IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-支持片の製造方法 図1
  • 特開-支持片の製造方法 図2
  • 特開-支持片の製造方法 図3
  • 特開-支持片の製造方法 図4
  • 特開-支持片の製造方法 図5
  • 特開-支持片の製造方法 図6
  • 特開-支持片の製造方法 図7
  • 特開-支持片の製造方法 図8
  • 特開-支持片の製造方法 図9
  • 特開-支持片の製造方法 図10
  • 特開-支持片の製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146686
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】支持片の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231004BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20231004BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20231004BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20231004BHJP
   B26D 1/15 20060101ALI20231004BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20231004BHJP
   B26D 7/18 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L21/78 F
H01L21/78 Y
H01L25/08 E
B24B27/06 M
B24D5/12 Z
B26D1/15
B26D3/00 601B
B26D7/18 C
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054008
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】大河原 奎佑
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 義信
(72)【発明者】
【氏名】谷口 紘平
(72)【発明者】
【氏名】中村 奏美
(72)【発明者】
【氏名】黒田 孝博
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕貴
【テーマコード(参考)】
3C021
3C063
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C021FB01
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA02
3C063BB07
3C063EE10
3C063EE40
3C158AA03
3C158AB04
3C158CA01
3C158CB01
5F063AA02
5F063AA33
5F063AA50
5F063BA50
5F063BB01
5F063CA04
5F063DD02
5F063DD85
5F063EE07
5F063EE22
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】
【課題】ダイシングの際の支持片へのバリの発生を抑制できる支持片の製造方法を提供する。
【解決手段】この支持片の製造方法は、ダイシングフィルム13と支持片形成用フィルム14との積層体Lをリングフレーム18に固定する固定工程と、支持片形成用フィルム14をブレードBでダイシングすることによって複数の支持片Dに個片化する個片化工程と、複数の支持片Dをダイシングフィルム13から順次ピックアップするピックアップ工程と、を備え、個片化工程では、ブレードBの表面Baに露出している砥粒30の平均粒径が3.0μm以上となっており、表面Baにおける砥粒30の面積占有率が10%~18%となっている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングフィルムと、前記ダイシングフィルムの一面側に設けられた支持片形成用フィルムとの積層体を、リングフレームに固定する固定工程と、
前記支持片形成用フィルムをブレードでダイシングすることによって複数の支持片に個片化する個片化工程と、
前記複数の支持片を前記ダイシングフィルムから順次ピックアップするピックアップ工程と、を備え、
前記個片化工程では、前記ダイシングに用いるブレードの表面に露出している砥粒の平均粒径が3.0μm以上となっており、前記表面における前記砥粒の面積占有率が10%~18%となっている支持片の製造方法。
【請求項2】
前記砥粒の平均粒径が10μm以下となっている請求項1記載の支持片の製造方法。
【請求項3】
