(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146405
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】易開封性積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231004BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20231004BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231004BHJP
B65D 65/40 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B27/28 102
B32B27/30 Z
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053565
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 淳
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB51
3E086BB52
3E086BB90
4F100AK03D
4F100AK03E
4F100AK06D
4F100AK62D
4F100AK69B
4F100AK69C
4F100AK69E
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA17C
4F100EH20
4F100GB15
4F100JB06C
4F100JB06D
4F100JB13B
4F100JK06
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】 ガスバリア性、接着性、易開封性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】 少なくとも基材層と基材層側から隣接してなる(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、(A)層がポリオレフィン(a)、(B)層が(i)~(ii)を満たすエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)、(C)層が(iii)~(iv)を満たすエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)から構成され、(v)~(vi)を満たす、易開封性積層体を用いる。
(i)ケン化処理前のビニルエステル含量が35重量%以上85重量%以下
(ii)ケン化度が10重量%以上80重量%未満
(iii)エチレン含量C2が50mol%以下
(iv)ケン化度が80重量%以上
(v)(A)層の厚みが1μm以上15μm以下
(vi)(A)層と(B)層の接着強度が0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層と、基材層側から隣接してなる(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、(A)層がポリオレフィン(a)、(B)層が(i)~(ii)を満たすエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)、(C)層が(iii)~(iv)を満たすエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)から構成され、(v)~(vi)を満たす、易開封性積層体。
(i)ケン化処理前のビニルエステル含量が35重量%以上85重量%以下
(ii)ケン化度が10重量%以上80重量%未満
(iii)エチレン含量C2が50mol%以下
(iv)ケン化度が80重量%以上
(v)(A)層の厚みが1μm以上15μm以下
(vi)(A)層と(B)層の接着強度が0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下
【請求項2】
エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のケン化処理前のビニルエステル含量が45重量%以上、80重量%以下である、請求項1に記載の易開封性積層体。
【請求項3】
エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のケン化度が20重量%以上50重量%以下である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の易開封性積層体。
【請求項4】
エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のJIS6924-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(MFRADD)が1.0g/10分以上10.0g/10分以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の易開封性積層体。
【請求項5】
ポリオレフィン(a)が(vii)~(ix)を満たす、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の易開封性積層体。
(vii)JIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(MFRPO)が1.0g/10分以上10.0g/10分以下
(viii)温度190℃、引取速度10m/分で測定した溶融張力(MSPO)が3mN以上50mN以下
(ix)MFRPO(g/10分)とMSPO(mN)の積MFRPO×MSPOが70以上250以下
【請求項6】
ポリオレフィン(a)がエチレン・α-オレフィン共重合体及び/又は高圧法低密度ポリエチレンを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
【請求項7】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のC2(mol%)とISO1183-3により測定した20℃における密度DEVOH(kg/m3)が下式(1)を満たす、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
DEVOH<-4.265×C2+1325 (1)
【請求項8】
(B)層を構成するエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)が粘着付与剤を含み、該粘着付与剤の含有割合が、エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の易開封性積層体。
【請求項9】
粘着付与剤が、石油樹脂、テルペン系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の易開封性積層体。
