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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145459
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】皮下HER2抗体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231003BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231003BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20231003BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20231003BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K38/46
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/26
A61K31/337
A61K31/704
C07K16/30
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023110283
(22)【出願日】2023-07-04
(62)【分割の表示】P 2020134301の分割
【原出願日】2018-01-16
(31)【優先権主張番号】62/447,359
(32)【優先日】2017-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オン-ウォン, ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】キルシュブラウン, ホイットニー
(72)【発明者】
【氏名】カーン, タリク
(72)【発明者】
【氏名】リン, ジャスパー
(72)【発明者】
【氏名】アラバタム, スリードハラ
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ, アミット
(72)【発明者】
【氏名】ヒーソン, サラ
(72)【発明者】
【氏名】バドウィナツ-クルンジェヴィク, ターニャ
(72)【発明者】
【氏名】ウルト, クリスティーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がんの治療における皮下投与のための固定用量のHER2抗体製剤を提供する。
【解決手段】それぞれ特定のアミノ酸配列の、可変軽鎖アミノ酸配列及び可変重鎖アミノ酸配列を含むHER2抗体の単回固定用量を含む製造品であって、前記固定用量が、600mg又は1200mgである、製造品であり、好ましくは、前記HER2抗体が、ペルツズマブであり、トラスツズマブの単回固定用量をさらに含む、前記製造品を提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7及び8のそれぞれ可変軽鎖アミノ酸配列及び可変重鎖アミノ酸配列を含む単回固定用量のHER2抗体を収容する単回用量バイアルを含む製造品であって、前記固定用量が、約600mgまたは約1200mgである、前記製造品。
【請求項2】
前記HER2抗体が、ペルツズマブである、請求項1に記載の製造品。
【請求項3】
2つの単回用量バイアルを含み、第1のバイアルが、約1200mgの単回固定用量のペルツズマブを収容し、第2のバイアルが、約600mgの単回固定用量のペルツズマブを収容する、請求項2に記載の製造品。
【請求項4】
2つの単回用量バイアルを含み、前記第1のバイアルが、約600mgの単回固定用量のペルツズマブを収容し、前記第2のバイアルが、約600mgの単回固定用量のトラスツズマブを収容する、請求項2に記載の製造品。
【請求項5】
2つの単回用量バイアルを含み、前記第1のバイアルが、約1200mgの単回固定用量のペルツズマブを収容し、第2のバイアルが、600mgの単回固定用量のトラスツズマブを含む、請求項2に記載の製造品。
【請求項6】
前記単回用量バイアルのうちの少なくとも1つが、皮下投与のための液体製剤中に前記固定用量(複数可)を収容する、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項7】
前記単回用量バイアルの各々が、皮下投与のための液体製剤中に前記固定用量(複数可)を収容する、請求項6に記載の製造品。
【請求項8】
前記液体製剤が、ヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む、請求項6または請求項7に記載の製造品。
【請求項9】
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)である、請求項8に記載の製造品。
【請求項10】
前記rHuPH20が、皮下投与の間、同じ液体製剤中に含有される前記ペルツズマブまたはトラスツズマブの分散の増加をもたらすのに十分な量で存在する、請求項9に記載の製造品。
【請求項11】
前記rHuPH20が、約150U/ml~16,000U/mlの濃度で前記トラスツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項10に記載の製造品。
【請求項12】
前記rHuPH20が、約600U/ml~約16,000U/mlの濃度で前記トラスツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項11に記載の製造品。
【請求項13】
前記rHuPH20が、約1,000U/ml~約2,000U/mlの濃度で前記トラスツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項12に記載の製造品。
【請求項14】
前記rHuPH20が、約2,000U/mlの濃度で前記トラスツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項13に記載の製造品。
【請求項15】
前記rHuPH20が、少なくとも約600U/mLの濃度で前記ペルツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項10~14のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項16】
前記rHuPH20が、約600U/ml~約2,000U/mlの濃度で前記ペルツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項15に記載の製造品。
【請求項17】
前記rHuPH20が、約600U/mLの濃度で前記ペルツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項16に記載の製造品。
【請求項18】
前記rHuPH20が、約667U/mlの濃度で前記ペルツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項16に記載の製造品。
【請求項19】
前記rHuPH20が、約1,000U/mLの濃度で前記ペルツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項16に記載の製造品。
【請求項20】
前記rHuPH20が、約2,000U/mLの濃度で前記ペルツズマブ含有液体製剤中に存在する、請求項16に記載の製造品。
【請求項21】
前記単回用量バイアルが、単回固定用量のトラスツズマブをさらに含む、請求項2に記載の製造品。
【請求項22】
前記単回固定用量のペルツズマブ及び前記単回固定用量のトラスツズマブが、皮下投与のための単一の液体製剤中に含有される、請求項21に記載の製造品。
【請求項23】
前記液体製剤が、約600mgの単回固定用量のペルツズマブ及び約600mgの単回固定用量のトラスツズマブを含有する、請求項22に記載の製造品。
【請求項24】
前記液体製剤が、約1200mgの単回固定用量のペルツズマブ及び約600mgの単回固定用量のトラスツズマブを含有する、請求項22に記載の製造品。
【請求項25】
前記液体製剤が、ヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項26】
前記ヒアルロニダーゼ酵素が、組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)である、請求項25に記載の製造品。
【請求項27】
前記rHuPH20が、皮下投与の間、同じ液体製剤中に含有される前記ペルツズマブ及びトラスツズマブの分散の増加をもたらすのに十分な量で前記液体製剤中に存在する、請求項26に記載の製造品。
【請求項28】
前記rHuPH20が、少なくとも約600U/mLの濃度で前記液体製剤中に存在する、請求項27に記載の製造品。
【請求項29】
前記rHuPH20が、約600U/ml~約2,000U/mlの濃度で前記液体製剤中に存在する、請求項28に記載の製造品。
【請求項30】
前記rHuPH20が、約1,000U/mLの濃度で前記液体製剤中に存在する、請求項29に記載の製造品。
【請求項31】
前記固定用量(複数可)を、HER2陽性癌を有する患者に皮下投与することを使用者に指示する添付文書をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項32】
前記固定用量のペルツズマブ及びトラスツズマブを、HER2陽性癌を有する患者に皮下投与することを前記使用者に指示する添付文書をさらに含む、請求項4~20のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項33】
前記添付文書が、2つの別々の皮下注射として、前記固定用量のペルツズマブ及び前記固定用量のトラスツズマブを皮下に同時投与することを前記使用者にさらに指示する、請求項32に記載の製造品。
【請求項34】
前記添付文書が、単一の皮下注射として、前記固定用量のトラスツズマブと同時混合された前記固定用量のペルツズマブを投与することを前記使用者にさらに指示する、請求項32に記載の製造品。
【請求項35】
前記固定用量のペルツズマブ及びトラスツズマブを、HER2陽性癌を有する患者に皮下投与するための指示を含む添付文書をさらに含む、請求項21~31のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項36】
前記HER2陽性癌が、乳癌、腹膜癌、卵管癌、肺癌、結腸直腸癌、胆道癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項31~35のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項37】
前記HER2陽性癌が、早期乳癌(EBC)または転移性乳癌(MBC)である、請求項36に記載の製造品。
【請求項38】
配列番号7及び8におけるそれぞれ可変軽アミノ酸配列及び可変重アミノ酸配列を含む単回固定用量のHER2抗体を保持する10mLまたは20mLのバイアルを含む製造品であって、前記固定用量が、約600mgまたは約1200mgの前記HER2抗体である、前記バイアルと、前記固定用量を、HER2陽性癌を有する患者に皮下投与することを使用者に指示する添付文書と、を含む、前記製造品。
【請求項39】
前記HER2抗体が、ペルツズマブである、請求項38に記載の製造品。
【請求項40】
前記固定用量のペルツズマブが、皮下投与のための液体製剤中に含有される、請求項39に記載の製造品。
【請求項41】
前記液体製剤が、約100~150mg/mLの濃度の前記ペルツズマブを含む、請求項40に記載の製造品。
【請求項42】
前記液体製剤が、約120mg/mLの濃度の前記ペルツズマブを含む、請求項41に記載の製造品。
【請求項43】
前記液体製剤が、皮下投与の間、前記ペルツズマブの分散の増加をもたらすのに十分な量の組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)をさらに含む、請求項40~42のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項44】
前記液体製剤が、約2,000U/mLの濃度の前記rHuPH20を含有する、請求項43に記載の製造品。
【請求項45】
前記液体製剤が、約1,000U/mLの濃度の前記rHuPH20を含有する、請求項43に記載の製造品。
【請求項46】
緩衝剤、安定剤、及び界面活性剤からなる群から選択される1つ以上の賦形剤をさらに含む、請求項40~45のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項47】
前記緩衝剤が、pHを約5.0~6.0に調整するのに好適である、請求項46に記載の製造品。
【請求項48】
前記緩衝剤が、ヒスチジン緩衝剤である、請求項47に記載の製造品。
【請求項49】
前記ヒスチジン緩衝剤が、L-酢酸ヒスチジンである、請求項48に記載の製造品。
【請求項50】
前記pHが、約5.5~5.7である、請求項49に記載の製造品。
【請求項51】
前記pHが、約5.5である、請求項50に記載の製造品。
【請求項52】
前記安定剤が、スクロースを含む、請求項46~51のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項53】
前記安定剤が、メチオニンをさらに含む、請求項53に記載の製造品。
【請求項54】
前記安定剤が、トレハロースをさらに含む、請求項52または請求項53に記載の製造品。
【請求項55】
前記界面活性剤が、ポリソルベート20である、請求項46~54のいずれか1項に記載の製造品。
【請求項56】
皮下投与のための水性製剤であって、約120mg/mLの濃度のペルツズマブと、約1000~2000U/mLの濃度のrHuPH20と、pHを約5.5~5.7に調整するためのL-ヒスチジン緩衝剤と、スクロースと、メチオニンと、ポリソルベート20と、を含む、前記水性製剤。
【請求項57】
前記rHuPH20が、約1000U/mLの濃度で存在する、請求項56に記載の水溶液。
【請求項58】
前記rHuPH20が、約2000U/mLの濃度で存在する、請求項56に記載の水溶液。
【請求項59】
前記pHが、5.7である、請求項56~58のいずれか1項に記載の水溶液。
【請求項60】
水溶液中で共製剤化された固定用量のペルツズマブ及び固定用量のトラスツズマブを含む液体皮下薬学的組成物であって、rHuPH20と、前記pHを約5.0~6.0に調整するのに好適である緩衝剤と、安定剤と、界面活性剤と、をさらに含む、前記液体皮下薬学的組成物。
【請求項61】
前記緩衝剤が、ヒスチジン緩衝剤である、請求項60に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項62】
前記緩衝剤が、L-酢酸ヒスチジンである、請求項61に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項63】
前記pHが、5.5~5.7である、請求項60~62のいずれか1項に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項64】
前記pHが、5.5または5.7である、請求項63に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項65】
前記pHが、5.5である、請求項63に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項66】
安定剤としてスクロースを含む、請求項60~65のいずれか1項に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項67】
安定剤として、メチオニンをさらに含む、請求項66に記載の液体薬学的組成物。
【請求項68】
安定剤として、トレハロースをさらに含む、請求項66に記載の液体薬学的組成物。
【請求項69】
60mg/mlの濃度の600mgのペルツズマブと、60mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブと、1,000U/mLのrHuPH20と、20mMのpH5.5のHis-HClと、105mMのトレハロースと、100mMのスクロースと、0.04%のポリソルベート20と、10mMのメチオニンと、合計体積10mlまでの無菌注射用水と、を含む、液体薬学的組成物。
【請求項70】
15mlのバイアル中に収容される、請求項69に記載の液体薬学的組成物。
【請求項71】
80mg/mlの濃度の1,200mgのペルツズマブと、40mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブと、1,000U/mLのrHuPH20と、20mMのpH5.5のHis-HClと、70mMのトレハロースと、133mMのスクロースと、0.04%のポリソルベート20と、10mMのメチオニンと、合計体積15mlまでの無菌注射用水と、を含む、液体薬学的組成物。
【請求項72】
20mlのバイアル中に収容される、請求項71に記載の液体薬学的組成物。
【請求項73】
請求項69~72のいずれか1項に記載の液体薬学的組成物を含む、製造品。
【請求項74】
中に収容された前記液体薬学的組成物を、HER2陽性癌を有するヒト対象に皮下投与するための指示を含む添付文書をさらに含む、請求項73に記載の製造品。
【請求項75】
前記HER2陽性癌が、乳癌、腹膜癌、卵管癌、肺癌、結腸直腸癌、胆道癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項74に記載の製造品。
【請求項76】
前記癌が、乳癌である、請求項75に記載の製造品。
【請求項77】
前記乳癌が、早期乳癌(EBC)または転移性乳癌(MBC)である、請求項76に記載の製造品。
【請求項78】
がんを治療するための方法であって、配列番号7及び8におけるそれぞれ可変軽アミノ酸配列及び可変重アミノ酸配列を含む1回以上の固定用量(複数可)のHER2抗体を、前記がんを治療するための有効量で、HER2陽性癌を有するヒト対象に皮下投与することを含み、前記固定用量が、約600mg及び/または約1200mgである、前記方法。
【請求項79】
前記HER2抗体が、ペルツズマブである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
約1200mgの固定負荷用量、その後、約600mgの少なくとも1回の維持用量のペルツズマブを前記ヒト対象に投与することを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記負荷用量の前記投与の後に複数回の維持用量の投与が続く、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記第1の維持用量のペルツズマブが、前記負荷用量のペルツズマブの投与のおよそ2週間後またはおよそ3週間後に前記ヒト対象に投与される、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
前記固定用量のペルツズマブが、およそ2週間毎またはおよそ3週間毎に前記ヒト対象に投与される、請求項80~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記固定用量のペルツズマブが、およそ3週間毎に投与される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記がんが、HER2陽性癌である、請求項78~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記癌が、乳癌、腹膜癌、卵管癌、肺癌、結腸直腸癌、胆道癌、及び膀胱癌からなる群から選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記癌が、乳癌である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記癌が、早期乳癌(EBC)または転移性乳癌(MBC)である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
第2の療法剤を前記患者に投与することを含む、請求項78~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記第2の療法剤が、異なるHER2抗体である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記第2の療法剤が、トラスツズマブである、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記固定用量のペルツズマブが、皮下投与されるトラスツズマブと併せて皮下投与される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記固定用量のペルツズマブ及び前記トラスツズマブが、2つの別々の皮下注射として皮下に同時投与される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記固定用量のペルツズマブが、固定用量のトラスツズマブと同時混合され、単一の皮下注射として投与される、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
固定用量のペルツズマブ及び固定用量のトラスツズマブが、皮下投与のための単一の共製剤として投与される、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
前記共製剤が、請求項69~72のいずれか1項に記載の液体薬学的組成物である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記さらなる療法剤が、化学療法剤である、請求項89に記載の方法。
【請求項98】
前記化学療法剤が、タキサン及びアントラサイクリンからなる群から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記タキサンが、パクリタキセルまたはドセタキセルである、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記アントラサイクリンが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、またはエピルビシンを含む、請求項98に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2017年1月17日に出願された仮出願第62/447,359号の優先権の利益を主張するものであり、これは、参照によってその開示全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式にて電子的に提出され、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。2018年1月12日に作成された上記ASCIIコピーは、P34027-WO_SL.txtという名称であり、32,675バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、皮下投与のための固定用量のHER2抗体製剤、及びがんの治療におけるそれらの使用に関する。具体的には、本発明は、固定用量のペルツズマブ製剤、ペルツズマブ及びトラスツズマブを含む皮下製剤、ならびにがんの治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
HER2抗体
受容体チロシンキナーゼのHERファミリーのメンバーは、細胞増殖、分化及び生存の重要なメディエーターである。受容体ファミリーには、上皮成長因子受容体(EGFR、ErbB1、またはHER1)、HER2(ErbB2またはp185neu)、HER3(ErbB3)、及びHER4(ErbB4またはtyro2)を含む4つの異なるメンバーが含まれる。受容体ファミリーのメンバーは、様々な種類のヒト悪性腫瘍と関連付けられている。
【0005】
マウスの抗HER2抗体4D5(huMAb4D5-8、rhuMAb HER2、トラスツズマブ、またはHERCEPTIN(登録商標)、米国特許第5,821,337号)の組換えヒト化バージョンは、広範囲の前抗がん療法を受けたHER2過剰発現転移性乳癌を有する患者において臨床的に有効である(Baselga et al.,J.Clin.Oncol.14:737-744(1996))。
【0006】
トラスツズマブは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌を有する患者の治療に関して、1998年9月25日に米国食品医薬品局から販売承認を受けた。現在、トラスツズマブは、転移性がん設定において単剤として、または化学療法もしくはホルモン療法と併せて使用すること、及び早期HER2陽性乳癌を有する患者に対して単剤として、またはアジュバント治療として化学療法と併せて使用するのに承認されている。トラスツズマブ系療法は、現在、その使用に対して禁忌症を有さないHER2陽性早期乳癌を有する患者に対する推奨治療である(Herceptin(登録商標)処方情報;NCCN Guidelines,version 2.2011)。トラスツズマブ+ドセタキセル(または、パクリタキセル)は、第1選択の転移性乳癌(MBC)治療設定において登録標準治療である(Slamon et al.N Engl J Med.2001;344(11):783-792.、Marty et al.J Clin Oncol.2005;23(19):4265-4274)。
【0007】
HER2発現に基づく療法に対して、HER2抗体トラスツズマブを用いて治療された患者が選択される。例えば、WO99/31140(Paton et al.)、US2003/0170234A1(Hellmann,S.)、及びUS2003/0147884(Paton et al.)、ならびにWO01/89566、US2002/0064785、及びUS2003/0134344(Mass et al.)を参照されたい。HER2過剰発現及び増幅を検出するための免疫組織化学(IHC)及び蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH)に関する米国特許第6,573,043号、米国特許第6,905,830号、及びUS2003/0152987,Cohen et al.も参照されたい。したがって、転移性乳癌の最適な管理は、現在、患者の全体的な病態、既往歴、及び受容体の状態だけでなく、HER2の状態も考慮する。
【0008】
ペルツズマブ(組換えヒト化モノクローナル抗体2C4(rhuMAb 2C4)、Genentech,Inc,South San Franciscoとしても知られる)は、HER二量体化阻害剤(HDI)として知られる薬剤の新たなクラスの筆頭であり、HER2が他のHER受容体(例えば、EGFR/HER1、HER2、HER3、及びHER4)との活性ヘテロ二量体またはホモ二量体を形成する能力を阻害するように機能する。例えば、Harari and Yarden Oncogene 19:6102-14(2000)、Yarden and Sliwkowski.Nat Rev Mol Cell Biol 2:127-37(2001)、Sliwkowski Nat Struct Biol 10:158-9(2003)、Cho et al.Nature 421:756-60(2003)、及びMalik et al.Pro Am Soc Cancer Res 44:176-7(2003)を参照されたい。
【0009】
腫瘍細胞内のHER2-HER3ヘテロ二量体の形成がペルツズマブによって遮断されることで、重大な細胞シグナル伝達が阻害され、腫瘍の増殖及び生存の低減がもたらされることが実証された(Agus et al.Cancer Cell 2:127-37(2002))。
【0010】
ペルツズマブに関して、進行がんを有する患者における第Ia相試験と、卵巣癌及び乳癌、ならびに肺癌及び前立腺癌を有する患者における第II相試験を用いて、臨床における単剤として試験が行われている。第I相研究において、標準療法中またはその後に進行した、治療不能で局所的に進行した再発性または転移性固形腫瘍を有する患者を、ペルツズマブを3週間毎に静脈内に付与することによって治療した。ペルツズマブは、概して十分に忍容された。腫瘍退縮は、奏功が評価可能な20名の患者のうち3名において達成された。2名の患者には、部分奏功を確認した。2.5ヶ月を超えて継続した安定疾患は、21名の患者のうち6名において観察された(Agus et al.Pro Am Soc Clin Oncol 22:192(2003))。2.0~15mg/kgの用量において、ペルツズマブの薬物動態は線形であり、平均クリアランスは2.69~3.74mL/日/kgの範囲であり、平均最終消失半減期は15.3~27.6日の範囲であった。ペルツズマブに対する抗体は検出されなかった(Allison et al.Pro Am Soc Clin Oncol 22:197(2003))。
【0011】
US2006/0034842は、抗ErbB2抗体との組み合わせによるErbB発現癌を治療するための方法を記載している。US2008/0102069は、HER2陽性転移性癌、例えば、乳癌の治療におけるトラスツズマブ及びペルツズマブの使用を記載している。Baselga et al.,J Clin Oncol,2007 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I,Col.25,No.18S(June 20 Supplement),2007:1004は、トラスツズマブを用いた治療中に進行した、前治療されたHER2陽性乳癌を有する患者のトラスツズマブ及びペルツズマブの併用治療を報告している。Portera et al.,J Clin Oncol,2007 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I.Vol.25,No.18S(June 20 Supplement),2007:1028は、トラスツズマブ系療法において疾患が進行したHER2陽性乳癌患者におけるトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法の効能及び安全性を評価した。筆者は、本治療計画の全体的な危険性及び利益を定義するために、併用治療の効能のさらなる評価が必要とされたと結論づけた。
【0012】
ペルツズマブは、第II相研究において、転移性疾患のためのトラスツズマブを以前に受けたHER2陽性転移性乳癌を有する患者において、トラスツズマブと併せて評価された。国立がん研究所(NCI)によって実施されたある研究は、以前に治療されたHER2陽性転移性乳癌を有する11名の患者を登録した。11名の患者のうち2名は、部分奏功(PR)を示した(Baselga et al.,J Clin Oncol 2007 ASCO Annual Meeting Proceedings;25:18S(June 20 Supplement):1004)。
【0013】
CTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS),December 8-12,2010において提示される、早期HER2陽性乳癌を有する女性におけるペルツズマブ及びトラスツズマブ+化学療法(ドセタキセル)の新規併用計画の効果を評価する第II相ネオアジュバント研究の結果は、手術前のネオアジュバント設定において付与された2つのHER2抗体+ドセタキセルが、乳房における完全腫瘍消失率(病理学的完全奏功率(pCR)45.8パーセント)を、トラスツズマブ+ドセタキセル(pCR、29.0パーセント)と比較して半数超で有意に改善したことを示した(p=0.014)。
【0014】
ペルツズマブ及びトラスツズマブ(CLEOPATRA)の第II相臨床研究の臨床評価は、局所的再発性、切除不可能、または転移性HER2陽性乳癌を有する患者のための第1選択の治療として、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルと比較した、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルの効能及び安全性を評定した。ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルの組み合わせは、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、HER2陽性転移性乳癌に対する第1選択の治療として使用されるとき、心毒性作用における増加を有することなく、無増悪生存期間を有意に伸ばした。(Baselga et al.,N Eng J Med 2012 366:2,109-119)。
【0015】
第II相臨床研究のNeoSphereは、手術可能で、局所的に進行した、炎症性乳癌を有する治療未経験女性(以前にがん療法を一切受けたことのない患者)におけるペルツズマブ及びトラスツズマブのネオアジュバント投与の効能及び安全性を評定した。ペルツズマブ及びトラスツズマブ+ドセタキセルを付与された患者は、トラスツズマブ+ドセタキセルを付与された患者と比較して、有意に改善した病理学的完全奏功率を示し、忍容性においては実質的な差異はなかった(Gianni et al.,Lancet Oncol 2012 13(1):25-32)。5年間の経過観察の結果は、Gianni et al.,Lancet Oncol 2016 17(6):791-800によって報告されている。
【0016】
HER2抗体に関連する特許公開には、米国特許第5,677,171号、同第5,720,937号、同第5,720,954号、同第5,725,856号、同第5,770,195号、同第5,772,997号、同第6,165,464号、同第6,387,371号、同第6,399,063号、同第6,015,567号、同第6,333,169号、同第4,968,603号、同第5,821,337号、同第6,054,297号、同第6,407,213号、同第6,639,055号、同第6,719,971号、同第6,800,738号、同第5,648,237号、同第7,018,809号、同第6,267,958号、同第6,695,940号、同第6,821,515号、同第7,060,268号、同第7,682,609号、同第7,371,376号、同第6,127,526号、同第6,333,398号、同第6,797,814号、同第6,339,142号、同第6,417,335号、同第6,489,447号、同第7,074,404号、同第7,531,645号、同第7,846,441号、同第7,892,549号、同第6,573,043号、同第6,905,830号、同第7,129,840号、同第7,344,840号、同第7,468,252号、同第7,674,589号、同第6,949,245号、同第7,485,302号、同第7,498,030号、同第7,501,122号、同第7,537,931号、同第7,618,631号、同第7,862,817号、同第7,041,292号、同第6,627,196号、同第7,371,379号、同第6,632,979号、同第7,097,840号、同第7,575,748号、同第6,984,494号、同第7,279,287号、同第7,811,773号、同第7,993,834号、同第7,435,797号、同第7,850,966号、同第7,485,704号、同第7,807,799号、同第7,560,111号、同第7,879,325号、同第7,449,184号、同第7,700,299号、ならびにUS2010/0016556、US2005/0244929、US2001/0014326、US2003/0202972、US2006/0099201、US2010/0158899、US2011/0236383、US2011/0033460、US2005/0063972、US2006/018739、US2009/0220492、US2003/0147884、US2004/0037823、US2005/0002928、US2007/0292419、US2008/0187533、US2003/0152987、US2005/0100944、US2006/0183150、US2008/0050748、US2010/0120053、US2005/0244417、US2007/0026001、US2008/0160026、US2008/0241146、US2005/0208043、US2005/0238640、US2006/0034842、US2006/0073143、US2006/0193854、US2006/0198843、US2011/0129464、US2007/0184055、US2007/0269429、US2008/0050373、US2006/0083739、US2009/0087432、US2006/0210561、US2002/0035736、US2002/0001587、US2008/0226659、US2002/0090662、US2006/0046270、US2008/0108096、US007/0166753、US2008/0112958、US2009/0239236、US2004/008204、US2009/0187007、US2004/0106161、US2011/0117096、US2004/048525、US2004/0258685、US2009/0148401、US2011/0117097、US2006/0034840、US2011/0064737、US2005/0276812、US2008/0171040、US2009/0202536、US2006/0013819、US2006/0018899、US2009/0285837、US2011/0117097、US2006/0088523、US2010/0015157、US2006/0121044、US2008/0317753、US2006/0165702、US2009/0081223、US2006/0188509、US2009/0155259、US2011/0165157、US2006/0204505、US2006/0212956、US2006/0275305、US2007/0009976、US2007/0020261、US2007/0037228、US2010/0112603、US2006/0067930、US2007/0224203、US2008/0038271、US2008/0050385、2010/0285010、US2008/0102069、US2010/0008975、US2011/0027190、US2010/0298156、US2009/0098135、US2009/0148435、US2009/0202546、US2009/0226455、US2009/0317387、及びUS2011/0044977が含まれる。
【0017】
ヒアルロニダーゼ酵素
ヒアルロニダーゼは、動物界を通して見られる一般に中性または酸活性酵素の分類である。ヒアルロニダーゼは、基質特異性及び作用機序に関して異なる(WO2004/078140)。ヒアルロニダーゼには、3つの一般的なクラスがある:1.主要な最終産生物としてテトラサッカライド及びヘキササッカライドを有するエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼである哺乳類型ヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.35)。それらは、加水分解性及びトランスグリコシダーゼ活性の両方を有し、ヒアルロナン及びコンドロイチン硫酸塩(CS)、一般に、C4-S及びC6-Sを分解し得る。2.細菌性ヒアルロニダーゼ(EC4.2.99.1)は、ヒアルロナン、ならびに様々な程度にCS及びDSを分解する。それらは、一次ジサッカライド最終産生物を産出するベータ消失反応によって作用するエンド-β-N-アセチルヘキソサミニダーゼである。3.ヒル、他の寄生生物、及び甲殻類からのヒアルロニダーゼ(EC3.2.1.36)は、β1-3結合の加水分解を通してテトラサッカライド及びヘキササッカライド最終産生物を作り出すエンド-ベータ-グルクロニダーゼである。
【0018】
哺乳類ヒアルロニダーゼは、さらに中性活性及び酸活性酵素の2つの分類に分けることができる。ヒトゲノムには、6つのヒアルロニダーゼ様遺伝子、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4、HYALP1、及びPH20/SPAM1が存在する。HYALP1は、偽遺伝子であり、HYAL3は、任意の既知の基質に対する酵素活性を有すると示されていない。HYAL4は、コンドロイチナーゼであり、ヒアルロナンに対する活性をほとんど呈さない。HYAL1は、プロトタイプ酸活性酵素であり、PH20は、プロトタイプ中性活性酵素である。HYAL1及びHYAL2等の酸活性ヒアルロニダーゼは、一般に、中性pH(すなわち、pH7)で触媒活性を欠く。例えば、HYAL1は、pH4.5を超えるインビトロで触媒活性をほとんど有しない[Frost I.G.and Stern,R.,“A microtiter-based assay for hyaluronidase activity not requiring specialized reagents”,Anal.Biochemistry,1997;251:263-269]。HYAL2は、インビトロで非常に低い特異的活性を有する酸活性酵素である。
【0019】
ヒアルロニダーゼ様酵素はまた、ヒトHYAL2及びヒトPH20等のグリコシルホスファチジルイノシトールアンカーを介して一般に原形質膜に係止されるもの[Danilkovitch-Miagkova et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2003;100(8):4580-4585、Phelps et al.,Science 1988;240(4860):1780-1782]、及びヒトHYAL1等の一般に可溶性であるもの[Frost,I.G.et al.,“Purification, cloning,and expression of human plasma hyaluronidase”,Biochem.Biophys.Res.Commun.1997;236(1):10-15]も特徴とし得る。しかし、種によって変形形態があり、ウシPH20は、例えば、原形質膜に非常に緩く結合し、ホスホリパーゼ感作アンカーを介して係留されていない[Lalancette et al.,Biol.Reprod.,2001;65(2):628-36]。ウシヒアルロニダーゼのこの固有の特徴によって、臨床用途で、可溶性であるウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素を抽出物として使用することができる(Wydase(商標)、Hyalase(商標))。他のPH20種は、洗剤または脂肪分解酵素を使用しないと一般に可溶性でない脂質に係留される酵素である。例えば、ヒトPH20は、GPIアンカーを介して原形質膜に係留される。脂質アンカーをポリペプチドに導入しないであろうヒトPH20DNA構築物を作製する試みは、触媒不活性酵素、または非可溶性酵素のいずれかをもたらした[Arming et al.,Eur.J.Biochem.,1997;247(3):810-4]。自然発生するマカク精子ヒアルロニダーゼは、可溶性形態及び膜結合形態の両方で見られる。64kDa膜結合形態は、pH7.0で酵素活性を有するが、54kDa形態は、pH4.0でのみ活性である[Cherr et al.,Dev.Biol.,1996;10;175(1):142-53]。したがって、PH20の可溶性形態は、しばしば、中性条件下で酵素活性を欠く。
【0020】
WO2006/091871は、少量の可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)が、皮下組織への療法薬物の投与を容易にするために製剤に組み込まれ得ることを記載している。細胞外スペースでHAを迅速に脱重合することによって、sHASEGPは、間質の粘度を低減し、それによって、水伝導度を増加し、より多くの体積がSC組織に、安全かつ安楽に投与されることを可能にする。低減された間質の粘度を通してsHASEGPによって誘発された増加した水伝導度は、より多くの分散を可能にし、皮下(SC)投与される療法薬物の全身生物学的利用能を増加する可能性もある。
【0021】
皮下組織に注射されるとき、sHASEGPによるHAの脱重合は、SC組織内の注射部位に局所化される。実験根拠は、sHASEGPが、マウスにおいて13~20分の半減期を有する間質のスペースで局所的に不活性化され、CD-1マウスにおいて単回静脈内投薬後に血液中で検出可能な体内吸収がないことを示す。血管区画内で、sHASEGPは、最大0.5mg/kgの用量を伴ってマウス及びカニクイザルにおいて、それぞれ2.3分及び5分の半減期を実証する。SC組織内のHA基質の継続的な合成と組み合わせたsHASEGPの早急なクリアランスは、他の同時注射される分子の一過性かつ局所的に活性である浸透促進をもたらし、その効果は、投与後24~48時間において完全に可逆的である[Bywaters G.L.,et al.,“Reconstitution of the dermal barrier to dye spread after Hyaluronidase injection”,Br.Med.J.,1951;2(4741):1178-1183]。
【0022】
局所的な流体分散におけるその効果に加えて、sHASEGPはまた、吸収促進剤としても作用する。16キロダルトン(kDa)を超える高分子はほぼ、分散を介して、毛管を通る吸収から排除され、流入領域リンパ節を介してほとんど吸収される。よって、例えば、療法抗体等の皮下投与される高分子(およそ150kDaの分子量)は、後続の血管区画内への吸収のために、流入領域リンパ管に到達する前に間質マトリックスを横断する必要がある。局所的な分散を増加させることによって、sHASEGPは、多くの高分子の吸収率(Ka)を増加させる。これによって、sHASEGPの不在下のSC投与と比べて、増加したピーク血液レベル(C最大)及び可能性として増加した生物学的利用能がもたらされる[Bookbinder L.H.,et al.,“A recombinant human enzyme for enhanced interstitial transport of therapeutics”,J.Control.Release 2006;114:230-241]。
【0023】
動物起源のヒアルロニダーゼ産生物は、主に、他の同時投与される薬物及び皮下点滴療法の分散及び吸収を増加するために60年にわたって臨床的に使用されている(多くの体積の流体のSC注射/点滴)[Frost G.I.,“Recombinant human hyaluronidase(rHuPH20):an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”,Expert Opinion on Drug Delivery,2007;4:427-440]。ヒアルロニダーゼの作用機序の詳細は、下記の刊行物に詳述されている:Duran-Reynolds F.,“A spreading factor in certain snake venoms and its relation to their mode of action”,CR Soc Biol Paris,1938; 69-81、Chain E.,“A mucolytic enzyme in testes extracts”,Nature 1939;977-978、Weissmann B.,“The transglycosylative action of testicular hyaluronidase”,J.Biol.Chem.,1955;216:783-94、Tammi,R.,Saamanen,A.M.,Maibach,H.I.,Tammi M.,“Degradation of newly synthesized high molecular mass hyaluronan in the epidermal and dermal compartments of human skin in organ culture”,J.Invest.Dermatol.1991;97:126-130、Laurent,U.B.G.,Dahl,L.B.,Reed,R.K.,“Catabolism of hyaluronan in rabbit skin takes place locally,in lymph nodes and liver”,Exp.Physiol.1991;76:695-703、Laurent,T.C.and Fraser,J.R.E.,“Degradation of Bioactive Substances:Physiology and Pathophysiology”,Henriksen,J.H.(Ed)CRC Press,Boca Raton,Fla.;1991.pp.249-265、Harris,E.N.,et al.,“Endocytic function,glycosaminoglycan specificity,and antibody sensitivity of the recombinant human 190-kDa hyaluronan receptor for endocytosis(HARE)”,J.Biol.Chem.2004;279:36201-36209、Frost,G.I.,“Recombinant human hyaluronidase(rHuPH20):an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”,Expert Opinion on Drug Delivery,2007;4:427-440。EU諸国で承認されているヒアルロニダーゼ産生物には、Hylase(登録商標)「Dessau」、及びHyalase(登録商標)が含まれる。米国で承認されている動物起源のヒアルロニダーゼ産生物には、Vitrase(商標)、Hydase(商標)、及びAmphadase(商標)が含まれる。
【0024】
リオプロテクタント、緩衝剤、及び界面活性剤を含む安定した凍結乾燥抗体製剤は、Andya et al.(WO97/04801、及び米国特許第6,267,958号、同第6,685,940号、同第6,821,151号、同第7,060,268号)によって記載されている。WO2006/044908は、pH5.5~6.5、好ましくは5.8~6.2である、酢酸ヒスチジン緩衝剤中で製剤化されるモノクローナル抗体を含む抗体製剤を提供している。抗HER2抗体製剤は、米国特許第8,372,396号、同第9,017,671号に開示されている。皮下抗HER2抗体製剤及びそれらの使用は、米国特許第9,345,661号に記載されている。ペルツズマブの静脈内固定用量投与は、米国特許第7,449,184号及び同第8,404,234号に開示されている。
【発明の概要】
【0025】
一態様では、本発明は、配列番号7及び8のそれぞれ可変軽鎖アミノ酸配列及び可変重鎖アミノ酸配列を含む単回固定用量のHER2抗体を収容する単回用量バイアルを含む製造品に関し、ここで、固定用量は、約600mgまたは約1200mgである。好ましくは、HER2抗体は、ペルツズマブである。
【0026】
一実施形態では、本製造品は、2つの単回用量バイアルを含み、ここで、第1のバイアルは、約1200mgの単回固定用量のペルツズマブを収容し、第2のバイアルは、約600mgの単回固定用量のペルツズマブを収容する。
【0027】
第2の実施形態では、本製造品は、2つの単回用量バイアルを含み、ここで、第1のバイアルは、約600mgの単回固定用量のペルツズマブを収容し、第2のバイアルは、約600mgの単回固定用量のトラスツズマブを収容する。
【0028】
第3の実施形態では、本製造品は、2つの単回用量バイアルを含み、第1のバイアルは、約1200mgの単回固定用量のペルツズマブを収容し、第2のバイアルは、600mgの単回固定用量のトラスツズマブを含む。
【0029】
全ての実施形態では、単回用量バイアルのうちの少なくとも1つは、皮下投与のための液体製剤中に固定用量(複数可)を収容し得る。
【0030】
全ての実施形態では、皮下投与のための液体製剤は、組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)等のヒアルロニダーゼ酵素をさらに含み得る。rHuPH20は、皮下投与の間、同じ液体製剤中に含有されるペルツズマブまたはトラスツズマブの分散の増加をもたらすのに十分な量で存在し得る。
【0031】
rHuPH2は、例えば、約150U/ml~16,000U/mlの濃度で、または約600U/ml~約16,000U/mlの濃度で、または約1,000U/ml~約2,000U/mlの濃度で、例えば、約2,000U/mlの濃度で、または少なくとも約600U/mLの濃度でトラスツズマブ含有液体製剤中に存在し得る。
【0032】
rHuPH20は、約600U/ml~約2,000U/mlの濃度で、例えば、約600U/mLの濃度で、または約667U/mlの濃度で、または約1,000U/mLの濃度で、または約2,000U/mLの濃度でペルツズマブ含有液体製剤中に存在し得る。
【0033】
別の実施形態では、本製造品中に存在する単回用量バイアルは、単回固定用量のトラスツズマブをさらに含む。
【0034】
一実施形態では、単回固定用量のペルツズマブ及び単回固定用量のトラスツズマブは、皮下投与のための単一の液体製剤中に含有され、ここで、液体製剤は、例えば、約600mgの単回固定用量のペルツズマブ及び約600mgの単回固定用量のトラスツズマブ、または約1200mgの単回固定用量のペルツズマブ及び約600mgの単回固定用量のトラスツズマブを含有し得る。
【0035】
固定用量のペルツズマブ及び固定用量のペルツズマブを含む液体製剤は、組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)等のヒアルロニダーゼ酵素をさらに含み得、それは、皮下投与の間、同じ液体製剤中に含有されるペルツズマブ及びトラスツズマブの分散の増加をもたらすのに十分な量で該液体製剤中に、少なくとも約600U/mLの濃度、または約600U/ml~約2,000U/mlの濃度で、例えば、約1,000U/mLの濃度等で存在し得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書における製造品は、固定用量(複数可)を、HER2陽性癌を有する患者に皮下投与することを使用者に指示する添付文書をさらに含む。
【0037】
一実施形態では、添付文書は、固定用量のペルツズマブ及びトラスツズマブを、HER2陽性癌を有する患者に皮下投与することを使用者に指示する。
【0038】
別の実施形態では、添付文書は、2つの別々の皮下注射として、固定用量のペルツズマブ及び固定用量のトラスツズマブを皮下に同時投与することを使用者に指示する。
【0039】
さらなる実施形態では、添付文書は、単一の皮下注射として、固定用量のトラスツズマブと同時混合された固定用量のペルツズマブを投与することを使用者に指示する。
【0040】
さらに別の実施形態では、添付文書は、固定用量のペルツズマブ及びトラスツズマブを、HER2陽性癌を有する患者に皮下投与することを使用者に指示する。
【0041】
がんは、例えば、乳癌、腹膜癌、卵管癌、肺癌、結腸直腸癌、胆道癌、または膀胱癌、例えば、早期乳癌(EBC)または転移性乳癌(MBC)であり得る。
【0042】
別の態様では、本発明は、製造品に関し、配列番号7及び8におけるそれぞれ可変軽アミノ酸配列及び可変重アミノ酸配列を含む単回固定用量のHER2抗体を保持する10mLまたは20mLのバイアルであって、ここで、固定用量は、約600mgまたは約1200mgのHER2抗体である、バイアルと、固定用量を、HER2陽性癌を有する患者に皮下投与することを使用者に指示する添付文書と、を含む。
【0043】
一実施形態では、HER2抗体は、ペルツズマブである。
【0044】
別の実施形態では、固定用量のペルツズマブは、皮下投与のための液体製剤中に含有され、ここで、液体製剤は、例えば、約100~150mg/mLの濃度の、例えば、約120mg/mLの濃度のペルツズマブを含み得る。
【0045】
様々な実施形態では、本製造品中に存在する液体製剤は、皮下投与の間、約2,000U/mLの濃度の、または約1,000U/mLの濃度等の、ペルツズマブの分散の増加をもたらすのに十分な量の組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)をさらに含む。
【0046】
本製造品は、緩衝剤、安定剤、及び界面活性剤からなる群から選択される1つ以上の賦形剤をさらに含み得る。
【0047】
一実施形態では、緩衝剤は、pHを約5.0~6.0、例えば、pH5.5~5.7、例えば、5.5に調整するのに好適である。例示的な緩衝剤は、L-酢酸ヒスチジン等のヒスチジン緩衝剤である。
【0048】
安定剤は、スクロース、ならびに任意に、メチオニン及び/またはトレハロースを含み得る。
【0049】
好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、皮下投与のための水性製剤に関し、約120mg/mLの濃度のペルツズマブと、約1000~2000U/mLの濃度のrHuPH20と、pHを約5.5~5.7に調整するためのL-ヒスチジン緩衝剤と、スクロースと、メチオニンと、ポリソルベート20と、を含む。
【0051】
一実施形態では、rHuPH20は、約1000U/mLの濃度で存在する。
【0052】
別の実施形態では、rHuPH20は、約2000U/mLの濃度で存在する。
【0053】
さらなる実施形態では、水溶液のpHは、5.7である。
【0054】
本発明は、水溶液中で共製剤化された固定用量のペルツズマブ及び固定用量のトラスツズマブを含む液体皮下薬学的組成物にさらに関し、rHuPH20と、pHを約5.0~6.0に調整するのに好適である緩衝剤と、安定剤と、界面活性剤と、をさらに含む。
【0055】
一実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤である。
【0056】
別の実施形態では、緩衝剤は、L-酢酸ヒスチジンである。
【0057】
さらに別の実施形態では、pHは、5.5~5.7、例えば、5.5である。
【0058】
他の実施形態では、液体薬学的組成物は、安定剤としてスクロースを含み、安定剤としてメチオニン及び/またはトレハロースをさらに含み得る。
【0059】
ある特異的な態様では、液体薬学的組成物は、60mg/mlの濃度の600mgのペルツズマブと、60mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブと、1,000U/mLのrHuPH20と、20mMのpH5.5のHis-HClと、105mMのトレハロースと、100mMのスクロースと、0.04%のポリソルベート20と、10mMのメチオニンと、合計体積10mlまでの無菌注射用水と、を含み、15mlのバイアル中に収容され得る。
【0060】
別の特定の態様では、液体薬学的組成物は、80mg/mlの濃度の1,200mgのペルツズマブと、40mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブと、1,000U/mLのrHuPH20と、20mMのpH5.5のHis-HClと、70mMのトレハロースと、133mMのスクロースと、0.04%のポリソルベート20と、10mMのメチオニンと、合計体積15mlまでの無菌注射用水と、を含み、20mlのバイアル中に収容され得る。
【0061】
上記の製造品は、中に収容された液体薬学的組成物を、例えば、乳癌、腹膜癌、卵管癌、肺癌、結腸直腸癌、胆道癌、及び膀胱癌、例えば、早期乳癌(EBC)または転移性乳癌(MBC)等のHER2陽性癌を有するヒト対象に皮下投与するための指示を含む添付文書をさらに含み得る。
【0062】
さらなる態様では、本発明は、がんを治療するための方法に関し、配列番号7及び8におけるそれぞれ可変軽アミノ酸配列及び可変重アミノ酸配列を含む1回以上の固定用量(複数可)のHER2抗体を、がんを治療するための有効量で、HER2陽性癌を有するヒト対象に皮下投与することを含み、ここで、固定用量は、約600mg及び/または約1200mgである。
【0063】
HER2抗体は好ましくは、ペルツズマブである。
【0064】
一実施形態では、本方法は、約1200mgの固定負荷用量、その後、約600mgの少なくとも1回の維持用量のペルツズマブをヒト対象に投与することを含む。
【0065】
第2の実施形態では、負荷用量の投与の後に複数回の維持用量の投与が続く。
【0066】
第3の実施形態では、第1の維持用量のペルツズマブは、負荷用量のペルツズマブの投与のおよそ2週間後またはおよそ3週間後にヒト対象に投与される。
【0067】
さらなる実施形態では、固定用量のペルツズマブは、およそ2週間毎またはおよそ3週間毎にヒト対象に投与される。
【0068】
がんは、HER2陽性癌、例えば、乳癌、腹膜癌、卵管癌、肺癌、結腸直腸癌、胆道癌、及び膀胱癌、例えば、早期乳癌(EBC)または転移性乳癌(MBC)であり得る。
【0069】
任意に、本方法は、異なるHER2抗体、例えば、トラスツズマブ、または化学療法剤等の第2の療法剤を患者に投与することをさらに含み得る。
【0070】
一実施形態では、固定用量のペルツズマブは、皮下投与されるトラスツズマブと併せて皮下投与される。
【0071】
別の実施形態では、固定用量のペルツズマブ及びトラスツズマブは、2つの別々の皮下注射として皮下に同時投与される。
【0072】
さらに別の実施形態では、固定用量のペルツズマブは、固定用量のトラスツズマブと同時混合され、単一の皮下注射として投与される。
【0073】
さらなる実施形態では、固定用量のペルツズマブ及び固定用量のトラスツズマブは、上記及び本開示全体で記載されるいずれかの共製剤等の皮下投与のための単一の共製剤として投与される。
【0074】
化学療法剤は、投与される場合、例えば、タキサン及び/またはアントラサイクリン、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、及び/またはエピルビシンであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】HER2タンパク質構造、及びその細胞外ドメインのドメインI~IVのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1~4)の模式図を提供する。
