(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146473
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】表面保護フィルムおよび光学部品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231004BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231004BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231004BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B27/18 D
B32B27/00 L
B32B7/06
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053667
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智美
(72)【発明者】
【氏名】新見 洋人
(72)【発明者】
【氏名】積田 幸衣
(72)【発明者】
【氏名】山口 和哉
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA37B
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK36B
4F100AK42A
4F100AK52D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CA02B
4F100CA22B
4F100CB05C
4F100GB41
4F100JG01
4F100JG03B
4F100JK06
4F100JL06
4F100JL09
4F100JL13C
4F100JL14D
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】表面固有抵抗率の上昇が起こりにくく、かつ、外観検査が容易な表面保護フィルムおよび光学部品を提供する。
【解決手段】表面保護フィルム10は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルム1と、基材フィルム1の一方の面に形成された帯電防止層2と、基材フィルム1の、帯電防止層2とは反対側の面に形成された粘着剤層3と、を備える。帯電防止層2は、ナノカーボンを含む。帯電防止層2の厚みは0.05μm以上、1.50μm以下である。表面保護フィルム10のヘイズ値は4.0%以下である。表面保護フィルム10の全光線透過率は80.0%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に形成された帯電防止層と、前記基材フィルムの、前記帯電防止層とは反対側の面に形成された粘着剤層と、を備え、
前記帯電防止層は、ナノカーボンを含み、
前記帯電防止層の厚みは0.05μm以上、1.50μm以下であり、
ヘイズ値は4.0%以下であり、
全光線透過率は80.0%以上である、表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の、前記基材フィルムとは反対側に、剥離フィルムが貼合された、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤からなる、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の表面保護フィルムが被着体に貼合された、光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムおよび光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム等の光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品が用いられている。光学製品を製造、搬送する際には、光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することができる。
【0003】
光学製品の外観検査は、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うことができる。表面保護フィルムを貼合したまま外観検査を行うと、表面保護フィルムを剥がして再び貼合する手間を省くことができるため、作業効率を高めることができる。
【0004】
表面保護フィルムは、例えば、表面に帯電防止層が形成されている。帯電防止層を設けることにより、光学製品の製造工程において、表面保護フィルムを貼合した光学製品の搬送中やハンドリング時に静電気を抑えることができる。これにより、環境中の塵や埃の吸着を抑えることができる。
【0005】
特許文献1には、ポリエステルフィルムの片面に帯電防止層を設け、その層の上に汚れ防止層を設けた表面保護フィルムが開示されている。帯電防止層は、チオフェンおよび/またはチオフェン誘導体を重合して得られる導電性重合体を含む。この表面保護フィルムでは、時間の経過と共に、酸化劣化や光劣化に伴って表面固有抵抗率が上昇する場合がある。
【0006】
特許文献2に開示された表面保護フィルムは、ポリアニリンスルホン酸およびポリチオフェン類を含む帯電防止層を有する。特許文献2では、帯電防止層にポリアニリンスルホン酸を使用することで表面固有抵抗率の上昇(劣化)を抑えられるとしている。この表面保護フィルムでは、ポリアニリンスルホン酸の影響により表面保護フィルムの透視性に影響が及ぶことがある。そのため、外観検査の容易さの点で改善の余地があった。
【0007】
