(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146066
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231004BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L21/78 S
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053052
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若原 匡俊
【テーマコード(参考)】
5F004
5F063
【Fターム(参考)】
5F004AA09
5F004BA09
5F004BB03
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB28
5F004CA01
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA18
5F004DB01
5F004DB14
5F004DB20
5F004DB23
5F004EA01
5F004EB04
5F063AA02
5F063AA05
5F063BA20
5F063BA32
5F063BA43
5F063BA47
5F063CA02
5F063CA08
5F063DD37
5F063DD42
5F063DD48
5F063DD51
5F063DE03
5F063DE33
5F063DF04
5F063DF06
5F063DF19
5F063DF24
5F063EE21
5F063FF05
(57)【要約】
【課題】凹部の内側面の過度なエッチングを抑制することができる加工方法を提供すること。
【解決手段】加工方法は、表面に複数の分割予定ラインが設定されるとともに分割予定ライン上に複数の凹部が形成されることで分割予定ラインに対応した領域に肉厚部と肉薄部とを有した被加工物の加工方法であって、表面の背面の裏面に保護膜を積層するとともに分割予定ラインに対応する領域に沿って保護膜を分断する溝を形成することでプラズマダイシング用のマスクを形成するマスク形成ステップ1001と、被加工物の表面側を保持ユニットで保持してマスクが形成された裏面側を露出させる保持ステップ1002と、保持ステップ1002を実施した後、マスク27を介して裏面側から被加工物にプラズマエッチングを施すプラズマエッチングステップ1003と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に複数の分割予定ラインが設定されるとともに該分割予定ライン上に複数の凹部が形成されることで該分割予定ラインに対応した領域に肉厚部と肉薄部とを有した被加工物の加工方法であって、
該第1面の背面の第2面に保護膜を積層するとともに該分割予定ラインに対応する領域に沿って該保護膜を分断する溝を形成することでプラズマダイシング用のマスクを形成するマスク形成ステップと、
被加工物の該第1面側を保持ユニットで保持して該マスクが形成された該第2面側を露出させる保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該マスクを介して該第2面側から被加工物にプラズマエッチングを施すプラズマエッチングステップと、を備えた加工方法。
【請求項2】
該マスク形成ステップでは、該肉薄部における溝幅を該肉厚部における溝幅よりも狭く形成する、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
該肉薄部における溝幅と、該肉厚部における溝幅とは、該プラズマエッチングステップにおいて該肉薄部と該肉厚部とが略同時に分断される幅に設定される、請求項2に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1面に凹部が形成された被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハ毎のチップの取り数を増やすため、プラズマエッチングを利用したウェーハのダイシングが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、たとえばMEMSウェーハのように表面に凹凸が形成された被加工物がある。このような凹凸が形成された被加工物をプラズマダイシングする場合、凹部の側面をマスク材で覆うことが難しく、凹部の内側面が過度にエッチングされてしまうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、凹部の内側面の過度なエッチングを抑制することができる加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工方法は、第1面に複数の分割予定ラインが設定されるとともに該分割予定ライン上に複数の凹部が形成されることで該分割予定ラインに対応した領域に肉厚部と肉薄部とを有した被加工物の加工方法であって、該第1面の背面の第2面に保護膜を積層するとともに該分割予定ラインに対応する領域に沿って該保護膜を分断する溝を形成することでプラズマダイシング用のマスクを形成するマスク形成ステップと、被加工物の該第1面側を保持ユニットで保持して該マスクが形成された該第2面側を露出させる保持ステップと、該保持ステップを実施した後、該マスクを介して該第2面側から被加工物にプラズマエッチングを施すプラズマエッチングステップと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記加工方法において、該マスク形成ステップでは、該肉薄部における溝幅を該肉厚部における溝幅よりも狭く形成しても良い。
