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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023145990
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】折畳状蛋白製品
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/00 20060101AFI20231004BHJP
   A23J 3/26 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23J3/26 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052939
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】濱口 章央
(57)【要約】
【課題】 食肉に近い食感や歯ごたえを実現できる折畳状蛋白製品を提供すること。
【解決手段】 異なる断面形状を有する2つの冷却ダイを用いることで、第1冷却ダイにおいて帯状蛋白製品を生成した後、第2冷却ダイにおいて当該帯状蛋白製品を折畳状に変形させて折畳状蛋白製品を生成することができる。折畳状蛋白製品は、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びる。このような折畳状の外観を有する折畳状蛋白製品は、食感や歯ごたえが、より一層食肉に近くなる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びている、折畳状蛋白製品。
【請求項2】
隣接する山谷折畳部同士の間隔が、5mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の折畳状蛋白製品。
【請求項3】
前記長さ方向に、隣接する山谷折畳部同士の間隔を略均等に広げるように変形させることが可能である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の折畳状蛋白製品。
【請求項4】
隣接する山谷折畳部の繰り返しピッチが、2.0mm~25mmである
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の折畳状蛋白製品。
【請求項5】
前記略一定の高さ範囲は、3.0~30mmである
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の折畳状蛋白製品。
【請求項6】
幅が略一定である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の折畳状蛋白製品。
【請求項7】
蛋白質含有率が、乾物換算で45質量%以上であり、
水分含有率が、50~78質量%である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の折畳状蛋白製品。
【請求項8】
第1冷却ダイを用いて冷却しながら押出成形することで形成した帯状蛋白製品を、更に第2冷却ダイを用いて冷却しながら成形することで形成され、
前記第1冷却ダイの押出成形通路は、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、
前記第2冷却ダイの成形通路も、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、
前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さは、10mm以下であり、
前記第2冷却ダイの前記成形通路の前記高さは、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さの2~20倍である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の折畳状蛋白製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な食感を提供することができる折畳状蛋白製品に関している。
【背景技術】
【0002】
従来より、エクストルーダー(押出成形機)を用いて蛋白食品を製造することが知られている。
【0003】
例えば、エクストルーダー(押出成形機)を用いて製造される蛋白食品として、いわゆる「ミートアナログ」が知られている。これは、小麦グルテンや大豆蛋白等の植物性蛋白質をエクストルーダーで加熱加圧することによって組織化し、食肉と類似の食感や歯ごたえを実現したものである。
【0004】
一般に、食肉(動物の筋肉組織)は、筋繊維(筋肉細胞)が集束したマイクロストラクチャーを有しており、この構造及び個々の繊維の太さ、硬さ、弾力等が、食肉としての歯ごたえや食感を与えると考えられている。このため、食肉に類似した食感や歯ごたえを実現するべく、繊維束構造を有する蛋白製品を製造する幾つかの試みがなされて来た。
【0005】
特許文献1は、エクストルーダー(押出成形機)を使用して大豆蛋白を原料とした肉様食品を製造する方法を開示している。当該方法によれば、大豆蛋白原料に水が混合され、混練、剪断、加熱、加圧工程を経て大豆蛋白が組織化され、冷却ダイを通して平坦な帯状の大豆蛋白製品が押し出される。この方法によって得られる平坦な帯状(シート状または麺状を含む)の大豆蛋白製品は、肉の構造に類似した多孔質構造を有しており、食肉に類似した食感や歯ごたえを実現している。
【0006】
