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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146408
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 23/04 20060101AFI20231004BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B32B23/04
B32B27/30 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053568
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 淳
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AJ04A
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK03C
4F100AK03D
4F100AK04A
4F100AK04E
4F100AK06D
4F100AK41A
4F100AK62D
4F100AK69B
4F100AL07C
4F100AT00A
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00C
4F100CB00E
4F100DG01A
4F100DG10A
4F100EH20
4F100EH41A
4F100GB16
4F100JA06D
4F100JA13B
4F100JL01
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】 ガスバリア性、接着性、二次加工性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】 少なくとも基材層と基材層側から隣接してなる(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、基材層が(i)~(ii)を満たす複合基材(S)、(A)層がポリオレフィン(a)、(B)層が接着性樹脂(b)、(C)層が(iii)を満たすエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)から構成されることを特徴とする積層体を用いる。
(i)セルロース系材料と熱可塑性樹脂を含む
(ii)セルロース系材料の含有率が25重量%以上75重量%以下
(iii)エチレン含量Cが50mol%以下
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層と、基材層側から隣接してなる(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、基材層が(i)~(ii)を満たす複合基材(S)、(A)層がポリオレフィン(a)、(B)層が接着性樹脂(b)、(C)層が(iii)を満たすエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)から構成される、積層体。
(i)セルロース系材料と熱可塑性樹脂を含む
(ii)セルロース系材料の含有率が25重量%以上75重量%以下
(iii)エチレン含量Cが50mol%以下
【請求項2】
複合基材(S)に含まれるセルロース系材料の含有率が35重量%以上65重量%以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
複合基材(S)に含まれるセルロース系材料がパルプ繊維及び/又は紙類の粉砕品である、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項4】
複合基材(S)が紙類の粉砕品とポリオレフィン及び/又はポリエステルを含む熱可塑性樹脂との溶融混練品からなるシートである請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
複合基材(S)がパルプ繊維とポリオレフィン繊維及び/又はポリエステル繊維との混抄紙である、請求項3に記載の積層体。
【請求項6】
ポリオレフィン(a)が(iv)~(vi)を満たす、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の積層体。
(iv)JIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(MFRPO)が1.0g/10分以上10.0g/10分以下
(v)温度190℃、引取速度10m/分で測定した溶融張力(MSPO)が3mN以上50mN以下
(vi)MFRPO(g/10分)とMSPO(mN)の積MFRPO×MSPOが70以上250以下
【請求項7】
ポリオレフィン(a)がエチレン・α-オレフィン共重合体及び/又は高圧法低密度ポリエチレンを含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
接着性樹脂(b)が無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のC(mol%)とISO1183-3により測定した20℃における密度DEVOH(kg/m)が下式(1)を満たす、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の積層体。
EVOH<-4.265×C+1325 (1)
【請求項10】
基材層と(C)層の間に、さらに(E)層/(D)層を含み、(E)層が基材層と隣接し、(D)層が(C)層と隣接し、(E)層がポリエチレン(e)、(D)層が接着性樹脂(d)から構成される、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の積層体
【請求項11】
(C)層/(B)層/(A)層、若しくは(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層が共押出ラミネート成形により同時に形成する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の積層体を二次加工により成形する、容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材料として、内容物劣化の防止を目的に、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性などに優れるエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略すことがある)が、種々の用途で使用され、板紙などの紙基材にポリエチレン系樹脂、酸変性ポリオレフィン、EVOHを共押出した積層体(例えば、特許文献1参照)などが生産されている。
