(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146174
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20231004BHJP
H05F 3/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01N35/00 Z
H05F3/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053230
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八文字 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 望
(72)【発明者】
【氏名】清川 哲宜
【テーマコード(参考)】
2G058
5G067
【Fターム(参考)】
2G058GA03
2G058HA01
5G067AA27
5G067AA53
5G067DA02
5G067DA15
(57)【要約】
【課題】
ユーザアクセス箇所への静電気放電を防ぐことができる構造を備えた自動分析装置を提供する。
【解決手段】
ユーザがアクセスするための開口部を設けた収容部材で、例えば、コンピュータのUSBポートなどのユーザアクセス箇所を覆い、収容部材の開口部にユーザアクセス箇所の外部へ接地された除電部材を取り付けた構造をとる。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザアクセス箇所の外部に接地された除電部材を取り付けた、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
ユーザがアクセスするための開口部を設けた収容部材でユーザアクセス箇所を覆い、
前記収容部材の開口部に前記除電部材を取り付けた、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
ユーザがアクセスするための開口部を設けた収容部材でユーザアクセス箇所を覆い、
前記収容部材の内部に前記除電部材を取り付けた、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記ユーザアクセス箇所の外部に接地された収容部材で前記ユーザアクセス箇所を覆い、前記収容部材に自動で閉じる開閉機構を備えた、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記除電部材として除電ブラシを用いる、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記除電部材として金属鎖を用いる、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記除電部材として自動で閉じる開閉扉を用いる、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記除電部材として自動で閉じるシャッター機構を用いる、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の自動分析装置であって、
前記除電部材として有線ケーブル等を通すための隙間を設けた自動で閉じるシャッター機構を用いる、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項3に記載の自動分析装置であって、
前記除電部材として収容部材内部に除電ブラシを用いる、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項2または請求項3に記載の自動分析装置であって、
前記除電部材をアース線を介して前記自動分析装置の金属筐体に接続する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項2または請求項3に記載の自動分析装置であって、
前記除電部材を前記自動分析装置の金属筐体に直接組み込む、
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関し、特にユーザアクセス箇所に対する除電機能を有する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、血漿、血清、尿などの生体試料と各種試薬を混合させ分析を行う。自動分析装置によって得られる分析結果は、病状を診断する上での多くの情報をもたらす。近年、より電磁両立性を高めるための施策の1つとして、自動分析装置に対する静電気放電の影響を低減することが求められている。
【0003】
ここで、カード用コネクタ装置の静電気放電対策に関して、特許文献1および特許文献2がある。
【0004】
特許文献1には「カード挿入部を覆う金属製カバーが設けられるとともにカバーは回路基板上のグランドパターンに接続され、開閉扉はカバーを介して回路基板のグランドパターンに接続されることを特徴とするカード用コネクタ装置」について記載されている。
【0005】
特許文献2には「回路基板上に固定され、xDピクチャーカード(カードという)が端子面を下側として収納される空間を形成し、前記カードを前記空間に導入するための開口部を有する筐体と、前記開口部近傍で前記筐体に保持され、一端が回路基板上の回路に導電接続され、他端がこの回路との接続点から前記空間側に延設されて、前記筐体に前記カードが導入されるときにこのカードの端子面と摺動接触する導電部材からなる回路端子とを備えたカードコネクタにおいて、断面がL字型又はコの字型の形状を有し、前記回路端子の前記開口部付近の露出部分を覆い、前記回路基板上の接地電位に接続された板金構造でなる保護プレートを前記回路基板上に設け、前記保護プレートの前記L字型又はコの字型の形状は、前記カードの挿入時に、カード先端を前記開口部から空間へ、前記回路端子の回路基板からの高さ相当分ガイドし得る形状とされており、この保護プレートにより回路の静電気放電を防止することを特徴とするカードコネクタ」について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-203718号公報