特許文献2も、押出成形機と冷却ダイとを用いて製品温度や製品厚さを指定した平坦な帯状の蛋白食品を製造する方法を開示している。
【0007】
特許文献3は、押出成形後にプレス成形を実施して、うなぎ蒲焼に近似する外観を有する蛋白食品(うなぎ蒲焼様魚肉練製品)を製造する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許公報EP2706867
【特許文献2】特開2020-018279
【特許文献3】特開2020-022367
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本件発明者は、異なる断面形状を有する2つの冷却ダイを用いることで、蛋白製品を平坦な帯状に押し出した後に折畳状に変形させることができることを知見した。更に、そのような折畳状の外観を有する蛋白製品は、食感や歯ごたえが、より一層食肉に近くなることを知見した。
【0010】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、食肉に近い食感や歯ごたえを実現できる折畳状蛋白製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びている、折畳状蛋白製品である。
【0012】
このような折畳状蛋白製品は、後述の製造方法、製造装置及び製造パーツを用いて製造され得る。また、このような折畳状蛋白製品は、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現することができる。
【0013】
好ましくは、隣接する山谷折畳部同士の間隔が、5mm以下である。このような複雑な形状は、プレス成形では実現不可能である一方、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。
【0014】
また、好ましくは、折畳状蛋白製品は、長さ方向に隣接する山谷折畳部同士の間隔を略均等に広げるように変形させることが可能である。このような性質は、隣接する(連続する)山谷折畳部がその連続方向に押出成形されていた場合に現れ、プレス成形では実現不可能である一方、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。
【0015】
また、好ましくは、隣接する山谷折畳部の繰り返しピッチが、2.0mm~25mmである。当該数値範囲は、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的な条件である。
【0016】
また、好ましくは、折畳状蛋白製品の前記略一定の高さ範囲は、3.0~30mmである。当該数値範囲も、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的な条件である。
【0017】
また、好ましくは、折畳状蛋白製品の幅が略一定である。当該条件も、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的な条件である。
【0018】
また、好ましくは、蛋白質含有率が、乾物換算で45質量%以上であり、水分含有率が、50~78質量%である。当該条件も、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的な条件である。なお、乾物換算の蛋白質含有率とは、水分を除いた折畳状蛋白製品の固形分の総質量に対する値であり、水分含有率とは、折畳状蛋白製品の総質量に対する値である。
【0019】
以上の折畳状蛋白製品は、後述の製造方法に基づくプロダクトバイプロセスとして限定することもできる。すなわち、当該折畳状蛋白製品は、第1冷却ダイを用いて冷却しながら押出成形することで形成した帯状蛋白製品を、更に第2冷却ダイを用いて冷却しながら成形することで形成され、前記第1冷却ダイの押出成形通路は、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、前記第2冷却ダイの成形通路も、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さは、10mm以下であり、前記第2冷却ダイの前記成形通路の前記高さは、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さの2~20倍である。
【0020】
また、本発明は、折畳状蛋白製品の製造方法であって、蛋白質原料と液体原料とを混練しながら加熱する工程と、混練され加熱された蛋白質原料及び液体原料を、第1冷却ダイにおいて冷却しながら帯状に押出成形して帯状蛋白製品を生成する工程と、前記第1冷却ダイによって押出成形された帯状蛋白製品を、第2冷却ダイにおいて更に冷却しながら折畳状に変形させて折畳状蛋白製品を生成する工程と、を備え、前記第1冷却ダイの押出成形通路は、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、前記第2冷却ダイの成形通路も、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さは、10mm以下であり、前記第2冷却ダイの前記成形通路の前記高さは、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さの2~20倍であることを特徴とする折畳状蛋白製品の製造方法である。
【0021】
本件発明者の知見によれば、異なる断面形状を有する2つの冷却ダイを用いることで、第1冷却ダイにおいて帯状蛋白製品を生成した後、第2冷却ダイにおいて当該帯状蛋白製品を折畳状に変形させて折畳状蛋白製品を生成することができ、そのような折畳状の外観を有する折畳状蛋白製品は、食感や歯ごたえが、より一層食肉に近くなる。
