(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145715
(43)【公開日】2023-10-11
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、これを含む負極およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20231003BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231003BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20231003BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20231003BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/36 D
H01M10/0525
H01M10/0566
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127171
(22)【出願日】2023-08-03
(62)【分割の表示】P 2021147834の分割
【原出願日】2019-09-06
(31)【優先権主張番号】10-2018-0106955
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 恩株
(72)【発明者】
【氏名】羅 載▲ホウ▼
(57)【要約】
【課題】電解液との副反応が減少して厚さの膨張が小さく、かつサイクル寿命の特性が優れたリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【解決手段】複数の1次粒子が組み立てられた2次粒子を含む天然黒鉛;前記1次粒子の表面に存在する非晶質カーボン;および前記2次粒子を囲む非晶質カーボンを含むコーティング層を含み、前記1次粒子は5μm~15μmの粒径を有し、前記2次粒子は8μm~24μmの粒径を有し、X線回折分析法によって測定されたピーク強度比I(002)/I(110)が120以下である、二次電池用負極活物質を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次粒子が組み立てられた2次粒子を含む天然黒鉛と、
1次粒子の表面に存在する非晶質カーボンと、
2次粒子を囲む非晶質カーボンを含むコーティング層とを含み、
1次粒子は5μm~15μmの粒径を有し、2次粒子は8μm~24μmの粒径を有し、
X線回折分析法によって測定されたピーク強度比I(002)/I(110)が120以下であり、
負極活物質は、2%以下の空隙率(pore volume fraction)を有し、
負極活物質は、10m2/g以下の比表面積(BET)を有する、二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記天然黒鉛は、鱗片状天然黒鉛である、請求項1に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記負極活物質は、1.0%~1.5%の空隙率(pore volume fraction)を有する、請求項1または2に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記2次粒子は、2~50個の1次粒子からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記非晶質カーボンを含むコーティング層は、5nm~50nmの厚さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項6】
前記負極活物質は、0.7g/cc~1.3g/ccのタップ密度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項7】
前記非晶質カーボンは、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスおよびこれらの混合物の中から選ばれるいずれか一つである、請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質。
【請求項8】
天然黒鉛原料を1次粒子に粉砕する小粒化粉砕工程と、
前記1次粒子を2次粒子に組み立てる球形化工程と、
前記2次粒子に非晶質カーボンの前駆体を投入して混合物を製造する混合工程と、
前記混合物を焼成する熱処理工程とを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記天然黒鉛原料は80~140μmの粒径を有し、
前記1次粒子は5~15μmの粒径を有し、
前記2次粒子は8μm~24μmの粒径を有する、請求項8に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記負極活物質は、天然黒鉛と非晶質カーボンを90:10~75:25の重量比で含む、請求項8または9に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記非晶質カーボンの前駆体は、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、合成ピッチ、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、タールおよびこれらの組み合わせのうち一つである、請求項8から10のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記熱処理工程は、1,000~2,000℃の焼成炉で1~5時間の間維持することである、請求項8から11のいずれか一項に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載の負極活物質を含む、負極。
