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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146291
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】自動分析装置、及び液面検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G01N35/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053412
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】越智 学
(72)【発明者】
【氏名】川原 鉄士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋行
(72)【発明者】
【氏名】向山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】船津 輝宣
(72)【発明者】
【氏名】吉川 惠子
(72)【発明者】
【氏名】為實 秀人
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB09
2G058CB15
2G058GB03
2G058GB05
2G058GC02
2G058GC05
(57)【要約】
【課題】本発明は、検体の彩度や透過度に因らず検体の液面位置を検出することができる自動分析装置と液面検出方法を提供する。
【解決手段】本発明による自動分析装置は、検体4が入った検体容器3を収納した検体ラック2を移送するラック搬送路141と、ラック搬送路141の側方に設けられたカメラ5と、ラック搬送路141とカメラ5を制御する制御部10を備える。制御部10は、ラック搬送路141が移送している検体ラック2の移送を停止させ、移送が停止中の検体ラック2に収納されている検体容器3をカメラ5で複数回撮像して、検体容器3の撮像画像を複数取得し、複数の撮像画像の差分画像を作成し、差分画像の中で時間変化がある領域のうち面積が最大である領域を、検体4の液面41の位置とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が入った検体容器を収納した検体ラックを移送するラック搬送路と、
前記ラック搬送路の側方に設けられたカメラと、
前記ラック搬送路と前記カメラを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記ラック搬送路が移送している前記検体ラックの移送を停止させ、
移送が停止中の前記検体ラックに収納されている前記検体容器を前記カメラで複数回撮像して、前記検体容器の撮像画像を複数取得し、
複数の前記撮像画像の差分画像を作成し、
前記差分画像の中で時間変化がある領域のうち面積が最大である領域を、前記検体の液面の位置とする、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の前記差分画像を作成し、複数の前記差分画像の論理積画像を求め、前記論理積画像の中で時間変化がある領域のうち面積が最大である領域を、前記検体の前記液面の位置とする、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記論理積画像に2値化処理を行い、前記2値化処理を行って作成した画像の中で時間変化がある領域のうち面積が最大である領域を、前記検体の前記液面の位置とする、
請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記ラック搬送路の側方で、前記ラック搬送路に対して前記カメラと同じ側に設置された照明を備え、
前記照明は、前記検体容器に光を照射する、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記検体容器が備えるバーコードラベルを読み取るバーコードリーダを備え、
前記バーコードリーダは、前記ラック搬送路に対して前記カメラと反対側に設置されている、
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項6】
検体が入った検体容器を収納した検体ラックをラック搬送路で移送するステップと、
前記ラック搬送路が移送している前記検体ラックの移送を停止させるステップと、
移送が停止中の前記検体ラックに収納されている前記検体容器をカメラで複数回撮像して、前記検体容器の撮像画像を複数取得するステップと、
複数の前記撮像画像の差分画像を作成するステップと、
前記差分画像の中で時間変化がある領域のうち面積が最大である領域を、前記検体の液面の位置とするステップと、