【0022】
また、本件発明者の知見によれば、第1冷却ダイの押出成形通路は、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、第2冷却ダイの成形通路も、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、第1冷却ダイの押出成形通路の高さは、10mm以下であり、第2冷却ダイの成形通路の高さは、第1冷却ダイの押出成形通路の高さの2~20倍であることが、折畳状蛋白製品を生成する上で必要な条件である。
【0023】
また、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路と前記第2冷却ダイの前記成形通路とは、連続していることが好ましい。
【0024】
これによれば、第1冷却ダイに対する押出成形の力(帯状蛋白製品が第1冷却ダイから押し出されてくる力)を、第2冷却ダイ内で帯状蛋白製品を変形させて折畳状とする力として効果的に活用することができる。
【0025】
また、前記第2冷却ダイの前記成形通路の前記幅は、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記幅に等しいことが好ましい。
【0026】
これによれば、第2冷却ダイ内での帯状蛋白製品の変形の方向を高さ方向(上下方向)に限定することができるため、効率良く折畳状蛋白製品を生成することができる。
【0027】
例えば、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の断面形状、及び/または、前記第2冷却ダイの前記成形通路の断面形状は、長方形であるか、少なくとも一部の角部が丸められた長方形であるか、または、長円形である。
【0028】
また、例えば、前記蛋白質原料と前記液体原料とを混練しながら加熱する前記工程は、エクストルーダーを用いて実施される。この場合、エクストルーダーを出た直後の蛋白質原料及び液体原料の温度は、130℃以上であり、第1冷却ダイを出た直後の帯状蛋白製品の温度は、100℃~130℃(好ましくは110℃~120℃)であり、第2冷却ダイを出た直後の折畳状蛋白製品の温度は、90℃~110℃(好ましくは95℃~100℃)であることが、折畳状蛋白製品を生成する上で効果的な条件である。
【0029】
また、例えば、前記蛋白質原料は、濃縮大豆蛋白であり、前記液体原料は、水であり、前記蛋白質原料と前記液体原料との混錬比は、質量ベースで、1:0.9~1:3.3である。
【0030】
これによれば、より一層食肉に近い食感や歯ごたえを有する折畳状大豆蛋白製品を製造することができる。
【0031】
また、本発明は、蛋白質原料と液体原料とを混練しながら加熱するエクストルーダーと、前記エクストルーダーによって混練され加熱された蛋白質原料及び液体原料を受け入れ、当該蛋白質原料及び当該液体原料を冷却しながら前記エクストルーダーと協働して当該蛋白質原料及び当該液体原料を帯状に押出成形して帯状蛋白製品を生成する第1冷却ダイと、前記第1冷却ダイによって押出成形された帯状蛋白製品を受け入れ、当該帯状蛋白製品を冷却しながら前記エクストルーダーと協働して当該帯状蛋白製品を折畳状に変形させて折畳状蛋白製品を生成する第2冷却ダイと、を備え、前記第1冷却ダイの押出成形通路は、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、前記第2冷却ダイの成形通路も、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さは、10mm以下であり、前記第2冷却ダイの前記成形通路の前記高さは、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さの2~20倍であることを特徴とする折畳状蛋白製品の製造装置である。
【0032】
また、本発明は、エクストルーダーに取り付けられる折畳状蛋白製品の製造パーツであって、エクストルーダーによって混練され加熱された蛋白質原料及び液体原料を受け入れ、当該蛋白質原料及び当該液体原料を冷却しながら前記エクストルーダーと協働して当該蛋白質原料及び当該液体原料を帯状に押出成形して帯状蛋白製品を生成する第1冷却ダイと、前記第1冷却ダイによって押出成形された帯状蛋白製品を受け入れ、当該帯状蛋白製品を冷却しながら前記エクストルーダーと協働して当該帯状蛋白製品を折畳状に変形させて折畳状蛋白製品を生成する第2冷却ダイと、を備え、前記第1冷却ダイの押出成形通路は、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、前記第2冷却ダイの成形通路も、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さは、10mm以下であり、前記第2冷却ダイの前記成形通路の前記高さは、前記第1冷却ダイの前記押出成形通路の前記高さの2~20倍であることを特徴とする折畳状蛋白製品の製造パーツである。
【発明の効果】
【0033】
あるいは、本発明によれば、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びる折畳状蛋白製品が提供され、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態に係る折畳状蛋白製品の製造方法のフロー図である。
図2】本発明の一実施形態に係る折畳状蛋白製品の製造装置の概略図である。