図2図2A及び2Bは、マウスモノクローナル抗体2C4の可変軽(V)(図2A)及び可変重(V)(図2B)ドメインのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5及び6)、バリアント574/ペルツズマブのV及びVドメインのアミノ酸配列(それぞれ、配列番号7及び8)、ならびにヒトV及びVコンセンサスフレームワーク(hum κ1、軽カッパサブグループI;humIII、重サブグループIII)のアミノ酸配列(それぞれ、配列番号9及び10)の整列を示す。アスタリスクは、ペルツズマブの可変ドメインとマウスモノクローナル抗体2C4との間、またはペルツズマブの可変ドメインとヒトフレームワークとの間の差異を特定する。相補性決定領域(CDR)は、角括弧内にある。
図3図3A及び3Bはペルツズマブ軽鎖のアミノ酸配列(図3A、配列番号11)及び重鎖のアミノ酸配列(図3B、配列番号12)を示す。CDRは、太字で示される。軽鎖及び重鎖の計算された分子量は、23,526.22Da及び49,216.56Daである(還元型におけるシステイン類)。炭水化物部分を重鎖のAsn299に付着させる。
図4A】トラスツズマブ軽鎖のアミノ酸配列(図4A、配列番号13)を示す。可変軽ドメイン及び可変重ドメインの境界は、矢印で示される。
図4B】トラスツズマブ重鎖のアミノ酸配列(図4B、配列番号14)を示す。可変軽ドメイン及び可変重ドメインの境界は、矢印で示される。
図5A】バリアントペルツズマブ軽鎖配列(図5A、配列番号15)を示す。
図5B】バリアントペルツズマブ重鎖配列(図5B、配列番号16)を示す。
図6】ペルツズマブを、単体で及びトラスツズマブと併せて皮下投与するための用量設定研究の研究スキームを示す。
図7】決定図。
図8】研究の概要。
図9】時間の関数(日)として、トラスツズマブを伴って及び伴わずに皮下投与されたペルツズマブの用量正規化濃度(μg/mL)を示す。
図10】時間の関数(日)として、異なる濃度のrHuPH20を有するペルツズマブの用量正規化濃度(μg/mL)を示す。
図11】ペルツズマブ及び後向き集団PK(集団PK)IVモデルを使用する、比較のパラメータ推定を示す。
図12】人口統計及び年齢分布。
図13】有害事象の概要パート1。
図14】有害事象の概要パート1、対象の数。
図15】最も一般的な有害事象(全てのグレード)-研究における全体発生率≧5%、対象の数
図16】EGFR関連毒性
図17】注射関連反応及び注射部位反応
図18】LVEF-ECHO評定
図19】固定用量のペルツズマブ-トラスツズマブ共製剤の調製で使用されるペルツズマブ、トラスツズマブ、及びrHuPH20の皮下用原薬(SC DS)の組成。
図20】様々な皮下用ペルツズマブ及びトラスツズマブ製剤、ならびにペルツズマブ/トラスツズマブ共製剤の、それぞれ5℃及び25℃での高分子量種(HMWS)の量(%)を示す。
図21】コーホート毎の平均血清ペルツズマブ濃度-時間プロファイル
図22】併用Herceptinを有する及び有さない幾何平均用量正規化血清ペルツズマブ濃度-時間プロファイル
図23】667U/mLまたは2,000U/mLのrHuPH20(HMV)を有する幾何平均血清ペルツズマブ濃度-時間プロファイル
図24】667U/mLまたは2,000U/mLのrHuPH20(HMV)を有する幾何平均血清トラスツズマブ濃度-時間プロファイル。
図25】600mgのPerjetaのSC用量及び420mgのPerjetaのIV用量の後の幾何平均血清ペルツズマブ濃度-時間プロファイル。
図26】HMVまたはEBC患者における幾何平均血清ペルツズマブ濃度-時間プロファイル。
図27】667U/mL、1,000U/mL、または2,000U/mLのrHuPH20を有する幾何平均用量正規化血清ペルツズマブ濃度-時間プロファイル。
図28】667U/mL、または1,000U/mL、または2,000U/mLのrHuPH20を有する幾何平均血清トラスツズマブ濃度-時間プロファイル。
図29】ペルツズマブ原薬の安定性、擦過&散布試験:SECデータ
図30】FDC製剤の差異-濁度
図31】FDC製剤の差異-SEC/HMWS
【発明を実施するための形態】
【0076】
I.定義
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒である追加の構成成分を全く含有しない調製物を指す。かかる製剤は、滅菌である。
【0077】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物及びそれらの胞子を含まない。
【0078】
「安定した」製剤は、内部のタンパク質が保管時にその物理的安定性及び/もしくは化学的安定性、ならびに/または生物学的活性を本質的に保持する製剤である。好ましくは、製剤は、保管時に、その物理的及び化学的安定性、ならびにその生物学的活性を本質的に保持する。保管期間は、一般に、製剤の意図される貯蔵寿命に基づいて選択される。タンパク質安定性を測定するための様々な分析技法が当該技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein.Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概説されている。安定性は、選択された温度で選択された期間にわたって測定され得る。好ましくは、製剤は、約40℃で少なくとも約2~4週間安定し、かつ/または約5.0及び/または15℃で少なくとも3ヶ月間安定し、かつ/または約-20℃で少なくとも3ヶ月もしくは少なくとも1年間安定する。さらに、製剤は好ましくは、製剤の凍結(例えば、-70℃まで)及び解凍後、例えば、1、2、または3周期の凍結及び解凍後でも安定する。安定性は、凝集体形成の評価を含む様々な異なる方法で(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、濁度を測定することによって、及び/または目視検査によって)、カチオン交換クロマトグラフィーまたはキャピラリーゾーン電気泳動を使用して電荷不均一性を評定することによって、アミノ末端またはカルボキシ末端配列分析によって、質量分光分析によって、還元された無傷な抗体を比較するSDS-PAGE分析によって、ペプチドマッピング(例えば、トリプシンまたはLYS-C)分析によって、抗体の生物学的活性または抗原結合機能を評価すること等によって、質的及び/または量的に評価され得る。不安定性は、凝集、脱アミド化(例えば、Asn脱アミド)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン(複数可)、N末端伸張、C末端プロセシング、グリコシル化差異等のうちのいずれか1つ以上を伴い得る。
【0079】
「脱アミド化の影響を受け易い」抗体は、脱アミドが起こり易いことが見出されている1つ以上の残基を含む抗体である。
【0080】
「凝集化の影響を受け易い」抗体は、特に、凍結及び/または攪拌時に他の抗体分子(複数可)と凝集することが見出されている抗体である。
【0081】
「断片化の影響を受け易い」抗体は、例えば、そのヒンジ領域で2つ以上の断片に切断されることが見出されている抗体である。
【0082】
「脱アミド化、凝集化、または断片化を低減すること」によって、異なるpHでまたは異なる緩衝剤中で製剤化されたモノクローナル抗体と比べて、脱アミド化、凝集化、または断片化を防止するかまたはそれらの量を減少することが意図される。
【0083】
本明細書において、モノクローナル抗体の「生物学的活性」は、抗体が抗原に結合し、インビトロまたはインビボで測定され得る測定可能な生物学的応答をもたらす能力を指す。一実施形態では、ペルツズマブの場合、生物学的活性は、製剤化される抗体が、ヒト乳癌細胞株MDA-MB-175-VIIの増殖を阻害する能力を指す。
【0084】
「等張」とは、目的とする製剤がヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張製剤は、一般に、約250~350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧または氷結型浸透圧計を使用して測定され得る。
【0085】
本明細書で使用される場合、「緩衝剤」は、その酸-塩基コンジュゲート成分の作用によってpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。本発明の緩衝剤は好ましくは、約5.0~約7.0、好ましくは約5.5~約6.5、例えば、約5.5~約6.2、例えば、5.5または5.7の範囲のpHを有する。この範囲のpHを制御する緩衝剤の例には、アセテート、スクシネート、スクシネート、グルコネート、ヒスチジン、シトレート、グリシルグリシン、及び他の有機酸緩衝剤が含まれる。本明細書における好ましい緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤である。
【0086】
「ヒスチジン緩衝剤」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝剤である。ヒスチジン緩衝剤の例には、塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンが含まれる。本明細書の実施例において特定される好ましいヒスチジン緩衝剤は、酢酸ヒスチジンであることが見出された。好ましい実施形態では、酢酸ヒスチジン緩衝剤は、L-ヒスチジン(遊離塩基、固体)を酢酸(液体)で滴定することによって調製される。好ましくは、ヒスチジン緩衝剤または酢酸ヒスチジン緩衝剤は、pH5.5~6.5、またはpH5.7~6.2、例えば、pH5.7である。
【0087】
本明細書における「サッカライド」は、一般組成(CH2O)及びその誘導体を含み、これにはモノサッカライド、ジサッカライド、トリサッカライド、ポリサッカライド、糖アルコール、還元糖、非還元糖等が含まれる。本明細書におけるサッカライドの例には、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、デキストラン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、シリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロース等が含まれる。本明細書における好ましいサッカライドは、トレハロースまたはスクロース等の非還元ジサッカライドである。
【0088】
本明細書において、「界面活性剤」は、表面活性剤、好ましくは、非イオン性界面活性剤を指す。本明細書における界面活性剤の例には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、トリトン(Triton)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、またはステアリルスルホベタイン、ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、またはステアリルサルコシン、リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、またはセチルベタイン、ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、またはイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、またはイソステアラミドプロピルジメチルアミン、メチルココイルタウリン酸ナトリウムまたはメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム、さらにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68等)等が含まれる。本明細書における好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0089】
「HER受容体」は、HER受容体ファミリーに属する受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、EGFR、HER2、HER3、及びHER4受容体を含む。HER受容体は、一般に、HERリガンドを結合し、かつ/または別のHER受容体分子により二量体化することができる細胞外ドメイン、親油性膜貫通ドメイン、保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン、及びリン酸化され得るいくつかのチロシン残基を包含するカルボキシル末端シグナル伝達ドメインを含むであろう。HER受容体は、「天然配列の」HER受容体またはその「アミノ酸配列バリアント」であり得る。好ましくは、HER受容体は、天然配列のヒトHER受容体である。
【0090】
「ErbB2」及び「HER2」という表現は、本明細書において互換的に使用され、例えば、Semba et al.,PNAS(USA)82:6497-6501(1985)及びYamamoto et al.Nature 319:230-234(1986)に記載されているヒトHER2タンパク質を指す(遺伝子バンク受託番号X03363)。「erbB2」という用語は、ヒトErbB2をコードする遺伝子を指し、「neu」は、ラットp185neuをコードする遺伝子を指す。好ましいHER2は、天然配列のヒトHER2である。
【0091】
本明細書において、「HER2細胞外ドメイン」または「HER2 ECD」は、細胞膜に固定または循環しているかのいずれかである細胞の外側にあるHER2のドメインを指し、その断片を含む。HER2のアミノ酸配列は、図1に示される。一実施形態では、HER2の細胞外ドメインは、4つのドメイン:「ドメインI」(約1~195のアミノ酸残基、配列番号1)、「ドメインII」(約196~319のアミノ酸残基、配列番号2)、「ドメインIII」(約320~488のアミノ酸残基:配列番号3)、及び「ドメインIV」(約489~630のアミノ酸残基、配列番号4)(シグナルペプチド無しの残基番号付け)を含み得る。Garrett et al.Mol.Cell.11:495-505(2003)、Cho et al.Nature 421:756-760(2003)、Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004)、及びPlowman et al.Proc.Natl.Acad.Sci.90:1746-1750(1993)、ならびに本明細書の図1を参照されたい。
【0092】
本明細書における「HER3」または「ErbB3」は、例えば、米国特許第5,183,884号及び同第5,480,968号、ならびにKraus et al.PNAS(USA)86:9193-9197(1989)に開示されているような受容体を指す。
【0093】
「低HER3」癌は、がんの種類においてHER3発現の中央値レベルを下回るレベルでHER3を発現するがんである。一実施形態では、低HER3癌は、上皮性卵巣癌、腹膜癌、または卵管癌である。がんにおけるHER3のDNA、タンパク質、及び/またはmRNAレベルを評価して、がんが低HER3癌であるかどうかを判定することが可能である。例えば、低HER3癌についての追加情報に関しては、米国特許第7,981,418号を参照されたい。任意に、HER3のmRNA発現アッセイは、がんが低HER3癌であることを判定するために行われる。一実施形態では、がんにおけるHER3 mRNAレベルは、例えば、定量逆転写PCR(qRT-PCR)等のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して評価される。任意に、がんは、qRT-PCR、例えば、COBAS z480(登録商標)機器を使用して評定される場合、約2.81以下の濃度比でHER3を発現する。
【0094】
本明細書における「HER二量」は、少なくとも2つのHER受容体を含む非共有結合的に会合された二量体である。かかる複合体は、2つ以上のHER受容体を発現する細胞がHERリガンドに曝露されるときに形成し得、免疫沈降によって単離され得、例えば、Sliwkowski et al.,J.Biol.Chem.,269(20):14661-14665(1994)に記載されているようなSDS-PAGEによって分析され得る。サイトカイン受容体サブユニット(例えば、gp130)等の他のタンパク質は、二量体と会合され得る。好ましくは、HER二量体は、HER2を含む。
【0095】
本明細書における「HERヘテロ二量体」は、EGFR-HER2、HER2-HER3、またはHER2-HER4ヘテロ二量体等の少なくとも2つの異なるHER受容体を含む非共有結合的に会合されたヘテロ二量体である。
【0096】
「HER抗体」は、HER受容体に結合する抗体である。任意に、HER抗体は、HER活性化または機能をさらに妨害する。好ましくは、HER抗体は、HER2受容体に結合する。本明細書における目的とするHER2抗体は、ペルツズマブ及びトラスツズマブである。
【0097】
「HER活性化」は、任意の1つ以上のHER受容体の活性化、またはリン酸化を指す。一般に、HER活性化は、シグナル伝達(例えば、HER受容体または基質ポリペプチドにおけるチロシン残基をリン酸化するHER受容体の細胞内キナーゼドメインによって引き起こされるもの)をもたらす。HER活性化は、目的とするHER受容体を含むHER二量体に結合するHERリガンドによって媒介され得る。HER二量体に結合するHERリガンドは、二量体におけるHER受容体のうちの1つ以上のキナーゼドメインを活性化し得、それによって、HER受容体のうちの1つ以上におけるチロシン残基のリン酸化、及び/またはAktもしくはMAPK細胞内キナーゼ等の追加の基質ポリペプチド(複数可)におけるチロシン残基のリン酸化をもたらす。
【0098】
「リン酸化」は、HER受容体等のタンパク質への1つ以上のリン酸基(複数可)、またはそれらの基質の追加を指す。
【0099】
「HER二量体化を阻害する」抗体は、HER二量体の形成を阻害するか、またはこの形成を妨害する抗体である。好ましくは、かかる抗体は、HER2にそのヘテロ二量体結合部位で結合する。本明細書における最も好ましい二量体化阻害抗体は、ペルツズマブまたはMAb 2C4である。HER二量体化を阻害する抗体の他の例には、EGFRに結合し、1つ以上の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体(例えば、活性化されているかまたは「係留された」EGFRに結合するEGFRモノクローナル抗体806、MAb806;Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375-30384(2004)を参照されたい)、HER3に結合し、1つ以上の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体、及びHER4に結合し、1つ以上の他のHER受容体とのその二量体化を阻害する抗体が含まれる。
【0100】
「HER2二量体化阻害剤」は、HER2を含む二量体またはヘテロ二量体の形成を阻害する薬剤である。
【0101】
HER2上の「ヘテロ二量体結合部位」は、それとの二量体が形成されるとEGFR、HER3、またはHER4の細胞外ドメイン内の領域と接触するかまたは接するHER2の細胞外ドメイン内の領域を指す。領域は、HER2のドメインII内で見られる(配列番号15)。Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004)。
【0102】
HER2の「ヘテロ二量体結合部位に結合する」HER2抗体は、ドメインII(配列番号2)内の残基に結合し、任意に、ドメインI及びIII、配列番号1及び3等のHER2細胞外ドメインの他のドメイン内の残基にも結合し、HER2-EGFR、HER2-HER3、またはHER2-HER4ヘテロ二量体の形成を少なくともある程度立体的に妨害し得る。Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004)は、RCSBタンパク質構造データバンク(IDコードIS78)に寄託されるHER2ペルツズマブの結晶構造を特徴付けており、HER2のヘテロ二量体結合部位に結合する例示的な抗体を例示している。
【0103】
HER2の「ドメインIIに結合する」抗体は、ドメインII(配列番号2)内の残基に結合し、任意に、ドメインI及びIII(それぞれ、配列番号1及び3)等のHER2の他のドメイン(複数可)内の残基に結合する。好ましくは、ドメインIIに結合する抗体は、HER2のドメインIとIIとIIIとの間の接合部に結合する。
【0104】
本明細書の目的に関して、互換的に使用される「ペルツズマブ」及び「rhuMAb 2C4」は、配列番号7及び8におけるそれぞれ可変軽アミノ酸配列及び可変重アミノ酸配列を含む抗体を指す。ペルツズマブが、無傷抗体であるとき、それは、好ましくは、IgG1抗体を含み、一実施形態では、配列番号11または15における軽鎖アミノ酸配列及び配列番号12または16における重鎖アミノ酸配列を含む。抗体は、任意に、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される。本明細書における「ペルツズマブ」及び「rhuMAb 2C4」という用語は、医薬品米国一般名称(USAN)または医薬品国際一般名称(INN):ペルツズマブに関する薬物のバイオシミラーバージョンを網羅する。
【0105】
本明細書の目的に関して、互換的に使用される「トラスツズマブ」及び「rhuMAb4D5」は、それぞれ配列番号13及び14内からの可変軽アミノ酸配列及び可変重アミノ酸配列を含む抗体を指す。トラスツズマブが、無傷抗体である場合、それは、好ましくは、IgG1抗体を含み、一実施形態では、配列番号13の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号14の重鎖アミノ酸配列を含む。抗体は、任意に、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって産生される。本明細書における「トラスツズマブ」及び「rhuMAb4D5」という用語は、医薬品米国一般名称(USAN)または医薬品国際一般名称(INN):トラスツズマブに関する薬物のバイオシミラーバージョンを網羅する。
【0106】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広範な意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を網羅する。
【0107】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、齧歯類)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の能力をさらに改良するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになる。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含むことになる。さらなる詳細に関して、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。ヒト化HER2抗体には、具体的には、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5,821,337号の表3に記載され、かつ本明細書で定義されるようなトラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ならびに本明細書に記載及び定義されるようなヒト化2C4抗体、例えば、ペルツズマブが含まれる。
【0108】
本明細書における「無傷抗体」は、2つの抗原結合領域、及び1つのFc領域を含む抗体である。好ましくは、無傷抗体は、機能的Fc領域を有する。
【0109】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を含み、好ましくは、その抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片(複数可)から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0110】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、他方の端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと位置が揃っており、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと位置が揃っている。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0111】
本明細書で使用されるとき、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」もしくは「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインでは残基24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインでは31~35(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))、及び/または「超可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメインでは残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインでは26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)、Chothia and LeskJ.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である残基である。
【0112】
本明細書における「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによると残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって、除去され得る。したがって、無傷抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、除去されたK447残基がない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体集団を含み得る。
【0113】
本明細書で別途示されない限り、免疫グロブリン重鎖内の残基の番号付けは、参照によって本明細書に明示的に組み込まれるKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)にあるようなEU指標の番号付けである。「KabatにあるようなEU指標」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0114】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合、補体依存性細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方調節等が含まれる。かかるエフェクター機能は、一般に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)との結合を必要とし、例えば、本明細書に開示される様々なアッセイを使用して評定され得る。
【0115】
「天然配列Fc領域」は、天然に見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2Fc領域、天然配列ヒトIgG3Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4Fc領域、ならびにそれらの自然発生するバリアントが含まれる。
【0116】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に約1~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、ならびに最も好ましくは、それらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくは、それらと少なくとも約95%の相同性を有するであろう。
【0117】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、無傷抗体には、異なる「クラス」が割り当てられ得る。無傷抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、Aサブクラス@(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分割され得る。抗体の異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成がよく知られている。
【0118】
「裸抗体」は、細胞毒性部分または放射標識等の異種分子にコンジュゲートされない抗体である。
【0119】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上の超可変領域内に1つ以上の変化を有し、これは、これらの変化(複数可)を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を改善させるものである。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、当該技術分野において既知の手技によって産生される。Marks et al.Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載している。CDR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異生成は、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994)、Schier et al.Gene 169:147-155(1995)、Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995)、及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)によって記載されている。
【0120】
「脱アミドされた」抗体は、その1つ以上のアスパラギン残基が、例えば、アスパラギン酸、サクシニミド、またはイソ-アスパラギン酸に誘導体化されている抗体である。
【0121】
「がん」及び「がん性」という用語は、典型的には無秩序な細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すか、または説明する。
【0122】
「進行」がんは、元の部位または器官の外に、局所浸潤(「局所的に進行」)または転移(「転移性」)のいずれかによって広がったがんである。したがって、「進行」がんという用語は、局所的に進行した疾患及び転移性疾患の両方を含む。
【0123】
「転移性」がんは、身体の一部(例えば、乳房)から身体の別の場所に広がったがんを指す。
【0124】
「不応性」がんは、化学療法剤、または生物学的療法、例えば、免疫療法等の抗腫瘍剤ががん患者に投与されているにもかかわらず進行するがんである。不応性がんの例は、白金不応性であるがんである。
【0125】
「再発」がんは、手術等の初期療法への応答後に、初期部位または遠隔部位のいずれかにおいて再成長したものである。
【0126】
「局所的再発」がんは、治療後に以前に治療されたがんと同じ場所で再発するがんである。