【0008】
前記加工方法において、該肉薄部における溝幅と、該肉厚部における溝幅とは、該プラズマエッチングステップにおいて該肉薄部と該肉厚部とが略同時に分断される幅に設定されても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、凹部の内側面の過度なエッチングを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3に示された加工方法のマスク形成ステップにおいて、被加工物を保護膜塗布装置で保護膜を形成する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示された加工方法のマスク形成ステップにおいて第2面である裏面に保護膜が形成された被加工物を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示された加工方法のマスク形成ステップにおいて、被加工物の裏面上の保護膜の一部を除去する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図3に示された加工方法のマスク形成ステップにおいて、裏面上にマスクが形成された後の被加工物の要部の平面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示されたマスクが形成される際に、裏面の第1分割予定ライン上に細溝が形成された後の被加工物の要部の平面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示されたマスクが形成される際に、裏面の第1分割予定ライン上に太溝が形成された後の被加工物の要部の平面図である。
【
図10】
図10は、
図3に示された加工方法の保持ステップ及びプラズマエッチングステップを実施するプラズマエッチング装置の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、
図3に示された加工方法のプラズマエッチングステップにおいて肉薄部のエッチング途中の被加工物の断面図である。
【
図12】
図12は、
図3に示された加工方法のプラズマエッチングステップにおいて肉厚部のエッチング途中の被加工物の断面図である。
【
図13】
図13は、
図3に示された加工方法のプラズマエッチングステップにおいて肉薄部を分断された被加工物の断面図である。
【
図14】
図14は、
図3に示された加工方法のプラズマエッチングステップにおいて肉厚部を分断された被加工物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1中のII-II線に沿う断面図である。
図3は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0013】
実施形態1に係る加工方法は、
図1に示す被加工物1の加工方法である。実施形態1では、被加工物1は、シリコン、サファイア、又はガリウムヒ素などを基板2とする円板状のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ウェーハである。しかしながら、本発明では、被加工物1は、MEMSウェーハに限定されない。
【0014】
被加工物1は、
図1に示すように、第1面である表面3に複数の分割予定ライン4(破線で示す)が設定されるとともに、分割予定ライン4上に複数の凹部7が形成されている。なお、実施形態1では、分割予定ライン4は、互いに平行な第1分割予定ライン5と、互いに平行でかつ第1分割予定ライン5と交差(実施形態1では、直交)する第2分割予定ライン6とを備える。なお、
図1には、分割予定ライン5,6を破線で示すが、実際の被加工物1には破線が形成されておれず、分割予定ライン5,6を示す破線は、仮想的な線である。また、実施形態1では、被加工物1は、第1分割予定ライン5上に複数の凹部7が形成されている。
【0015】
凹部7は、表面3から凹に形成され、第1分割予定ライン5に沿って間隔をあけて配置されている。実施形態1では、凹部7は、分割予定ライン5,6同士の交差点を除いて、第1分割予定ライン5上に形成され、第2分割予定ライン6上には形成されていない。なお、実施形態1では、被加工物1は、互いに交差する分割予定ライン5,6により仕切られた領域が切削加工に分割されるデバイスよりも小型であり、例えば、1mm×1mm程度の大きさであり、プラズマエッチング(プラズマダイシングともいう)により個々に分割されるのに好適なものである。なお、
図1及び
図2では、分割予定ライン5,6同士の間隔を誇張して大きく記載している。
【0016】
被加工物1は、
