(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014629
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20230124BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C08L83/04
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118686
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】水梨 友之
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CP03X
4J002CP043
4J002CP14W
4J002DD016
4J002FD017
4J002GQ05
4M109AA01
4M109EA00
4M109EB08
4M109EB12
4M109EC04
4M109EC05
4M109EC07
(57)【要約】
【課題】周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくく、優れた接着性及び耐熱衝撃性を有する硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物、及び半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基を有し、前記ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率が5モル%以上50モル%以下である直鎖状のオルガノポリシロキサン、(B)分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、(C)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアリール基を有し、前記ケイ素原子に結合したアリール基の含有率が5モル%以上50モル%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(D)白金族金属系触媒を含むものである硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であって、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基を有し、かつ(A)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(A)成分中の前記ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率が5モル%以上50モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000~100,000である直鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)SiO4/2単位及びR1SiO3/2単位の少なくともいずれか一方を含み、前記SiO4/2単位と前記R1SiO3/2単位の和が(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して30mol%以上であり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(上記式中、R1は独立して水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基である。)
(C)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアリール基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上であり、前記重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であり、(C)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(C)成分中の前記ケイ素原子に結合したアリール基の含有率が5モル%以上50モル%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分および(B)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対して、(C)成分のヒドロシリル基が0.1~4.0モルとなる量、及び
(D)白金族金属系触媒、
を含むものであることを特徴とする硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、10~60mol%のSiO4/2単位、0~70mol%のR1SiO3/2単位、0~50mol%の(R1)2SiO2/2単位及び20~60mol%の(R1)3SiO1/2単位からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000~30,000であり、ケイ素原子に結合した水酸基の量が0.001~1.0mol/100gであり、炭素数が1~10のケイ素原子に結合したアルコキシ基の量が1.0mol/100g以下であり、レジン構造のオルガノポリシロキサン
(上記式中、R1は前記と同じである。)
であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分および(B)成分に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物が、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の無機充填剤を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の硬化物及び半導体素子を備えるものであることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物および前記組成物の硬化物を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂組成物は、低弾性かつ低応力であり、耐熱性、電気絶縁性等の信頼性に優れることから電子部品や半導体用途などに広く用いられている。
【0003】
しかしながら、シリコーン樹脂組成物を電子部品や半導体用途などに用いる場合、シリコーン樹脂組成物中に含有される低分子シロキサンが問題となることがある。このような問題としては、例えば、低分子シロキサンが揮発し、周囲に付着することによる曇りの発生、接点障害、接着阻害、表面の疎水化などが挙げられる。
【0004】
上記問題を解決する方法として、例えば特許文献1では、付加硬化性シリコーン樹脂組成物に含有される低分子シロキサン化合物を樹脂組成物全体の一定質量%以下とすることで、加熱硬化時の周囲への汚染を抑えることが可能であると記載されている。
【0005】
また特許文献2ではアルケニル基含有のオルガノポリシロキサンに含まれる低分子シロキサン化合物を限定した例や、特許文献3では金型の汚染を減らす目的でオルガノハイドロジェンポリシロキサンの揮発成分量を限定した例が報告されている。
【0006】
また特許文献4ではオルガノハイドロジェンポリシロキサンの高分子量化および低分子シロキサン量を限定した例も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-255227号公報
【特許文献2】特開2008-19385号公報
【特許文献3】国際公開第2019/240124号
