(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146122
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】回収装置、回収方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
B01D53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053144
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】小宅 教文
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 和人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】堀部 伸光
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 翔
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 義之
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD04
4D012CE01
4D012CF02
4D012CF05
4D012CF08
4D012CF10
4D012CG01
4D012CH10
4D012CK01
(57)【要約】
【課題】 回収装置において、回収ガスの品質を安定させる技術を提供する。
【解決手段】 回収装置は、特定物質を吸着する吸着材を収容する吸着器と、混合ガスの温度を含む、吸着器に供給される混合ガスの性状の推定情報または計測情報である混合ガス情報と、吸着材の環境温度を含む、吸着材の吸着性能に影響を与える環境条件の推定情報または計測情報である吸着条件と、を取得する取得部と、混合ガス情報と、吸着条件とを用いて、吸着材の吸着量推定値と吸着材の飽和吸着量とを推定する推定部と、推定された吸着量推定値と飽和吸着量とに応じて、混合ガスを供給する吸着器を切り替える切替部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガスに含まれる特定物質を回収する回収装置であって、
前記特定物質を吸着する吸着材を収容する吸着器と、
前記混合ガスの温度を含む、前記吸着器に供給される前記混合ガスの性状の推定情報または計測情報である混合ガス情報と、前記吸着材の環境温度を含む、前記吸着材の吸着性能に影響を与える環境条件の推定情報または計測情報である吸着条件と、を取得する取得部と、
前記混合ガス情報と、前記吸着条件とを用いて、前記吸着材の吸着量推定値と前記吸着材の飽和吸着量とを推定する推定部と、
推定された前記吸着量推定値と前記飽和吸着量とに応じて、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替える切替部と、を備える回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回収装置であって、
前記推定部は、
前記混合ガス情報を用いて、前記吸着器に導入される前記特定物質の導入量推定値を推定し、
推定された前記導入量推定値を用いて、特定時点における前記吸着材が吸着している前記特定物質の量を表す前記吸着量推定値を推定し、
前記混合ガス情報を用いて推定された前記飽和吸着量に制御定数を乗じた切替閾値を算出し、
前記切替部は、前記吸着量推定値と前記切替閾値とを比較して、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替える、
回収装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回収装置であって、
前記取得部は、前記吸着器から排出される排出ガスの流量と、前記排出ガス中の前記特定物質の濃度とを含む、前記排出ガスの性状の推定情報または計測情報である排出ガス情報を取得し、
前記推定部は、
前記混合ガス情報を用いて、前記吸着器に導入される前記特定物質の導入量推定値を推定し、
前記排出ガス情報を用いて、前記吸着器から排出される前記特定物質の排出量推定値を推定し、
前記導入量推定値と前記排出量推定値との差分を用いて、特定時点における前記吸着材が吸着している前記特定物質の量を表す前記吸着量推定値を推定し、
前記混合ガス情報を用いて推定された前記飽和吸着量に制御定数を乗じた切替閾値を算出し、
前記切替部は、前記吸着量推定値と前記切替閾値とを比較して、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替える、
回収装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の回収装置であって、
前記取得部は、前記特定物質を吸着した前記吸着材から脱離する前記特定物質の脱離量の推定情報または計測情報である脱離量情報を取得し、
前記推定部は、
前記脱離量情報を用いて、脱離量推定値を推定し、
前記導入量推定値に対する前記脱離量推定値の割合を用いて、前記制御定数を算出する、
回収装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回収装置であって、
前記推定部は、
前記混合ガス情報を用いて、前記吸着器への前記混合ガスの供給を開始してから前記特定時点までの前記混合ガスの性状の平均値を算出し、
前記吸着条件を用いて、前記吸着器への前記混合ガスの供給を開始してから前記特定時点までの前記環境条件の平均値を算出し、
前記混合ガスの性状の平均値と前記環境条件の平均値とを用いて、前記吸着材の飽和吸着量を推定する、
回収装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の回収装置であって、
前記取得部は、前記混合ガスに含まれる前記特定物質以外の物質の濃度を含む、前記混合ガス情報を取得し、
前記推定部は、前記混合ガス情報に含まれる、前記混合ガスに含まれる前記特定物質以外のガスの濃度を用いて、前記吸着材の飽和吸着量を推定する、
回収装置。
【請求項7】
混合ガスに含まれる特定物質を回収装置によって回収する回収方法であって、
前記特定物質を吸着材に吸着させる工程と、
前記混合ガスの温度を含む、吸着器に供給される前記混合ガスの性状の推定情報または計測情報である混合ガス情報と、前記吸着材の環境温度を含む、前記吸着材の吸着性能に影響を与える環境条件の推定情報または計測情報である吸着条件と、を取得する工程と、
前記混合ガス情報と、前記吸着条件とを用いて、前記吸着材の吸着量推定値と前記吸着材の飽和吸着量とを推定する工程と、
推定された前記吸着量推定値と前記飽和吸着量とに応じて、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替える工程と、を備える、
回収方法。
【請求項8】
混合ガスに含まれる特定物質の回収をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記特定物質を吸着材に吸着させる機能と、
前記混合ガスの温度を含む、前記吸着材を収容する吸着器に供給される前記混合ガスの性状の推定情報または計測情報である混合ガス情報と、前記吸着材の環境温度を含む、前記吸着材の吸着性能に影響を与える環境条件の推定情報または計測情報である吸着条件と、を取得する機能と、
前記混合ガス情報と、前記吸着条件とを用いて、前記吸着材の吸着量推定値と前記吸着材の飽和吸着量とを推定する機能と、
