(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146703
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】埋込方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20231004BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231004BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20231004BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20231004BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 E
C23C16/42
C23C16/40
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054037
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA02
4K030BA09
4K030BA18
4K030BA20
4K030BA38
4K030BA40
4K030BA42
4K030BA44
4K030BA46
4K030BB12
4K030EA04
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4K030FA10
4K030GA06
4K030HA01
5F045AA06
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB32
5F045AB33
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5F045AD06
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5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
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5F058BA09
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5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
5F058BH12
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】凹部内の膜を汚染から保護し、膜特性を高める。
【解決手段】所定の元素を含有する膜を基板に形成された凹部に埋め込む方法であって、(a)第1チャンバにおいて、前記所定の元素を含有する膜の第1膜を成膜するステップと、(b)第2チャンバにおいて、前記第1膜を、ハロゲン含有ガスを含むガスに晒して改質層を形成するステップと、(c)前記第2チャンバにおいて、前記改質層を覆う保護膜を成膜するステップと、(d)第3チャンバにおいて、前記保護膜をエッチングし、前記改質層を昇華するステップと、(e)前記第3チャンバにおいて、前記所定の元素を含有する膜の第2膜を成膜するステップと、を含む、埋込方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の元素を含有する膜を基板に形成された凹部に埋め込む方法であって、
(a)第1チャンバにおいて、前記所定の元素を含有する膜の第1膜を成膜するステップと、
(b)第2チャンバにおいて、前記第1膜を、ハロゲン含有ガスを含むガスに晒して改質層を形成するステップと、
(c)前記第2チャンバにおいて、前記改質層を覆う保護膜を成膜するステップと、
(d)第3チャンバにおいて、前記保護膜をエッチングし、前記改質層を昇華するステップと、
(e)前記第3チャンバにおいて、前記所定の元素を含有する膜の第2膜を成膜するステップと、
を含む、埋込方法。
【請求項2】
前記所定の元素は、Si、Ge又は金属のいずれかである、
請求項1に記載の埋込方法。
【請求項3】
前記金属は、Ti、Al又はWのいずれかである、
請求項2に記載の埋込方法。
【請求項4】
前記(a)において、前記凹部の上部が閉塞しないように前記第1膜を成膜する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の埋込方法。
【請求項5】
(f)前記第2チャンバにおいて、前記第2膜を、ハロゲン含有ガスを含むガスに晒して改質層を形成するステップを含み、
前記(f)、前記(c)、前記(d)、前記(e)の順に繰り返し、複数の前記所定の元素を含有する膜を積層する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の埋込方法。