【請求項10】
基材層と(C)層の間に、さらに(E)層/(D)層を含み、(E)層が基材層と隣接し、(D)層が(C)層と隣接し、(E)層がポリオレフィン(e)、(D)層がエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(d)から構成される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の易開封性積層体
【請求項11】
(C)層/(B)層/(A)層、若しくは(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層が共押出ラミネート成形により同時に形成する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の易開封性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材料として、内容物劣化の防止を目的に、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性などに優れるエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある)が、種々の用途で使用され、ポリエチレン系樹脂、酸変性ポリオレフィン、EVOHを共押出したフィルムや積層体(例えば、特許文献1参照)などが生産されている。
【0003】
しかし、このようなフィルムや積層体は、容器の蓋材などに要求される易開封性(イージピール性)を有していない。そのため、蓋材のシール層にいわゆるイージーピール樹脂を用いる必要があり、コストに劣っていた。
【0004】
このような背景から、従来よりガスバリア性、接着性、易開封性に優れる積層体が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、優れたガスバリア性、接着性、易開封性を示す積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の積層体が優れたガスバリア性、接着性、易開封性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の各態様は、以下に示す[1]~[11]である。
[1] 少なくとも基材層と、基材層側から隣接してなる(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、(A)層がポリオレフィン(a)、(B)層が(i)~(ii)を満たすエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)、(C)層が(iii)~(iv)を満たすエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)から構成され、(v)~(vi)を満たす、易開封性積層体。
【0009】
(i)ケン化処理前のビニルエステル含量が35重量%以上85重量%以下
(ii)ケン化度が10重量%以上80重量%未満
(iii)エチレン含量C2が50mol%以下
(iv)ケン化度が80重量%以上
(v)(A)層の厚みが1μm以上15μm以下
(vi)(A)層と(B)層の接着強度が0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下
[2] エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のケン化処理前のビニルエステル含量が45重量%以上、80重量%以下である、上記[1]に記載の易開封性積層体。
[3] エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のケン化度が20重量%以上50重量%以下である、上記[1]又は[2]のいずれか一項に記載の易開封性積層体。
[4] エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のJIS6924-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(MFRADD)が1.0g/10分以上10.0g/10分以下である、上記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の易開封性積層体。
[5] ポリオレフィン(a)が(vii)~(ix)を満たす、上記[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の易開封性積層体。
【0010】
(vii)JIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(MFRPO)が1.0g/10分以上10.0g/10分以下
(viii)温度190℃、引取速度10m/分で測定した溶融張力(MSPO)が3mN以上50mN以下
(ix)MFRPO(g/10分)とMSPO(mN)の積MFRPO×MSPOが70以上250以下
[6] ポリオレフィン(a)がエチレン・α-オレフィン共重合体及び/又は高圧法低密度ポリエチレンを含む、上記[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
[7] エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のC2(mol%)とISO1183-3により測定した20℃における密度DEVOH(kg/m3)が下式(1)を満たす、上記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の押出ラミネートフィルム。
【0011】
DEVOH<-4.265×C2+1325 (1)
[8] (B)層を構成するエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)が粘着付与剤を含み、該粘着付与剤の含有割合が、エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下である、上記[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の易開封性積層体。
[9] 粘着付与剤が、石油樹脂、テルペン系樹脂及びロジン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[8]に記載の易開封性積層体。
[10] 基材層と(C)層の間に、さらに(E)層/(D)層を含み、(E)層が基材層と隣接し、(D)層が(C)層と隣接し、(E)層がポリオレフィン(e)、(D)層がエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(d)から構成される、上記[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の易開封性積層体