【請求項14】
請求項13に記載の負極と、正極活物質を含む正極と、電解液とを含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、これを含む負極およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル装置または携帯用電池の需要が増加することによってリチウム二次電池の高容量を実現するための技術開発が持続して行われている。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としては、LiCoO2、LiMn2O4、LiNi1-xCoxO2(0<x<1)等のようにリチウムイオンのインターカレーションが可能な構造を有するリチウムと遷移金属からなる酸化物が主に使用される。
【0004】
負極活物質としては、リチウムの挿入/脱離が可能な人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料またはSi、Snなどを含むSi系活物質を使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、電解液との副反応が減少して厚さの膨張が小さく、かつサイクル寿命の特性が優れたリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
他の一実施形態は、前記負極活物質の製造方法を提供する。
また他の一実施形態は、前記負極活物質を含む負極を提供する。
また他の一実施形態は、前記負極を含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、複数の1次粒子が組み立てられた2次粒子を含む天然黒鉛と;前記1次粒子の表面に存在する非晶質カーボンと;前記2次粒子を囲む非晶質カーボンを含むコーティング層とを含み、前記1次粒子は5μm~15μmの粒径を有し、前記2次粒子は8μm~24μmの粒径を有し、X線回折分析法によって測定されたピーク強度比I(002)/I(110)が120以下である、リチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0007】
前記天然黒鉛は、鱗片状天然黒鉛であり得る。
前記負極活物質は、2%以下の空隙率(pore volume fraction)を有し得る。
【0008】
前記負極活物質は、1.0%~1.5%の空隙率(pore volume fraction)を有し得る。
前記コーティング層は、5nm~50nmの厚さを有し得る。
【0009】
前記負極活物質は、10m2/g以下の比表面積(BET)を有し得る。
前記負極活物質は、0.7g/cc~1.3g/ccのタップ密度を有し得る。
前記負極活物質は、前記天然黒鉛と前記非晶質カーボンを90:10~75:25の重量比で含み得る。
【0010】
前記非晶質カーボンは、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスおよびこれらの混合物の中から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0011】
他の一実施形態によれば、天然黒鉛原料を1次粒子に粉砕する小粒化粉砕工程と;前記1次粒子を2次粒子に組み立てる球形化工程と;前記2次粒子に非晶質カーボン前駆体を投入して混合物を製造する混合工程と;前記混合物を焼成する熱処理工程と;を含む、前記二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0012】
前記天然黒鉛原料は80~140μmの粒径を有し、前記1次粒子は5~15μmの粒径を有し、前記2次粒子は8μm~24μmの粒径を有し得る。
前記負極活物質は、天然黒鉛と非晶質カーボンを90:10~75:25の重量比で含み得る。
【0013】
前記非晶質カーボンの前駆体は、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、合成ピッチ、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、タールおよびこれらの組み合わせのうち一つであり得る。
【0014】
前記熱処理工程は、1,000~2,000℃の焼成炉で1~5時間の間維持することであり得る。
また他の一実施形態は、前記負極活物質を含む負極を提供する。
また他の一実施形態は、前記負極と、正極活物質を含む正極と、電解液とを含むリチウム二次電池を提供する。
【0015】
内部孔隙(pore volume)の減少および電解液との副反応減少によって、負極活物質の膨張を抑制することができ、寿命特性が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】一実施形態による負極活物質の2次粒子を概略的に示す図である。
【
図1B】従来の負極活物質の2次粒子を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示するものであり、本発明はこれによって制限されず、後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0018】
以下で、
図1Aを参照して一実施形態による負極活物質を説明する。
図1Aは一実施形態による負極活物質の2次粒子を概略的に示す図である。
【0019】
前記負極活物質は、複数の1次粒子3が組み立てられた2次粒子1を含む天然黒鉛;前記1次粒子の表面に存在する非晶質カーボン5;および前記2次粒子1を囲む非晶質カーボンを含むコーティング層7を含み、前記1次粒子3は5μm~15μmの粒径を有し、前記2次粒子1は8μm~24μmの粒径を有し、X線回折分析法によって測定されたピーク強度比I(002)/I(110)が120以下である。
