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特開2023-146378ロボットハンド及びウェーハ搬送ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146378
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ロボットハンド及びウェーハ搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20231004BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B25J15/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053527
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン ジャージン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン イー
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS03
3C707AS24
3C707BS15
3C707CV07
3C707CW07
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT11
3C707HS27
3C707NS13
5F131AA02
5F131BA32
5F131CA12
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB22
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB76
5F131DB82
(57)【要約】
【課題】大型化を招くことなく、湾曲したウェーハであっても平坦なウェーハであっても確実に吸引保持することができるとともに、加工後のウェーハの汚染を防ぐこと。
【解決手段】ロボットハンド70は、一方の面701側に配設され中凹状に湾曲したウェーハ100を吸引保持する弾性変形可能な吸盤75と、取付部71に形成された第1連通口72と、吸盤75と第1連通口72とを連通させる第1吸引路77と、他方の面702に開口し平坦なウェーハ100を吸引保持する吸引口78と、取付部71に形成された第2連通口73と、吸引口78と第2連通口73とを連通させる第2吸引路79とを備えて構成されている。また、ウェーハ搬送ロボット60は、ホルダ61と吸引源80とを連通させるロボット吸引路81と、ロボット吸引路81の一端に配設され第1吸引路77と第2吸引路78とを切り換えるバルブ91,92とを備えて構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのホルダに取り付ける取付部を有し、ウェーハを吸引保持する板状のロボットハンドであって、
一方の面側に配設され中凹状に湾曲したウェーハの凹面または凸面を吸引保持する吸盤と、該取付部に形成された第1連通口と、内部に形成され該吸盤と該第1連通口とを連通させる第1吸引路と、
他方の面に開口し平坦なウェーハを吸引保持する吸引口と、該取付部に形成された第2連通口と、内部に形成され該吸引口と該第2連通口とを連通させる第2吸引路と、
を備える、ロボットハンド。
【請求項2】
請求項1記載のロボットハンドの該取付部を装着するホルダを備えウェーハを搬送するウェーハ搬送ロボットであって、
該ホルダと吸引源とを連通させるロボット吸引路と、該ロボット吸引路の一端に配設され該第1吸引路と該第2吸引路とを切り換えるバルブと、
を備える、ウェーハ搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを吸引保持するロボットハンド及びこれを備えるウェーハ搬送ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ウェーハを研削する研削装置においては、カセットステージに載置されたカセットからウェーハを取り出して位置合わせテーブルへと搬送したり、研削加工されて洗浄されたウェーハを洗浄ユニットからカセットへと搬送してカセットに収納したりするためのウェーハ搬送ロボットが用いられている。
【0003】
ウェーハには、平坦なものばかりでなく、反って湾曲したものもある。例えば、片面に樹脂がモールドされたウェーハは、モールドした樹脂が収縮することによって、樹脂面側の中央領域が凹んで中凹状に湾曲したものとなる。また、樹脂モールドされていないウェーハであっても、研削によって薄化されたことによって反りが生じているものもある。
このようなウェーハを吸引保持するために、例えば特許文献1~3には、ロボットハンドの保持面に弾性変形可能な吸盤を配置し、この吸盤によって反りのあるウェーハを確実に吸引保持するウェーハ搬送ロボットが提案されている。
【0004】