【特許文献4】特許第6702224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では、半導体デバイス、電子部材の小型化に伴い、部材がより集積化・高密度化する傾向にあり、その結果、電子部材用途に使用されるシリコーン樹脂組成物には、低分子シロキサン含有量が少ないことに加え、周辺部材への干渉を防ぐ目的で、シリコーン樹脂組成物を基材(基板)に塗布した際に、シリコーン樹脂組成物からのブリードアウトが少ないことが求められている。また半導体の基板にはAuメッキされたリードフレームおよびレジストを塗布した有機基板が多く使用されているが、そのような基板上に塗布されたシリコーン樹脂はブリードアウトを引き起こしやすく、接着性が悪化することが知られている。
【0009】
上記特許文献1、2および3には低分子シロキサンの除去について言及されているが、シリコーン樹脂組成物からの基板へのブリードアウトについては言及されず、近年、電子材料用途の部材に求められる要求を満たすのに十分ではない。また特許文献4にはオルガノハイドロジェンポリシロキサンの高分子量化および低分子シロキサンの限定がなされているが、組成物から揮発する低分子シロキサン成分について記載されたものであり、組成物から直接基板に染み出すブリードの対策としては不十分であった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくく、優れた接着性及び耐熱衝撃性を有する硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物、及び前記組成物の硬化物を備える半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であって、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基を有し、かつ(A)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(A)成分中の前記ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率が5モル%以上50モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000~100,000である直鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)SiO4/2単位及びR1SiO3/2単位の少なくともいずれか一方を含み、前記SiO4/2単位と前記R1SiO3/2単位の和が(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して30mol%以上であり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(上記式中、R1は独立して水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基である。)
(C)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアリール基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上であり、前記重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であり、(C)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(C)成分中の前記ケイ素原子に結合したアリール基の含有率が5モル%以上50モル%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分および(B)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対して、(C)成分のヒドロシリル基が0.1~4.0モルとなる量、及び
(D)白金族金属系触媒、
を含むものである硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を提供する。
【0012】
このような硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であれば、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくく、優れた接着性及び耐熱衝撃性を有するものとなる。
【0013】
また、本発明では、前記(B)成分が、10~60mol%のSiO4/2単位、0~70mol%のR1SiO3/2単位、0~50mol%の(R1)2SiO2/2単位及び20~60mol%の(R1)3SiO1/2単位からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000~30,000であり、ケイ素原子に結合した水酸基の量が0.001~1.0mol/100gであり、炭素数が1~10のケイ素原子に結合したアルコキシ基の量が1.0mol/100g以下であり、レジン構造のオルガノポリシロキサン
(上記式中、R1は前記と同じである。)
であることが好ましい。
【0014】
このような硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であれば、本発明の効果をより高めることができる。
【0015】
また、本発明では、前記(A)成分および(B)成分に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であることが好ましい。
【0016】
このような硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であれば、シリコーン樹脂のブリードを悪化させる恐れがない。
【0017】
また、本発明では、前記硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物が、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の無機充填剤を含むものであることが好ましい。
【0018】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、このような無機充填剤を含むことができる。
【0019】
また、本発明では、上記に記載の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の硬化物及び半導体素子を備えるものである半導体装置を提供する。
【0020】
このような半導体装置であれば、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくく、信頼性に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であれば、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくく、優れた接着性及び耐熱衝撃性を有するものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述のように、周辺部材への汚染が少なく、ブリードアウトが起こりにくく、優れた接着性及び耐熱衝撃性を有する硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の開発が求められていた。
【0023】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の含有率でケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基を有する直鎖状のオルガノポリシロキサンと、特定の含有率でケイ素原子に結合したアリール基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることで、低ブリード性および接着性に優れた硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を成すに至った。
