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特開2023-146580メンテナンス方法、半導体装置の製造方法、プログラム、及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146580
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】メンテナンス方法、半導体装置の製造方法、プログラム、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20231004BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/26 G
H01L21/26 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053819
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】吉野 晃生
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】油谷 幸則
(72)【発明者】
【氏名】保井 毅
【テーマコード(参考)】
5F045
【Fターム(参考)】
5F045AA08
5F045AA20
5F045AD11
5F045AD12
5F045AE01
5F045BB14
5F045DP04
5F045DQ10
5F045EB03
5F045EB05
5F045EC05
5F045EH11
5F045EK11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】反応容器を構成する金属部材の表面処理の破れを修復するメンテナンス方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置において、酸化処理工程は反応容器内に配置された基板に対して改質ガスを供給し、所定温度で基板に対する改質処理を行う工程と、反応容器内に基板が無い状態で反応容器内に酸素含有ガスを供給し、所定温度以上の温度で反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行い、容器内面を修復する工程と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 反応容器内に配置された基板に対して改質ガスを供給し、所定温度で前記基板に対する改質処理を行う工程と、
(b)前記反応容器内に基板が無い状態で前記反応容器内に酸素含有ガスを供給し、前記所定温度以上の温度で前記反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行う工程と、を有する
メンテナンス方法。
【請求項2】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記改質処理は、窒素含有ガスのプラズマを用いて実施され、前記酸化処理は、前記酸素含有ガスをノンプラズマとする状態で実施される。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のメンテナンス方法であって、前記所定温度は、約700~850℃である。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のメンテナンス方法であって、前記反応容器は、上側容器と、前記上側容器の上部に設けられた石英窓と、前記石英窓の上部に配置されたランプを備え、
前記アルミニウム部材は、前記石英窓の側面に配置されている。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のメンテナンス方法であって、前記反応容器は、下側容器を備え、前記下側容器は、その内側の表面が前記アルマイト処理された前記アルミニウム部材によって構成されている。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のメンテナンス方法であって、前記酸化処理は、前記反応容器内のサセプタを前記改質処理時における位置から下げた状態で実行される。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のメンテナンス方法であって、前記酸化処理は、前記反応容器内のサセプタを前記改質処理時における位置で実行される。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のメンテナンス方法であって、前記酸化処理時の圧力は、前記改質処理時の圧力よりも低い。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のメンテナンス方法であって、前記改質処理時の基板温度又はランプヒータの出力に基づき、前記アルマイト処理の破れを検出し、アラームを出力する工程を更に有する。
【請求項10】
(a)反応容器の少なくとも一部が、アルマイト処理がなされたアルミニウム部材によって構成され、前記アルマイト処理された表面が前記反応容器の内部に露出するように配置された前記反応容器内に、基板を搬入する工程と、
(b)前記反応容器内の温度を所定温度まで上昇させる工程と、
(c)(b)の後に所定元素含有ガスを前記反応容器内に供給して前記基板を処理する工程と、
(d)(c)において処理された前記基板を前記反応容器の外に搬出する工程と、
(e)(d)の後に、前記反応容器内に基板が無い状態で、前記反応容器内に酸素含有ガスを供給し、前記反応容器内の温度を前記所定温度以上にして、前記アルミニウム部材のアルマイト処理がなされた面に対して酸化処理を実施する工程と、を有するメンテナンス方法。
【請求項11】
(a)反応容器内に配置された基板に対して改質ガスを供給し、所定温度で前記基板に対する改質処理を行う工程と、
(b)前記反応容器内に基板が無い状態で前記反応容器内に酸素含有ガスを供給し、前記所定温度以上の温度で前記反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行う工程と、を有する
半導体装置の製造方法。
【請求項12】
(a) 基板処理装置の反応容器内に配置された基板に対して改質ガスを供給し、所定温度で前記基板に対する改質処理を行う手順と、
(b)前記反応容器内に基板が無い状態で前記反応容器内に酸素含有ガスを導入して供給し、前記所定温度以上の温度で前記反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行う手順を、コンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項13】
反応容器と、
前記反応容器内に改質ガスを供給する改質ガス供給系と、
前記反応容器内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系と、
前記改質ガスをプラズマ励起させる励起部と、