推定された前記吸着量推定値と前記飽和吸着量とに応じて、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替える機能と、をコンピュータに実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収装置、回収方法、および、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、混合ガスに含まれる特定物質を回収する回収装置が知られている(例えば、特許文献1,2)。回収装置は、例えば、吸着工程において吸着材を用いて混合ガス中の特定物質を吸着し、回収工程において吸着材に吸着された特定物質を吸着材から脱離させることで、特定物質を回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6791177号明細書
【特許文献2】特開2020-78860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回収装置によって回収される特定物質を工業製品の製造などに利用する場合、一定の品質の製品を安定して製造するためには、吸着材から脱離させた特定物質を含む回収ガスの特定物質の濃度が安定していることが必要である。しかしながら、混合ガスの性状や吸着材が置かれている環境などによって吸着材が吸着可能な特定物質の量は変化するため、吸着材から脱離する特定物質の量が回収工程ごとに変化するおそれがある。この場合、回収ガス中の特定物質の濃度も変化するため、回収ガスの品質を安定させることは困難であった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、回収装置において、回収ガスの品質を安定させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、混合ガスに含まれる特定物質を回収する回収装置が提供される。この回収装置は、前記特定物質を吸着する吸着材を収容する吸着器と、前記混合ガスの温度を含む、前記吸着器に供給される前記混合ガスの性状の推定情報または計測情報である混合ガス情報と、前記吸着材の環境温度を含む、前記吸着材の吸着性能に影響を与える環境条件の推定情報または計測情報である吸着条件と、を取得する取得部と、前記混合ガス情報と、前記吸着条件とを用いて、前記吸着材の吸着量推定値と前記吸着材の飽和吸着量とを推定する推定部と、推定された前記吸着量推定値と前記飽和吸着量とに応じて、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替える切替部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、切替部は、混合ガスの温度を含む混合ガス情報と吸着材の環境温度を含む吸着条件とを用いて推定される、吸着材の吸着量推定値と飽和吸着量とに応じて、混合ガスを供給する吸着器を切り替える。吸着材の飽和吸着量は、吸着器に供給される混合ガスの性状と、吸着材の吸着性能に影響を与える環境条件とによって左右されるため、このように推定される飽和吸着量は、例えば、設定値として固定されている飽和吸着量よりも実際の状況にあった値となる。これにより、推定部によって推定された吸着材の吸着量推定値と飽和吸着量とに応じて混合ガスの供給先を切り替えることで、特定物質の系外
への漏出を抑制しながら特定物質の吸着に利用される吸着材の割合を安定させることができる。したがって、吸着材に吸着されている特定物質を回収するとき、回収ガス中の特定物質の濃度を一定にすることができるため、回収ガスの品質を安定させることができる。
【0009】
(2)上記形態の回収装置において、前記推定部は、前記混合ガス情報を用いて、前記吸着器に導入される前記特定物質の導入量推定値を推定し、推定された前記導入量推定値を用いて、特定時点における前記吸着材が吸着している前記特定物質の量を表す前記吸着量推定値を推定し、前記混合ガス情報を用いて推定された前記飽和吸着量に制御定数を乗じた切替閾値を算出し、前記切替部は、前記吸着量推定値と前記切替閾値とを比較して、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替えてもよい。この構成によれば、切替部は、吸着器に導入される特定物質の導入量推定値に基づいて特定時点における吸着材が吸着している特定物質の量を表す吸着量推定値を推定し、推定した吸着量推定値と、飽和吸着量と制御定数とを乗じて算出される切替閾値と、を比較する。切替部は、その比較結果に応じて、混合ガスを供給する吸着器を切り替える。すなわち、混合ガス情報のみを用いて推定される吸着量推定値と切替閾値との比較によって、混合ガスの供給先を切り替える。これにより、簡便に回収ガスの品質を安定させることができる。
【0010】
(3)上記形態の回収装置において、前記取得部は、前記吸着器から排出される排出ガスの流量と、前記排出ガス中の前記特定物質の濃度とを含む、前記排出ガスの性状の推定情報または計測情報である排出ガス情報を取得し、前記推定部は、前記混合ガス情報を用いて、前記吸着器に導入される前記特定物質の導入量推定値を推定し、前記排出ガス情報を用いて、前記吸着器から排出される前記特定物質の排出量推定値を推定し、前記導入量推定値と前記排出量推定値との差分を用いて、特定時点における前記吸着材が吸着している前記特定物質の量を表す前記吸着量推定値を推定し、前記混合ガス情報を用いて推定された前記飽和吸着量に制御定数を乗じた切替閾値を算出し、前記切替部は、前記吸着量推定値と前記切替閾値とを比較して、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替えてもよい。この構成によれば、推定部は、吸着器に導入される特定物質の導入量推定値と吸着器から排出される特定物質の排出量推定値との差分を用いて、吸着量推定値を推定する。切替部は、吸着量推定値と切替閾値とを比較することで、混合ガスを供給する吸着器を切り替える。これにより、吸着量推定値を吸着器に導入される特定物質の導入量推定値のみから推定する場合に比べ、吸着量推定値の推定精度を向上させることができる。したがって、切替部による混合ガスの供給先の切り替えを正確に行えることができるため、回収ガスの品質をさらに安定させることができる。
【0011】
(4)上記形態の回収装置において、前記取得部は、前記特定物質を吸着した前記吸着材から脱離する前記特定物質の脱離量の推定情報または計測情報である脱離量情報を取得し、前記推定部は、前記脱離量情報を用いて、脱離量推定値を推定し、前記導入量推定値に対する前記脱離量推定値の割合を用いて、前記制御定数を算出してもよい。この構成によれば、推定部は、導入量推定値に対する脱離量推定値の割合、すなわち、特定物質の回収率を用いて、制御定数を算出する。これにより、回収ガスの品質の1つである特定物質の回収率を安定させることができるため、回収ガスの品質をさらに安定させることができる。
【0012】
(5)上記形態の回収装置において、前記推定部は、前記混合ガス情報を用いて、前記吸着器への前記混合ガスの供給を開始してから前記特定時点までの前記混合ガスの性状の平均値を算出し、前記吸着条件を用いて、前記吸着器への前記混合ガスの供給を開始してから前記特定時点までの前記環境条件の平均値を算出し、前記混合ガスの性状の平均値と前記環境条件の平均値とを用いて、前記吸着材の飽和吸着量を推定してもよい。この構成によれば、吸着材の飽和吸着量は、吸着器への混合ガスの供給を開始してから特定時点までの混合ガスの性状の平均値や環境条件の平均値を用いて推定される。これにより、吸着
器への混合ガスの供給を開始してから、混合ガスの性状や環境条件に急激な変化がある場合でも、吸着材の飽和吸着量を推定することができるため、回収ガスの品質を安定させることができる。
【0013】