[11] (C)層/(B)層/(A)層、若しくは(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層が共押出ラミネート成形により同時に形成する、上記[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の易開封性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガスバリア性、接着性、易開封性に優れた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各態様を詳細に説明する。
【0015】
本発明の一態様である易開封性積層体は、少なくとも基材層と、基材層側から隣接してなる(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、(A)層がポリオレフィン(a)、(B)層が(i)~(ii)を満たすエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)、(C)層が(iii)~(iv)を満たすエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)から構成され、(v)~(vi)を満たすことを特徴とする易開封性積層体に関するものである。
【0016】
(i)ケン化処理前のビニルエステル含量が35重量%以上、85重量%以下
(ii)ケン化度が10重量%以上、80重量%未満
(iii)エチレン含量C2が50mol%以下
(iv)ケン化度が80重量%以上
(v)(A)層の厚みが1μm以上、15μm以下
(vi)(A)層と(B)層の接着強度が0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下
(A)層はポリオレフィン(a)により構成される。
【0017】
ポリオレフィン(a)としては、特に限定はなく、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体などが挙げられる。より具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのエチレン単独重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。ポリオレフィン(a)は、1種単独又は2種以上の組成物で用いてもよい。中でも、エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン系共重合体が易開封性に優れるため好ましく、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体がさらに好ましい。また成形性の観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体には高圧法低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
【0018】
高圧法低密度ポリエチレンの製造方法は、高圧ラジカル重合を例示することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社からペトロセンの商品名で市販されている。
【0019】
エチレン・α-オレフィン共重合体は、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法により、エチレンとα-オレフィンを共重合することで得ることができる。
【0020】
エチレン・α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのαーオレフィンの中で、易開封性に優れることから、炭素数5以下のα-オレフィンであることが好ましい。
【0021】
このようなエチレン・α-オレフィン共重合体は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロン-L、ニポロン-Z、ルミタックの商品名で各々市販されている。
【0022】
ポリオレフィン(a)のJIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(以下、「MFRPO」と略す)は、エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物、エチレン・ビニルアルコール共重合体との共押出ラミネート加工性(マイグレーション)に優れることから、1.0g/10分以上10.0g/10分以下の範囲が好ましく、より好ましくは1.0g/10分以上6.0g/10分以下、最も好ましくは3.0g/10分以上5.0g/10分以下の範囲である。
【0023】
また、ポリオレフィン(a)の温度190℃、引取速度10m/分で測定した溶融張力(以下、「MSPO」と略す)は、生産性に優れるため、3mN以上50mN以下の範囲が好ましく、より好ましくは10mN以上45mN以下、最も好ましくは15mN以上40mN以下の範囲である。
【0024】
本発明におけるMSPOは、バレル直径9.55mmの毛管粘度計に長さが8mm、直径が2.095mm、流入角が90°であるダイス、及び、保温チャンバーを装着した条件で、押出速度10m/分、引取速度10m/分、設定温度190℃で測定した値である。
【0025】
ポリオレフィン(a)のMFRPO(g/10分)とMSPO(mN)の積MFRPO×MSPOは、生産性に優れることから、70以上250以下の範囲が好ましく、より好ましくは70以上200以下の範囲であり、最も好ましくは90以上160以下の範囲である。MFRPO×MSPOが70未満の範囲ではラミネート加工性に劣るため好ましくなく、250を超える範囲では延伸性に劣るため好ましくない。このようなMFRPO×MSPOは、ポリエチレンの溶融粘度に対する溶融弾性の比、つまりポリエチレンの溶融変形時の非線形性と相関する値となる。
【0026】
ポリオレフィン(a)のJIS K6922-1(1997年)により測定された密度(以下、単に密度と略す)は特に限定はなく、成形性に優れるため、910~930kg/m3の範囲が好ましく、より好ましくは914~925kg/m3の範囲である。
【0027】
本発明におけるポリオレフィン(a)には、本目的が達成される限りにおいて、その他の熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0028】
ポリオレフィン(a)に熱可塑性樹脂を混合する時は、ポリオレフィンのペレットと熱可塑性樹脂のペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリオレフィンの融点~300℃程度が好ましい。
【0029】
また、ポリオレフィン(a)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0030】