また、特許文献4には、保持部を2つ設け、一方の保持部で研削加工前のウェーハを保し、他方の保持部で研削加工後のウェーハを保持するようにしたウェーハ搬送ロボットが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-045784号公報
【特許文献2】特開2017-050484号公報
【特許文献3】特開2020-202324号公報
【特許文献4】特開2010-082742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、研削加工前後のウェーハを同じロボットハンドで吸引保持すると、研削加工前のウェーハに付着した研削屑がロボットハンドを介して研削加工後のウェーハに付着するという問題も発生する。
【0007】
また、特許文献4において提案されているように、2つの保持部をロボットハンドに設けると、該ロボットハンド及びこれを備えるウェーハ搬送ロボットが大型化するという問題がある。
【0008】
したがって、ロボットハンドとウェーハ搬送ロボットには、大型化を招くことなく、湾曲したウェーハであっても、平坦なウェーハであっても、確実に吸引保持することができるとともに、加工後のウェーハの汚染を防ぐという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、ロボットのホルダに取り付ける取付部を有し、ウェーハを吸引保持する板状のロボットハンドであって、一方の面側に配設され中凹状に湾曲したウェーハの凹面または凸面を吸引保持する吸盤と、該取付部に形成された第1連通口と、内部に形成され該吸盤と該第1連通口とを連通させる第1吸引路と、他方の面に開口し平坦なウェーハを吸引保持する吸引口と、該取付部に形成された第2連通口と、内部に形成され該吸引口と該第2連通口とを連通させる第2吸引路と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記ロボットハンドの該取付部を装着するホルダを備えウェーハを搬送するウェーハ搬送ロボットであって、該ホルダと吸引源とを連通させるロボット吸引路と、該ロボット吸引路の一端に配設され該第1吸引路と該第2吸引路とを切り換えるバルブと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バルブを切り換えて吸引源をロボットハンドの第1吸引路に連通させ、中凹状に湾曲した加工前のウェーハをロボットハンドの一方の面に設けられた吸盤によって確実に吸引保持することができる。また、ロボットハンドを反転させてバルブを切り換え、吸引源をロボットハンドの第2吸引路に連通させ、ロボットハンドの他方の面に開口する吸引口に負圧を発生させて加工後の平坦なウェーハを確実に吸引保持することができる。したがって、湾曲したウェーハであっても、薄くて平坦なウェーハであってもロボットハンドによって確実に吸引保持することができる。
【0012】
また、ロボットハンドの両面を使い分け、一方の面で加工前のウェーハを吸引保持し、他方の面で加工後のウェーハを吸引保持するようにしたため、1つのロボットハンドで加工前と加工後のウェーハをそれぞれ吸引保持することができ、ロボットハンドとウェーハ搬送ロボットの大型化を招くことがない。また、加工前と加工後のウェーハを同じ吸盤で吸引保持することがないため、加工後のウェーハが吸盤に付着した加工屑などによって汚染されるという問題が発生することもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るウェーハ搬送ロボットを備える研削装置の破断斜視図である。
図2】本発明に係るウェーハ搬送ロボットの斜視図である。
図3】本発明に係るロボットハンドの一方の面の平面図である。
図4】本発明に係るロボットハンドの他方の面の平面図である。
図5図3のA-A線断面図である。
図6】本発明に係るロボットハンドの吸引経路を切り換えるシステム構成図である。
図7】研削加工前の湾曲したウェーハを吸盤で吸引保持した状態を示すロボットハンドの側断面図である。
図8】研削加工後の平坦なウェーハを吸引口で吸引保持した状態を示すロボットハンドの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は研削装置1の一部を破断した斜視図であり、図示の研削装置1は、被加工物である円板状のウェーハを研削加工する装置であって、ウェーハを吸引保持するチャックテーブル10と、ウェーハを研削加工する研削機構20と、研削機構20をZ軸方向に上下動させる研削送り機構30と、研削加工中のウェーハの厚みを測定する厚み測定手段40と、研削加工後のウェーハの被研削面を洗浄する洗浄機構50と、カセット101に対してウェーハを出し入れする搬送ロボット60と、搬送ロボット60によってカセット101から取り出されたウェーハの位置合わせを行う位置合わせテーブル102と、位置合わせテーブル102によって位置合わせされた研削加工前のウェーハをチャックテーブル10へと搬送する第1の搬送機構103と、研削加工後のウェーハをチャックテーブル10から洗浄機構50へと搬送する第2の搬送機構104を備えている。