【請求項6】
前記(b)において、前記ハロゲン含有ガスと塩基性ガスとを供給する、
請求項5に記載の埋込方法。
【請求項7】
前記塩基性ガスは、アンモニアガスである、
請求項6に記載の埋込方法。
【請求項8】
前記(d)において、前記保護膜のエッチングガスとしてハロゲン含有ガスを供給する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の埋込方法。
【請求項9】
前記ハロゲン含有ガスは、Fを含むガスである、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の埋込方法。
【請求項10】
前記第1チャンバと前記第3チャンバとは、同一のチャンバである、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の埋込方法。
【請求項11】
前記第1チャンバと前記第2チャンバとは、異なるチャンバであり、
前記第1チャンバと前記第2チャンバとの間を移動するとき、前記基板は大気に暴露される、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の埋込方法。
【請求項12】
前記(c)では、前記第2チャンバ内を前記改質層が昇華しない温度に制御し、
前記(d)では、前記第3チャンバ内を前記改質層が昇華する温度に制御する、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の埋込方法。
【請求項13】
前記(c)では、前記第2チャンバ内を100℃未満に制御し、
前記(d)では、前記第3チャンバ内を100℃以上に制御する、
請求項12に記載の埋込方法。
【請求項14】
前記(c)における前記第2チャンバ内の温度と、前記(d)における前記第3チャンバ内の温度との差は、150℃以上である、
請求項13に記載の埋込方法。
【請求項15】
前記保護膜は、前記所定の元素を含む酸化膜である、
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の埋込方法。
【請求項16】
複数のチャンバと制御装置とを有する基板処理システムであって、
前記制御装置は、
前記請求項1乃至15のいずれか1項に記載の埋込方法を制御する、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋込方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1及び特許文献2は、成膜工程とエッチング工程とを所定回数繰り返すことで、凹部に所望膜を埋め込む方法を提案する。成膜とエッチングとを組み合わせることにより凹部に所望膜を埋め込む際にボイドの発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-004542号公報
【特許文献2】特開2021-061348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、凹部内の膜を汚染から保護し、膜特性を高めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、所定の元素を含有する膜を基板に形成された凹部に埋め込む方法であって、(a)第1チャンバにおいて、前記所定の元素を含有する膜の第1膜を成膜するステップと、(b)第2チャンバにおいて、前記第1膜を、ハロゲン含有ガスを含むガスに晒して改質層を形成するステップと、(c)前記第2チャンバにおいて、前記改質層を覆う保護膜を成膜するステップと、(d)第3チャンバにおいて、前記保護膜をエッチングし、前記改質層を昇華するステップと、(e)前記第3チャンバにおいて、前記所定の元素を含有する膜の第2膜を成膜するステップと、を含む、埋込方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、凹部内の膜を汚染から保護し、膜特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るSiN膜の埋込方法を実行する基板処理システムの一例を示す図。
【
図2】実施形態に係るSiO
2膜の埋込方法を実行する基板処理システムの一例を示す図。
【
図3】実施形態に係る埋込方法の一例を示すフローチャート。
【
図5】実施形態に係る基板処理装置のガス供給源及び制御装置の説明図。
【
図6】実施形態に係る基板処理装置の一例を示す図。
【
図8】実施形態に係るSiN膜の成膜方法の一例を示すフローチャート。
【
図9】実施形態に係るSiN膜の成膜方法の一例を示すタイムチャート。
【
図10】実施形態に係るSiO
2膜形成の一例を示すフローチャート。
【
図11】実施形態に係るSiO