【0003】
しかし、このような紙基材を用いた積層体を熱シールにより製函した場合、そのシール部から酸素などが通過するため、容器としてガスバリア性が劣っていた。一方、シール部が発生しない真空成型や絞り成型などを実施しても、紙基材を用いた積層体は二次加工性を有していないため、成型できなかった。
【0004】
このような背景から、従来よりガスバリア性、接着性、二次加工性に優れる積層体が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開1992-234645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、優れたガスバリア性、接着性、二次加工性を示す積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の積層体が優れたガスバリア性、接着性、二次加工性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の各態様は、以下に示す[1]~[12]である。
[1] 少なくとも基材層と、基材層側から隣接してなる(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、基材層が(i)~(ii)を満たす複合基材(S)、(A)層がポリオレフィン(a)、(B)層が接着性樹脂(b)、(C)層が(iii)を満たすエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)から構成される、積層体。
【0009】
(i)セルロース系材料と熱可塑性樹脂を含む
(ii)セルロース系材料の含有率が25重量%以上75重量%以下
(iii)エチレン含量Cが50mol%以下
[2] 複合基材(S)に含まれるセルロース系材料の含有率が35重量%以上65重量%以下である、上記[1]に記載の積層体。
[3] 複合基材(S)に含まれるセルロース系材料がパルプ繊維及び/又は紙類の粉砕品である、上記[1]乃至[2]のいずれか一項に記載の積層体。
[4] 複合基材(S)が紙類の粉砕品とポリオレフィン及び/又はポリエステルを含む熱可塑性樹脂との溶融混練品からなるシートである上記[3]に記載の積層体。
[5] 複合基材(S)がパルプ繊維とポリオレフィン繊維及び/又はポリエステル繊維との混抄紙である、上記[3]に記載の積層体。
[6] ポリオレフィン(a)が(iv)~(vi)を満たす、上記[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の積層体。
【0010】
(iv)JIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(MFRPO)が1.0g/10分以上10.0g/10分以下
(v)温度190℃、引取速度10m/分で測定した溶融張力(MSPO)が3mN以上50mN以下
(vi)MFRPO(g/10分)とMSPO(mN)の積MFRPO×MSPOが70以上250以下
[7] ポリオレフィン(a)がエチレン・α-オレフィン共重合体及び/又は高圧法低密度ポリエチレンを含む、上記[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の積層体。
[8] 接着性樹脂(b)が無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含む、上記[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の積層体。
[9] エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のC(mol%)とISO1183-3により測定した20℃における密度DEVOH(kg/m)が下式(1)を満たす、上記[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の積層体。
【0011】
EVOH<-4.265×C+1325 (1)
[10] 基材層と(C)層の間に、さらに(E)層/(D)層を含み、(E)層が基材層と隣接し、(D)層が(C)層と隣接し、(E)層がポリエチレン(e)、(D)層が接着性樹脂(d)から構成される、上記[1]乃至[9]のいずれか一項に記載の積層体。
[11] (C)層/(B)層/(A)層、若しくは(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層が共押出ラミネート成形により同時に形成する、上記[1乃至10のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
[12] 上記[1]乃至[10]のいずれか一項に記載の積層体を二次加工により成型する、容器の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガスバリア性、接着性、二次加工性に優れた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一態様である積層体を詳細に説明する。
【0014】
本発明は少なくとも基材層と基材層側から隣接してなる(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、基材層が(i)~(ii)を満たす複合基材(S)、(A)層がポリオレフィン(a)、(B)層が接着性樹脂(b)、(C)層が(iii)を満たすエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)から構成される、積層体に関するものである。
【0015】
(i)セルロース系材料と熱可塑性樹脂を含む
(ii)セルロース系材料の含有率が25重量%以上75重量%以下
(iii)エチレン含量Cが50mol%以下
(A)層はポリオレフィン(a)により構成される。
【0016】
