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特開2023-145902キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145902
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/107 20060101AFI20231004BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G03G9/107 321
G03G9/113 352
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052804
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000224802
【氏名又は名称】DOWA IPクリエイション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】三輪野 祥
(72)【発明者】
【氏名】金城 優樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信也
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AB01
2H500AB04
2H500CB02
2H500CB08
2H500CB11
2H500EA08E
2H500EA43E
2H500EA56E
2H500EA61E
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】見掛密度が低く、かつ、キャリア飛散が生じ難いキャリア芯材を提供する。
【解決手段】キャリア芯材はフェライト粒子から構成され、Ca元素とSi元素との複合酸化物を含有し、Ca元素を1.7質量%以上6.5質量%以下含有し、Si元素を1.4質量%以上5.2質量%以下含有し、磁場79.58×10A/m(1000エルステッド)を印加した際の前記フェライト粒子の磁化σ1kが58Am/kg以上75Am/kg以下の範囲であり、見掛密度が1.90g/cm以上2.20g/cm以下の範囲であり、細孔容積が0.010mL/g未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、
Ca元素とSi元素との複合酸化物を含有し、
Ca元素を1.7質量%以上6.5質量%以下含有し、
Si元素を1.4質量%以上5.2質量%以下含有し、
磁場79.58×10A/m(1000エルステッド)を印加した際の前記フェライト粒子の磁化σ1kが58Am/kg以上75Am/kg以下の範囲であり、
見掛密度が1.90g/cm以上2.20g/cm以下の範囲であり、
細孔容積が0.010mL/g未満である
ことを特徴とするキャリア芯材。
【請求項2】
前記フェライト粒子の真密度が4.00g/cm以上4.75g/cm以下の範囲である請求項1記載のキャリア芯材。
【請求項3】
前記フェライト粒子の飽和磁化σが67Am/kg以上90Am/kg以下の範囲である請求項1又は2記載のキャリア芯材。
【請求項4】
前記フェライト粒子の残留磁化σが2.0Am/kg以下であり、
保磁力Hが20エルステッド以下である請求項1~3のいずれかに記載のキャリア芯材。
【請求項5】
前記フェライト粒子が、一般式(MnFe3-X)O(但し、0<X<3)で表される組成を主成分として有し、
Ca元素を2.0質量%以上4.0質量%以下含有し、
Si元素を2.0質量%以上4.0質量%以下含有する
請求項1~4のいずれかに記載のキャリア芯材。
【請求項6】
Ca元素とSi元素との含有質量比Ca/Siが0.5以上2.0以下である
請求項1~5のいずれかに記載のキャリア芯材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項8】
請求項7記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子写真方式を用いたファクシミリやプリンター、複写機などの画像形成装置では、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像化し、この可視像を用紙等に転写した後、加熱・加圧して定着させている。高画質化やカラー化の観点から、現像剤としては、キャリアとトナーとを含むいわゆる二成分現像剤が広く使用されている。
【0003】
二成分現像剤を用いた現像方式では、キャリアとトナーとが現像装置内で撹拌混合され、摩擦によってトナーが所定量まで帯電される。そして、回転する現像ローラに現像剤が供給され、現像ローラ上で磁気ブラシが形成して、磁気ブラシを介して感光体へトナーが電気的に移動して感光体上の静電潜像が可視像化される。トナー移動後のキャリアは現像ローラ上から剥離され現像装置内で再びトナーと混合される。
【0004】
近年、現像装置における撹拌動力の低減による省電力化や、キャリアの表面にトナーを構成する成分が融着する「トナースペント」を抑制して画像品質の安定化を図るため、キャリア芯材の内部に空隙を設けること、さらには内部の空隙に樹脂を充填することによってキャリア芯材の重量を軽くすることが提案されている(特許文献1,2など)。
【0005】
しかし、内部に空隙を設けたキャリア芯材は、見掛密度は低くなるものの、キャリア芯材の表面を樹脂被覆する際の、キャリア芯材の内部空隙に滲入する被覆樹脂の制御が難しく、結果的にキャリア芯材表面の被覆樹脂量にバラツキが発生しやすい。被覆樹脂量にバラツキがあると、キャリア特性がばらついてキャリア飛散などの不具合が生じやすい。
【0006】
また、キャリア芯材の見掛密度を低下させ粒子強度を向上させる手法として、キャリア芯材の主成分であるフェライトよりも真密度の小さいSiO(二酸化ケイ素)をキャリア芯材の原料成分として添加する手法もあり得るが、SiOは水分を吸着し易いために高温高湿環境下ではキャリア芯材の帯電特性が低下するなどの実用上の課題が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-170224号公報
【特許文献2】特開2009-086093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、トナースペントが生じ難く、かつ、キャリア芯材表面の被覆樹脂量がばらつかずキャリア飛散が生じ難いキャリア芯材を提供することにある。
【0009】