【0127】
「切除不可能な(non-resectable)」または「切除不可能な(unresectable)」がんは、手術によって除去(切除)することができない。
【0128】
本明細書における「早期乳癌」は、乳房または腋窩リンパ節を越えて広がっていない乳癌を指す。かかるがんは、一般に、ネオアジュバントまたはアジュバント療法を用いて治療される。
【0129】
「ネオアジュバント療法」または「ネオアジュバント治療」または「ネオアジュバント投与」は、手術前に付与される全身療法を指す。
【0130】
「アジュバント療法」または「アジュバント治療」または「アジュバント投与」は、手術後に付与される全身療法を指す。
【0131】
本明細書において、「患者」または「対象」は、ヒト患者である。患者は「がん患者」、すなわち、がん、特に乳癌の1つ以上の症状を罹患しているか、または罹患する危険性がある者であり得る。
【0132】
「患者集団」は、がん患者の群を指す。かかる集団は、薬物、例えば、ペルツズマブ及び/またはトラスツズマブの統計的に有意な効能及び/または安全性を実証するために使用され得る。
【0133】
「再発」患者は、寛解後にがんの兆候または症状を有する者である。任意に、患者は、アジュバントまたはネオアジュバント療法後に再発した。
【0134】
「HER発現、増幅、または活性化を示す」がん、または生体試料は、診断試験において、HER受容体を発現し(過剰発現を含む)、HER遺伝子を増幅し、かつ/またはさもなければHER受容体の活性化もしくはリン酸化を実証するものである。
【0135】
「HER活性化を示す」がん、または生体試料は、診断試験において、HER受容体の活性化またはリン酸化を実証するものである。かかる活性化は、(例えば、ELISAによってHERリン酸化を測定することによって)直接または(例えば、本明細書に記載されるような、遺伝子発現プロファイリングによって、またはHERヘテロ二量体を検出することによって)間接的に決定され得る。
【0136】
「HER受容体過剰発現または増幅」を伴うがん細胞は、同じ組織型の非がん性細胞と比較して、著しくより高いレベルのHER受容体タンパク質または遺伝子を有するものである。かかる過剰発現は、遺伝子の増幅、または転写もしくは翻訳の増加によって引き起こされ得る。HER受容体過剰発現または増幅は、(例えば、免疫組織化学アッセイ、IHCを介して)細胞の表面に存在する増加したHERタンパク質のレベルを評価することによって、診断または予後アッセイで決定され得る。あるいは、または加えて、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション法(FISH、1998年10月に公開されたWO98/45479を参照されたい)及び発色性インサイツハイブリダイゼーション法(CISH、例えば、Tanner et al.,Am.J.Pathol.157(5):1467-1472(2000)、Bella et al.,J.Clin.Oncol.26:(5月20日 suppl;abstr 22147)(2008)を参照されたい)を含むインサイツハイブリダイゼーション法(ISH)、サザンブロット法、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法、例えば、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を介して細胞内のHERコード核酸のレベルを測定することができる。また、血清等の生物流体中の脱落抗原(例えば、HER細胞外ドメイン)を測定することによって、HER受容体過剰発現または増幅を研究することもできる(例えば、1990年6月12日に発行された米国特許第4,933,294号、1991年4月18日に公開されたWO91/05264、1995年3月28日に発行された米国特許第5,401,638号、及びSias et al.J.Immunol.Methods132:73-80(1990)を参照されたい)。上記のアッセイの他に、様々なインビボアッセイが当業者に利用可能である。例えば、患者の体内の細胞を検出可能標識、例えば、放射能に関して放射性インサイツで任意に標識化される抗体に、または以前に抗体に曝露した患者から採取した生体組織を分析することよって曝露することができる。
【0137】
「HER2陽性」癌は、正常レベルよりも高いHER2を有するがん細胞を含む。任意に、HER2陽性癌は、2+もしくは3+の免疫組織化学(IHC)スコアを有し、かつ/またはインサイツハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、もしくは発色性インサイツハイブリダイゼーション(CISH)陽性であり、例えば、≧2.0のISH/FISH/CISH増幅率を有する。
【0138】
「HER2変異」癌は、例えば、次世代シーケンシング(NGS)またはリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって同定され得る、キナーゼドメイン変異を含む、HER2活性化変異を有するがん細胞を含む。「HER2変異」癌には、具体的には、HER2のエクソン20中の挿入、HER2のアミノ酸残基755~759周囲での欠失、変異G309A、G309E、S310F、D769H、D769Y、V777L、P780-Y781insGSP、V842I、R896C(Bose et al.,Cancer Discov 2013;3:1-14)のいずれか、ならびに2つ以上の固有の検体で見られるCOSMICデータベース中の以前に報告された同一の非同義推定活性化変異(または、インデル)を特徴とする、がんが含まれる。さらなる詳細に関して、例えば、Stephens et al.,Nature 2004;431:525-6、Shigematsu et al.,Cancer Res 2005;65:1642-6、Buttitta et al.,Int J Cancer 2006;119:2586-91、Li et al.,Oncogene 2008;27:4702-11、Sequist et al.,J Clin Oncol 2010;28:3076-83、Arcila et al.,Clin Cancer Res 2012;18:4910-8、Greulich et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 2012;109:14476-81、及びHerter-Sprie et al.,Front Oncol 2013;3:1-10.を参照されたい。
【0139】
本明細書において、「抗腫瘍剤」は、がんを治療するために使用される薬物を指す。本明細書における抗腫瘍剤の非限定的な例には、化学療法剤、HER二量体化阻害剤、HER抗体、腫瘍会合抗原に対して指向される抗体、抗ホルモン化合物、サイトカイン、EGFR標的薬物、血管新生阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、成長阻害剤及び抗体、細胞毒性剤、アポトーシスを誘導する抗体、COX阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、がん胎児性タンパク質CA125を結合する抗体、HER2ワクチン、Rafまたはras阻害剤、リポソームドキソルビシン、トポテカン、タキサン、二重チロシンキナーゼ阻害剤、TLK286、EMD-7200、ペルツズマブ、トラスツズマブ、エルロチニブ、ならびにベバシズマブが含まれる。
【0140】
「エピトープ2C4」は、抗体2C4が結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。2C4エピトープに本質的に結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているもの等のルーチンクロスブロッキングアッセイが行われ得る。好ましくは、抗体は、HER2への2C4’の結合を約50%以上遮断する。あるいは、エピトープマッピングを行って、抗体がHER2の2C4エピトープに本質的に結合するかどうかを評定することができる。エピトープ2C4は、HER2の細胞外ドメイン内のドメインII(配列番号2)からの残基を含む。2C4及びペルツズマブは、ドメインI、II、及びIII(それぞれ、配列番号1、2、及び3)の結合部でHER2の細胞外ドメインに結合する。Franklin et al.Cancer Cell 5:317-328(2004)。
【0141】
「エピトープ4D5」は、抗体4D5(ATCC CRL 10463)及びトラスツズマブが結合するHER2の細胞外ドメイン内の領域である。このエピトープは、HER2の膜貫通ドメインの近くにあり、HER2のドメインIV(配列番号4)内にある。4D5エピトープに本質的に結合する抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているもの等のルーチンクロスブロッキングアッセイが行われ得る。あるいは、エピトープマッピングは、抗体がHER2の4D5エピトープに本質的に結合するかどうかを評定するために行われ得る(例えば、HER2 ECDを含む約残基529~約残基625に由来する領域内のいずれか1つ以上の残基、シグナルペプチドを含む残基番号付け)。
【0142】
「治療」は、治療的処置及び予防的もしくは予防性手段の両方を指す。治療を必要とする者には、がんを既に有する者、ならびにがんが予防されるべき者が含まれる。したがって、本明細書における治療されるべき患者は、がんを有すると診断されている可能性があるか、またはがんに罹りやすいか、もしくはがんを患いやすい可能性がある。
【0143】
「有効量」という用語は、患者においてがんを治療するのに有効な薬物の量を指す。有効量の薬物によって、がん細胞の数が低減され、腫瘍サイズが低減され、周辺器官へのがん細胞浸潤が阻害され(すなわち、ある程度減速され、好ましくは停止される)、腫瘍転移が阻害され(すなわち、ある程度減速され、好ましくは停止される)、腫瘍成長がある程度阻害され、かつ/またはがんと関連する症状のうちの1つ以上がある程度緩和され得る。薬物が既存のがん細胞の成長の予防及び/またはそれらの殺滅を行うことができる限り、この薬物は細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であり得る。有効量によって、無増悪生存期間が延長され(例えば、固形腫瘍の奏功評価基準(RECIST)またはCA-125変化によって測定される)、客観的奏功がもたらされ(部分奏功(PR)または完全奏功(CR)を含む)、全生存期間が上昇し、かつ/またはがんの1つ以上の症状が改善され得る(例えば、FOSIによって評定される)。
【0144】
「細胞毒性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の機能を阻害もしくは防止する物質、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び小分子毒素、または細菌性、真菌性、植物もしくは動物起源の酵素活性毒素(その断片及び/またはバリアントを含む)等の毒素が含まれることが意図される。
【0145】
「化学療法」は、がんの治療に有用な化学化合物の使用である。化学療法に使用される、化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン等のアルキルスルホネート;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;TLK 286 (TELCYTA(商標));アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標);ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標)、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等の窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)等のニトロスレア;クロドロネート等のビスホスホネート;クロドロネート等のビスホスホネート;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特に、カリケアミシンガンマ1I及びカリケアミシンオメガI1(例えば、Agnew,Chem Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい))、ならびにアントラサイクリン、例えば、アナマイシン、AD32、アルカルビシン(alcarubicin)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、デクスラゾキサン、DX-52-1、エピルビシン、GPX-100、イダルビシン、バルルビシン、KRN5500、メノガリル、ダイネミシンAを含むダイネミシン、エスペラマイシン、ネオカルチノスタチン発光団及び関連色素タンパク質エネジイン抗生物質発光団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、リポソームドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エソルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロキシウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、及びトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フォリン酸(ロイコボリン);アセグラトン;抗葉酸抗腫瘍剤、例えば、ALIMTA(登録商標)、LY231514ペメトレキセド、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、例えば、メトトレキサート、代謝拮抗薬、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)及びその前駆薬物、例えば、UFT、S-1、及びカペシタビン、ならびにチミジル酸シンターゼ阻害剤、ならびにグリシンアミドリボヌクレオチドフォルミルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ラルチトレキセド(TOMUDEX(商標)、TDX);ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼの阻害剤、例えば、エニルウラシル;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシノイド、例えば、マイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK7多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロフォスファミド;チオテパ;タキサン;クロランブシル(chloranbucil);ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金;白金類似体または白金系類似体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));ビンカアルカロイド;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメトルヒロルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;薬学的に許容される上記のいずれかの塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略語)、及びFOLFOX(5-FU及びロイコボリンと併せたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いる治療レジメンの略語)が含まれる。
【0146】
この定義には、腫瘍におけるホルモン作用を調節または阻害する役割を果たす抗ホルモン剤、例えば、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストーン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;アロマターゼ阻害剤;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮成長因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えば、遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ならびに薬学的に許容される上記のいずれかの塩、酸、または誘導体も含まれる。
【0147】
「タキサン」は、有糸分裂を阻害し、微小管を妨害する化学療法剤である。タキサンの例には、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、パクリタキセルまたはナブパクリタキセルのクレモフォール不含アルブミン組換え操作されたナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標)、American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France)が含まれる。
【0148】
「アンタサイクリン(anthacycline)」は、真菌Streptococcus peucetiu由来の抗生物質の種類であり、この例には、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及び前に列挙されるものを含む任意の他のアントラサイクリン化学療法剤が含まれる。
【0149】
「アントラサイクリン系化学療法剤」は、1つ以上のアントラサイクリンからなるか、またはそれを含む化学療法レジメンを指す。例には、5-FU、エピルビシン、及びシクロフォスファミド(FEC);5-FU、ドキソルビシン、及びシクロフォスファミド(FAC);ドキソルビシン及びシクロフォスファミド(AC);エピルビシン及びシクロフォスファミド(EC);投与集中型ドキソルビシン及びシクロフォスファミド(ddAC)等が含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
本明細書の目的に関して、「カルボプラチン系化学療法」は、1つ以上のカルボプラチンからなるか、またはそれを含む化学療法レジメンを指す。例は、TCH(ドセタキセル/TAXOL(登録商標)、カルボプラチン、及びトラスツズマブ/HERCEPTIN(登録商標))である。
【0151】
「アロマターゼ阻害剤」は、副腎内でエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害する。アロマターゼ阻害剤の例には、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エクセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールが含まれる。一実施形態では、本明細書におけるアロマターゼ阻害剤は、レトロゾールまたはアナストロゾールである。
【0152】
「代謝拮抗薬化学療法」は、代謝産生物に構造上類似するが、産生方式において身体によって使用されることが不可能である薬剤の使用である。多くの代謝拮抗薬化学療法は、核酸、RNA、及びDNAの産生を妨害する。代謝拮抗薬化学療法剤の例には、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン(XELODA(商標))、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、6-チオグアニン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、アラビノシルシトシンARA-Cシタラビン(CYTOSAR-U(登録商標))、ダカルバジン(dacarbazine)(DTIC-DOME(登録商標))、アゾシトシン(azocytosine)、デオキシシトシン、ピリドミデン(pyridmidene)、フルダラビン(FLUDARA(登録商標))、クラドラビン(cladrabine)、2-デオキシ-D-グルコース等が含まれる。
【0153】
「化学療法抵抗性」がんは、がん患者が、化学療法レジメンを受けている間に増悪したこと(すなわち、患者が「化学療法不応性」であること)、または患者が、化学療法レジメンの完了後12ヶ月以内に(例えば、6ヶ月以内に)増悪したことを意味する。
【0154】
「プラチン」という用語は、本明細書において、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンを含むが、これらに限定されない白金系化学療法剤を指すのに使用される。
【0155】
「フルオロピリミジン」という用語は、本明細書において、カペシタビン、フロキシウリジン、及びフルオロウラシル(5-FU)を含むが、これらに限定されない代謝拮抗薬化学療法剤を指すのに使用される。
【0156】
本明細書における療法剤の「固定」または「一定」用量は、患者の体重(WT)または体表面積(BSA)に関係なくヒト患者に投与される用量を指す。よって、この固定用量または一定用量は、mg/kg用量またはmg/m用量としてではなく、むしろ療法剤の絶対量として提供される。
【0157】
本明細書における「負荷」用量は、一般に、患者に投与される療法剤の初期用量を含み、1つ以上のその維持用量(複数可)が続く。一般に、単一負荷用量が投与されるが、複数の負荷用量が本明細書で企図される。通常、投与される負荷用量(複数可)の量は、投与される維持用量(複数可)の量を超過し、かつ/または負荷用量(複数可)は、療法剤の所望の定常状態における濃度を、維持用量(複数可)を用いて達成することができるものよりも早く達成するように、維持用量(複数可)よりも頻繁に投与される。
【0158】
本明細書における「維持」用量は、治療期間にわたって患者に投与される療法剤の1回以上の用量を指す。通常、維持用量は、ほぼ毎週、およそ2週間毎、およそ3週間毎、またはおよそ約4週間毎の治療間隔で投与されるが、3週間毎等の治療間隔で投与されることが好ましい。
【0159】
「バイアル」は、液体または凍結乾燥調製物を保持するのに好適な容器である。一実施形態では、バイアルは、単回使用バイアル、例えば、20mmの栓付きの10mlの単回使用ガラスバイアル等の栓を有する10mlまたは20mlの単回使用バイアルである。
【0160】
「添付文書」は、米国食品医薬品局(FDA)または他の規制当局の指示により、全ての処方薬のパッケージ内に入れなければならないリーフレットである。リーフレットは、一般に、薬物の商標、その一般名、及びその作用機序を含み、その適応症、禁忌、警告、使用上の注意、有害作用、及び剤形を記載し、推奨される投与の用量、時間、及び経路に関する指示を含む。
【0161】
「安全性データ」という表現は、有害事象の有症率及び重症度を示して薬物の安全性に関して使用者に指導する対照臨床試験において得られるデータに関し、薬物に対する有害反応を監視して防止する方法に対する指導を含む。
【0162】
「効能データ」は、薬物ががん等の疾患を効果的に治療すること示す、対照臨床試験で得られるデータを指す。
【0163】
「安定した混合物」は、2つ以上の薬物、例えば、ペルツズマブとトラスツズマブとの混合物を指すとき、混合物中の薬物の各々が、1つ以上の分析アッセイによって評価される場合に、混合物中でその物理的及び化学的安定性を本質的に保持していることを意味する。この目的のための例示的な分析アッセイには、色、外観、及び透明度(CAC)、濃度及び濁度分析、微粒子分析、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、イメージキャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)、ならびに効力アッセイが含まれる。一実施形態では、混合物は、5℃または30℃で最長24時間にわたって安定することが示されている。
【0164】
「組み合わせ」投与は、併用投与、及び別々の投与を包含し、この事例において、1つの療法剤の投与は、別の療法剤の投与前、これらの投与と同時に、及び/またはこれらの投与後に起こる可能性がある。したがって、ペルツズマブ及びトラスツズマブを併せて投与(またはペルツズマブとトラスツズマブとの組み合わせ投与)することは、併用投与及びいずれかの順序での別々の投与を包含する。
【0165】
1つ以上の他の薬物と「同時に」投与される薬物は、同じ治療周期中に、1つ以上の他の薬物と同じ治療日に、及び任意に、1つ以上の他の薬物と同じ時間に投与される。例えば、3週間毎に付与されるがん療法の場合、同時に投与される薬物は各々、3週間周期の1日目に投与される。
【0166】
「同時投与」という用語は、本明細書において、例えば、2つの別々の皮下(SC)注射としてのペルツズマブ及びトラスツズマブの投与を含む、別々の投与を指すために使用される。
【0167】
「同時混合される」という用語は、本明細書において、例えば、別々のペルツズマブ及びトラスツズマブ製剤を混合することによって、SC投与の直前にその場で医療従事者によって調製される単一の皮下(SC)注射としてのペルツズマブ及びトラスツズマブの投与を含む、単一の注射としての同時投与を指すために使用される。
【0168】
「共製剤」という用語は、本明細書において、例えば、皮下(SC)投与のために一緒に製剤化されたペルツズマブ及びトラスツズマブを含む単一の既製の薬学的製剤を含む、2つ以上の活性成分を含む単一の既製の薬学的製剤を指す。
【0169】
II.抗体及び化学療法組成物
(i)HER2抗体
抗体の産生に使用されるHER2抗原は、例えば、所望のエピトープを含有する、HER2受容体の細胞外ドメインまたはその一部分の溶解形態であり得る。あるいは、細胞表面でHER2を発現する細胞(例えば、HER2を過剰発現するように形質転換されたNIH-3T3細胞、またはSK-BR-3細胞等のがん細胞株、Stancovski et al.PNAS(USA)88:8691-8695(1991)を参照されたい)が抗体を作り出すのに使用され得る。抗体を作り出すために有用なHER2受容体の他の形態は、当業者に明らかであろう。
【0170】
本明細書におけるモノクローナル抗体を作製するための様々な方法は、当技術分野で利用可能である。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されているハイブリドーマ法を使用して、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。
【0171】
本発明に従って使用される抗HER2抗体、ペルツズマブ、及びトラスツズマブは、市販されている。
【0172】
米国特許第6,949,245号は、HER2を結合し、HER受容体のリガンド活性化を遮断する例示的なヒト化HER2抗体の産生を記載している。
【0173】
ヒト化HER2抗体には、具体的には、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5,821,337号の表3に記載され、かつ本明細書で定義されるようなトラスツズマブ、ならびに本明細書に記載及び定義されるようなヒト化2C4抗体、例えば、ペルツズマブが含まれる。
【0174】
本明細書におけるヒト化抗体は、例えば、ヒト可変重鎖ドメインに組み込まれる非ヒト超可変領域残基を含み得、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されている可変ドメイン番号付けシステムを利用する69H、71H、及び73Hからなる群から選択される位置にフレームワーク領域(FR)置換をさらに含み得る。一実施形態では、ヒト化抗体は、69H、71H、及び73H位のうちの2つまたは全てでFR置換を含む。
【0175】
本明細書における目的とする例示的なヒト化抗体は、可変重ドメイン相補性決定残基GFTFTDYTMX(配列番号17)(式中、Xは、好ましくはDまたはSである)、DVNPNSGGSIYNQRFKG(配列番号18)、及び/またはNLGPSFYFDY(配列番号19)を含み、任意に、例えば、修飾が抗体の親和性を本質的に維持または改善する、それらのCDR残基のアミノ酸修飾を含む。例えば、本発明の方法に使用するための抗体バリアントは、上記の可変重CDR配列中に約1個~約7個または約5個のアミノ酸置換を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、後述されるように、親和性成熟によって調製され得る。
【0176】
ヒト化抗体は、例えば、直前のパラグラフのそれらの可変重ドメインCDR残基に加えて、可変軽ドメイン相補性決定残基KASQDVSIGVA(配列番号20)、SASYX(式中、Xは好ましくはRまたはLであり、Xは好ましくはYまたはEであり、Xは好ましくはTまたはSである)(配列番号21);及び/またはQQYYIYPYT(配列番号22)を含み得る。かかるヒト化抗体は、任意に、上記のCDR残基のアミノ酸修飾を含み、例えば、これらの修飾は、抗体の親和性を本質的に維持または改善する。例えば、目的とする抗体バリアントは、上記の可変軽CDR配列中に約1個~約7個または約5個のアミノ酸置換を有し得る。かかる抗体バリアントは、例えば、後述されるように、親和性成熟によって調製され得る。
【0177】
本出願はまた、HER2を結合する親和性成熟抗体も企図する。親抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体、例えば、配列番号7及び8のそれぞれ可変軽配列及び/または可変重配列を含む(すなわち、ペルツズマブのVL及び/またはVHを含む)ものであり得る。ペルツズマブの親和性成熟バリアントは、好ましくは、マウス2C4またはペルツズマブの親和性よりも優れた親和性(例えば、HER2-細胞外ドメイン(ECD)ELISAを使用して評定される場合に、約2倍または約4倍~約100倍または約1000倍改善された親和性)を有するHER2受容体に結合する。置換のための例示的な可変重CDR残基には、H28、H30、H34、H35、H64、H96、H99、または2つ以上(例えば、これらの残基の2個、3個、4個、5個、6個、または7個)の組み合わせが含まれる。変化のための可変軽CDR残基の例には、L28、L50、L53、L56、L91、L92、L93、L94、L96、L97、または2つ以上(例えば、これらの残基の2個から3個、4個、5個、または約10個まで)の組み合わせが含まれる。
【0178】
トラスツズマブを含むそのヒト化バリアントを作り出すためのマウス4D5抗体のヒト化は、米国特許第5,821,337号、同第6,054,297号、同第6,407,213号、同第6,639,055号、同第6,719,971号、及び同第6,800,738号、ならびにCarter et al.PNAS(USA),89:4285-4289(1992)に記載されている。HuMAb4D5-8(トラスツズマブ)は、HER2抗原を、マウス4D5抗体より3倍強固に結合し、ヒトエフェクター細胞の存在下においてヒト化抗体の指向性細胞毒性活性を可能にした二次的な免疫機能(ADCC)を有した。HuMAb4D5-8は、VκサブグループIコンセンサスフレームワークに組み込まれた可変軽(V)CDR残基、及びVサブグループIIIコンセンサスフレームワークに組み込まれた可変重(V)CDR残基を含んでいた。抗体は、Vの71、73、78、及び93位(FR残基のKabat番号付け)にフレームワーク領域(FR)置換、ならびにVの66位(FR残基のKabat番号付け)にFR置換をさらに含んでいた。トラスツズマブは、非Aアロタイプヒトγ1Fc領域を含む。