【0024】
即ち、本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であって、
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基を有し、かつ(A)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(A)成分中の前記ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率が5モル%以上50モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000~100,000である直鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)SiO4/2単位及びR1SiO3/2単位の少なくともいずれか一方を含み、前記SiO4/2単位と前記R1SiO3/2単位の和が(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して30mol%以上であり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(上記式中、R1は独立して水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基である。)
(C)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアリール基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上であり、前記重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であり、(C)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(C)成分中の前記ケイ素原子に結合したアリール基の含有率が5モル%以上50モル%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分および(B)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モルに対して、(C)成分のヒドロシリル基が0.1~4.0モルとなる量、及び
(D)白金族金属系触媒、
を含むものである硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物である。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
[硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、以下の(A)~(D)成分を含むものであり、さらにこれらの他にもその他の成分を含むことができる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0027】
[(A)直鎖状のオルガノポリシロキサン]
(A)成分である直鎖状のオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基を有し、かつ(A)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(A)成分中の前記ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率が5モル%以上50モル%以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000~100,000である直鎖状のオルガノポリシロキサンである。
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物に(A)成分を添加することにより、用途に合わせて最適な組成物粘度及び硬化物硬度に調整することができる。
【0028】
芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられ、フェニル基が好ましい。前記芳香族炭化水素基は、1分子中に1個以上有することが必要であり、2~100個が好ましい。
アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられビニル基が好ましい。前記アルケニル基は、1分子中に2個以上有することが必要であり、2~6個有することが好ましい。
【0029】
前記芳香族炭化水素基及び、前記アルケニル基は、ポリシロキサン鎖の末端、途中のいずれか又はその両方に存在していてもよい。前記アルケニル基はポリシロキサン鎖の末端に存在することが好ましい。
【0030】
上記以外のケイ素原子に結合した有機基としては特に限定されないが、メチル基が好ましい。
【0031】
前記(A)成分に含有される芳香族炭化水素基の含有率、つまり(A)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(A)成分中の前記ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率が5モル%未満であると、シリコーン樹脂のブリードを悪化させる恐れがあり、50モル%より大きいと、硬化時の反応性を落とす恐れがある。
【0032】
前記直鎖状のオルガノポリシロキサンはJIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定した25℃での粘度が100~100,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは500~50,000mPa・s、さらに好ましくは1,000~30,000mPa・sである。
粘度が100mPa・s以上であれば、組成物の硬化物が脆くなる恐れがなく、100,000mPa・s以下であれば、作業性が悪くなる恐れがない。
【0033】
さらに前記(A)成分の重量平均分子量(Mw)は1,000~100,000であり、好ましくは1,100~50,000である。分子量が1,000未満であると、組成物の硬化物が脆くなる恐れがあり、分子量が100,000より大きいと組成物の粘度が高くなり流動しなくなる恐れがある。
また、(A)成分に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であることが好ましい。重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10%質量以下であれば、シリコーン樹脂のブリードを悪化させる恐れがない。
【0034】
なお、本発明における重量平均分子量(Mw)とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指すこととする。
[測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5質量%のTHF溶液)
【0035】
前記直鎖状のオルガノポリシロキサンとして具体的には、以下のものを例示できるが、これらだけに限定されるものではない。
【化1】
【0036】
【化2】
(式中、x、y、zはそれぞれ0以上の整数であり、かつx+y≧1を満たす数である。個々の繰り返し単位の順序は任意であってよい。)
【0037】
前記直鎖状のオルガノポリシロキサンの添加量としては、(A)成分及び後述の(B)成分の合計質量に対して1~90質量%が好ましく、10~85質量%がより好ましい。
【0038】
[(B)分岐鎖状のオルガノポリシロキサン]
