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特開2023-146239発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146239
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/12 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
A23C9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053326
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】三塚 翔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光太郎
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC06
4B001AC31
4B001AC32
4B001AC45
4B001BC06
4B001BC13
4B001DC50
4B001EC99
(57)【要約】
【課題】本発明は、汎用性が高く、風味への影響が少ない、乳の酸性ゲルの新規な製造方法を提供することを課題とする。すなわち、発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを発酵工程を経ることなく製造する新規な方法の提供を課題とするものである。
【解決手段】発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法であって、以下の工程(1)~(4)を含む前記製造方法を提供する。
(1)調合乳を提供する工程
(2)上記の調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
(3)上記の調合乳のpHを4.0~5.2に調整する工程
(4)pH調整された調合乳の温度を10~35℃の条件下で静置する工程
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法であって、次の工程:
(1)調合乳を提供する工程
(2)上記の調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
(3)上記の調合乳のpHを4.0~5.2に調整する工程
(4)pH調整された調合乳の温度を10~35℃の条件下で静置する工程
を含む前記製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)の調合乳を提供する工程が、生乳、脱脂乳、還元乳、還元脱脂乳又はこれらの乳に副原料を添加したものを提供する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
さらに以下の工程(5)を含む請求項1又は2に記載の製造方法。
(5)前記(1)~(4)において、調合乳に乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか一つまたはこれらを組み合わせて添加する工程
【請求項4】
前記工程(3)の調合乳のpHを4.0~5.2に調整する工程が、
有機酸を用いて調整する工程である、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
発酵工程を含まない、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の製造方法により製造された発酵乳および発酵乳様の酸性ゲル。
【請求項7】
乳のゲル化方法であって、0~10℃の調合乳のpHを4.0~5.2に調整した後、調合乳の温度を制御する工程を含む、乳のゲル化方法。
【請求項8】
温度を制御する工程が、10~35℃の範囲内で制御する工程である、請求項7に記載の乳のゲル化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵乳は乳タンパク質を酸により凝固させた食品である。そのため、発酵乳を製造する際には原料乳に乳酸菌を接種し、原料乳を酸凝固させる発酵工程を必ず経ることになる。特に、セットタイプの発酵乳では専用の発酵庫や冷却庫が必要であり、温度管理をするための広いスペースの確保が必要になるといった課題がある。
乳酸菌や発酵庫を使用せずに発酵乳様の酸性ゲルを製造する方法として以下の先行技術がある。
【0003】
特許文献1、2には、原料乳のpHをクエン酸やリン酸で5.5~6.2に調整し、限外ろ過処理をすることで熱安定性と物性に優れた酸凝固性の乳食品の製造方法が開示されている。
特許文献3には、牛乳や豆乳に0.3~0.6%のグルコノデルタラクトンを添加して、10~40℃の温度範囲で反応させることで、乳を酸性化してゲル化させるための方法が開示されている。
特許文献4には、乳成分を含む原料液にクエン酸塩と増粘剤を配合し、原料液のpHを5.1~6.5の弱酸性に調整する工程であって、原料乳中の脂肪/タンパク質の重量比が1.8以下とすることにより弱酸性のゲル状乳加工品のタンパク質の凝集を抑制する方法が開示されている。
しかし、特許文献1、2、3では、酸性化の手段がそれぞれリン酸やクエン酸、グルコノラクトン等に限定的な方法である。また、特許文献4も酸性化の手段がクエン酸であることのほか、原料組成や増粘剤の配合により乳をゲル化するものであるから、やはり限定的な方法である。さらにまた、これらの方法は酸性化のために特定成分を添加することから、乳酸菌を発酵させて得られる発酵乳とは組成が異なって風味も異質なものとなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-64482号公報