(6)上記形態の回収装置において、前記取得部は、前記混合ガスに含まれる前記特定物質以外の物質の濃度を含む、前記混合ガス情報を取得し、前記推定部は、前記混合ガス情報に含まれる、前記混合ガスに含まれる前記特定物質以外のガスの濃度を用いて、前記吸着材の飽和吸着量を推定してもよい。この構成によれば、取得部は、混合ガスに含まれる特定物質以外の物質の濃度を含む、混合ガス情報を取得する。吸着材には、特定物質以外の物質も吸着されるため、吸着材の飽和吸着量は低下する。特定物質以外の物質の濃度を用いて飽和吸着量を推定することで、飽和吸着量の推定精度を向上させることができる。
【0014】
(7)本発明の別の形態によれば、混合ガスに含まれる特定物質を回収装置によって回収する回収方法が提供される。この回収方法は、前記特定物質を吸着材に吸着させる工程と、前記混合ガスの温度を含む、吸着器に供給される前記混合ガスの性状の推定情報または計測情報である混合ガス情報と、前記吸着材の環境温度を含む、前記吸着材の吸着性能に影響を与える環境条件の推定情報または計測情報である吸着条件と、を取得する工程と、前記混合ガス情報と、前記吸着条件とを用いて、前記吸着材の吸着量推定値と前記吸着材の飽和吸着量とを推定する工程と、推定された前記吸着量推定値と前記飽和吸着量とに応じて、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替える工程と、を備える。この構成によれば、回収装置は、混合ガスの温度を含む混合ガス情報と吸着材の環境温度を含む吸着条件とを用いて推定される吸着材の飽和吸着量に応じて、混合ガスを供給する吸着器を切り替える。これにより、特定物質の吸着に利用される吸着材の割合を安定させることができるため、回収ガスの品質を安定させることができる。
【0015】
(8)本発明のさらに別の形態によれば、混合ガスに含まれる特定物質の回収をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムが提供される。このコンピュータプログラムは、前記特定物質を吸着材に吸着させる機能と、前記混合ガスの温度を含む、前記吸着材を収容する吸着器に供給される前記混合ガスの性状の推定情報または計測情報である混合ガス情報と、前記吸着材の環境温度を含む、前記吸着材の吸着性能に影響を与える環境条件の推定情報または計測情報である吸着条件と、を取得する機能と、前記混合ガス情報と、前記吸着条件とを用いて、前記吸着材の吸着量推定値と前記吸着材の飽和吸着量とを推定する機能と、推定された前記吸着量推定値と前記飽和吸着量とに応じて、前記混合ガスを供給する吸着器を切り替える機能と、をコンピュータに実行させる。この構成によれば、コンピュータは、混合ガスの温度を含む混合ガス情報と吸着材の環境温度を含む吸着条件とを用いて推定される吸着材の飽和吸着量に応じて、混合ガスを供給する吸着器を切り替える。これにより、特定物質の吸着に利用される吸着材の割合を安定させることができるため、回収ガスの品質を安定させることができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、回収装置を含むシステム、これら装置およびシステムを用いた回収方法を含む制御方法、コンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の回収装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】回収システムによる回収方法を説明するフローチャートである。
【
図4】回収方法におけるCO
2吸着量の時間変化を説明する図である。
【
図5】混合ガスの性状の時間変化を示した図である。
【
図6】吸着材の利用率と回収ガスの品質との関係を説明する図である。
【
図7】吸着工程の平均CO
2濃度と吸着工程期間の変化を説明する図である。
【
図8】吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第1の図である。
【
図9】吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第2の図である。
【
図10】吸着材の環境温度の変化による影響を説明する図である。
【
図11】吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第3の図である。
【
図12】吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第4の図である。
【
図13】吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第5の図である。
【
図14】第2実施形態の回収装置の概略構成を示す模式図である。
【
図15】吸着材の不純物濃度の変化による影響を説明する図である。
【
図16】第3実施形態の回収装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の回収装置の概略構成を示す模式図である。第1実施形態の回収装置1は、
図1に示す複数の吸着器を備える回収システム5に適用される。回収システム5は、燃焼設備6から排出される、酸素(O
2)、窒素(N
2)、水分(H
2O)などが含まれている混合ガス中の二酸化炭素(CO
2)を回収し、炭化水素合成装置7に供給する。本実施形態の回収システム5は、3つの吸着器10と、混合ガス供給流路20と、排出ガス流路30と、水素ガス供給流路40と、回収ガス流路50と、熱媒体流路60と、制御部70と、を備えている。
【0019】
吸着器10は、混合ガスからCO
2を分離して回収するための装置である。吸着器10には、内部に吸着材11が収容されている。吸着材11は、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲルであって、CO
2吸蔵(吸着)性能を有する。吸着器10に、CO
2を含む混合ガスが供給されると、CO
2は、吸着材11に吸蔵され、混合ガスの残りの成分は、吸着器10の外部に排出される。吸着器10には、混合ガス供給流路20と、水素ガス供給流路40と、回収ガス流路50と、熱媒体流路60と、が接続されている。なお、本実施形態では、3つの吸着器10のそれぞれを区別するため、便宜的に、吸着材11A,11B,11Cのそれぞれを収容する吸着器10A,10B,10Cとする(
図1参照)。また、
図1には、後述する回収方法における吸着工程中の吸着器10Aと、回収工程中の吸着器10Bと、冷却工程中の吸着器10Cとのそれぞれに接続される混合ガス供給流路20と、排出ガス流路30と、水素ガス供給流路40と、回収ガス流路50について、ガスが流れている流路を実線で示し、ガスが流れていない流路を点線で示している。
【0020】
混合ガス供給流路20は、燃焼設備6から排出される混合ガス(
図1に示す矢印Gex)を3つの吸着器10のそれぞれに供給するためのガス流路であり、複数のガス配管から構成されている。混合ガス供給流路20には、複数の混合ガス供給バルブ21,22が設けられている。燃焼設備6は、例えば、工場の燃焼炉などであり、混合ガスには、上述したように、CO
2の他に、O
2、N
2、H
2Oなどが含まれている。燃焼設備6から排出された混合ガスは、混合ガス供給バルブ21を経由して、吸着器10Aまたは混合ガス供給バルブ22に向かう。混合ガス供給バルブ22に向かう混合ガスは、混合ガス供給バルブ22を経由して、吸着器10Bまたは吸着器10Cに向かう。混合ガス供給バルブ21,22のそれぞれは、制御部70によって開閉が制御される。
【0021】
排出ガス流路30は、混合ガスからCO
2を取り除いた残りのガス(排出ガス、
図1に示す矢印Gm)を3つの吸着器10のそれぞれから排出するためのガス流路であり、複数のガス配管から構成されている。排出ガス流路30には、複数の排出ガスバルブ31,32が設けられている。吸着器10Aと吸着器10Bから排出された排出ガスは、排出ガス