(B)成分である分岐鎖状のオルガノポリシロキサンは、SiO4/2単位及びR1SiO3/2単位の少なくともいずれか一方を含み、前記SiO4/2単位と前記R1SiO3/2単位の和が(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して30mol%以上であり、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであり、前記(A)成分と併せて本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の主剤となるものである。
(上記式中、R1は独立して水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10の置換もしくは非置換のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、または炭素数6~10のアリール基である。)
【0039】
前記(B)成分は、SiO4/2単位(Q単位)及びR1SiO3/2単位(T単位)の少なくともいずれか一方を含み、前記Q単位と前記T単位の和が(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して30mol%以上、好ましくは30~90mol%であることを特徴とする。前記Q単位と前記T単位の和が(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して30mol%未満であると、硬化物の樹脂強度が低下するため好ましくない。
【0040】
なお、(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して、前記Q単位は、好ましくは10~60mol%、より好ましくは20~50mol%の範囲であり、前記T単位は、好ましくは0~70mol%、より好ましくは10~65mol%である。
【0041】
ここで、上記式中、R1は独立して水酸基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5の置換もしくは非置換のアルキル基、または炭素数6~10、好ましくは炭素数6~8のアリール基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基等の低級アルコキシ基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子やシアノ基等で置換した基、例えばクロロメチル基、シアノエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられる。置換基としては上記の他、エポキシ基、グリシドキシ基、(メタ)アクリロキシ基などが挙げられる。中でも、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0042】
前記(B)成分は、D単位として(R1)2SiO2/2単位を(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して0~50mol%有してもよく、好ましくは0~20mol%有してもよい。
【0043】
さらに、前記(B)成分は、(R1)3SiO1/2単位(M単位)を(B)成分中の全シロキサン単位の数に対して20~60mol%有することが好ましく、20~55mol%有することがより好ましい。
【0044】
さらに、前記(B)成分の分岐鎖状のオルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個、好ましくは2~6個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有し、(B)成分に含まれるアルケニル基の量は0.01~0.5mol/100gが好ましく、より好ましくは0.05~0.3mol/100g、更に好ましくは0.10~0.25mol/100gである。
【0045】
ケイ素原子に結合したアルケニル基の量が0.01mol/100g以上であれば、組成物が固まるのに十分な架橋点を有し、0.5mol/100g以下であれば、架橋密度が上がりすぎて靱性を失うようなこともない。
【0046】
さらに(B)成分はケイ素原子に結合した水酸基の量が0.001~1.0mol/100gであることが好ましく、より好ましくは0.005~0.8mol/100g、更に好ましくは0.008~0.6mol/100gである。
【0047】
ケイ素原子に結合した水酸基の量が0.001mol/100g以上であれば、接着性が低下することがない。一方、1.0mol/100g以下であれば、硬化物の表面タック性が低下するため好ましい。
【0048】
さらに(B)成分は炭素数1~10、好ましくは1~5のケイ素原子に結合したアルコキシ基の量が1.0mol/100g以下であることが好ましく、より好ましくは0.8mol/100g以下、更に好ましくは0.5mol/100g以下である。
ケイ素原子に結合したアルコキシ基の量が1.0mol/100g以下であれば、硬化時に副生成物のアルコールガスはほとんど発生せず、硬化物にボイドが残る恐れもない。
【0049】
なお、本発明におけるケイ素原子に結合した水酸基量、アルコキシ基量は1H-NMR及び、29Si-NMRによって測定された値を指すこととする。
【0050】
さらに前記(B)成分の重量平均分子量(Mw)が1,000~30,000が好ましく、より好ましくは1,100~20,000である。重量平均分子量が1,000以上であれば、組成物の硬化物が脆くなる恐れがなく、重量平均分子量が30,000以下であれば組成物の粘度が高くなり流動しなくなる恐れがない。
また、(B)成分に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であることが好ましい。重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であれば、シリコーン樹脂のブリードを悪化させる恐れがない。
【0051】
(B)成分に含有されている重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率は、GPC測定により重量平均分子量が500以下となるポリシロキサンの総量を(B)成分の質量で除して求めることができる。
【0052】
これらの中でも、前記(B)成分が、10~60mol%のSiO4/2単位、0~70mol%のR1SiO3/2単位、0~50mol%の(R1)2SiO2/2単位及び20~60mol%の(R1)3SiO1/2単位からなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が1,000~30,000であり、ケイ素原子に結合した水酸基の量が0.001~1.0mol/100gであり、炭素数が1~10のケイ素原子に結合したアルコキシ基の量が1.0mol/100g以下であり、レジン構造のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。(上記式中、R1は前記と同じである。)
【0053】
また、上述したように、(A)、(B)成分に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率がそれぞれ独立して10質量%以下であることが好ましいが、特に(A)成分及び(B)成分に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であることが好ましい。(A)成分及び(B)成分に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であれば、シリコーン樹脂のブリードをより確実に防止できる。
【0054】