また本発明の目的は、画像品質の安定性に優れたキャリアおよび現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明に係るキャリア芯材は、フェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、Ca元素とSi元素との複合酸化物(以下、「CaSi複合酸化物」と記すことがある。)を含有し、Ca元素を1.7質量%以上6.5質量%以下含有し、Si元素を1.4質量%以上5.2質量%以下含有し、磁場79.58×10A/m(1000エルステッド)を印加した際の前記フェライト粒子の磁化σ1kが58Am/kg以上75Am/kg以下の範囲であり、見掛密度が1.90g/cm以上2.20g/cm以下の範囲であり、細孔容積が0.010mL/g未満であることを特徴とする。
【0011】
前記構成のキャリア芯材において、前記フェライト粒子の真密度が4.00g/cm以上4.75g/cm以下の範囲であるのが好ましい。
【0012】
また前記構成のキャリア芯材において、前記フェライト粒子の飽和磁化σが67Am/kg以上90Am/kgの範囲であるのが好ましい。
【0013】
また前記構成のキャリア芯材において、前記フェライト粒子の残留磁化σが2.0Am/kg以下であり、保磁力Hが20エルステッド以下であるのが好ましい。
【0014】
また前記構成のキャリア芯材において、前記フェライト粒子が、一般式(MnFe3-X)O(但し、0<X<3)で表される組成を主成分として有し、Ca元素を2.0質量%以上4.0質量%以下含有し、Si元素を2.0質量%以上4.0質量%以下含有するのが好ましい。
【0015】
また前記構成のキャリア芯材において、Ca元素とSi元素との含有質量比Ca/Siが0.5以上2.0以下であるのが好ましい。
【0016】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0017】
さらに本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤が提供される。
【0018】
なお、磁化σ1k、見掛密度、細孔容積、真密度、飽和磁化σ、残留磁化σ、保磁力Hは後述の実施例における測定方法によって測定した値である。
【0019】
また、本明細書において「フェライト粒子」、「キャリア芯材」、「電子写真現像用キャリア」、「トナー」は、それぞれ個々の粒子の集合体(粉体)を意味するものである。そして本明細書において示す「~」は、特に断りのない限り、その前後に記載の数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のキャリア芯材によればトナースペントが抑制される。また、キャリア芯材表面の被覆樹脂量がばらつかずキャリア飛散が抑制される。
【0021】
本発明の電子写真現像用キャリアおよび電子写真用現像剤によればキャリア飛散などの発生が抑制され、長期にわたって安定して良好な画質の画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例7のキャリア芯材についてXRD測定結果である。
図2】実施例13のキャリア芯材についてXRD測定結果である。
図3】比較例1のキャリア芯材についてXRD測定結果である。
図4】比較例12のキャリア芯材についてXRD測定結果である。
図5】比較例14のキャリア芯材についてXRD測定結果である。
図6】本発明に係るキャリアを用いた現像装置の一例を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るキャリア芯材の大きな特徴の一つは、フェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、キャリア芯材がCaSi複合酸化物を含有し、Ca元素を1.7質量%以上6.5質量%以下含有し、Si元素を1.4質量%以上5.2質量%以下含有することにある。
前述のように、従来、キャリア芯材の見掛密度を低下させるために、キャリア芯材の主成分であるフェライト(真密度:約5g/cm)よりも真密度の小さいSiO(真密度:約2.2g/cm)をキャリア芯材の原料成分として添加することが提案されていたが、SiOは水分を吸着し易いために高温高湿環境下ではキャリア芯材の帯電特性が低下するなどの不具合があった。
そこで本発明者等はSiOの代わりとして、湿度などの使用環境の影響を受けにくくフェライトよりも真密度の小さいキャリア芯材の帯電特性に大きな影響を与えない物質がないか鋭意検討を重ねた。その結果、CaSiO(真密度:約2.9g/cm)などのCaSi複合酸化物が上記条件を満足するとの知見を得て本発明がなされた。
【0024】
本明細書におけるCaSi複合酸化物には、CaSiOなどのCa(カルシウム)、Si(ケイ素)、O(酸素)から構成される狭義の複合酸化物の外、この狭義の複合酸化物に、Fe(鉄)、Mn(マンガン)などのフェライトを構成する金属元素が固溶した複合酸化物も含まれる。
【0025】
CaSi複合酸化物がキャリア芯材に含有されていることは、例えば粉末X線回折(XRD)測定および成分分析によって確認することができる。具体的には、測定されたX線回折パターンにおいて入射角2θが26.60°以上27.30°以下の範囲に回折強度のピークが存在すること、そして後述の成分分析によってキャリア芯材がCa元素とSi元素とが含有されていることから確認できる。
【0026】
狭義の複合酸化物では入射角2θが26.84°の位置に回折強度のピークが存在する。また狭義の複合酸化物に、例えばFeが固溶した酸化物では入射角2θが27.13°の位置に回折強度のピークが存在する。図2に示す実施例13のキャリア芯材のX線回折パターンでは、入射角2θが26.60°以上27.30°以下の範囲に狭義の複合酸化物(CaSiO)に由来する回折強度のピークと狭義の複合酸化物にFeが固溶した酸化物((Ca,Fe)SiO)に由来する回折強度のピークとが現れている。
【0027】
なお、XRD測定は次のようにして行われる。
(粉末X線回折(XRD)測定)
リガク社製「UltimaIV」を用いてキャリア芯材の粉末X線回折測定を行う。X線源にはCu管球(Kα)を使用し、加速電圧40kV、電流20mAの条件でX線を発生させる。発散スリット開口角は1°、散乱スリット開口角は1°、受光スリット幅は0.3mm、走査モードはFT、ステップ幅は0.0100°、計数時間は10秒、積算回数は1回、スキャン範囲は26.0≦2θ≦27.5とする。
【0028】