【0020】
黒鉛は、負極活物質として広く用いられる材料であり、特に天然黒鉛は結晶性が高いため人造黒鉛に比べて、理論容量に近い理想的な容量を実現することができる。したがって、天然黒鉛を高密度で充電して負極活物質として使用することができる。例えば
図1Bに示すように、一般的に小粒化していない天然黒鉛13は、粒径が40~120μmの大きい粒子からなっているので、これを球形化する過程(spheroidizing process)が必要であり、球形化した天然黒鉛2次粒子11および前記2次粒子の表面に非晶質カーボンコーティング層17を含む負極活物質の場合には内部構造が緻密でないためリチウム二次電池の充放電中に残留応力が開放され、負極活物質が膨張する問題が発生する。そのため、負極活物質の内部孔隙が大きくなって電解液との副反応が増加することによって、リチウム二次電池が変形されて寿命が低減する。
【0021】
したがって、一実施形態では天然黒鉛を前記1次粒子の粒径範囲に小粒化し、前記1次粒子が組み立てられた2次粒子を球形化させることによって天然黒鉛が有する高い容量特性を維持すると同時に内部膨張の問題と寿命特性が改善した負極活物質を提供することができる。
【0022】
前記1次粒子は5μm~15μmの粒径を有し、前記2次粒子は8μm~24μmの粒径を有する。前記1次粒子の平均粒径が5μm未満であれば、収率下落により製造が難しく、電池の寿命特性が低下する。また、1次粒子の粒径が15μmを超えると、2次粒子の製造時に2次粒子の大きさが過度に大きくなってリチウム二次電池に適用することが難しい。また、前記2次粒子の粒径が8μm未満であれば、電極の製造時に形成される孔隙の大きさが過度に小さくなって電池への適用時に電解液含浸が劣化する。また、2次粒径が24μmを超えると負極の厚さが過度に厚くなるので、電池への適用が難しい。
【0023】
また、前記1次粒子は5~15μm、例えば5~13μm、5~12μm、または5.5~11.5μmの粒径を有し得、前記2次粒子は8~24μm例えば10~24μm、11~24μm、12~24μm、13~24μm、13~23μmまたは13~20μmの粒径を有し得る。1次粒子および2次粒子の粒径が前記範囲に該当する場合にはこれを採用した負極活物質の膨張がより効果的に抑制され、負極活物質のタップ密度が増加し得る。前記1次粒子および2次粒子の粒径は平均粒径を意味する。
【0024】
この時、平均粒径とは、複数の粒子を粒度分析器に投入して測定した値であり、累積粒度-分布曲線(cumulative size-distribution curve)において累積体積50体積%での粒子直径(D50)であり得る。
【0025】
前記2次粒子は、複数の1次粒子が組み立てられて形成されたものであり、組み立てられる1次粒子の個数は2次粒子を形成できる程度であれば特に制限はないが、例えば2~50個、2~40個、2~30個、2~20個、2~10個または2~4個の1次粒子が集まって2次粒子を形成し得る。
【0026】
前記天然黒鉛は、鱗片状(鱗状、scale shapeまたはflake type)天然黒鉛であり得る。
【0027】
一実施形態により、前記負極活物質は、前記1次粒子の表面に存在する非晶質カーボンおよび前記2次粒子を囲む非晶質カーボンを含むコーティング層を含む。前記天然黒鉛の1次粒子の表面(2次粒子の内部)および2次粒子の表面に非晶質カーボンを投入/コートすることによって、2次粒子内部の空隙率(pore volume fraction)を減少させて電解液との副反応を抑制することができる。その結果として電池の充放電レート特性を改善することができる。
【0028】
前記負極活物質は、前記天然黒鉛と前記非晶質カーボンを90:10~75:25重量比、例えば90:10~80:20重量比、90:10~85:15重量比、または90:10~88:12の重量比で含み得る。前記範囲に該当する場合、電解液との副反応をさらに効果的に抑制することができ、電池の充放電レート特性を改善することができる。
【0029】
前記非晶質カーボンを含むコーティング層は、5nm~50nm、例えば10nm~50nmまたは20nm~50nmの厚さを有し得る。前記範囲に該当する場合には電解液との副反応をさらに効果的に抑制することができ、充放電レート特性を改善することができる。
【0030】
前記非晶質カーボンは、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスおよびこれらの混合物の中から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0031】
一実施形態による負極活物質は、X線回折分析法によって測定されたピーク強度比I(002)/I(110)が120以下であり、例えば110以下、105以下または100以下であり得る。
【0032】
前記ピーク強度比I(002)/I(110)は、前記負極活物質のX線回折分析法によって測定された(110)面の回折ピーク強度I(110)に対する(002)面の回折ピーク強度I(002)の比を意味し、負極活物質粒子の負極活物質層の配向に関連した指標である。前記ピーク強度比I(002)/I(110)が小さいほど負極活物質粒子の結晶粒配向がランダムであることを示し、前記ピーク強度比I(002)/I(110)が大きいほど結晶粒が負極活物質層に対して平行に配向していることを示す。すなわち前記ピーク強度比が小さいほど天然黒鉛のエッジ(edge)面がランダムな方向に配向した状態になって負極活物質の難配向性が増加する。これにより、天然黒鉛2次粒子の内部にリチウムイオンの吸蔵/放出が容易になり、これを採用したリチウム二次電池の容量特性および充放電レート特性が向上することができる。