【特許文献2】特開2018-64481号公報
【特許文献3】特許第4827100号公報
【特許文献4】特開2017-55751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、汎用性が高く、風味への影響が少ない、乳の酸性ゲルの新規な製造方法を提供することを課題とする。すなわち、発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを発酵工程を経ることなく製造する新規な方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、乳タンパク質を等電点付近に調整すること及び前記調整後に所定範囲の温度管理を行うことにより、ゲル状食品の硬度を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には以下の工程が含まれる。
<1>
発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルの製造方法であって、次の工程:
(1)調合乳を提供する工程
(2)上記の調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
(3)上記の調合乳のpHを4.0~5.2に調整する工程
(4)pH調整された調合乳の温度を10~35℃の条件下で静置する工程
を含む前記製造方法。
<2>
前記工程(1)の調合乳を提供する工程が、生乳、脱脂乳、還元乳、還元脱脂乳又はこれらの乳に副原料を添加したものを提供する工程である、<1>に記載の製造方法。
<3>
さらに以下の工程(5)を含む<1>又は<2>に記載の製造方法。
(5)前記(1)~(4)において、調合乳に乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか一つまたはこれらを組み合わせて添加する工程
<4>
前記工程(3)の調合乳のpHを4.0~5.2に調整する工程が、
有機酸を用いて調整する工程である、<1>~<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5>
発酵工程を含まない、<1>~<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6>
<1>~<5>のいずれかに記載の製造方法により製造された発酵乳および発酵乳様の酸性ゲル。
<7>
乳のゲル化方法であって、0~10℃の調合乳のpHを4.0~5.2に調整した後、調合乳の温度を制御する工程を含む、乳のゲル化方法。
<8>
温度を制御する工程が、10~35℃の範囲内で制御する工程である、<7>に記載の乳のゲル化方法。
【発明の効果】
【0007】
本方法によれば、乳を等電点付近に調整すること及び前記調整後に所定の温度範囲に管理することで、所望の硬度の発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを提供することができる。また、等電点の調整に乳酸を利用すれば、発酵乳本来の風味を損なうことがないというメリットもある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の製造方法は以下の工程(1)から工程(4)を含み、必要に応じて工程(5)を含む場合もある。以下、各工程について説明する。
工程(1):調合乳を提供する工程
本発明において工程(1)は、調合乳を提供する工程である。
本発明における調合乳としては、等電点でゲル化するタンパク質を含むものであればいずれでもよく、生乳、脱脂乳、全粉乳を溶解した還元乳、脱脂粉乳を溶解した還元脱脂乳、豆乳などが挙げられる。また、これらの調合乳に任意の副原料を添加してもよい。副原料は限定されず、適宜選択することができる。副原料は、主原料となる調合乳がゲル化できる範囲で添加することができる。副原料としては、例えば、香料、果物や野菜の実、果汁や野菜汁、果物や野菜のエキス、栄養成分を含む素材、乳素材、機能性素材、増粘剤、乳化剤、着色料、保存料等の食品添加物が挙げられる。さらに、生乳、脱脂乳は膜やエバポレーター等により濃縮してもよい。また、調合乳は公知の殺菌方法により殺菌して用いることが望ましい。そのうちでも例えば、保持式により63℃で30分間加熱殺菌するか、またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で殺菌することが好ましい。
乳素材は、上記以外に、全脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、乳清(ホエイ)、ホエイパウダー、脱塩ホエイ、脱塩ホエイパウダー、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI)、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、乳タンパク質濃縮物(MPC)、カゼイン、ナトリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネート、クリーム、発酵クリーム、コンパウンドクリーム、クリームパウダー、バター、発酵バター、バターミルク、バターミルクパウダーおよびバターオイル等が挙げられる。
本発明の発酵乳および発酵乳様の酸性ゲル中のタンパク質含量は、等電点付近でゲル化できる含量であれば特に制限はないが、1~20重量%が好ましい。さらに好ましくは1~15重量%、最も好ましくは3~10重量%である。
【0009】