図2に示すように、表面3の第1分割予定ライン5上に複数の凹部7が形成されることによって、第1分割予定ライン5に対応した領域に肉厚部8と肉薄部9とを有することとなる。なお、第1分割予定ライン5に対応した領域とは、基板2の第1分割予定ライン5と厚み方向に重なる領域である。即ち、本発明でいう対応する領域とは、基板2の厚み方向に重なる領域を示している。肉薄部9は、凹部7の底に形成され、肉厚部8は、凹部7の周囲に形成される。肉厚部8の厚みは、肉薄部9の厚みよりも厚い。
【0017】
実施形態1に係る加工方法は、被加工物1を分割予定ライン5,6に沿って個々のチップ13に分割する方法である。加工方法は、
図3に示すように、マスク形成ステップ1001と、保持ステップ1002と、プラズマエッチングステップ1003とを備える。
【0018】
(マスク形成ステップ)
図4は、
図3に示された加工方法のマスク形成ステップにおいて、被加工物を保護膜塗布装置で保護膜を形成する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図5は、
図3に示された加工方法のマスク形成ステップにおいて第2面である裏面に保護膜が形成された被加工物を模式的に示す断面図である。
図6は、
図3に示された加工方法のマスク形成ステップにおいて、被加工物の裏面上の保護膜の一部を除去する状態を模式的に一部断面で示す側面図である。
図7は、
図3に示された加工方法のマスク形成ステップにおいて、裏面上にマスクが形成された後の被加工物の要部の平面図である。
図8は、
図7に示されたマスクが形成される際に、裏面の第1分割予定ライン上に細溝が形成された後の被加工物の要部の平面図である。
図9は、
図7に示されたマスクが形成される際に、裏面の第1分割予定ライン上に太溝が形成された後の被加工物の要部の平面図である。
【0019】
マスク形成ステップ1001は、第1面である表面3の背面の第2面である裏面10に保護膜26を積層するとともに分割予定ライン5,6に対応する領域に沿って保護膜26を分断する溝28,29を形成することでプラズマダイシング用のマスク27を形成するステップである。マスク形成ステップ1001では、被加工物1の表面3に被加工物1よりも大径な円板状のテープ11の中央部を貼着し、テープ11の外縁部に環状フレーム12を貼着する。なお、環状フレーム12は、内径が被加工物1よりも大径な円環状に形成されている。
【0020】
マスク形成ステップ1001では、
図4に示す保護膜被覆装置20が、スピンナテーブル21の保持面22に被加工物1の表面3側がテープ11を介して載置され、保持面22に被加工物1の表面3側をテープ11を介して吸引保持し、環状フレーム12をスピンナテーブル21の周囲に設けられたクランプ部23で挟持する。マスク形成ステップ1001では、保護膜被覆装置20が、
図4に示すように、スピンナテーブル21を軸心回りに回転させながら、被加工物1の上方の塗布ノズル24から被加工物1の裏面10側に液状の水溶性樹脂25を塗布する。
【0021】
水溶性樹脂25は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)又はポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone:PVP)等の水溶性の液状の樹脂等を含む。被加工物1の裏面10に塗布された水溶性樹脂25は、スピンナテーブル21の回転により生じる遠心力により被加工物1の外縁側に拡げられて、被加工物1の裏面10全体を被覆する。マスク形成ステップ1001では、保護膜被覆装置20が、被加工物1裏面10側に水溶性樹脂25を塗布した後、水溶性樹脂25を乾燥又は加熱硬化させて、被加工物1の裏面10全体を、
図5に示すように、保護膜26で被覆する。
【0022】
なお、実施形態1では、マスク形成ステップ1001では、水溶性樹脂25を被加工物1の裏面10に塗布して、保護膜26を形成したが、本発明では、保護部材として被加工物1の裏面10を非水溶性のレジスト膜で被覆しても良く、被加工物1の裏面10を非水溶性の樹脂で被覆しても良い。こうして、本発明では、保護膜26は、プラズマエッチングステップ1003のプラズマ化した第1ガス及び第2ガスに対して耐性を有していれば良い。
【0023】
マスク形成ステップ1001では、
図6に示すレーザー加工装置30が、被加工物1の表面3をテープ11を介してチャックテーブル31の保持面32に吸引保持する。マスク形成ステップ1001では、レーザー加工装置30が、図示しないIR(赤外線)カメラで被加工物1の表面3を撮像し、被加工物1とレーザー光線照射ユニット34との位置合わせを行なうアライメントを遂行する。
【0024】
マスク形成ステップ1001では、レーザー加工装置30が、
図6に示すように、チャックテーブル31とレーザー光線照射ユニット34とを分割予定ライン5,6に沿って相対的に移動させながら保護膜26に対して吸収性を有する波長のレーザー光線35を各分割予定ライン5,6に向かって照射して、分割予定ライン5,6上の保護膜26を除去して、分割予定ライン5,6に沿って保護膜26を分断する溝28,29を形成して、溝28,29の底から被加工物1の裏面10を露出させる。マスク形成ステップ1001では、レーザー加工装置30は、被加工物1の全ての分割予定ライン5,6にレーザー光線35を照射して、分割予定ライン5,6に沿って保護膜26を分断する溝28,29を形成して、プラズマダイシング用の