図3】実施例1の折畳状蛋白製品の写真である。
図4】実施例2の折畳状蛋白製品の写真である。
図5】比較例1の折畳状蛋白製品の写真である。
図6】実施例5の折畳状蛋白製品の写真である。
図7】実施例6の折畳状蛋白製品の写真である。
図8】実施例7の折畳状蛋白製品の写真である。
図9】実施例8の折畳状蛋白製品の写真である。
図10】実施例9の折畳状蛋白製品の写真である。
図11】実施例10の折畳状蛋白製品の写真である。
図12】折畳状蛋白製品の長さ方向の変形性能を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0036】
(製造方法及び製造装置の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る折畳状蛋白製品の製造方法のフロー図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る折畳状蛋白製品の製造装置の概略図である。
【0037】
図1及び図2に示すように、本実施形態の折畳状蛋白製品の製造方法は、エクストルーダー30を用いて蛋白質原料と液体原料とを混練しながら加熱する工程(STEP1)と、エクストルーダー30を用いて混練され加熱された蛋白質原料及び液体原料を、第1冷却ダイ10において冷却しながら帯状に押出成形して帯状蛋白製品Bを生成する工程(STEP2)と、第1冷却ダイ10によって押出成形された帯状蛋白製品Bを、第2冷却ダイ20において更に冷却しながら折畳状に変形させて折畳状蛋白製品Fを生成する工程(STEP3)と、を備えている。
【0038】
本発明の特徴として、第1冷却ダイ10の押出成形通路12は、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有しており、第2冷却ダイ20の成形通路22も、幅の長さよりも高さが低い断面形状を有している。そして、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の高さは、10mm以下であり、第2冷却ダイ20の成形通路22の高さは、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の高さの2~20倍となっている。
【0039】
本実施形態では、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の断面形状は、長円形であり、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の高さは、1.5mmとなっており、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の幅は、50mmとなっている。
【0040】
一方、本実施形態では、第2冷却ダイ20の成形通路22の断面形状も、長円形であり、第2冷却ダイ20の成形通路22の高さは、20mm(第1冷却ダイ10の押出成形通路12の高さの13.33倍)となっており、第2冷却ダイ20の成形通路22の幅は、50mmとなっている。
【0041】
また、本実施形態では、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の長さは、第2冷却ダイ20の成形通路22の長さと等しく、100mmとなっている。
【0042】
また、本実施形態では、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の内面は、ステンレス製であり、第2冷却ダイ20の成形通路22の内面は、ステンレス製となっている。
【0043】
また、本実施形態では、第1冷却ダイ10の押出成形通路12と第2冷却ダイ20の成形通路22とが長さ方向に連続するように、両成形通路12、22の両幅を規定する側壁同士が長さ方向に整列するように、第1冷却ダイ10と第2冷却ダイ20とが連続的に結合されている。高さ方向には、第1冷却ダイ10の押出成形通路12が、第2冷却ダイ20の成形通路22の中間位置に開口するように位置決めされている。
【0044】
図2に示すように、第1冷却ダイ10は、2箇所の冷媒入口14a、14bから2箇所の冷媒出口16a、16bまで冷媒(例えば20℃の冷却水)が通流されることで、押出成形通路12を冷却できるようになっている。
【0045】
同様に、第2冷却ダイ20も、2箇所の冷媒入口24a、24bから2箇所の冷媒出口26a、26bまで冷媒(例えば20℃の冷却水)が通流されることで、成形通路22を冷却できるようになっている。
【0046】
以上のような第1冷却ダイ10及び第2冷却ダイ20は、エクストルーダーに取り付けられる折畳状蛋白製品の製造パーツとして、本件発明者によって製造されたものである。第1冷却ダイ10の押出成形通路12の上流側(第2冷却ダイ20の成形通路22と接続されていない側)が、公知のエクストルーダーに取り付けられることで、折畳状蛋白製品の製造装置が構成される。
【0047】
本実施形態では、エクストルーダー30として、幸和工業製の「KEI-45」(スクリュー直径46mm、L/D=25)が採用された。当該エクストルーダー30のバレル32内に、蛋白質原料と液料とが投入されるようになっている。そして、バレル32は、150rpm程度の回転数で回転することで蛋白質原料と液料とを混練しながら、内部ヒータ(不図示)によって混錬物を加熱するようになっている。本実施形態では、バレル32は、蛋白質原料と液体原料とを混練しながら160℃程度の高温に加熱するようになっている。
【0048】
更に、本実施形態のエクストルーダー30は、混錬物(混練して加熱した蛋白質原料及び液体原料)を、16kg/hの押出速度で第1冷却ダイ10に向けて押し出すようになっている。