を有することを特徴とする液面検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を分析するための自動分析装置と、検体の液面を検出するための液面検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿といった検体を試薬と反応させ、反応混合物の吸光度や発光強度を測定することにより検体を分析する。自動分析装置では、無駄な検査を省いて消耗品や試薬の消費量を削減したり、検査結果の信頼性を向上したりするために、検体量の不足を早期に判定することが望まれている。このため、画像処理によって検体の液面位置を検出し、検出した液面位置に基づいて検体量を推定する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試料容器に収容された検体の液面位置を検出する試料分析装置の例が記載されている。特許文献1に記載された試料分析装置は、把持部を用いてサンプルラックから持ち上げた試料容器をカメラで撮像し、撮像画像の試料容器の高さ方向に沿った赤色と青色の輝度の累積値、またはこれら累積値の比が閾値以上に変化する画素の位置を、液面の位置として検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-038659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、カメラで撮像した撮像画像における検体の色情報を用いて検体の液面位置を検出するため、検体の彩度が低く透過性が高い場合などでは、検体の液面位置を検出できない可能性がある。また、試料容器(以下、「検体容器」と記す)をカメラで撮像するために、サンプルラック(以下、「検体ラック」と記す)から検体容器を取り出す機構が必要である。
【0006】
本発明の目的は、検体の彩度や透過度に因らず検体の液面位置を検出することができる自動分析装置と液面検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による自動分析装置は、検体が入った検体容器を収納した検体ラックを移送するラック搬送路と、前記ラック搬送路の側方に設けられたカメラと、前記ラック搬送路と前記カメラを制御する制御部とを備える。前記制御部は、前記ラック搬送路が移送している前記検体ラックの移送を停止させ、移送が停止中の前記検体ラックに収納されている前記検体容器を前記カメラで複数回撮像して、前記検体容器の撮像画像を複数取得し、複数の前記撮像画像の差分画像を作成し、前記差分画像の中で時間変化がある領域のうち面積が最大である領域を、前記検体の液面の位置とする。
【0008】
本発明による液面検出方法は、検体が入った検体容器を収納した検体ラックをラック搬送路で移送するステップと、前記ラック搬送路が移送している前記検体ラックの移送を停止させるステップと、移送が停止中の前記検体ラックに収納されている前記検体容器をカメラで複数回撮像して、前記検体容器の撮像画像を複数取得するステップと、複数の前記撮像画像の差分画像を作成するステップと、前記差分画像の中で時間変化がある領域のうち面積が最大である領域を、前記検体の液面の位置とするステップとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、検体の彩度や透過度に因らず検体の液面位置を検出することができる自動分析装置と液面検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1による自動分析装置の構成の概要を示す上面図である。
図2A】多本掛けの検体ラックについて、ピッチを説明するための図である。
図2B】一本掛けの検体ラックについて、ピッチを説明するための図である。
図3】カメラが検体容器を時間間隔Δtごとに撮像した撮像画像の例を示す模式図を、撮像時刻順に(a)から(i)に並べた図である。
図4】検体ラックの移送速度Vの時間変化の例を示す図である。
図5A図3の撮像画像(a)から撮像画像(c)の3枚の撮像画像を用いて作成された画像間差分画像の例を示す模式図である。
図5B図3の撮像画像(d)から撮像画像(f)の3枚の撮像画像を用いて作成された画像間差分画像の例を示す模式図である。
図5C図3の撮像画像(g)から撮像画像(i)の3枚の撮像画像を用いて作成された画像間差分画像の例を示す模式図である。