前記反応容器内において、(a) 前記反応容器内に配置された基板に対して前記改質ガスを供給し、所定温度で前記基板に対する改質処理を行う処理と、(b)前記反応容器内に基板が無い状態で前記反応容器内に前記酸素含有ガスを供給し、前記所定温度以上の温度で前記反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行う処理と、を行うように前記改質ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系及び前記励起部を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メンテナンス方法、半導体装置の製造方法、プログラム、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に膜を形成する一工程として、基板に対してプラズマ励起された処理ガスを供給して改質処理を行う工程が実施される場合がある。(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2020―188816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマ励起された処理ガスを用いて改質処理を実施したとき、反応容器を構成する金属部材の表面処理が破れることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a) 反応容器内に配置された基板に対して改質ガスを供給し、所定温度で基板に対する改質処理を行う工程と、
(b)反応容器内に基板が無い状態で反応容器内に酸素含有ガスを供給し、所定温度以上の温度で反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行う工程を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、反応容器を構成する金属部材の表面処理の破れを修復する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る基板処理装置のプラズマ生成原理を説明する説明図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る基板処理装置の制御部(制御手段)の構成を示す図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
図5】本開示に係る基板処理装置によって基板上の膜を改質するステップを示す図であり、図5(a)は、基板上に膜を形成するステップを示し、図5(b)は、この膜を改質するステップを示す図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る酸化処理工程を示すフロー図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る酸化処理工程に係るステップを示す図であり、図7(a)は、各部品のアルミニウム表面にアルマイト層が設けられていることを示す図であり、図7(b)は、アルマイト破れが生じたことを示す図であり、図7(c)は、アルマイト破れを修復するステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、図1図7を用いて説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
本開示の第1実施形態に係る基板処理装置について、図1~3を用いて以下に説明する。本開示に係る基板処理装置は、主に基板面上に形成された膜に対して改質処理を行うように構成されている。
【0010】
本開示の第1実施形態に係る基板処理装置100は、処理室201と、加熱機構(ヒータ)と、プレート1004と、マニホールド1006と、を備えている。
【0011】
ヒータは、処理室201内を加熱するように構成されている。ヒータは、例えば、後述するランプヒータ1002と、サセプタ217に設けられるヒータ217bである。サセプタヒータ217bは、例えばサセプタヒータ217b自身の電気抵抗により発熱する抵抗ヒータである。
【0012】
プレート1004は、後述する反応ガス供給部を構成する部位である。このプレート1004は、例えばランプヒータ1002と、基板200の処理室201との間に設けられ、ランプヒータ1002からの輻射熱を処理室201内に透過する部材である。基板200は、例えば、ウエハである。プレート1004の少なくとも一部は、例えば非金属の透明材料である石英(透明石英)部材で構成されている。
【0013】
マニホールド1006は、プレート1004と対向して配置されている。マニホールド1006は、例えば、アルミニウム部材で構成される。マニホールド1006の表面には、酸化処理が施されており、より具体的には、アルマイト処理(陽極酸化処理)によって形成されたアルマイト層(皮膜)(陽極酸化皮膜)が形成されている。少なくとも処理ガスに露出する部分の表面に酸化皮膜を形成することにより、基板処理におけるアルミニウムに起因する金属汚染の発生を抑制することができる。また、プレート1004とマニホールド1006は、互いに非接触に配置されおり、両者の接触によってプレート1004が破損することを防止することができる。
【0014】
(処理室)
基板処理装置100は、基板200をプラズマを用いて処理する処理炉を備えている。処理炉には、処理室201を構成する処理容器(反応容器)203が設けられている。処理容器203は、ドーム型の上側容器210と、碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。上側容器210は、例えば石英(SiO2)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム部材で形成されている。下側容器211の表面には、マニホールド1006の表面と同様に、酸化処理が施されており、より具体的には、アルマイト処理によって形成されたアルマイト層(皮膜)が形成されている。マニホールド1006の場合と同様に、少なくとも処理ガスに露出する部分の表面に酸化皮膜を形成することにより、基板処理におけるアルミニウムに起因する金属汚染の発生を抑制することができる。
【0015】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているとき、搬送機構(図示せず)を用いて、搬入出口245を介して、処理室201内へ基板200を搬入したり、処理室201外へと基板200を搬出したりすることができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0016】
処理室201は、周囲に電磁界発生電極212が設けられているプラズマ生成空間と、プラズマ生成空間に連通し、基板200が処理される基板処理空間を有する。電磁界発生電極212は、例えば共進コイルである。プラズマ生成空間はプラズマが生成される空間であって、処理室の内、電磁界発生電極212の下端より上方であって、且つ電磁界発生電極212の上端より下方の空間を言う。一方、基板処理空間は、基板がプラズマを用いて処理される空間であって、電磁界発生電極212の下端より下方の空間を言う。本開示では、プラズマ生成空間と基板処理空間の水平方向の径は略同一となるように構成されている。