ポリオレフィン(a)としては、特に限定はなく、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体などが挙げられる。より具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのエチレン単独重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。ポリオレフィン(a)は、1種単独又は2種以上の組成物で用いてもよい。中でも、エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン系共重合体が易開封性に優れるため好ましく、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体がさらに好ましい。また成形性の観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体には高圧法低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
【0017】
高圧法低密度ポリエチレンの製造方法は、高圧ラジカル重合を例示することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社からペトロセンの商品名で市販されている。
【0018】
エチレン・α-オレフィン共重合体は、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法により、エチレンとα-オレフィンを共重合することで得ることができる。
【0019】
エチレン・α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのαーオレフィンの中で、易開封性に優れることから、炭素数5以下のα-オレフィンであることが好ましい。
【0020】
このようなエチレン・α-オレフィン共重合体は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロン-L、ニポロン-Z、ルミタックの商品名で各々市販されている。
【0021】
ポリオレフィン(a)のJIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(以下、「MFRPO」と略す)は、接着性樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体との共押出ラミネート加工性(マイグレーション)に優れることから、1.0g/10分以上10.0g/10分以下の範囲が好ましく、より好ましくは1.0g/10分以上6.0g/10分以下、最も好ましくは3.0g/10分以上5.0g/10分以下の範囲である。
【0022】
また、ポリオレフィン(a)の温度190℃、引取速度10m/分で測定した溶融張力(以下、「MSPO」と略す)は、生産性に優れるため、3mN以上50mN以下の範囲が好ましく、より好ましくは10mN以上45mN以下、最も好ましくは15mN以上40mN以下の範囲である。
【0023】
本発明におけるMSPOは、バレル直径9.55mmの毛管粘度計に長さが8mm、直径が2.095mm、流入角が90°であるダイス、及び、保温チャンバーを装着した条件で、押出速度10m/分、引取速度10m/分、設定温度190℃で測定した値である。
【0024】
ポリオレフィン(a)のMFRPO(g/10分)とMSPO(mN)の積MFRPO×MSPOは、生産性に優れることから、70以上250以下の範囲が好ましく、より好ましくは70以上200以下の範囲であり、最も好ましくは90以上160以下の範囲である。MFRPO×MSPOが70未満の範囲ではラミネート加工性に劣るため好ましくなく、250を超える範囲では延伸性に劣るため好ましくない。このようなMFRPO×MSPOは、ポリエチレンの溶融粘度に対する溶融弾性の比、つまりポリエチレンの溶融変形時の非線形性と相関する値となる。
【0025】
ポリオレフィン(a)のJIS K6922-1(1997年)により測定された密度(以下、単に密度と略す)は特に限定はなく、成形性に優れるため、910~930kg/mの範囲が好ましく、より好ましくは914~925kg/mの範囲である。
【0026】
ポリオレフィン(a)には、本目的が達成される限りにおいて、その他の熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0027】
ポリオレフィン(a)に熱可塑性樹脂を混合する時は、ポリオレフィンのペレットと熱可塑性樹脂のペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリオレフィンの融点~300℃程度が好ましい。
【0028】
また、ポリオレフィン(a)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0029】
本発明の積層体において、(B)層は接着性樹脂(b)により構成される。
【0030】
接着性樹脂(b)としては、本目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、例えば、成形用途で使用されるような公知のものを挙げることができる。このような接着性樹脂としては、マレイン酸や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸もしくはその無水物やボロン酸などで変性した酸変性ポリオレフィン、ポリアミドグラフト化ポリオレフィンなどのエチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体の変性物、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸との共重合体とそのアイオノマーなどが例示される。これらの中で、接着性、コストの観点から、少なくとも無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましく、より好ましくは無水マレイン酸変性ポリエチレン(以下、MAH-PEと略す)を含むことである。
【0031】
このような無水マレイン酸変性ポリオレフィンは特に限定はなく、オレフィン成分と無水マレイン酸との共重合体でもよく、無水マレイン酸でグラフト変性されたポリオレフィンでもよい。また、このような樹脂の製造方法も特に限定はない。
【0032】
無水マレイン酸変性ポリオレフィンを構成するオレフィン成分としては特に限定はなく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1ーヘキセン、1-オクテン、酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸などが例示でき、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0033】