前記支持片形成用フィルムは、熱硬化性樹脂層を含んで構成されている請求項1又は2記載の支持片の製造方法。
【請求項4】
前記支持片形成用フィルムは、前記熱硬化性樹脂層よりも剛性の高い樹脂層又は金属層を更に含んで構成されている請求項3記載の支持片の製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂層は、前記樹脂層又は前記金属層を挟むように複数層設けられている請求項4記載の支持片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、支持片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の分野では、高集積化、小型化、高速化の要求が高まっている。半導体装置の一態様として、基板上に配置されたコントローラチップ上に半導体チップを積層した構造がある。特許文献1に記載の半導体アセンブリは、いわゆるドルメン構造と称される構造を有している。この従来の半導体アセンブリは、パッケージ基板と、パッケージ基板上に配置されたコントローラダイと、コントローラダイの上方に配置されたメモリダイとを備え、メモリダイが支柱のような支持部材によって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-515306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の半導体アセンブリでは、通常の半導体チップの製造と同様の工程を用いて、シリコンチップ付きの樹脂フィルムをドルメン構造の支持部材としている。しかしながら、この手法では、比較的高価なシリコンチップを用いること、及びウェハの研磨工程が必要になることが課題となっている。
【0005】
このような課題に対し、シリコンチップを用いず、支持片形成用フィルムを個片化することでドルメン構造の支持片を形成する手法が検討されている。この手法には、例えば基材フィルムの一面にダイシングフィルムと支持片形成用フィルムとを積層した積層フィルムを用いることができる。しかしながら、ダイシングフィルム上の支持片形成用フィルムをブレードでダイシングする際、支持片形成用フィルムの個片化によって形成された支持片にバリが付着することが考えられる。支持片にバリが付着した状態では、ダイシングフィルムからの支持片のピックアップに不具合が生じるおそれがある。また、支持片を用いて構成された半導体装置の信頼性を低下させるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、ダイシングの際の支持片へのバリの付着を抑制できる支持片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る支持片の製造方法は、ダイシングフィルムと、ダイシングフィルムの一面側に設けられた支持片形成用フィルムとの積層体を、リングフレームに固定する固定工程と、支持片形成用フィルムをブレードでダイシングすることによって複数の支持片に個片化する個片化工程と、複数の支持片を前記ダイシングフィルムから順次ピックアップするピックアップ工程と、を備え、個片化工程では、ダイシングに用いるブレードの表面に露出している砥粒の平均粒径が3.0μm以上となっており、表面における砥粒の面積占有率が10%~18%となっている。
【0008】
この支持片の製造方法では、個片化工程において、ブレードの表面に露出している砥粒の平均粒径が3.0μm以上、及び表面における砥粒の面積占有率が10%~18%のいわゆる粗粒度ブレードが用いられている。このようなブレードを用いることにより、ダイシングの際の切削片の粒が比較的大きくなり、切削片の粒の比表面積が小さくなる。このため、切削片の粒同士の凝集が生じにくくなり、また、凝集が生じた場合でも再び分離し易くなる。切削片の粒同士の凝集を防ぐことで、ダイシング中に切削片の粒が溝の外に掻き出され易くなり、個片化後の支持片にバリが付着することを抑制できる。
【0009】
砥粒の平均粒径が10μm以下となっていてもよい。この場合、砥粒の平均粒径が過剰とならず、ダイシングによる切断面の平坦性を十分に保つことができる。
【0010】
支持片形成用フィルムは、熱硬化性樹脂層を含んで構成されていてもよい。この場合、シリコンチップを用いない支持片を好適に作製できる。
【0011】
支持片形成用フィルムは、熱硬化性樹脂層よりも剛性の高い樹脂層又は金属層を更に含んで構成されていてもよい。支持片形成用フィルムが剛性の高い層を含むことで、突上治具への追従性が低下する一方で、吸引コレット等のピックアップツールへの追従性を高めることができる。したがって、熱硬化性樹脂層に対する熱硬化処理を実施しなくても、支持片のピックアップ性を十分に確保できる。金属層を含む場合、樹脂材料と金属材料との間の光学的なコントラストにより、ピックアップ時の支持片の視認性を高めることができる。
【0012】