SiO4/2単位(Q単位)を得るための材料としては、例えば、ケイ酸ソーダ、テトラアルコキシシラン、またはその縮合反応物等を例示できるが、これらに限定されない。
【0055】
R
1SiO
3/2単位(T単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるオルガノトリクロロシラン、オルガノトリアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物、又はこれらの縮合反応物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化3】
(上記式中、Meはメチル基を示す。)
【0056】
R
1
2SiO
2/2単位(D単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるジオルガノジクロロシラン、ジオルガノジアルコキシシラン等の有機ケイ素化合物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化4】
(上記式中、Meはメチル基を示す。)
【0057】
また、R
1
2SiO
2/2単位(D単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるジオルガノジクロロポリシロキサン、ジオルガノジシラノールポリシロキサン等の有機ケイ素化合物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化5】
(上記式中、Meはメチル基を示す。nは5~80の整数、mは5~80の整数、lは5~80の整数であり、ただしn+m≦78、n+l≦78である。)
【0058】
R
1
3SiO
1/2単位(M単位)を得るための材料としては、例えば、下記構造式で表されるトリオルガノクロロシラン、トリオルガノアルコキシシラン、ヘキサオルガノジシロキサン等の有機ケイ素化合物等を例示できるが、これらに限定されない。
【化6】
(上記式中、Meはメチル基を示す)
【0059】
[(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(C)成分は、1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)、及び1分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアリール基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が2,000以上であり、前記重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10質量%以下であり、(C)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(C)成分中の前記ケイ素原子に結合したアリール基の含有率が5モル%以上50モル%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0060】
前記(C)成分は例えば下記平均組成式(I)で示すことができる。
R2
hHiSiO(4-h-i)/2・・・(I)
【0061】
前記平均組成式(I)中、R2は同一または異種の非置換もしくは置換の炭素原子数が1~10の1価炭化水素基であり、hおよびiは、好ましくは0.7≦h≦2.1、0.001≦i≦1.0、かつ0.8≦h+i≦3.0、より好ましくは1.0≦h≦2.0、0.01≦i≦1.0、かつ1.5≦h+i≦2.5を満足する正数である。
【0062】
上記R2としては、例えば、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の飽和脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の飽和環式炭化水素基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などの芳香族炭化水素基、これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化炭化水素基などが挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~5の飽和脂肪族炭化水素基、並びにフェニル基が好ましい。
【0063】
なお、前記R2としては、1分子中に1個以上のケイ素原子結合アリール基を有することが必要であり、1~100個であることが好ましい。(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)を2個以上(通常、2~200個)、好ましくは3個以上(通常、3~100個)含有する。(C)成分は、(A)成分および(B)成分と反応し、架橋剤として作用する。
【0064】
(C)成分の分子構造は特に制限されず、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網目状(レジン状)等の、いずれの分子構造でも(C)成分として使用することができる。(C)成分が線状構造を有する場合、ヒドロシリル基は、分子鎖末端および分子鎖側鎖のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよい。また、1分子中のケイ素原子の数(または重合度)が、通常、2~200個、好ましくは3~100個程度であり、室温(25℃)において液状又は固体状であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが使用できる。
【0065】
さらに前記(C)成分の重量平均分子量(Mw)が2,000以上であり、好ましくは2,500以上である。重量平均分子量が2,000未満であると、組成物のブリードを悪化させる恐れがある。分子量の上限に特に制限はないが、重量平均分子量が10,000以下であれば組成物の粘度が高くなり流動しなくなる恐れがない。
【0066】
前記(C)成分に含有されるケイ素原子に結合したアリール基の含有率、つまり(C)成分中のケイ素原子に結合した有機基に対する(C)成分中の前記ケイ素原子に結合したアリール基の含有率が5モル%以上50モル%以下である。前記(C)成分に含有されるケイ素原子に結合したアリール基の含有率が5モル%未満であると、シリコーン樹脂のブリードを悪化させる恐れがあり、50モル%より大きいと、耐熱衝撃性を悪化させる恐れがある。
【0067】
また組成物のブリードを悪化させる主要因として、前記(C)成分中に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体が挙げられる。そこで前記(C)成分中に含有される重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率は10%以下とする。重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率が10%より大きいと、シリコーン樹脂のブリードを悪化させる恐れがある。
【0068】
低分子量体の含有量を抑える方法としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを減圧条件下、150℃以上で加熱する方法や、分子蒸留、薄膜蒸留および溶剤洗浄を行う方法が挙げられる。
【0069】
上記平均組成式(I)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、下記構造で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができるが、これらだけに限定されるものではない。なお、以下において、開放された結合を有する繰り返し単位は、T単位又はQ単位を表す。
【化7】
【0070】
【化8】