CaSi複合酸化物としてはCaSiO及びCaSiOにFe,Mnなどのフェライト構成金属元素が固溶したものであるのが好ましい。CaSi複合酸化物はフェライトの原料成分と共に初期添加されるのが好ましいが、例えばCaSiOを初期添加した場合であっても、製造工程における反応によって、CaSiOの一部または全部が、フェライトを構成する金属元素(Feなど)が固溶した複合酸化物(例えば(Ca,Fe)SiO)に変化することがある。このようなFeなどが固溶した複合酸化物であっても本発明の効果は奏される。なお、フェライトの原料成分と共にCa原料成分とSi原料成分とを添加し混合して焼成工程においてCaSiOが合成されてフェライト粒子に含有されるようにしてもよいが、CaSiOはフェライトの原料成分と共に初期添加されるのが好ましい。
【0029】
本発明のキャリア芯材におけるCa元素の含有量は1.7質量%以上6.5質量%以下の範囲である。Ca元素の含有量が1.7質量%よりも少ないと見掛密度が大きくなりトナースペントが発生しやすくなる。一方Ca元素の含有量が6.5質量%よりも多いと磁化σ1kが低くなってキャリア飛散が発生しやすくなる。より好ましいCa元素の含有量は2.0質量%以上4.0質量%以下の範囲である。
【0030】
本発明のキャリア芯材におけるSi元素の含有量は1.4質量%以上5.2質量%以下の範囲である。Si元素の含有量が1.4質量%よりも少ないと見掛密度が大きくなりトナースペントが発生しやすくなる。一方Si元素の含有量が5.2質量%よりも多いと磁化σ1kが低くなってキャリア飛散が発生しやすくなる。より好ましいSi元素の含有量は2.0質量%以上4.0質量%以下の範囲である。
【0031】
本発明のキャリア芯材の磁化σ1kは58Am/kg以上75Am/kg以下の範囲である。磁化σ1kが58Am/kgよりも低いとキャリア飛散が生じやすい。一方、磁化σ1kが75Am/kgよりも高いと現像ローラの外周に形成される磁気ブラシが固くなって磁気ブラシの密度が低くなり現像領域への現像剤の搬送量が不十分となるおそれがある。
【0032】
本発明のキャリア芯材の見掛密度は1.90g/cm以上2.20g/cm以下の範囲が好ましい。より好ましいキャリア芯材の見掛密度は1.97g/cm以上2.19g/cm以下の範囲である。
【0033】
本発明のキャリア芯材の細孔容積は0.010mL/g未満である。細孔容積が0.010mL/g以上であるとキャリア芯材を被覆する樹脂量がばらついてキャリア飛散が生じやすくなる。より好ましいキャリア芯材の細孔容積は0.005mL/g以上0.008mL/g以下の範囲である。
【0034】
本発明のキャリア芯材の真密度は4.00g/cm以上4.75g/cm以下の範囲が好ましい。キャリア芯材の真密度が4.00g/cmよりも低いとCaSi複合酸化物の割合が多くて一粒子当たりの磁化が低下しキャリア飛散が生じるおそれがある。一方、真密度が4.75g/cmよりも高いとトナースペントが生じるおそれがある。より好ましいキャリア芯材の真密度は4.56g/cm以上4.69g/cm以下の範囲である。キャリア芯材の真密度は、主としてCaSi複合酸化物の含有量によって調整可能である。またキャリア芯材を構成するフェライト組成によっても調整可能である。
【0035】
本発明のキャリア芯材の飽和磁化σは67Am/kg以上90Am/kg以下の範囲が好ましい。飽和磁化σが67Am/kg未満であると、一粒子あたりの磁化が小さくなる為にキャリア飛散が生じるおそれがある。一方、飽和磁化σが90Am/kgを超えると、現像ローラの外周に形成される磁気ブラシが固くなって磁気ブラシの密度が低くなり現像領域への現像剤の搬送量が不十分となるおそれがある。より好ましい飽和磁化σは70Am/kg以上80Am/kg以下の範囲がより好ましい。
【0036】
また本発明のキャリア芯材の残留磁化σは2.0Am/kg以下の範囲が好ましい。残留磁化σが2.0Am/kgを超えると現像ローラからのキャリアの剥離が困難になるおそれがある。より好ましい残留磁化σは1.5Am/kg以下の範囲である。
【0037】
また本発明のキャリア芯材の保磁力Hは20エルステッド(20×10/(4π)A/m)以下の範囲が好ましい。保磁力Hが20エルステッドを超えると、キャリアの流動性、帯電付与能力が悪化し、トナー飛散が生じやすくなるおそれがある。より好ましい保磁力Hは15エルステッド以下の範囲である。
【0038】
本発明に係るキャリア芯材を構成するフェライト粒子の組成は、組成式MnFe3-X(但し、0<X<3)で表されるものが好ましい。そして、Caが2.0質量%以上4.0質量%以下の範囲含有され、Siが2.0質量%以上4.0質量%以下の範囲含有されているのが好ましい。
【0039】
ここでCa元素とSi元素の含有質量比Ca/Siは0.5以上2.0以下の範囲が好ましい。
【0040】
本発明のキャリア芯材のレーザー回折式粒度分布測定装置で測定される体積平均粒径(以下、「平均粒径」と記すことがある。)D50は30μm以上50μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは30μm以上40μm以下の範囲である。また体積基準の積算粒度分布における粒径22μm以下の累積値は1.5%以下であるのが好ましい。粒径22μm以下の累積値が1.5%を超えるとキャリア飛散が生じるおそれがある。
【0041】
(製造方法)
本発明のキャリア芯材の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0042】
まず、フェライトの成分原料と、CaSiOなどのCaSi複合酸化物と、必要により従来公知の添加剤を秤量する。フェライトの成分原料としては、Fe成分原料、Mn成分原料などが挙げられる。Fe成分原料としては、Fe等が好適に使用される。Mn成分原料としてはMnCO、Mn等が使用される。なお、原料中のFe、Mn、Ca、Si量比はほぼそのままキャリア芯材中の各元素の組成比に反映されるので、Fe成分原料、Mn成分原料およびCaSi複合酸化物の各仕込量は、キャリア芯材における狙いの組成比となるように調整すればよい。
【0043】