図6】本発明の実施例2による自動分析装置が備える検体供給ユニットの構成の概要を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による自動分析装置と液面検出方法では、検体容器を収納した検体ラックの移送を停止させ、検体ラックの移送が停止中で検体の液面が揺れ続けている間に検体容器を複数回撮像し、得られた複数の撮像画像の中で時間変化がある領域を基にして検体の液面の位置を検出する。このため、本発明による自動分析装置と液面検出方法では、検体の彩度や透過度に因らず検体の液面位置を検出することができ、液面位置を従来よりも確実かつ正確に検出できる。さらに、本発明による自動分析装置と液面検出方法では、検体ラックから取り出さずに検体容器を撮像できるので、撮像のために検体容器を取り出す機構が不要であるとともに、検体の液面位置を検出するのに要する時間を短縮でき、自動分析装置のスループットの低下を防止することができる。
【0012】
以下では、本発明の実施例による自動分析装置と液面検出方法を図面を参照して説明する。本発明による液面検出方法は、自動分析装置に限らず、液体の液面を検出する任意の装置に適用することができる。なお、本明細書で参照する図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0013】
図1は、本発明の実施例1による自動分析装置1の構成の概要を示す上面図である。自動分析装置1は、検体ラック2の搬入口123と搬出口124を備える検体供給ユニット12と、検体4を一定量分注して測定を行う分析モジュール13と、検体4を移送する搬送ユニット14と、自動分析装置1を制御する制御部10を備える。制御部10は、図1では検体供給ユニット12の内部に設置されているが、自動分析装置1の任意の位置に設置することができる。また、制御部10は、自動分析装置1の外部に設置され、自動分析装置1と通信することで自動分析装置1を制御してもよい。
【0014】
検体4は、例えば血液や尿などの液体であり、検体容器3に入れられている。自動分析装置1では、検体4を保護するとともに作業性を向上するために、検体4が入った検体容器3は、検体ラック2に収納された状態で移送される。
【0015】
検体ラック2は、検体4が入った検体容器3を収納する。検体ラック2は、複数の検体容器3を収納できる多本掛けの検体ラックであってもよいし、1本の検体容器3を収納する一本掛けの検体ラックであってもよい。図1において、矢印Dは、検体ラック2の移送方向を表す。
【0016】
検体供給ユニット12は、バーコードリーダ115を備える。検体容器3は、検体識別用のバーコードラベルを備える。本実施例では、検体容器3にバーコードラベルが貼り付けられているとする。バーコードリーダ115は、バーコード読取り位置126にある検体容器3のバーコードラベルを読み取ることができる。制御部10は、バーコードリーダ115が読み取ったバーコードラベルから得られた情報を基に、検体容器3に入れられた検体4を識別し、識別した検体4に応じて、検体ラック2に移送先の分析モジュール13を割り当てる。
【0017】
搬送ユニット14は、搬入用のラック搬送路141と、搬出用のラック搬送路142を備える。搬入用のラック搬送路141は、検体供給ユニット12から分析モジュール13へ検体ラック2を移送する。搬出用のラック搬送路142は、分析モジュール13から検体供給ユニット12へ検体ラック2を移送する。搬入用のラック搬送路141と搬出用のラック搬送路142は、例えばベルトなどで構成することができる。
【0018】
分析モジュール13は、搬入用のラック搬送路141の側方にカメラ5と照明6を備える。カメラ5は、ラック搬送路141上に焦点を合わせており、検体容器3と検体容器3に収容された検体4を撮像する。照明6は、ラック搬送路141に対してカメラ5と同じ側に設置されており、ラック搬送路141上を照らし、検体容器3に光を照射する。照明6は、カメラ5が検体容器3を撮像するときだけ、検体容器3に光を照射してもよい。
【0019】
制御部10は、検体供給ユニット12、分析モジュール13、搬送ユニット14、バーコードリーダ115、カメラ5、及び照明6を制御する。例えば、制御部10は、搬送ユニット14を制御して検体ラック2を移送し、カメラ5を制御して検体容器3を撮像し、照明6を制御して検体容器3に光を照射する。
【0020】
制御部10は、検体ラック2を後述するピッチ単位で移送し、検体ラック2に収納された検体容器3の1つの位置がカメラ5の焦点位置7と一致する位置で、検体ラック2の移送を停止させる。カメラ5は、制御部10に制御され、検体ラック2の移送が停止中に、カメラ5の焦点位置7にある検体容器3を複数回撮像する。制御部10は、検体容器3の撮像が終了したら、検体ラック2をピッチ単位で移送し、次の検体容器3(撮像した検体容器3と隣り合う検体容器3)の位置がカメラ5の焦点位置7と一致する位置で、検体ラック2の移送を停止させる。カメラ5は、検体ラック2の移送が停止中に、カメラ5の焦点位置7にある検体容器3を複数回撮像する。
【0021】
制御部10は、以上の処理を繰り返して、検体容器3のそれぞれに対し、検体ラック2の移送が停止中にカメラ5で複数回ずつ撮像し、移送が停止した検体ラック2に収納された検体容器3の撮像画像を複数取得する。
