】
本発明のレジスト組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)を、樹脂(A)が樹脂(B)より少なくなるように混合させることでポリマー複合体を形成し、高露光領域でもLWRに優れるパターンを形成できるものであるため、アルカリ水溶液現像プロセスに有用であることが示された。
【0156】
表6、7の結果から、本発明のレジスト組成物が樹脂(C)を含む場合、塗布性に優れることが示された。
【0157】
以上の結果より、本発明のレジスト組成物は、LWRが小さいレジスト膜を形成できることが示された。よって、本発明は、従来のレジスト材料を上回る高解像度でラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジスト組成物を提供できることが示された。
【0158】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。