次いで、原料を分散媒中に投入しスラリーを作製する。CaSi複合酸化物はこの時点で分散媒中に投入してもよく、後述する湿式粉砕後のスラリーに混合してもよい。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記仮焼成原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.1質量%~2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウムやメタクリル酸系ポリマー等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.1質量%~2質量%程度とするのが好ましい。その他、カーボンブラックなどの還元剤、アンモニアなどのpH調整剤、潤滑剤、焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%~90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%~80質量%である。60質量%以上であれば、造粒物中に粒子内細孔が少なく、焼成時の焼結不足を防ぐことができる。
【0044】
なお、秤量した原料を混合し仮焼成し解粒した後、分散媒に投入しスラリーを作製してもよい。仮焼成の温度としては750℃~1000℃の範囲が好ましい。750℃以上であれば、仮焼成による一部フェライト化が進み、焼成時のガス発生量が少なく、固体間反応が十分に進むため、好ましい。一方、1000℃以下であれば、仮焼成による焼結が弱く、後のスラリー粉砕工程で原料を十分に粉砕できるので好ましい。一般に、1540℃以下の温度範囲であればCaSiOは溶融・分解することなくその結晶を維持することができる。また、仮焼成時の雰囲気としては大気雰囲気が好ましい。
【0045】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は5μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0046】
CaSi複合酸化物の粒度を制御することにより、キャリア芯材の残留磁化σのレベルを制御することも可能である。分散媒およびフェライト成分原料を含むスラリーを湿式粉砕処理に供した後に、平均粒径が12μmであるCaSi複合酸化物を混合したスラリーを得て、さらに後述する噴霧乾燥以下の操作を行うことで、平均粒径が12μm未満であるCaSi複合酸化物を混合した場合と比べてσを低下させることができる。このようにCaSi複合酸化物の粒度を制御することでキャリア芯材のσを制御できるメカニズムは現時点で不明であるが、本発明者等は、キャリア芯材内部に存在するCaSi複合酸化物の平均粒径が小さいと、キャリア芯材一粒子中のCaSi複合酸化物の粒子数が増加して粒界が増加することで磁気スピンの戻りが阻害され残留磁化が増加するのではないかと推測している。CaSi複合酸化物の平均粒径の上限は、粒子内での磁力のばらつきが生じるためキャリア芯材の平均粒子径の50%以下であることが好ましい。より好ましいCaSi複合酸化物の平均粒径はキャリア芯材の平均粒子径の40%以下である。
【0047】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球形に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃~300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm~200μmの球形の造粒物が得られる。次いで、必要により、得られた造粒物を振動篩を用いて分級し所定の粒径範囲の造粒物を作製する。
【0048】
次に、前記の造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成することにより、フェライト粒子を生成させる。焼成温度としては1050℃~1350℃の範囲が好ましい。より好ましくは1100℃~1250℃の範囲である。焼成温度が1050℃以下であると、相変態が起こりにくくなるとともに焼結も進みにくくなる。また、焼成温度が1350℃を超えると、過剰焼結による過大グレインの発生がするおそれがある。本発明のフェライト粒子はCaSi複合酸化物を含有するため、昇温速度が速い場合、焼成時の収縮速度差の影響により球形状が保てなくなるおそれがある。特に500℃から前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては100℃/h~500℃/hの範囲が好ましい。焼成温度での保持時間は2時間以上が好ましい。昇温・焼成・冷却における酸素濃度は0.05%~21%の範囲に制御するのが好ましい。
【0049】
このようにして得られた焼成物を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。また解粒処理後、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。フェライト粒子の体積平均粒子径としては30μm以上50μm未満が好ましい。
【0050】
その後、必要に応じて、分級後のフェライト粒子を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は200℃以上800℃以下の範囲が好ましく、360℃以上550℃以下の範囲がさらに好ましい。加熱時間は0.5時間以上5時間以下の範囲が好ましい。なお、フェライト粒子の表面と内部とを均質化する観点からは加熱温度は低温であるのが望ましい。以上のようにして作製したスピネル型フェライト粒子を本発明のキャリア芯材として用いる。
【0051】
(電子写真現像用キャリア)
本発明に係る電子写真現像用キャリアは、以上のようにして作製されたキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されてなる。
【0052】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0053】
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001質量%以上30質量%以下、特に0.001質量%以上2質量%以下の範囲内にあるのがよい。
【0054】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0055】
キャリアの粒子径は、一般に、体積平均粒子径で30μm以上50μm以下の範囲、特に30μm以上40μm以下の範囲が好ましい。
【0056】
(電子写真用現像剤)
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し装置内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0057】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0058】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm以上15μm以下の範囲が好ましく、7μm以上12μm以下の範囲がより好ましい。