【0179】
ヒト化抗体または親和性成熟抗体の様々な形態が企図される。例えば、ヒト化抗体または親和性成熟抗体は、抗体断片であり得る。あるいは、ヒト化抗体または親和性成熟抗体は、無傷IgG1抗体等の無傷抗体であり得る。
【0180】
(ii)ペルツズマブ組成物
HER2抗体組成物の一実施形態では、この組成物は、主要種ペルツズマブ抗体と、その1つ以上のバリアントとの混合物を含む。本明細書におけるペルツズマブ主要種抗体の好ましい実施形態は、配列番号7及び8における可変軽アミノ酸配列及び可変重アミノ酸配列を含むものであり、最も好ましくは、配列番号11の軽鎖アミノ酸配列及び配列番号12の重鎖アミノ酸配列を含むものである(それらの配列の脱アミド化バリアント及び/または酸化バリアントを含む)。一実施形態では、この組成物は、主要種ペルツズマブ抗体と、アミノ末端リーダー伸張を含むそのアミノ酸配列バリアントとの混合物を含む。好ましくは、アミノ末端リーダー伸張は、抗体バリアントの軽鎖上(例えば、抗体バリアントの1つまたは2つの軽鎖上)にある。主要種HER2抗体または抗体バリアントは、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab=)2断片のFab)であり得るが、好ましくは両方とも全長抗体である。本明細書における抗体バリアントは、その重鎖または軽鎖のうちのいずれか1つ以上にアミノ末端リーダー伸張を含み得る。好ましくは、アミノ末端リーダー伸張は、抗体の1つまたは2つの軽鎖上にある。好ましくは、アミノ末端リーダー伸張は、VHS-を含むか、またはそれからなる。組成物中のアミノ末端リーダー伸張の存在は、N末端配列分析、電荷異質性に関するアッセイ(例えば、カチオン交換クロマトグラフィーまたはキャピラリーゾーン電気泳動)、質量分析法等を含むが、これらに限定されない様々な分析技法によって検出され得る。組成物中の抗体バリアントの量は、一般に、バリアントを検出するために使用される任意のアッセイ(好ましくは、N末端配列分析)の検出限界を構成する量から、主要種抗体の量未満の量までの範囲である。一般に、組成物中の抗体分子の約20%以下(例えば、約1%~約15%、例えば、5%~約15%)が、アミノ末端リーダー伸張を含む。かかるパーセンテージ量は、好ましくは、定量的N末端配列分析またはカチオン交換分析を使用して(好ましくは、高分解能弱カチオン交換カラム、例えば、PROPAC WCX-10(商標)カチオン交換カラムを使用して)決定される。アミノ末端リーダー伸張バリアントの他に、その重鎖の一方または両方にC末端リジン残基を含む抗体、脱アミド化抗体バリアント等を含むが、これらに限定されない主要種抗体及び/またはバリアントのさらなるアミノ酸配列変化が企図される。
【0181】
さらに、主要種抗体またはバリアントは、グリコシル化変形をさらに含み得、その非限定的な例には、そのFc領域に結合したG1もしくはG2オリゴ糖構造を含む抗体、その軽鎖に結合した炭水化物部分を含む抗体(例えば、抗体の1つまたは2つの軽鎖に結合した、例えば、1つ以上のリジン残基に結合した、1つまたは2つの炭水化物部分、例えば、グルコースまたはガラクトース)、1つもしくは2つの非グリコシル化重鎖を含む抗体、またはその1つもしくは2つの重鎖に結合したシアリダーゼ化(sialidated)オリゴ糖を含む抗体等が含まれる。
【0182】
組成物は、遺伝子組換え操作された細胞株、例えば、HER2抗体を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株から回収され得るか、またはペプチド合成によって調製され得る。
【0183】
例示的なペルツズマブ組成物に関するさらなる情報に関して、米国特許第7,560,111号及び同第7,879,325号、ならびにUS2009/0202546A1を参照されたい。
【0184】
(iii)トラスツズマブ組成物
トラスツズマブ組成物は、一般に、主要種抗体(それぞれ、配列番号13及び14の軽鎖配列及び重鎖配列を含む)とそのバリアント形態、特に、酸性バリアント(脱アミド化バリアントを含む)との混合物を含む。好ましくは、組成物中のかかる酸性バリアントの量は、約25%未満、または約20%未満、または約15%未満である。米国特許第6,339,142号を参照されたい。ピークA(両方の軽鎖中でAspに脱アミドされたAsn30)、ピークB(一方の重鎖中でisoAspに脱アミドされたAsn55)、ピーク1(一方の軽鎖中でAspに脱アミドされたAsn30)、ピーク2(一方の軽鎖中でAspに脱アミドされたAsn30、及び一方の重鎖中でisoAspに異性化されたAsp102)、ピーク3(主要ピーク形態、または主要種抗体)、ピーク4(一方の重鎖中でisoAspに異性化されたAsp102)、及びピークC(一方の重鎖中のAsp102サクシニミド(Asu))を含む、カチオン交換クロマトグラフィーによって分解可能なトラスツズマブの形態に関して、Harris et al.,752:233-245(2001)も参照されたい。かかるバリアント形態及び組成物は、本明細書中の本発明に含められる。
【0185】
(iv)ヒアルロニダーゼ酵素を含む皮下製剤
ヒアルロニダーゼ酵素は、まず、浸透促進剤として作用して、他の同時投与される薬物の分散及び吸収を増加する。ヒアルロニダーゼは、SCマトリックスの構成成分である、ヒアルロナンを一過性に加水分解して、皮下組織の細胞外マトリックスの低減された粘度をもたらし、したがって、皮下投与される薬物の改善された全身循環への送達をもたらす。
【0186】
可溶性ヒアルロロニダーゼ(Hyaloronidase)糖タンパク質(sHASEGP)、それらを調製するための方法、及び薬学的組成物中でのそれらの使用は、WO2004/078140に記載されている。例えば、トラスツズマブ等の様々な例示的な抗体と併せて可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質を使用することは、WO2006/091871に記載されている。
【0187】
本発明の製剤中のヒアルロニダーゼ酵素は、例えば、活性物質の吸収を増加することによって、抗HER2抗体(複数可)(例えば、ペルツズマブ及び/またはトラスツズマブ)の全身循環への送達を高める(それは、浸透促進剤として作用する)。ヒアルロニダーゼ酵素はまた、SC間質組織の細胞外構成成分である、ヒアルロナンの可逆的加水分解によって、皮下投与経路を介して、療法用HER2抗体(複数可)(例えば、ペルツズマブ及び/またはトラスツズマブ)の全身循環への送達を増加する。皮下組織におけるヒアルロナンの加水分解は、SC組織の間質のスペースにあるチャネルを一時的に開放し、それによって、療法用抗HER2抗体の全身循環への送達を改善する。加えて、投与は、ヒトにおける低減された疼痛、及びSC組織の容積由来膨潤の減少を示す。
【0188】
ヒアルロニダーゼは、局所的に投与されるとその全効果を局所的に有する。換言すれば、ヒアルロニダーゼは数分で不活性化かつ局所的に代謝され、全身性または長期にわたる効果を有するとは記述されていない。ヒアルロニダーゼは、血流に入ると数分以内で早急に不活性化となり、これは、異なったヒアルロニダーゼ産生物間の同等な生体分布研究を行うための現実的な能力を妨げる。ヒアルロニダーゼ産生物は遠位部位では作用できないので、この特性はまた、任意の潜在的な全身安全性に対する懸念を最小にする。
【0189】
全てのヒアルロニダーゼ酵素の統一的特徴は、化学構造、種供給源、組織源、または同じ種及び組織からの医薬品バッチにおける差異にかかわらず、ヒアルロナンを脱重合するそれらの能力である。それらは、それらの活性が異なる構造を有しているのにかかわらず、同じである(効力は除く)点で珍しい。
【0190】
本発明の製剤によるヒアルロニダーゼ酵素賦形剤は、本明細書に記載される安定した薬学的製剤におけるHER2抗体(複数可)の分子完全性に対して悪影響を有していないことを特徴とする。さらに、ヒアルロニダーゼ酵素は、全身循環へのHER2抗体(複数可)の送達を単に改変するが、全身的に吸収されるHER2抗体(複数可)の療法効果を提供するか、またはそれに寄与し得る任意の特性も有さない。ヒアルロニダーゼ酵素は、全身的に生物学的利用可能ではなく、本発明による安定した薬学的製剤の推奨保管条件でHER2抗体(複数可)の分子完全性に悪影響を及ぼさない。
【0191】
本発明によるいくつかの好適なヒアルロニダーゼ酵素は、従来技術から知られている。好ましい酵素は、ヒトヒアルロニダーゼ酵素、最も好ましくはrHuPH20として既知の組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素である。rHuPH20は、N-アセチルグルコサミンのCと、グルクロン酸のC位との間のβ-1,4結合の加水分解によってヒアルロナンを脱重合する中性活性及び酸活性β-1,4グリコシルヒドロラーゼのファミリーのメンバーである。ヒアルロナンは、皮下間質組織等の結合組織、ならびにある特定の特殊組織、例えば、臍帯及び硝子体液の細胞内基底質で見られるポリサッカライドである。ヒアルロナンの加水分解は、間質組織の粘度を一時的に減少させ、注射された液体、または局在化した漏出液もしくは滲出液の分散を促進し、したがって、その吸収を容易にする。ヒアルロニダーゼの効果は、局所的で、24~48時間以内に発生する組織ヒアルロナンの完全な再構成で可逆的である(Frost,G.I.,“Recombinant human hyaluronidase(rHuPH20):an enabling platform for subcutaneous drug and fluid administration”,Expert Opinion on Drug Delivery,2007;4:427-440)。ヒアルロナンの加水分解を通した結合組織の浸透性の増加は、同時投与された分子の分散及び吸収を増加させるヒアルロニダーゼの能力に関してそれらの効能と相関する。
【0192】
ヒトゲノムは、いくつかのヒアルロニダーゼ遺伝子を含む。PH20遺伝子産生物のみが生理的細胞外条件下で有効なヒアルロニダーゼ活性を有し、延展剤として作用する一方、酸活性のヒアルロニダーゼはこの特性を有さない。
【0193】
rHuPH20は、現在療法的用途に利用可能な最初で唯一の組換えヒトヒアルロニダーゼ酵素である。自然発生するヒトPH20タンパク質は、原形質膜にそれを係留するカルボキシ末端アミノ酸に結合した脂質アンカーを有する。Halozymeによって開発されたrHuPH20酵素は、脂質結合の原因であるカルボキシ末端においてアミノ酸を欠く切断欠失バリアントである。これは、ウシ精巣調製物で見られるタンパク質に類似した可溶性の中性pH活性酵素の上昇を付与する。rHuPH20タンパク質は、分泌プロセス中にN末端から除去される35アミノ酸のシグナルペプチドと共に合成される。成熟rHuPH20タンパク質は、いくつかのウシヒアルロニダーゼ調製物で見られるものとオルソロガスな真正のN末端アミノ酸配列を含む。
【0194】
動物由来PH20及び組換えヒトrHuPH20を含むPH20ヒアルロニダーゼは、N-アセチルグルコサミンのC位と、グルクロン酸のC位との間のβ-1,4結合の加水分解によってヒアルロナンを脱重合する。テトラサッカライドは、最も小さい消化産生物である(Weissmann,B.,“The transglycosylative action of testicular hyaluronidase”,J.Biol.Chem.,1955;216:783-94)。このN-アセチルグルコサミン/グルクロン酸構造は、組換え生物学的産生物のN結合グリカンに見られず、よって、rHuPH20は、それが共に製剤化される抗体、例えば、ペルツズマブ、またはペルツズマブ及びトラスツズマブ等のグリコシル化に影響を及ぼさないであろう。rHuPH20酵素自体は、モノクローナル抗体に見られるものと類似のコア構造と共に分子当たり6つのN結合グリカンを有する。予期されるように、これらのN結合構造は、経時的に変化せず、これらのN結合グリカン構造に対するrHuPH20の酵素活性の欠如を確認する。rHuPH20の短い半減期及びヒアルロナンの一定の合成が組織に対する酵素の短い局所的な作用をもたらす。
【0195】
本発明による皮下製剤中に存在するヒアルロニダーゼ酵素は、組換えDNA技術を使用することによって調製され得る。このように、同じタンパク質(同一のアミノ酸配列)が常に得られ、例えば、組織からの抽出中に同時精製される汚染タンパク質によって引き起こされるアレルギー反応が避けられることが保証される。本明細書において例証される製剤中で使用されるヒアルロニダーゼ酵素は、ヒト酵素、つまりrHuPH20である。
【0196】
rHuPH20(HYLENEX(商標))のアミノ酸配列はよく知られており、CAS登録番号75971-58-7の下で利用可能である。おおよその分子量は、61kDaである。
【0197】
ヒアルロニダーゼ産生物の安全性及び効能は確立されているが、ヒアルロニダーゼ含有製剤を使用する、皮下送達に関して承認されているのは2つのモノクローナル抗体のみである(Herceptin(登録商標)及びMabThera(登録商標))。同じ製剤(2つの抗体の共製剤)中に2つの抗体を含む既知のヒアルロニダーゼ含有皮下製剤は存在しない。
【0198】
ヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、本発明による製剤の調製で使用される実際のヒアルロニダーゼ酵素に依存する。ヒアルロニダーゼ酵素の有効量は、以下のさらなる開示に基づいて当業者によって容易に決定され得る。
【0199】
ヒアルロニダーゼ酵素は、同時投与される抗HER2抗体(複数可)、例えば、ペルツズマブ及び/またはトラスツズマブの抗体の分散及び吸収の増加をもたらすのに十分な量で提供されるべきである。ヒアルロニダーゼ酵素の最小の量は、少なくとも約150U/mlである。より具体的には、ヒアルロニダーゼ酵素の有効量は、約150U/ml~約16,000U/ml、または約600U/ml~約16,000ml、または約1,000~16,000U/mlであり、ここで、後者は、100,000U/mgの推測される特異的活性に基づいて、約0.01mg~0.16mgのタンパク質に対応する。あるいは、ヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、約1,500~12,000U/ml、またはより具体的には、約2,000U/mlまたは約12,000U/mlである。特定される量は、製剤に最初に添加されるヒアルロニダーゼ酵素の量に対応する。最終製剤中で測定されるヒアルロニダーゼ酵素の濃度は、ある特定の範囲内で異なり得る。ヒアルロニダーゼ酵素の抗HER2抗体(複数可)に対する比(w/w)は、一般に、1:1,000~1:8,000の範囲、または1:4,000~1:5,000もしくは約1:6,000の範囲にある。
【0200】
ヒアルロニダーゼ酵素は、動物、ヒト試料であり得るか、または以下にさらに記載されるように組換えDNA技術に基づいて製造され得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、本発明における皮下HER2抗体製剤は、約600U/mL~約16,000U/mL、もしくは約1,000U/mL~約16,000U/mL、または約1,000~約2,000U/mlの濃度の、または約600U/ml、または約667U/mL、または約1,000U/mL、または約2,000U/mL、好ましい約1,000U/mLの濃度の組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)を含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、本発明の高濃度の安定しているペルツズマブ製剤は、600mgまたは1200mgの固定用量のペルツズマブと、1,000U/mLの濃度の組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)とを含む。
【0203】
上述されるように、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、抗HER2製剤においてさらなる賦形剤とみなされ得る。可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、抗HER2製剤の製造時に抗HER2製剤に添加され得るか、または注射の直前に添加され得る。あるいは、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、別々の注射として提供され得る。後者の場合、可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、皮下注射が行われる前に好適な希釈剤で再構成される必要がある凍結乾燥形態で別々のバイアルで提供され得るか、または製造業者によって液体製剤としてのいずれかで提供され得る。抗HER2製剤及び可溶性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質は、別々の実体として調達され得るか、または注射構成成分及びそれらの皮下投与のための好適な指示の両方を含むキットとしても提供され得る。製剤の1つまたは両方の再構成及び/または投与のための好適な指示も提供され得る。
【0204】
rHuPH20等のヒアルロニダーゼ酵素に加え、本発明の皮下製剤は、1つ以上の緩衝剤、1つ以上の安定剤、及び/または1つ以上の界面活性剤等の1つ以上の追加の賦形剤を含む。
【0205】
本発明による製剤中で使用される緩衝剤は、約5.0~約7.0、または約5.0~約6.0、または約5.3~約5.8、または約5.5~約5.7の範囲のpHを有する。
【0206】
皮下(SC)ペルツズマブ製剤に関して、約5.7のpHが、最も好適であることが見出されている。皮下(SC)トラスツズマブ製剤の好ましいpHは、約5.5である。
【0207】
この範囲のpHを制御する緩衝剤の例には、アセテート、スクシネート、グルコネート、ヒスチジン、シトレート、グリシルグリシン、及び他の有機酸緩衝剤が含まれる。本発明による最も好適な緩衝剤は、例えば、塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジン、好ましくは塩化ヒスチジン緩衝剤等のヒスチジン緩衝剤である。塩化ヒスチジン緩衝剤は、希釈塩酸でL-ヒスチジン(遊離塩基、固体)を滴定することによって調製され得る。特に、ヒスチジン緩衝剤または塩化ヒスチジン緩衝剤は、5.5±0.6のpH、より具体的には、約5.3~約5.8のpHのL-ヒスチジン緩衝剤であり、最も具体的には、5.5または5.7のpHを有する。
【0208】
安定剤は、例えば、サッカライド、またはモノサッカライド、ジサッカライド、トリサッカライド、ポリサッカライド、糖アルコール、還元糖、非還元糖等を含むサッカライドの組み合わせであり得る。本明細書におけるサッカライドの例には、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、デキストラン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、シリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、及びイソマルツロースが含まれる。トラスツズマブSC製剤中で使用するのに特に好適なサッカライドは、トレハロースであり、ペルツズマブSC製剤中で使用するのに特に好適なサッカライドは、スクロースである。
【0209】
界面活性剤は、好ましくは、非イオン性界面活性剤である。本明細書における界面活性剤の例には、ポリソルベート、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、トリトン(Triton)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、またはステアリルスルホベタイン、ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、またはステアリルサルコシン、リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、またはセチルベタイン、ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノールアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミドプロピルベタイン、またはイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、またはイソステアラミドプロピルジメチルアミン、メチルココイルタウリン酸ナトリウムまたはメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム、さらにMONAQU AT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68等)等が含まれる。ポリソルベート20(PS20)及びポリソルベート80(PS80)はそれぞれ、本明細書において記載される製剤中で使用するのに特に好適である。
【0210】
III.療法のための患者の選択
HER2発現または増幅の検出は、本発明による治療のための患者を選択するために使用され得る。いくつかのFDA承認済みの市販アッセイは、HER2陽性、HER2発現、HER2過剰発現、またはHER2増幅がん患者を特定するために利用可能である。これらの方法には、HERCEPTEST(登録商標)(Dako)及びPATHWAY(登録商標)HER2(免疫組織化学(IHC)アッセイ)、ならびにPathVysion(登録商標)、及びHER2 FISH pharmDx(商標)(FISHアッセイ)が含まれる。使用者は、各アッセイの妥当性確認及び性能能力に関する情報に関して、特定のアッセイキットの添付文書を参照しなければならない。
例えば、HER2発現または過剰発現は、IHCによって、例えば、HERCEPTEST(登録商標)(Dako)を使用することによって分析され得る。腫瘍生体組織からのパラフィン包埋組織切片をIHCアッセイに供し、以下の通りHER2タンパク質染色強度基準に適合させることができる。
【0211】
スコア0は、染色が観察されないか、または腫瘍細胞の10%未満で膜染色が観察される。
【0212】
スコア1+は、かすかな/ほとんど認識不可能な膜染色が腫瘍細胞の10%超で検出される。細胞は、それらの膜の一部分が染色されるだけである。
【0213】
スコア2+は、弱~中度の完全膜染色が腫瘍細胞の10%超で観察される。
【0214】
スコア3+は、中~強度の完全膜染色が腫瘍細胞の10%超で観察される。
【0215】
HER2過剰発現評定に関するスコアが0または1+であるそれらの腫瘍は、HER2陰性と特徴付けられ得るが、スコアが2+または3+であるそれらの腫瘍は、HER2陽性と特徴付けられ得る。
【0216】
HER2を過剰発現する腫瘍は、細胞1個当たりに発現されるHER2分子のコピーの数に対応する免疫組織化学的スコアによって評価され得、生化学的に決定され得る。
0=0~10,000個のコピー/細胞、
1+=少なくとも約200,000個のコピー/細胞、
2+=少なくとも約500,000個のコピー/細胞、
3+=少なくとも約2,000,000個のコピー/細胞。
【0217】
チロシンキナーゼのリガンド非依存的活性化をもたらす3+レベルのHER2の過剰発現(Hudziak et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7159-7163(1987))は、乳癌のおよそ30%で発生し、これらの患者において、無再発生存期間及び全生存期間が減少する(Slamon et al.,Science,244:707-712(1989)、Slamon et al.,Science,235:177-182(1987))。
【0218】
HER2タンパク質過剰発現及び遺伝子増幅の存在は相関性が高く、よって、あるいは、または加えて、遺伝子増幅を検出するためのインサイツハイブリダイゼーション(ISH)アッセイ、例えば、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)アッセイの使用も、本発明による治療に適切な患者の選択に用いられ得る。INFORM(商標)(Ventana,Arizonaによって販売)またはPathVysion(登録商標)(Vysis,Illinois)等のFISHアッセイを、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織に対して実施して、腫瘍におけるHER2増幅(もしある場合)の程度を決定することができる。
【0219】
最も一般的には、HER2陽性状態は、前述の方法のいずれかを使用する、保管パラフィン包埋腫瘍組織を使用して確認される。
【0220】
好ましくは、2+もしくは3+IHCスコアを有するか、及び/またはFISHもしくはISH陽性であるHER2陽性患者が、本発明による治療のために選択される。3+IHCスコア及びFISH/ISH陽性を有する患者は、本発明による治療に特に好適である。
【0221】
また、HER2指向型療法への反応性と関連するHER2変異が特定されている。かかる変異には、HER2のエクソン20中の挿入、HER2のアミノ酸残基755~759周囲での欠失、変異G309A、G309E、S310F、D769H、D769Y、V777L、P780-Y781insGSP、V842I、R896C (Bose et al.,Cancer Discov 2013;3:1-14)のいずれか、ならびに2つ以上の固有の検体で見られるCOSMICデータベース中の以前に報告された同一の非同義推定活性化変異(または、インデル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0222】
ペルツズマブを用いる療法のための患者をスクリーニングするための代替的アッセイに関しては、米国特許第7,981,418号及び実施例も参照されたい。
【0223】
IV.薬学的製剤
本発明に従って使用されるHER2抗体の療法製剤は、所望の純度を有する抗体を任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合する(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))ことによって、一般には、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保管用に調製される。抗体の結晶も企図される(米国特許出願第2002/0136719号を参照されたい)。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量及び濃度においてレシピエントに対して無毒性であり、それらには、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム:塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン:カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン等のアミノ酸;モノサッカライド、ジサッカライド、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール等の糖類:ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれる。凍結乾燥抗体製剤は、WO97/04801に記載されており、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0224】
凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号、同第6,685,940号、及び同第6,821,515号に記載されており、参照によって本明細書中に明示的に組み込まれる。好ましいHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)製剤は、440mgのトラスツズマブと、400mgのアルファ、α-トレハロース脱水物と、9.9mgのL-ヒスチジン-HClと、6.4mgのL-ヒスチジンと、1.8mgのポリソルベート20と、USPと、を含む静脈内(IV)投与のための、滅菌の白色から淡黄色の防腐剤不含の凍結乾燥粉末である。20mLの静菌注射用水(BWFI)の再構成は、防腐剤として1.1%のベンジルアルコールを含有し、21mg/mLのトラスツズマブを含有するおよそ6.0のpHの多回用量溶液が得られる。さらなる詳細に関して、トラスツズマブ処方情報を参照されたい。
【0225】
療法用途用のための好ましいペルツズマブ製剤は、20mMの酢酸ヒスチジン中の30mg/mLのペルツズマブと、120mMのスクロースと、0.02%のポリソルベート20とをpH6.0で含む。代替的ペルツズマブ製剤は、25mg/mLのペルツズマブと、10mMのヒスチジン-HCl緩衝剤と、240mMのスクロースと、0.02%のポリソルベート20とをpH6.0で含む。
【0226】
実施例に記載される臨床試験で使用されたプラセボの製剤は、活性剤を含まない、ペルツズマブの等価物である。
【0227】
本明細書における製剤は、治療されている特定の適応症に対する必要に応じて、2つ以上の活性化合物、好ましくは相互に悪影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物も含有し得る。HER二量体化阻害剤と併用され得る様々な薬物は、下記の「方法」の項に記載される。かかる分子は、好適には、意図される目的のために有効な量で組み合わせて存在する。
【0228】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0229】
本発明の方法で使用するのに好適な例示的な特異的製剤は、以下の通りである。
【0230】
ペルツズマブIV:静脈点滴のために濃縮した420mg/14mlのペルツズマブは、20mmの栓を有する20mlの単回使用ガラスバイアルに供給された滅菌の、透明からわずかに乳白光の無色から薄い茶色の液体である。各単回使用バイアルは、20mMのL-酢酸ヒスチジン(pH6.0)中で30mg/mLの濃度の420mgのペルツズマブと、120mMのスクロースと、0.02%のポリソルベート20とを含有する。
【0231】
rHuPH20を有するペルツズマブSC:s.c.注射のためのrHuPH20溶液を有する600mg/5mlのペルツズマブは、20mmの栓を有する10mlの単回使用バイアルに供給された滅菌の、防腐剤不含で無色からわずかに茶色がかった液体である。バイアルは、約5.4mlの医薬品で充填された5.0mlの研究薬物の送達及び導入を可能にするために充填される。各バイアルは、pH5.7で賦形剤スクロースと、ポリソルベート20と、メチオニンと、rHuPH20(2000U/mL)とを含有するL-酢酸ヒスチジン緩衝剤中に120mg/mLのRO4368451を含有する製剤から構成される。
【0232】
rHuPH20を有する特異的ペルツズマブSC製剤は、下記の成分を有する。
120mg/mLのペルツズマブ
240mMのスクロース
0.02%のポリソルベート20
10mMのメチオニン
2000U/mLのrhuPH20
20mMのヒスチジン/アセテート
pH5.7