図7に示すマスク27を形成する。
【0025】
実施形態1において、マスク形成ステップ1001では、マスク27の肉薄部9における溝28(以下、細溝と記す)の溝幅281を肉厚部8における溝29(以下、太溝と記す)の溝幅291よりも狭く形成する。即ち、実施形態1において、マスク形成ステップ1001では、各分割予定ライン5,6に沿って形成される溝28,29のうち肉厚部8に対応する領域に細溝28の溝幅281よりも溝幅291が広い太溝29を形成し、肉薄部9に対応する領域に太溝29の溝幅291よりも溝幅281が狭い細溝28を形成する。
【0026】
また、実施形態1では、肉薄部9における細溝28の溝幅281と、肉厚部8における太溝29の溝幅291とは、プラズマエッチングステップ1003においてプラズマエッチングにより肉薄部9と肉厚部8とが略同時に分断される幅に設定されるのが望ましい。なお、略同時とは、肉薄部9と肉厚部8とが同時に分断、又はプラズマエッチングステップ1003の後に分割されたチップ13の大きさの差が所定の許容範囲内に収まる程度に肉薄部9と肉厚部8とが分断されるタイミングにずれが生じることをいう。
【0027】
このように、実施形態1では、凹部7以外に対応する領域である肉厚部8の太溝29の溝幅291と、凹部7に対応する領域である肉薄部9の細溝28の溝幅281とを異なる幅に設定する。また、実施形態1では、肉厚部8の太溝29の溝幅291の方が、肉薄部9の細溝28の溝幅281よりも広く設定する。なお、実施形態1において、各溝28,29の溝幅281,291をどのようにするかは、事前に同質材の被加工物1でマスク27の溝28,29の溝幅281,291を変えてプラズマエッチングを施し、その結果をもとに決定するのが望ましい。
【0028】
その結果、実施形態1では、プラズマエッチングによって肉厚部8と肉薄部9とが略同時に分断されるマスク27の溝28,29の溝幅281,291に設定する。
【0029】
なお、実施形態1において、マスク形成ステップ1001では、保護膜26に対して吸収性を有する波長のレーザー光線35を照射して、分割予定ライン5,6に沿って溝28,29を形成する際には、第1分割予定ライン5に沿って細溝28を形成する加工条件のレーザー光線35を照射して、
図8に示すように、第1分割予定ライン5の全長に亘って細溝28を形成する。その後、実施形態1において、第1分割予定ライン5の肉厚部8に対応する領域に太溝29を形成する加工条件のレーザー光線35を照射して、
図9に示すように、第1分割予定ライン5の肉厚部8に対応する領域に太溝29を形成し、第1分割予定ライン5の肉薄部9に対応する領域に細溝28を形成する。
【0030】
また、実施形態1において、マスク形成ステップ1001では、保護膜26に対して吸収性を有する波長のレーザー光線35を照射して、分割予定ライン5,6に沿って溝28,29を形成する際には、第2分割予定ライン6に沿って太溝29を形成する加工条件のレーザー光線35を照射して、第2分割予定ライン6の全長に亘って太溝29を形成する。
【0031】
また、本発明では、マスク形成ステップ1001において、第1分割予定ライン5に沿って細溝28を形成した後、肉厚部8に対応する領域ではレーザー光線35の照射がON、肉薄部9に対応する領域ではレーザー光線35の照射がOFFになるように制御しつつ細溝28が形成された第1分割予定ライン5に沿ってレーザー光線35を照射して肉厚部8に対応する領域に太溝29を形成し、肉薄部9に対応する領域に細溝28を形成しても良い。
【0032】
次に、保持ステップ1002及びプラズマエッチングステップ1003を実施するプラズマエッチング装置50を図面に基づいて説明する。
図10は、
図3に示された加工方法の保持ステップ及びプラズマエッチングステップを実施するプラズマエッチング装置の構成例を模式的に示す断面図である。
【0033】
プラズマエッチング装置50は、
図10に示すように、直方体状のチャンバー51と、保持ユニット52と、上部電極53と、制御ユニット55とを備える。
【0034】
チャンバー51は、内側にプラズマエッチングが実施される処理空間511が形成されている。チャンバー51は、一つの側壁512に、被加工物1を搬入及び搬出するための開口513と、開口513を開閉する開閉扉514が設けられている。開閉扉514は、エアシリンダ等で構成される開閉機構515によって昇降することで、開口513を開閉する。
【0035】
また、チャンバー51は、底壁516にチャンバー51の内部と外部とを連通させる排気口517が形成されている。排気口517は、真空ポンプ等の排気機構510が接続されている。
【0036】
保持ユニット52と上部電極53とは、チャンバー51の処理空間511に、互いに対向して配置されている。保持ユニット52の上面は、テープ11を介して被加工物1を保持する保持面524である。また、保持ユニット52は、導電性の材料により構成され、下部電極としても機能する。
【0037】