【特許文献2】特開2006-196355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2においては、共通して、カードコネクタにカードを挿入する際に回路基板上のグランドパターンに接続された金属に触れる構造をとることで、カードおよびユーザを除電し、カードおよび回路基板上の信号部を静電気放電から守る仕組みをとっている。
【0008】
しかしながら、ある一定以上の静電気が回路基板上のグランドパターンに放電された場合、回路上のグランド電位が揺さぶられるため、回路動作に異常をきたす可能性があり、最悪の場合、回路素子の破壊につながる可能性がある。回路のグランドパターンの揺れによる回路動作の異常および回路素子の破壊を回路上の対策で完全に防ぐことは難しく、放電される静電気が大きくなるほど、その対策は困難を極めていく。
【0009】
ここで、自動分析装置の場合、ユーザアクセス箇所の中で静電気放電により異常をきたす可能性のある箇所の一例として、制御部にあるコンピュータのUSBポート部が考えられる。USBポート部も特許文献1、2と同様に金属シェル等で静電気対策がされているが、その接続先はコンピュータ内部回路基板上のグランドパターンであり、一定以上の大きさの静電気が放電されるとコンピュータは動作異常をきたし、装置動作や分析データに異常をきたす可能性がある。自動分析装置において、特に分析データの異常は、病気の診断ミスにつながるため、確実に回避しなければならない。
【0010】
自動分析装置おいて、上記のような異常を回避するためには、そもそもユーザアクセス箇所への静電気放電を防ぐ必要がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は自動分析装置におけるユーザアクセス箇所への静電気放電を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための一態様として、ユーザがアクセスするための開口部を設けた収容部材によってユーザアクセス箇所を収容し、前記収容部材における開口部にユーザアクセス箇所外部へ接地された除電部材を備えることを特徴とする自動分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザがユーザアクセス箇所にアクセスする直前/しているときにユーザアクセス箇所外部に接地された除電部材を介して、必ず除電される構造をとるため、ユーザアクセス箇所への静電気放電を確実に防ぐことができる。
また、本発明はユーザアクセス箇所の外部でおこなう静電気対策であるため、ユーザアクセス箇所自体の静電気対策の有無にかかわらず、静電気によるユーザアクセス箇所や自動分析装置への影響を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4A】実施例1に係る、除電部材として除電ブラシを備えたコンピュータ周辺図(通常時)。
【
図4B】実施例1に係る、除電部材として除電ブラシを備えたコンピュータ周辺図(USBポートアクセス時)。
【
図5】実施例1に係る、ユーザの行動と帯電状態の関係性を示す図。
【
図6A】実施例2に係る、除電部材として金属鎖を備えたコンピュータ周辺図(通常時)。
【
図6B】実施例2に係る、除電部材として金属鎖を備えたコンピュータ周辺図(USBポートアクセス時)。
【
図7A】実施例3に係る、除電部材として自動で閉じる開閉扉を備えたコンピュータ周辺図(開閉扉が閉じている状態)。
【
図7B】実施例3に係る、除電部材として自動で閉じる開閉扉を備えたコンピュータ周辺図(開閉扉が開いている状態)。
【
図8】実施例3に係る、ユーザの行動と帯電状態の関係性を示す図。
【
図9A】実施例4に係る、除電部材として自動で閉じるシャッター機構を備えたコンピュータ周辺図(シャッターが閉じている状態)。
【
図9B】実施例4に係る、除電部材として自動で閉じるシャッター機構を備えたコンピュータ周辺図(シャッターが開いている状態)。
【
図10A】実施例5に係る、除電部材として有線ケーブル等を通すための隙間を設けた自動で閉じるシャッター機構を備えたコンピュータ周辺図(シャッターが閉じている状態)。
【
図10B】実施例5に係る、除電部材として有線ケーブル等を通すための隙間を設けた自動で閉じるシャッター機構を備えたコンピュータ周辺図(シャッターが開いている状態)。
【
図11A】実施例6に係る、除電部材として収容部材内部に除電ブラシを備えたコンピュータ周辺図。
【
図11B】実施例6に係る、除電部材として収容部材内部に金属鎖を備えたコンピュータ周辺図。
【
図12】実施例7に係る、ユーザアクセス箇所を外部に持ち出した例を示す図。
【
図13】実施例8に係る、アース線を用いたユーザアクセス箇所外部(自動分析装置の金属筐体部)への接地する例を示す図。
【
図14】実施例8に係る、収容部材・除電部材がユーザアクセス箇所外部(自動分析装置の金属筐体)に直接組み込まれている例を示す図。
【
図15A】実施例9に係る、除電材料で構成された自動で閉じる収容部材を備えたコンピュータ周辺図(収容部材が閉じている状態)。
【
図15B】実施例9に係る、除電材料で構成された自動で閉じる収容部材を備えたコンピュータ周辺図(収容部材が開いている状態)。
【
図16】実施例9に係る、ユーザの行動と帯電状態の関係性を示す図。
【
図17】実施例11に係る、絶縁性の手袋を装着したユーザの帯電状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の種々の実施例について図面を用いて説明するが、最初に各実施例が適用される最初に装置の基本構成を説明する。
【装置の基本構成】
【0016】
図1および
図2を用いて本実施例に関わる自動分析装置の全体的な基本構成の概略を説明する。なお、ここで説明する基本構成は、自動分析装置の基本構成の一例である。
図1に示すように自動分析装置100は試料および試薬を反応させた液体を測定する装置であり、主として、試料搬送機構104、反応ディスク111、試薬ディスク109、試料分注機構101、試薬分注機構106、撹拌機構113、測定部(図示なし)、洗浄機構105、コントローラ102などを備えている。ただし、ここでいう試料とは患者の血液や尿を意味する。