【0059】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0060】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【0061】
(現像装置)
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。図6に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。図6に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
【0062】
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
【0063】
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N、搬送磁極S、剥離磁極N、汲み上げ磁極N、ブレード磁極Sの5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3の筒状体が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極Nの磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
【0064】
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が転写電圧電源8から現像ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5kV~5kVの範囲が好ましく、周波数は1kHz~10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
【0065】
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極Sによって装置内部に搬送され、剥離電極Nによって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。そして汲み上げ極Nによって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。
【0066】
なお、図6に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
【実施例0067】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)22.13kg、Mn(平均粒径:3.4μm)8.60kg、CaSiO(平均粒径:12μm)3.42kgを純水11.40kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を279.3g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1145℃まで3時間保持することにより焼成を行った。電気炉内の酸素濃度は3000ppmとなるよう、炉内の酸素濃度を調整した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動篩を用いて分級し、平均粒子径35.9μmのキャリア芯材を得た。
【0069】
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0070】
次に、このようにして得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450質量部と、(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9質量部とを、溶媒としてのトルエン450質量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000質量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下の実施例及び比較例についても同様にしてキャリアを得た。
【0071】
得られたキャリアと平均粒子径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの質量/(トナーおよびキャリアの質量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤について後述の実機評価を行った。評価結果を表1及び表2に示す。以下の実施例及び比較例についても同様にして実機評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0072】
(実施例2)
焼成工程における電気炉温度を1170℃に変更した以外は実施例1と同様にして平均粒子径36.0μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0073】
(実施例3)
焼成工程における電気炉温度を1200℃に変更した以外は実施例1と同様にして平均粒子径35.6μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0074】
(実施例4)
実施例3のキャリア芯材を温度420℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0075】
(実施例5)
原料として、平均粒径の異なるCaSiO(平均粒径:5μm)3.42kgを用いた以外は実施例1と同様にして平均粒子径35.7μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0076】
(実施例6)
焼成工程における電気炉温度を1170℃に変更した以外は実施例5と同様にして平均粒子径35.8μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0077】
(実施例7)
実施例6のキャリア芯材を温度420℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。また図1に実施例7のキャリア芯材のXRD測定図を示す。
【0078】
(実施例8)
焼成工程における電気炉温度を1200℃に変更した以外は実施例5と同様にして平均粒子径34.9μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0079】