本発明の積層体において、(B)層はエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)により構成される。
【0031】
エチレン・ビニルエステル共重合体は本目的を達成する限り特に限定はなく、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・カプロン酸ビニル共重合体等が挙げられる。中でも、コストの観点からエチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0032】
このようなエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のケン化処理前のビニルエステル含量は、接着性及び易開封性の観点から、35重量%以上85重量%以下の範囲であり、より好ましくは45重量%以上80重量%以下の範囲である。エチレン・ビニルエステル共重合体のケン化処理前のビニルエステル含量が35重量%未満の範囲若しくは85重量%を超える範囲では開封外観に劣るため好ましくない。
【0033】
本発明におけるエチレン・ビニルエステル共重合体のケン化処理方法は特に限定されないが、生産性の観点からエチレン・ビニルエステル共重合体のペレット又はパウダーをアルカリ中で直接加水分解処理するのが好ましい。
【0034】
また、本発明のエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のビニルエステルのケン化度は、接着性及び易開封性の観点から、10重量%以上80重量%未満の範囲であり、より好ましくは10重量%以上60重量%以下、最も好ましくは20重量%以上50重量%以下の範囲である。エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のケン化度が10重量%未満の範囲若しくは80重量%以上の範囲では開封外観に劣るため好ましくない。
【0035】
エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)のJIS K6924-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(以下、「MFRADD」と略す)は、エチレン・ポリオレフィン、エチレン・ビニルアルコール共重合体との共押出ラミネート加工性(マイグレーション)に優れることから、1.0g/10分以上10.0g/10分以下の範囲が好ましく、より好ましくは1.0g/10分以上6.0g/10分以下、最も好ましくは2.0g/10分以上5.0g/10分以下の範囲である。
【0036】
エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)には、本目的が達成される限りにおいて、その他の熱可塑性樹脂を配合してもよい。エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)に熱可塑性樹脂を混合する時は、エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物のペレットと熱可塑性樹脂のペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリオレフィン組成物の融点~300℃程度が好ましい。
【0037】
また、エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、粘着付与剤、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。これらの中で、開封後に再度封緘ができるリシール性に優れることから(B)層を構成するエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)に粘着付与剤を添加することが好ましい。
【0038】
このような粘着付与剤としては特に限定はなく、例えば合成石油樹脂系粘着付与剤である石油樹脂、クマロン樹脂などや、天然樹脂系粘着付与剤であるロジン系樹脂、メチルエステル系樹脂、グリセリンエステル系樹脂、ペンタエリストールエステル系樹脂、テルペン系樹脂及びそれらの変性物などが挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。また、石油樹脂には脂肪族系石油樹脂、脂肪族系水添石油樹脂、芳香族系石油樹脂、芳香族系水添石油樹脂、脂環族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、共重合系水添石油樹脂などが例示される。これらのうち、リシール性に優れることから、石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂が好ましい。
【0039】
エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)に含まれる粘着付与剤の含有割合は、エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下の範囲であることが好ましい。
【0040】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のエチレン含有量(以下、C2と略すことがある)は、ガスバリア性に優れることから、50mol%以下であり、好ましくは20~35mol%である。これにより、ガスバリア性がより向上する。ここで、C2(mol%)はエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)に含まれるモノマー単位におけるエチレン成分の含有率のことである。
【0041】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)の製造方法としては、特に限定はなく、例えば、公知の方法にしたがって、エチレンと脂肪酸ビニルエステルとの共重合体を製造し、次いで、これを加水分解(ケン化)することによってEVOHを製造することができる。
【0042】
このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のケン化度は、ガスバリア性に優れることから、80重量%以上の範囲である。エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のケン化度が80重量%未満の範囲ではガスバリア性に劣るため好ましくない。
【0043】
また、EVOHはエチレン単位及びビニルアルコール単位に加えて、少量であれば他の構成単位を有していてもよい。
【0044】
このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えばクラレ(株)からエバール、三菱ケミカル(株)からソアノール、Gソアノールの商品名で各々市販されている。
【0045】
このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のISO1133に準拠して測定した190℃におけるメルトマスフローレート(温度190℃、荷重2.16kg、以下、「MFREVOH」と略す)は、成形性及びフィルム外観の観点から、1.0g/10分以上8.0g/10分以下の範囲が好ましく、1.0g/10分以上6.0g/10分以下であることがより好ましく、1.0g/10分以上3.0g/10分以下であることが最も好ましい。また、エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のISO1133に準拠して測定した210℃におけるメルトマスフローレート(温度210℃、荷重2.16kg)は、成形性及びフィルム外観の観点から、2.5~20.0g/10分の範囲が好ましく、2.5~15.0g/10分であることがより好ましく、2.5~7.5g/10分であることが最も好ましい。
【0046】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のISO1183-3に準拠して測定した20℃における密度(以下、「DEVOH」と略す)は、フィルム外観及び接着性の観点から、1190kg/m3未満が好ましく、1100~1180kg/m3であることがより好ましく、1140~1180kg/m3であることが最も好ましい。
【0047】
また、フィルム外観及び接着性に優れることから、エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のC2(mol%)とDEVOH(kg/m3)が下式(1)を満たすことが好ましく、下式(2)を満たすことがより好ましい。
【0048】
DEVOH<-4.265×C2+1325 (1)
DEVOH<-4.265×C2+1315 (2)
基材層は特に限定はなく、用途に応じ適時選択され、合成高分子重合体から形成されるフィルムや織布、不織布、さらに金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。合成高分子重合体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂などが挙げられる。ここで、基材層を構成する合成高分子重合体は、ポリオレフィン(a)と同じであってもよく、異なっていてもよい。更に、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着、アクリル処理されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、上質紙、伸張紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。これらの基材を1種単独、もしくは2種以上積層したものを用いてもよい。
【0049】
本発明の積層体は、少なくとも基材層と基材層側から(C)層/(B)層/(A)層を含むことを特徴とするものであり、これらの4成分のみからなるものだけでなく他の成分、例えば(D)層、(E)層、(F)層を含んでいてもよい。具体的には、基材層/(C)層/(B)層/(A)層、(D)層/基材層/(C)層/(B)層/(A)層、基材層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層、(E)層/基材層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層、基材層/(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層、(F)層/基材層/(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層などが例示される。なお、層の間の記号/は、隣接する層であることを表している。
【0050】
(D)層、(E)層及び(F)層としては、合成高分子重合体から形成される層や織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂など合成高分子重合体から形成される層等が挙げられる。更に、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着、アクリル処理されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、上質紙、伸張紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。
【0051】
これらの積層体の中で、生産性、ガスバリア性に優れることから、少なくとも隣接してなる基材層/(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体、すなわち、基材層と(C)層の間に、さらに(E)層/(D)層を含み、(E)層が基材層と隣接し、(D)層が(C)層と隣接し、(E)層がポリオレフィン(e)、(D)層がエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(d)であることを特徴とする積層体であることが好ましい。ここで、(A)層を構成するポリオレフィン(a)及び(E)層を構成するポリオレフィン(e)は同一であってもよく、相異なってもよいが、生産性の観点から、同一の成分であることがより好ましい。また、(B)層を構成するエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(b)及び(D)層を構成するエチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物(e)は同一であってもよく、相異なってもよいが、生産性の観点から、同一の成分であることがより好ましい。
【0052】
積層体を得る押出ラミネート加工法としては特に限定はなく、各層を順に積層するタンデムラミネート加工法、いくつかの層を同時に積層する共押出ラミネート加工法などの各種押出ラミネート加工法を例示することができる。これらの中で、コストの観点から(C)層/(B)層/(A)層、若しくは(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層が共押出ラミネート加工法により同時に形成されていることが好ましい。また、最も好ましくは(A)層と(E)層が同一の成分であり、かつ(B)層と(D)層が同一の成分となる3種5層押出ラミネート加工法である。このような押出ラミネート加工法における樹脂の温度は180~280℃の範囲が好ましく、冷却ロールの表面温度は10~50℃の範囲が好ましい。
【0053】
また、押出ラミネート加工において、基材層と隣接する層を構成する熱可塑性樹脂を溶融状態で押出し層とした直後に、該層の基材接着面を含酸素気体又は含オゾン気体に曝し、基材と貼り合わせる手法を用いると、基材層との接着性に優れることから好ましい。含オゾン気体により熱可塑製樹脂と基材との接着性を向上させる場合は、オゾンガスの処理量としては、ダイより押出された熱可塑製樹脂よりなるフィルム1m2当たり0.5mg以上のオゾンを吹き付けることが好ましい。