熱硬化性樹脂層は、樹脂層又は金属層を挟むように複数層設けられていてもよい。この場合、熱硬化性樹脂層に対する熱硬化処理を実施しなくても、支持片のピックアップ性を一層十分に確保できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ダイシングの際の支持片へのバリの付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ドルメン構造を有する半導体装置の一例を示す模式的な断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る支持片の製造方法を示すフローチャートである。
図3】(a)は、固定工程を示す斜視図であり、(b)はその模式的な断面図である。
図4】(a)は、個片化工程を示す斜視図であり、(b)はその模式的な断面図である。
図5】(a)は、ピックアップ工程を示す斜視図であり、(b)はその模式的な断面図である。
図6】(a)は、個片化工程で生じるバリの様子を示す模式的な断面図であり、(b)及び(c)は、その場合のピックアップ工程の様子を示す模式的な断面図である。
図7】ブレードの表面の画像の一例を示す図である。
図8】(a)は、比較例におけるバリの様子を示す模式的な図であり、(b)は、実施例におけるバリの様子を示す模式的な図である。
図9】(a)及び(b)は、支持片形成フィルムの変形例を示す模式的な断面図である。
図10】実施例におけるバリの評価結果を示す図である。
図11】比較例におけるバリの評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る支持片の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
以下の説明では、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。図中の寸法及び寸法割合は便宜的なものであり、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む。本明細書において段階的に記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
【0017】
本明細書における「層」は、平面図として観察したときに、被形成物の全面に形成されている態様、及び被形成物の一部に形成されている態様のいずれも包含される。本明細書における「工程」は、必ずしも独立した工程に限られず、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されるものも含まれ得る。
【0018】
図1は、ドルメン構造を有する半導体装置の一例を示す模式的な断面図である。同図に示す半導体装置1は、基板2と、基板2の一面に配置されたコントローラチップ3と、複数のメモリチップ4,5,6と、これらのチップのそれぞれを基板2上の電極(不図示)と電気的に接続する複数のワイヤWとを備えている。コントローラチップ3、メモリチップ4,5,6、及びワイヤWは、封止材7によって封止されている。
【0019】
基板2は、例えば有機基板である。基板2は、リードフレーム等の金属基板であってもよい。コントローラチップ3の周囲には、複数の支持片Dが配置されている。コントローラチップ3及びメモリチップ4,5,6の片面には、接着層8がそれぞれ設けられている。コントローラチップ3は、接着層8を介して基板2の表面に固定されている。メモリチップ4,5,6は、ワイヤWの接続スペースが形成されるように、接着層8を介して階段状に積層されている。メモリチップ4,5,6の積層体は、最下層のメモリチップ4の片面の接着層8を介し、複数の支持片Dによってコントローラチップ3の上方(基板2と反対側)で支持されている。
【0020】
次に、上述した支持片Dの製造工程について説明する。図2は、本開示の一実施形態に係る支持片の製造方法を示すフローチャートである。図2に示すように、この支持片の製造方法は、固定工程(ステップS01)と、個片化工程(ステップS02)と、ピックアップ工程(ステップS03)とを備えている。
【0021】
固定工程は、図3(a)及び図3(b)に示すように、ダイシングフィルム13と、ダイシングフィルム13の一面側に設けられた支持片形成用フィルム14との積層体Lをリングフレーム18に固定する工程である。本実施形態では、例えば半導体ウェハへのダイシングフィルムのラミネートに用いられる一般的なラミネート装置を流用して固定工程を実施できる。ダイシングフィルム13及び支持片形成用フィルム14の積層体Lをリングフレーム18に対して配置した後、ローラによって圧力を付与し、リングフレーム18にダイシングフィルム13の周縁部を貼り付ける。これにより、ダイシングフィルム13及び支持片形成用フィルム14の積層体Lがリングフレーム18に固定される。
【0022】