2膜の成膜方法の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書において平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直、円、一致には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直、略円、略一致が含まれてもよい。
【0010】
[基板処理システム]
図1及び
図2を参照し、実施形態の埋込方法を実行する基板処理システムの一例について説明する。
図1は実施形態に係るSiN膜の埋込方法を実行する基板処理システムの一例を示す図である。
図2は実施形態に係るSiO
2膜の埋込方法を実行する基板処理システムの一例を示す図である。
【0011】
実施形態の基板処理システムは、複数の基板Wに対して一度に処理を行うバッチ式の基板処理装置を複数有する。
図1及び
図2の例では、基板処理システムは基板処理装置10aと基板処理装置10bとを有する。基板処理装置10aと基板処理装置10bとは別の基板処理装置である。基板処理装置10aと基板処理装置10bとを総称して基板処理装置10ともいう。
【0012】
図1及び
図2の基板処理装置10aは第1チャンバ11、プラズマボックス19及びガスノズル41A~41C、41Eを有し、成膜を行う。
図1及び
図2の基板処理装置10bは第2チャンバ21、プラズマボックス19及びガスノズル41A~41Eを有し、改質及び保護膜形成を行う。
図1及び
図2の基板処理装置10aは、同一構造を有し、異なるガスを供給する。
図1及び
図2の基板処理装置10bは、同一構造を有し、同一ガスを供給する。SiN膜を基板Wに形成された凹部に埋め込む場合、
図1の基板処理装置10aを用いてSiN膜を形成する。SiO
2膜を基板Wに形成された凹部に埋め込む場合、
図2の基板処理装置10aを用いてSiO
2膜を形成する。
図1及び
図2の基板処理装置10bで行う改質及び保護膜形成は同一処理である。
【0013】
[埋込方法ST]
次に、
図1~
図4を参照し、実施形態の埋込方法STの一例について説明する。
図3は、実施形態に係る埋込方法STの一例を示すフローチャートである。
図4は、
図3の埋込方法STの説明図である。
図3の埋込方法STは、後述する制御装置90により制御される。SiN膜を基板Wに形成された凹部に埋め込む場合、
図1の基板処理システムを用いて
図3に示すステップS1~S6の埋込方法STを実行する。SiO
2膜を基板Wに形成された凹部に埋め込む場合、
図2の基板処理システムを用いて
図3に示すステップS1~S6の埋込方法STを実行する。まず、
図1の基板処理システムを用いたSiN膜の埋込方法STについて説明する。
【0014】
まず、ステップS1において、基板処理装置10aの第1チャンバ11に基板Wを準備する。準備される基板Wは特に限定されないが、シリコン等の半導体基板上に凹部を有する。次に、ガスノズル41AからSi原料ガスの一例であるジクロロシラン(DCS:SiH2Cl2)ガスを供給し、ガスノズル41Eからアンモニア(NH3)ガスを供給し、凹部内にSiN膜を成膜する(第1の成膜)。
【0015】
図4(a)では、準備された基板Wのシリコン等の半導体基板100上に形成された凹部Hの下地膜101の上にSiN膜102が成膜された例を示す。
図4(a)に示すSiN膜102は、所定の元素を含有する膜の第1膜(一度目の膜)の一例である。一度目の成膜では、凹部Hの形状に応じた最適な膜厚のSiN膜を成膜する。例えば凹部Hの上部が閉塞しないように第1膜を成膜する。
【0016】
なお、基板Wとしては、表面に微細な立体構造を有するものを用い得る。微細な立体構造とは、微細パターンが形成された構造を挙げることができる。微細パターンは例えば
図4(a)に示す凹部Hを有する。凹部Hは、例えば、トレンチやホールであってよい。下地は特に制限されない。
【0017】
次に、
図3のステップS2において、搬送装置を使用して基板Wを基板処理装置10aの第1チャンバ11から一旦引き出し、基板処理装置10bの第2チャンバ21へ移載する。このとき、基板Wは大気に暴露され、SiN膜上に自然酸化膜が形成される。第2チャンバ21では、SiN膜及び大気暴露により形成された自然酸化膜を、ハロゲン含有ガスを含むガスに暴露して改質層を形成する。ハロゲン含有ガスを含むガスは、ハロゲン含有ガスと塩基性ガスであってよい。ハロゲン含有ガスは、フッ素又は塩素を含むガスであってよい。
【0018】
図1の例では、第2チャンバ21のガスノズル41Bからハロゲン含有ガスの一例としてフッ化水素(HF)ガスを供給し、ガスノズル41Cから塩基性ガスの一例としてアンモニア(NH
3)ガスを供給する。HFガス及びNH
3ガスによりSiN膜の表層を、珪フッ化アンモニウム(AFS:(NH
4)
2SiF
6)の反応生成物