保持ユニット52は、円盤状の保持部521と、保持部521の下面の中央部から下方に突出する円柱状の支持部520とを含む。支持部520は、チャンバー51の底壁516に形成された開口522に挿入されている。開口522内において、底壁516と支持部520との間には環状の絶縁部材523が配置されており、チャンバー51と保持ユニット52とは電気的に絶縁されている。また、保持ユニット52は、チャンバー51の外部で高周波電源56と接続されている。
【0038】
保持ユニット52の保持部521には、図示しない高周波電源に接続された電極526が設けられている。保持ユニット52は、電極526に高周波電源から電力が印加されて、保持面524と被加工物1との間に誘電分極現象を発生させ、電荷の分極による静電吸着力によって被加工物1を保持面524上に吸着保持する。
【0039】
また、保持ユニット52の保持部521の内部及び支持部520の内部には、保持ユニット52を冷却するための冷却流体が流れる冷却流路527が形成されている。冷却流路527の両端は、冷媒循環機構528に接続されている。冷媒循環機構528を作動させると、水等の冷却流体が、冷却流路527内を循環して流れ、保持ユニット52が冷却される。
【0040】
上部電極53は、導電性の材料でなり、円盤状のガス噴出部531と、ガス噴出部531の上面の中央部から上方に突出する円柱状の支持部530とを含む。支持部530は、チャンバー51の上壁518に形成された開口532に挿入されている。開口532内において、上壁518と支持部530との間には環状の絶縁部材533が配置されており、チャンバー51と上部電極53とは電気的に絶縁されている。
【0041】
上部電極53は、チャンバー51の外部で高周波電源57と接続されている。また、支持部530の上端部には、昇降機構534の支持アームが取り付けられている。上部電極53は、昇降機構534により昇降する。
【0042】
ガス噴出部531の下面側には、複数の噴出口535が設けられている。噴出口535は、ガス噴出部531及び支持部530に形成された流路536を介して、第1ガス供給源58及び第2ガス供給源59に接続されている。第1ガス供給源58は、第1ガスを流路536を通して噴出口535からチャンバー51内に供給する。実施形態1では、第1ガス供給源58は、被加工物1の基板2がシリコンにより構成される場合、第1ガスとして、フッ素系ガスをチャンバー51内に供給する。第2ガス供給源59は、第2ガスを流路536を通して噴出口535からチャンバー51内に供給する。実施形態1では、第2ガス供給源59は、第2ガスとして、酸素系ガスをチャンバー51内に供給する。
【0043】
制御ユニット55は、プラズマエッチング装置50の各構成要素を制御して、プラズマエッチング装置50に被加工物1に対するプラズマエッチングを実施させるものである。なお、制御ユニット55は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット55の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、プラズマエッチング装置50を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してプラズマエッチング装置50の各構成要素に出力する。
【0044】
また、制御ユニット55は、各種の情報や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとが接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0045】
(保持ステップ)
保持ステップ1002は、被加工物1の表面3側を保持ユニット52で保持して、マスク27が形成された裏面10側を露出させるである。保持ステップ1002では、プラズマエッチング装置50が、昇降機構534により上部電極53を上昇させ、昇降機構によりフレーム挟持プレート542を上昇させた状態で、開閉機構515により開閉扉514を下降させて開口513を開放する。
【0046】
保持ステップ1002では、プラズマエッチング装置50は、図示しない搬送ユニットによりマスク形成ステップ1001でマスク27が裏面10に形成された被加工物1が処理空間511内に搬入され、テープ11を介して被加工物1が保持ユニット52の保持面524に載置される。保持ステップ1002では、プラズマエッチング装置50は、高周波電源から電力を電極526に印加して、保持面524にテープ11を介して被加工物1の表面3を吸着保持する。
【0047】
保持ステップ1002では、プラズマエッチング装置50は、開閉機構515により開閉扉514を上昇させて開口513を閉じ、排気機構510を作動させてチャンバー51内を減圧し、処理空間511を真空状態(低圧状態)とし、冷媒循環機構528を作動させて、水等の冷却流体を冷却流路527内で循環し、保持ユニット52の異常昇温を抑制する。保持ステップ1002では、プラズマエッチング装置50は、昇降機構534により上部電極53を下降させ、上部電極53の下面と、下部電極を構成する保持ユニット52に保持された被加工物1との間の距離をプラズマエッチングに適した所定の電極間距離に位置付ける。
【0048】
(プラズマエッチングステップ)
図11は、