【0022】
自動分析装置1は、図示していない表示装置を備えることができる。また、自動分析装置1は、表示装置を接続することができる。
【0023】
上記の説明におけるピッチについて、図2A図2Bを参照して説明する。
【0024】
図2Aは、多本掛けの検体ラック2aについて、ピッチpを説明するための図である。図2Bは、一本掛けの検体ラック2bについて、ピッチpを説明するための図である。図2Aには、一例として、5本の検体容器3を収納できる多本掛けの検体ラック2aを示している。
【0025】
図2A図2Bに示すように、検体容器3の中心軸を記号Cで表す。検体容器3は、検体4を収容しており、検体識別用のバーコードラベル31が貼り付けられている。バーコードラベル31は、検体容器3の周方向の一部に貼り付けられている。バーコードラベル31が検体容器3の周方向の一部に貼り付けられているので、カメラ5は、検体容器3に収容された検体4を撮像することができる。
【0026】
ピッチpは、検体ラック2(2a、2b)に収納されて互いに隣り合う検体容器3の中心軸C同士の距離である。多本掛けの検体ラック2aでは、ピッチpは、図2Aに示すように、1つの検体ラック2aにおいて、1本の検体容器3の中心軸Cと、この検体容器3に隣り合う検体容器3の中心軸Cとの距離である。一本掛けの検体ラック2bでは、ピッチpは、図2Bに示すように、検体ラック2bに収納された検体容器3の中心軸Cと、この検体ラック2bに隣り合う検体ラック2bに収納された検体容器3の中心軸Cとの距離である。
【0027】
例えば、図2Aに示す多本掛けの検体ラック2aでは、制御部10は、1本の検体容器3の中心軸Cの位置がカメラ5の焦点位置7と一致する位置で検体ラック2aの移送を停止させ、検体ラック2aの移送が停止中にカメラ5にこの検体容器3を複数回撮像させ、この検体容器3の撮像が終了したら検体ラック2aをピッチpだけ移送する。制御部10は、5本の検体容器3について以上の処理を繰り返す。
【0028】
また、例えば、図2Bに示す一本掛けの検体ラック2bでは、制御部10は、検体ラック2bに収納された検体容器3の中心軸Cの位置がカメラ5の焦点位置7と一致する位置で検体ラック2bの移送を停止させ、検体ラック2bの移送が停止中にカメラ5にこの検体容器3を複数回撮像させる。制御部10は、この検体容器3の撮像が終了したら、この検体容器3を収納した検体ラック2bとこの検体ラック2bに隣り合う検体ラック2bとを、ピッチpだけ移送する。制御部10は、複数の検体ラック2bについて以上の処理を繰り返す。
【0029】
カメラ5が、検体ラック2の移送が停止中に検体容器3を撮像する時間間隔や撮像する時間幅は、例えば、検体ラック2の移送の加速度と速度、検体ラック2の停止後の検体容器3の振動の大きさなどに基づいて定めることができる。カメラ5が、検体ラック2の移送が停止中に検体容器3を撮像する回数は、撮像する時間間隔と時間幅などに基づいて定めることができ、例えば、少なくとも3回であるのが好ましい。
【0030】
本発明の実施例による液面検出方法の原理を、図3図4を用いて説明する。本発明の実施例による自動分析装置は、この液面検出方法を利用して検体4の液面を検出する。
【0031】
図3は、カメラ5が検体容器3を時間間隔Δtごとに撮像した撮像画像の例を示す模式図を、撮像時刻順に(a)から(i)に並べた図である。図3に示す撮像画像の模式図には、検体ラック2と、検体ラック2に収納された検体容器3と、検体容器3に収容された検体4と、検体4の液面41を示している。
【0032】
撮像画像(c)は、移送されている検体ラック2が停止した時刻t0での検体容器3の撮像画像である。撮像画像(a)は、時刻t0より2Δtだけ前の時刻(t0-2Δt)での検体容器3の撮像画像である。撮像画像(d)は、時刻t0からΔtだけ後の時刻(t0+Δt)での検体容器3の撮像画像であり、撮像画像(g)は、時刻t0から4Δtだけ後の時刻(t0+4Δt)での検体容器3の撮像画像である。
【0033】
図4は、検体ラック2の移送速度Vの時間変化の例を示す図である。図4の時刻tには、図3に示した検体容器3の撮像画像の撮像時刻を付している。
【0034】
図3に示す撮像画像(a)と(b)は、図4の時刻(t0-2Δt)と時刻(t0-Δt)、すなわち検体ラック2が減速しながら動いているときの撮像画像である。検体容器3とその内部の検体4は、移動を続けている。
【0035】
撮像画像(c)は、図4の時刻t0、すなわち検体ラック2が移送を停止したときの撮像画像である。時刻t0では、検体ラック2が移送を停止しているが、検体容器3の内部の検体4に作用する慣性力によって、自由表面である検体4の液面41は、撮像画像(c)に示すように揺れている。検体容器3も、検体ラック2による支持剛性と慣性力によって揺れている。