【0033】
一実施形態では結晶粒が等方的に成長した天然黒鉛粒子を用いて、前記天然黒鉛1次粒子を小粒化した後、これを2次粒子に組み立てて正極活物質を製造する。そこで、負極製作時の負極活物質結晶粒の配列度が高まることを効果的に抑制することができる。
【0034】
前記ピーク強度比I(002)/I(110)が前記範囲に該当する場合には負極活物質の膨脹率が減少し得る。その結果として負極活物質の内部孔隙(pore volume)および電解液との副反応が減少して電池の寿命特性が向上することができる。
【0035】
前記負極活物質内部の空隙率(pore volume fraction)は2%以下であり得、例えば1.8%以下、1.5%以下、1.0%~1.5%または1.0%~1.3%であり得る。前記負極活物質の空隙率が前記範囲に該当する場合には負極活物質の内部孔隙(pore volume)および電解液との副反応が減少し、電池の寿命特性が向上することができる。
【0036】
一方、前記空隙率を測定する方法は、次のとおりである。まず充電が完了したリチウム二次電池を放電させた後、これを解体して負極から負極活物質層を分離する。負極活物質層に含まれたバインダーと有機物などを除去した後乾燥してパウダー(powder)状態の天然黒鉛負極活物質を得る。前記パウダー状態の天然黒鉛の孔隙(pore volume)を測定し、これに天然黒鉛の真密度値を乗じると2次粒子の内部空隙率(pore volume fraction,%)を計算することができる。この時、前記天然黒鉛1次粒子の表面(2次粒子の内部)および2次粒子の表面に残っている非晶質カーボンは前記天然黒鉛と同じ真密度を有するので、除去する必要はない。
【0037】
この時、前記負極活物質は、10m2/g以下、例えば8m2/g以下、6m2/g以下または5m2/g以下の比表面積(BET)を有し得る。負極活物質の比表面積が前記範囲に該当する場合には負極活物質の内部孔隙(pore volume)および電解液との副反応が減少して、電池の寿命特性が向上することができる。
【0038】
前記負極活物質は、0.7g/cc~1.3g/ccのタップ密度を有し得、例えば0.9g/cc~1.3g/ccまたは1.1g/cc~1.3g/ccのタップ密度を有し得る。負極活物質のタップ密度が前記範囲に該当する場合には負極活物質の内部孔隙(pore volume)および電解液との副反応が減少し、電池の寿命特性が向上することができる。
【0039】
以下で前記負極活物質の製造方法を説明する。
粒子の粒径が80μm以上である天然黒鉛原料を1次粒子に粉砕する粉砕小粒化工程を行う。前記天然黒鉛原料は、気流粉砕方法を適用して1次粒子に粉砕する。気流粉砕は、前記天然黒鉛を常温で5~20kg/cm2条件の気流で粉砕するものであり得る。
【0040】
これにより、1次粒子は5~15μm、例えば5~13μm、5~12μm、または5.5~11.5μmの粒径を有し得、これを採用した負極活物質の膨張がさらに効果的に抑制され、負極活物質のタップ密度が増加し得る。
【0041】
次いで、前記小粒1次粒子を球形化装備を用いて2次粒子に組み立てる球形化工程を行う。
これにより、負極活物質の膨張がさらに効果的に抑制され、負極活物質のタップ密度が増加し得る。
【0042】
次いで、前記製造した天然黒鉛2次粒子に非晶質カーボン前駆体を投入する混合工程を行う。
前記非晶質カーボン前駆体は、炭化物になる材料であれば特に限定されず、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、合成ピッチ、石油系ピッチ、石炭系ピッチ、タールおよびこれらの組み合わせより選ばれるいずれか一つであり得る。
【0043】
前記混合工程は、最終生成物で天然黒鉛と非晶質カーボンが90:10~75:25重量比、例えば90:10~80:20重量比、90:10~85:15重量比、または90:10~88:12重量比で含まれるように調節し、天然黒鉛2次粒子に非晶質カーボン前駆体を投入する。
【0044】
これにより、前記2次粒子の内部に投入される非晶質カーボンの量を適切に調節することができ、2次粒子内部の孔隙を減少させて電解液との副反応を低減し、内部緻密度を向上させることができる。また、前記2次粒子表面に非晶質カーボンを含むコーティング層を形成することにおいて、上述した厚さ範囲のコーティング層を実現することができ、これにより、天然黒鉛2次粒子の構造的な安定性を図り、前記負極活物質の膨張を抑制することができる。その結果として、電池の寿命特性を改善させることができる。
【0045】
次いで、前記非晶質カーボンが混合された2次粒子を焼成する熱処理工程を行って一実施形態による負極活物質を製造する。
【0046】
前記熱処理工程は1,000~2,000℃、例えば1,000~1,800℃、1,000~1,600℃、1,000~1,400℃または1,200~1,300℃の焼成炉で1~5時間、例えば1~4時間、1~3時間または2~3時間の間維持する。前記熱処理工程が前記温度範囲と滞留時間範囲を満足する場合には2次粒子の内部孔隙(pore volume)および電解液との副反応を減少させ、負極活物質の膨張を抑制し得る。その結果として電池の寿命特性を向上させることができる。
【0047】
他の一実施形態は、前記負極活物質を含む負極を提供する。負極をより具体的に説明すると、前記負極は、前記負極活物質を含む負極活物質層およびこの負極活物質層を支持する電流集電体を含む。
【0048】
前記負極活物質層において負極活物質の含有量は、負極活物質層の全体重量に対して95重量%~99重量%であり得る。
前記負極活物質層において前記バインダーの含有量は、負極活物質層の全体重量に対して1重量%~5重量%であり得る。また、導電材をさらに含む場合には負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%で含み得る。