【0233】
rHuPH20を有さないペルツズマブSC:s.c.注射のための500mg/5mlのペルツズマブ溶液は、20mmの栓を有する10mlの単回使用ガラスバイアルに供給された滅菌の、防腐剤不含で無色からわずかに茶色がかった液体である。バイアルは、5.0mlの研究薬物の送達及び導入を可能にするために充填される。各バイアルは、pH5.7で賦形剤スクロースと、ポリソルベート20と、メチオニンとを含有するL-酢酸ヒスチジン緩衝剤中に120mg/mLのペルツズマブを含有する製剤から構成される。
【0234】
トラスツズマブSC:皮下投与のためのトラスツズマブは典型的には、下記の成分を含有する:組換えヒトヒアルロニダーゼ(rHuPH20)、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン塩酸塩-水和物、α,α-トレハロース脱水物、L-メチオニン、ポリソルベート20、注射用水、600mg/5mlのトラスツズマブ。s.c.注射のためのトラスツズマブ溶液は、20mmの栓を有する6mlの単回使用ガラスバイアルに供給された滅菌の、防腐剤不含で無色からわずかに茶色がかった液体であり、各バイアルは、pH5.5で賦形剤トレハロースと、ポリソルベート20と、メチオニンと、rHuPH20(2000U/mL)とを含有するL-ヒスチジン-HCl緩衝剤中に120mg/mLのトラスツズマブを含有する製剤から構成される。
【0235】
特異的トラスツズマブSC製剤は、下記の成分を有する。
120mg/mLのトラスツズマブ
210mMのトレハロース
0.04%のポリソルベート20
10mMのメチオニン
2,000U/mLのrHuPH20
20mMのヒスチジン-HCl
pH5.5
【0236】
特異的ペルツズマブ-トラスツズマブSC固定用量組み合わせ(FDC)の負荷剤形は、下記の組成を有する:s.c.注射のための15mlの溶液中の600mgのトラスツズマブ及び1,200mgのペルツズマブは、20mmの栓を有する20mlの単回使用ガラスバイアルに供給された滅菌の、防腐剤不含で無色からわずかに茶色がかった液体であり、各バイアルは、pH5.5で賦形剤トレハロースと、スクロースと、ポリソルベート20と、メチオニンと、rHuPH20(1,000U/mL)とを含有するL-ヒスチジン-HCl緩衝剤中に40mg/mLのトラスツズマブ及び80mg/mlのペルツズマブを含有する製剤から構成される。
【0237】
特異的ペルツズマブ-トラスツズマブSC固定用量組み合わせ(FDC)の維持剤形は、下記の組成を有する:s.c.注射のための10mlの溶液中の600mgのトラスツズマブ及び600mgのペルツズマブは、20mmの栓を有する15mlの単回使用ガラスバイアルに供給された滅菌の、防腐剤不含で無色からわずかに茶色がかった液体であり、各バイアルは、pH5.5で賦形剤トレハロースと、スクロースと、ポリソルベート20と、メチオニンと、rHuPH20(1,000U/mL)とを含有するL-ヒスチジン-HCl緩衝剤中に60mg/mLのトラスツズマブ及び60mg/mlのペルツズマブを含有する製剤から構成される。
【0238】
V.治療方法
静脈内投与に関して、ペルツズマブ及びトラスツズマブは、前述の情報に従って投与される。
【0239】
ペルツズマブは、典型的には、静脈内点滴によって3週間毎に投与され、これは、60分にわたって投与される第1の840mgの点滴で開始され、その後、420mgの第2及び任意の後続の静脈内点滴で30~60分にわたって投与される。好適な投与計画のさらなる詳細は、トラスツズマブ処方情報に与えられる。
【0240】
トラスツズマブは、典型的には、静脈内点滴によって3週間毎に投与され、これは、90分にわたって第1の8mg/kgの負荷用量で開始され、その後、6mg/kgの維持用量の第2及び任意の後続の静脈内点滴で30~60分にわたって投与される。好適な投与計画のさらなる詳細は、トラスツズマブ処方情報に与えられる。
【0241】
ペルツズマブ及びトラスツズマブは、任意の順番で、同じ来院時に投与され得る。
【0242】
本発明に従って、ペルツズマブまたはペルツズマブ+トラスツズマブは、皮下投与される。
【0243】
ペルツズマブSCは、典型的には、皮下注射によって3週間毎に投与され、これは、約1200mgの固定負荷用量で開始され、その後、上記に開示されるような及び実施例に記載されるような約600mgの第2及び任意の後続の固定維持用量が続く。注射部位は、左大腿及び右大腿で交互であるべきである。新しい注射は、健康な皮膚の古い部位から少なくとも2.5cmの箇所に付与されるべきであり、赤くなっているか、打撲があるか、柔らかいか、または硬いエリアには付与されるべきではない。
【0244】
トラスツズマブSCは、典型的には、3週間毎に2~5分にわたって600mgの用量で皮下注射として投与される。注射部位は、左大腿及び右大腿で交互であるべきである。新しい注射は、健康な皮膚の古い部位から少なくとも2.5cmの箇所に付与されるべきであり、赤くなっているか、打撲があるか、柔らかいか、または硬いエリアには付与されるべきではない。
【0245】
ペルツズマブ/トラスツズマブSC共製剤は、類似の様式で投与される。
【0246】
ペルツズマブ及びトラスツズマブの共混合皮下投与に関して、シリンジコネクタを使用して、シリンジ内で最終混合物を配合することが必要とされる。皮下注射は、最終的には、使い捨てプラスチックシリンジ及びステンレス鋼針を使用して投与される。
【0247】
VI.製造品
本発明の別の実施形態では、製造品は、がんの治療に有用な材料を含有する。本製造品は、皮下投与のための固定用量のペルツズマブを有するバイアルを含み、ここで、固定用量は、およそ600mgまたはおよそ1200のペルツズマブである。本製造品は、好ましくは、添付文書をさらに含む。添付文書は、固定用量を、HER2発現、例えば、HER2陽性、HER2増幅、またはHER2変異癌を有する患者に単体で、またはトラスツズマブの皮下投与と併せて皮下投与するための指示を提供し得、ここで、併用投与には、上記に定義及び記載されるような、ならびに実施例に記載されるような同時投与、同時混合投与、及び共製剤の投与が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、がんは、乳癌、卵巣癌、腹膜癌、卵管癌、肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胆道癌、及び膀胱癌である。他の実施形態では、がんは、乳癌、腹膜癌、卵管癌、肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胆道癌、及び膀胱癌である。特定の実施形態では、がんは、早期乳癌または転移性乳癌等の乳癌である。
【0248】
一実施形態では、本製造品は、栓が備え付けられた単回使用ガラスバイアルであり、それは、投与される製剤を収容する。
製造品の別の形態は、投与される製剤を収容する、皮下投与のためのステンレス鋼皮下用針が取り付けられ得るシリンジである。
【0249】
一実施形態では、本製造品は、2つのバイアルを含み、ここで、第1のバイアルは、およそ1200mgの固定用量のペルツズマブを含有し、第2のバイアルは、およそ600mgの固定用量のペルツズマブを含有する。
【0250】
別の実施形態では、本製造品は、2つのバイアルを含み、ここで、第1のバイアルは、およそ600mgの固定用量のペルツズマブを含有し、第2のバイアルは、およそ600mgの固定用量のトラスツズマブを含有する。
【0251】
別の実施形態では、本製造品は、約600mgのペルツズマブを収容する単回用量バイアルを含む。
【0252】
IV.生体物質の寄託
下記のハイブリドーマ細胞株を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)、10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110-2209,USA(ATCC)に寄託した:
【0253】
本発明のさらなる詳細が、下記の非限定的な実施例によって例示される。本明細書における全ての引用の開示内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0254】
実施例1
第I相、トラスツズマブとの併用のペルツズマブ皮下用量設定研究
これは、早期乳癌を有する健康な男性ボランティア及び女性患者における、トラスツズマブとの併用の第I相非盲検2パートの多施設臨床ペルツズマブ皮下用量設定研究である。
【0255】
この研究は、PKを基にした手法を適用して、SC製剤を承認済みIV製剤と比較することによって、3週間毎の治療に関するペルツズマブSCの安全性及びPKのために設計される。この用量設定研究において、血清濃度に関してIVと同等であるSC用量を特定することが意図される。ペルツズマブの3週間毎のSC血清Cトラフ濃度は、不明である。
【0256】
この研究において、異なる種類のペルツズマブSC注射を評定する。
・別々の注射としてのトラスツズマブSCを伴うペルツズマブSCまたはトラスツズマブSCを伴わないペルツズマブSCの別々の投与(同時投与)
・単一の注射としてのペルツズマブSC及びトラスツズマブSCの同時投与(同時混合)
・単一の注射としてのペルツズマブ及びトラスツズマブSCの投与(同時混合)
【0257】
最初に、パート1において、健康な男性ボランティア(HMV)は、単回用量のIVまたはSCペルツズマブ(トラスツズマブSCを伴うか、または伴わない)を受けて、同時投与または同時混合注射の両方で付与されるとき、IVペルツズマブと同等な血清濃度をもたらすと予想されるペルツズマブのSC用量(複数可)を選択する。次いで、EBCを有する患者におけるペルツズマブSC用量(複数可)を確認する。
【0258】
パート1(健康なボランティアコーホート)におけるPKデータに基づいて、ペルツズマブ集団PKモデルを使用して、パート2の標的用量(複数可)を特定する。(Garg et al.,Cancer Chemother Pharmacol(2014)74:819-829を参照されたい)。
【0259】
標的用量の選択時及びFDCの実行可能性に関する情報に基づいて、標準治療を完了した早期乳癌(EBC)を有する患者が、パート2に登録されて、パート1で特定された用量(複数可)でペルツズマブSCを受ける。この特定された用量のペルツズマブは、トラスツズマブSCと共に同時投与されるか、トラスツズマブSCと同時混合されるか、または固定用量組み合わせ(FDC)でトラスツズマブSCと共製剤化されるかのいずれかである。パート2は、ペルツズマブSC用量確認、ならびに同時混合及びFDCとのPKの比較を含む。
【0260】
2つのモノクローナル抗体(mAbs)が、およそ15mLまでの体積で投与されるこの研究において、rHuPH20の濃度も評価される。以前は、2000U/mLの吸収促進剤がトラスツズマブSC及びリツキシマブSCと共に使用されていたが、これらは、単一の抗体及び本明細書で研究されるペルツズマブ/トラスツズマブの組み合わせ未満の体積における。
【0261】
より少ないrHuPH20が十分なmAb吸収をもたらすかどうかを決定するために、研究は、両方の抗体が付与される(15mLの体積)ときの2000U/mLの酵素濃度、及び両方の抗体が付与される(15mLの体積)ときの667U/mLの酵素濃度(rHuPH20を含有しないペルツズマブを使用する)を試験するために設計されている。PKパラメータがほぼ同等である場合、低減された量のrHuPH20が、FDC共製剤化製品の開発において使用され得る可能性がある。
【0262】
目標及び評価項目
主要目標
パート1(用量設定)
この研究のパート1の主要目的は、以下の通りである:
・単剤注射(トラスツズマブSCとの同時投与における最終使用のために)としてのペルツズマブSCが付与されるときの静脈内(IV)ペルツズマブと同等な曝露をもたらすペルツズマブの皮下(SC)負荷用量及び維持用量を選択すること。
・単一の注射(同時混合)としてトラスツズマブSCと混合されたペルツズマブSCが付与されるときのIVペルツズマブと同等な曝露をもたらすペルツズマブのSC負荷用量及び維持用量を選択すること。
・ペルツズマブSC及びトラスツズマブSCが同時混合SCであるとき、追加のrHuPH20が必要とされるかどうかを評定すること。
【0263】
パート2(用量確認)
この研究のパート2の主要目的は、以下の通りである:
・トラスツズマブSCとの同時投与の一部として単剤注射として付与されるときのペルツズマブSCの維持用量を確認すること、
または
・単一の注射(同時混合された)でトラスツズマブSCと混合されるか、もしくは既製の単一の注射(固定用量組み合わせ(FDC))でトラスツズマブSCと共製剤化されて付与されるときのペルツズマブSCの維持用量を確認すること。
【0264】
副次的目的
この研究の副次的目的は以下の通りである:
・健康な男性ボランティア(HMV)及び標準乳癌療法を完了した早期乳癌(EBC)を有する女性患者におけるペルツズマブSC単体またはトラスツズマブSC(同時混合されるか、またはFDC)と併せて付与されるペルツズマブSCの安全性及び忍容性を、下記の評価項目に基づいて評定すること:
-米国国立がん研究所の
-有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)v4.03に従ってグレード付けされた、有害事象の発生率、性質、及び重症度、
-バイタルサイン、左室駆出率(LVEF)、及び心電図(ECG)パラメータの変化、
-臨床研究室の結果の変化、
-抗療法抗体(ATA)応答の発生率。
【0265】
研究設計
研究の説明
研究設計の概要
これは、ペルツズマブSCの非盲検2パートの多施設研究である。
【0266】
研究のパート1は、用量設定であり、HMVにおけるペルツズマブSCの負荷用量及び維持用量が決定される。2種類のペルツズマブSC注射が評定される:単剤注射(トラスツズマブSC単剤注射との同時投与における最終使用のため)として付与されるペルツズマブ及び単一の注射でトラスツズマブSCと同時混合されるペルツズマブSC。
【0267】
研究のパート2は、標準乳癌療法を完了したEBCを有する患者におけるペルツズマブSC用量(複数可)を確認する。パート2におけるペルツズマブSC用量は、トラスツズマブSCと共に同時投与されるか、トラスツズマブSCと同時混合されるか、またはFDCとしてトラスツズマブSCと共製剤化される。パート2は、第III相研究の前のペルツズマブSC用量確認、ならびに同時混合及びFDCとのPKの比較を含む。
【0268】
研究スキームに関して図6を参照されたい。安全性は監視され、PK評定のための血液試料は評定の計画に従って採取される。
【0269】
パート1(用量設定)
HMVをコーホート1~8に登録した(コーホート当たり6名の対象)。各対象は、単一の注射を受けた。コーホート2~4は、異なるペルツズマブSC用量を評定した。コーホート5~8は、同時混合されたペルツズマブ+トラスツズマブの用量を評定した。各コーホートにおいて評価した用量は、以下の通りである:
・コーホート1:420mgのペルツズマブIV(対照)
・コーホート2:400mgのペルツズマブSC
・コーホートコーホート3:600mgのペルツズマブSC
・コーホートコーホート4:1200mgのペルツズマブSC
・コーホートコーホート5:600mgのトラスツズマブSC(対照)
・コーホートコーホート6:400mgのペルツズマブSC+600mgのトラスツズマブSC(同時混合)
・コーホートコーホート7:1200mgのペルツズマブSC+600mgのトラスツズマブSC(同時混合)
・コーホートコーホート8:1200mgのペルツズマブSC(rHuPH20を有さない)+600mgのトラスツズマブSC(同時混合)
【0270】
投薬体積を調整することによって、異なるペルツズマブ用量を投与した。SC投薬溶液中、ペルツズマブ及びトラスツズマブの濃度は120mg/mLであり、rHuPH20は2,000U/mLであった。
【0271】
コーホート6及び7は、ペルツズマブSC及びトラスツズマブSCを受け、これらの両方は、2,000U/mLの濃度でrhuPH20を含有したが、コーホート8のHMVは、2,000U/mLの濃度でrhuPH20を含有するトラスツズマブSCと同時混合されたrHuPH20を含有しないペルツズマブSCを付与され、よって、コーホート8によって受けた全体のrhuPH20の濃度は、およそ667U/mLであった。コーホート8は、同時混合注射で投与されるとき、ペルツズマブ及びトラスツズマブのPKに対するより低濃度のrHuPH20の影響を評定するように計画された。
【0272】
観察時間
試験中の安全性を確実にするために、ペルツズマブSCを用いた処置後、かつ3日目の最後まで、安全性及び忍容性に関して、コーホート2の最初の健康なボランティアをよく監視した。コーホート2の展開前に、及びコーホート3または4における投薬の開始前に、3日間のモニタリングを完了した。
【0273】
ペルツズマブSC用量がコーホート2の最初の健康なボランティアにおいて、安全で忍容されると見なされた場合、コーホート2、3、及び4における後続の健康なボランティアを、観察のための3日間の期間を追加することなく並行して処置した。
【0274】
同様に、コーホート6の3名の健康なボランティアを、ペルツズマブ及びトラスツズマブSCを用いて処置し、投薬後3日間、コーホート6の展開前、及びコーホート7または8における投薬の開始前に、安全性及び忍容性に関してよく監視した。
【0275】
ペルツズマブ及びトラスツズマブSC用量がコーホート6の最初の3名の健康なボランティアにおいて、安全で忍容されると見なされた場合、コーホート6における後続の健康なボランティアを、観察のための3日間の期間を追加することなく並行して処置する。
【0276】
コーホート7及び8を同じ時間にオープンした。3名のHMVを、ペルツズマブ及びトラスツズマブSCを用いて処置し、投薬後3日間、それぞれのコーホートの展開前に、安全性及び忍容性に関してよく監視した。
【0277】
ペルツズマブ及びトラスツズマブSC用量がコーホート7及び8の最初の3名の健康なボランティアにおいて、安全で忍容されると見なされた場合、それらのコーホートにおける後続の健康なボランティアを、観察のための3日間の期間を追加することなく並行して処置する。
【0278】
コーホート1及び5の健康なボランティアは、並行して投薬され得、コーホート2の第1の健康なボランティアの前に登録され得る。
【0279】
パート2の用量選択
パート1(コーホート2、3、及び4)におけるペルツズマブSC用量の選択は、組み込まれたトラスツズマブSC PKパラメータの値を有するペルツズマブIV集団薬物動態(集団PK)モデルに基づく。パート1における十分な量のデータが、固定PKパラメータの推定(すなわち、Cトラフ、AUC0-inf、最大血清濃度[C最大]、最大血清濃度の時間[T最大])を可能にすると、ペルツズマブSC(維持)用量(複数可)がパート2に関して選択される。このSC用量は、420mgでのIVペルツズマブの曝露と類似のペルツズマブ曝露を送達するように計算される。同じように、PKパラメータに基づいて、1回のペルツズマブSC(負荷用量)用量が、840mgでのIVペルツズマブの曝露と類似のペルツズマブ曝露を送達するように計算される。ペルツズマブIV集団PKモデルは、パート1のデータを使用してペルツズマブSCパラメータでアップデートされ、SC維持及び負荷用量を正しく特定するために使用される。
【0280】
トラスツズマブSCの600mgの用量を、第Ib相用量設定研究BP22023において決定し、第III相HannaH研究において確認した。
【0281】
計画されたコーホートからの用量が標的濃度とは異なるペルツズマブ曝露をもたらす場合か、または薬物動態の可変性が研究のパート2のための用量を決定するには高すぎる場合、追加の用量設定コーホートがオープンされ得る。
【0282】
パート1のデータを使用して、420mg(維持用量)及び840mg(負荷用量)でのペルツズマブIVの曝露と類似のペルツズマブ曝露を送達するようにペルツズマブSC用量を計算した。コーホートBにおけるペルツズマブ及びトラスツズマブの同時混合投与のために選択されたrHuPH20の濃度は、コーホート7及び8における安全性及びペルツズマブ曝露の同等性に基づいた。
【0283】
パート2(用量確認)
標準(ネオ)アジュバント乳癌療法を完了したEBCを有する女性をパート2に登録した。
【0284】
FDC製品の実行可能性が確認される場合、コーホートB及びCのみ(コーホートAではない;同時投与)がパート2に登録され得る。これは、パート1の用量の確認を可能にし、同時混合注射とFDC製品との間の同等性を示すであろう。同時混合されるときにペルツズマブとトラスツズマブとの間にPK相互作用がある場合か、またはFDCの開発が実行可能でない場合、コーホートAのみがパート2に登録され得、これによって、パート1の用量の確認が可能になるであろう。この研究設計によって、第III相研究のためのペルツズマブSC用量及び製剤の選択肢の選択が可能になり、最少人数の患者の登録を可能にするであろう。よって、パート2の全体スキームは、コーホートAのみ、またはコーホートB及びコーホートCである(185H図2を参照されたい)。各コーホートには、20名の患者が登録され、各患者は、1回の用量のペルツズマブ及びトラスツズマブを受けるであろう。
【0285】
各コーホートには、20名の患者が登録され、各患者は、1回の用量のペルツズマブ及びトラスツズマブを受けた。
・コーホートA:600mgのトラスツズマブSCを伴うペルツズマブSC(パート1で決定された用量)、各薬剤を別々に投与した(同時投与)
または
・コーホートB:600mgのトラスツズマブSCを伴うペルツズマブSC(パート1で決定された用量)、両方の薬剤を1つの注射で投与した(同時混合)
かつ
・コーホートC:600mgのトラスツズマブSCを伴うペルツズマブSC(パート1で決定された用量)、両方の薬剤を一緒に製剤化し、1つの注射で投与した(FDC)。
【0286】
パート1及びパート2で投与された、計画された最も高いペルツズマブSC用量は、1200mgを超えなかった。
【0287】
注記:ペルツズマブ及びトラスツズマブ用量は、投薬体積を調整することによって変更される。SC投薬溶液中、ペルツズマブ及びトラスツズマブの濃度は120mg/mLであり、rHuPH20(存在するとき)の濃度は2000U/mLである。
【0288】
決定図を図7に示す。
【0289】
同時混合注射で投与されるときペルツズマブとトラスツズマブとの間にPK相互作用があった場合か、またはFDCの開発が実行可能でなかった場合、コーホートAのみ(同時投与)をパート2に登録した。この研究設計によって、第III相研究におけるさらなる評価に関してペルツズマブSC用量及び製剤の選択肢の選択が可能になり、最少人数の患者の登録を可能にした。よって、パート2の全体スキームは、コーホートAのみ、またはコーホートB及びコーホートCであった。
【0290】
投薬継続または投薬停止のための基準
安全性、忍容性、及びPKデータを継続的に、かつコーホート、または(必要な場合)追加コーホートの展開前に評定する。開始用量は、ペルツズマブが420mgのIV、ならびに400、600、及び1200mgのSCである。
【0291】
SCコーホートにおける健康なボランティアへの投薬に関して、同意決定を可能にするために、コーホートにおける次の対象への投薬または他のコーホートのオープン前に、ある特定の対象の関連する安全性及び忍容性データを3日後に精査する。
【0292】
治験者、及びRoche医療監督者、ならびに治験者または医療監督者がこの決定に関して支援が必要だと考える任意の他の人によって共同的に、投薬を継続するための決定が行われる。
【0293】
用量は、前述の健康なボランティアまたはEBCにおける忍容性または安全性が治験者及び医療監督者によって判断されたときに許容されない場合、一切の他の健康なボランティアまたはEBCにさらに投与されることはない。投薬は、下記に列挙される事象のいずれかが発生する場合、それらの発生が治療の適用に関連してないことが明白でない限り、一切の他の健康なボランティアまたはEBCにさらに投与されるべきではない。
・重度の薬物関連有害事象
・NCI CTCAEによる過敏反応(グレード3~5)
・>10%ポイントのLVEF低下または<50%へのLVEF低下(HMVに関する)
・>10%ポイントのLVEF低下及び<50%へのLVEF低下(EBCに関する)
・反復評定は、第1の記録された低下の3週間以内に実施される必要があり、症例は、循環器専門医によって精査される必要がある。ニューヨーク心臓病学会(NYHA)のクラスII以上のうっ血性心不全(CHF)は、循環器専門医によって確認されるべきである。
【0294】
これらは単にガイドラインであり、医療監督者と共に治験者が例外を設け得ることが明確にされるべきである。しかし、かかる例外が設けられるときには、その理由が電子症例報告書(eCRF)上で明確に記録されるべきである。
【0295】
研究の終了及び期間
この研究の終了は、最後の患者の最後の訪問(LPLV)が起こる日として定義される。LPLVは、最後の患者が登録された7ヶ月後に起こると予想される。第1の患者のスクリーニングから研究の終了までの研究の総期間は、およそ16~24ヶ月と予想される。健康なボランティア/患者に関しては、スクリーニングから経過観察まで、最大34週になる(スクリーニングに最大4週間、ならびに研究の実施及び経過観察に30週間)。
【0296】
各研究の参加者(HMV及びEBC患者)に関して、スクリーニング期間は最大4週間であり、経過観察は研究薬物の投与後のおよそ7ヶ月間行われた。
【0297】
材料及び方法
研究集団
パート1の組入れ基準
HMVは、下記の研究登録基準を満たさなければならない:
サイン済み同意説明文書
・健康な男性対象で、18歳~45歳が含まれる。
・治験者の判断における研究プロトコルを遵守することができる。
・心エコー図(ECHO)またはマルチゲート収集(MUGA)スキャンによって測定されるLVEF≧55%。
・18~32kg/mの肥満度指数(BMI)が含まれる。
・下記に定義されるような、禁欲(異性間性交を避けること)の状態を保つか、または避妊法の使用に対する同意、及び精子の供与を避けることに対する同意:
・妊娠する可能性のある女性パートナーがいる場合、男性は、治療期間中、ならびにペルツズマブ及び/またはトラスツズマブの投与後の少なくとも7ヶ月間、禁欲を保つか、または1年当たり<1%の不成功率を共にもたらすコンドーム+追加の避妊法を使用しなければならない。性的禁欲の信用性は、臨床試験の期間、及び患者の好ましく、かつ通常の生活スタイルと関連して評価されるべきである。定期禁欲(例えば、周期避妊法、排卵法、排卵兆候体温法、または排卵後法)及び腟外射精は、許容されない避妊法である。
【0298】
・男性は、これと同じ期間の間、精子の供与を避けなければならない。
・妊娠中の女性パートナーがいる場合、男性は、胎児への曝露を避けるために、治療期間中、ならびにペルツズマブ及び/またはトラスツズマブの投与後の少なくとも7ヶ月間、禁欲を保つか、またはコンドームを使用しなければならない。
・詳細な既往歴及び手術歴及び禁忌症がないこと。
・大腿の注射が意図されるエリアにおいて、不明瞭な入れ墨、色素沈着、または病変の可能性がない無傷の普通肌。
【0299】
パート1の除外基準
・下記の基準のいずれかを満たすHMVは、研究登録から除外される:
・地域の標準に応じた、依存性薬物に関する陽性尿検査
・肝炎Bウィルス(HBV)、肝炎Cウィルス(HCV)、またはヒト免疫不全ウィルス(HIV)1もしくは2検査の陽性結果
・HBV、HCV、またはHIVへの曝露歴
・活性ウィルス肝炎感染(肝炎BまたはC)またはHIV感染
・収縮期血圧(BP)≧140mmHgもしくは<90mmHg、または拡張期血圧>0mmHgもしくは<50mmHg
・研究薬物の投与前の10日以内または消失半減期の5倍以内(どちらか長い方)の禁止医薬品または薬草療法の使用
・臨床検査結果における臨床的に有意な異常(肝臓パネル及び腎臓パネル、完全血球数、化学パネル、ならびに尿分析を含む)
・下記を含むが、これらに限定されないスクリーニングまたはベースラインECGにおける臨床的に関連するECG異常:
・QTc間隔(QTcB>450ミリ秒)
・特記すべき安静時頻脈(HR>100bpm)
・具体的な時点における最高の任意のベースラインQTcと最低の任意のベースラインQTcとの間の差異>30ミリ秒
・QT間隔不正確の測定(例えば、フラットT波、不整脈等)
・心房細動、心房粗動、右脚もしくは左脚ブロック、ウォルフ-パーキンソン-ホワイト症候群、または心臓ペースメーカーの根拠
・一切の他の著しい異常
・一切の心臓病態またはLVEF<55%であった既往歴
・スクリーニング前、90日以内の治験薬物またはデバイス研究への参加
・スクリーニング前、3ヶ月以内の輸血>500mL
・ヒアルロニダーゼ、ハチ、もしくはハチ毒、またはrHuPH20の製剤中の任意の他の成分に対する既知のアレルギー(Hylenex(登録商標)組換え[ヒアルロニダーゼヒト注射])
・組換えヒトまたはヒト化抗体の研究治療のいずれかまたは賦形剤に対する既知の過敏症
・自然に発生するか、または任意の前薬物投与後の過敏症または著しいアレルギー反応の既往歴
・明らかな臨床的に関連する、過敏症、アレルギー、または重度の心疾患の家族の既往歴
・一切のプロトコル特異的結果評定を妨害し得る下肢の浮腫または下肢の病変(例えば、蜂巣炎、リンパ管疾患または手術歴、既存の疼痛症候群、以前のリンパ節切開等)
・一切の臨床的に関連する全身疾患(例えば、悪性腫瘍、真性糖尿病、胃腸疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、循環器疾患、リウマチ疾患、または肺疾患)の既往歴
・乳癌の既往歴、乳癌の治療、またはアントラサイクリンもしくは他の心毒性薬物を用いた治療
・研究の実施を妨害し得るか、または治療が研究の実施を妨害し得るか、または治験者の意見として、この研究における対象に対する許容できない危険性を引き起こし得る現在の疾患または病態
・吸入コルチコステロイドを除く、コルチコステロイド(用量≧10mg/日のメチルプレドニゾロン)を用いた現在の慢性的な毎日の治療(>3ヶ月間の継続)
・研究の登録前、7日以内の感染のためのIV抗生物質の投与
・研究登録基準:パート2(早期乳癌を有する女性患者)
【0300】
パート2の組入れ基準
・患者は下記の研究登録基準を満たさなければならない:
サイン済み同意説明文書
・年齢≧18歳の女性
・治験者の判断における研究プロトコルを遵守することができる。
・米国東海岸癌臨床試験グループパフォーマンスステイタスが0
・現在、下記の基準を満たす乳房の非転移性腺癌腫:
a)十分な外科的手技を用いて治療済み
b)研究薬物投与前、>7ヶ月の標準抗がん(ネオ)アジュバント治療(化学療法/生物学的)を完了済み
c)適用する場合、放射線療法を用いて治療済み
・ECHOまたはMUGAスキャンによって測定されるベースラインLVEF≧55%
・閉経前であるか、または無月経閉経後12ヶ月未満であり、不妊術を受けたことがない妊娠する可能性がある女性における陰性妊娠検査
・妊娠する可能性のある女性に関して、治療期間中、ならびにペルツズマブ及びトラスツズマブの投与後の少なくとも7ヶ月間、禁欲を保つか(異性間性交を避けること)、または1年当たり<1%の不成功率をもたらす非ホルモン避妊法を使用することに対する合意
初経を迎えているが、閉経後の状態(閉経以外の特定の原因がない≧12ヶ月連続の無月経)には到達しておらず、不妊術(卵巣及び/または子宮の除去)を受けたことがない、妊娠する可能性があると見なされる女性。
1年当たり<1%の不成功率を有する避妊法の例には、卵管結紮術、男性不妊術、及び銅子宮内避妊器具(IUD)が含まれる。