ダイシングフィルム13は、支持片形成用フィルム14をリングフレーム18に固定するためのフィルムである。ダイシングフィルム13は、例えばパンチング等の加工手段によって、基材フィルム12の幅よりも小さい直径の円形に形成されている。ダイシングフィルム13は、図3(b)に示すように、基材層19と、粘着層20とを有している。基材層19は、ダイシングフィルム13の土台となる層である。基材層19は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリオレフィンなどの材料によって形成されている。粘着層20は、例えば紫外線硬化型の粘着剤によって構成されている。粘着層20は、紫外線の照射によって粘着性が低下する性質を有している。粘着層20は、紫外線硬化型の粘着剤のほか、感圧型(非紫外線硬化型)の粘着剤であってもよい。
【0023】
支持片形成用フィルム14は、上述した半導体装置1における支持片D(図1参照)を形成するためのフィルムである。支持片形成用フィルム14は、例えばパンチング等の加工手段によって、ダイシングフィルム13よりも一回り小さい直径の円形に形成されている。支持片形成用フィルム14は、例えば熱硬化性樹脂組成物によって構成されている。すなわち、支持片形成用フィルム14は、熱硬化性樹脂層15によって構成されている。
【0024】
支持片形成用フィルム14を構成する熱硬化性樹脂組成物は、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後の硬化処理によって完全硬化物(Cステージ)状態となり得る。熱硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂と、硬化剤と、エラストマ(例えば、アクリル樹脂)とが含まれる。熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機フィラー及び硬化促進剤等が更に含まれる。
【0025】
個片化工程は、図4(a)及び図4(b)に示すように、支持片形成用フィルム14をブレードBでダイシングすることによって複数の支持片Dに個片化する工程である。図4(a)及び図4(b)の例では、支持片形成用フィルム14に対し、平面視において格子状の切込パターン16でダイシングが実施される。ここでは、支持片形成用フィルム14のフルカットによって、当該支持片形成用フィルム14の一面側から他面側に切り込みを到達させる。切り込みは、ダイシングフィルム13の粘着層20に到達していてもよい。切込パターン16により、支持片形成用フィルム14には、矩形の支持片Dがマトリクス状に配列された状態となる。
【0026】
ピックアップ工程は、図5(a)及び図5(b)に示すように、複数の支持片Dをダイシングフィルム13から順次ピックアップする工程である。粘着層20が紫外線硬化型の粘着剤である場合、ピックアップ工程では、ダイシングフィルム13に対して紫外線を照射し、ダイシングフィルム13と支持片形成用フィルム14との間の粘着力を低下させる。粘着層20が感圧型(非紫外線硬化型)の粘着剤である場合、紫外線の照射を省略してピックアップ工程を進めることができる。次に、支持片Dを吸引コレット25で吸引し、支持片Dをピックアップする。吸引コレット25による支持片Dの吸引にあたっては、ピックアップする支持片Dを突上治具26でダイシングフィルム13側から突き上げてもよい。
【0027】
上述した個片化工程において、ダイシングフィルム13上の支持片形成用フィルム14をブレードBでダイシングする際、図6(a)に示すように、支持片形成用フィルム14の個片化によって形成された支持片DにバリKが付着することが考えられる。バリKは、例えば支持片形成用フィルム14を構成する樹脂材料の切削片、ダイシングフィルム13の粘着層20を構成する樹脂材料の切削片などが凝集することによって形成され、ダイシングによって支持片D,D間に形成された溝27内に生じ得る。
【0028】
溝27内に生じたバリKは、支持片Dの側面などに付着する。支持片Dにバリが付着した状態では、図6(b)に示すように、ピックアップ時にダイシングフィルム13から支持片Dを剥離するために必要な力が増加し、ピックアップ不良が生じることが考えられる。また、図6(c)に示すように、バリKが付着したまま支持片Dがピックアップされ、当該支持片Dを用いて構成された半導体装置1にバリKが混入することで、半導体装置1の信頼性を低下させることが考えられる。
【0029】
これに対し、本実施形態に係る支持片の製造方法では、個片化工程において、ダイシングに用いるブレードBの表面Baに露出している砥粒30の平均粒径が3.0μm以上となっている。また、ブレードBの表面Baにおける砥粒30の面積占有率が10%~18%となっている。砥粒30の平均粒径は、5.3μm以上であってもよく、7.5μm以上であってもよい。砥粒30の面積占有率は、12。5%~17.5%であってもよく、12.5%~15%であってもよい。砥粒の平均粒径は、10μm以下となっている。
【0030】
図7は、砥粒の平均粒径及び面積占有率を満たすブレードの表面の画像の一例を示す図である。同図の例では、ブレードBの表面Baに露出している砥粒30の平均粒径が5.3μmとなっており、ブレードBの表面Baにおける砥粒30の面積占有率が12.5%となっている。砥粒30は、ブレードBの表面Baにおいて、偏り無く分散した状態となっている。