図3に示された加工方法のプラズマエッチングステップにおいて肉薄部のエッチング途中の被加工物の断面図である。
図12は、
図3に示された加工方法のプラズマエッチングステップにおいて肉厚部のエッチング途中の被加工物の断面図である。
図13は、
図3に示された加工方法のプラズマエッチングステップにおいて肉薄部を分断された被加工物の断面図である。
図14は、
図3に示された加工方法のプラズマエッチングステップにおいて肉厚部を分断された被加工物の断面図である。
【0049】
プラズマエッチングステップ1003では、プラズマエッチング装置50は、第1ガス供給源58から第1ガスを所定の流量で供給してガス噴出部531の複数の噴出口535から保持ユニット52上に保持された被加工物1に向けて噴出する。保持ステップ1002では、プラズマエッチング装置50は、第1ガス供給源58から第1ガスを供給した状態で、高周波電源57から上部電極53にプラズマを作り維持する高周波電力を印加し、高周波電源56から下部電極である保持ユニット52にイオンを引き込むための高周波電力を印加する。
【0050】
プラズマエッチングステップ1003では、プラズマエッチング装置50は、保持ユニット52と上部電極53との間の空間の第1ガスがプラズマ化され、このプラズマ化された第1ガスが被加工物1側に引き込まれて、被加工物1のマスク27の溝28,29から露出した分割予定ライン5,6の裏面10をエッチング(所謂プラズマエッチング)して、
図11及び
図12に示すように、分割予定ライン5,6の裏面10にエッチング溝14を形成し、エッチング溝14を被加工物1の表面3に向かって進行させる。
【0051】
なお、実施形態1では、基板2がシリコンで構成される場合、第1ガスとして、SF6、C4F8又はCF4等のフッ素系ガスを用いるが、第1ガスは、これらに限定されない。また、単一のガスでエッチングする他、例えばSF6とC4F8とを交互に用いてもよい。
【0052】
プラズマエッチングステップ1003では、プラズマエッチング装置50は、被加工物1の基板2の厚さに応じて、被加工物1の基板2をプラズマエッチングする所定時間が予め設定されている。プラズマエッチングステップ1003では、プラズマエッチング装置50は、所定時間、第1ガスを供給しながら保持ユニット52及び上部電極53に高周波電力を印加して、
図13及び
図14に示すように、マスク27から露出した分割予定ライン5,6上の基板2を完全に除去して、被加工物1を溝28,29に沿って分断して、個々のチップ13に分割する。なお、実施形態1では、溝28,29の溝幅281,291が前述したように形成されているので、被加工物1は、肉厚部8と肉薄部9とが略同時に分断される。
【0053】
以上説明した実施形態1に係る加工方法は、被加工物1を凹部の形成されていない第2面側からプラズマダイシングを施す。その結果、実施形態1に係る加工方法は、被加工物1の凹部7の内側面の過度なエッチングを抑制することができるという効果を奏する。
【0054】
また、凹部7が形成された肉薄部9と肉厚部8とではエッチングで分断に要する時間が異なる。肉薄部9が分断された後に肉厚部8が分断されるまでの間に肉薄部9の特に下面側(表面3側)で更にエッチングが進行し、肉薄部9に形成されたエッチング溝14の内面のエッチングが進行してしまい、形成されるチップ13の側面の表面3側が欠けた異形状となってしまう。
【0055】
そこで、実施形態1に係る加工方法は、プラズマダイシング用のマスク27の溝28,29の溝幅281,291を肉薄部9と肉厚部8とで異なる幅にし、肉薄部9の細溝28の溝幅281を肉厚部8の太溝29の溝幅291よりも狭くしている。このため、実施形態1に係る加工方法は、プラズマした第1ガスが広い溝幅291の太溝29の方が狭い溝幅281の細溝28よりも多く進入するため、肉薄部9の細溝28の溝幅281を肉厚部8の太溝29の溝幅291よりも狭く設定し肉薄部9と肉厚部8との略同時に分断するようにしている。その結果、実施形態1に係る加工方法は、凹部7が形成されて被加工物1に肉厚部8と肉薄部9とが形成されていても、チップ13が異形状となることを抑制することができるという効果を奏する。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、保持ステップ1002及びプラズマエッチングステップ1003において、下部電力である保持ユニット52及び上部電極53に高周波電力を印加して処理空間511内で第1ガスをプラズマ化するものではなく、プラズマ化にした第1ガスをチャンバー51内の処理空間511に導入するリモートプラズマ方式のプラズマエッチング装置を用いても良い。また、本発明では、被加工物1は、第1分割予定ライン5上に加え、第2分割予定ライン6上に凹部7を備えても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 被加工物
3 表面(第1面)
4 分割予定ライン
5 第1分割予定ライン
6 第2分割予定ライン
7 凹部
8 肉厚部
9 肉薄部
10 裏面(第2面)
26 保護膜
27 マスク
28 細溝(溝)
29 太溝(溝)
281 溝幅
291 溝幅
1001 マスク形成ステップ
1002 保持ステップ
1003 プラズマエッチングステップ