【0017】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、基板200を載置する基板載置部(基板載置台)を構成するサセプタ217が配置されている。サセプタ217は例えば窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料から形成されている。
【0018】
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。サセプタヒータ217bは、電力が供給されると、基板200表面を例えば25℃から700℃程度まで加熱することができるように構成されている。
【0019】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。インピーダンス調整電極217cはサセプタ217内部に設けられており、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。インピーダンス可変機構275はコイルや可変コンデンサにより構成されており、コイルのインダクタンス及び抵抗並びに可変コンデンサの容量値を制御することにより、インピーダンスを変化させることができるように構成されている。これによって、インピーダンス調整電極217c及びサセプタ217を介して、基板200の電位(バイアス電圧)を制御できる。なお、本開示においてインピーダンス調整電極217cを用いたバイアス電圧制御を行うか、もしくは行わないかは任意に選択することができる。
【0020】
サセプタ217には、サセプタを昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217aが設けられるとともに、下側容器211の底面には基板突上げピン266が設けられている。貫通孔217aと基板突上げピン266は互いに対向する位置に、少なくとも各3箇所ずつ設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、基板突上げピン266が貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。
【0021】
主に、サセプタ217及びサセプタヒータ217b、インピーダンス調整電極217cにより、本開示に係る基板載置部が構成されている。
【0022】
(ランプヒータ)
プレート1004の上方の外側(すなわち上面側)には、処理室201内に収容された基板200を赤外線を放射して加熱するよう構成された加熱機構としてのランプヒータ1002が設置されている。ランプヒータ1002は、サセプタ217と対向する位置に設けられ、基板200の上方から基板200を加熱するよう構成されている。ランプヒータ1002を点灯することで、サセプタヒータ217bのみを用いる場合と比較してより短時間で、且つ高い温度、例えば850℃まで基板200を昇温させることができるよう構成されている。なお、ランプヒータ1002は、近赤外線(ピーク波長が望ましくは800~1300nm、より望ましくは1000nmの光)を放射するものを使用するのが好適である。このようなランプヒータ1002としては、たとえばハロゲンヒータを用いることができる。
【0023】
本開示では、ヒータとしてサセプタヒータ217bとランプヒータ1002との両方を備えている。このようにサセプタヒータ217bとランプヒータ1002とを併用することで、基板表面の温度を、サセプタヒータ217b単体と比べて、より高温、たとえば850℃程度にまで昇温することができる。
【0024】
また、ランプヒータ1002とプレート1004との間には、ランプヒータ1002からの輻射熱を処理室201内に透過する透過窓としての蓋部1012が設けられている。蓋部1012は、プレート1004と同様に、例えば非金属の透明材料である石英(透明石英)部材で構成されている。また、蓋部1012は、マニホールド1006により下方から支持されている。すなわち、蓋部1012と、プレート1004と、マニホールド1006とにより、バッファ空間1028が区画されている。バッファ空間1028には、後述する改質処理時には改質ガスが供給され、後述する酸化処理時には酸素含有ガスが供給される。
【0025】
(処理ガス供給部)
処理容器203内に処理ガスを供給する処理ガス供給部120は、以下のように構成される。
【0026】
プレート1004の周縁には、マニホールド1006が、プレート1004と上下方向に対向して配置され、処理容器203(上側容器210)の上に取り付けられている。マニホールド1006は、冷却機構(図示せず)により冷却される。
【0027】
ランプヒータ1002からの輻射熱は、蓋部1012及びプレート1004を通じて処理室201内に届くようになっている。
【0028】
プレート1004は、ランプヒータ1002及びサセプタヒータ217bにより加熱される。また、接触する処理容器203からの熱伝導等によって間接的に加熱される場合もある。また、後述するプラズマ生成部により生成されるプラズマによって加熱され場合もある。
【0029】
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス吹出口1004aを備え、ガス導入口から処理ガスとしての改質ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0030】
ガス導入口には、改質ガスを供給する改質ガス供給管232aと、酸素(O2)含有ガスを供給する酸素含有ガス供給管232bと、不活性ガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。改質ガス供給管232aには、改質ガス供給源250a、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。酸素含有ガス供給管232bには、酸素含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、不活性ガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。改質ガス供給管232aと酸素含有ガス供給管232bと不活性ガス供給管232cとが合流した供給管232の下流側には、バルブ243aが設けられ、バッファ空間1028に開口したガス導入口に接続されている。バルブ253a、253b、253c、243aを開閉させることによって、MFC252a、252b、252cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、改質ガス供給管232a、酸素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232cを介して、改質ガス、酸素ガス含有ガス、不活性ガスが合流した処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0031】