このような無水マレイン酸変性ポリオレフィンの無水マレイン酸含有量は、接着性、フィルム外観に優れることから、0.10~1.2重量%が好ましく、より好ましくは0.40~1.0重量%、最も好ましくは0.40~0.80重量%である。
【0034】
このような樹脂は市販品の中から便宜選択することができ、例えばオレフィン成分と無水マレイン酸との共重合体として、ダウ・ケミカル日本(株)からアンプリファイの商品名で、SK Geo Centric Japan(株)からRotader、Bondine、OREVAC Tの商品名で各々市販されている。また、無水マレイン酸でグラフト変性されたポリオレフィンとして、例えば三井化学(株)からアドマーの商品名で、三菱ケミカル(株)からモディックの商品名で、ダウ・ケミカル日本(株)からフサボンドの商品名で、SK Geo Centric Japan(株)からOREVAC Gの商品名で、Addivant Japan合同会社からポリボンドの商品名で各々市販されている。
【0035】
接着性樹脂(b)としては、接着性、フィルム外観の観点から、少なくともポリオレフィンと無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物であることが好ましい。
【0036】
ポリオレフィン組成物は、接着性、フィルム外観の観点から、ポリオレフィンを50~90重量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを10~50重量部(ポリオレフィンと無水マレイン酸変性ポリオレフィンの合計は100重量部)含むものであり、より好ましくはポリオレフィンを65~85重量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを15~35重量部(ポリオレフィンと無水マレイン酸変性ポリオレフィンの合計は100重量部)含むものである。
【0037】
ポリオレフィンとしては、特に限定はなく、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体などが挙げられる。
【0038】
例えば、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのエチレン単独重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。ポリオレフィンは、1種単独又は2種以上の組成物で用いてもよい。中でも、成形性の観点から高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、ポリプロピレンからなる群の少なくとも1種が好ましく、これらの組成物が成形性にも優れるため最も好ましい。
【0039】
高圧法低密度ポリエチレンの製造方法は、高圧ラジカル重合を例示することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社からペトロセンの商品名で市販されている。高密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体及びエチレン・1-へキセン共重合体の製造方法は特に限定するものではないが、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロンハード、ニポロン-L、ニポロン-Z、ルミタックの商品名で各々市販されている。
【0040】
エチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法は特に限定されないが、高圧法ラジカル重合、溶液重合やラテックス重合等の公知の製造方法が挙げられ、このような樹脂は市販品の中から便宜選択することができ、エチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で市販されている。
【0041】
このようなポリオレフィン組成物の混合方法は特に限定はなく、ポリオレフィンのペレットと無水マレイン酸変性ポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、品質の安定性の観点から溶融混練した混合物の方が好ましい。
【0042】
このような溶融混練の方法は、各成分を均一に分散しうる溶融混練装置であれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、回転ロール、ラボプラストミルなどの溶融混練装置が挙げられる。溶融温度はポリオレフィンの融点~260℃程度が好ましい。
【0043】
接着性樹脂(b)のJIS K6922-1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(以下、「MFRADD」と略す)は、ポリオレフィン、エチレン・ビニルアルコール共重合体との共押出ラミネート加工性(マイグレーション)に優れることから、1.0g/10分以上10.0g/10分以下の範囲が好ましく、より好ましくは1.0g/10分以上6.0g/10分以下、最も好ましくは3.0g/10分以上5.0g/10分以下の範囲である。
【0044】
接着性樹脂(b)には、本目的が達成される限りにおいて、その他の熱可塑性樹脂を配合してもよい。接着性樹脂(b)に熱可塑性樹脂を混合する時は、エチレン・ビニルエステル共重合体ケン化物のペレットと熱可塑性樹脂のペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度は接着性樹脂の融点~300℃程度が好ましい。
【0045】
また、接着性樹脂(b)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、粘着付与剤、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0046】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のエチレン含量(以下、Cと略すことがある)は、ガスバリア性に優れることから、50mol%以下であり、好ましくは20~35mol%である。これにより、ガスバリア性がより向上する。ここで、C(mol%)はエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)に含まれるモノマー単位におけるエチレン成分の含有率のことである。