特許文献3に開示された表面保護フィルムは、活性水素基を有する樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、およびカーボンナノチューブを含む帯電防止層を有する。この保護フィルムでは、ヘイズ値が高めになり、透明度が低くなることにより、外観検査の容易さに影響が出る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-026817号公報
【特許文献2】再公表WO2018/012545号公報
【特許文献3】特開2007-105928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面固有抵抗率の上昇が起こりにくく、かつ、外観検査が容易な表面保護フィルムおよび光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に形成された帯電防止層と、前記基材フィルムの、前記帯電防止層とは反対側の面に形成された粘着剤層と、を備え、前記帯電防止層は、ナノカーボンを含み、前記帯電防止層の厚みは0.05μm以上、1.50μm以下であり、ヘイズ値は4.0%以下であり、全光線透過率は80.0%以上である表面保護フィルムを提供する。
【0011】
前記帯電防止層の厚みについては、厚みが薄いとヘイズ値が高くなる傾向があり、厚みが厚いと帯電防止剤自体の色により全光線透過率が低下する傾向にある。このため、より透明性を重視する場合は、帯電防止層の厚みは0.10μmから0.5μm程度が好ましく、さらに0.15μmから0.25μm程度が最も好ましい。
【0012】
前記表面保護フィルムは、前記粘着剤層の、前記基材フィルムとは反対側に、剥離フィルムが貼合されていてもよい。
【0013】
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤からなることが好ましい。
【0014】
本発明の他の態様は、前記表面保護フィルムが被着体に貼合された、光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様は、表面固有抵抗率の上昇が起こりにくく、かつ、外観検査が容易な表面保護フィルムおよび光学部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の表面保護フィルムを示した断面図である。
【
図2】実施形態の表面保護フィルムに剥離フィルムを貼合した剥離フィルム付き表面保護フィルムを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、実施形態の表面保護フィルムを示した断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る表面保護フィルム10は、基材フィルム1と、帯電防止層2と、粘着剤層3とを備える。帯電防止層2は、基材フィルム1の一方の面(
図1において上面)に形成されている。粘着剤層3は、基材フィルム1の、帯電防止層2とは反対側の面(
図1において下面)に形成されている。
【0018】
[基材フィルム]
基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが用いられる。これにより、表面保護フィルム10を、被着体である光学製品に貼合した状態で、光学製品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1としては、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルで形成されたフィルム(ポリエステルフィルム)が用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであってもよいし、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。延伸フィルムの延伸倍率、および、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方法の配向角度は、特定の値に制御してもよい。
【0019】
基材フィルム1のヘイズ値は、6.0%以下が好ましい。基材フィルム1のヘイズ値を6.0%以下とすることによって、表面保護フィルム10のヘイズ値を4.0%以下にすることができる。表面保護フィルム10のヘイズ値は、基材フィルム1単体のヘイズ値より低くなりやすい。表面保護フィルム10のヘイズ値が低くなるのは、次の理由によると推測できる。帯電防止層2および粘着剤層3によって基材フィルム1の表面が覆われるため、基材フィルム1の表面の微細凹凸は表面保護フィルム10の表面に現れにくくなる。そのため、表面凹凸を原因とする散乱光は少なくなる。その結果、表面保護フィルム10のヘイズ値は低くなる。「ヘイズ値」は、ヘイズ、ヘーズ、Hazeともいう。ヘイズ値は、例えば、JIS K7136「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」により測定することができる。
【0020】
「透明」とは、例えば、測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、全波長域における厚さ方向の透過率の平均値として算出される可視光透過率が50%以上(好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上)であることを意味する。光透過率は、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠して測定することができる。
【0021】
基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12μm~100μmとすることができる。基材フィルム1の厚みは、20μm~50μmであると基材フィルム1が取り扱い易くなるため、さらに好ましい。必要に応じて、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0022】