【0049】
図2の仮想線は、帯状蛋白製品Bが折畳状蛋白製品Fへと成形され始める状態を概念的に示している。当該仮想線によって示されるように、帯状蛋白製品Bの先端が重力によって成形通路22の底壁に当接すると、当該底壁から摩擦抵抗を受け、帯状蛋白製品Bの先端の前進が一時的に停止する。一方、第1冷却ダイ10からの帯状蛋白製品Bの押し出しは継続されているため、帯状蛋白製品Bは成形通路22内で上下方向(高さ方向)に折り畳まれ始め、折畳状蛋白製品Fとなっていく。このような折畳状への変形と平行して、第1冷却ダイ10からの帯状蛋白製品Bの押し出し(押し出し力)によって、間欠的にまたは連続的に、折畳状蛋白製品Fの全体が成形通路22の出口に向かって前進されていく。
【0050】
(折畳状蛋白製品の実施形態)
本実施形態では、蛋白質原料として、濃縮大豆蛋白(エー・ディー・エム・ジャパン株式会社製、アーコンS)が採用され、液体原料として、水が採用された。そして、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)と水(液体原料)との混錬比は、質量ベースで、3:7(1:0.9~1:3.3の範囲内の一例)とされた。採用された濃縮大豆蛋白の蛋白質含有率は、 72%である
【0051】
すなわち、本実施形態では、エクストルーダー30のバレル32内に、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)が5kg/hの供給速度で供給され、水(液体原料)が11kg/hの供給速度で供給された。
【0052】
そして、これらの濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)及び水(液体原料)が、バレル32内で混練されながら加熱され、16kg/hの押出速度で第1冷却ダイ10の押出成形通路12に向けて押し出された。エクストルーダー30の出口における混練物の温度は、141℃であった。
【0053】
当該混錬物は、エクストルーダー30からの押出力を受け続けることで、第1冷却ダイ10の押出成形通路12を通過して冷却されながら帯状に押出成形され、帯状蛋白製品Bとされた。第1冷却ダイ10の出口における帯状蛋白製品Bの温度は、114℃であった。
【0054】
当該帯状蛋白製品Bは、エクストルーダー30からの押出力を受け続ける一方、第2冷却ダイ20の成形通路22を通過する際に冷却されながら当該成形通路22の底壁や天井壁から間欠的に(略周期的に)摩擦抵抗を受けることで、折畳状に変形されて折畳状蛋白製品Fとされた。第2冷却ダイ20の出口における折畳状蛋白製品Fの温度は、98℃であった。
【0055】
以上の通り製造された折畳状蛋白製品Fが、実施例1であり、図3に示す。
【0056】
図3に示すように、折畳状蛋白製品Fは、略一定の高さ範囲内(20mmの高さ範囲内)で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びており、隣接する山谷折畳部同士の間隔は、極めて密となっている(5mm以下である。一方、折畳状蛋白製品Fは、長さ方向に、隣接する山谷折畳部同士の間隔を略均等に広げるように変形させることが可能である。
【0057】
また、図3に示すように、折畳状蛋白製品Fは、隣接する山谷折畳部の繰り返しピッチが、5mm程度となっている(2.0mm~25mmの一例)。また、折畳状蛋白製品Fは、幅(図3の紙面に垂直な方向)が略一定である。
【0058】
また、折畳状蛋白製品Fは、乾物換算の蛋白質含有率が、72質量%であり(乾物換算の残りの28質量%は、炭水化物や灰分、脂質などである)、水分含有率が、70質量%である。乾物換算の蛋白質含有率とは、例えば、濃縮大豆蛋白と水とから得られた組織状蛋白質ゲルを用い、ケルダール法により測定した蛋白質含有率と乾熱法により測定した水分含有率から、水分以外の成分中における蛋白質含有率を計算によって算出した。
【0059】
以上のような折畳状蛋白製品Fは、複数の山谷折畳部を有することにより、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現することができる。特に、隣接する山谷折畳部同士の間隔が非常に密になっているため、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。更に、長さ方向に隣接する山谷折畳部同士の間隔を略均等に広げるように変形させることが可能であるという性質も、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。
【0060】
また、隣接する山谷折畳部の繰り返しピッチが、5mm程度となっていることも、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。本件発明者によれば、隣接する山谷折畳部の繰り返しピッチは、2.0mm~25mmであることが好ましい。
【0061】
また、折畳状蛋白製品の略一定の高さ範囲が、30mmとなっていることも、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。本件発明者によれば、折畳状蛋白製品の略一定の高さ範囲は、3.0~30mmであることが好ましい。
【0062】
また、折畳状蛋白製品の幅が略一定であることも、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。
【0063】