【0047】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)の製造方法としては、特に限定はなく、例えば、公知の方法にしたがって、エチレンと脂肪酸ビニルエステルとの共重合体を製造し、次いで、これを加水分解(ケン化)することによってEVOHを製造することができる。
【0048】
このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のケン化度は、ガスバリア性に優れることから80重量%以上の範囲であることが好ましい。
【0049】
また、EVOHはエチレン単位及びビニルアルコール単位に加えて、少量であれば他の構成単位を有していてもよい。
【0050】
このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えばクラレ(株)からエバール、三菱ケミカル(株)からソアノール、Gソアノールの商品名で各々市販されている。
【0051】
このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のISO1133に準拠して測定した190℃におけるメルトマスフローレート(温度190℃、荷重2.16kg、以下、「MFREVOH」と略す)は、成形性及びフィルム外観の観点から、1.0g/10分以上8.0g/10分以下の範囲が好ましく、1.0g/10分以上6.0g/10分以下であることがより好ましく、1.0g/10分以上3.0g/10分以下であることが最も好ましい。また、エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のISO1133に準拠して測定した210℃におけるメルトマスフローレート(温度210℃、荷重2.16kg)は、成形性及びフィルム外観の観点から、2.5~20.0g/10分の範囲が好ましく、2.5~15.0g/10分であることがより好ましく、2.5~7.5g/10分であることが最も好ましい。
【0052】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のISO1183-3に準拠して測定した20℃における密度(以下、「DEVOH」と略す)は、フィルム外観及び接着性の観点から、1190kg/m未満が好ましく、1100~1180kg/mであることがより好ましく、1140~1180kg/mであることが最も好ましい。
【0053】
また、フィルム外観及び接着性に優れることから、エチレン・ビニルアルコール共重合体(c)のC(mol%)とDEVOH(kg/m)が下式(1)を満たすことが好ましく、下式(2)を満たすことがより好ましい。
【0054】
EVOH<-4.265×C+1325 (1)
EVOH<-4.265×C+1315 (2)
なお、式(1)~式(2)の傾きについては、クラレ製エチレン・ビニルアルコール共重合体の内、標準グレードおよび準標準グレードのC及びDEVOHを用いて算出した。具体的には、Cが27mol%、DEVOHが1210kg/mであるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールL171B)、Cが32mol%、DEVOHが1190kg/mであるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールF171B)、Cが35mol%、DEVOHが1180kg/mであるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールC109B)、Cが38mol%、DEVOHが1170kg/mであるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールH171B)、Cが44mol%、DEVOHが1140kg/mであるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールE105B)、Cが48mol%、DEVOHが1120kg/mであるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールG156B)のCとDEVOHの相関から算出した。
本発明の積層体において、基材層はセルロース系材料と熱可塑性樹脂を含む複合基材(S)により構成される。
【0055】
複合基材(S)を構成するセルロース系材料としては特に限定はなく、機械パルプ繊維、化学パルプ繊維、ミクロフィブリル化セルロース、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルなどのナノセルロース材料、紙類の粉砕品、セロファンなどの変性セルロースからなるフィルム及びその粉砕品などが例示される。このような紙類としてはクラフト紙、上質紙、伸張紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。本発明の複合基材(S)を構成するセルロース系材料としてはこれらの1種または2種以上が用いられる。
【0056】
また、このようなセルロースについては変性処理をしていてもよい。このような変性セルロースとしては酢酸セルロースなどのエステルセルロース、メチルセルロースなどのエーテルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース、ビスコース、レーヨンなどが例示される。
【0057】
複合基材(S)を構成する熱可塑性樹脂としては特に限定はなく、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリオキシメチレンなどのポリアセタール、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸の重縮合物などの液晶ポリマー、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの結晶性熱可塑性樹脂やノルボルネンなどの環状オレフィンからなるシクロオレフィンポリマー、エチレンとノルボルネンなどの環状オレフィンとの共重合体であるエチレンシクロオレフィンコポリマー、ポリカーボネート、ビスフェノールAとテレフタル酸との共重合体であるポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレンを含む)とをポリマーアロイ化した変性ポリフェニレンエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルカーボネートなどの非晶性熱可塑性樹脂などが例示され、これらの1種または2種以上が用いられる。これらの中で、二次加工性に優れることから、熱可塑性樹脂はポリオレフィン及び/又はポリエステルであることが好ましい。