(p、q、r、s、t、uはそれぞれ0以上の整数であり、ヒドロシリル基が、分子鎖末端に1つのみ存在する場合、qは1以上の整数であり、ヒドロシリル基が、分子鎖末端に存在しない場合、qは2以上の整数であり、かつp+q+r+s+t+u≧1を満たす数である。)
【0071】
(C)成分の添加量は、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物中の(A)成分および(B)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計1モル(又は個)に対して、(C)成分中のヒドロシリル基の量が0.1~4.0モル(又は個)となる量であり、好ましくは0.5~3.0モル(又は個)、より好ましくは0.8~2.0モル(又は個)となる量である。
【0072】
(C)成分の添加量が、(C)成分中のヒドロシリル基の量が0.1モルより少なくなる量であると、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の硬化反応が進行せず、シリコーン硬化物を得ることが困難である。また得られる硬化物も架橋密度が低くなりすぎ、機械強度が不足し、耐熱性が悪影響を受ける。一方、添加量が上記ヒドロシリル基の量が4.0モルより多くなる量であると、未反応のヒドロシリル基が硬化物中に多数残存するために、物性の経時変化の発現や硬化物の耐熱性の低下などを引き起こす。更に、硬化物中に脱水素反応による発泡が生じる原因となる。
【0073】
[(D)白金族金属系触媒]
(D)成分の白金族金属系触媒は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の付加硬化反応を生じさせるため配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがある。前記触媒としてはヒドロシリル化反応を促進するものとして従来公知であるいずれのものも使用することができる。コスト等を考慮して、白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、H2PtCl6・pH2O,K2PtCl6,KHPtCl6・pH2O,K2PtCl4,K2PtCl4・pH2O,PtO2・pH2O,PtCl4・pH2O,PtCl2,H2PtCl4・pH2O(ここで、pは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができる。これらの触媒は1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0074】
(D)成分の配合量は、硬化のための有効量でよく、通常、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量に対して白金族金属として質量換算で好ましくは0.1~500ppm、特に好ましくは0.5~100ppmの範囲である。
【0075】
[その他の成分]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物には、上記の(A)~(D)成分以外に、必要に応じて、公知の接着付与剤や硬化抑制剤、顔料、無機充填剤などの添加剤を配合することができる。以下、各成分について説明する。
【0076】
(接着付与剤)
接着付与剤としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-シアノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、及びそれらのオリゴマー等が挙げられる。なお、これらの接着付与剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0077】
また、接着付与剤は、上記の(A)、(B)成分の合計質量に対し、好ましくは0~10質量%、特に好ましくは0~5質量%となる量で配合するのが好ましい。
【0078】
(硬化抑制剤)
硬化抑制剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン変性物及びシロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物等が挙げられる。前記硬化抑制剤は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0079】
硬化抑制剤は(A)成分及び(B)成分の合計100質量部当り通常0.001~1.0質量部が好ましく、より好ましくは0.005~0.5質量部添加される。
【0080】
(顔料)
顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウムなどの無機白色顔料が挙げられ、これらを、上記の(A)~(D)成分の合計100質量部当たり好ましくは600質量部以下(例えば0~600質量部、より好ましくは1~600質量部、さらに好ましくは10~400質量部)の量で適宜配合することができる。
【0081】
(無機充填剤)
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の無機充填剤を含むことが好ましい。無機充填剤としては、これらの他にも、例えば、グラスファイバー、ヒュームドシリカ等の補強性無機充填剤、ケイ酸カルシウム、酸化第二鉄、セリウム脂肪酸塩、バリウム脂肪酸塩、セリウムアルコキシド、バリウムアルコキシド等の非補強性無機充填剤、酸化鉄(FeO2)、四酸化三鉄(Fe3O4)、酸化鉛(PbO2)、酸化すず(SnO2)、酸化セリウム(Ce2O3、CeO2)、酸化カルシウム(CaO)、四酸化三マンガン(Mn3O4)、酸化バリウム(BaO)などのナノフィラーが挙げられ、これらを、上記の(A)~(D)成分の合計100質量部当たり好ましくは600質量部以下(例えば0~600質量部、より好ましくは1~600質量部、さらに好ましくは10~400質量部)の量で適宜配合することができる。なお、一部の無機充填剤は顔料として用いることもできる。
【0082】
<硬化方法>
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、用途に応じて所定の基材に塗布した後、硬化させることができる。硬化条件は、常温(25℃)でも十分に硬化するが、必要に応じて加熱して硬化してもよい。加熱する場合の温度は、例えば、60~200℃とすることができる。本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、透明性や耐熱性に優れた硬化物を与える。
【0083】
また、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を加熱硬化して、JIS K 7142:2014 A法によって測定した589nmにおける23℃での屈折率が1.42~1.55の範囲にあるような硬化物を与えるものであることが好ましい。
【0084】
このような本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であれば、低ブリード性を有し、接着性に優れた硬化物を与えるものとなる。
【0085】
<半導体装置>
また、本発明では、上述の本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の硬化物及び半導体素子を備える半導体装置を提供する。この時、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の硬化物で半導体素子が封止された半導体装置とすることができる。
【0086】
上述のように、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、透明性や耐熱性に優れた硬化物を与えるため、発光半導体装置のレンズ用素材、保護コート剤、モールド剤等に好適であり、特に青色LEDや白色LED、紫外LED等のLED素子封止用として有用なものである。