[帯電防止層]
帯電防止層2は、ナノカーボンを含む。帯電防止層2に用いられるナノカーボンとしては、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、およびフラーレンなどが挙げられる。カーボンナノチューブには、単層CNTと多層CNTがある。単層CNT、多層CNT、グラフェン、およびフラーレンは、いずれも帯電防止の機能の点で優れている。これらのうち単層CNT、グラフェン、およびフラーレンは高価なため、多層CNTが使用しやすい。ナノカーボンは、1種類の材料を使用してもよいし、複数種類の材料を併用してもよい。
【0023】
表面保護フィルム10は、帯電防止層2にナノカーボンを使用することにより、帯電防止層2の酸化劣化や光劣化に伴う表面固有抵抗率の上昇(劣化)を抑えることができる。
【0024】
帯電防止層2におけるナノカーボンの添加量は、例えば、0.1質量%以上、10質量%以下であってよい。ナノカーボンの添加量は、前記範囲の下限値以上であると、帯電防止層2の酸化劣化や光劣化に伴う表面固有抵抗率の上昇(劣化)を抑える効果を高めることができる。ナノカーボンの添加量は、前記範囲の上限値以下であると、ナノカーボンによる着色を抑え、表面保護フィルム10の全光線透過率を高くできる。
【0025】
帯電防止層2は、ナノカーボンを含む帯電防止剤を基材フィルム1に塗布することにより形成することができる。
ナノカーボンは、単体では皮膜強度が低くなるため、帯電防止剤には、バインダー樹脂、分散剤などを添加することが好ましい。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。帯電防止剤には、必要に応じて、バインダー樹脂を架橋(硬化ともいう)させるために架橋剤を加えてもよい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。
【0026】
帯電防止剤には、帯電防止剤の塗工性、帯電防止層2と基材フィルム1の密着性、帯電防止層2の皮膜強度、帯電防止層2の耐久性(耐摩耗性や耐溶剤性など)を向上する目的で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤(濡れ性改良剤)、密着性向上剤などを添加してもよい。
【0027】
帯電防止剤としては、市販の帯電防止剤用の塗料を使用してもよい。市販品としては、Denatron C-300、Denatron CD-001(以上、ナガセケムテック社製)、コルコートCS-3002、コルコートCS-3202(以上、コルコート社製)などが挙げられる。
【0028】
帯電防止層2を形成する方法は、公知の方法でよい。帯電防止層2の形成方法としては、例えば、次の方法をとることができる。基材フィルム1の表面に、ナノカーボンを含有した塗料(例えば、ナノカーボンとバインダー樹脂を含有した帯電防止剤)を公知の塗工方法により塗工する。塗工方法としては、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどがある。形成された塗膜に加熱、紫外線照射などを施すことにより、塗膜を固化させる。これにより、帯電防止層2が形成される。
【0029】
帯電防止層2の厚さは、0.05μm以上、1.50μm以下である。
帯電防止層2の厚さが0.05μm以上であるため、前述の基材フィルム1表面の微細凹凸の影響を抑えてヘイズ値を低くする効果を高めることができる。帯電防止層2が1.50μm以下であるため、ナノカーボンによる着色を抑え、表面保護フィルム10の全光線透過率を高くできる。そのため、光学製品の外観検査は容易となる。帯電防止層2の厚さは、塗料(帯電防止剤)が固化した後の厚さである。
【0030】
帯電防止層2の厚さが0.05μm未満では、基材フィルム1表面の微細凹凸の影響を抑えてヘイズ値を低くする効果が低くなる。帯電防止層2が1.50μmを超える厚さになると、ナノカーボンによる着色によって表面保護フィルム10の全光線透過率が低くなるため、光学部品の外観検査の容易さに影響が及ぶ。
【0031】
帯電防止層2の厚みについては、厚みが薄いとヘイズ値が高くなる傾向があり、厚みが厚いと帯電防止剤自体の色により全光線透過率が低下する傾向にある。このため、より透明性を重視する場合は、帯電防止層2の厚みは0.10μmから0.5μm程度が好ましい。帯電防止層2の厚みは0.15μmから0.25μm程度が最も好ましい。
【0032】
帯電防止層2の厚さは、帯電防止層2の表面固有抵抗率が10の7乗(107)~10の9乗(109)程度になるように調整するのがよい。表面固有抵抗率を調整するには、帯電防止剤の塗布厚みにより調整する方法を用いてもよいし、帯電防止剤中の、ナノカーボンとバインダー樹脂等との比率を調整する方法を用いてもよい。
表面固有抵抗率は、高抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)にて測定することができる。
【0033】
[粘着剤層]
粘着剤層3は、被着体の表面に接着し、使用後に簡単に剥がせ、かつ、被着体を汚染しにくい特性を持つことが好ましい。粘着剤層3に使用する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤としては、ポリエチレン酢酸ビニル樹脂などの接着性樹脂も使用できる。なかでも特に、アクリル系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が好適である。