【0049】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また、負極活物質を電流集電体によく付着させる役割をする。前記バインダーとしては非水系バインダー、水系バインダーまたはこれらの組み合わせを用いることができる。
【0050】
前記非水系バインダーとしてはポリビニルクロライド、カルボキシル化したポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
前記水系バインダーとしては、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレーティッドスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールまたはこれらの組み合わせであり得る。
【0052】
前記負極バインダーとして水系バインダーを用いる場合、粘性を付与できるセルロース系化合物を増粘剤としてさらに含み得る。このセルロース系化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して用い得る。前記アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを用い得る。このような増粘剤の使用含有量は、負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であり得る。
【0053】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいかなるものでも使用可能である。導電材の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を用いることができる。
【0054】
前記集電体としては銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコートされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれることを用いることができる。
【0055】
一実施形態は、前記負極、正極活物質を含む正極および電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【0056】
前記正極は、電流集電体およびこの電流集電体に形成される正極活物質層を含む。前記正極活物質としてはリチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を用いることができる。具体的にはコバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせから選ばれる金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを用いることができる。より具体的な例としては下記化学式のうちいずれか一つで表される化合物を用いることができる。LiaA1-bXbD2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5);LiaA1-bXbO2-cDc(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiaE1-bXbO2-cDc(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiaE2-bXbO4-cDc(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiaNi1-b-cCobXcDα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α≦2);LiaNi1-b-cCobXcO2-αTα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiaNi1-b-cCobXcO2-αT2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcDα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αTα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiaNi1-b-cMnbXcO2-αT2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiaNibEcGdO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1);LiaNibCocMndGeO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0≦e≦0.1);LiaNibCocAldGeO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0≦e≦0.1);LiaNibCocMndGeO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1);LiaNiGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaCoGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn1-bGbO2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn2GbO4(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiaMn1-gGgPO4(0.90≦a≦1.8、0≦g≦0.5);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiZO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiaFePO4(0.90≦a≦1.8)