【0015】
チャックテーブル10は、円板状の部材であって、その中央部に形成された円形の凹部12には、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材13が組み込まれている。そして、ポーラス部材13は、その上面が円板状のウェーハ100を吸引保持する保持面11を構成している。なお、図示しないが、ポーラス部材13は、真空ポンプなどの吸引源に接続されている。また、チャックテーブル10は、その下方に配置された駆動源であるモータなどを含む回転駆動機構によってその垂直な軸心回りに所定の速度(例えば、300rpm)で回転駆動される。
【0016】
ここで、研削装置1は、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース2を備えており、このベース2の内部には、チャックテーブル10とこれに吸引保持されたウェーハ100をY軸方向(前後方向)に沿って移動させるための不図示の水平移動機構が設けられている。また、当該研削装置1のベース2の上部は、下方が開口する矩形ボックス状のカバー3によって覆われており、このカバー3の前面(-Y方向端面)には、各種設定値を入力するためのキーや表示画面を備えた入力表示部4が設置されている。
【0017】
また、ベース2の上面には、Y軸方向に長い矩形の開口部14が形成されており、この開口部14にチャックテーブル10が収容されている。そして、開口部14のチャックテーブル10の周囲は、矩形プレート状のカバー15によって覆われており、開口部14のカバー15の前後(-Y方向と+Y方向)の部分は、カバー15と共に移動して伸縮する蛇腹状の伸縮カバー16,17によってそれぞれ覆われている。したがって、チャックテーブル10が前後方向(Y軸方向)のどの位置にあっても、開口部14は、カバー15と伸縮カバー16,17によって常に覆われており、ベース2内への異物の侵入が防がれている。
【0018】
研削機構20は、Z軸方向の回転中心軸を有するスピンドル21と、該スピンドル21を回転可能に支持するハウジング22と、スピンドル21を回転駆動するスピンドルモータ23と、スピンドル21の下端に接続されたマウント24と、マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、基台251と、基台251の下面に円環状に配列された略直方体状の複数の砥石252とを備えている。なお、各砥石252は、ウェーハ100を研削するための加工具であって、その下面は、ウェーハ100に接触する研削面を構成している。
【0019】
ベース2の上面の+Y軸方向端部(後端部)上には、矩形ボックス状のコラム5が立設されており、このコラム5の-Y軸方向端面(前面)に研削送り機構30が設けられている、研削送り機構30は、研削機構20をチャックテーブル10の保持面11に対して垂直な方向(Z軸方向)に沿って昇降動させるものであって、ハウジング22の背面側に取り付けられた矩形プレート状の昇降板31及び昇降板31に取り付けられハウジング22を支持するホルダ26を、ハウジング22及びハウジング22に保持されたスピンドル21、スピンドルモータ23、研削ホイール25などと共に左右一対のガイドレール32に沿ってZ軸方向に昇降動させるものである。
【0020】
そして、左右一対のガイドレール32の間には、回転可能なボールネジ軸33がZ軸方向(上下方向)に沿って立設されており、該ボールネジ軸33の上端は、駆動源である正逆転可能なモータ34に連結されている。ここで、モータ34は、コラム5の上面に取り付けられた矩形プレート状のブラケット35を介して縦置き状態で取り付けられている。
【0021】
また、ボールネジ軸33の下端は、コラム5に回転可能に支持されており、このボールネジ軸33には、昇降板31の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合挿通している。
【0022】
ベース2の上面の開口部14の側部には、チャックテーブル10の保持面11に保持されているウェーハ100の厚みを測定するための厚み測定手段40が配置されている。ここで、この厚み測定手段40は、接触式のハイトゲージであって、研削機構20によって被研削面が研削されているウェーハ100の厚みを測定するものである。
【0023】
洗浄機構50は、研削加工後のウェーハの被研削面を洗浄するものであって、研磨加工後のウェーハを保持して回転するスピンナーテーブル51と、ウェーハ100の被研磨面に向けて洗浄水や高圧エアを噴射する噴射ノズル52を備えている。
【0024】
図2は本発明に係るウェーハ搬送ロボット60の斜視図であり、図示のウェーハ搬送ロボット60は、多関節ロボットであって、そのホルダ61には、板状のロボットハンド70が装着されている。ここで、ロボットハンド70の基端部には取付部71が形成されており、この取付部71がホルダ61に差し込まれて固定されることによって、ロボットハンド70がウェーハ搬送ロボット60のホルダ61に装着される。