【0031】
上述のようなブレードBは、ダイシングの際に支持片形成用フィルム14及びダイシングフィルム13に当たる部分の砥粒30の粒度が粗く、且つ表面に一定の割合で分散した、いわゆる粗粒度ブレードとなっている。この条件を満たさない、いわゆる細粒度ブレードを用いた場合、図8(a)に示すように、支持片形成用フィルム14及びダイシングフィルム13の切削片の粒Pが比較的細かくなり、切削片の粒Pの比表面積が大きくなるため、切削片の粒P同士が凝集し易くなる。凝集した切削片の粒Pが支持片D,D間の溝27に入り込むと、ブレードBで掻き出され難くなり、溝27に残った切削片の粒Pの凝集体がバリKとして支持片Dに付着する。
【0032】
これに対し、上記の条件を満たす粗粒度ブレードを用いた場合、図8(b)に示すように、支持片形成用フィルム14及びダイシングフィルム13の切削片の粒Pが比較的粗くなり、切削片の粒Pの比表面積が小さくなるため、切削片の粒P同士が凝集しにくくなる。また、凝集が生じた場合でも、切削片の粒P同士が再び分離し易くなる。したがって、切削片の粒Pが支持片D,Dの間の溝27に入り込んだとしても、ブレードBで容易に掻き出され、支持片DへのバリKの付着を抑制できる。
【0033】
ブレードの表面における砥粒の平均粒径及び面積占有率は、三次元形状測定装置(例えばオリンパス株式会社製:LEXT OLS4100)を用いて測定できる。この場合、画像処理条件として、測定エリアを200μm×200μm以内とし、粒子解析モードにて取得したブレードBの表面Baの画像に二値化処理を施して画像内の砥粒の領域を抽出する。砥粒の抽出に用いる閾値は、例えば0%以上99%以下とすることができる。
【0034】
抽出した画像内の砥粒の領域に基づいて、ブレードの表面における砥粒の平均粒径及び面積占有率を算出する。平均粒径の算出にあたっては、砥粒の粒径が手動で測定した平均粒径(例えばサンプル数を20とする)の3倍以上となっているものについては、異物と見做して算出から除外してもよい。面積占有率の算出にあたっては、抽出された砥粒の領域の面積を合計し、ブレードの表面の面積で除算することで算出できる。
【0035】
以上説明したように、この支持片の製造方法では、個片化工程において、ブレードBの表面Baに露出している砥粒30の平均粒径が3.0μm以上、及び表面Baにおける砥粒30の面積占有率が10%~18%のいわゆる粗粒度ブレードが用いられている。このようなブレードBを用いることにより、ダイシングの際の切削片の粒Pが比較的大きくなり、切削片の粒Pの比表面積が小さくなる。このため、切削片の粒P同士の凝集が生じにくくなり、また、凝集が生じた場合でも再び分離し易くなる。切削片の粒P同士の凝集を防ぐことで、ダイシング中に切削片の粒Pが溝27の外に掻き出され易くなり、個片化後の支持片DにバリKが付着することを抑制できる。
【0036】
支持片DへのバリKの付着が抑制されることで、ピックアップ時にダイシングフィルム13から支持片Dを剥離するために必要な力の増加が抑えられ、ピックアップ不良が生じることを抑制できる。また、当該支持片Dを用いて構成された半導体装置1にバリKが混入することを抑えられ、半導体装置1の信頼性の低下を抑制できる。
【0037】
本実施形態では、砥粒30の平均粒径が10μm以下となっている。この範囲によれば、砥粒30の平均粒径が過剰とならず、ダイシングによる切断面の平坦性を十分に保つことができる。したがって、個片化後の支持片DにバリKが付着することを抑制しつつ、支持片Dの形状の精度を担保できる。
【0038】
本実施形態では、支持片形成用フィルム14が熱硬化性樹脂層を含んで構成されている。これにより、シリコンチップを用いない支持片Dを好適に作製できる。
【0039】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、支持片形成用フィルム14が熱硬化性樹脂層15によって構成されているが、例えば図9(a)に示すように、支持片形成用フィルム14が熱硬化性樹脂層15よりも剛性の高い樹脂層31又は金属層32を更に含んで構成されていてもよい。樹脂層31としては、例えばポリイミド層が用いられる。金属層32としては、例えば銅層、アルミニウム層などが用いられる。
【0040】
この場合、支持片形成用フィルム14が剛性の高い層を含むことで、突上治具26への追従性が低下する一方で、吸引コレット25等のピックアップツールへの追従性を高めることができる。したがって、熱硬化性樹脂層15に対する熱硬化処理を実施しなくても、支持片Dのピックアップ性を十分に確保できる。金属層32を含む場合、樹脂材料と金属材料との間の光学的なコントラストにより、ピックアップ時の支持片Dの視認性を高めることができる。
【0041】