バルブ31,32を経由して、回収システム5から排出される。吸着器10Cから排出された排出ガスは、排出ガスバルブ32を経由して、回収システム5から排出される。排出ガスバルブ31,32のそれぞれは、制御部70によって開閉が制御される。
【0022】
水素ガス供給流路40は、図示しない水素供給源の水素(H
2、
図1に示す矢印Gh)を3つの吸着器10のそれぞれに供給するためのガス流路であり、複数のガス配管から構成されている。水素ガス供給流路40には、複数の水素供給バルブ41,42が設けられている。水素供給源から供給されるH
2は、水素供給バルブ41を経由して、吸着器10Cまたは水素供給バルブ42に向かう。水素供給バルブ42に向かうH
2は、水素供給バルブ42を経由して、吸着器10Bまたは吸着器10Aに向かう。水素供給バルブ41,42のそれぞれは、制御部70によって開閉が制御される。
【0023】
回収ガス流路50は、3つの吸着器10のそれぞれから取り出されたCO
2を含む回収ガス(
図1に示す矢印Gch)を炭化水素合成装置7に供給するためのガス流路であり、複数のガス配管を含んで構成されている。回収ガス流路50には、回収ガスバルブ51が設けられている。回収ガスバルブ51は、制御部70によって開閉が制御され、3つの吸着器10のいずれかから取り出される回収ガスを炭化水素合成装置7に供給する。回収ガス流路50には、回収ガス流路50を介して、吸着器10の内部を減圧するポンプ52が設けられている。これにより、CO
2が吸着材11から脱離しやすくなる。
【0024】
熱媒体流路60は、オイルなどの流体の熱媒体(熱流体)が流通する流路であり、メタン(CH
4)などの炭化水素化合物の生成反応によって炭化水素合成装置7で生じた熱を3つの吸着器10に供給する。吸着器10に供給された熱媒体は、吸着材11を加熱したのち、炭化水素合成装置7に戻り、再度加熱される。これを繰り返すことによって、CO
2が吸着材11から脱離しやすくなる。
図1では、図面が煩雑になることを避けるため、熱媒体流路60は、炭化水素合成装置7と、回収工程中の吸着器10Bとに接続されているが、吸着器10Aと吸着器10Cについても同様に、熱媒体流路60が接続されている。
【0025】
制御部70は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータを含んでおり、混合ガスの性状や吸着器10の環境条件などに基づいて、回収システム5全体を制御する。制御部70は、ROMに格納されているコンピュータプログラムをRAMに展開してCPUが実行することにより機能する。制御部70は、混合ガス検出部71と、環境条件検出部72と、回収ガス検出部73と、情報取得部74と、演算部75と、指令部76と、を備える。
【0026】
混合ガス検出部71は、混合ガス供給流路20を流れる混合ガスの性状を検出する。本実施形態では、混合ガス検出部71は、混合ガスのCO2濃度XCO2を検出する濃度検出器と、混合ガスの圧力Pgを検出する圧力検出器と、混合ガスの温度Tgを検出する熱電対と、混合ガスの流量Qを検出する流量検出器と、を備える。混合ガス検出部71が検出する混合ガスのCO2濃度XCO2、圧力Pg、混合ガスの温度Tg、および、混合ガスの流量Qを含む混合ガス情報は、情報取得部74に出力される。
【0027】
環境条件検出部72は、吸着器10内の吸着材11によるCO2の吸着に影響を与える吸着条件を検出する。本実施形態では、環境条件検出部72は、吸着器10内の圧力Paを検出する圧力検出器と、吸着器10内の温度Taを検出する熱電対と、を備える。環境条件検出部72が検出する吸着器10内の圧力Paと温度Taを含む吸着条件は、情報取得部74に出力される。
【0028】
回収ガス検出部73は、回収ガス流路50を流れる回収ガスの性状を検出する。本実施
形態では、回収ガスは、CO2とH2とが混合したガスであり、回収ガス検出部73は、回収ガス中のCO2濃度XrCO2を検出する濃度検出器と、回収ガスの圧力Prgを検出する圧力検出器と、回収ガスの温度Trgを検出する熱電対と、回収ガスの流量Qrを検出する流量検出器と、を備える。回収ガス検出部73が検出する回収ガス中のCO2濃度XrCO2、回収ガスの圧力Prg、回収ガスの温度Trg、および、回収ガスの流量Qrを含む回収ガス情報は、情報取得部74に出力される。
【0029】
情報取得部74は、混合ガス検出部71と、環境条件検出部72と、回収ガス検出部73とのそれぞれに電気的に接続されている。情報取得部74は、混合ガス検出部71と、環境条件検出部72と、回収ガス検出部73とのそれぞれから出力されるガスの性状の計測情報であるガス情報や吸着器の環境条件の計測情報である吸着条件を取得する。情報取得部74は、これらの情報を演算部75に出力するとともに、図示しない記憶部に記憶させる。情報取得部74は、混合ガス検出部71と、環境条件検出部72と、回収ガス検出部73とのそれぞれから出力される情報に基づいて、ガスの性状や吸着器の環境条件を推定してもよい。
【0030】
演算部75は、情報取得部74から入力されるガスの性状や吸着器の環境条件を用いて、各種の演算や判定を行う。演算部75の詳細な機能は、後述する。
【0031】
指令部76は、演算部75と電気的に接続されている。指令部76は、演算部75による演算や判定に応じて、回収システム5の各部に指令を出力する。
【0032】
次に、回収システム5による回収方法について説明する。本実施形態の回収システム5では、3つの吸着器10を用いることで、混合ガスからCO
2を連続して回収しつつ、CO
2を回収し終わった順に、吸着器10にH
2を供給することで、CO
2とH
2とが混合された回収ガスを炭化水素合成装置7に供給する。
図1に示す状態では、吸着器10Aは、混合ガスが供給されることで吸着材11AにCO
2を吸着しており(吸着工程)、吸着器10BにH
2が供給されることで吸着材11BからCO
2を脱離させている(回収工程)。吸着器10Cは、吸着材11CからのCO
2の脱離が完了したのち、熱媒体によって加熱された吸着材11Cを冷却している(冷却工程)。
【0033】
図2は、回収システムによる回収方法を説明するフローチャートである。本実施形態の回収方法では、例えば、最初に、吸着器10Aに混合ガスを供給し、CO
2の回収を開始する。吸着器10Aについて、吸着器10Aに混合ガスを供給し、CO
2の回収を開始した時刻をta=0とする(ステップS11)。次に、吸着器10Aに供給される混合ガスの性状を取得する(ステップS12)。ステップS12では、制御部70は、混合ガス検出部71を用いて、混合ガス供給流路20を流れる混合ガスの性状を検出する。混合ガス検出部71によって検出された混合ガスのCO
2濃度X
CO2、圧力Pg、混合ガスの温度Tg、および、混合ガスの流量Qは、情報取得部74に出力される。情報取得部74では、入力されたこれらの値を記憶する。
【0034】
次に、ステップS11から時間t1が経過したとき(ステップS13)、時刻t1のときに吸着器10Aに供給される混合ガスの性状を取得する(ステップS14)。ステップS14では、ステップS12と同様に、制御部70は、混合ガス検出部71を用いて、混合ガス供給流路20を流れる混合ガスの性状を検出する。
【0035】
次に、吸着器10Aの環境条件を取得する(ステップS15)。ステップS15では、制御部70は、環境条件検出部72を用いて、吸着器10A内の環境に関する情報、特に、吸着材11AがCO2を吸着するときに影響する項目である吸着器10内の圧力Paと温度Taを検出する。環境条件検出部72によって検出された吸着器10A内の環境条件
に関する情報は、情報取得部74に出力される。
【0036】