【0058】
このようなポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体などが挙げられる。
【0059】
例えば、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのエチレン単独重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。ポリオレフィンは、1種単独又は2種以上の組成物で用いてもよい。
【0060】
また、このようなポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール、またはビスフェノールAなどの芳香族ジオールの重縮合物などであり、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合物であるポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとの重縮合物であるポリブチレンテレフタレート、2,6-ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールの重縮合物であるポリエチレンナフタレートなどを例示することができる。これらの芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、芳香族ジオールはそれぞれ、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0061】
複合基材(S)におけるセルロース系材料と熱可塑性樹脂との複合化方法は特に限定はなく、セルロール系材料と熱可塑性樹脂ペレットとのドライブレンド、セルロース系材料と熱可塑性樹脂との溶融混練、セルロース系材料からなる繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維との混抄などが例示される。
【0062】
このような複合基材(S)の中で、二次加工性に優れることから、セルロース系材料とポリオレフィン及び/又はポリエステルとの溶融混練品からなるシート、もしくはパルプ繊維とポリオレフィン繊維及び/又はポリエステル繊維からなる混抄紙であることが好ましい。
【0063】
このようなセルロース系材料とポリオレフィン及び/又はポリエステルとの溶融混練品としては、パルプ繊維とポリプロピレンとの溶融混練品としてダイセルミライズ(株)からセルブレンの商品名で、紙類の粉砕品とポリオレフィンの溶融混練品として(株)環境経営総合研究所からMAPKAの商品名で、セルロースナノファイバーとポリオレフィンとの溶融混練品として大王製紙(株)よりセルロース複合樹脂ペレットの商品名で、星光PMC(株)よりSTARCELの商品名で各々市販されている。また、紙類の粉砕品とポリオレフィンの溶融混練品からなるシートとして(株)環境経営総合研究所からMAPKA Sheetの商品名で市販されている。
【0064】
また、このようなセルロース系材料からなる繊維と熱可塑性樹脂からなる繊維の混抄紙としては、パルプ繊維とポリエステル繊維との混抄紙として(株)巴川製紙よりコンバージョンシートの商品名で、廣瀬製紙(株)よりHOS-PFの商品名で、金星製紙(株)よりエアレイドの商品名で、パルプ繊維とポリオレフィン繊維との混抄紙として金星製紙(株)よりエアレイドの商品名で、パルプ繊維とポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維との混抄紙として大王製紙(株)より化繊混抄紙の商品名で、金星製紙(株)よりエアレイドの商品名で、レーヨン繊維と熱可塑性樹脂繊維の混抄紙として金星製紙(株)よりケミカルボンドの商品名で各々市販されている。
【0065】
複合基材(S)におけるセルロース系材料の含有率は、二次加工性、積層体の外観に優れることから、25重量%以上75重量%以下の範囲であり、より好ましくは35重量%以上65重量%以下の範囲、最も好ましくは45重量%以上55重量%以下の範囲である。セルロース系材料の含有率が25重量%未満の範囲では積層体の外観に劣るため好ましくなく、75重量%を超える範囲では二次加工性に劣るため好ましくない。
【0066】
複合基材(S)における坪量(g/m)若しくは厚み(mm)については特に限定はなく、用途に応じて適時選択される。
【0067】
本発明の一態様である積層体は、少なくとも基材層と基材層側から(C)層/(B)層/(A)層を含むことを特徴とするものであり、これらの4成分のみからなるものだけでなく他の成分、例えば(D)層、(E)層、(F)層を含んでいてもよい。具体的には、基材層/(C)層/(B)層/(A)層、(D)層/基材層/(C)層/(B)層/(A)層、基材層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層、(E)層/基材層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層、基材層/(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層、(F)層/基材層/(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層などが例示される。なお、層の間の記号/は、隣接する層であることを表している。
【0068】
(D)層、(E)層及び(F)層としては、合成高分子重合体から形成される層や織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂など合成高分子重合体から形成される層等が挙げられる。更に、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着、アクリル処理されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、上質紙、伸張紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。
【0069】
これらの積層体の中で、生産性、ガスバリア性に優れることから、少なくとも隣接してなる基材層/(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層を含む積層体であって、(E)層がポリエチレン(e)、(D)層が酸変性ポリプロピレン(d)であることを特徴とする積層体であることが好ましい。ここで、(A)層を構成するポリエチレン(a)及び(E)層を構成するポリエチレン(e)はそれぞれ独立して同一であってもよく、相異なってもよいが、生産性の観点から、同一の成分であることがより好ましい。また、(B)層を構成する酸変性ポリプロピレン(b)及び(D)層を構成する酸変性ポリプロピレン(e)はそれぞれ独立して同一であってもよく、相異なってもよいが、生産性の観点から、同一の成分であることがより好ましい。