【0036】
撮像画像(d)から(f)は、図4の時刻(t0+Δt)から時刻(t0+3Δt)、すなわち検体ラック2が完全に停止したときの撮像画像である。これらの時刻では、検体容器3は、ほぼ静止しているが、検体4の液面41は、撮像画像(d)から(f)に示すように揺れ続けている。
【0037】
撮像画像(g)から(i)は、図4の時刻(t0+4Δt)から時刻(t0+6Δt)の撮像画像である(但し、図4には時刻(t0+5Δt)と時刻(t0+6Δt)を示していない)。これらの時刻では、撮像画像(f)が撮像された時刻からさらに時間が経過しており、検体容器3は、静止しており、検体4の液面41は、揺れが減衰して小さくなっておりほぼ動いていない。
【0038】
制御部10は、本実施例では、図3に示した3枚の撮像画像(d)、(e)、(f)を用いて、液面41の位置を検出する。すなわち、制御部10は、検体ラック2が停止した時刻t0からΔtだけ経過した時刻から、時刻t0から3Δtだけ経過した時刻までの間に撮像した3枚の撮像画像を用いて、液面41の位置を検出する。
【0039】
液面41の位置の具体的な検出方法について説明する。
【0040】
制御部10は、3枚の撮像画像から、連続する2つの時刻での撮像画像の差分画像を2枚作成する。本実施例では、制御部10は、3枚の撮像画像(d)、(e)、(f)から、撮像画像(d)と撮像画像(e)の差分画像Aと、撮像画像(e)と撮像画像(f)の差分画像Bを作成する。差分画像Aが得られた撮像画像の撮像時刻の組と、差分画像Bが得られた撮像画像の撮像時刻の組は、互いに異なる。
【0041】
制御部10は、差分画像の中で時間変化がある領域のうち、面積が最大である領域を検体4の液面41の位置として検出する。制御部10は、本実施例では具体的に以下のようにして、液面41の位置を検出する。
【0042】
制御部10は、2枚の差分画像の論理積画像に2値化処理を行った画像(以下、「画像間差分画像」と記す)を作成する。本実施例では、制御部10は、差分画像Aと差分画像Bの論理積画像を求め、この論理積画像に2値化処理を行うことで画像間差分画像を作成する。制御部10は、2枚の差分画像の論理積画像に2値化処理を行うことにより、2枚の差分画像の間で差分が小さい領域(すなわち、時間変化が小さい領域)を黒く表し、2枚の差分画像の間で差分が大きい領域(すなわち、時間変化が大きい領域)を白く表す。2枚の差分画像の間で差分が大きい領域とは、2枚の差分画像の間で画素の輝度の差(すなわち、輝度の時間変化)が所定の閾値より大きい領域である。この所定の閾値は、予め任意に定めることができる。
【0043】
従って、画像間差分画像では、3枚の撮像画像において、時間変化が小さい領域が黒く表され、時間変化が大きい領域が白く表されている。以下では、画像間差分画像の中の、時間変化が大きい領域(すなわち、白く表されている領域)を「変化領域」と呼ぶ。画像間差分画像には、変化領域が複数存在することがある。
【0044】
制御部10は、作成した画像間差分画像の中で面積が最大の変化領域を、検体4の液面41の位置として検出する。変化領域は、差分画像の間で差分が大きい領域、すなわち時間変化が大きい領域であるので、撮像画像の中で動いている領域を表している。撮像画像(d)、(e)、(f)から得られた画像間差分画像の変化領域は、検体4の液面41である。制御部10は、2値化処理を行って画像間差分画像を作成することにより、時間変化が大きい領域すなわち検体4の液面41を、より確実かつ正確に検出することができる。
【0045】
本実施例による液面検出方法の要点は、(1)検体ラック2が停止し検体容器3がほぼ静止している一方で、検体4の液面41だけが動いている状態(図3の撮像画像(d)から(f)の状態)を作り出すことと、(2)(1)の状態の間に撮像した複数の撮像画像を用いて、撮像画像の差分画像を作成することである。
【0046】
(1)のために、制御部10は、ラック搬送路141を移送中の検体ラック2を停止させる。次に、検体ラック2が停止してから少なくとも時間間隔Δtだけ経過した後に、カメラ5が検体容器3の撮像を開始する。これは、検体ラック2が停止してから時間間隔Δtが経過するまでは、検体容器3は、検体ラック2による支持剛性により静止していない可能性が高いためである。(2)のために、カメラ5は、検体4の液面41の揺れが減衰して静止してしまう前に、検体容器3を複数回撮像する。
【0047】
本実施例による液面検出方法の効果を、図5A、5B、5Cを用いて説明する。
【0048】