次に、吸着器10Aに流入する混合ガスの平均CO2濃度とCO2吸着量を算出する(ステップS16)。ステップS16では、演算部75は、混合ガス検出部71によって検出された混合ガスの性状を用いて、時刻t1における吸着器10Aに流入するガスの平均CO2濃度と、時刻ta=0から時刻t1までの間に、吸着材11Aに導入されたCO2導入量を算出する。本実施形態では、吸着器10に導入されたCO2は、全て吸着材11に吸着されたと仮定してCO2吸着量を推定している。CO2導入量は、特許請求の範囲の「導入量推定値」に相当する。CO2吸着量は、特許請求の範囲の「吸着量推定値」に相当する。
【0037】
本実施形態では、時刻0から時刻tまでにおける吸着器に流入するガスの平均CO
2濃度X
CO2-ave(t)は、以下の式(1)を用いて算出する。平均CO
2濃度X
CO2-ave(t)は、吸着器における吸着工程が開始してから時刻tとなるまでの間に、吸着器に流入するガス中のCO
2濃度の平均値を示している。
【数1】
・・・(1)
なお、式(1)において、X
CO2-ave(t-Δt)は、時刻0から時刻(t-Δt)までの間の平均CO
2濃度であり、Q
t(t-Δt)は、時刻0から時刻(t-Δt)までの間のガスの総流量である。X
CO2(t)は、時刻tにおけるガス中のCO
2濃度であり、q(t)は、時刻tにおけるガスの流量である。
【0038】
時刻0から時刻tまでのCO
2導入量G
t-CO2(t)は、以下の式(2)を用いて算出する。
【数2】
・・・(2)
CO
2導入量G
t-CO2(t)は、式(2)に示すように、時刻0から時刻tまでの間に吸着器に流入するCO
2量の積算値を示している。なお、式(2)において、CFは、CO
2濃度とガス流量との積の値を質量に変換する変換係数である。
【0039】
演算部75は、式(2)を用いて、混合ガスのCO2濃度XCO2と流量qとから、時刻t1における吸着器10AのCO2導入量Gt-CO2(t1)を算出する。本実施形態では、演算部75は、上述したように、このようにして算出されたCO2導入量を用いて、吸着材11のCO2吸着量を推定し、ステップS16以降の工程を進める。このとき、演算部75は、さらに、混合ガスの圧力Pgと混合ガスの温度Tgを用いて、時刻t1におけるCO2導入量を算出してもよい。
【0040】
本実施形態では、ステップS16において、吸着器10Aに流入する混合ガスについて、吸着器10Aにおける吸着工程が開始してから時刻t1までの間における平均温度Tg-ave(t1)と、平均圧力Pg-ave(t1)を算出する。平均温度Tg-ave(t1)と、平均圧力Pg-ave(t1)とは、後述のステップS19で用いる。
【0041】
次に、設定利用率を変更するか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17では、吸着器10Aに収容されている吸着材11Aについて設定されている設定利用率を変
更するか否かを判定する。
【0042】
図3は、吸着材の設定利用率を説明する図である。
図3には、吸着材について、CO
2濃度(横軸)に対する、吸着材の単位質量当たりの吸着材のCO
2吸着量(縦軸)を示している。
図3に示す3本の曲線のうち、二点鎖線Lsは、吸着材がCO
2を最も多く吸着可能な量(飽和吸着量)を示している。鎖線Ldは、吸着材に吸着された結果、脱離が不可能となったCO
2吸着量を示しており、実線Laは、ある設定利用率にしたがって、吸着材にCO
2を吸着させた場合のCO
2吸着量を示している。本実施形態では、二点鎖線Lsで示す吸着量Csに対する実線Laで示す吸着量Caの割合を利用率Ksetとする。すなわち、利用率Ksetは、混合ガスからのCO
2の回収のために利用される吸着材の割合を示しているといえる。
【0043】
本実施形態の回収方法では、設定利用率の初期値が設定されており、ステップS17では、設定されている設定利用率を変更するか否かを判定する。本実施形態では、最初の吸着工程については、回収ガスについて必要とされる品質などに応じて予め設定されている初期値であるが、後述するステップS24での算出結果に応じて、吸着工程のたびに変更する。設定利用率は、最初に設定した値を固定したままであってもよい。ステップS17において、予め設定されている設定利用率を変更すると演算部75が判定する(ステップS17:Yes)と、ステップS18において、演算部75は、設定利用率を変更し(ステップS18)ステップS19に遷移する。設定利用率を変更すると演算部75が判定する(ステップS17:No)と、ステップS19に遷移する。
【0044】
図2に戻り、設定利用率を用いて、目標CO
2吸着量としての切替閾値を算出する(ステップS19)。ステップS19では、演算部75は、最初に、吸着材11Aの飽和吸着量を算出する。一般的に、吸着材の飽和吸着量は、吸着材の基本特性に加えて、吸着材の環境条件と、吸着材に供給されるガスの性状とによって決定することができる。本実施形態では、吸着材11Aの飽和吸着量は、混合ガスのCO
2濃度X
CO2、温度Tgと圧力Pg、および、吸着器10A内の温度Taと圧力Pa、を用いて算出される。演算部75は、吸着材11AのCO
2に対する吸着性能と、混合ガスのCO
2濃度X
CO2、温度Tg、混合ガスの圧力Pg、吸着器10A内の温度Ta、および、吸着器10A内の圧力Paのそれぞれとの関係を示すデータテーブルを有している。吸着材11Aの飽和吸着量を算出する場合、最初に、演算部75は、吸着器10Aにおける吸着工程が開始してから時刻t1までの間における、吸着器10A内の平均温度Ta
-ave(t1)と平均圧力Pa
-ave(t1)とを算出する。次に、演算部75は、算出した、吸着器10A内の平均温度Ta
-ave(t1)と、吸着器10A内の平均圧力Pa
-ave(t1)と、ステップS16において算出した、混合ガスの平均CO
2濃度X
CO2-ave(t1)と、混合ガスの平均温度Tg
-ave(t1)と、混合ガスの平均圧力Pg
-ave(t1)と、上述したデータテーブルとを用いて、吸着材11Aの現在の飽和吸着量を算出する。演算部75は、吸着材11Aの現在の飽和吸着量を算出すると、算出した飽和吸着量にステップS17またはステップS18において判定した設定利用率を乗じて、切替閾値を算出する。
【0045】
次に、CO2吸着量が切替閾値より大きいか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20では、演算部75は、ステップS16で算出したCO2吸着量が、ステップS19で算出した切替閾値より大きいか否かを判定する。CO2吸着量が切替閾値以下であると演算部75が判定する(ステップS20:No)と、ステップS21に遷移する。CO2吸着量が切替閾値より大きいと演算部75が判定する(ステップS20:Yes)と、ステップS22に遷移する。
【0046】
CO2吸着量が切替閾値以下であると演算部75が判定すると、吸着器10Aでの吸着工程を継続し、時刻taが時刻t1から時間Δt経過したのち(ステップS21)、時刻
(t1+Δt)を時刻t1として(ステップS13)、再び吸着器10Aに供給される混合ガスの性状を取得する(ステップS14)。その後、ステップS15からステップS19までを繰り返し、ステップS20の判定を行う。
【0047】
CO2吸着量が切替閾値より大きいと演算部75が判定すると、指令部76は、工程の切り替えを指令する(ステップS22)。ステップS22では、指令部76は、混合ガス供給バルブ21の吸着器10A方向の流れを遮断し、混合ガス供給バルブ22方向への流れに切り替るとともに、混合ガス供給バルブ22の吸着器10C方向の流れを開放する。これにより、吸着工程が行われる吸着器が吸着器10Aから吸着器10Cに切り替わる。
【0048】