(実施例9)
実施例8のキャリア芯材を温度400℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0080】
(実施例10)
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)22.13kg、Mn(平均粒径:3.4μm)8.64kgを純水11.40kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を279.3g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、CaSiO(平均粒径:12μm)3.42kg添加して混合スラリーを得た以外は実施例1と同様にして平均粒子径35.2μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0081】
(実施例11)
実施例10のキャリア芯材を温度420℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0082】
(実施例12)
焼成工程における電気炉温度を1170℃に変更した以外は実施例10と同様にして平均粒子径35.9μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0083】
(実施例13)
実施例12のキャリア芯材を温度400℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。また図2に実施例13のキャリア芯材のXRD測定図を示す。
【0084】
(実施例14)
原料として、平均粒径の異なるCaSiO(平均粒径:5μm)3.42kgを用いた以外は実施例10と同様にして平均粒子径34.3μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0085】
(実施例15)
焼成工程における電気炉温度を1170℃に変更した以外は実施例14と同様にして平均粒子径35.6μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0086】
(実施例16)
焼成工程における電気炉温度を1200℃に変更した以外は実施例14と同様にして平均粒子径35.1μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0087】
(実施例17)
実施例16のキャリア芯材を温度400℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0088】
(比較例1)
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)24.59kg、Mn(平均粒径:3.4μm)9.60kgを純水11.40kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を279.3g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し、1110℃で3時間保持することにより焼成を行った。電気炉内の酸素濃度は3000ppmとなるよう、炉内の酸素濃度を調整した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動篩を用いて分級し平均粒子径35.9μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。また図3に比較例1のキャリア芯材のXRD測定図を示す。
【0089】
(比較例2)
焼成工程における電気炉温度を1200℃に変更した以外は比較例1と同様にして平均粒子径35.9μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0090】
(比較例3)
焼成工程における電気炉温度を1110℃に変更した以外は実施例1と同様にして平均粒子径35.7μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0091】
(比較例4)
焼成工程における電気炉温度を1110℃に変更した以外は実施例5と同様にして平均粒子径35.3μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0092】
(比較例5)
焼成工程における電気炉温度を1110℃に変更した以外は実施例10と同様にして平均粒子径35.8μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0093】
(比較例6)
焼成工程における電気炉温度を1110℃に変更した以外は実施例14と同様にして平均粒子径35.3μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0094】
(比較例7)
実施例1のキャリア芯材を温度400℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0095】
(比較例8)
実施例1のキャリア芯材を温度420℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0096】
(比較例9)
実施例14のキャリア芯材を温度400℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0097】
(比較例10)
実施例5のキャリア芯材を温度440℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0098】
(比較例11)
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)34.20kg、Mn(平均粒径:3.4μm)13.35kg、CaSiO(平均粒径:5μm)2.45kgを純水16.70kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を408.0g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し、1145℃で3時間保持することにより焼成を行った。電気炉内の酸素濃度は3000ppmとなるよう、炉内の酸素濃度を調整した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動篩を用いて分級し平均粒子径35.0μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0099】