【0054】
本発明の積層体を得る手法における押出ラミネート加工法は、熱可塑製樹脂層と基材層との接着性をさらに向上させるため、各層の樹脂が発泡しない程度の温度、例えば30℃~60℃の温度で10時間以上熱処理することができる。また必要に応じて、基材層の接着面に対してコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。また、必要であれば基材層にアンカーコート剤を塗布しても良い。
【0055】
(A)層の厚みは、易開封性、開封外観、封緘性に優れることから、1μm以上15μm以下の範囲であり、より好ましくは3μm以上10μm以下の範囲であり、最も好ましくは3μm以上6μm以下の範囲である。(A)層の厚みが1μm未満では封緘性に劣るため好ましくなく、15μmを超える範囲では易開封性及び開封外観に劣るため好ましくない。
【0056】
また、(A)層と(B)層の接着強度は、易開封性、開封外観、封緘性に優れることから、0.1N/15mm以上3.0N/15mm以下の範囲であり、より好ましくは0.5N/15mm以上2.0N/15mm以下の範囲である。(A)層と(B)層の接着強度が0.1N/15mm未満の範囲では封緘性に劣るため好ましくなく、3.0N/15mmを超える範囲では易開封性及び開封外観に劣るため好ましくない。
【0057】
このような接着強度の測定方法は、(A)層と(B)層の界面を剥離した後15mm巾に切り出した積層体を用いて、引張試験機テンシロンRTE-1210((株)オリエンテック製)にて引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定した値である。
【0058】
本発明の易開封性積層体は、フィルム外観、接着性及び酸素等に対するガスバリア性が高いものとなり、かつ易開封性に優れることから、これらの性質が要求される食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材や容器などに好適に使用することができる。
【実施例0059】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)メルトマスフローレート(MFR)
MFRは、JIS K6922-1(1997年)、JIS K6924-1(1997年)、ISO1133のいずれかに準拠して測定した。
(2)密度
密度は、JIS K6922-1(1997年)、JIS K6924-1(1997年)、ISO1183-3のいずれかに準拠して測定した。
(3)酢酸ビニル含量
酢酸ビニル含量(VAc)は、JIS K6924-2(1997年)に準拠して測定した。
(4)ケン化度
ケン化度は、JIS K6924-2(1997年)に準拠して測定したケン化前後の酢酸ビニル含量を用いて計算した。
(5)溶融張力(MS)
23℃に設定した恒温室内において、温度を190℃に設定し、長さが8mm、直径が2.095mm、流入角が90°のダイス及び保温チャンバーを装着したバレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ)に、ポリオレフィン18gを充填し、ピストン降下速度を10mm/分、引取速度10m/分に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力(MS)として測定した。
(6)マイグレーション
マイグレーションは、加工速度50m/分で実施例に記載の厚みとなるように各押出機の回転数を設定し、Tダイから押し出された溶融膜を目視で測定した。ダイ直下の溶融膜を観察し、溶融膜の両端に発生しているEVOH層が回り込んでいない幅を測定し、溶融膜両端での総和をマイグレーション(mm)とした。マイグレーションが小さいほど生産性に優れる。
(7)最高加工速度/延伸性
最高加工速度は、易開封性積層体の厚みが実施例記載の厚みになるように、各押出機の回転数と加工速度を連動して上昇させ、フィルム破断が発生した加工速度を最高加工速度(m/分)とした。最高加工速度が大きいほど延伸性及び生産性に優れる。
(8)シーラントフィルムの作成
MFRが8g/10分、密度が919kg/m3である高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン203、以下LDPEと略す)を330℃に設定した直径40mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン(株)製)へ供給し、330℃の温度でTダイより押し出し、PET25μm、アンカーコート剤、ポリエチレン15μmの順に積層してなるPET/PE基材(朋和産業(株)製)上に加工速度50m/分、エアギャップ長さが110mmでLDPEの厚さが15μmになるよう単層押出ラミネート成形を行い、PET、アンカーコート剤、ポリエチレン、LDPEの順に積層されてなるシーラントフィルムを得た。
(9)接着強度
実施例により得られた易開封性積層体及びシーラントフィルムを巾100mm、長さ100mmに切り出し、易開封性積層体の(A)層とシーラントフィルムのLDPE面を重ね、ヒートシール試験機TP-701B(テスター産業(株)製)を用いて設定温度160℃、片面加熱(シーラントフィルム側)、エアー圧力0.3MPa、シール時間2秒間で幅10mm、長さ300mmのシールバーでヒートシールを行った。この試験片を手で剥離し(A)層と(B)層の界面を剥離した後、15mm幅に切り出し、引張試験機テンシロンRTE-1210((株)オリエンテック製)を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180°で剥離試験を行い、接着強度(N/15mm)を測定した。
(10)開封強度/開封外観/封緘性/リシール性
易開封性積層体の(A)層とシーラントフィルムのLDPE面を重ね、ヒートシール試験機TP-701B(テスター産業(株)製)を用いて設定温度160℃、片面加熱(シーラントフィルム側)、エアー圧力0.3MPa、シール時間2秒間で幅10mm、長さ300mmのシールバーでヒートシールを行った。この試験片を15mm幅に切り出し、引張試験機テンシロンRTE-1210((株)オリエンテック製)を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で剥離試験を行い、開封強度(N/15mm)を測定した。
【0060】
易開封性に関しては、開封強度(N/15mm)が20以上で×、15以上20未満で△、10以上15未満で〇、10未満で◎とした。開封強度(N/15mm)が20未満で易開封性は良好とした。
【0061】
次に、開封外観に関しては、開封強度測定後に易開封性積層体側のシール部を目視で観察し、剥離開始点及び剥離終了点のいずれも(A)層が破断するエッジ切れが良好であれば◎、剥離開始点もしくは剥離終了点のいずれかのエッジ切れが良好であれば〇、剥離開始点及び剥離終了点のいずれもエッジ切れが不良であれば△、エッジ切れが発生せず(A)層と(B)層の層間剥離と(A)層とシーラントフィルムのLDPEとの界面剥離が同時に起こる三角剥離が発生した場合は×とした。開封外観は三角剥離が発生しなければ良好とした。