【0057】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;Xは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;Dは、O、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;Eは、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;Tは、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;Qは、Ti、Mo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;Zは、Cr、V、Fe、Sc、Y、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる。
【0058】
もちろんこの化合物の表面にコーティング層を有するものも使用でき、または前記化合物とコーティング層を有する化合物を混合して用いることもできる。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートおよびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも一つのコーティング元素化合物を含み得る。これらコーティング層をなす化合物は非晶質または結晶質であり得る。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としてはMg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を用い得ることができる。コーティング層の形成工程は、前記化合物にこのような元素を用いて正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えばスプレーコーティング、浸漬法など)でコートできればいかなるコーティング方法を用いてもよく、これについては当該分野に従事する者がよく理解できる内容であるため詳しい説明は省略する。
【0059】
前記正極において、前記正極活物質の含有量は正極活物質層の全体重量に対して90重量%~98重量%であり得る。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質層はバインダーおよび導電材をさらに含み得る。この時、前記バインダーおよび導電材の含有量は正極活物質層の全体重量に対してそれぞれ1重量%~5重量%であり得る。
【0061】
前記バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また、正極活物質を電流集電体によく付着させる役割をする。バインダーの代表的な例としてはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化したポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレーティッドスチレン-ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを用いるが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記導電材は電極に導電性を付与するために用いられるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいかなるものでも使用可能である。導電材の例としては天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0063】
前記電流集電体としてはAlを用い得るが、これに限定されない。
前記電解質は、非水性有機溶媒およびリチウム塩を含む。
【0064】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質の役割をする。
前記非水性有機溶媒としてはカーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を用いることができる。
【0065】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等が用いられ得る。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)等が用いられ得る。前記エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが用いられ得る。また、前記ケトン系溶剤としてはシクロヘキサノンなどが用いられ得る。また、前記アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが用いられ得、前記非プロトン性溶媒としてはR-CN(Rは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含み得る)等のニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが用いられ得る。
【0066】
前記有機溶媒は、単独または一つ以上混合して用い得、一つ以上混合して用いる場合の混合比率は目的とする電池性能に応じて適切に調節でき、これは当該分野に従事する者に広く理解され得る。