【0034】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル樹脂組成物)に架橋剤を添加した粘着剤が好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーは、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N - メチロールメタクリルアミドなどの官能性モノマーと、を共重合したポリマーが好ましい。( メタ) アクリル系ポリマーを構成するモノマー組成は、(メタ)アクリル系モノマーが50%以上であることが好ましく、(メタ)アクリル系モノマーが100%でもよい。
【0035】
架橋剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋させる。架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。架橋剤の添加量は、(メタ)アクリル系ポリマーの種類、重合度、官能基量などを考慮して決めればよい。架橋剤の添加量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、架橋剤0.5~1.0質量部程度とするのが好ましい。
【0036】
ウレタン系粘着剤としては、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を含むポリウレタン系樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂は、粘着性、濡れ性、被着体汚染性等を考慮して選べばよい。ポリオール成分、ポリイソシアネート成分は特に制限されない。ポリウレタン系樹脂は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
ポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール成分は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
ポリイソシアネート成分としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、ジイソシアネートの多量体などが用いられる。これらのポリイソシアネート成分は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ポリウレタン系粘着剤の市販品としては、サイアバイン(登録商標)SH-101、SH -101M、SP-205、SP-220(トーヨーケム(株)製)、アラコート(登録商標)FT100、FT200(荒川化学工業(株)製)、UN1175、UN1176(大同化成工業(株)製)などが挙げられる。粘着剤層は、ポリウレタン系粘着剤を架橋または硬化させることにより形成してもよい。
【0040】
粘着剤層3には、必要に応じて、架橋反応を促進するために架橋触媒を添加剤として添加してもよい。粘着剤層3には、必要に応じて、基材フィルム1と粘着剤との密着性を向上させるためにシランカップリング剤などの密着性向上剤を添加剤として添加してもよい。粘着剤層3には、必要に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0041】
粘着剤層3の厚さは、特に限定はされないものの、例えば、5μm~40μmが好ましく、10μm~30μmがより好ましい。
表面保護フィルム10の、被着体の表面に対する剥離速度0.3m/minでの粘着力(低速粘着力)は、0.3N/25mm以下が好ましく、0.2N/25mm以下がさらに好ましい。
【0042】
表面保護フィルム10の、被着体の表面に対する剥離速度30m/minでの粘着力(高速粘着力)は、0.8N/25mm以下であることが好ましい。高速粘着力が0.8N/25mmを超えると、使用後に表面保護フィルム10を剥がす際の作業性が悪くなる虞がある。粘着力の調整には、粘着剤組成の変更、硬化剤の添加量の調整、粘着付与剤または粘着力調整剤の添加量調整など、公知の手法を用いることができる。
【0043】
基材フィルム1の表面に、粘着剤層3を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0044】
粘着剤層3を形成する方法、及び、粘着剤層3に剥離フィルム4を貼合する方法は、公知の方法を採用できる。具体的には、(1)基材フィルム1の片面に、粘着剤層3を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥して粘着剤層3を形成した後に、粘着剤層3に剥離フィルム4を貼合する方法、(2)剥離フィルム4の表面に、粘着剤層3を形成するための樹脂組成物を塗布・乾燥し粘着剤層3を形成した後に、粘着剤層3に基材フィルム1を貼合する方法などが挙げられるが、いずれの方法を用いてもよい。
【0045】
表面保護フィルム10のヘイズ値は、4.0%以下が好ましい。ヘイズ値が4.0%以下であると、視認性が良好となり、表面保護フィルム10が貼合された光学製品の外観検査を容易に行うことができる。
【0046】
表面保護フィルム10の全光線透過率は80.0%以上が好ましい。全光線透過率が80.0%以上であると、視認性が良好となり、表面保護フィルム10が貼合された光学製品の外観検査を容易に行うことができる。
【0047】
表面保護フィルム10の表面固有抵抗率は、表面保護フィルム10を空気中に暴露してもあまり上昇しないことが求められる。表面固有抵抗率は、1.0×10の8乗以上、9.9×10の9乗以下が好ましい。表面保護フィルム10表面固有抵抗率は、例えば、空気暴露前が1.0×10の8乗の場合、空気暴露30日後でも9.9×10の9乗以下(上昇率で9800%以下)が好ましく、5.0×10の9乗以下(上昇率で4900%以下)がより好ましい。
【0048】