【0087】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物で半導体素子を封止する場合は、例えば熱可塑性樹脂からなる有機基板に搭載された素子上に本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を塗布し、素子上で組成物を硬化させることにより、素子を硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物の硬化物で封止することができる。
【0088】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、その優れた耐熱性、低ブリード性、接着性の特性から、ディスプレイ材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等に最適な素材である。
【実施例0089】
以下、実施例、及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、部は質量部を示し、Meはメチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を示す。重量平均分子量(Mw)は、上記条件にて求めた。
【0090】
[実施例1]
(A)成分として、下記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを30部、
【化9】
(式中、p=10、q=40(平均値)である。ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率18.9モル%、重量平均分子量5,160、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率2.5質量%。)
(B)成分として、SiO
4/2単位50mol%、ViPhMeSiO
1/2単位25mol%、Me
3SiO
1/2単位25mol%からなる分岐鎖状のフェニルメチルポリシロキサン(重量平均分子量5,500、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率3.2質量%、ケイ素原子に結合した水酸基量0.01mol/100g、ケイ素原子に結合したメトキシ基量0.04mol/100g、ケイ素原子に結合したイソプロポキシ基量0.01mol/100g)を30部、
(C)成分として、(A)成分および(B)成分中のケイ素原子に結合したビニル基の合計個数に対する(C)成分中のヒドロシリル基(ケイ素原子に結合した水素原子)の個数の比(以下、SiH/SiVi比と表す場合がある。)が1.0となる量の、下記式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
【化10】
(式中、p=17、q=38(平均値)である。ケイ素原子に結合したアリール基の含有率29.3モル%、重量平均分子量5,850、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率5.2質量%。)
(D)成分として、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.01部
を加え、よく撹拌して、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例2]
(A)成分として、下記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを60部、
【化11】
(式中、p=5、q=90(平均値)である。ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率5.1モル%、重量平均分子量8,200、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率1.8質量%。)
(B)成分として、SiO
4/2単位50mol%、ViMe
2SiO
1/2単位20mol%、Me
3SiO
1/2単位30mol%からなる分岐鎖状のメチルポリシロキサン(重量平均分子量6,500、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率4.3質量%、ケイ素原子に結合した水酸基量0.03mol/100g、ケイ素原子に結合したメトキシ基量0.01mol/100g)を30部、
(C)成分として、SiH/SiVi比が1.0となる量の、下記式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
【化12】
(式中、p=3、q=20、r=18(平均値)である。ケイ素原子に結合したアリール基の含有率6.8モル%、分子量3,300、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率質量3.2%。)
(D)成分として、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.01部
を加え、よく撹拌して、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例3]
(A)成分として、下記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを30部、
【化13】
(式中、p=15、q=15(平均値)である。ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率45.5モル%、重量平均分子量4,300、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率9.3質量%)
(B)成分として、SiO
4/2単位50mol%、ViPhMeSiO
1/2単位25mol%、PhMe
2SiO
1/2単位25mol%からなる分岐鎖状のフェニルメチルポリシロキサン(重量平均分子量5,500、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率7.1質量%、ケイ素原子に結合した水酸基量0.05mol/100g、ケイ素原子に結合したメトキシ基量0.03mol/100g、ケイ素原子に結合したイソプロポキシ基量0.02mol/100g)を30部、
(C)成分として、SiH/SiVi比が1.0となる量の、下記式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
【化14】
(式中、p=14、q=14(平均値)である。ケイ素原子に結合したアリール基の含有率45.2%、分子量3,640、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率9.2質量%。)
(D)成分として塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金元素含有率:1質量%)0.01部
を加え、よく撹拌して、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を調製した。この組成物を150℃にて4時間加熱成形して硬化物(120mm×110mm×1mm)を形成し、下記物性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0093】
[比較例1]
実施例1で用いた(C)成分の代わりに、SiH/SiVi比が1.0となる量の、下記式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化15】