【0067】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して用いた方が良い。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは1:1~1:9の体積比で混合して用いることが優れた電解液の性能を示す。
【0068】
前記有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含み得る。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は1:1~30:1の体積比で混合され得る。
【0069】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記化学式1の芳香族炭化水素系化合物が用いられ得る。
【0070】
【0071】
(前記化学式1において、R1~R6は互いに同一または異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、ハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものである。)
【0072】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものである。
【0073】
前記電解質は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式2のエチレンカーボネート系化合物を寿命向上のための添加剤としてさらに含み得る。
【0074】
【0075】
(前記化学式2において、R7およびR8は互いに同一または異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化した炭素数1~5のアルキル基からなる群より選ばれ、前記R7とR8のうち少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)およびフッ素化した炭素数1~5のアルキル基からなる群より選ばれるが、ただしR7およびR8がいずれも水素ではない。)
【0076】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上のための添加剤をさらに用いる場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0077】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオン移動を促進する役割をする物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としてはLiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C2O4)2(リチウムビスオキサレートボレート(lithium bis(oxalato) borate:LiBOB)からなる群より選ばれる一つまたは二つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は0.1M~2.0Mの範囲内で用いた方が良い。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0078】
リチウム二次電池の種類によって正極と負極との間にセパレーターが存在し得る。このようなセパレーターとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜が用いられ得、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレーター、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレーター、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレーターなどのような混合多層膜が用いられ得ることはもちろんである。
【0079】
図2に本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の分解斜視図を示す。一実施形態によるリチウム二次電池は角形である場合を例に説明するが、本発明はこれに制限されるものではなく、円筒形、パウチ型など多様な形態の電池に適用され得る。
【0080】
図2を参照すると、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極10と負極20との間にセパレーター30を介在して巻き取られた電極組立体40と、前記電極組立体40が内蔵されるケース50を含み得る。前記正極10、前記負極20および前記セパレーター30は、電解液(図示せず)に含浸されていてもよい。
【0081】
以下本発明の実施例および比較例を記載する。このような下記一実施例は本発明の一実施例だけであり、本発明は下記した実施例に限定されるものではない。
【0082】
実施例1
粒子の粒径が80μm以上である黒鉛原料を気流粉砕により小粒1次粒子に粉砕した。前記小粒1次粒子を球形化装置を用いて2次粒子を製造した。前記2次粒子にピッチカーボンを投入し、これを1,200℃焼成炉で2時間の間熱処理して負極活物質を製造した。この時、投入されたピッチカーボンの投入量は製造された負極活物質の黒鉛/非晶質カーボンの重量比に合わせて調節した。
【0083】
この時、用いられた黒鉛、1次粒子の大きさ、2次粒子の大きさ、ピーク強度比I(002)/I(110)、製造された負極活物質の黒鉛/非晶質カーボンの重量比および2次粒子表面の非晶質カーボンコーティング層の厚さはそれぞれ下記表1に記載されたとおりである。
【0084】
前記負極活物質97.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%、スチレン-ブタジエン1.5重量%を蒸溜水に混合して負極活物質スラリー組成物を製造した。