【0062】
また、封緘性に関しては、開封強度(N/15mm)が2未満で×、2以上3未満で△、3以上5未満で〇、5以上で◎とした。封緘性は開封強度(N/15mm)が2以上で良好とした。
【0063】
最後に、リシール性に関しては、開封強度測定後のシール部の剥離面を指で触れて評価した。剥離面に粘着性を感じなかった場合は×、粘着性をやや感じた場合は△、粘着性をはっきりと感じた場合は〇、粘着性をはっきり感じ指を剥離面から離す際に抵抗感も感じた場合は◎とした。リシール性は指で触れた評価が×でなければ良好とした。
【0064】
実施例1
(A)層及び(E)層を構成するポリオレフィンとしてMFRが3.7g/10分、密度が923kg/m3である高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン225)を30重量部、MFRが4.0g/10分、密度が922kg/m3である高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン190)を70重量部になるように配合し、単軸押出機(プラコー(株)製 口径40mm)にて樹脂温度160℃で溶融混練した低密度ポリエチレン組成物(MFRPO 3.9g/10分、密度 922kg/m3、MSPO 33mN)(A1)を、(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物としてケン化前のVAcが50重量%、ケン化度が24重量%、MFRADDが3.0g/10分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)を、(C)層を構成するエチレン・ビニルアルコール共重合体としてMFREVOHが2.0g/10分、C2が32mol%、DEVOHが1160kg/m3、210℃におけるMFRが4.1g/10分であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールSP482B)(C1)、基材層として坪量が300g/m2である板紙(日本製紙(株)製、コップ原紙未コート品)を使用した。
【0065】
まず、(A1)を260℃に設定した直径40mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン(株)製)へ供給し、(B1)を260℃に設定した直径40mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン(株)製)へ供給し、(C1)を260℃に設定した直径40mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン(株)製)へ供給し、260℃の温度でTダイより押し出し、加工速度50m/分で(A1)、(B1)、(C1)、(B1)、(A1)がそれぞれ5μm、5μm、5μm、5μm、5μmの厚さとなる押出回転数に設定し、その溶融膜からマイグレーションを評価した。次に、厚み25μmであるPETフィルム(東洋紡(株)製、商品名東洋紡ポリエステルフィルムE5100)上に加工速度20m/分、エアギャップ長さが110mmで(A1)、(B1)、(C1)、(B1)、(A1)がそれぞれ5μm、5μm、5μm、5μm、5μmの厚さになるよう3種5層押出ラミネート成形を開始し、押出回転数と加工速度を連動して上昇させ最高加工速度を評価した。そして、3種5層押出ラミネート成形の直前に(A1)との接着面に31W・分/m2の処理強度でコロナ処理を施した板紙上に(A1)、(B1)、(C1)、(B1)、(A1)がそれぞれ5μm、5μm、5μm、5μm、5μmの厚さになるよう加工速度50m/分、エアギャップ長さが110mmで3種5層押出ラミネート成形を行い、更にTダイから押し出した直後の溶融状態である3種5層フィルムの板紙と接着する(A1)層表面に78mg/m2の処理強度でオゾン処理を施すことで、板紙、ポリオレフィン(A1)((E)層)、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)((D)層)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(C1)((C)層)、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)((B)層)、ポリオレフィン(A1)((A)層)の順に積層されてなる積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0066】
実施例2
(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、ケン化前のVAcが50重量%、ケン化度が45重量%、MFRADDが3.0g/10分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
実施例3
(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、ケン化前のVAcが50重量%、ケン化度が70重量%、MFRADDが3.0g/10分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B3)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
実施例4
(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、ケン化前のVAcが42重量%、ケン化度が30重量%、MFRADDが50g/10分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B4)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
実施例5
(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、ケン化前のVAcが80重量%、ケン化度が22重量%、MFRADDが3.0g/10分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B5)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例6
(A)層および(E)層の厚みをそれぞれ3μmとしたこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
実施例7
(A)層および(E)層の厚みをそれぞれ8μmとしたこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0072】
実施例8
(A)層および(E)層の厚みをそれぞれ15μmとしたこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