本実施形態の回収方法では、吸着器10Aの吸着工程が終了した場合、水素供給バルブ41の水素供給バルブ42方向の流れを開放し、水素供給バルブ42の吸着器10A方向の流れを開放する。これにより、吸着器10Aには、水素ガス供給流路40を介して、H2が供給される。吸着器10Aは、H2の供給に加えて、熱媒体流路60を介して熱媒体が供給されるため、吸着材11Aが加熱され、吸着材11Aに吸着したCO2を脱離しやすくなる。これにより、吸着器10A内で脱離したCO2と供給されたH2とが混合した回収ガスは、回収ガス流路50を介して、炭化水素合成装置7に送られる。
【0049】
ステップS22による工程の切り替えによって、吸着器10AにH2が供給されると、吸着材11Aに吸着されているCO2が吸着材11Aから脱離し、回収ガス流路50を流れる。回収ガス流路50を流される回収ガスは、回収ガス検出部73によって、回収ガスのCO2濃度XrCO2、圧力Prg、温度Trg、および、流量Qrが検出される。情報取得部74は、回収ガス検出部73が検出する回収ガスのCO2濃度XrCO2、圧力Prg、温度Trg、および、流量Qrを含む脱離量情報を取得する(ステップS23)。
【0050】
演算部75は、混合ガス検出部71が取得した混合ガスの性状と回収ガス検出部73が検出する回収ガスの性状とを用いて、吸着器10AのCO2導入量に対するCO2脱離量の割合を算出する(ステップS24)。ステップS24において、演算部75は、脱離量情報を用いて、炭化水素合成装置7に供給されるCO2の量をCO2脱離量として算出し、ステップS16で算出したCO2導入量に対するCO2脱離量の割合を算出する。ここで、吸着器10AのCO2導入量に対するCO2脱離量の比を吸着器10AのCO2回収率という。演算部75は、算出したCO2回収率が想定の値より小さい場合、次回の吸着器10Aでの吸着工程のステップS18において、設定利用率を前回の設定利用率に比べ小さくする。演算部75は、算出したCO2回収率が想定の値より大きい場合、次回の吸着器10Aでの吸着工程のステップS18において、設定利用率を前回の設定利用率に比べ大きくする。本実施形態の回収方法では、このようにして、吸着器10の実態に合わせて、飽和吸着量および設定利用率を変更し、回収ガスのCO2濃度を安定させるとともに、CO2回収率を大きくする。CO2脱離量は、特許請求の範囲の「脱離量推定値」に相当する。
【0051】
図4は、本実施形態の回収方法におけるCO
2吸着量の時間変化を説明する図である。
図4には、回収システム5が備える3つの吸着器10A,10B,10CのそれぞれでのCO
2吸着量CAと、1つの吸着器10に吸着させる目標CO
2吸着量としての切替閾値STを示している。具体的には、時刻t1から時刻t2までの時間帯は、吸着器10AのCO
2吸着量と切替閾値を示しており、時刻t2から時刻t3までの時間帯は、吸着器10CのCO
2吸着量と切替閾値を示しており、時刻t3から時刻t4までの時間帯は、吸着器10BのCO
2吸着量と切替閾値を示している。
【0052】
本実施形態の回収方法では、
図4に示すように、3つの吸着器10A,10B,10Cのそれぞれは、時刻t2,t3,t4において、CO
2吸着量CAが切替閾値STを超過することで、吸着工程が終了する。本実施形態では、上述したように、ステップS19に
おいて、飽和吸着量に設定利用率を乗じて、切替閾値STを算出する。本実施形態では、吸着器の飽和吸着量は、混合ガスのCO
2濃度X
CO2と温度Tgと圧力Pg、および、吸着器10A内の温度Taと圧力Paを用いて算出されることから、切替閾値STが時間に応じて変化する。このため、
図4に示すように、切替閾値STの値が混合ガスの性状と吸着材の環境条件とによって変動する。
【0053】
図5は、混合ガスの性状の時間変化を示した図である。
図5(a)に混合ガスのCO
2濃度の時間変化を示し、
図5(b)には混合ガスの流量の時間変化を示している。本実施形態では、混合ガスは、燃焼設備6から供給されるとしており、燃焼設備6の運転状態によって、混合ガスの性状が時間とともに変化する。具体的には、
図5に示すように、CO
2濃度であれば、5%から10%までの範囲で変化し、流量であれば、30L/minから90L/minまでの範囲で変化する。吸着器10に供給される混合ガスの性状が
図5に示すように大きく変化すると、吸着材11の飽和吸着量も変化することとなる。
【0054】
図6は、吸着材の利用率と回収ガスの品質との関係を説明する図である。
図6に示す吸着器10では、混合ガスは、吸着器10の入口12から吸着器10内に流入する。吸着材11による吸着によってCO
2が取り除かれた混合ガスの残りのガスは、出口13から排出される。このため、混合ガスに含まれるCO
2は、入口12に近い吸着材11から順に吸着される。したがって、吸着材11は、吸着器10の入口12側に位置し、CO
2を吸着している吸着材(
図6に示す領域Ra1)と、吸着器10の出口13側に位置し、CO
2は吸着していないが混合ガスに含まれるCO
2以外のガスを吸着している吸着材(
図6に示す領域Ra2)とを含む。ここで、混合ガスに含まれるCO
2以外のガスとは、本実施形態の場合、酸素、窒素、水分などである。
【0055】
回収システムにおいて、CO
2を吸着した吸着材11からCO
2を脱離させて回収する場合、回収ガスのCO
2濃度は、後工程(炭化水素生成)での利用のしやすさから、一定であることが望ましい。このため、吸着工程の終了時には、吸着材11全体に対するCO
2を吸着している吸着材11の割合(利用率)が一定であることが望まれる。しかしながら、
図6に示すように、CO
2を吸着している吸着材11とCO
2以外のガスを吸着している吸着材11との境界が境界B1と設定している場合でも、混合ガスの性状や吸着器10の運用条件によって吸着材11の飽和吸着量は変わる。このため、CO
2を吸着している吸着材11とCO
2以外のガスを吸着している吸着材11との境界が境界B2になる場合もある。そこで、本実施形態では、吸着材11の利用率を一定にすることを目的として、混合ガスの性状や吸着器10の吸着条件を用いて吸着材11の飽和吸着量を算出することで、吸着材11の利用率が一定となるように調整する(
図2に示すステップS17からステップS19まで)。これにより、回収ガスの品質を安定させることができる。なお、吸着材の利用率を100%にすると、回収ガスの品質は安定するが、混合ガスに含まれるCO
2の一部が吸着材に吸着ざれることなく排出される。このため、回収ガス中のCO
2濃度を高くしつつ、CO
2の漏れを少なくするためには、利用率を、例えば60%から90%程度とすることが望ましい。
【0056】
図7は、吸着工程の平均CO
2濃度と吸着工程時間の変化を説明する図である。
図7には、本実施形態の回収方法の吸着工程における混合ガスの平均CO
2濃度(
図7(a))と、1回の吸着工程の時間(
図7(b))との変化を示す。
図7の横軸は、工程の回数を示している。
図7(a)に示すように、回収システム5では、混合ガスの平均CO
2濃度X
CO2-aveは、吸着工程間で異なっており、このような組成が不安定な混合ガスの場合、回収ガスの品質が安定しない場合がある。本実施形態では、上述したように、吸着材11の利用率が一定となるように、ガスの性状を用いて算出される吸着材11の飽和吸着量に基づいて、1回の吸着工程の時間Tabsを変更している(
図7(b)参照)。
【0057】
図8は、吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第1の図である。
図8には、吸着工程を繰り返した場合の吸着材の利用率(
図8(a))、および、CO
2回収率(
図8(b))のそれぞれについて、時間変化を示す。
図8(a)に示すように、回収方法を開始した直後では、吸着器内にCO
2が存在しないため、脱離しきれずに吸着器内にCO
2残留する。このため、CO
2濃度が安定せず時間とともに変化する。しかしながら、