図5A、5B、5Cは、画像間差分画像50の例を示す模式図である。これらの画像間差分画像50は、図3に示した連続する時刻で撮像した3枚の撮像画像を用いて2枚の差分画像を作成し、これら2枚の差分画像の論理積画像に2値化処理を行うことで作成された。図5Aは、図3の撮像画像(a)から撮像画像(c)の3枚の撮像画像を用いて作成された画像間差分画像50の例である。図5Bは、図3の撮像画像(d)から撮像画像(f)の3枚の撮像画像を用いて作成された画像間差分画像50の例である。図5Cは、図3の撮像画像(g)から撮像画像(i)の3枚の撮像画像を用いて作成された画像間差分画像50の例である。
【0049】
上述したように、画像間差分画像50では、3枚の撮像画像において時間変化が大きい領域(すなわち、動いている領域)は、白く表されている変化領域であり、3枚の撮像画像において時間変化が小さい領域(すなわち、静止している領域)は、黒く表されている。
【0050】
図5Aの画像間差分画像50では、検体4の液面41だけでなく検体容器3と検体ラック2も動いているため、液面41の他に検体容器3と検体ラック2が存在する領域も変化領域として白く表されている。このため、図5Aの画像間差分画像50から液面41を検出するには、変化領域の中から液面41を示す領域以外の不要な領域を判別し、この不要な領域を削除しなければならない。
【0051】
図5Cの画像間差分画像50では、検体ラック2と検体容器3が静止して検体4の液面41が揺れているため、主に液面41が存在する領域だけが変化領域として白く表されている。しかし、図5Cの画像間差分画像50では、液面41の揺れが小さいため変化領域が微小であるので、ノイズとして得られた変化領域も液面41として誤検知してしまう可能性や、液面41が存在する領域を液面41以外の領域と区別できなくなる可能性がある。このため、図5Cの画像間差分画像50から液面41を確実かつ正確に検出するのは困難である。
【0052】
図5Bの画像間差分画像50では、検体ラック2と検体容器3が静止して検体4の液面41が比較的大きく揺れ続けているため、時間変化が大きい領域である液面41が存在する領域は、白く表された変化領域として明確に検出されている。なお、図5Bの画像間差分画像50には、液面41以外にも、ノイズなどのために白く表された領域(変化領域)が存在する。このため、制御部10は、画像間差分画像50の中で面積が最大の変化領域を、検体4の液面41の位置として抽出する。
【0053】
なお、制御部10は、以上の説明では3枚の撮像画像から液面41の位置を検出したが、2枚または4枚以上の撮像画像の差分画像を用いることで、2枚または4枚以上の撮像画像から液面41の位置を検出してもよい。
【0054】
制御部10が検出した液面41の位置は、自動分析装置1が備える表示装置、または自動分析装置1に接続された表示装置に、検体容器3の撮像画像とともに表示することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施例による自動分析装置と液面検出方法では、検体ラック2の移送を停止させ、検体ラック2の移送が停止中で検体4の液面41が揺れ続けている間に検体容器3を複数回撮像して撮像画像を得て、これらの撮像画像の中で時間変化がある領域を基にして、検体4の液面41の位置を検出する。このため、本実施例による自動分析装置と液面検出方法は、検体4の彩度や透過度に因らず、検体4の液面41の位置を確実かつ正確に検出することができる。
【0056】
さらに本実施例では、ラック搬送路141に対してカメラ5と同じ側に照明6が設置されており、照明6がカメラ5の被写体である検体容器3に光を照射することができる。このため、検体4の液面41が揺れると、液面41で反射した光がきらめき、制御部10は、このきらめきを撮像画像の変化領域(時間変化が大きい領域)として検出することができる。従って、本実施例による自動分析装置と液面検出方法では、照明6を用いると、検体4の彩度が低く、透過性が高い場合でも、検体4の液面41の位置をより確実かつ正確に検出することができる。
【実施例0057】
本発明の実施例2による自動分析装置1について説明する。本実施例による自動分析装置1は、実施例1で説明した液面検出方法で検体4の液面41を検出する。本実施例による自動分析装置1は、検体供給ユニット12がカメラ5と照明6を備える点が、実施例1による自動分析装置1と異なる。以下では、本実施例による自動分析装置1について、実施例1による自動分析装置1と異なる点を主に説明する。
【0058】
図6は、本実施例による自動分析装置1が備える検体供給ユニット12の構成の概要を示す上面図である。
【0059】
検体供給ユニット12は、搬入用のラック搬送路141の側方にカメラ5と照明6を備える。カメラ5と照明6は、ラック搬送路141に対して互いに同じ側に設置されている。そして、カメラ5と照明6は、ラック搬送路141に対してバーコードリーダ115と反対側に、すなわち、バーコードリーダ115とでラック搬送路141を挟むような位置に設置されている。
【0060】