・性的禁欲の信用性は、臨床試験の期間、及び患者の好ましく、かつ通常の生活スタイルと関連して評価されるべきである。定期禁欲(例えば、周期避妊法、排卵法、排卵兆候体温法、または排卵後法)及び腟外射精は、許容されない方法である。
【0301】
パート2の除外基準
・下記の基準のいずれかを満たす患者は、研究登録から除外される:
・PK治験を妨害し得るか、または予想外の毒性をもたらし得る、任意の様式の理学療法を必要とする同時発生する他の悪性腫瘍
・最大累積用量のドキソルビシン>360mg/m、または最大累積用量のエピルビシン>720mg/m、または現在の乳癌と無関係の一切の先行アントラサイクリン
・この研究で使用される治験薬物のいずれかの使用に禁忌を示すか、または患者を治療関連合併症の危険性に晒すであろう、重篤で未制御な併発疾患
・スクリーニング前5年以内の他の悪性腫瘍の既往歴、但し、適切に治療された子宮頚部上皮内癌、非黒色腫皮膚がん、またはステージ1の子宮癌を除く
・現在、他の治験薬剤の研究に参加しており、治験者及び治験依頼者の合意がない患者
・重篤な心臓病または病態
・過敏症またはアレルギー反応への易罹患性を示唆する一切の以前に発生したかまたは同時発生中の病態。軽度または季節的アレルギーを有する患者は、治験者と治験依頼者との間の議論の後に含まれ得る。
・ペルツズマブまたはトラスツズマブを用いた任意の以前の療法中に経験された重度の点滴関連反応(IRR)
・ヒアルロニダーゼ、ハチ、もしくはハチ毒、またはHylenex(登録商標)の製剤中の任意の他の成分に対する既知のアレルギー
・トラスツズマブ治療前の検査1日目における下記の異常臨床検査のいずれか:
血清総ビリルビン>1.25x正常上限値(ULN;ジルベール症候群を除く)
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)>1.25xULN、
アルブミン<25g/L
アルカリホスファターゼ(ALP)>2.5xULN
血清クレアチニン>1.5xULN
総白血球(WBC)数<2500細胞/mm3
好中球絶対数<1500細胞/mm3
血小板<100,000細胞/mm3
・妊娠中もしくは授乳中の女性、または研究中に妊娠する意思がある女性
・研究中及び研究薬物の投与後7ヶ月間の間に、妊娠する可能性があるか、または十分な避妊法の使用が不可能であるか、または希望しない閉経後1年未満(不妊術ではない場合)の女性
・以前の療法から生じる残留毒性(例えば、グレード≧2である血液性、循環器性、または神経性)。脱毛症は認める
・未制御高血圧(収縮血圧>150mmHg及び/または拡張期血圧>100mmHg)
・第1の研究治療前、6ヶ月以内の脳血管障害/卒中または心筋梗塞、不安定な狭心症、NYHAグレードII以上のCHF、医薬品を必要とする重篤な不整脈、または未制御であるかもしくは現在、医薬品で制御されている他の循環器問題を含むが、これらに限定されない臨床的に有意な(すなわち、活性である)循環器疾患
・HBV、HCV、またはHIV1もしくは2検査における陽性結果
・HBV、HCV、またはHIVへの曝露歴
・活性ウィルス肝炎感染(肝炎BまたはC)またはHIV感染
・研究の登録前、7日以内の感染のためのIV抗生物質の投与
・吸入ステロイドを除く、コルチコステロイド(10mg/日以上のメチルプレドニゾロンの用量)を用いた現在の慢性的な毎日の治療(>3ヶ月間の継続)
・組換えヒトまたはヒト化抗体の研究治療のいずれかまたは賦形剤に対する既知の過敏症
【0302】
治療割り当て方法
研究への参加の同意前に、事前スクリーニング登録ログ、施設内治験審査委員会(IRB)/倫理委員会(EC)に承認された新聞/ラジオ広告、及びメーリングリストを使用して、可能性のある補充のために健康なボランティア及び患者を特定する。
【0303】
パート1(健康なボランティア)
およそ48名の健康なボランティアをパート1に最初に補充する。患者数を登録される順序で順次に割り当てる。追加の用量設定コーホートは、必要な場合オープンされ得る。
【0304】
パート2(EBCを有する患者)
およそ40名のEBCを有する患者をパート2に補充する。患者数を登録される順序で順次に割り当てる。
【0305】
研究治療
この研究の治験薬(IMP)は、ペルツズマブ及びトラスツズマブである。
【0306】
製剤化、梱包、及び取扱い
研究薬物の梱包は、Roche臨床試験材料部によって監督され、地域の法律によって必要とされる証明、プロトコルナンバー、ならびに薬物証明及び用量を有するラベルを貼付けることになる。研究薬物の梱包及びラベル付けは、Roche標準及び地域の規制に従う。IMPが現場に届くと、現場作業員は、それらを損傷に関して確認し、適切な識別、量、シールの無傷、及び温度状態を確かめ、一切の異常または製品の苦情を発見時に監督者に報告する必要がある。研究薬物の分配の資格責任者は、計画に従って正しい用量を準備する。この責任者は、分配日、投与日、ならびに患者ナンバー及びイニシャルを(必要に応じて)、研究薬物バイアル上及び/または治験薬管理記録上に記載する。この責任者はまた、研究中、各患者が受けた研究薬物バッチまたはロットナンバーも記録する。
【0307】
ペルツズマブ
ペルツズマブの3つの製剤を使用した:
ペルツズマブ製剤Iは、賦形剤、スクロース、及びポリソルベート20を含有するL-ヒスチジンアセテート緩衝剤中に30mg/mLのペルツズマブを含有する単回使用IV製剤として提供される点滴溶液のための滅菌の、無色からわずかに茶色がかった濃縮液である。各20mLのバイアルは、420mgのペルツズマブ(14.0mL/バイアル)を含有する。
【0308】
ペルツズマブ製剤2は、賦形剤と、スクロースと、ポリソルベート20と、メチオニンと、rHuPh20(2000U/mL)とを含有するL-酢酸ヒスチジン緩衝剤中に120mg/mLのペルツズマブを含有する単回使用SC製剤として提供される注射のための滅菌の、無色からわずかに茶色がかった溶液である。各10mLのバイアルは、600mgのペルツズマブ(5.0mL/バイアル)を含有する。
【0309】
ペルツズマブ製剤3は、賦形剤と、スクロースと、ポリソルベート20と、メチオニンとを含有するL-酢酸ヒスチジン緩衝剤中に120mg/mLのペルツズマブを含有する単回使用SC製剤として提供される注射のための滅菌の、無色からわずかに茶色がかった溶液である。各10mLのバイアルは、600mgのペルツズマブ(5.0mL/バイアル)を含有する。
【0310】
バイアルは単回使用のみを意図するため、ペルツズマブと共に防腐剤は使用されない。医薬品のための推奨保管条件は、光から保護される2℃~8℃である。医薬品は、凍結させてはならない。
【0311】
トラスツズマブ
トラスツズマブ製剤は、賦形剤、トレハロース、ポリソルベート20、メチオニン、及びrHuPh20(2000U/mL)を含有するL-ヒスチジン/ヒスチジン-HCl緩衝剤中に120mg/mLのトラスツズマブを含有する注射のための滅菌の、無色からわずかに茶色がかった濃縮溶液である。各5mLのバイアルは、600mgのRO0452317(5.0mL/バイアル)を含有する。
【0312】
バイアルは単回使用のみを意図するため、トラスツズマブと共に防腐剤は使用されない。医薬品のための推奨保管条件は、光から保護される2℃~8℃である。医薬品は、凍結させてはならない。
【0313】
用量、投与、及びコンプライアンス
ペルツズマブ及びトラスツズマブSC
研究薬物の分配の資格責任者は、正しい用量を準備する。この責任者は、分配日、ならびに対象ナンバー及びイニシャルを、研究薬物バイアルラベル上及び治験薬管理記録上に記載する。この責任者はまた、研究中、各対象が受けた研究薬物バッチまたはロットナンバーも記録する。
【0314】
HMVは、単回用量のペルツズマブIV、ペルツズマブSC、トラスツズマブSC、または一緒に混合された(同時混合された)ペルツズマブSC及びトラスツズマブSCを受ける。患者は、2つの単剤注射(同時投与)として単回用量のペルツズマブ及びトラスツズマブ、または一緒に混合された(同時混合された)1つの注射のペルツズマブ及びトラスツズマブ、または1つのFDC注射としてトラスツズマブと共製剤化されたペルツズマブを受ける。
【0315】
健康なボランティア及び患者は、点滴関連反応または注射関連反応の危険性を低減するために、治験者の裁量で、ペルツズマブ及び/またはトラスツズマブSCの投与前に事前医薬品(例えば、アセトアミノフェノン[パラセタモール]及び/またはプロメタジン)も投与され得る。
【0316】
研究薬物の一切の過量投薬または誤投与は、研究薬物投与eCRFに記載する必要がある。研究薬物の過量投薬または誤投与と関連する有害事象は、有害事象eCRFに記録する必要がある。
【0317】
投与用量(ペルツズマブIV)
ペルツズマブIVを受ける健康なボランティア(コーホート1-対照)に420mgの用量を付与した。
【0318】
60(±10)分にわたってペルツズマブの用量を投与し、健康なボランティアをさらに60分観察した。患者が点滴関連症状を経験する場合、点滴は、減速、または中断されるべきである。
【0319】
投与用量(ペルツズマブSC及びトラスツズマブSC)
ペルツズマブSCを受ける健康なボランティア及び患者(コーホート2~8、A及びB)に400~1200mgの用量を付与した。トラスツズマブSCを受ける健康なボランティア及び患者(コーホート5~8、A及びB)に600mgの用量を付与した(表3を参照されたい)。
【0320】
SC注射を大腿前部領域に投与した。コーホートAの患者は、反対の大腿に2つの同時投与注射を受け、第2の注射は、第1の注射の直後に投与される。
【0321】
適切な量の溶液をバイアルから抜き取らなければならない。指示に関して調剤マニュアルを参照されたい。
【0322】
滅菌技法を使用して、27ゲージの注射針を大腿のSC組織に挿入する。針は、完全に挿入しなければならず、針の先が真皮より深くなるが、下層にある筋肉ほど深くならないように留意する。配置角度及び針の深さのゴールは、全ての患者のSC組織への一貫した配置を達成することである。研究薬物は、ほくろ、傷跡、または打撲に注射してはならない。皮膚をつまんで、皮膚が解放される前に針を挿入すべきであり、そうするとシリンジへの加圧が適用され得る。
【0323】
注射は、2mL/分以下の流量で手で押されるべきであり、よって、投与は、投与されている用量に応じておよそ2~8分かかるはずである。対象によって注射の中断の希望がある場合、まずシリンジへの加圧を弱めて、疼痛を緩和するべきである。疼痛が緩和しない場合、注射を停止し、注射の再開に対して問題ないときを対象に尋ねるべきである。
【0324】
食事、身体活動、及び手技に関する適時
食事の構成及び供与時間は、全てのコーホートを通して類似していた。カフェインを含有する食べ物及び飲み物(例えば、茶、コーヒー、チョコレート、及びソフトドリンク)、またはアルコールの摂取は、1日目~2日目には認められない。診療機関内で行う研究において、タバコの使用は認められない。
【0325】
軽い歩行活動は認められるが、活動のレベルは、臨床研究ユニットにおいて毎日できる限り同様に保つ。
【0326】
併用療法、禁止される食べ物、及び追加の制限
併用療法は、研究スクリーニングの30日以内に健康なボランティア/患者によって使用される任意の医薬品(例えば、処方薬、市販薬、ワクチン、薬草またはホメオパシー療法、栄養補助食品)を含む。全てのかかる医薬品は、治験者に報告され、併用医薬品eCRFに記録されるべきである。
【0327】
認められる療法
健康なボランティアに関して、例外の理論的根拠が治験者と医療監督者との間で考察されておらず、かつ明確に記録されていない限り、併用医薬品は認められないが、有害事象を治療するための医薬品は例外とする。
【0328】
EBCを有する患者に関して、研究中、下記の治療は認められる:
女性患者または男性パートナーが不妊術を受けていないか、または研究の閉経後の定義(≧12ヶ月の無月経)を満たさないとき、許容可能な避妊法が使用されるべきである。
及びHアンタゴニスト(例えば、ジフェンヒドラミン、シメチジン)
循環器医薬品:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、β遮断薬、カルシウム-チャネル遮断薬及び利尿剤(動脈性高血圧の治療のためであり、血圧を<140/90mmHgに低減することを目的とする)、β遮断薬、カルシウム-チャネル遮断薬、ならびにジゴキシン(心拍数制御のため)、ならびに血小板凝集阻害剤
鎮痛剤/抗炎症剤(例えば、パラセタモール/アセトアミノフェノン、メペリジン、オピオイド)
アレルギーまたは点滴反応を治療または防止するためのコルチコステロイドの短期使用
制吐剤(承認されている予防用セロトニンアンタゴニスト、ベンゾジアゼピン、ドーパミンアンタゴニスト等)
下痢を治療するための医薬品(例えば、ロペラミド)
地域慣習及びガイドラインに応じた、手術後のエストロゲン受容体アンタゴニスト(例えば、タモキシフェン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン)、及びゴナドトロピンホルモン放出ホルモンアゴニスト(例えば、ブセレリン、トリプトレリン)
卵巣機能抑制(黄体化ホルモン放出ホルモン[LHRH]類似体)
ビスホスホネート(承認済みのラベル表示されている適応症及び/または国で認証されている治療ガイドラインに従って使用する)
【0329】
健康なボランティア及び患者は、IRRまたは注射関連反応の危険性を低減するために、治験者の裁量で、ペルツズマブ及び/またはトラスツズマブSCの投与前に事前医薬品(例えば、アセトアミノフェノン[パラセタモール]及び/またはプロメタジン)も投与され得る。
【0330】
禁止療法
研究中及び研究治療の開始前の少なくとも10日間、下記の療法の使用は禁止されている:
・この研究で投与されるか、または細胞毒性化学療法、放射線療法、免疫療法、及び生物学的抗がん療法を含む上記の認められる療法に列挙されるもの以外の抗がん療法
・この研究で使用されるもの以外の一切の標的療法
・この研究で使用されるものを除く、一切の治験薬剤
・薬草療法の開始:研究登録前に開始され、研究中の継続的な薬草療法は認められず、適切なeCRFに報告するべきである。
・以前にインプラントされたプロゲステロンでコーティングされたIUDを除く、避妊の一切の全身活性、経口、注射、またはインプラントホルモン方法
・エストロゲン置換療法(ホルモン置換療法)
・研究医師によるいずれの合意もなければ、研究薬物投薬前の少なくとも10日間、処方薬、市販薬、または薬草療法は、研究の終了まで許可されない。
【0331】
禁止された食べ物
カフェインを含有する食べ物及び飲み物(例えば、茶、コーヒー、チョコレート、及びソフトドリンク)、またはアルコールの摂取は、1日目~2日目には認められない。
【0332】
追加の制限
食事の構成及び供与時間は、全てのコーホートを通して類似することになる。診療機関内で行う研究において、タバコの使用は認められない。軽い歩行活動は認められるが、活動のレベルは、臨床研究ユニットにおいて毎日できる限り同様に保つ。
【0333】
研究評定
パート1(健康な男性ボランティア)
健康なボランティアは、事前用量評定に関して1日目にユニットに報告し、ユニットに泊まる(3晩)。健康なボランティアは、治験者の裁量で2日目の朝に解放され得、3日目に診療機関に戻る。
【0334】
1日目に、健康なボランティアは、ペルツズマブのIV点滴もしくはペルツズマブのSC注射、トラスツズマブSC、またはペルツズマブ及びトラスツズマブSC(同時混合)を大腿前部領域に付与される。重度の有害反応が注射部位で観察される場合、SC注射後に注射部位をデジタル撮影する。
【0335】
評定の計画に従って、研究中、規則的な間隔で安全性及び薬物動態評定を行う。健康なボランティアは、48時間の薬物動態評定が完了するまでユニットに留まる。彼らは、その後の特定日にPK及び安全性評定のために戻ってくる。
【0336】
経過観察訪問を研究薬物投与の7ヶ月後に行う。健康なボランティアは、経過観察訪問が完了すると主治内科医によって研究から解放される。
【0337】
パート2(EBCを有する女性患者)
患者は、事前用量評定に関して1日目にユニットに報告する。患者は、1日目にユニットに戻り、SC注射としてペルツズマブ及びトラスツズマブを大腿前部領域に付与される。コーホートAの患者は、反対の大腿に2つの注射を受け、第2の注射は、第1の注射の直後に投与される。重度の有害反応が注射部位で観察される場合、SC注射後に注射部位をデジタル撮影する。
【0338】
評定の計画に応じて、研究中、規則的な間隔で安全性及びPK評定を行う。患者は、投薬の12時間後までユニットに留まる。彼らは、その後の特定日に薬物動態及び安全性評定のために戻ってくる。
【0339】
経過観察訪問を研究薬物投与の7ヶ月後に行う。患者は、経過観察訪問が完了すると主治内科医によって研究から解放される。
【0340】
経過観察訪問
85日目において進行中の心臓有害事象(原因にかかわらず)もしくは研究治療関連有害事象、重篤な有害事象、または特に注目すべき事象、あるいは85日目と経過観察訪問との間に発生する有害事象、重篤な有害事象、または特に注目すべき事象を有するHMVまたはEBC患者に関して、経過観察訪問における全ての評定を行い、PK/ATA試料を採取する。
【0341】
85日目において進行中の心臓有害事象(原因にかかわらず)もしくは研究治療関連有害事象、重篤な有害事象、または特に注目すべき有害事象を有さず、85日目と経過観察訪問との間に何も発生していないHMVに関して、女性パートナーの妊娠の経過観察のみが必要とされる。この訪問は、電話で行ってもよい。
【0342】
85日目に進行中の心臓有害事象(原因にかかわらず)または研究治療関連有害事象、重篤な有害事象、及び特に注目すべき有害事象を有さず、85日目と経過観察訪問との間に何も発生していないEBC患者に関して、この訪問において、(妊娠する可能性がある患者に対して)妊娠検査のみが必要とされる。
【0343】
85日目に進行中の心臓有害事象(原因にかかわらず)または研究治療関連有害事象、重篤な有害事象、及び特に注目すべき有害事象を有さず、85日目と経過観察訪問との間に何も発生していない閉経後のEBC患者(≧12ヶ月の無月経)に関して、経過観察訪問は、電話で行ってもよい。
【0344】
安全性パラメータ及び有害事象
安全性評定は、重篤な有害事象及び特に注目すべき有害事象を含む有害事象を監視及び記録することと、プロトコル特異的安全性臨床評定を行うことと、プロトコル特異的バイタルサインを測定することと、研究の安全性評価に対して重大であると見なされる他のプロトコル特異的検査を実施することと、から構成される。
【0345】
有害事象
優良臨床試験基準のためのガイドラインによると、有害事象は、因果属性にかかわらず、薬学的製品を投与された臨床治験対象におけるあらゆる好ましくない医療上の事象である。よって、有害事象は、下記のいずれかであり得る:
・任意の好ましくない、意図しない兆候(異常な検査所見を含む)、症状、または医薬品の使用と一時的に関連する疾患(その医薬品に関連していると見なされるかどうかにかかわらず)。
・任意の新たな疾患または既存の疾患の悪化(既知の病態の性質、頻度、または重症度の悪化)。
・ベースラインには提示されない断続性病態(例えば、頭痛)の再発
・症状と関連するか、あるいは研究治療もしくは併用治療の変更、または研究薬物の中止をもたらす臨床検査値または他の臨床検査(例えば、ECG、X線)における任意の悪化
・研究治療の割り当ての前に発生するものを含むプロトコルを遵守した処置に関連する有害事象(例えば、生検等のスクリーニング侵襲的手技)。
【0346】
重篤な有害事象(治験依頼者への迅速な報告価値がある)
重篤な有害事象は、下記の基準のいずれかを満たす有害事象である:
・致命的である(すなわち、有害事象が実際に死亡を引き起こすかまたはもたらす)。
・生命に危険性がある(すなわち、治験者の観点から、有害事象が患者を差し迫った死亡の危険性に晒す)。これには、より重度の形態で発生したか、または継続により死亡を引き起こしたであろう任意の有害事象は含まれない。
・入院患者の入院の必要性またはその延長。
・遷延性または著しい障害/不能をもたらすもの(すなわち、有害事象により患者が通常の生活機能を遂行する能力の実質的な崩壊がもたらされる)。
・研究薬物に曝露された母親から生まれた新生児/乳幼児における先天性異常/先天性欠損である。
・治験者の判断における著しい医学的事象(例えば、患者を危険に晒し得るか、または上記に列挙される結果のうちの1つを防止するために医療処置/外科的処置を必要とし得る)。
【0347】
「重度の」及び「重篤な」という用語は、同義語ではない。重症度は、有害事象の度合いを指す(例えば、軽度、中度、もしくは重度と評価されるか、またはNCI CTCAE v4.03に従って評価され、事象自体は、相対的に医学的意義が低いものであり得る(さらなる所見が一切ない重度の頭痛等)。
【0348】
特に注目すべき有害事象(治験依頼者への迅速な報告価値がある)
特に注目すべき有害事象は、治験依頼者への治験者による迅速な報告を必要とする(すなわち、事象の把握後24時間以内)。この研究に関する特に注目すべき有害事象には、下記が含まれる:
・Hyの法則によって定義されるようなALTまたはASTの上昇と同時にビリルビンの上昇または臨床的黄疸のいずれかを含む潜在的な薬物によって誘発される肝臓損傷の症例。
・次に定義されるような研究薬物による感染病原体の伝染の疑い:任意の生物、ウィルス、または感染粒子(例えば、プリオンタンパク質によって伝染する伝達性海綿状脳症)、病原体もしくは非病原体が、感染病原体と見なされる。感染病原体の伝染は、医薬品に曝露された患者において伝染を示す臨床症状または検査所見から疑われる場合がある。この用語は、研究薬物の汚染が疑われる場合にのみ適用される。
・治療を必要とするLVEFにおける無症候性低下。注記:一般に、LVEFデータは、eCRF上で別々に収集されるため、LVEFにおける無症候性低下は有害事象として報告する必要はない。このルールの例外は下記の通りである:
・ベースラインから10パーセンテージポイント以上下回る値及び<50%の値のLVEFにおける無症候性低下は、有害事象として報告するべきである。
・治療を必要とするか、または研究治療の中止をもたらすLVEFにおける無症候性低下は、有害事象eCRFを使用し、かつ事象を、迅速な報告価値がある重篤でない特に注目すべき事象に分類して早急に報告するべきである。
【0349】
選択される有害事象
心不全
症候性LVSD(心不全と称される)は、重篤な有害事象として報告するべきである。診断が心不全である場合、心不全の個別の兆候及び症状としてではなく、心不全であると報告するべきである。兆候及び症状は、eCRFに記録するべきである。症候性LVSD(心不全)を発症している患者に関して、心臓病の診察が推奨される。心不全は、NCI CTCAE v4.03(グレード2、3、4、または5)に従って、ならびにNYHA分類(クラスII、III、及びIV)に従ってグレード付けするべきである。NCI CTCAE v4.03に応じて症候性不全を記載するために、左室収縮機能不全は使用すべきではない。
【0350】
研究中、及び最後の患者が登録した最長5年の間に発生する心不全は、因果関係が無いとして報告するべきであり、下記:ベースライン状態までの消散もしくは改善、さらなる改善が予想されないか、または死亡のうちの1つが発生するまで経過観察する。
【0351】
左室駆出率における無症候性低下
LVEFデータは、eCRF上で別々に収集されるため、LVEFにおける無症候性低下は有害事象として報告する必要はない。このルールの例外は下記の通りである:
・ベースラインから<50%までの≧10パーセンテージポイントのLVEFにおける無症候性低下は、NCI CTCAE v4.03に応じて、駆出率減少という用語を用いて有害事象として報告するべきである。加えて、有害事象コメント箇所のコメントは、事象が無症候であったことを確認するべきである。
・治療を必要とするか、またはペルツズマブ及びトラスツズマブの中止をもたらすLVEFにおける無症候性低下も、報告するべきである。この有害事象は、重篤な有害事象フォームにおいて重篤ではない特に注目すべき事象として捉えるべきであり、有害事象コメント箇所に、事象が無症候であったことを確認するコメントを追加するべきである。
【0352】
表5は、ニューヨーク心臓病学会分類及び左室収縮機能不全米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準、バージョン4.03のグレード付けを示す。
【0353】
Weatherall DJ,Lendingham JGG,editors.Oxford Rextbook of Medicine.Third Edition.New York:Oxford University Press,1996。
【0354】
表6は、LVSD及び心不全に関する報告会議を要約する:
【0355】
有害事象の重症度を評定するためにNCI CTCAE(v4.03)の有害事象の重症度グレード尺度を使用する。NCI CTCAEに具体的に列挙されていない有害事象の重症度を評定するために、上記の表4を参照されたい。
【0356】
有害事象の傷害の評定
治験者は、患者に対する自身の知識、事象を取り巻く事情、及び任意の可能性のある代替的な原因の評価を使用して、有害事象が、研究薬物に関連していると見なされるかどうかを決定して、適宜に「Yes」または「No」で示すべきである。下記の指導を考慮すべきである。
・事象の開始と研究薬物の開始との時間的関係
・事象の経過、特に、用量低減、研究薬物の中止、または研究薬物の再導入(適用される場合)の効果を考慮する。
・事象と研究薬物または類似の治療との既知の関連
・事象と研究下にある疾患との既知の関連
・患者または事象の発生を増加することで既知の併用医薬品の使用における危険因子の存在
・事象の発生と関連することで既知である治療とは無関係の要因の存在
【0357】
併用療法を受ける患者に関して、各プロトコルを遵守した療法に関して、傷害を個別に評定する。
【0358】
点滴関連反応、注射反応、及び局所注射部位反応
研究薬物投与中、またはその後24時間以内に発生し、研究薬物点滴または注射に関連すると判断される有害事象は、有害事象eCRFにおいて診断(例えば、「点滴関連反応」、「注射反応」、「注射部位反応」)と捉えるべきである。可能であれば、「全身反応」等の不明瞭な用語を避けられたい。
【0359】
関連する兆候及び症状は、専用の点滴関連反応eCRF、注射反応eCRF、または注射部位反応eCRFに記録するべきである。患者が同じ用量の研究薬物に対して局所及び全身反応の両方を経験する場合、各反応は、有害事象eCRFに別々に記録し、兆候及び症状も専用の点滴関連反応eCRF、注射反応eCRF、または注射部位反応eCRFに別々に記録するべきである。
【0360】
他の事象に対して副次的である有害事象
一般に、他の事象(例えば、カスケード事象または臨床的続発症)に対して副次的である有害事象は、それらの根本原因によって特定するべきであるが、重度または重篤な副次的な事象は例外とする。経時的に初期事象とは別個になる医学的に有意な副次的な有害事象は、有害事象eCRFに独立した事象として記録するべきである。例えば:
・健康な成人において、嘔吐が軽度の脱水をもたらし、追加の治療が施されなかった場合、eCRFには嘔吐のみを報告するべきである。
・嘔吐が重度の脱水をもたらす場合、eCRFには両方の事象を別々に報告するべきである。
・重度の胃腸出血が腎不全をもたらす場合、eCRFには両方の事象を別々に報告するべきである。
・めまいが転倒をもたらし、結果的に骨折をもたらす場合、eCRFには3つの全ての事象を別々に報告するべきである。
・好中球減少症が感染に関連する場合、eCRFには両方の事象を別々に報告するべきである。
【0361】
事象が関連しているのかどうか不明である場合、全ての有害事象を有害事象eCRFに別々に報告するべきである。
【0362】
再発性有害事象の遷延性
遷延性有害事象は、患者評価時点間で、消散することなく継続的に及ぶものである。かかる事象は、有害事象eCRFに1回のみ記録するべきである。事象の初期の重症度(度合いまたはグレード)は、事象が第1に報告される時点で記録する。遷延性有害事象がより重度となった場合は、その極度の重症度も有害事象eCRFに記録するべきである。事象が重篤になった場合、治験依頼者へ迅速に報告するべきである(すなわち、事象が重篤になったことを把握してから24時間以内)。有害事象eCRFは、事象が「重篤ではない」から「重篤」に変化したことによって更新するべきであり、事象が重篤になった日を提供し、かつ重篤な有害事象に関連する全てのデータ箇所を完成させる。
【0363】
再発性有害事象は、患者評価時点間では消散しているが、その後再発するものである。有害事象の各々の再発は、有害事象eCRFに別々の事象として記録するべきである。
【0364】
異常臨床検査値
検査所見の異常は、全てが有害事象として認定されない。臨床検査結果は、下記の基準のいずれかを満たす場合に有害事象として報告するべきである:
・臨床症状に関連する。
・研究治療の変更(例えば、投薬の変更、治療の中断、または治療の中止)をもたらす。
・医療処置(例えば、低カリウム血症のためのカリウム補充)または併用療法の変更をもたらす。
・治験者の判断において臨床的に有意である。注記:腫瘍検査に関して、ある特定の異常値は、有害事象として認定され得ない。
【0365】
全ての臨床検査所見を精査するのは治験者の責任である。単独の臨床検査異常を有害事象として分類すべきかどうかを決定する上で、医学的判断及び科学的判断を行使するべきである。
【0366】
臨床的に有意な臨床検査異常が疾患または症候群(例えば、胆汁うっ滞と関連するALP及びビリルビン5xULN)の兆候である場合、診断(すなわち、胆汁うっ滞)のみを、有害事象eCRFに記録するべきである。
【0367】
臨床的に有意な臨床検査異常が疾患または症候群の兆候ではない場合、異常自体を、試験結果が正常範囲を上回るか下回るかどうかを示す記述子と共に有害事象eCRFに記録するべきである(例えば、「異常なカリウム」に反して「高カリウム」)。臨床検査異常が標準定義に応じた正確な臨床用語によって特徴付けられ得るとき、その臨床用語を有害事象として記録するべきである。例えば、7.0mEq/Lの高血清カリウムレベルは、「高カリウム血症」として記録するべきである。
【0368】
訪問毎に同じ臨床的に有意な臨床検査異常が観察された場合、有害事象eCRFに一度だけ記録するべきである。
【0369】
異常なバイタルサイン値
バイタルサインの異常は、全てが有害事象として認定されない。バイタルサイン結果は、下記の基準のいずれかを満たす場合に有害事象として報告するべきである:
・臨床症状に関連する。
・研究治療の変更(例えば、投薬の変更、治療の中断、または治療の中止)をもたらす。
・医療処置または併用療法の変更をもたらす。
・治験者の判断において臨床的に有意である。
【0370】
全てのバイタルサインの所見を精査するのは治験者の責任である。単独のバイタルサイン異常を有害事象として分類すべきかどうかを決定する上で、医学的判断及び科学的判断を行使するべきである。
【0371】
臨床的に有意なバイタルサインの異常が疾患または症候群(例えば、高血圧)の兆候である場合、診断(すなわち、高血圧)のみを、有害事象eCRFに記録するべきである。
【0372】
訪問毎に同じ臨床的に有意なバイタルサインの異常が観察された場合、有害事象eCRFに一度だけ記録するべきである。
【0373】
PK研究及び用量選択の結果
パート1 SC PK分析及び用量選択