また、乾物換算の蛋白質含有率が、72質量%であり、水分含量が、70質量%であることも、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。本件発明者によれば、蛋白質含有率が、乾物換算で45質量%以上であり、水分含量が、50~78質量%であることが好ましい。
【0064】
なお、「高さ方法」及び「高さ範囲」という用語は製造時の方向に基づく表現であって、製品流通時には横向きに倒す等、任意の向きでパッケージング及び搬送され得る。
【0065】
(好適な温度制御範囲)
エクストルーダー30内で水(液体原料)と混合された濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)は、加熱によって蛋白質が変性し、組織状蛋白となる。組織状蛋白は、高温では流動性の高いゾル状であるが、その後の冷却ダイ10、20での冷却によって固化し、ゲル状となる。
【0066】
組織状蛋白は、90℃~130℃の温度範囲では、ゲル状の性質とゾル状の性質とを併せ持った状態である。この温度範囲の組織状蛋白を、完全に固化する前に何らかの方法によって変形させれば、当該組織状蛋白に新たな形態を付与することができる。本発明は、本件発明者の当該知見に基づいている。
【0067】
より詳細には、本件発明者の知見によれば、エクストルーダー30を出た直後の蛋白質原料及び液体原料の温度は、130℃以上であることが好ましく、第1冷却ダイ10を出た直後の帯状蛋白製品Bの温度は、100℃~130℃であることが好ましく、第2冷却ダイ20を出た直後の折畳状蛋白製品Fの温度は、90℃~110℃であることが好ましい。
【0068】
(蛋白質含有率に関する実施例及び比較例)
本件発明者の知見によれば、蛋白質含有率が低すぎると、十分なゲル状の性質及び/またはゾル状の性質が現れず、折畳状に変形され難い。
【0069】
本件発明者の知見によれば、折畳状蛋白製品を得るために必要な蛋白質含有率は、乾物換算で45質量%以上であり、好ましくは48質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。折畳状蛋白製品における乾物換算の蛋白質含有率は高い方がよく、その上限に制限はなく、例えば100質量%であってもよい。このような範囲であれば、膨化が抑制され、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びる折畳状蛋白製品を得ることができる。
【0070】
蛋白質含有率を測定する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法であれば何れも適用することができる。例えば、ケルダール法、燃焼法、BCA法、Bradford法、Lowry法などが挙げられる。一方、組織状蛋白質の乾燥重量を測定する方法も、特に制限されるものではなく、公知の方法であれば何れも適用することができる。例えば、ビーカーやシャーレのような広口容器に組織状蛋白質を採取し、開口したまま乾熱乾燥機に投入し、200℃で4時間乾熱乾燥し、容器ごと質量を測定し、事前に測定しておいた容器の質量を差し引くことにより求めることができる(乾熱法)。そして、組織状蛋白質の「乾物換算の蛋白質含有率」は、前記方法により得られた蛋白質含有率と、前記方法により得られた水分含有率から計算により、求めることができる。
【0071】
前述の実施例1は、ケルダール法により求められる蛋白質含有率が、21.6質量%であって、乾熱法により求められる水分含有率が、70質量%であるため、乾物換算の蛋白質含有率が、72質量%である(21.6÷(1-0.7)=72)。
【0072】
図4に示す実施例2は、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)70質量%に対してコーンスターチ30%となるように、実施例1の濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)の30質量%分をコーンスターチに置換したものである。当該実施例2では、ケルダール法により求められる蛋白質含有率が、15質量%であって、乾熱法により求められる水分含有率が、70質量%であるため、乾物換算の蛋白質含有率が、50質量%である。
【0073】
図4に示すように、実施例2の折畳状蛋白製品F’も、略一定の高さ範囲内(20mmの高さ範囲内)で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びており、隣接する山谷折畳部同士の間隔は、極めて密となっている(5mm以下である。一方、折畳状蛋白製品F’も、長さ方向に、隣接する山谷折畳部同士の間隔を略均等に広げるように変形させることが可能である。
【0074】
また、図4に示すように、折畳状蛋白製品F’は、隣接する山谷折畳部の繰り返しピッチが、5mm程度となっている(2.0mm~25mmの一例)。また、折畳状蛋白製品F’も、幅(図4の紙面に垂直な方向)が略一定である。
【0075】
実施例2の折畳状蛋白製品F’も、複数の山谷折畳部を有することにより、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現することができる。特に、隣接する山谷折畳部同士の間隔が非常に密になっているため、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。更に、長さ方向に隣接する山谷折畳部同士の間隔を略均等に広げるように変形させることが可能であるという性質も、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。
【0076】