主に、改質ガス供給管232a、酸素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、MFC252a、252b、252c、バルブ253a、253b、253c、243aにより、本開示に係る処理ガス供給部120(ガス供給系)が構成されている。
【0032】
(排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内から反応ガスなどを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。
【0033】
主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APCバルブ242、バルブ243bにより、本開示に係る排気部が構成されている。尚、真空ポンプ246を排気部に含めても良い。
【0034】
(プラズマ生成部)
処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、螺旋状の共振コイルにより構成された電磁界発生電極212が設けられている。電磁界発生電極212には、RFセンサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続される。電磁界発生電極212は、処理容器203の外周面と離間して該外周面に沿って配置され、高周波電力(RF電力)が供給されることにより、処理容器203内に電磁界を発生させるように構成されている。すなわち、本開示の電磁界発生電極212は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)方式の電極である。
【0035】
高周波電源273は、電磁界発生電極212にRF電力を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力された反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力されるRF電力の周波数を制御するものである。
【0036】
電磁界発生電極212としての共振コイルは、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、この共振コイルの電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍に相当する長さに設定される。
【0037】
電磁界発生電極212としての共振コイルを構成する素材としては、銅パイプ、銅の薄板、アルミニウムパイプ、アルミニウム薄板、ポリマーベルトに銅又はアルミニウムを蒸着した素材などが使用される。共振コイルは、ベースプレート248の上端面に鉛直に立設された、絶縁性材料により形成された複数のサポート(図示せず)によって支持される。
【0038】
電磁界発生電極212としての共振コイルの両端は電気的に接地され、そのうちの少なくとも一端は、当該共振コイルの電気的長さを微調整するため、可動タップ213を介して接地される。共振コイルの他端は、固定グランド214を介して設置される。可動タップ213は、共振コイルの共振特性を高周波電源273と略等しくするように位置が調整される。さらに、共振コイルのインピーダンスを微調整するため、共振コイルの接地された両端の間には、可動タップ215によって給電部が構成される。
【0039】
主に、電磁界発生電極212、RFセンサ272、整合器274により、本開示に係るプラズマ生成部が構成されている。尚、プラズマ生成部として高周波電源273を含めても良い。
【0040】
ここで、本開示に係る装置のプラズマ生成原理および生成されるプラズマの性質について図2を用いて説明する。
【0041】
電磁界発生電極212によって構成されるプラズマ発生回路はRLCの並列共振回路で構成される。上記プラズマ発生回路においては、プラズマを発生させた場合、共振コイルの電圧部とプラズマとの間の容量結合の変動や、プラズマ生成空間201aとプラズマとの間の誘導結合の変動、プラズマの励起状態、等により、実際の共振周波数は僅かながら変動する。
【0042】
そこで、本開示においては、プラズマ発生時の電磁界発生電極212としての共振コイルにおける共振のずれを電源側で補償するため、プラズマが発生した際の共振コイルからの反射波電力をRFセンサ272において検出し、検出された反射波電力に基づいて整合器274が高周波電源273の出力を補正する機能を有する。
【0043】
具体的には、整合器274は、RFセンサ272において検出されたプラズマが発生した際の電磁界発生電極212からの反射波電力に基づいて、反射波電力が最小となるように高周波電源273のインピーダンス又は出力周波数を増加又は減少させる。
【0044】
かかる構成により、本開示における電磁界発生電極212では、図2に示すように、プラズマを含む当該共振コイルの実際の共振周波数による高周波電力が供給されるので(あるいは、プラズマを含む当該共振コイルの実際のインピーダンスに整合するように高周波電力が供給されるので)、位相電圧と逆位相電圧が常に相殺される状態の定在波が形成される。電磁界発生電極212としての共振コイルの電気的長さが高周波電力の波長と同じ場合、コイルの電気的中点(電圧がゼロのノード)に最も高い位相電流が生起される。したがって、電気的中点の近傍においては、処理室壁やサセプタ217との容量結合がほとんどなく、電気的ポテンシャルの極めて低いドーナツ状の誘導プラズマが形成される。
【0045】
なお、電磁界発生電極212は上記したようなICP方式の共振コイルに限定されず、たとえば、変形マグネトロン(Modified Magnetron Typed:MMT)方式の筒状電極を用いてこれに充ててもよい。
【0046】
(制御部)
制御部としてのコントローラ291は、信号線Aを通じてAPCバルブ242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276及びインピーダンス可変機構275を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274を、信号線Fを通じてMFC252a~252c及びバルブ253a~253c、243aを、それぞれ制御するように構成されている。
【0047】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ291は、CPU(Central Processing Unit)291a、RAM(Random Access Memory)291b、記憶装置291c、I/Oポート291dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM291b、記憶装置291c、I/Oポート291dは、内部バス291eを介して、CPU291aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ291には、たとえばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置292が接続されている。