【0025】
ウェーハ搬送ロボット60は、ロボットハンド70を所定の位置に移動させる駆動部62を備えている。この駆動部62は、第1アーム63と、第2アーム64と、ロボットハンド70を水平方向に旋回させるロボットハンド旋回機構65と、第1アーム63を水平方向に旋回させる第1アーム旋回機構66と、第2アーム64を水平方向に旋回させる第2アーム旋回機構67とを備えている。
【0026】
そして、軸状のロボットハンド旋回機構65には、第1アーム63の長手方向一端が回動可能に連結されており、第1アーム63の長手方向他端は、第1アーム旋回機構66を介して第2アーム64の長手方向一端が回動可能に連結されている。また、第2アーム64の長手方向他端は、第2アーム旋回機構67に連結されており、第2アーム旋回機構67は、第2アーム64をZ軸方向に移動させる機能も有している。
【0027】
ここで、ロボットハンド旋回機構65は、不図示の旋回駆動源が発生する回転駆動力によってロボットハンド70を第1アーム63に対して水平方向に旋回させるものであり、第1アーム旋回機構66は、不図示の旋回駆動源が発生する回転駆動力によって第1アーム63を第2アーム64に対して水平に旋回させるものである。また、第2アーム旋回機構67は、不図示の旋回駆動源が発生する回転駆動力によって第2アーム64をZ軸方向移動機構68に対して水平の旋回させるものである。そして、Z軸方向移動機構68は、その動作が不図示の制御部によって制御されており、ロボットハンド70を図1に示す研削装置1上でZ軸方向に上下動させるものである。
【0028】
また、ロボットハンド旋回機構65の上端部には、ハウジング69が固定されており、このハウジング69には、不図示のモータが収容されている。そして、ハウジング69からはモータの出力軸(モータ軸)691が鉛直方向(Z軸方向)に直交するY軸方向に突出しており、この出力軸691の先端にホルダ61が取り付けられている。
【0029】
したがって、不図示のモータを駆動して出力軸691を中心としてロボットハンド70を半回転させることによって、該ロボットハンド70の一方の面701と他方の面702とを交互に上向きとなるように反転させることができる。
【0030】
ロボットハンド70の取付部71の一方の面701には、円孔状の第1連通口72が開口しており、同ロボットハンド70の取付部71の他方の面702には、円孔状の第2連通口73が開口している。そして、これらの第1連通口72と第2連通口73には、吸引源80からバルブ機構90を経て延びるロボット吸引路81が接続されており、後述のようにバルブ機構90によって吸引源80と第1連通口72(後述の第1吸引路77)または第2連通口73(後述の第2吸引路79)と吸引源90との連通が選択的に切り換えられる。
【0031】
図3は本発明に係るロボットハンドの一方の面の平面図、図4は同ロボットハンドの他方の面の平面図、図5図3のA-A線断面図、図6はロボットハンドの吸引経路を切り換えるシステム構成図である。
【0032】
本発明に係るロボットハンド70は、先端部にウェーハを吸着保持する略フォーク状の保持部74を有する平板状部材である。このロボットハンド70の図3に示す一方の面701の保持部74の図示の4箇所(ロボットハンドの幅方向中心線に対して対称な位置)には、ウェーハ100を吸引保持する吸盤75がそれぞれ取り付けられており、各吸盤75の中心部には円孔76がそれぞれ開口している。ここで、各吸盤75は、図2及び図5に示すように、弾性変形可能なゴムなどの弾性材によって開口側(図5の下方)に向かって開くテーパ円筒状に成形されている。そして、各吸盤75に開口する4つの円孔76と当該ロボットハンド70の取付部71に開口する第1連通口72とは、当該ロボットハンド60の内部に形成された第1吸引路77によって互いに連通している。
【0033】
また、ロボットハンド70の図4に示す他方の面702の保持部74の図示の5箇所(ロボットハンド70の幅方向中心線に対して対称な4箇所と保持部74の基端部の幅方向中心に位置する1箇所)には、円孔状の各3つの吸引口78がそれぞれ開口している。そして、各吸引口78と当該ロボットハンド70の取付部71に開口する第2連通口73とは、当該ロボットハンド70の内部に形成された第2吸引路79によって互いに連通している。
【0034】
ここで、ロボットハンド70の吸引経路を切り換えるシステムを図6に基づいて説明すると、吸引源80から延びるロボット吸引路81は、バルブ機構90において2つの第1ロボット吸引路811と第2ロボット吸引路812に分岐しており、これらの第1及び第2ロボット吸引路811,812には、電磁開閉弁91,92がそれぞれ設けられている。そして、各電磁開閉弁91,92から延びる第1吸引路811は、ロボットハンド70の一方の面701と他方の面702の各取付部71にそれぞれ開口する第1連通口72と第2連通口73にそれぞれ接続されている。なお、各電磁開閉弁91,92の開閉制御は、不図示の制御部によってなされる。