工程(2):上記の調合乳の温度を0~10℃に制御する工程
本発明において、工程(2)は、前記工程(1)の調合乳の温度を0~10℃に調整する工程である。このうちでも、調合乳の温度を0~5℃に調整することが好ましく、0~3℃に調整することがより好ましい。なお、本発明において、あらかじめ0~10℃に調整された調合乳を準備する工程も本願発明の工程(1)及び工程(2)を含む工程とみなす。
【0010】
工程(3):上記の調合乳のpHを4.0~5.2に調整する工程
本発明において、工程(3)は、調合乳のpHを4.0~5.2に調整する工程である。pHを等電点付近にすることで疎水性相互作用が強くなり、タンパク質がゲル化するためである。等電点はタンパク質の種類によって変化するが、本願発明においては4.0~5.2であり、好ましくは4.2~5.0であり、さらに好ましくは4.4~4.8である。
工程(2)において調合乳の温度を0~10℃に調整することで、乳タンパク質の凝集速度を低下させ、工程(3)の等電点付近のpHにおいても直ぐに凝固せず、液状を保ち、pHが調整された調合乳の輸送および充填が可能となる。pHの調整は4.0~5.2に調整し、最終製品としての所望の風味に影響を与えない酸性の材料であればいずれでもよく、有機酸により調整することが好ましい。有機酸としては、例えば、乳酸、酢酸、酒石酸等が挙げられ、このうちでも乳酸が発酵乳あるいは発酵乳様の酸性ゲルとしての風味に影響を与えないことから好ましい。酸性材料の濃度、添加量、種類は限定されず、調合乳のpHを4.0~5.2に調整できるように適宜決定する。酸性材料として、上記有機酸のほかに、香味成分や果汁類、野菜汁類、フレーバーなどでもよい。
【0011】
工程(4):pH調整された調合乳の温度を10~35℃に制御して静置する工程
本発明において工程(4)は、工程(3)においてpH調整された調合乳の温度を10~35℃に調整する工程である。10℃未満では長時間静置してもゲル化しづらく、また、35℃より高いとゲル化するものの、なめらかさに欠けるからである。温度を高くすれば得られるゲルは硬くなり、また、低くすれば柔らかいゲルが得られる傾向にあることから、制御する温度を変えることで、所望の硬さのゲルに調整することができる。調合乳の温度を調整した後に静置することで、発酵乳様の酸性ゲルが製造できる。調合乳の静置時の温度によって、乳タンパク質の凝集速度を制御し、酸性ゲルの物性を調整する。また、調合乳の静置時の温度をなるべく低温に調整することで、製品を製造した後の保管も同時にでき、発酵庫等の温度管理が可能な広いスペースを削減することができる。
ここで、発酵乳および発酵乳様の酸性ゲルを容器に充填した状態で製品化する場合、容器への充填は静置する前に行うことが望ましい。静置工程の前として、例えば以下の3パターンの順序が挙げられる。
パターン1.
調合乳の提供工程(上記工程(1))→充填工程→温度制御工程(上記工程(2))→pH調整工程(上記工程(3))→静置(上記工程(4))
パターン2.
調合乳の提供工程(上記工程(1))→温度制御工程(上記工程(2))→充填工程→pH調整工程(上記工程(3))→静置(上記工程(4))
パターン3.
調合乳の提供工程(上記工程(1))→温度制御工程(上記工程(2))→pH調整工程(上記工程(3))→充填工程→静置(上記工程(4))
【0012】
工程(5):前記(1)~(4)において、調合乳に乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか一つまたはこれらを組み合わせて添加する工程
本発明において、工程(5)は、必要に応じて、調合乳に乳酸菌、ビフィズス菌及び酵母のうちいずれか一つまたはこれらを組み合わせて(1)~(4)のいずれかの工程の調合乳に添加する工程である。乳酸菌、ビフィズス菌、酵母の種類は限定されず、適宜選択できる。さらに、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母の濃度及び添加量は限定されず、所望の発酵乳又は発酵乳様の酸性ゲルとなるように適宜決定することができる。
本発明において発酵乳とは、生菌数と無脂乳固形分を一定以上含むものをいい、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」で定められた定義のもののほか、「無脂乳固形分8.0%以上及び乳酸菌数(または酵母数)が1mlあたり1000万以上含むものであれば本発明の発酵乳に含まれる。
なお、発酵乳として製造しない場合は、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母を添加しなくてもよい。本発明において発酵乳様の酸性ゲルとは、上記で定義される発酵乳について、規定される乳酸菌生菌数(または酵母数)を規定数含まないか、全く含まないものを言う。
このように本発明の製造方法では、発酵工程を経ることなく発酵乳又は発酵乳様の酸性ゲルを、乳酸菌(または酵母)による発酵工程を経たものと同様に製造することができる。
【0013】
本発明の製造方法は、上記の工程を有することを基本とするが、他にも食品の製造で行われる工程を上記の工程間に介在させたり、上記の工程の前や後に別途追加することができることはいうまでもない。
そのような工程としては殺菌工程、容器への充填工程、均質化工程、などが挙げられ、原料段階あるいは、製造された酸性ゲルの段階のいずれでも行うことができる。
【0014】
本発明の製造方法により得られた発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルは、このまま食品として利用することができる。特に、pHと温度制御によりゲルの硬度をコントロールできることから、所望の硬度のゲル状食品を自在に製造することができる。また、公知の発酵乳と同様にさらに加工して別の食品とすることもできる。食品としては、デザートや乳飲料などが挙げられる。