これに対して、図5に示す比較例1は、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)60%に対してコーンスターチ40%となるように、実施例1の濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)の40%分をコーンスターチに置換したものである。当該比較例1では、ケルダール法により求められる蛋白質含有率が、12.9%であって、乾熱法により求められる水分含有率が、70%であるため、乾物換算の蛋白質含有率が、43質量%である。
【0077】
図5に示すように、比較例1では、蛋白含量が低すぎたために、十分なゲル状の性質及び/またはゾル状の性質が現れず、折畳状に変形されなかった。
【0078】
以上の結果を、以下の表1に纏めて示す。
【0079】
【表1】
【0080】
本件発明者の知見によれば、水分含有率が低すぎると、ゲル状の状態で固すぎて、第2冷却ダイ20内で折畳状に変形され難い。一方、水分含有率が高すぎると、ゲル状の状態で柔らかすぎて、第1冷却ダイ10内で帯状に押出成形された組織状蛋白が依然として流動性を示し、第2冷却ダイ20内で折畳状に変形され難い。
【0081】
本件発明者の知見によれば、折畳状蛋白製品を得るために必要な水分含有率は、50~78質量%であり、好ましくは55~76質量%であり、より好ましくは60~75重量%である。このような範囲であれば、膨化が抑制され、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びる折畳状蛋白製品を得ることができる。
【0082】
水分含有率を測定する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法であれば何れも適用することができる。例えば、ビーカーやシャーレのような広口容器に組織状蛋白質を採取し、開口したまま乾熱乾燥機に投入し、200℃で4時間乾熱乾燥し、乾燥前質量から乾燥後質量を差し引いた質量を乾燥前質量で除することにより求めることができる。
【0083】
前述の実施例1では、エクストルーダー30のバレル32内に、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)が5kg/hの供給速度で供給され、水(液体原料)が11kg/hの供給速度で供給され、混錬物(混練して加熱した蛋白質原料及び液体原料)が、16kg/hの押出速度で第1冷却ダイ10に向けて押し出されていた(水分含有率は、70%であった)。
【0084】
実施例3では、エクストルーダー30のバレル32内に、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)が5kg/hの供給速度で供給され、水(液体原料)が14kg/hの供給速度で供給され、混錬物(混練して加熱した蛋白質原料及び液体原料)が、19kg/hの押出速度で第1冷却ダイ10に向けて押し出された(水分含有率は、75%であった)。
【0085】
実施例3においても、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びる折畳状蛋白製品を得ることができた。
【0086】
実施例4では、エクストルーダー30のバレル32内に、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)が5kg/hの供給速度で供給され、水(液体原料)が4.5kg/hの供給速度で供給され、混錬物(混練して加熱した蛋白質原料及び液体原料)が、9.5kg/hの押出速度で第1冷却ダイ10に向けて押し出された(水分含有率は、50%であった)。
【0087】
実施例4においても、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びる折畳状蛋白製品を得ることができた。
【0088】
比較例2では、エクストルーダー30のバレル32内に、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)が5kg/hの供給速度で供給され、水(液体原料)が18kg/hの供給速度で供給され、混錬物(混練して加熱した蛋白質原料及び液体原料)が、23kg/hの押出速度で第1冷却ダイ10に向けて押し出された(水分含有率は、80%であった)。
【0089】
比較例2においては、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びる折畳状蛋白製品を得ることができなかった。
【0090】
比較例3では、エクストルーダー30のバレル32内に、濃縮大豆蛋白(蛋白質原料)が5kg/hの供給速度で供給され、水(液体原料)が4kg/hの供給速度で供給され、混錬物(混練して加熱した蛋白質原料及び液体原料)が、9kg/hの押出速度で第1冷却ダイ10に向けて押し出された(水分含有率は、48%であった)。
【0091】
比較例3においては、略一定の高さ範囲内で上下方向に複数回往復することで複数の山谷折畳部を形成しながら長さ方向に延びる折畳状蛋白製品を得ることができなかった。
【0092】
以上の結果を、以下の表2に纏めて示す。
【0093】
【表2】
【0094】