【0035】
次に、本発明に係るロボットハンド70とウェーハ搬送ロボット60を備える研削装置1によるウェーハ100の研削加工を図7及び図8も参照しながら以下に説明する。なお、図7は研削加工前の湾曲したウェーハを吸盤で吸引保持した状態を示すロボットハンドの側断面図、図8は研削加工後のウェーハを吸引口で吸引保持した状態を示すロボットハンドの側断面図である
ウェーハ100を研削加工する際には、ウェーハ搬送ロボット60によって研削加工前のウェーハ100がカセット101から取り出される。ここで、ウェーハ100は、図7に示すように、被研削面が樹脂110によってモールドされており、この樹脂110が収縮することによってウェーハ100が反り、当該ウェーハ100は、下に凸となるように中凹状に湾曲している。このような湾曲した研削加工前のウェーハ100をウェーハ搬送ロボット60によってカセット101から取り出す場合には、図7に示すように、ロボットハンド70の一方の面701が上を向くようにセットし、ウェーハ100を4つの吸盤75(図7には2つのみ図示)によって支持する。そして、制御部は、図6に示す一方の電磁開閉弁91を開き、他方の電磁開閉弁92を閉じる。
【0036】
すると、吸引源80によって各吸盤95が真空引きされる。すなわち、エアが各吸盤75に開口する円孔76から第1吸引路77、第1連通口72、第1ロボット吸引路811、開状態にある電磁開閉弁91を経て吸引源80によって吸引されるため、各吸盤75に負圧がそれぞれ発生し、円弧状に湾曲したウェーハ100が4つの吸盤75に発生する負圧によって吸引された状態でロボットハンド70によって保持される。このとき、弾性材によって構成された各吸盤75が湾曲するウェーハ100の形状に沿って弾性変形して該ウェーハ100の凸面に密着するため、ウェーハ100と各吸盤75との間に隙間が形成されることがない。このため、バキュームリークなどに伴うウェーハ100の吸着エラーが発生することがなく、ウェーハ100は、ロボットハンド60によって確実に吸引保持される。また、ウェーハ100の吸盤75による支持部に過大な負荷が掛かることがないため、該ウェーハ100の破損が防がれる。
なお、ウェーハ100の凹面に各吸盤75を密着させ、ウェーハ100を吸引保持してもよい。その際、カセット101に収容される中凹状のウェーハ100は凹面を下にしている。
【0037】
以上のようにロボットハンド70によって吸引保持された状態でウェーハ100がカセット101から取り出されると、このウェーハ100は、図1に示す位置合わせテーブル102へと搬送され、この位置合わせテーブル102によって位置合わせがなされる。そして、このように位置合わせされたウェーハ100は、第1の搬送機構103によって吸引保持されてチャックテーブル10へと搬送される。
【0038】
チャックテーブル10においては、ウェーハ100がチャックテーブル10の保持面11上にその表面を下にして載置される。すると、不図示の吸引源によってポーラス部材13が真空引きされるため、該ポーラス部材13に負圧が発生し、ポーラス部材13の上面(保持面11)上に載置されているウェーハ100が負圧によって保持面11上に吸引保持される。
【0039】
上記状態から不図示の水平移動機構を駆動してチャックテーブル10を+Y軸方向(後方)に移動させ、チャックテーブル10に吸引保持されているウェーハ100を研削機構20の研削ホイール25の下方に位置決めする。そして、不図示の回転駆動機構を駆動してチャックテーブル10を所定の速度で回転させる。これと同時に、スピンドルモータ23を起動して研削ホイール25を所定の速度(例えば、1000rpm)で回転させておく。
【0040】
上述のように、ウェーハ100と研削ホイール25とが回転している状態で、研削送り機構30を駆動して研削ホイール25を-Z軸方向に下降させる。すなわち、モータ34が駆動されてボールネジ軸33が回転すると、このボールネジ軸33に螺合挿通する不図示のナット部材が設けられた昇降板31がハウジング22や研削ホイール25などと共に-Z軸方向に下降する。すると、研削ホイール25の砥石252の下面(加工面)がウェーハ100の上面に接触する。このように、砥石252の下面がウェーハ100の上面に接触している状態から、研削ホイール25をさらに-Z軸方向に所定量だけ下降させると、ウェーハ100の上面が砥石252によって所定量だけ研削される。なお、研削加工中のウェーハ100の厚みは、厚み測定機構40によって測定される。
【0041】
上述のウェーハ100に対する研削加工が終了すると、ポーラス部材13の真空引きが停止されてウェーハ100の吸引保持が解除される。すると、第2の搬送機構103によって研削加工後の薄いウェーハ100が洗浄機構50へと搬送され、該ウェーハ100が洗浄機構50のスピンナーテーブル51上に載置される。
【0042】