【0048】
記憶装置291cは、たとえばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置291c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ291に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。また、RAM291bは、CPU291aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域として構成されている。
【0049】
I/Oポート291dは、上述のMFC252a~252c、バルブ253a~253c、243a、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275、ヒータ電力調整機構276、ランプ過熱ユニット280等に接続されている。
【0050】
CPU291aは、記憶装置291cからの制御プログラムを読み出して実行するとともに、入出力装置292からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置291cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU291aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート291d及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるサセプタヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)や、インピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252cによる各種ガスの流量調整動作、及びバルブ253a~253c、243aの開閉動作、等を制御することが可能なように構成されている。
【0051】
コントローラ291は、外部記憶装置293に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置291cや外部記憶装置293は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置291c単体のみを含む場合、外部記憶装置293単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置293を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0052】
(2)基板処理工程
次に、本開示に係る基板処理工程について、主に図4及び図5(a)及び(b)を用いて説明する。図4は、本開示に係る基板処理工程を示すフロー図である。図5(a)及び(b)は、本開示に係る基板処理装置によって基板200上の膜を改質するステップを示す図である。本開示に係る基板処理工程は、たとえばウエハ上に形成された膜の改質工程の一工程として、上述の基板処理装置100により実施される。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ291により制御される。
【0053】
なお、本開示に係る基板処理工程で処理される基板200の表面にはシリコン(Si)の層があらかじめ形成されている。本開示においては、当該Si層に対して、プラズマを用いた処理として改質処理を行う。
【0054】
(基板搬入工程S110)
サセプタ昇降機構268が基板200の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aに基板突上げピン266を貫通させる。続いて、ゲートバルブ244を開き、処理室201に隣接する真空搬送室から、基板搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内に基板200を搬入する。図5(a)が示すように、この基板200上には、例えば、Si膜501が形成されている。搬入された基板200は、サセプタ217の表面から突出した基板突上げピン266上に水平姿勢で支持される。そして、サセプタ昇降機構268がサセプタ217を上昇させることにより、基板200はサセプタ217の上面に支持される。
【0055】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理室201内に搬入された基板200の昇温を行う。サセプタヒータ217bはあらかじめ700℃に加熱されている。続いて、ランプヒータ1002を点灯(ON)させることで、サセプタ217上に保持された基板200を、たとえば700~850℃、好ましくは750~850℃の範囲内の所定値にまで昇温させる。ここでは、基板200は、その温度がたとえば750℃となるように加熱される。基板200は、サセプタヒータ217b及びランプヒータ1002から放射される赤外線によって加熱される。基板200の処理温度は、膜への改質効果をより高めるという目的においてはできるだけ高い温度であることが望ましく、700℃以上の所定値としている。処理温度を700℃未満の場合、膜に対する改質効果が十分に得られない可能性がある。また、処理温度が850℃を超える場合、膜に対する意図しない現象が発生する可能性がある。処理温度を700~850℃とすることにより、十分なこれらの効果が得られるとともに、意図しない現象が発生する可能性を避けることができる。また、基板200の昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S160が終了するまで作動させておく。なお、本明細書における「700~850℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。例えば、「700~850℃」とは「700℃以上850℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0056】
なお、本実施形態においては、説明の便宜のため、基板200の温度である処理温度と、処理容器203内の温度を略同一とみなして説明するが、両者の温度が異なっていてもよい。両者の温度が異なる場合、例えば、本工程における処理容器203内の所定部位の温度を、改質処理時における処理容器203内の所定温度とみなし、後述する酸化処理工程における処理容器203内の当該部位の温度を、酸化処理時における処理容器203内の温度とみなすようにしてもよい。
【0057】
(改質ガス供給工程S130)
次に、改質ガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253aを開け、MFC252aにて流量制御しながら、処理室201内へ改質ガスの供給を開始する。同時にバルブ253cを開け、MFC252cにて流量制御しながら、処理室へ不活性ガスを供給してもよい。