【0015】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0016】
[酸性ゲルの評価方法]
以下の実施例及び比較例で製造された酸性ゲルの評価方法について説明する。
(硬度の測定方法)
酸性ゲルの硬度の測定には、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製、TA-XT plus)を使用した。治具には直径16mmの円柱を使用し、治具を速度1mm/secで酸性ゲルに10mm貫入させ、酸性ゲルにかかる荷重をロードセルにより測定した。
【0017】
(官能評価)
酸性ゲルの官能評価は官能評価専門パネラーにより実施した。官能評価専門パネラーは4名で、品温10℃の酸性ゲルのなめらかさを食したときのなめらかさについて「〇:なめらかである」、「×:なめらかではない」の2段階で評価した。集計結果は、「〇」の人数が3名以上のときに「〇」、「〇」の人数が2名以下のときに「×」として下記表1に示した。
【0018】
[実施例1]各条件で酸性ゲルを作成し、硬度の測定及び官能評価を行った。
1.酸性ゲルの製造方法
以下の手順で酸性ゲルを製造した。
(i)均質圧15MPaで均質化された牛乳を熱湯に浸漬し、90℃で10分間殺菌し、調合乳を準備した。次に、殺菌した調合乳を氷冷水に浸漬し、10℃に冷却して調整した。調合乳の固形分及びカゼイン:ホエイの比は表1に示すとおりであった。
(ii)100g容量のカップ型容器に調合乳を50g計量し、3℃に冷却した。
(iii)乳酸(20wt%)を用いて、調合乳のpHを4.7に調整した。
(iv)pH調整した調合乳を10℃で20時間静置した。
2.評価結果
得られた酸性ゲルの10mm貫入時の硬度は11.7gfであった。得られた酸性ゲルのなめらかさの官能評価は「〇」であった。
【0019】
[実施例2]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)~(iii)実施例1と同じ。
(iv)pH調整した調合乳を30℃で20時間静置した。
2.評価結果
得られた酸性ゲルの10mm貫入時の硬度は37.5gfであり、実施例1よりも硬い酸性ゲルが得られた。したがって、pH調整後の温度制御により、酸性ゲルの硬度の制御が可能であることがわかった。得られた酸性ゲルのなめらかさの官能評価は「〇」であった。
【0020】
[実施例3]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)~(ii)実施例1と同じ。
(iii)pHの調製に酢酸(50wt%)を用いて調合乳のpHを4.7に調整した。
(iv)実施例1と同じ。
2.試験結果
得られた酸性ゲルの10mm貫入時の硬度は11.0gfであった。
また、実施例1とほとんど同じ硬度の酸性ゲルが得られ、有機酸の違いは酸性ゲルの硬度にほとんど影響しないことがわかった。得られた酸性ゲルのなめらかさの官能評価は「〇」であった。
【0021】
[比較例1]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)~(iii)実施例1と同じ。
(iv)pH調整した調合乳を5℃で20時間静置した。
2.評価結果
静置後も調合乳は液状であり、ゲル化しなかった。
【0022】
[比較例2]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)~(iii)実施例1と同じ。
(iv)pH調整した調合乳を40℃で20時間静置した。
2.評価結果
得られた酸性ゲルの10mm貫入時の硬度は78.7gfであった。得られた酸性ゲルのなめらかさの官能評価は「×」であった。
【0023】
[比較例3]
1.酸性ゲルの製造方法
(i)、(ii)実施例1と同じ。
(iii)乳酸(20wt%)を用いて、pHを5.5に調整した。
(iv)pH調整した調合乳を30℃で20時間静置した。
2.評価結果
静置後も調合乳は液状であり、ゲル化しなかった。
【0024】
【表1】
【0025】
[考察]
上記の各酸性ゲルの製造条件及び酸性ゲルの評価結果を表1にまとめて示す。
実施例1及び実施例2の対比より、pH調整後の温度制御により硬度を制御できること、制御温度を高くする方が高い硬度の酸性ゲルが得られる傾向になることがわかった。
さらに、比較例1,2より、5℃ではゲル化せず、また、40℃ではなめらかさに欠けることから、本発明の工程(4)の温度範囲としては5℃より大きく40℃未満であり、10℃~35℃が好ましいことがわかった。
また、実施例3より工程(3)のpHを調整するための有機酸の種類を変えても同じ効果が得られることもわかった。
さらにまた、比較例3より調合乳のpHを5.5とした場合はゲル化できないことから、本発明の工程(3)で調整するpHの範囲は、等電点付近である必要があり、4.0~5.2が望ましいことがわかった。
また、工程(2)は乳タンパク質の凝集速度を低下させ、等電点付近のpHにおいても直ぐに凝固しないようにする観点から、10℃以下が望ましいこともわかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の製造方法によれば、乳を等電点付近に調整すること及び前記調整後に所定の温度範囲に管理することで、所望の硬度の発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを提供することができる。また、等電点の調整に乳酸を利用すれば、発酵乳本来の風味を損なわずに、発酵乳及び発酵乳様の酸性ゲルを提供できる。