積層体を得る押出ラミネート加工法としては特に限定はなく、各層を順に積層するタンデムラミネート加工法、いくつかの層を同時に積層する共押出ラミネート加工法などの各種押出ラミネート加工法を例示することができる。これらの中で、コストの観点から(C)層/(B)層/(A)層、若しくは(E)層/(D)層/(C)層/(B)層/(A)層が共押出ラミネート加工法により同時に形成されていることが好ましい。また、最も好ましくは(A)層と(E)層が同一の成分であり、かつ(B)層と(D)層が同一の成分となる3種5層押出ラミネート加工法である。このような押出ラミネート加工法における樹脂の温度は180~280℃の範囲が好ましく、冷却ロールの表面温度は10~50℃の範囲が好ましい。
【0070】
また、押出ラミネート加工において、基材層と隣接する層を構成する熱可塑性樹脂を溶融状態で押出し層とした直後に、該層の基材接着面を含酸素気体又は含オゾン気体に曝し、基材と貼り合わせる手法を用いると、基材層との接着性に優れることから好ましい。含オゾン気体により熱可塑製樹脂と基材との接着性を向上させる場合は、オゾンガスの処理量としては、ダイより押出された熱可塑製樹脂よりなるフィルム1m当たり0.5mg以上のオゾンを吹き付けることが好ましい。
【0071】
積層体を得る手法における押出ラミネート加工法は、熱可塑製樹脂層と基材層との接着性をさらに向上させるため、各層の樹脂が発泡しない程度の温度、例えば30℃~60℃の温度で10時間以上熱処理することができる。また必要に応じて、基材層の接着面に対してコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。また、必要であれば基材層にアンカーコート剤を塗布しても良い。
【0072】
積層体は、二次加工を行うことで熱シールをせずに容器を成型することができる。そのため、熱シールにより製函する容器と比較してガスバリア性に優れる。このような二次加工については特に限定はなく、真空成型、圧空成型、真空圧空成型、絞り成型、プレス成型などが例示される。
【0073】
積層体は、フィルム外観、接着性及び酸素等に対するガスバリア性が高いものとなり、かつ二次加工性に優れることから、これらの性質が要求される食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材や容器などに好適に使用することができる。
【実施例0074】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)メルトマスフローレート(MFR)
MFRは、JIS K6922-1(1997年)、ISO1133のいずれかに準拠して測定した。
(2)密度
密度は、JIS K6922-1(1997年)、ISO1183-3のいずれかに準拠して測定した。
(3)溶融張力(MS)
23℃に設定した恒温室内において、温度を190℃に設定し、長さが8mm、直径が2.095mm、流入角が90°のダイス及び保温チャンバーを装着したバレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ)に、ポリオレフィン18gを充填し、ピストン降下速度を10mm/分、引取速度10m/分に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力(MS)として測定した。
(4)マイグレーション
マイグレーションは、加工速度50m/分で実施例に記載の厚み(10/5/5/5/10μm)となるように各押出機の回転数を設定し、Tダイから押し出された溶融膜を目視で測定した。ダイ直下の溶融膜を観察し、溶融膜の両端に発生しているEVOH層が回り込んでいない幅を測定し、溶融膜両端での総和をマイグレーション(mm)とした。マイグレーションが小さいほど生産性に優れる。
(5)最高加工速度/生産性
最高加工速度は、積層体の厚みが実施例記載の厚み(10/5/5/5/10μm)となるように、各押出機の回転数と加工速度を連動して上昇させ、フィルム破断が発生した加工速度を最高加工速度(m/分)とした。最高加工速度が大きいほど生産性に優れ、最高加工速度が20未満で×、20以上50未満で△、75以上で〇とし、△~〇の判定で生産性は良好とした。
(6)積層体の外観
積層体の外観は、実施例に得られた積層体の基材側を目視で観察して評価した。基材に顕著な凹凸が発生した場合は×、若干の凹凸が発生した場合は△、凹凸が発生しなかった場合を〇とし、△~〇の判定で外観は良好とした。
(7)真空成型/二次加工性
底面内径が58.0mm、絞り深さが5.8mm、絞り角度が10°である金型(ケミカルウッド製、凹型、複数個の脱気穴(1mmφ)あり)を装着したコンパクト真空成型機450DT(Formech社製)に実施例により得られた積層体を設置し(加熱面 積層体の(A)層面 、吸引面 積層体の複合基材(S)面)、ヒーターの表面温度が500℃となるヒーター出力設定(ヒーター1 84%、ヒーター2 84%、ヒーター3 94%、ヒーター4 86%)、加熱時間30秒、成型時間20秒で真空成型を行った。真空成型後の積層体を観察し二次加工性を評価した。積層体が破断した場合、若しくは賦形できなった場合は×、賦形できたものの型当たり面がシャープでない場合は△、型当たり面がややシャープであった場合は〇、型当たり面がシャープであった場合は◎とし、△~◎の判定で二次加工性は良好とした。
【0075】
実施例1