(比較例12)
比較例11のキャリア芯材を温度400℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。また図4に比較例12のキャリア芯材のXRD測定図を示す。
【0100】
(比較例13)
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)28.09kg、Mn(平均粒径:3.4μm)10.96kg、CaSiO(平均粒径:5μm)10.95kgを純水16.70kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を408.0g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し、1170℃で3時間保持することにより焼成を行った。電気炉内の酸素濃度は3000ppmとなるよう、炉内の酸素濃度を調整した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動篩を用いて分級し平均粒子径35.8μmのキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0101】
(比較例14)
比較例13のキャリア芯材を温度400℃で1.5時間大気雰囲気下で保持して酸化処理(高抵抗化処理)した。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。また図5に比較例14のキャリア芯材のXRD測定図を示す。
【0102】
(比較例15)
原料として、Fe(平均粒径:0.6μm)14.43kg、Mn(平均粒径:2μm)4.62kg、MgO1.04kgを混合した。この混合物をローラーコンパクターでペレット化した。得られたペレットを大気雰囲気の条件下、温度850℃にてロータリー式の焼成炉で仮焼成を行った。乾式ビーズミルで6時間粉砕し、仮焼原料を得た。得られた仮焼成粉を水7.12kg中に分散し、CaCOを149.5g、メタクリル酸系ポリマー21%含有水溶液を219.7g添加し、湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は篩により除去した。
この造粒粉を、電気焼成炉に投入し、温度1110℃で保持時間3時間として、本焼成を行った。その後酸素濃度7500ppmで6時間かけて冷却した。得られた焼成物は解粒後に篩を用いて分級し、平均粒径36.2μm、粒径22μm以下の割合が0.9%のキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の粉体特性、磁気特性、電気特性などを後述の方法で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。
【0103】
(組成分析)
(Feの分析)
鉄元素を含むキャリア芯材を秤量し、塩酸と硝酸の混酸水に溶解させた。この溶液を蒸発乾固させた後、硫酸水を添加して再溶解し過剰な塩酸と硝酸とを揮発させる。この溶液に固体Alを添加して液中のFe3+を全てFe2+に還元する。続いて、この溶液中のFe2+イオンの量を過マンガン酸カリウム溶液で電位差滴定することにより定量分析し、Fe(Fe2+)の滴定量を求めた。
(Mnの分析)
キャリア芯材のMn含有量は、JIS G1311-1987記載のフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)に準拠して定量分析を行った。本明細書に記載したキャリア芯材のMn含有量は、このフェロマンガン分析方法(電位差滴定法)で定量分析し得られたMn量である。
(Caの分析)
キャリア芯材のCa含有量は、以下の方法で分析を行った。本願発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本発明に記載したキャリア芯材のCa含有量は、このICPによる定量分析で得られたCa量である。
(Siの分析)
キャリア芯材のSi含有量は、JIS M8214-1995記載の二酸化珪素重量法に準拠して定量分析を行なった。
【0104】
(見掛密度AD)
キャリア芯材の見掛密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0105】
(流動度FR)
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0106】
(平均粒子径D50と粒径22μm以下の割合)
キャリア芯材の平均粒子径D50及び粒径22μm以下の体積割合は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定した。
【0107】
(細孔容積)
評価装置は、Quantachrome社製のPOREMASTER-60GTを使用した。具体的測定条件は、
Cell Stem Volume:0.5cm
Headpressure:20PSIA
水銀の表面張力:485.00erg/cm
水銀の接触角:130.00degrees
高圧測定モード:Fixed Rate
Moter Speed:1
高圧測定レンジ:20.00~10000.00PSI
とし、サンプル1.500gを秤量して0.5cmのセルに充填して測定を行った。また、10000PSI時の容積B(cm/g)から60PSI時の容積A(cm/g)を差し引いた値を、細孔容積とした。
【0108】
(BET比表面積)
実施例1~17、比較例1~12、比較例15は、BET一点法比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、型式:Macsorb HM model-1208)を用いて評価を行った。具体的には、サンプルは、10.000g(なお、比較例13,14のキャリア芯材についてはセルに10.000g充填できないので8.000gとした。)を秤量して直径15mmのセルに充填し、200℃で、30分間脱気して測定を行った。
【0109】
(真密度)
キャリア芯材の真密度は、Quantachrome社製、「ULTRA PYCNOMETER 1000」を用いて測定を行った。