実施例9
(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B1)100重量部に対し、粘着付与剤として軟化温度が125℃である水添石油樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名アルコンP125、TK1)10重量部をタンブラー混合機で予備ブレンドし、二軸押出機((株)日本製鋼所製、30mmφ同方向2軸押出機TEX30)を用い160℃で溶融混練したエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B6)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
実施例10
(A)層及び(E)層を構成するポリオレフィンとしてMFRPOが3.7g/10分、密度が924kg/m3、MSPOが105mNである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン225)(A2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表2に示す。
【0076】
実施例11
(A)層及び(E)層を構成するポリオレフィンとしてMFRPOが13.0g/10分、密度が919kg/m3、MSPOが13mNである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン212)(A3)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
実施例12
(C)層を構成するエチレン・ビニルアルコール共重合体としてMFREVOHが1.9g/10分、C2が33mol%、DEVOHが1180kg/m3、210℃におけるMFRが4.0g/10分であるエチレン・ビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル(株)製 商品名GソアノールGC3304B)(C2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表2に示す。
【0078】
実施例13
(C)層を構成するエチレン・ビニルアルコール共重合体としてMFREVOHが1.7g/10分、C2が32mol%、DEVOHが1190kg/m3、210℃におけるMFRが4.1g/10分であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールF171B)(C2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表2に示す。
【0079】
比較例1
(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、ケン化前のVAcが28重量%、ケン化度が30重量%、MFRADDが5.0g/10分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B7)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表2に示す。接着強度が高く、開封外観及びリシール性に劣っていた。
【0080】
比較例2
(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、ケン化前のVAcが50重量%、ケン化度が0重量%、MFRADDが3.0g/10分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体未ケン化物(B8)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表2に示す。接着強度が高く、開封外観に劣っていた。
【0081】
比較例3
(B)層及び(D)層を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、ケン化前のVAcが42重量%、ケン化度が90重量%、MFRADDが40g/10分であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(B9)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表2に示す。接着強度が低く、開封外観及びリシール性に劣っていた。
【0082】
比較例4
(A)層及び(E)層の厚みを20μmとしたこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最高加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、接着強度、開封強度、開封外観、リシール性を評価した。結果を表2に示す。開封強度及び開封外観に劣っていた。
【0083】
【0084】
実施例記載のエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のエチレン含量C
2(mol%)と密度D
EVOH(kg/m
3)の関係を
図1に示す。この図の通り、明細書記載の式(1)を満たす実施例12は、式(1)を満たさない実施例13よりも開封外観及び封緘性に優れる。更に、式(2)を満たす実施例1はより封緘性に優れる。
【0085】
なお、式(1)~式(2)の傾きについては、クラレ製エチレン・ビニルアルコール共重合体の内、標準グレードおよび準標準グレードのC2及びDEVOHを用いて算出した。具体的には、C2が27mol%、DEVOHが1210kg/m3であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールL171B)、C2が32mol%、DEVOHが1190kg/m3であるエチレン・ビニルアルコール共重合体(C3)、C2が35mol%、DEVOHが1180kg/m3であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールC109B)、C2が38mol%、DEVOHが1170kg/m3であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールH171B)、C2が44mol%、DEVOHが1140kg/m3であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールE105B)、C2が48mol%、DEVOHが1120kg/m3であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールG156B)のC2とDEVOHの相関から算出した。
本発明の易開封性は、接着性、ガスバリア性や易開封性が要求される積層体に用いることができ、特に、食品や飲料、医薬品などの包装材料に用いられる積層体に好適に使用することができる。