図8に示す例では、回収方法を開始してから15時間が経過した以降には、吸着材の利用率は安定することがわかる。また、吸着材の利用率が安定すると、CO
2回収率も安定することが
図8(b)からわかる。したがって、回収ガスの品質が安定することがわかる。なお、
図8に示す実験例では、吸着材の利用率(kset)は、0.6に設定されており、CO
2回収率はほぼ100%である。すなわち、混合ガスに含まれるCO
2は、ほぼ全量回収することができている。なお、
図8(a)に示すように、回収方法を開始してから15時間が経過した以降の実際の利用率は、設定利用率の0.6より大きい。これは、吸着材の実利用率には、吸着材に吸着された結果脱離が不可能となったCO
2が吸着している吸着材は含まれているからである。
【0058】
図9は、吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第2の図である。
図9には、吸着材の利用率(
図9(a))、および、CO
2回収率(
図9(b))のそれぞれについて、混合ガスの平均CO
2濃度に対する変化を示す。
図9に示す実験例では、混合ガスの平均CO
2濃度が6%より小さい値から8%より大きい値の範囲に変化しているが、
図9(a)に示すように、吸着材の利用率は、0.65から0.68までの間で維持されており、CO
2回収率も安定することが
図9(b)からわかる。したがって、本実施形態の回収システム5では、混合ガスの平均CO
2濃度が変化しても、回収工程ごとのCO
2回収率は安定することが明らかとなった。
【0059】
図10は、吸着材の環境温度の変化による影響を説明する図である。
図10(a)は、吸着材の環境温度の変化によるCO
2吸着量の変化を説明する図である。一般的に、CO
2などのガスの吸着材は、環境温度の上昇によって、吸着量が減少する。すなわち、吸着材の飽和吸着量は、吸着材の環境温度の変化によって変化する。
図10(b)には、複数の吸着工程のそれぞれにおける、環境温度の変化に伴う吸着材の温度の工程平均の変化を示す。
図10(b)に示すように、本実施形態の回収システム5では、平均CO
2濃度が変化するだけでなく、吸着材の平均温度が変化していることがわかる。
【0060】
図11は、吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第3の図である。
図11には、吸着材の利用率(
図11(a))、および、CO
2回収率(
図11(b))のそれぞれについて、吸着工程ごとに吸着材の環境温度が変化した場合の混合ガスのCO
2濃度に対する変化を示す。
図11に示す実験例では、
図10(b)に示すような、吸着材の平均温度の変化があっても、
図11(a)に示すように、吸着材の利用率は、0.7前後の値でほとんど維持されており、
図11(b)に示すように、CO
2回収率も安定することがわかる。したがって、本実施形態の回収システム5では、吸着材の環境温度が変化しても、回収工程ごとのCO
2回収率は安定することが明らかとなった。
【0061】
図12は、吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第4の図である。
図13は、吸着材の利用率およびCO
2回収率を説明する第5の図である。
図12には、吸着材の利用率(
図12(a))、および、CO
2回収率(
図12(b))のそれぞれについて、熱媒体流路60によって供給される熱媒体の量が想定した量より少なくなったときの混合ガスのCO
2濃度に対する変化を示す。例えば、回収システム5の不具合によって、熱媒体流路60を流れる熱媒体の流量が想定の量の40%となった場合、吸着材11の利用率Ksetを0.6のままにしておくと、回収工程において、熱量不足によるCO
2の脱離不良が発生する。このため、吸着器10内のCO
2に残留しやすくなり、
図12(a)に示すように、利用率が0.9前後まで上昇する。利用率が上昇すると、回収工程においてC
O
2を回収しきれなくなるため、
図12(b)に示すように、CO
2回収率が低下し、排出ガス流路30に、CO
2を除去しきれなかったガスが流れることとなる。
【0062】
本実施形態では、演算部75は、情報取得部74が取得する回収ガスの性状と、混合ガス検出部71が取得する混合ガスの性状とを用いて、吸着器10のCO
2回収率を算出する(
図2のステップS24参照)。演算部75は、CO
2回収率が低下している場合、次回の吸着工程において、設定利用率を小さくし、CO
2回収率を回復させる。具体的には、
図12の状況においては、利用率Ksetを0.6から0.4に変更する。これにより、
図13に示すように、利用率が0.6前後となり、吸着工程の時間も短くなるため、混合ガスに含まれるCO
2を確実に回収することができるようになる。したがって、
図13(b)に示すように、CO
2回収率を回復させることができる。
【0063】
以上説明した、本実施形態の回収装置1によれば、制御部70は、混合ガスの温度を含む混合ガス情報と吸着材11の環境温度を含む吸着条件とを用いて推定される、吸着材11のCO2吸着量と飽和吸着量とに応じて、混合ガスを供給する吸着器10を切り替える。吸着材11の飽和吸着量は、吸着器10に供給される混合ガスの性状と、吸着材11の吸着性能に影響を与える環境条件とによって左右されるため、このように推定される飽和吸着量は、実際の状況にあった値となる。これにより、演算部75によって推定された、吸着材11のCO2吸着量と飽和吸着量とに応じて混合ガスの供給先を切り替えることで、CO2の系外への漏出を抑制しながらCO2の吸着に利用する吸着材11の割合(利用率)を安定させることができる。したがって、吸着材11に吸着されているCO2を回収するとき、回収ガス中のCO2の濃度を一定にすることができるため、回収ガスの品質を安定させることができる。
【0064】
また、本実施形態の回収装置1によれば、演算部75は、吸着工程の開始時から特定の時刻t1までの間に吸着器10に導入されるCO2の量をCO2導入量として推定し、推定したCO2導入量を用いて、吸着材11が吸着しているCO2吸着量を推定する。演算部75は、推定したCO2吸着量と、飽和吸着量に設定利用率を乗じて算出される切替閾値とを比較する。指令部76は、その比較結果に応じて、混合ガスを供給する吸着器10を切り替える。すなわち、回収装置1は、混合ガス情報のみを用いて推定される吸着材11のCO2吸着量を推定し、切替閾値との比較によって、混合ガスの供給先を切り替えることができる。したがって、簡便に回収ガスの品質を安定させることができる。
【0065】
また、本実施形態の回収装置1によれば、演算部75は、CO2導入量に対するCO2脱離量の割合、すなわち、CO2の回収率を用いて、設定利用率を算出する。これにより、回収ガスの品質の1つであるCO2の回収率を安定させることができるため、回収ガスの品質をさらに安定させることができる。
【0066】
また、本実施形態の回収装置1によれば、吸着材11の飽和吸着量は、吸着器10への混合ガスの供給を開始してから特定の時刻までの混合ガスの性状の平均値や環境条件の平均値を用いて推定される。これにより、吸着器10への混合ガスの供給を開始してから、混合ガスの性状や環境条件に急激な変化がある場合でも、吸着材11の飽和吸着量を推定することができるため、回収ガスの品質を安定させることができる。
【0067】
また、本実施形態の回収方法によれば、回収装置1は、混合ガス情報と吸着条件とを用いて演算される吸着材11の飽和吸着量に応じて、混合ガスを供給する吸着器10を切り替える。これにより、吸着材11の利用率を安定させることができるため、回収ガスの品質を安定させることができる。
【0068】
また、本実施形態のコンピュータプログラムによれば、制御部70は、混合ガス情報と