【0110】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM-P7」)を用いて、外部磁場を0~79.58×10A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、磁場79.58×10A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化σ1k、飽和磁化σ、残留磁化σ、保磁力Hを測定した。
【0111】
(静的電気抵抗)
電極として表面を電解研磨した板厚2mmの真鍮板2枚を電極間距離が2mmとなるように配置し、2枚の電極板の間の空隙にキャリア芯材200mgを装入したのち、それぞれの電極板の背後に断面積240mmの磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させた状態で電極間に100V,500V,1000V直流電圧を印加し、キャリア芯材を流れる電流値を4端子法により測定した。その電流値と、電極間距離2mmおよび断面積240mmからキャリア芯材の電気抵抗を算出した。
【0112】
(トナースペントの評価)
図6に示した構造の現像装置(現像ローラの周速度v:259mm/sec,感光体ドラムの周速度v:131mm/sec,感光体ドラム-現像ローラ間距離:0.3mm)に作製した二成分現像剤を投入し、A4ヨコ用紙100k枚の印刷に要する時間に相当する時間(100k枚印刷相当時間)現像装置を駆動させた後、現像剤からキャリアを抜き取り、走査型電子顕微鏡(JSM-6510LA型 日本電子株式会社製)で観察すると共に、表面にトナーが融着したキャリアの個数割合を測定した。
「◎」:トナーの融着したキャリア個数割合が0.5%未満であった。
「○」:トナーの融着したキャリア個数割合が0.5%以上1.0%未満であった。
「△」:トナーの融着したキャリア個数割合が1.0%以上5.0%未満であった。
「×」:トナーの融着したキャリア個数割合が5.0%以上であった。
【0113】
(キャリア飛散の評価)
図6に示した構造の現像装置(現像ローラの周速度v:259mm/sec,感光体ドラムの周速度v:131mm/sec,感光体ドラム-現像ローラ間距離:0.3mm)に作製した二成分現像剤を投入し、A4ヨコ用紙100k枚の印刷に要する時間に相当する時間(100k枚印刷相当時間)現像装置を駆動させた後の画像部にて発見された黒点の数をα、背景部にて発見された黒点の数をβとし、下記基準でキャリア飛散を評価した。
「○」:0≦α+β≦6個
「×」:7個≦α+β
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
図1のXRD測定結果によれば、平均粒径5μmのCaSiOを初期添加した実施例7のキャリア芯材では、回折強度のピークが、CaSiOの回折強度のピーク位置と(Ca,Fe)SiOの回折強度のピーク位置との間に1つ存在している。これはキャリア芯材の焼成などの製造工程においてCaSiOの一部(表層部)にFeが固溶して(Ca,Fe)SiOが生成して回折強度のピーク位置が高角側に移動したものと考えられる。
また図2のXRD測定結果によれば、実施例7で使用したものよりも平均粒径が大きいCaSiO(平均粒径12μm)を初期添加した実施例13のキャリア芯材では、回折強度のピークが、CaSiOの回折強度のピーク位置と(Ca,Fe)SiOの回折強度のピーク位置との間に2つ存在している。これは実施例7のキャリア芯材と同様に、CaSiOの一部(表層部)にFeは固溶するものの、CaSiOの平均粒径が大きいため粒子内部にCaSiOが残存し、結果的にCaSiOと(Ca,Fe)SiOに由来する2つの回折強度ピークを有するものと考えられる。
【0117】
このようにXRD測定結果から、実施例7,13のキャリア芯材が、CaSiOや(Ca,Fe)SiOといったCaSi複合酸化物を含有していることがわかる。また、実施例7,13以外の実施例のキャリア芯材のXRD測定結果も同様であった。
【0118】
一方、図3に示すXRD測定結果によれば、原料成分としてCa成分原料、Si成分原料を添加しなかった比較例1のキャリア芯材では、入射角2θが26.60°以上27.30°以下の範囲に回折強度のピークが現れなかった。換言すれば、入射角2θが26.60°以上27.30°以下の範囲に回折強度のピークを有さないことでキャリア芯材がCaSi複合酸化物を含有していないことがわかる。
【0119】
図4に示すXRD測定結果によれば、原料成分としてのCaSiOの添加量が少ない比較例12のキャリア芯材では、入射角2θが26.60°以上27.30°以下の範囲に回折強度のピークは現れるもののピーク強度値は低く、ピーク位置は(Ca,Fe)SiOのピーク位置側にシフトすることがわかる。また図5に示すXRD測定結果によれば、原料成分としてのCaSiOの添加量が多い比較例14のキャリア芯材では、入射角2θが26.60°以上27.30°以下の範囲に回折強度のピークが現れ、そのピーク強度値は高くなることがわかる。
【0120】
表1及び表2から明らかなように、本発明の構成を具備する実施例1~17のキャリア芯材は、トナースペントの評価において、トナーの融着したキャリア個数割合は5.0%未満と実使用上問題はなく、またキャリア飛散の評価においても画像部および背景部で発見された黒点の数は6個以下と実使用上問題はないものであった。
【0121】
これに対して、CaSi複合酸化物を含有しない比較例1,2のキャリア芯材では、見掛密度が2.39g/cmと高くトナースペントが多く発生した。
【0122】
焼成温度が1100℃と低かった比較例3~6のキャリア芯材では細孔容積が大きくキャリア芯材表面の被覆樹脂量がばらついてキャリア飛散が発生した。
【0123】
高抵抗化処理を行った比較例7~10のキャリア芯材では見掛密度が高くトナースペントが発生した。加えて比較例10のキャリア芯材では磁化σ1kが低くキャリア飛散も発生した。
【0124】
CaSi複合酸化物の含有量が少ない比較例11,12のキャリア芯材では、見掛密度が高くトナースペントが多く発生した。一方、CaSi複合酸化物の含有量が多い比較例13,14のキャリア芯材では、磁化σ1kが低くキャリア飛散が発生した。
【0125】
キャリア芯材の組成がMnMgフェライトでCaSi複合酸化物を含有しない比較例15のキャリア芯材では、細孔容積が大きく、磁化σ1kが低くキャリア飛散が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のキャリア芯材によればトナースペントが抑制され、かつキャリア飛散も抑制される。
【符号の説明】
【0127】
3 現像ローラ
5 感光体ドラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6