洗浄機構50においては、スピンナーテーブル51とその上に載置されたウェーハ100が所定の速度で回転し、回転するウェーハ100に向かって洗浄水や高圧エアが噴射ノズル52から噴射されるため、ウェーハ100の上面(被研削面)が洗浄水や高圧エアによって洗浄され、ウェーハ100の上面に付着した研削屑などの異物が除去される。このようにして洗浄が終了したウェーハ100は、ウェーハ搬送ロボット60のロボットハンド70によって吸引保持されてカセット101へと搬送されてカセット101に収納される。
【0043】
ウェーハ搬送ロボット60によって研削加工後の薄い平坦なウェーハ100が洗浄機構50からカセット101へと搬送される際には、ロボットハンド70が半回転されてロボットハンド70の他方の面702が図4に示すように上を向くようにセットされる。そして、ロボットハンド70の保持部74がスピンナーテーブル51の下方に進入してから上昇し、制御部は、図6に示す一方の電磁開閉弁92を開き、他方の電磁開閉弁91を閉じる。
【0044】
すると、吸引源80によって各吸引口78が真空引きされる。すなわち、ロボットハンド70の他方の面702に開口する複数の吸引口78から第2吸引路79、第2連通口73、第2ロボット吸引路812、開状態にある電磁開閉弁92を経て吸引源80によって吸引されるため、各吸引口78に負圧がそれぞれ発生し、図8に示すように、研削加工された薄くて平坦なウェーハ100が複数の吸引口78に発生する負圧によって吸引された状態でロボットハンド70によって確実に保持される。
【0045】
したがって、本実施の形態によれば、湾曲した研削加工前のウェーハ100であっても、研削加工後の薄くて平坦なウェーハ100であってもロボットハンド70によって確実に吸引保持することができる。
以上のように、本実施の形態では、研削加工前の湾曲したウェーハ100をロボットハンド70の一方の面701に設けた4つの吸盤75に発生する負圧によって吸引保持し、研削加工後の薄くて平坦なウェーハ100をロボットハンド70の他方の面702に開口する複数の吸引口78に発生する負圧によって吸引保持するようにしたため、研削加工前のウェーハ100に発生した加工屑が吸盤75に付着しても、ロボットハンド70の他方の面702に開口する複数の吸引口78に発生する負圧によって吸引保持される研削加工後のウェーハ100が吸盤75に付着している加工屑によって汚染されることがない。
【0046】
また、本実施の形態では、1つのロボットハンド70の一方の面701は、研削加工前の湾曲したウェーハ100を吸引保持に使用され、ロボットハンド70の他方の面702は、研削加工後の薄い平坦なウェーハ100の吸引保持に使用されるため、2つのロボットハンド70をウェーハ搬送ロボット60に設ける必要がなく、ロボットハンド70及びこれを備えるウェーハ搬送ロボット60の大型化及びコストアップを防ぐことができる。
【0047】
なお、以上は本発明を研削装置に設けられるロボットハンドとこれを備えるウェーハ搬送ロボットに対して適用した形態について説明したが、本発明は、研削装置以外の任意の加工装置に設けられるロボットハンドとこれを備えるウェーハ搬送ロボットに対しても同様に適用可能である。
【0048】
また、以上の実施の形態では、反って湾曲したウェーハの凸部を吸盤によって吸引保持する例について説明したが、ウェーハの凹部を吸盤によって吸引保持することもできる。
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1:研削装置、2:ベース、3:ケース、4:入力表示部、5:コラム、
10:チャックテーブル、11:チャックテーブルの保持面、
12チャックテーブルの凹部、13:ポーラス部材、14:ベースの開口部、
15:カバー、16,17:伸縮カバー、20:加工機構、21:スピンドル、
22:ハウジング、23:スピンドルモータ、24:マウント、25:研削ホイール、
251:基台、252:砥石、30:研削送り機構、31:昇降板、
32:ガイドレール、33:ボールネジ軸、34:モータ、35:ブラケット、
40:厚み測定機構、50:洗浄機構、51:スピンナーテーブル、
52:噴射ノズル、
60:ウェーハ搬送ロボット、61:ホルダ、62:駆動部、63:第1アーム、
64:第2アーム、65:ロボットハンド旋回機構、66:第1アーム旋回機構、
67:第2アーム旋回機構、69:ハウジング、691:出力軸(モータ軸)、
70:ロボットハンド、701:ロボットハンドの一方の面、
702:ロボットハンドの他方の面、71:取付部、72:第1連通口、
73:第2連通口、74:保持部、75:吸盤、76:円孔、77:第1吸引路、
78:吸引口、79:第2吸引路、80:吸引源、81:ロボット吸引路、
811:第1ロボット吸引路、812:第2ロボット吸引路、90:バルブ機構、
91,92:電磁開閉弁、100:ウェーハ、101:カセット、
102:位置合わせテーブル、103:第1の搬送機構、104:第2の搬送機構、
110:樹脂
図1
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図8