【0058】
改質ガスは、例えば、窒素(N)ガスやアンモニア(NH)ガス等の窒素含有ガス、水素(H)ガス等の水素含有ガス、ヘリウム(He)ガスやアルゴン(Ar)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガス、または、それらの2つ以上を適宜混合した混合ガスである。いずれのガスも実質的に酸素非含有であることが好ましい。また、不活性ガスとしては、例えば、 Nガスや上述の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各工程においても同様である。
【0059】
また、処理室201内の圧力が所定の値となるように、APCバルブ242の開度を調整して処理室201内の排気を制御する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S140の終了時まで改質ガスの供給を継続する。
【0060】
(プラズマ処理工程S140)
処理室201内の圧力が安定したら、電磁界発生電極212に対して高周波電源273から高周波電力の印加を開始する。これにより、改質ガスが供給されているプラズマ生成空間201a内に高周波電界が形成され、かかる電界により、プラズマ生成空間の電磁界発生電極212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状の誘導プラズマが励起される。プラズマ状の改質ガスを含む処理ガスはプラズマ励起されて解離し、所定元素のラジカル(活性種)やイオン等の反応種が生成される。
【0061】
本ステップにおける処理条件としては、
プラズマ励起させる改質ガス供給流量:1000~10000sccm
RF電力:1~1500W、好ましくは1~1000W
不活性ガス供給時間:10~1200秒
処理温度:700~850℃、好ましくは750~850℃
処理圧力:0.5~100Pa、好ましくは0.5~10Pa
が例示される。
【0062】
基板処理空間201bでサセプタ217上に保持されている基板200には、誘導プラズマにより生成されたラジカルと加速されない状態のイオンが基板200の表面に均一に供給される。供給されたラジカル及びイオンは表面のSi膜501と均一に反応し、Si膜501の少なくとも表面を改質し、改質層502を形成する。具体的には、700~850℃という高温化において、供給された反応種が膜と反応することによって、膜中に含有されていた不純物が除去されるとともに、反応種によって膜の分子構造の欠陥が補完される(すなわち改質される)。つまり、本開示におけるプラズマ処理により、膜中に含まれていた不純物が除去されるとともに、表層が補修され、膜の膜特性(例えば絶縁膜としての特性等)が改善される。例えば、改質ガスが窒素含有ガスの場合、窒素を含有する反応種とSiとが反応し、Si膜の少なくとも一部の表面は、シリコン窒化膜に改質される。
【0063】
その後、所定の処理時間経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。また、バルブ253aを閉めて、改質ガスの処理室201内への供給を停止する。同時にバルブ253cを閉めて、不活性ガスの処理室201内への供給を停止してもよい。以上により、プラズマ処理工程S140が終了する。
【0064】
(真空排気工程S150)
改質ガスの供給を停止したら、ガス排気管231を介して処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内のガスを処理室201外へと排気する。その後、APCバルブ242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室と同じ圧力に調整する。
【0065】
(基板搬出工程S160)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217を基板200の搬送位置まで下降させ、基板突上げピン266上に基板200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、基板搬送機構を用いて基板200を処理室201外へ搬出する。以上により、本開示に係る基板処理工程を終了する。
【0066】
(3)メンテナンス工程(アルミニウム部材に対する酸化処理工程)
前述したように、マニホールド1006及び下側容器211は、金属部材であるアルミニウム部材で形成されることがある。アルミニウム表面が処理容器内に直接露出していると、改質処理により、アルミニウム部材に含まれるアルミニウム等の元素が処理容器内に放出され、基板処理工程において、その放出されたアルミニウム等が基板に取り込まれる恐れがある。すなわち、金属汚染が発生しうる。このような汚染を防ぐために、図7(a)が示すように、各部品のアルミニウム701表面には、表面処理であるアルマイト処理によって形成されたアルマイト層702が設けられている。なお、図7(a)~(c)は、マニホールド1006の処理室201側の側面を示す図である。しかしながら、例えば700度以上の高温下における、実質的に酸素非含有のガスによるプラズマ改質処理により、図7(b)が示すように、アルマイト層702にアルマイト破れ(剥がれ、亀裂、クラック)703が生じ、露出したアルミニウムによる金属汚染が発生する恐れがある。この破れは、ランプヒータ1002による急激な温度上昇により、アルミニウム701とアルマイト層702との熱膨張の差が急激に大きくなることにより発生する。したがって、アルマイト破れ703が発生したとき、マニホールド1006や下側容器211等の処理容器を構成するアルミニウム部材のアルマイト破れ703を修復するために、酸化処理を行う。
【0067】
図6は、酸化処理のフローを示す図である。
【0068】
前述したとおり、図4に示す本態様のシーケンスでは、(a) 反応容器内に配置された基板に対して改質ガスを供給し、所定温度で基板に対して改質処理を行う工程を備えるものであり、
図6に示す本態様のシーケンスでは、(b)反応容器内に基板が無い状態で、反応容器内に酸素含有ガスを供給して(a)における所定温度以上の温度で酸化処理を実施し、これにより反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れを修復させる工程を備える。
【0069】
(酸化処理工程S610)
図4の基板搬出工程S160の後に、すなわち、改質処理済の基板200を搬出した後の処理容器内に酸素(O)含有ガスを供給する。具体的には、シャッタクローズ後、バルブ253bを開き、MFC252bで流量制御しながら、処理室201内へO含有ガスの供給を開始する。同時にバルブ253cを開け、MFC252cにて流量制御しながら、処理室へ不活性ガスを供給してもよい。
【0070】