吸着条件とを用いて演算される吸着材11の飽和吸着量に応じて、混合ガスを供給する吸着器を切り替える。これにより、吸着材の利用率を安定させることができるため、回収ガスの品質を安定させることができる。
【0069】
<第2実施形態>
図14は、第2実施形態の回収装置の概略構成を示す模式図である。第2実施形態の回収装置は、第1実施形態の回収装置(
図1)と比較すると、混合ガスに含まれる不純物の濃度を検出する点が異なる。
【0070】
本実施形態の回収システム5が備える制御部70は、混合ガス検出部77と、環境条件検出部72と、情報取得部74と、演算部75と、指令部76と、を備える。混合ガス検出部77は、混合ガス供給流路20を流れる混合ガスの性状を検出する。混合ガス検出部77は、CO2濃度検出器と、圧力Pgを検出する圧力検出器と、温度Tgを検出する熱電対と、流量Qを検出する流量検出器と、混合ガスのCO2以外の成分の濃度Xipを検出する不純物濃度検出器と、を備える。混合ガス検出部77が検出するCO2濃度XCO2,不純物濃度Xip,圧力Pg,温度Tg,および、流量Qを含む混合ガス情報は、情報取得部74に出力される。
【0071】
図15は、吸着材の環境温度の変化による影響を説明する図である。一般的に、CO
2などのガスの吸着材は、吸着対象のガスが含まれる混合ガス中に、吸着対象とは異なるガス、いわゆる不純物ガスが含まれていると、不純物ガスも吸着する。このため、混合ガス中に不純物ガスが含まれていると、吸着材の吸着対象ガスの飽和吸着量が減少し、不純物ガスの濃度が増加すると、吸着材の吸着対象ガスの飽和吸着量が減少する(
図15参照)。
【0072】
本実施形態の回収方法では、制御部70は、ステップS19(
図2参照)において切替閾値を算出するとき、混合ガスの温度Tgと圧力Pg、および、吸着器10内の温度Taと圧力Paだけでなく、混合ガス検出部77が検出する混合ガスの不純物濃度X
ipも用いて、飽和吸着量を算出する。本実施形態では、演算部75は、吸着材11のCO
2に対する吸着性能と、混合ガスの温度Tg、混合ガスの圧力Pg、混合ガスの不純物濃度X
ip、吸着器10A内の温度Ta、および、吸着器10A内の圧力Paのそれぞれとの関係を示すデータテーブルを有している。演算部75は、このデータテーブルを用いて吸着材11の飽和吸着量を算出し、設定利用率と乗じることで、切替閾値を算出する。これにより、本実施形態の回収方法では、混合ガスの不純物濃度X
ipが変化に応じて切替閾値が変更される。
【0073】
以上説明した、本実施形態の回収装置2によれば、混合ガス検出部77は、混合ガスに含まれるCO2以外の物質の濃度を含む、混合ガス情報を取得する。吸着材11には、CO2以外の物質、例えば、H2Oも吸着されるため、吸着材11の飽和吸着量は低下する。そこで、CO2以外の物質の濃度を用いて、吸着材11の飽和吸着量を推定することで、飽和吸着量の推定精度を向上させることができる。これにより、混合ガスの供給先を切り替えるタイミングの精度が向上するため、回収ガスの品質をさらに安定させることができる。
【0074】
<第3実施形態>
図16は、第3実施形態の回収装置の概略構成を示す模式図である。第3実施形態の回収装置は、第1実施形態の回収装置(
図1)と比較すると、排出ガスに含まれるCO
2濃度を検出する点が異なる。
【0075】
本実施形態の回収システム5が備える制御部70は、混合ガス検出部71と、環境条件
検出部72と、排出ガス検出部78と、情報取得部74と、演算部75と、指令部76と、を備える。排出ガス検出部78は、排出ガス流路30を流れる排出ガスの性状を検出する。排出ガス検出部78は、排出ガス中のCO2濃度XeCO2を検出する濃度検出器と、排出ガスの圧力Pegを検出する圧力検出器と、排出ガスの温度Tegを検出する熱電対と、排出ガスの流量Qeを検出する流量検出器と、を備える。排出ガス検出部78が検出するCO2濃度eXCO2、圧力Peg、温度Teg、および、流量Qeを含む排出ガス情報は、情報取得部74に出力される。
【0076】
本実施形態の回収方法では、演算部75は、ステップS16(
図2参照)において、混合ガス検出部71による混合ガスのCO
2濃度X
CO2と流量Qとを用いてCO
2導入量を算出し、排出ガス検出部78による排出ガス中のCO
2濃度Xe
CO2と流量Qeとを用いてCO
2排出量を算出する。演算部75は、CO
2導入量とCO
2排出量との差分を用いて、CO
2吸着量を算出する。演算部75は、ステップS20(
図2参照)において、このようにして算出したCO
2吸着量が切替閾値より大きいか否かを判定する。CO
2排出量は、特許請求の範囲の「排出量推定値」に相当する。
【0077】
以上説明した、本実施形態の回収装置3によれば、演算部75は、吸着器10に導入されるCO2導入量と吸着器10から排出されるCO2排出量との差分を用いて、CO2吸着量を推定する。制御部70は、推定したCO2吸着量と切替閾値とを比較することで、混合ガスを供給する吸着器10を切り替える。これにより、混合ガスの供給先を判定するとき、吸着材11のCO2吸着量の推定精度を向上させることができるため、指令部76による混合ガスの供給先の切り替えを正確に行えることができる。したがって、回収ガスの品質をさらに安定させることができる。
【0078】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0079】
[変形例1]
上述の実施形態では、回収装置1,2,3は、水分などが含まれている混合ガスの二酸化炭素を回収する回収システム5に適用されるとした。しかしながら、回収装置が適用される分野はこれに限定されない。吸着材を用いて、混合ガスの特定物質を吸着し、回収するシステムであれば、適用可能である。
【0080】
[変形例2]
上述の実施形態では、演算部75は、混合ガス検出部71や環境条件検出部72などが検出(計測)した数値を用いて、飽和吸着量やCO2導入量を算出するとした。演算部75は、混合ガス検出部71や環境条件検出部72などが検出した数値から飽和吸着量やCO2導入量を推定することで求めてもよい。
【0081】
[変形例3]
上述の実施形態では、混合ガス検出部71は、混合ガスのCO2濃度、混合ガスの圧力Pg、混合ガスの温度Tg、および、混合ガスの流量Qを検出するとした。環境条件検出部72は、吸着器10内の圧力Paと温度Taを検出するとした。これらの検出部が検出する数値は、これらに限定されない。吸着材11の飽和吸着量やCO2導入量を演算または推定可能な数値であればよい。第2実施形態の混合ガス検出部77と、第3実施形態の排出ガス検出部78についても同様である。
【0082】
[変形例4]
上述の実施形態では、演算部75は、吸着器10内の平均温度と、吸着器10内の平均
圧力と、混合ガスの平均温度と、混合ガスの平均温度とを用いて、吸着材11の飽和吸着量を算出するとした。しかしながら、吸着材11の飽和吸着量を算出するために用いる数値は、平均値でなくてもよい。
【0083】
[変形例5]
上述の実施形態では、吸着材11の利用率を一定にすることを目的として、混合ガスの性状や吸着器10の吸着条件を用いて吸着材11の飽和吸着量を算出することで、吸着材11の利用率が一定となるように調整するとした。しかしながら、吸着材11の利用率は、一定でなくてもよい。例えば、混合ガスのCO2濃度や吸着材の特性に応じて吸着材の利用率を変更してもよく、例えば、吸着材の特性に応じてCO2濃度が低いほど利用率を高く設定してもよい。
【0084】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0085】
1,2,3…回収装置
10,10A,10B,10C…吸着器
11,11A,11B,11C…吸着材
70…制御部
71,77…混合ガス検出部
72…環境条件検出部
73…環境条件検出部
74…情報取得部
75…演算部
76…指令部
78…排出ガス検出部
kset…利用率