検体ラック2に収納された検体容器3は、検体4を収容している。検体容器3は、検体識別用のバーコードラベル31を備える。本実施例では、検体容器3にバーコードラベル31が貼り付けられているとする。バーコードラベル31は、検体容器3の周方向の一部に貼り付けられている。
【0061】
搬送ユニット14の、搬入用のラック搬送路141に置かれた検体ラック2は、一方の面(背面213)がバーコードリーダ115に向き、他方の面(前面212)がカメラ5と照明6に向く。
【0062】
バーコードラベル31が検体容器3の周方向の一部に貼り付けられているので、カメラ5は、検体ラック2の前面212から検体容器3に収容された検体4を撮像することができる。
【0063】
バーコードリーダ115は、ラック搬送路141でバーコード読取り位置116に移送された検体ラック2について、検体容器3のバーコードラベル31を読み取る。
【0064】
検体ラック2から検体容器3を取り出さなくても、バーコードリーダ115が検体容器3のバーコードラベル31を読み取れるように、検体ラック2の背面213には、スリット211が設けられている。検体容器3のバーコードラベル31の向きは、検体ラック2の背面213を向くように揃えられている。
【0065】
検体供給ユニット12は、制御部10に制御されて、検体ラック2の搬入口123に設置された検体ラック2を1つずつラック搬送路141に移動させる。制御部10は、ラック搬送路141に移動した検体ラック2を、カメラ5の焦点位置7とバーコード読取り位置116のそれぞれに移送する。
【0066】
カメラ5の焦点位置7では、検体ラック2の前面212がカメラ5の撮像面となる。カメラ5は、焦点位置7で、検体容器3と検体容器3に収容された検体4を撮像する。バーコードラベル31が検体容器3の周方向の一部に貼り付けられているので、制御部10は、カメラ5が検体容器3を撮像した撮像画像から、バーコードラベル31に妨げられずに、検体4の液面41の位置を検出することができる。
【0067】
バーコード読取り位置116では、検体ラック2の背面213がバーコードリーダ115のスキャン面となる。バーコードリーダ115は、バーコード読取り位置116で、検体容器3に貼り付けられたバーコードラベル31を読み取る。制御部10は、バーコードリーダ115が読み取ったバーコードラベル31から得られた情報を基に、検体容器3に収容された検体4を識別することができる。検体4の識別後、検体供給ユニット12は、制御部10に制御されて、予め登録された項目情報に従って検体ラック2に移送先の分析モジュール13を割り当てて、搬送ユニット14の搬入用のラック搬送路141まで検体ラック2を移送する。
【0068】
本実施例による自動分析装置1では、バーコードリーダ115が、搬入用のラック搬送路141の一方側に設置され、カメラ5が、ラック搬送路141の他方側に設置されている。このため、制御部10は、ラック搬送路141上の検体ラック2に収納された検体容器3の撮像と、この検体容器3に貼り付けられたバーコードラベル31の読取りを、検体容器3の向きを変更することなく行うことができる。本実施例では、検体容器3の向きを変更せずにバーコードラベル31の読取りと検体容器3の撮像が可能であるので、自動分析装置1のスループットの低下を防止できるとともに、検体容器3の向きを変更する機構が不要である。
【0069】
さらに、本実施例では、カメラ5の焦点位置7とバーコード読取り位置116を一致させて、検体容器3の撮像動作とバーコードラベル31の読取り動作を1か所で行ってもよい。このようにすると、検体ラック2を停止させた1つの位置で検体容器3の撮像とバーコードラベル31の読取りの両方を行えるので、検体ラック2を停止させる回数を半分にすることができ、自動分析装置1のスループットの低下を防止できる。
【0070】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…自動分析装置、2…検体ラック、2a…多本掛けの検体ラック、2b…一本掛けの検体ラック、3…検体容器、4…検体、5…カメラ、6…照明、7…焦点位置、10…制御部、12…検体供給ユニット、13…分析モジュール、14…搬送ユニット、31…バーコードラベル、41…液面、50…画像間差分画像、115…バーコードリーダ、116…バーコード読取り位置、123…搬入口、124…搬出口、126…バーコード読取り位置、141…搬入用のラック搬送路、142…搬出用のラック搬送路、211…スリット、212…検体ラックの前面、213…検体ラックの背面、C…検体容器の中心軸、D…検体ラックの移送方向を表す矢印、p…ピッチ、t…時刻、t0…検体ラックが停止した時刻、Δt…撮像の時間間隔、V…移送速度。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6