このとき、ランプヒータ1002と、サセプタヒータ217bを点灯(ON)させて、処理容器内を改質処理時での温度と同じ温度、又はそれ以上の温度に加熱させる。例えば、改質処理時の温度が750℃であれば、酸化処理時の温度を750~850℃とする。この酸化処理では、プラズマ励起されていないノンプラズマ状態のO含有ガスであって、熱励起されたO含有ガスを使用する酸化アニールが実施される。
【0071】
本ステップにおける処理条件としては、
O含有ガス供給流量:0.1~10slm
不活性ガス供給流量:0~10slm
各ガス供給時間:15~60分
処理温度(処理室201内の温度):700~850℃、好ましくは750~850℃
処理圧力(処理室201内の圧力):1~2000Pa、好ましくは1~1000Pa
が例示される。
【0072】
上述の条件下で、アルミニウム部材のアルマイト破れが生じた個所に対してO含有ガスを供給し、酸化処理を実行することにより、図7(c)が示すように、この破れ箇所を酸化させて酸化膜704を形成することができる。特に、ランプヒータ1002による輻射熱によって熱酸化が促進され、酸化膜704が形成される。
【0073】
この酸化処理により、アルミニウム部材のアルマイト破れが生じた個所に、膜厚が1~10μm、好ましくは5~10μmの酸化膜704が形成される。酸化膜704の膜厚が1μm未満では、修復が十分ではなく、アルミニウム由来の汚染が発生しやすい。酸化膜704の膜を1μm以上とすることで、アルミニウム由来の汚染の発生を抑制することができる。更に、酸化膜704の膜を5μm以上とすることで、アルミニウム由来の汚染の発生をより確実に抑制することができる。一方、酸化膜704の膜厚が10μm超では、高温処理時の熱膨張により、膜剥がれが発生しやすい。酸化膜704の膜厚を10μm以下とすることで、高温処理時の熱膨張による膜剥がれの発生を抑制することができる。このように、酸化膜704の膜厚が1~10μm、好ましくは5~10μmであれば、アルミニウム由来の汚染を十分に防止することが可能となる。
【0074】
本開示によれば、改質処理と同一の温度またはそれ以上の温度で酸化処理が実施されてアルマイト破れが修復される。例えば、改質温度以上の高い温度で酸化することにより、改質処理時における修復部分の熱膨張を小さくすることが可能となり、修復部分の破れが再発生する可能性を小さくすることが可能となる。したがって、その修復部分がその後の改質処理によって再度破れることを低減させることが可能となる。
【0075】
本開示では、高温にするためにランプが用いられている。ランプを用いた加熱では、輻射によって加熱する。この視点においては、酸化処理時の圧力が、改質処理時の圧力よりも低い方が、より輻射による加熱による酸化処理を促進させることが可能となる。
【0076】
また、本開示によれば、プラズマを使用しない熱酸化処理(すなわちノンプラズマ熱酸化処理)を用いることにより、プラズマによる強烈な酸化を発生させず、プラズマによるダメージを防ぐことが可能となり、アルマイト破れの個所を効果的に修復することが可能となる。
【0077】
O含有ガスとしては、酸素(O)ガス、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、過酸化水素(H)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO)ガス等のうち1以上を用いることができる。
【0078】
(パージ工程S620)
酸化処理工程S610が終了した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのO含有ガスの供給を停止する。その後、ノズル249cからパージガスとして不活性ガスを処理室201内へ供給する。このとき、電磁界発生電極212にプラズマ電力を印加して、不活性ガスをプラズマ励起させることで、活性化された不活性ガスを用いた不活性ガスプラズマパージを実施してもよい。
【0079】
これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留する酸素等のガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(パージ)。このように、窒化処理が再開される前に、処理室201内は、不活性ガスでパージされる。これらの工程により、反応容器内の酸素を取り除くことが可能となる。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0080】
これら一連の処理により、アルミニウム部材のアルマイト破れを修復することが可能となる。更に、本開示によれば、アルマイト破れが生じた部材を基板処理装置に取り付けたままこの破れを補修することが可能となる。そのため、アルマイト破れが生じたアルマイト部材を基板処理装置から外し、アルマイト処理を行うという煩雑な工程を無くすことが可能となる。
【0081】
なお、上述のように、酸化処理は、シャッタクローズ状態で行われる。すなわち、酸化処理は、処理容器内に、処理後の基板200(製品ウエハ、ダミーウエハ)を搬入(収容)することなく行われる。これにより、処理後の基板200(製品ウエハ、ダミーウエハ)の表面に形成された膜に対して、上述の酸化処理が行われることはなく、基板200(製品ウエハ、ダミーウエハ)の表面に形成された膜は酸化されることなくそのままの状態で維持される。
【0082】
アルミニウム部材のアルマイト破れは、例えば、定期メンテナスにより、把握可能である。また、アルマイト破れが生じると、アルミニウム部材経由により改質処理時における基板温度が低下する。このため、改質処理時における基板温度をモニタし、基板温度が所定温度以下になった場合(もしくは、基板温度を一定に維持するためにフィードバック制御されたヒータ(ヒータ217b及び/またはランプヒータ1002)の出力が所定値以上になった場合)、アルマイト破れが生じたと判断し、基板処理装置は、そのアラームを入出力装置292から出力するように構成されてもよい。
【0083】
酸化処理が実施される際、サセプタ217は、サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられた状態で実施してもよい。この場合、下側容器211の側面等をランプヒータ1002及び/またはヒータ217bから放射される輻射光に対して十分に露出させることが可能となり、下側容器211に対する加熱をより促進させて、下側容器211を十分に酸化させることが可能となる。また、酸化処理が実施される際、サセプタ217は、サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が上昇させられた状態で実施してもよい。この場合、改質処理の状態を再現して酸化処理することが可能となる。また、サセプタ217を下降させた状態と上昇させた状態の二つの状態を、一回の酸化処理において両方実行させてもよい。
【0084】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0085】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更してもよい。