(A)層及び(E)層を構成するポリエチレンとしてMFRが3.7g/10分、密度が923kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン225)を30重量部、MFRが4.0g/10分、密度が922kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン190)を70重量部になるように配合し、単軸押出機(プラコー(株)製 口径40mm)にて樹脂温度160℃で溶融混練した低密度ポリエチレン組成物(MFRPO 3.9g/10分、密度 922kg/m、MSPO 33mN)(A1)を、(B)層及び(D)層を構成する接着性樹脂としてポリエチレン(A1)を80重量部、MFRが7.0g/10分、密度が930kg/m、MAH含量が0.60重量%である無水マレイン酸変性ポリエチレン(SK Geo Centric Japan(株)製 商品名OREVAC G OE850、M1)を20重量部になるよう配合し、単軸押出機(プラコー(株)製 口径40mm)にて樹脂温度160℃で溶融混練したポリオレフィン樹脂組成物(MFRADD 4.4g/10分、密度 926kg/m、MAH含量 0.12重量%)(B1)を、(C)層を構成するエチレン・ビニルアルコール共重合体としてMFREVOHが2.0g/10分、エチレン含量が32mol%、ケン化度が100重量%、密度が1160kg/m、210℃におけるMFRが4.1g/10分であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製 商品名エバールSP482B)(C1)、基材層であるセルロース系材料と熱可塑性樹脂の複合基材(S)としてパルプ繊維とポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維からなる混抄紙(大王製紙(株)製、商品名 化繊混抄紙、坪量 25g/m セルロース系材料含有率 55重量%)(S1)を使用した。
【0076】
まず、(A1)を260℃に設定した直径40mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン(株)製)へ供給し、(B1)を260℃に設定した直径40mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン(株)製)へ供給し、(C1)を260℃に設定した直径40mmφのスクリューを有する単軸押出機(住友重機械モダン(株)製)へ供給し、260℃の温度でTダイより押し出し、以下に示す押出ラミネートフィルムを作成する時の押出回転数に設定し、その溶融膜からマイグレーションを評価した。次に、厚み25μmであるPETフィルム(東洋紡(株)製、商品名東洋紡ポリエステルフィルムE5100)上に加工速度20m/分、エアギャップ長さが110mmで(A1)、(B1)、(C1)、(B1)、(A1)がそれぞれ10μm、5μm、5μm、5μm、10μmの厚さになるよう3種5層押出ラミネート成形を開始し、押出回転数と加工速度を連動して上昇させ最高加工速度を評価した。そして、3種5層押出ラミネート成形の直前に(E)層との接着面に31W・分/mの処理強度でコロナ処理を施した複合基材(S1)上に加工速度50m/分、エアギャップ長さが110mmで(A1)、(B1)、(C1)、(B1)、(A1)がそれぞれ10μm、5μm、5μm、5μm、10μmの厚さになるよう3種5層押出ラミネート成形を行い、更にTダイから押し出した直後の溶融状態である3種5層フィルムの複合基材(S1)と接着する(E)層表面に78mg/mの処理強度でオゾン処理を施すことで、複合基材(S1)、ポリエチレン(A1)((E)層)、接着性樹脂(B1)((D)層)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(C1)((C)層)、接着性樹脂(B1)((B)層)、ポリエチレン(A1)((A)層)の順に積層されてなる積層体を得た。得られた積層体を用いて、積層体の外観、二次加工性を評価した。結果を表1に示す。
【0077】
実施例2
基材層であるセルロース系材料と熱可塑性樹脂の複合基材(S)として紙類の粉砕品である紙粉パウダーとポリオレフィンの溶融混練品からなるシート((株)環境経営総合研究所、商品名 MAPKA Sheet、厚み 0.37mm セルロース系材料含有率 51重量%)(S2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最大加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、積層体の外観、二次加工性を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
実施例3
(A)層及び(E)層を構成するポリエチレンとしてMFRPOが3.7g/10分、密度が923kg/m、MSPOが105mNである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン225)(A2)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最大加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、積層体の外観、二次加工性を評価した。結果を表1に示す。
【0079】
実施例4
(A)層及び(E)層を構成するポリエチレンとしてMFRPOが13g/10分、密度が919kg/m、MSPOが13mNである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン212)(A3)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最大加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、積層体の外観、二次加工性を評価した。結果を表1に示す。
【0080】
比較例1
基材層であるセルロース系材料と熱可塑性樹脂の複合基材(S)の代わりとしてクラフト紙(中越パッケージ(株)製、未晒クラフト紙 坪量 50g/m セルロース系材料含有率 100重量%)(S5)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最大加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、積層体の外観、二次加工性を評価した。結果を表1に示す。真空成型時に積層体の破断が発生したため、二次加工性に劣っていた。
【0081】
比較例2
基材層であるセルロース系材料と熱可塑性樹脂の複合基材(S)の代わりとして板紙(日本製紙(株)製、コップ原紙未コート品 坪量 300g/m セルロース系材料含有率 100重量%)(S6)を使用したこと以外は、実施例1と同様の手法によりマイグレーション、最大加工速度を評価したのち、積層体を得た。得られた積層体を用いて、積層体の外観、二次加工性を評価した。結果を表1に示す。真空成型時に積層体が賦形できなかったため、二次加工性に劣っていた。
【0082】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の積層体は、接着性、ガスバリア性や二次加工性が要求される積層体に用いることができ、特に、食品や飲料、医薬品などの包装材料に用いられる積層体に好適に使用することができる。