表面保護フィルム10を空気に曝露したときの耐久性を、「耐空気曝露性」という。耐空気曝露性は、表面保護フィルム10を空気中に暴露したときの表面固有抵抗率によって評価できる。耐空気暴露特性の評価方法としては、例えば、次の方法がある。表面保護フィルム10を温度23℃、関係湿度50%の条件で空気中に曝した状態で、所定の期間(例えば、30日間)放置する。表面保護フィルム10の表面固有抵抗率(Ω/□)を、高性能高抵抗率計(日東精工アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)を用いて、印加電圧100V 、測定時間30秒の条件にて測定する。
【0049】
図2は、表面保護フィルム10に剥離フィルム4を貼合した剥離フィルム付き表面保護フィルム11を示した断面図である。
図2に示すように、剥離フィルム4としては、公知の剥離フィルムを用いればよい。剥離フィルム4としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、フッ素フィルムなどを、フィルム単体で用いてもよい。剥離フィルム4としては、樹脂フィルムを離型剤(剥離剤ともいう)で処理した剥離フィルムでもよい。樹脂フィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられる。離型剤としては、シリコーン樹脂、長鎖アルキル基含有樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。なかでも、PETフィルムにシリコーン系離型剤を処理した剥離フィルム4が好適である。
剥離フィルム4の厚さは特に制限されないが、作業性とコスト面から12μm~38μmが好ましい。
【0050】
図3は、光学部品の例である光学部品20を示した断面図である。
図3に示すように、光学部品20は、光学製品5の表面に、表面保護フィルム10が貼合されている。光学部品20は、次のようにして作製される。剥離フィルム付き表面保護フィルム11(
図2参照)の剥離フィルム4を剥離し、粘着剤層3が表出した状態とした後、この表面保護フィルム10を、粘着剤層3によって、被着体である光学製品5に貼合する。
【0051】
光学製品5としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学用フィルムが挙げられる。このような光学製品5は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の構成部材として使用される。
光学製品5としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。
【0052】
光学部品20では、表面保護フィルム10の表面に帯電防止層2がある。そのため、光学部品20の搬送時や取り扱い時に静電気を低く抑えることができる。よって、工程中の塵や埃などの異物の吸着が抑制される。光学部品20では、表面保護フィルム10を光学製品5から剥離するとき、剥離帯電圧を低く抑制することができる。そのため、光学製品5のドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊するおそれが少ない。よって、例えば、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
表面保護フィルム10は、空気に暴露したときの表面固有抵抗率の上昇を抑えることができる。表面固有抵抗率の上昇を長期にわたって抑制できるため、産業上の利用価値が大である。
【実施例0053】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
(実施例1)
カーボンナノチューブ分散液(ナガセケムテックス社製デナトロン(登録商標)CD-100)と、アクリル樹脂(高松油脂社製ペスレジン(登録商標)SWX-079R)と、メチル化メラミン架橋剤(日本カーバイド工業社製ニカラック(登録商標)MW-30HM)とを、固形分質量比率10/100/10で含む帯電防止剤Aを調製した。帯電防止剤Aは、ナノカーポンを含む帯電防止剤組成物である。
【0054】
2-エチルヘキシルアクリレート80質量部と、ブチルアクリレート10質量部と、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート7質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート3質量部との共重合体からなる粘着剤を調製した。この粘着剤はアクリル系粘着剤である。この粘着剤の40%酢酸エチル溶液100質量部に対して、帯電防止剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド0.3質量部、および、イソシアネート系硬化剤(東ソー(株)製コロネート(登録商標)HX)2質量部を添加し、混合して粘着剤組成物Dを得た。
【0055】
帯電防止剤Aを、水/エタノール(水/エタノールの質量比50/50)にて10倍に希釈して帯電防止塗料Bを得た。帯電防止塗料Bを厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、基材フィルム)(ヘイズ値4.6%)の表面に、乾燥後の厚さが厚さ0.05μmになるように塗布し、塗膜を120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥した。これにより、PETフィルム上に帯電防止層を形成した。
【0056】
PETフィルムの帯電防止層が積層されていない面に、粘着剤組成物Dを、アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが厚さ20μmになるように塗布し、塗膜を120℃の熱風循環式オーブンにて3分間乾燥した。これにより、粘着剤層を形成した。
【0057】