【0086】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0087】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0088】
また、上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【符号の説明】
【0089】
200 基板(ウエハ)
203 処理容器
212 電磁界発生電極
1002 ランプヒータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 反応容器内に配置された基板に対して処理ガスを供給し、所定温度で前記基板に対する処理を行う工程と、
(b)前記反応容器内に基板が無い状態で前記反応容器内に酸素含有ガスを供給し、前記所定温度以上の温度で前記反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行う工程と、を有する
メンテナンス方法。
【請求項2】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記基板に対する処理は、窒素含有ガスのプラズマを用いて実施され、前記酸化処理は、前記酸素含有ガスをノンプラズマとする状態で実施される。
【請求項3】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記所定温度は、約700~850℃である。
【請求項4】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記アルミニウム部材の表面には、アルマイト層が形成され、
前記所定温度は、前記アルミニウム部材と前記アルマイト層との間で熱膨張差が発生する温度である。
【請求項5】
請求項4に記載のメンテナンス方法であって、前記アルマイト処理の破れとは、前記アルミニウム部材が露出することである。
【請求項6】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記反応容器は、上側容器と、前記上側容器の上部に設けられた石英窓と、前記石英窓の上部に配置されたランプを備え、
前記アルミニウム部材は、前記石英窓の側面に配置されている。
【請求項7】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記反応容器は、下側容器を備え、前記下側容器は、その内側の表面が前記アルマイト処理された前記アルミニウム部材によって構成されている。
【請求項8】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記酸化処理は、前記反応容器内のサセプタを前記基板に対する処理時における位置から下げた状態で実行される。
【請求項9】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記酸化処理は、前記反応容器内のサセプタを前記基板に対する処理時における位置で実行される。
【請求項10】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記酸化処理時の圧力は、前記基板に対する処理時の圧力よりも低い。
【請求項11】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、前記基板に対する処理時の基板温度又はランプヒータの出力に基づき、前記アルマイト処理の破れを検出し、アラームを出力する工程を更に有する。
【請求項12】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、
前記酸化処理を行う工程では、前記アルマイト破れが生じた箇所に酸化膜を形成し、
前記酸化膜の膜厚は1μm以上10μm以下である。
【請求項13】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、
前記酸化処理を行う工程では、前記アルマイト破れが生じた箇所に酸化膜を形成し、
前記酸化膜の膜厚は5μm以上10μm以下である。
【請求項14】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、
更に、前記酸化処理の工程の後、
(c)前記反応容器内に、不活性ガスのプラズマを生成する。
【請求項15】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、
前記基板に対する処理は、前記基板に形成された膜を改質する処理である。
【請求項16】
請求項1に記載のメンテナンス方法であって、
前記基板に対する処理を行う工程では、
前記(a)の前に
(d)反応容器の少なくとも一部が、前記アルマイト処理がなされたアルミニウム部材によって構成され、前記アルマイト処理された表面が前記反応容器の内部に露出するように配置された前記反応容器内に、前記基板を搬入する工程と、
(e)前記反応容器内の温度を所定温度まで上昇させる工程と、
を行い、
前記(a)の後に、
(f)(a)において処理された前記基板を前記反応容器の外に搬出する工程と、
を有するメンテナンス方法。
【請求項17】
内部に配された基板が所定温度で処理された状態の反応容器に対して、
前記反応容器内に基板が無い状態で前記反応容器内に酸素含有ガスを供給し、前記所定温度以上の温度で前記反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行う
メンテナンス方法。
【請求項18】
請求項1に記載のメンテナンス方法を行う半導体装置の製造方法。
【請求項19】
内部に配された基板が所定温度で処理された状態の反応容器に対して、
前記反応容器内に基板が無い状態で前記反応容器内に酸素含有ガスを供給し、前記所定温度以上の温度で前記反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行うようコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
反応容器と、
前記反応容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記反応容器内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系と、前記処理ガスをプラズマ励起させる励起部と、
前記反応容器内において、(a) 前記反応容器内に配置された基板に対して前記処理ガスを供給し、所定温度で前記基板に対する処理を行う手順と、(b)前記反応容器内に基板が無い状態で前記反応容器内に前記酸素含有ガスを供給し、前記所定温度以上の温度で前記反応容器の少なくとも一部を構成するアルミニウム部材の表面のアルマイト処理の破れに対する酸化処理を行う手順と、を行うように前記処理ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系及び前記励起部を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。