【0017】
自動分析装置100による試料の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0018】
まず、ラック103が搬入部等に設置され、試料搬送機構104によって自動分析装置100の試料分取位置まで搬入される。
【0019】
試料分取位置に到着したラック103は、試料分注機構101によって試料を反応ディスク111の反応容器112に分取される。試料分注機構101により、当該試料に依頼された分析項目に応じて、必要回数だけ試料の分取を行う。
【0020】
また、分析に使用する試薬を、試薬ディスク109上の試薬ボトル108から試薬分注機構106により先に試料を分取した反応容器112に対して分取する。続いて、撹拌機構113で反応容器112内の試料と試薬とを混合して調製した反応液の撹拌を行う。
【0021】
その後、光源107から発生させた光を撹拌後の反応液の入った反応容器112を透過させ、透過光の光度を分光光度計110により測定する。分光光度計110により測定された光度を、コントローラ102に送信する。そしてコントローラ102によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示装置等にて表示させたり、記憶部に記憶させたりする。
【0022】
図2に上記コントローラ102の搭載位置の一例を示す。本例においては、自動分析装置は制御部203と分析部202に分かれており、コントローラ102は制御部203のコントローラ(コンピュータ)格納領域204に、
図1に示すその他の構成部品は分析部203に搭載される。ここでいうコントローラ102は、CPUやメモリなどを備えたコンピュータであり、上記の各部材の様々な動作を制御するとともに、分光光度計110の検出結果から検体中の所定成分の濃度を求める演算処理を行う。コントローラ102による各機器の動作の制御は、記憶部(図示省略)に記録された各種プログラムに基づき実行される。
【0023】
なお、コントローラ102で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0024】
また、前記コンピュータにはUSBポートや光学ドライブが搭載されており、それらを用いて、前記プログラムのアップデート、分析結果のデータ出力等をおこなうことができる。
【0025】
以下本発明である、収容部材における開口部にユーザアクセス箇所外部へ接地された除電部材を備える構成の具体的な実施例を図面に従い説明する。
【実施例0026】
実施例1は、除電部材として、除電ブラシを用いる実施例である。以下、実施例1を
図3、
図4、
図5に沿って説明する。
【0027】
図3は自動分析装置に搭載されたユーザアクセス箇所 (コンピュータとそのUSBポート部)の周辺を示した概略
図300である。
図3のユーザアクセス箇所であるコンピュータ301のUSBポート302前面に少なくともUSBメモリが収容可能な奥行かつ、少なくとも人の手を入れることが可能な開口面積をもつ収容部材303と、前記収容部材303の開口部304にユーザアクセス箇所外部に接地された除電部材307である除電ブラシを配置した構造をとる。
【0028】
前記除電部材307の一例として、
図4Aに示すような除電ブラシ407を収容部材開口部404に取り付ける方法が考えられる。
【0029】
ただし、収容部材開口部404正面から見たときの除電ブラシ407がない領域は人の手が入る面積に比べて十分に小さい必要がある。この制限はユーザがユーザアクセス箇所外部に接地された除電ブラシ407に触れない限り、ユーザアクセス箇所であるUSBポート402にアクセスすることができない構造にするためである。
【0030】
加えて、上記除電ブラシ407の長さは、収容部材の奥行に比べ短くする必要がある。この制限は、除電ブラシがUSBポート内部402の信号線と接触し短絡することを防ぐためである。
【0031】
上記構造をとることで、
図4Bのように、ユーザはユーザアクセス箇所外部に接地された除電ブラシ407に必ず接触しながら、ユーザアクセス箇所であるUSBポート402にアクセスすることができず、ユーザがユーザアクセス箇所にアクセスする直前/しているときにはユーザアクセス箇所外部に接地された除電ブラシに接触するため確実に除電される。
【0032】
具体的な状況を想定すると、
図5のステップ(以下Sと略す)501~S510に示すように、ユーザがユーザアクセス箇所であるUSBポート402にUSBメモリ408を挿入する場合および、USBポート402からUSBメモリ408を取り外す場合の両方の状況で、ユーザはユーザアクセス箇所外部に接地された導体の除電ブラシ407に接触しながらUSBメモリ408の挿入/取り外しをおこなう必要があるため、ユーザアクセス箇所であるUSBポート402にアクセスする直前/しているときには除電された状態にあり、ユーザアクセス箇所であるUSBポート402への静電気放電は発生しない。
【0033】
したがって、本実施例を適用することにより、ユーザアクセス箇所への静電気放電を確実に防ぐことができる。また、本実施例は、ユーザアクセス箇所外部でおこなう静電気対策であるため、ユーザアクセス箇所自体の静電気対策の有無にかかわらず、ユーザアクセス箇所への静電気放電を要因とするユーザアクセス箇所および自動分析装置の破壊・誤動作を確実に防ぐことができる。
ただし、上記金属鎖607は、収容部材開口部604正面から見たときの金属鎖607がない領域は人の手が入る面積に比べて十分に小さい必要がある。この制限はユーザがユーザアクセス箇所外部に接地された金属鎖607に触れない限り、ユーザアクセス箇所であるUSBポート602にアクセスすることができない構造を崩さないためである。
加えて、上記金属鎖607の収容部材奥行方向の可動範囲が収容部材の奥行に対して小さくする、または、金属鎖607の径をUSBポート602に比べ十分に大きくする必要がある。この制限は、金属鎖がUSBポート602内部の信号線と接触し短絡することを防ぐためである。