粘着剤層の表面に、シリコーン系剥離剤で処理した剥離フィルム(25μm厚)(三菱ケミカル社製ダイヤホイル(登録商標)MRF-25)を貼合して、剥離フィルム付きの表面保護フィルムを得た。得られた剥離フィルム付きの表面保護フィルムに40℃で3日間エージングを行い、実施例1の表面保護フィルムを得た。
【0058】
(実施例2)
帯電防止塗料Bの希釈倍率と塗布量を、乾燥後の帯電防止層の厚さが0.10μmになるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例2の表面保護フィルムを作製した。
【0059】
(実施例3)
帯電防止塗料Bの希釈倍率と塗布量を、乾燥後の帯電防止層の厚さが0.15μmになるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例3の表面保護フィルムを作製した。
【0060】
(実施例4)
帯電防止塗料Bの希釈倍率と塗布量を、乾燥後の帯電防止層の厚さが0.25μmになるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例4の表面保護フィルムを作製した。
【0061】
(実施例5)
帯電防止塗料Bの希釈倍率と塗布量を、乾燥後の帯電防止層の厚さが0.50μmになるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例5の表面保護フィルムを作製した。
【0062】
(実施例6)
帯電防止塗料Bの希釈倍率と塗布量を、乾燥後の帯電防止層の厚さが1.00μmになるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例6の表面保護フィルムを作製した。
【0063】
(実施例7)
帯電防止塗料Bの希釈倍率と塗布量を、乾燥後の帯電防止層の厚さが1.50μmになるように調整した以外は実施例1と同様にして、実施例7の表面保護フィルムを作製した。
【0064】
(実施例8)
実施例4で用いたアクリル樹脂(高松油脂社製ペスレジン(登録商標)SWX-079R)の代わりにポリエステル樹脂(東洋紡製バイロナール(登録商標)MD-1480)を用いた以外は実施例4と同様にして実施例8の表面保護フィルムを作製した。
【0065】
(実施例9)
実施例4で用いたアクリル系粘着剤の代わりにウレタン系粘着剤(荒川化学工業社製アラコート(登録商標)FT200)を用いた。実施例4で用いたイソシアネート系硬化剤(コロネートHX)2質量部の代わりに、荒川化学工業社製アラコート(登録商標)CL2503(硬化剤不揮発分の含有率は40質量%)5.7質量部を用いた。これら以外は実施例4と同様にして実施例9の表面保護フィルムを作製した。
【0066】
(実施例10)
PETフィルム(基材フィルム)(ヘイズ値4.6%)の代わりに、ヘイズ値5.6%のPETフィルムを用いた以外は実施例4と同様にして、実施例10の表面保護フィルムを作製した。
【0067】
(比較例1)
帯電防止塗料Bの希釈倍率と塗布量を、乾燥後の帯電防止層の厚さが0.04μmになるように調整した以外は実施例1と同様にして、比較例1の表面保護フィルムを作製した。
【0068】
(比較例2)
帯電防止塗料Bの希釈倍率と塗布量を、乾燥後の帯電防止層の厚さが2.00μmになるように調整した以外は実施例1と同様にして、比較例2の表面保護フィルムを作製した。
【0069】
(比較例3)
PETフィルム(基材フィルム)(ヘイズ値4.6%)の代わりに、ヘイズ値6.3%のPETフィルムを用いた以外は実施例4と同様にして、比較例3の表面保護フィルムを作製した。
【0070】
(比較例4)
ポリチオフェン系帯電防止剤(シュタルク社製BAYTRON(登録商標)PAG)と、アクリル樹脂(高松油脂社製ペスレジン(登録商標)SWX-079R)と、メチル化メラミン架橋剤(日本カーバイド工業社製ニカラック(登録商標)MW-30HM)とを、固形分質量比率30/100/10で含む帯電防止剤Cを調製した。帯電防止剤Cは、ポリチオフェン系帯電防止剤を含む帯電防止剤組成物である。
帯電防止剤Aの代わりに帯電防止剤Cを用いる以外は実施例2と同様にして、比較例4の表面保護フィルムを作製した。
【0071】
以下、評価試験の方法および結果について示す。
(全光透過率の測定方法)
ヘイズメータ(日本電色株式会社製Haze Meter、NDH2000)を用いて、JIS K7105に準じて、全光線透過率を測定した。
【0072】
(ヘイズ値の測定方法)
ヘイズメータ(日本電色株式会社製Haze Meter、NDH2000)を用いてヘイズ値を測定した。
【0073】
(表面保護フィルムの表面固有抵抗率の測定方法)
表面保護フィルムの表面固有抵抗率(Ω/□)は、高性能高抵抗率計(日東精工アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)を用いて、印加電圧100V 、測定時間30秒の条件にて測定した。
【0074】
(帯電防止層の厚さの測定方法)
表面保護フィルムの帯電防止層の厚さについては、日本分光製紫外可視近赤外分光光度計V-770を用いて、測定波長範囲300~900nmの分光反射率を、入射角度5度で測定し、干渉間隔法により計測した。
【0075】
(耐空気曝露性の評価方法)
表面保護フィルムを温度23℃、関係湿度50%の条件で空気中に曝した状態で、所定の期間(1日または30日)放置した。表面保護フィルムの表面固有抵抗率(Ω/□)を、高性能高抵抗率計(日東精工アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)を用いて、印加電圧100V 、測定時間30秒の条件にて測定した。
【0076】
(表面保護フィルムの低速粘着力の測定方法)
TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合せた。偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合せた。表面保護フィルムを貼合せた偏光板を、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。引張試験機を用いて0.3m/分の剥離速度で180°の方向に表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを低速粘着力(N/25mm)とした。
【0077】
(表面保護フィルムの高速粘着力の測定方法)
TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合せた。偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合せた。表面保護フィルムを貼合せた偏光板を、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分30mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを高速粘着力(N/25mm)とした。
【0078】
(表面保護フィルムの剥離帯電圧の測定方法)
TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合せた。偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合せた。表面保護フィルムを貼合せた偏光板を、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分30mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)とした。
【0079】
(表面保護フィルムの表面汚染性の確認方法)
TACフィルムを偏光子保護フィルムとして用いた偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合せた。偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合せた。表面保護フィルムを貼合せた偏光板を、23℃×50%RHの試験環境下に3日間保管した。表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染性を目視にて観察した。表面汚染性の判定基準として、偏光板に汚染移行が無かった場合を「○」(Good)とし、偏光板に汚染移行が確認された場合を「×」(No Good)とした。
【0080】
実施例1~10及び比較例1~4の表面保護フィルムについて、測定結果を表1~表3に示した。表1~表3において、「帯電防止層CNT」における「○」は、カーボンナノチューブを含む帯電防止剤を使用していることを示す。「帯電防止層PEDOT」における「〇」はポリ3,4-エチレンジオキシチオフェンを含む帯電防止剤を使用していることを示す。「帯電防止層積層厚み(μm)」は帯電防止層の厚みを示す。
【0081】
「アクリル樹脂」における「○」は帯電防止層のバインダー樹脂がアクリル樹脂であることを示す。「ポリエステル樹脂」における「〇」は帯電防止層のバインダー樹脂がポリエステル樹脂であることを示す。
【0082】
「基材フィルム Hz(%)」は、基材に使用したPETのヘイズ値を示す。「保護フィルム Hz(%)」は、PETに帯電防止層と粘着層を付与した保護フィルムのヘイズ値を示している。
【0083】
「アクリル粘着剤」における「○」は粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用したことを示す。「ウレタン粘着剤」における「〇」は粘着剤としてウレタン系粘着剤を使用したことを示す。
【0084】
表面固有抵抗率の1.0E+09は、1.0×10の9乗を表す。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表1~表3に示した測定結果から、以下のことが分かる。
実施例1~10の表面保護フィルムは、空気曝露下でも表面の帯電防止層の表面固有抵抗率が上昇(劣化)しなかった。また、保護フィルムのヘイズ値は、4.0%以下となり、全光線透過率は80,0%以上になった。
一方、帯電防止層の厚みが薄い比較例1では、保護フィルムのヘイズ値が4.0%を超える結果となった。PETフィルム表面の微細な凹凸による散乱があると考えられる。また、帯電防止層の厚みを厚くした比較例2では、CNTによる着色で、全光線透過率が80.0%以下となった。基材フィルムのヘイズ値が高い比較例3では、PETフィルム表面の微細な凹凸による散乱は抑えられているが、PETフィルム自体のヘイズ値が高いため、保護フィルムでのヘイズ値は4.0%以上となった。また、帯電防止剤としてポリチオフェンを使用した比較例4では、大気暴露30日での表面保護フィルムの表面固有抵抗率の上昇があり、工程中で静電気が発生しやすいことが推測される。
実施形態の表面保護フィルムは、例えば、偏光板、位相差板、レンズフィルム、などの光学用フィルム、その他、各種の光学部品等の生産工程などにおいて、該光学部品等に貼合して表面を保護するために用いることができる。実施形態の表面保護フィルムは、空気曝露でも表面の帯電防止層の表面固有抵抗率が上昇(劣化)しにくい。実施形態の表面保護フィルムは、光学製品の製造工程において、表面保護フィルムを貼合した光学製品の搬送中やハンドリング時に発生する静電気を抑えて、環境中の塵や埃の吸着を防止できる。実施形態の表面保護フィルムは、ヘイズ値が低く、全光線透過率が高いため、表面保護フィルムを貼ったままでの外観検査を容易にする。実施形態の表面保護フィルムは、使用後、液晶表示パネルに組み込んである偏光板や位相差板から剥離除去するときに、著しい剥離帯電を抑えて、ドライバーICなどの回路が破壊してしまうことを防ぐ。そのため、生産工程の歩留まりを向上させることができ、産業上の利用価値が大である。