(式中、p=17、q=38(平均値)である。ケイ素原子に結合したアリール基の含有率29.3モル%、重量平均分子量5,850、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率13.1質量%。)
を用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を形成し、物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0094】
[比較例2]
実施例2で用いた(C)成分の代わりに、SiH/SiVi比が1.0となる量の、下記式(4)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化16】
(式中、q=38(平均値)である。ケイ素原子に結合したアリール基の含有率0モル%、重量平均分子量2,280、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率6.1質量%。)
を用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を形成し、物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0095】
[比較例3]
実施例3で用いた(A)成分の代わりに、下記式(5)で示されるオルガノポリシロキサン、
【化17】
(式中、p=7、q=7(平均値)である。ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率65.6モル%、重量平均分子量2,400、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率13.2質量%。)
(C)成分として、SiH/SiVi比が1.0となる量の、下記式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化18】
(式中、p=14、q=10(平均値)である。ケイ素原子に結合したアリール基の含有率51.8モル%、重量平均分子量3,630、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率4.8質量%。)
を用いたこと以外は、実施例3と同様にして硬化物を形成し、物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0096】
[比較例4]
実施例1で用いた(C)成分の代わりに、SiH/SiVi比が1.0となる量の、下記式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化19】
(式中、p=3、q=10(平均値)である。ケイ素原子に結合したアリール基の含有率18.8モル%、重量平均分子量1,800、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率8.1質量%。)
を用いたこと以外は、実施例1と同様にして硬化物を形成し、物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0097】
[比較例5]
実施例2で用いた(A)成分の代わりに、下記式(6)で示されるオルガノポリシロキサン
【化20】
(式中、q=100(平均値)である。ケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率0モル%、重量平均分子量8,200、重量平均分子量が500以下である低分子量体の含有率7.2質量%。)
を用いたこと以外は、実施例2と同様にして硬化物を形成し、物性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0098】
実施例及び比較例で調製した組成物、及びその硬化物の物性は下記の方法で評価した。
(1)外観
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物(厚さ1mm)の色調と透明性を目視にて確認した。
【0099】
(2)性状
硬化前の各組成物の流動性を確認した。100mlのガラス瓶に50gの組成物を加え、ガラスビンを横に倒して25℃で10分間静置した。その間に樹脂が流れ出せば液状であると判断した。
【0100】
(3)粘度
25℃における硬化前の各組成物の粘度をJIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定した。
【0101】
(4)屈折率
硬化前の各組成物の屈折率はATAGO製デジタル屈折計RX-9000αを用いて波長589nmの光の屈折率を25℃で測定した。
【0102】
(5)硬さ(タイプA)
各組成物を150℃で4時間硬化して得られた硬化物の硬さを、JIS K 6249:2003に準拠して、デュロメータD硬度計を用いて測定した。
【0103】
(6)ブリード性
各組成物0.1gを、面積180mm2の金メッキ板に塗布して、25℃における1時間後のブリードの有無(組成物の塗布領域からその周辺への染み出しの有無)を確認した。
(判定基準)
○:金メッキ板上に組成物からブリードが観察されなかった
×:金メッキ板上に組成物からブリードが観察された
【0104】
(7)接着性
各組成物0.25gを、面積180mm2の金メッキ板に底面積が45mm2となるように成形し、150℃で4時間硬化させた後、ミクロスパチュラを用いて硬化物を破壊し、金メッキ板から剥ぎ取る際に、凝集破壊の部分と剥離部分との割合を求めて、その接着性を判定した。
(判定基準)
○:接着性が良好である(凝集破壊の割合60%以上)
×:接着性が不良である(凝集破壊の割合60%未満)
【0105】
(8)耐熱衝撃試験
各組成物0.25gを、面積180mm2の金メッキ板に底面積が45mm2となるように成形し、150℃で4時間硬化させた後、-40℃~120℃の熱衝撃試験を1,000サイクル行った。試験後、ミクロスパチュラを用いて硬化物を破壊し、金メッキ板から剥ぎ取る際に、凝集破壊の部分と剥離部分との割合を求めて、その接着性を判定した。
(判定基準)
○:接着性が良好である(凝集破壊の割合60%以上)
×:接着性が不良である(凝集破壊の割合60%未満)
【0106】
【0107】
【0108】
表1に示されるように、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を使用した実施例1~3では、概ね透明で、十分な硬さ、接着性および耐熱衝撃性を有する硬化物を与え、良好な屈折率を有し、金メッキ板上でブリードのない組成物が得られた。
【0109】
これに対し、(C)成分として低分子量体の含有率の多い比較例1では、ブリードが発生した。更に、(C)成分としてケイ素原子に結合したアリール基を持たないオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用した比較例2でも、ブリードが発生した。また、(A)成分としてケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基の含有率が50モル%を超え、(C)成分としてケイ素原子に結合したアリール基の含有率が50モル%を超えるオルガノポリシロキサンを使用した比較例3では、耐熱衝撃性が低下した。また、(C)成分として重量平均分子量が2000を下回る比較例4では、ブリードが発生した。また(A)成分がケイ素原子に結合した芳香族炭化水素基を有さない比較例5では、ブリードが発生した。
【0110】
以上のように、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物であれば、流動性があり、ブリードがなく、優れた接着性及び耐熱衝撃性を発揮する硬化物を与えることができる。
【0111】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。