以下の表3及び表4並びに図6乃至図11に示すように、各冷却ダイ10、20の断面長方形状の成形通路12、22のサイズを変更しても、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の高さが幅の長さよりも低く、第2冷却ダイ20の成形通路22の高さが幅の長さよりも低く、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の高さが10mm以下であって、第2冷却ダイ20の成形通路22の高さが第1冷却ダイ10の押出成形通路12の高さの2~20倍であれば、折畳状蛋白製品を製造することができる。なお、表3中の出口温度とは、当該出口を通過する混錬物、帯状蛋白製品または折畳状蛋白製品の温度であり、各部位に設置された接触式温度計によって測定された温度である。(実施例5~10及び比較例5~7では、各冷却ダイ10、20の断面長方形状の成形通路12、22のサイズを除いて、実施例1と同じ条件が採用された。)
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
(各冷却ダイ10、20の成形通路12、22の形状に関する実施例)
本件発明者によれば、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の断面形状は、角部が直角である長方形に限定されないで、少なくとも一部の角部が丸められた長方形であってもよいし、上下の角部のアールが連続する長円形であってもよい。同様に、第2冷却ダイ20の成形通路22の断面形状も、角部が直角である長方形に限定されないで、少なくとも一部の角部が丸められた長方形であってもよいし、上下の角部のアールが連続する長円形であってもよい。
【0098】
また、前述の実施形態では、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の出口領域は、第2冷却ダイ20の成形通路22の入口領域に対して、高さ方向に段差を形成しているが、当該段差にアールが設けられてもよい。あるいは、第1冷却ダイ10の押出成形通路12の出口領域の一部が、第2冷却ダイ20の成形通路22に向かって高さ方向にテーパ状に拡大した形状となっていてもよい。
【0099】
(折畳状蛋白製品の更なる変形特性)
前述のように、本発明による折畳状蛋白製品は、好ましくは、長さ方向に隣接する山谷折畳部同士の間隔を略均等に広げるように変形させることが可能である。このような性質は、隣接する(連続する)山谷折畳部がその連続方向に押出成形されていた場合に現れ、プレス成形では実現不可能である一方、より一層食肉に近い食感及び歯ごたえを実現する上で効果的である。
【0100】
例えば、図12(a)は、実施例7について、第2冷却ダイ20を出た直後の状態を示している。そして、この両端を両手で引っ張るように変形させると、図12(b)に示すように、長さ方向に隣接する山谷折畳部同士の間隔を略均等に広げるように変形させることが可能である。
【0101】
(蛋白質原料のバリエーション)
蛋白質原料は、加熱によるゾル形成性と冷却によるゲル形成性とを有してさえいれば、本発明に適用することが可能である。例えば、油糧種子由来や穀類由来等の植物性蛋白に限定されず、畜肉や魚肉等の動物由来の蛋白質原料を含み得る。
【0102】
具体的には、大豆、エンドウ豆、小麦、ひよこ豆、ソラ豆等の農作物や、牛、豚、鶏等の家禽類や、マグロ、サバ、イワシ等の魚介類等、から分離精製された植物性ないしは動物性の蛋白質原料が利用可能である。より詳細には、例えば、脱脂大豆粉、エンドウ豆粉等の農作物の粉末、牛肉、豚肉、鶏肉、マグロ肉、サバ肉、イワシ肉等の食肉の切り身やミンチ、あるいはそれらの乾燥粉末、あるいはそれらの混合物、が利用可能である。
【0103】
また、蛋白質原料には、蛋白質のゾル形成性及びゲル形成性を阻害しない範囲で、任意の他の原材料を混合することも可能である。例えば、小麦やトウモロコシなどの穀類、サツマイモやジャガイモなどの芋類、それらの農作物から分離精製した澱粉、澱粉に化学処理や熱処理や酵素処理等を施した加工澱粉、等が混合され得る。更に、食塩やショ糖、アミノ酸等の食用水溶性成分、グアーガムやタマリンドガム等の増粘多糖類、乳化剤、香辛料等も混合され得る。混合物(副原料)の量としては、その蛋白質含有率にもよるが、40質量%以下程度であることが好ましく、折畳状蛋白製品における乾物換算の蛋白質含有率が45質量%以上になるように調節すればよい。
【0104】
(液体原料のバリエーション)
液体原料は、混練物の水分値を調整する役割を担うものであり、好ましくは水である。混練物の水分値は、蛋白質のゾル形成性及びゲル形成性に影響する。液体原料は、蛋白質のゾル形成性及びゲル形成性を阻害しない範囲で、液体油脂や水溶性成分などを含み得る。液体原料に液体油脂や水溶性成分などが含まれる場合には、混練物(蛋白質原料及び液体原料)における水分含量を求める際、液体原料の質量からそれら成分の質量を差し引いた値を水分量とする。
【0105】
(エクストルーダー30についての補足)
エクストルーダー30は、加熱と混錬とを同時に行うことができる2軸エクストルーダーであることが好ましい。スクリューの構成は、剪断力を強くして蛋白原料を充分に組織化させるために、ニーディングディスクとリバーススクリューとの組み合わせであることが好ましい。
【0106】
バレル32の加熱温度は、混練物の温度が130℃~170℃になるように調整されることが好ましい。バレル32の出口圧力は、3~70kg/cm2に調整されることが好ましい。
【符号の説明】
【0107】
10 第1冷却ダイ
12 押出成形通路
14a 冷媒入口
14b 冷媒入口
16a 冷媒出口
16b 冷媒出口
20 第2冷却ダイ
22 成形通路
24a 冷媒入口
24b 冷媒入口
26a 冷媒出口
26b 冷媒出口
30 エクストルーダー
32 バレル
B 帯状蛋白製品
F 折畳状蛋白製品
F’ 折畳状蛋白製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12