パート1(コーホート2、3、及び4)におけるペルツズマブSC用量の選択は、組み込まれたトラスツズマブSC PKパラメータの値を有するペルツズマブIV集団PKモデルに基づいていた。より正確にするために、後向きモデルパラメータ推定値からのIV集団PKはまた、SC用量選択分析においても依拠された。固定PKパラメータの推定(すなわち、Cトラフ、AUC0-inf、最大血清濃度[C最大]、最大血清濃度の時間[T最大])後、ペルツズマブSC(維持)用量(複数可)をパート2に関して選択した。このSC用量は、420mgでのIVペルツズマブの曝露と類似のペルツズマブ曝露を送達するように計算した。同じように、PKパラメータに基づいて、1回のペルツズマブSC(負荷用量)用量を、840mgでのIVペルツズマブの曝露と類似のペルツズマブ曝露を送達するように計算した。ペルツズマブIV集団PKモデルを、パート1のデータを使用してペルツズマブSCパラメータでアップデートし、SC維持及び負荷用量を正しく特定するために使用した。
【0374】
図8は、コーホート1~8に関する抗体用量、注射体積、ならびにrHuPH20(Halozyme)の濃度及び量を含む、研究概要を示す。
【0375】
図9は、時間の関数(日)として、トラスツズマブを伴って及び伴わずに皮下投与されたペルツズマブの用量正規化濃度(μg/mL)を示す。データは、同時に投与されるとき、ペルツズマブSCとトラスツズマブSCとの間にPK相互作用がないことを示す。単独療法としてまたはペルツズマブSCを伴って投与されたトラスツズマブSCのPK間で差異は見られなかった。
【0376】
図10は、時間の関数(日)として、ペルツズマブの用量正規化濃度(μg/mL)を示す。2,000U/mLまたは667U/mLのrHuPH20を伴って投与されるとき、ペルツズマブPKまたはトラスツズマブPKにおいて著しい差異はなかった(非表示)。
【0377】
図11は、トラスツズマブを伴って及び伴わずにIV投与されるかまたはSC投与される、異なるペルツズマブ濃度でのペルツズマブ及び後向き集団PK(集団PK)IVモデルを使用する、比較のパラメータ推定を示す。
【0378】
ペルツズマブ薬物動態の特性化-パート1
コーホート1~4及び6~8の平均ペルツズマブ濃度-時間プロファイルを図24に示す。420mgの用量が静脈内投与された後のペルツズマブ濃度は、異なる分布及び消失相を有する二相性パターンに従った。皮下投与されたペルツズマは、4~7日で最大濃度(T最大)に到達する時間及び用量関連の曝露の増加をもたらした。1200mgのSCコーホートのうちのいくつかにおいて可変性が観察され、これらは、小さな試料サイズに起因する可能性が高い。
【0379】
ペルツズマブのPKに対するトラスツズマブの潜在的な影響を評定するために、トラスツズマブを伴って及び伴わずに投与されるときのペルツズマブの幾何平均用量正規化濃度を比較した。図22に示すように、2つの抗体が同時混合でSC送達されるとき、ペルツズマブのPKに対するトラスツズマブの明らかな影響はなかった。これは、2つの抗体を順次に投与した以前の研究からのPKデータと一致する。
【0380】
ペルツズマブPKに対する吸収促進酵素rHuPH20の潜在的な影響を評定するために、667U/mLまたは2,000U/mLのrHuPH20を伴って投与されるときのペルツズマブの幾何平均用量正規化濃度を比較した。図20及び21でそれぞれ示すように、ペルツズマブまたはトラスツズマブのPKに対する、rHuPH20の濃度の2,000U/mLから667U/mLへの低下の明らかな影響はなかった。
【0381】
ペルツズマブPKの特性化は、トラスツズマブ(同時トラスツズマブSC投与から生じる)がペルツズマブに対する明らかな影響がないことを示した。ペルツズマブPKは、rHuPH20の濃度を2,000U/mLから667U/mLに低下することによっては主に変化しないように見受けられたが、少数の対象のみが各濃度(コーホート当たりn=6)に曝露されたため、特に末端相及びCトラフにおいて可能性の差異を排除し難かった。これらの観察は、ペルツズマブIVの420mgに劣らないペルツズマブSC用量を決定するためのさらなる分析を支持した。
【0382】
ペルツズマブSC用量を選択するための集団PKモデル開発
開発された集団PKモデルによって示唆されるペルツズマブ用量比例性及び線形薬物動態に基づいて、ペルツズマブSCの1200の負荷用量を選択した。モデルを基にしたシミュレーションによって、ペルツズマブの1200のSCと840mgのIVとの間の同等な曝露が確認された。パート1の1200mgのSCコーホートから観察されたペルツズマブ曝露によって、後向き研究で観察されたIV曝露と比較するとき、負荷用量の選択がさらに確認された。
【0383】
ペルツズマブ薬物動態の特性化-パート2
パート1において同時混合されるときペルツズマブとトラスツズマブとの間に明らかな薬物動態的(PK)薬物-薬物相互作用(DDI)がなく、固定用量共製剤(FDC)の技術開発が実行可能であったことを考慮して、コーホートA(600mgのペルツズマブと600mgのトラスツズマブとの同時投与)をパート2に登録しなかった。コーホートBを1,000U/mLのrHuPH20とのペルツズマブSC及びトラスツズマブSCの同時混合注射で調査して、研究のパート1において選択されたペルツズマブの用量を確認した。コーホートBにおいて同時混合される材料は、FDCの代替物としての役割を果たし(実施例2に記載される)、コーホートCにおいて試験される。
【0384】
パート2におけるPKデータの非区画的及び集団PK分析を実施して、
ペルツズマブ及びトラスツズマブを同時混合SCで投与したときの、両者間のPK薬物-薬物相互作用(DDI)の欠如を確認し、
ペルツズマブ及びトラスツズマブPKに対する1,000U/mLのrHuPH20の影響を調査し、
20名のEBC患者における安定した状態のCトラフの点で、420mgのペルツズマブIV(HMVに投与される)と比較するとき、600mgの維持用量のペルツズマブSCが劣らなかったことを確認した。
【0385】
パート2のコーホートBにおける20名のEBC患者への、同時混合された500mgのペルツズマブSC、600mgのトラスツズマブSC、及び1,000U/mLのrHuPH20の用量後のペルツズマブの幾何平均用量正規化濃度を、パート1のコーホート1における6名のHMVへの、420mgのペルツズマブIVの用量後のペルツズマブの幾何平均濃度と比較した。図22に示すように、ペルツズマブ曝露(Cトラフ及びAUC)は、600mgのSC(EBC患者)と420mgのIV(HMV)との間で類似している。
【0386】
パート2のコーホートBにおける20名のEBC患者への、同時混合された600mgのペルツズマブSC、600mgのトラスツズマブSC、及び1,000U/mLのrHuPH20の用量後のペルツズマブの幾何平均用量正規化濃度を、パート1のコーホート3における6名のHMVへの、600mgのペルツズマブSC及び2,000U/mLのrHuPH20の用量後のペルツズマブの幾何平均濃度とも比較した。図23に示すように、ペルツズマブPKプロファイルは、600mgのパルツズマブ(partuzumab)SCの用量の後の、EBC患者(パート2のコーホートB)とHMV(パート1のコーホート3)との間で非常に類似している。
【0387】
667U/mL、1,000U/mL、または2,000U/mLのrHuPH20を伴って投与されるときのペルツズマブ及びトラスツズマブの幾何平均用量正規化濃度を比較することによって、ペルツズマブ及びトラスツズマブPKに対する吸収促進酵素rHuPH20の潜在的な影響を評定することができる。図24に示すように、ペルツズマブのPKに対するrHuPH20の濃度の2,000U/mLから1,000U/mLまたは667U/mLへの低下の明らかな影響はなかった。EBC患者からのペルツズマブPKデータとHNVからのペルツズマブPKデータとの比較によって、ペルツズマブ及びトラスツズマブが皮下に同時混合で投与されるとき、ペルツズマブとトラスツズマブとの間の相互作用の欠如がさらに確認される。
【0388】
図25に示すように、667U/mL、1,000U/mL、または2,000U/mLのrHuPH20を伴って投与されるとき、トラスツズマブPKにおいて明らかな差異はなかった。パート2のコーホートBにおけるペルツズマブPKの特性化によって、研究のパート1における結果が確認された。パート2のコーホートBは、トラスツズマブ(同時トラスツズマブSC投与から生じる)が、ペルツズマブPKに対して明らかな影響がなく、かつペルツズマブ及びトラスツズマブPKが2,000U/mL~1,000U/mLのrhuPH20の濃度で類似していることを示した。
【0389】
パート2のコーホートBにおいて収集された追加のPKデータ及びパート2のコーホートBにおいて得られた確率で更新された集団PKモデルを使用する観察されたPKデータ、モデルシミュレーションは、パート1で得られたデータとほぼ同一であった。これらのデータは、現在の第I相研究のパート1及び2からのSCデータ、ならびに後向きペルツズマブIV集団PKモデルからのIVデータを使用して第2の集団PKモデルが構築された後にさらに支持された(Garg et al.,Cancer Chemother Pharmacol.2014;74:819-829)。HMVにおけるSCデータと合わせた患者における堅牢なペルツズマブIVデータセットの追加によって、PKパラメータ推定値及びシミュレーションが確認され、ペルツズマブSCのそれぞれ1200mg及び600mgの負荷用量及び維持用量の選択との一致が提供された。
【0390】
rHuPH20の薬物動態
パート1のコーホート2~8及びパート2のコーホートBにおける患者に関して、投薬前、ならびに投薬後0.5時間及び24時間において血漿rHuPH20の濃度を測定した。エレクトロルミネセンス(ECL)読み出し情報を使用する確証されたサンドイッチ免疫アッセイを使用して、血漿rHuPH20の濃度を測定した。最低限の定量可能な濃度は、0.061444ng/mLであった。
【0391】
血漿rHuPH20の濃度は、全ての標本抽出時点で定量化の限界を下回っており、これは、この研究で使用されたrHuPH20の用量で酵素への定量可能な全身曝露がなかったことを示す。
【0392】
結論
皮下投与されたペルツズマブのPKは、皮下投与されたトラスツズマブのPKと一致していた。試験された低量及びより多量/濃度のrHuPH20は、皮下投与されたペルツズマブのPKに対する影響がないことを示した。したがって、試験されたrHuPH20の濃度(667U/mL及び1,000U/mL)の両方は、本明細書において記載される方法で使用するのに好適である。
【0393】
2,000U/mL、1,000U/mL、または667U/mLのrHUPH20を使用するとき、類似のペルツズマブ及びトラスツズマブのPKが観察された。安全性プロファイルは、2,000U/mL、1,000U/mL、または667U/mLのrHuPH20を受ける同時混合されたコーホートにおいて同等であった。しかし、少数の対象を有する2つの集団群(HMV及びEBC患者)において異なる濃度のrHuPH20を評定したため、これらの異なる対象集団におけるペルツズマブPK及び/または安全性に対するより低濃度(例えば、1,000U/mL)の潜在的な影響は、排除することができず、FDC中のrHuPH20の推奨される濃度(2,000U/mL)を、他の利用可能な全臨床実験をもって決定した。
【0394】
安全性結果
パート1の安全性データ
研究集団の人工統計及び年齢分布を図12に示す。
【0395】
図13は、研究のパート1における有害事象の概要を示す。有害事象の総数は145個であり、様々なコーホートに関するグレード1、グレード2、及び≧グレード3の有害事象の%は、括弧内に列挙する。32日目に観察された1つのグレード3のAEの下痢は、関連しない同時発生した疾病であり、同時発生する上部呼吸道感染症(URTI)として評定されたウィルス感染の可能性があった。中止をもたらす重篤な有害事象(SAE)、特に注目すべき有害事象(AESI)、もしくは有害事象(AE)、または死亡をもたらすAEはなかった。評価時点で、いくつかのAEは、進行中であり、よって、最終的なグレードを提供することはできなかった。
【0396】
図14は、研究のパート1における有害事象の要約を示す概要を示し、各コーホート及び有害事象に関する対象の数を列挙する。
【0397】
図15は、コーホート1~8の研究における≧5%の全体発生率を有する最も一般的な有害事象(全てのグレード)及び対象の数の表である。
【0398】
図16は、EGF関連毒性、すなわち、下痢、粘膜炎、及びEGFR関連発疹を示す。
【0399】
図17は、コーホート1~8の全身及び局所反応を含む注射関連反応及び注射部位反応を要約する。コーホート7において1つの注射部位反応があった(rHuPH20を有する1200mgのペルツズマブ(P)SC+600mgのトラスツズマブ(H)SC)。症状は、注射部位での愁訴、疼痛、絞扼感、及び無感覚であった。全身性注射関連反応には、熱、寒気、悪心、凝り、軽度の頭痛、敏感肌、羞明、体温変動、及び頭痛が含まれる。
【0400】
図18は、コーホート1~8におけるLVEF-Echo評定の結果を示す。コーホート3(600mgのペルツズマブ(P)SC)において、1人の健康な男性ボランティア(HMV)は、ベースラインにおける67%から22日目における56%までの>10%の低下を有する。85日目における経過観察駆出率(EF)は、60%であった。循環器専門医は、心毒性の根拠を確認しなかった。低下は、撮像法の可変性に起因すると考えられる。
【0401】
一般的な有害事象
パート1(コーホート1~8)において、48名の健康な男性ボランティア(HMV)のうち44名(91.7%)において合計148個のAEを報告した。大半のAEは、低度(グレード1または2)のものであることが報告された。最も一般的なSOCは、感染及び寄生であり、22名(45.8%)のHMVがこのカテゴリにおいて合計33個のAEを経験し、これらの大半の事象は、治験者によって研究薬物に関連しないと見なされた。異なるコーホートにわたって最も一般的に観察されたAE(PTによる)は、上部呼吸道感染症(13名のHMV[27.1%])、頭痛(9名のHMV[18.8%])、薬疹(9名のHMV[18.8%])、及び下痢(9名のHMV[18.8%])であった。これらの一般的なAEにおいてとりわけ、研究薬物関連AE(治験者によって評定される)は、それぞれ4名(8.3%)、8名(18.8%)、及び7名(14.6%)のHMVが報告された。パート1における全てのAEは、パート1の最後までに消散した。
【0402】
HMVが420mgのペルツズマブの単一のIV注射を受けたコーホート1(対照)において、一般的に観察されたAE(患者毎)には、下痢(6名のHMVのうち3名[50%])、上部呼吸道感染症(2名のHMV[33.3%])、及び口角びらん症(2名のHMV[33.3%])が含まれた。
【0403】
HMVが400mg、600mg、及び1200mgのペルツズマブの単一のSC注射をそれぞれ受けたコーホート2~4において、最も一般的に観察されたAE(患者毎)は、呼吸道感染症、発疹、及び下痢であり、各々は、18名のHMVのうち4名(22.2%)において発生した。
【0404】
HMVが600mgのトラスツズマブの単一のSC注射を受けたコーホート5(対照)において、最も一般的に観察されたAE(患者毎)は、手足の疼痛であった(臀部及び上大腿であり、注射部位ではない)(6名のHMVのうち2名[33.3%])。全ての他のAEは、1名のHMVにのみにおいて報告された。
【0405】
HMVが400mg、1200mg(2000U/mLのrHuPH20を有する)、及び1200mg(667U/mLのrHuPH20を有する)のペルツズマブと同時混合された600mgのトラスツズマブのSC注射をそれぞれ受けたコーホート6~8において、AEの発生率は、ペルツズマブのみを受けたHMVにおけるAEの発生率(コーホート2~4)に類似していた。最も一般的に観察されたAEは、上部呼吸道感染症及び薬疹であり、各々は、18名のHMVのうち7名(38.9%)において発生した。HMVの少なくとも20%において報告された他の一般的なAEは、口角びらん症(4名のHMV[22.2%])及び頭痛(4名のHMV[22.2%])であった。
【0406】
全体のAEの発生率は、ペルツズマブ及びトラスツズマブの同時混合注射の一部として2.000U/mLの濃度のrHuPH20を受けるHMV(コーホート7)と、667U/mLの濃度のrHuPH20を受けるHMV(コーホート8)との間で類似していた。
【0407】
追加の安全性の目的に関して、下記の通りであった:
・血圧(BP)、心拍数(HR)、または心拍周期(RR)において、著しい全体的な変化はなかった。
・4名の対象は、注射関連反応と関連して1日目の投薬後に体温の上昇を有した。
・臨床的に有意なECG変化の報告はなかった。
【0408】
臨床検査変化に関して、下記の通りであった:
・著しいAE臨床検査異常はなかった。
・1名の対象は、グレード4の尿酸塩の増加(22日目)を有し、これは、臨床的に有意ではない部位で確認され、運動に関連する可能性があり、85日目には結果は正常になった。
・4名の対象は、グレード3の尿酸塩の増加を有し、これは、臨床的に有意ではない部位で確認され、グレード1であった。
【0409】
パート2の安全性データ
パート2において、全ての20[1005]名の女性EBC患者は、600mgのペルツズマブ及び600mgのトラスツズマブの同時混合SC注射を(1.000U/mLのrHuPH20を伴って)受けた。全ての患者は、少なくとも1つのAEを経験し、合計102個のAEが臨床試験の打ち切りまでに報告された。大半のAEは、低度(グレード1または2)のものであることが報告された。
【0410】
最も一般的なAE(≧50%の患者において報告される)が発生したSOCには、下記が含まれる:
神経障害(14名の患者[70%])
胃腸障害(10名[50%])、研究薬物に関連するAE(10名[50%])
筋骨格及び結合組織の障害(10名[50%])
【0411】
患者の少なくとも20%において報告された最も一般的に観察されたAE(患者毎)は、頭痛(13名の患者[65%])、筋肉痛(7名の患者[35%])、下痢(6名の患者[30%])、注射部位反応(6名の患者[30%])、及び悪心(4名の患者[20%])であった。これらの一般的なAEにおいてとりわけ、研究薬物関連AE(治験者によって評定される)は、それぞれ、9名(45%)、6名(30%)、4名(20%)、6名(30%)、及び1名(5%)の患者が報告された。
【0412】
パート2のコーホートB(EBC患者)及びパート1のコーホート6~8(HMV)の両方は、ペルツズマブ及びトラスツズマブの同時混合注射を受け、EBC患者においてペルツズマブSC及びトラスツズマブSCによる報告された(患者毎)AEの種類は、併用療法と関連する既知の危険性と一致する。グレード1または2の全ての注射部位反応は、HMVと比較するとEBC患者においてより高頻度で発生した(6名[30%]対1名[5.6%])。
【0413】
結論
パート1において、皮下投薬コーホートにおける全ての有害事象(AE)は、グレード1またはグレード2であった。
【0414】
重篤な有害事象(SAE)、特に注目すべき有害事象(AESI)、もしくは中止をもたらす>G3のAE、または致命的な事象はなかった。
【0415】
著しい心臓事象は観察されなかった。
【0416】
対照コーホート(P IV、H SC)と比較すると、より多数のAEはほとんどがP SC及びP+H SCコーホートにおいてであったが、増加用量またはトラスツズマブ(H)の付加に伴う一定のパターンは観察されなかった。
【0417】
最も一般的なAE(対象の>5%において発生する)は、上部呼吸道感染症、下痢、頭痛、及び薬疹であった。コーホート7と8(低濃度のrHuPH20)との間に差異はなかった。
【0418】
4つの注射関連反応(H SCにおいては1つ)及び1つの注射部位反応(コーホート7)が観察された。全ての反応は、グレード1/2であり、これは、皮下投与されたトラスツズマブ(H SC)プロファイルと同等であった。
【0419】
結果として、皮下投与されたペルツズマブ(P)の安全性プロファイル及び結果は、一般に、静脈内投与されたペルツズマブ及び皮下投与されたトラスツズマブの既知の安全性プロファイルと一致した。したがって、研究を継続して、パート2に進むことは安全であった。
【0420】
1200mgの負荷用量及び600mgの維持用量として付与されるペルツズマブSCは、HMVにおいて決定されるように、それぞれ840mg及び420mgのペルツズマブIVと類似のCトラフ及びAUCを提供する。EBC患者におけるペルツズマブSCの600mgの用量は、パート1のHMVにおける420mgのIV及び600mgのSCコーホートと類似のCトラフ及びAUCを提供し、PKの線形性による用量比例性は、ペルツズマブSCの1200の負荷用量を確認する。よって、ペルツズマブSC用量(1200mgの負荷用量、600mgの維持用量)がEBC患者において確認される。
【0421】
一般に、ペルツズマブSCの安全性プロファイルは、既知のペルツズマブIVの安全性プロファイルと一致し、トラスツズマブSCと併せて付与されるとき十分に忍容される。新たな安全性シグナルは、特定されなかった。パート1において大半のHMV及びパート2のコーホートBにおいて全てのEBC患者は、少なくとも1つのAEを経験した。研究中、パート1において、2つのグレード3のAE及びパート2において、1つのグレード3のAEがあった。AEの残りは、低度(グレード1または2)のものであった。研究中、退薬をもたらすSAE、死亡、またはAEはなかった。ペルツズマブ及びトラスツズマブの同時混合SC注射の後、女性EBC患者は、HMVと比較して注射部位反応のより高い発生率を経験した。
【0422】
現在の研究(パート1及び2)におけるPK及び安全性所見の観点において、この第I相研究の安全性、忍容性、及びPK結果は、研究の継続及びペルツズマブ+トラスツズマブの固定用量共製剤(FDC)を受けるコーホートCの登録を支持する。
【0423】
実施例2
ペルツズマブ及びトラスツズマブの安定した皮下固定用量共製剤(SC FDC)
ペルツズマブ及びトラスツズマブの安定した固定用量共製剤(FDC)は、皮下(SC)投与のために開発された。
【0424】
共製剤研究は、図19に示すペルツズマブ及びトラスツズマブSC原薬(DS)組成物及びrHuPH20組成物を使用した。
【0425】
様々な皮下ペルツズマブ及びトラスツズマブ製剤、ならびに安定剤としてトレハロース及び/またはスクロースを含有するペルツズマブ/トラスツズマブ共製剤における、5℃及び25℃での高分子量種(HMWS)の量(%)を図23に示す。
【0426】
下記のSC FDS負荷用量及び維持製剤は、ヒト患者へのペルツズマブ及びトラスツズマブの単一の共製剤の皮下投与に関して安定しており、かつ好適であることが見出された:
負荷用量
ペルツズマブ
用量:1,200mg
濃度:80mg/mL
トラスツズマブ
用量:600mg
濃度:40mg/mL
rHuPH20
濃度:1,000U/mLまたは2,000U/mL
pH:5.5
20mMのL-ヒスチジン/HCl
トレハロース:70mM
スクロース:133mM
ポリソルベート20(PS20):0.04%、0.4mg/mL
10mMのメチオニン
名目充填体積、15mL
バイアル:20mL/20mm
維持用量:
ペルツズマブ
用量:600mg
濃度:60mg/mL
トラスツズマブ
用量:600mg
濃度:60mg/mL
rHuPH20
濃度:1,000U/mLまたは2,000U/mL
pH:5.5
20mMのL-ヒスチジン/HCl
トレハロース:105mM
スクロース:100mM
ポリソルベートPS20:0.04%、0.4mg/mL
10mMのメチオニン
名目充填体積:10mL
バイアル:15mL/20mm
【0427】
ペルツズマブ原薬の安定性
擦過&散布試験
タンパク質凝集は、原薬の保管条件下で凍結状態の賦形剤(糖)の結晶化に起因して発生し得る。擦過及び散布試験において、原薬のバイアルを凍結し、いくつかの糖(トレハロースまたはスクロース)を凍結製剤の上に添加し、次いで、金属のスパチュラで擦過して、凍結中に、製剤中で任意の潜在的な糖の結晶化を促進する。既定の時点において、製剤を解凍し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析する。
【0428】
図29に示すSECデータは、スクロースが、-20℃で保管されるペルツズマブ原薬にとって優れた賦形剤であることを実証する。
【0429】
濁度及び高分子量種(HMWS)の量に対する下記のペルツズマブ-トラスツズマブ固定用量組み合わせ(FDC)における製剤の差異の効果を試験した。
【0430】
図30に示すデータは、賦形剤としてのNaClが、ペルツズマブ-トラスツズマブSC固定用量組み合わせ(FDC)において高濁度をもたらすことを実証する。同様に、図31に示すデータは、賦形剤としてのNaClが、より多くの量の高分子量種(HMWs)をもたらすことを実証する。したがって、スクロース及びトレハロースは、FDCにとって優れた賦形剤である。
【0431】
本発明のある特定の実施形態が本明細書に示され、説明されたが、かかる実施形態が例としてのみ提供されることは、当業者には理解されるであろう。ここで、当業者は、多数の変形形態、変更、及び置換を本発明から逸脱することなく想定するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替手段が、本発明の実施において用いられ得ることを理解されたい。下記の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、特許請求の範囲内の方法及び構造、ならびにそれらの等価物を包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【配列表】
2023145459000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ配列番号7及び8の可変軽鎖アミノ酸配列及び可変重鎖アミノ酸配列を含むHER2抗体の単回固定用量を含む製造品であって、前記固定用量が、600mg又は1200mgである、製造品。
【請求項2】
単回使用バイアルを含む、請求項1に記載の製造品。
【請求項3】
ER2抗体が、ペルツズマブである、請求項1に記載の製造品。
【請求項4】
シリンジを含む、請求項1に記載の製造品。
【請求項5】
トラスツズマブの単回固定用量をさらに含む、請求項に記載の製造品。
【請求項6】
ペルツズマブの単回固定用量及びトラスツズマブの単回固定用量が、皮下投与のための単一の液体製剤中に含れる、請求項に記載の製造品。
【請求項7】
体製剤が、ペルツズマブの600mgの単回固定用量及トラスツズマブの600mgの単回固定用量を、請求項に記載の製造品。
【請求項8】
体製剤が、ペルツズマブの1200mgの単回固定用量及トラスツズマブの600mgの単回固定用量を、請求項に記載の製造品。
【請求項9】
体製剤が、ヒアルロニダーゼ酵素をさらに含む、請求項に記載の製造品。
【請求項10】
アルロニダーゼ酵素が、組換えヒトヒアルロニダーゼPH20酵素(rHuPH20)である、請求項に記載の製造品。
【請求項11】
HuPH20が、皮下投与の間、同じ液体製剤中に含るペルツズマブ及びトラスツズマブの分散の増加をもたらすのに十分な量で、液体製剤中に存在する、請求項10に記載の製造品。
【請求項12】
HuPH20が、少なくとも約600U/mLの濃度で液体製剤中に存在する、請求項11に記載の製造品。
【請求項13】
HuPH20が、約1,000U/ml又は約2,000U/mlの濃度で液体製剤中に存在する、請求項12に記載の製造品。
【請求項14】
ルツズマブ及びトラスツズマブの固定用量を、HER2陽性がんを有する患者に皮下投与することを使用者に指示する添付文書をさらに含む、請求項に記載の製造品。
【請求項15】
付文書が、2つの別々の皮下注射として、前記固定用量のペルツズマブ及び前記固定用量のトラスツズマブを皮下に同時投与することを前記使用者に指示する、請求項14に記載の製造品。
【請求項16】
付文書が、単一の皮下注射として、固定用量のトラスツズマブと同時混合された固定用量のペルツズマブを投与することを使用者に指示する、請求項14に記載の製造品。
【請求項17】
添付文書が、単一の皮下注射として、ペルツズマブ及びトラスツズマブの固定用量の組み合わせを投与することを使用者に指示する、請求項14に記載の製造品。
【請求項18】
ER2陽性がんが、乳がん、腹膜がん、卵管がん、肺がん、結腸直腸がん、胆道がん、及び膀胱がんからなる群から選択される、請求項14に記載の製造品。
【請求項19】
ER2陽性がんが、早期乳がん(EBC)は転移性乳がん(MBC)である、請求項14に記載の製造品。
【請求項20】
水溶液中で共製剤化された、ペルツズマブの1200mg又は600mgの固定用量及びトラスツズマブの600mgの固定用量を含む液体皮下薬学的組成物であって、組換えヒトヒアルロニダーゼPH20酵素(rHuPH20)、pHを約5.0~6.0に調整するのに好適である緩衝剤、安定剤、及び界面活性剤をさらに含む、液体皮下薬学的組成物。
【請求項21】
衝剤が、ヒスチジン緩衝剤である、請求項20に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項22】
衝剤が、酢酸ヒスチジンである、請求項21に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項23】
pHが、約5.5~5.7である、請求項20に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項24】
安定剤としてスクロース、安定剤としてのメチオニン、安定剤としてのトレハロース、及び界面活性剤としてのポリソルベート20を含む、請求項20に記載の液体皮下薬学的組成物。
【請求項25】
60mg/mlの濃度の600mgのペルツズマブ、60mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブ、1,000U/mL又は2,000U/mL組換えヒトヒアルロニダーゼPH20酵素(rHuPH20)、20mMのpH5.5のヒスチジン-HCl、105mMのトレハロース、100mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、10mMのメチオニン、及び合計体積10mlまでの無菌注射用水を含む、液体薬学的組成物。
【請求項26】
15mlのバイアル中に収容される、請求項25に記載の液体薬学的組成物。
【請求項27】
80mg/mlの濃度の1,200mgのペルツズマブ、40mg/mlの濃度の600mgのトラスツズマブ、1,000U/mL又は2,000U/mL組換えヒトヒアルロニダーゼPH20酵素(rHuPH20)、20mMのpH5.5のヒスチジン-HCl、70mMのトレハロース、133mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20、10mMのメチオニン、及び合計体積15mlまでの無菌注射用水を含む、液体薬学的組成物。
【請求項28】
20mlのバイアル中に収容される、請求項27に記載の液体薬学的組成物。
【請求項29】
ペルツズマブの600mgの単回固定用量、トラスツズマブの600mgの単回固定用量、及び1,000U/mL又は2,000U/mLの組換えヒトヒアルロニダーゼPH20酵素(rHuPH20)を含む、製造品。
【請求項30】
ペルツズマブの1200mgの単回固定用量、トラスツズマブの600mgの単回固定用量、及び1,000U/mL又は2,000U/mLの組換えヒトヒアルロニダーゼPH20酵素(rHuPH20)を含む、製造品。
【外国語明細書】