図9(b)に示すように、熱硬化性樹脂層15は、樹脂層31又は金属層32を挟むように複数層設けられていてもよい。この場合においても、熱硬化性樹脂層15に対する熱硬化処理を実施しなくても、支持片Dのピックアップ性を一層十分に確保できる。図9(b)の例では、樹脂層31又は金属層32の一面側及び他面側に熱硬化性樹脂層15が1層ずつ設けられているが、樹脂層31又は金属層32の一面側及び他面側に熱硬化性樹脂層15が複数層ずつ設けられていてもよい。
【0042】
以下、本開示に係る支持片の製造方法の効果確認試験について説明する。この試験は、実施例に係るブレード及び比較例に係るブレードを用いて支持片形成用フィルムのダイシングを実施し、支持片間の溝に生じたバリ(支持片の側面に付着したバリ)の高さを評価したものである。
【0043】
図10は、実施例に係るバリの評価結果を示す図である。同図に示すように、実施例1では、ダイシングを行う支持片形成用フィルムの厚さを80μmとし、ブレードの幅を32.5μmとした。ブレードの表面における砥粒の平均粒径(以下「表面粒径」)は、実測値で5.3μmであり、ブレードの表面における砥粒の面積占有率(以下「表面占有率」)は、実測値で10.0%であった。図10では、表面粒径及び表面占有率について、文献値を付記している。平均粒径が44μm以下の砥粒は、JIS規格に定められていないため、当該文献値はあくまで参考値である(https://www.toishi.info/spec/grit.html)。
【0044】
実施例2では、支持片形成用フィルムの厚さを65μmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。実施例3では、ブレードの幅を22.5μmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。実施例4では、支持片形成用フィルムの厚さを65μmとし、且つブレードの幅を22.5μmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。実施例5では、ブレードの幅を22.5μmとすると共に、表面粒径を3.4μmとし、表面占有率を10.9%とした。実施例6では、表面占有率を17.2%とした。実施例7では、支持片形成用フィルムの厚さを65μmとすると共に、表面粒径を6.9μmとし、表面占有率を15.5%とした。
【0045】
バリの高さについては、支持片間の溝に生じたバリにおける支持片の高さ方向(支持片形成用フィルムの厚さ方向)の長さのうち最大のものを測定値とした。バリの高さの測定には、デジタルマイクロスコープ(株式会社ミツトヨ製:MF-UD)を用いた。その結果、バリの高さは、実施例1では、7.97μm、実施例2では、9.27μm、実施例3では、16.37μm、実施例4では、12.37μm、実施例5では、19.68μm、実施例6では、8.60μm、実施例7では、6.50μmであった。支持片形成用フィルムの厚さやブレードの幅によってバリの高さに変動があるものの、実施例1~7では、いずれもバリの高さが20μm未満に抑えられていた。実施例1,2,6,7では、バリの高さが10μm未満に抑えられていた。
【0046】
図11は、比較例におけるバリの評価結果を示す図である。同図に示すように、比較例1では、表面粒径を1.8μmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件とした。比較例1では、表面占有率は、実測値で9.7%であった。比較例2では、支持片形成用フィルムの厚さを65μmとしたこと以外は、比較例1と同じ条件とした。
【0047】
比較例3では、ブレードの幅を22.5μmとしたこと以外は、比較例1と同じ条件とした。比較例4では、支持片形成用フィルムの厚さを65μmとし、かつブレードの幅を22.5μmとしたこと以外は、比較例1と同じ条件とした。比較例5では、表面占有率が実測値で18.9%であったこと以外は、実施例1と同じ条件とした。
【0048】
その結果、バリの高さは、比較例1では、23.13μm、比較例2では、22.32μm、比較例3では、34.17μm、比較例4では、35.07μm、比較例5では、24.18μmであった。実施例の場合と同様、支持片形成用フィルムの厚さやブレードの幅によってバリの高さに変動があるものの、比較例1~5では、いずれもバリの高さが20μmを超えていた。比較例3,4では、バリの高さが30μmを超えていた。
【0049】
以上の結果から、個片化工程において、ダイシングに用いるブレードの表面に露出している砥粒の平均粒径(表面粒径)を3.0μm以上とし、且つ表面における砥粒の面積占有率(表面占有率)を10%~18%とすることが、ダイシングの際の支持片へのバリの付着の抑制に寄与することが確認できた。
【符号の説明】
【0050】
13…ダイシングフィルム、14…支持片形成用フィルム、15…熱硬化性樹脂層、18…リングフレーム、30…砥粒、31…樹脂層、32…金属層、B…ブレード、Ba…表面、D…支持片、L…積層体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11