【0085】
前記負極活物質スラリー組成物をCu電流集電体に塗布し、これを乾燥した後、圧延して負極を製造した。
【0086】
前記負極、リチウム金属対極および電解液を用いて半電池を製造した。前記電解液としては1M LiPF6が溶解されたエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(3:7体積比)を用いた。
【0087】
実施例2~4および比較例2~5
用いられた黒鉛、1次粒子の大きさ、2次粒子の大きさ、ピーク強度比I(002)/I(110)、製造された負極活物質の黒鉛/非晶質カーボンの重量比および2次粒子表面の非晶質カーボンコーティング層の厚さを下記表1に記載されたとおりに変更して負極活物質を製造したことを除いては実施例1と同様の方法により行い、それぞれ負極活物質を製造し、負極を製造して半電池を製造した。
【0088】
比較例1
粒子の粒径が80μm以上である黒鉛原料を球形化装備を用いて折り曲げて2次粒子を製造し、用いられた黒鉛、1次粒子の大きさ、2次粒子の大きさ、ピーク強度比I(002)/I(110)、製造された負極活物質の黒鉛/非晶質カーボンの重量比および2次粒子表面の非晶質カーボンコーティング層の厚さを下記表1に記載されたとおりに変更して負極活物質を製造したことを除いては前記実施例1と同様の方法により行い負極活物質を製造し、負極を製造して半電池を製造した。
【0089】
【0090】
評価例1:半電池の厚さ膨脹率の測定
前記実施例1~4および比較例1~5で製造した半電池を45℃、0.5Cで25回充放電を行った。充放電を実施する前の電池の厚さと、充放電を行った後の電池の厚さの差を求め、下記数学式1で厚さの増加率を計算した。その結果を下記表2に示す。
【0091】
[数学式1]
厚さ増加率(%)={(充放電実施後の半電池の厚さ-充放電実施前の半電池の厚さ)/充放電実施前の半電池の厚さ}×100
【0092】
評価例2:レート特性の評価
前記実施例1~4および比較例1~5で製造した半電池を0.1Cで初回(1st cycle)充放電した後、0.2Cで2回(2nd cycle)充放電した後0.2C充電容量を測定した。以後2.0Cで0.01Vカット-オフ充電後定電圧条件で0.01Cカット-オフ充電した後、定電流条件で0.2Cで、1.5Vカット-オフ条件で放電して2C充電容量を測定した。2C充電容量/0.2C充電容量を求めてレート特性を評価した。その結果を下記表2に示す。
【0093】
評価例3:空隙率(pore volume fraction,%)の測定
前記評価例2により初回充放電した半電池を解体した後、極板から負極活物質の部分を分離し、バインダーと有機物を除去して乾燥されたパウダー状態でBET分析用サンプリングを行った。BET装置(ASAP 2020 V3.03 H)を用いて測定して出たBJH脱着累積細孔容積(BJH desorption cumulative pore volume)値に、前記天然黒鉛の真密度を乗じて空隙率(pore volume fraction(%))を計算した。その結果を下記表2に示す。
【0094】
評価例4:高温サイクル寿命特性の評価
前記実施例1~4および比較例1~5で製造した半電池を45℃で1.5Cで50回充放電を行った。初回放電容量に対する50回放電容量の比率を求めて、その結果を下記表2に示す。
【表2】
【0095】
前記表2を参照すると、1次粒子粒径5μm~15μmであり、2次粒子粒径が8μm~24μmである天然黒鉛を用いて、ピーク強度比I(002)/I(110)が120以下である実施例1~4の場合には厚さ膨脹率が4.7~6.1%で低く、初期レート特性が38以上、高温寿命特性が90%以上で顕著に高いことが分かった。また、負極活物質内部の空隙率も1.3%以下で減少することを確認した。
【0096】
これに対し、比較例1および5の場合、天然黒鉛を用いたが効果は良くなかった。具体的には、比較例1は小粒1次粒子に粉砕せず、ピーク強度比I(002)/I(110)が120を超えたことによって、電池の厚さ膨脹率が7.5%と高く、初期レート特性が24.2と低く、高温寿命の特性が88.7%と低く、負極活物質内部の空隙率も3.5%と高く示された。また、比較例5は、1次粒子および2次粒子の粒径がそれぞれ15μmおよび24μmを超え、I(002)/I(110)ピーク強度比が120を超えることによって、初期充放電レート特性が22.7と顕著に低く、高温寿命特性が87.5%と低くなることを確認することができた。
【0097】
また、天然黒鉛の代わりに人造黒鉛を用いた比較例2~4において、比較例4は人造黒鉛を使用することによって、電池の厚さ膨脹率が7.7%と顕著に高く、高温寿命特性が88.1%と低くなることを確認することができた。比較例2は人造黒鉛を用いて、2次粒子の粒径が24μmを超えることによって、電池の厚さ膨脹率が高く、レート特性および高温寿命特性が劣化することを確認することができた。また、比較例3は人造黒鉛を用いて、2次粒子の粒径が24μmを超え、ピーク強度比I(002)/I(110)が120を超えることによって、空隙率および厚さ膨脹率が最も高く、電池の高温寿命特性も顕著に低かった。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明並びに添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これもまた本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0099】
1:2次粒子
3:1次粒子
5:非晶質カーボン
7:コーティング層
11:2次粒子
13:天然黒鉛
17:コーティング層
10:正極
20:負極
30:セパレーター
40:電極組立体
50:ケース
100:リチウム二次電池