に改質(変質)する。AFS層(改質層)は、エッチングの中間体である。
これにより、
図4(b)に示すように、SiN膜102の表層が改質され、AFSの改質層103が形成される。ここで、AFSの改質層103は、凹部Hの上部側で厚く、底部側で薄く形成される。つまり、凹部の上部側に形成されたSiN膜が底部側に形成されたSiN膜よりも多くエッチングされることになる。
【0019】
なお、第2チャンバ21内をAFSが昇華される温度に制御すると、改質層103が昇華され、SiN膜のエッチングが実行されることになる。しかしながら、本開示の埋込方法STでは、第2チャンバ21は、AFSが昇華されない温度に制御されている。これにより、改質層103を昇華させずに第2チャンバ21内で
図3のステップS3が実行される。
【0020】
ステップS3では第2チャンバ21において、改質層103を覆う保護膜を成膜する。
図1の例では、第2チャンバ21のガスノズル41AからSi原料ガスの一例であるDIPASを供給し、ガスノズル41EからO
2ガスを供給する。O
2ガスは、プラズマボックス19でプラズマ化する。DIPAS及びO
2ガスのプラズマにより改質層103上にSiO
2膜の保護膜104を成膜する。SiO
2膜の成膜時、ガスノズル41Dから触媒ガスのB
2H
6ガスを供給してもよい。保護膜104の形成時、第2チャンバ21は、AFSが昇華されない温度、例えば100℃未満に制御されている。これにより、
図4(c)に示すように、AFSの改質層103を昇華させずに、SiN膜102及び改質層103をSiO
2膜の保護膜104で保護することができる。なお、
図4(c)では保護膜104で凹部Hを埋め込んだ(凹部Hの上部開口が閉塞した)例を示しているが、これに限らない。凹部Hの上部を保護膜104により閉塞させなくても良い。
【0021】
次に、
図3のステップS4において、基板Wを基板処理装置10bの第2チャンバ21から基板処理装置の第3チャンバへ移動させる。第3チャンバは、第1チャンバ11と同一チャンバであってよく、異なるチャンバであってもよい。以下の説明では、第3チャンバは、第1チャンバ11と同一チャンバとして説明する。チャンバの移動時、基板Wは大気に暴露される。しかしながら、基板W上の改質層103はSiO
2膜の保護膜104により覆われている。これにより、搬送時に基板Wが大気に暴露されてもSiN膜102及び改質層103は酸化や有機物による汚染から保護される。
【0022】
ステップS4では、第1チャンバ11において、SiO2膜の保護膜104をハロゲン含有ガスによりエッチングする。保護膜104のエッチング時、第1チャンバ11は、AFSが昇華される温度、例えば100℃以上に制御されている。ステップS3における第2チャンバ21内の温度と、ステップS4における第1チャンバ11内の温度の差は、150℃以上であってもよい。
【0023】
以上により、第1チャンバ11において保護膜104のエッチングを行うと、改質層103が熱により昇華される。
図1の例では、第1チャンバ11のガスノズル41BからHFガスを供給し、ガスノズル41CからF
2ガスを供給し、SiO
2膜の保護膜104をエッチングする。HFガス及びF
2ガスは、ハロゲン含有ガスの一例であり、HFガス及びF
2ガスの少なくともいずれかを供給してもよい。これにより、
図4(d)に示すように、SiO
2膜の保護膜104及び改質層103が除去(エッチング)される。この結果、SiN膜102が改質された分だけ減膜され、凹部HがV字形状に開口し、ボイドを回避しながら、次の成膜を行うことができる。
【0024】
次に、
図3のステップS5では、第1チャンバ11において、次のSiN膜を成膜する(第2の成膜)。これにより、
図4(e)に示すように、基板WのSiN膜102の上にSiN膜105が成膜される。SiN膜105は、所定の元素を含有する膜の第2膜(二度目の膜)の一例である。SiN膜105の成膜に使用するガス種は、SiN膜102の成膜に使用したガス種と同じであってよい。
【0025】
次に、
図3のステップS6では、第2のSiN膜の成膜を設定回数繰り返したかを判定する。
図4(a)~(e)に示した実施形態の一例では、ステップS1~S5を1回行うことで凹部Hの埋め込みが完了しているが、凹部Hの形状によっては、ステップS5(
図4(e))を凹部Hの上部が閉塞しないように実施し、ステップS2~S5の処理を繰り返し行う場合がある。ステップS6の設定回数には、凹部Hに対してボイドやシームの発生が抑制された埋め込みが可能な回数が予め定められている。ステップS2~S5の処理が設定回数繰り返されると、凹部Hの埋め込みが完了し、本処理が終了する。
【0026】
SiN膜の成膜では、凹部の上部側が底部側よりも厚く成膜される場合、そのまま成膜すると凹部の上部の開口が閉塞し、凹部の内部に空隙(ボイド)が生じる。このとき、SiN膜の第一の成膜と第二の成膜との間にエッチングを行い、凹部の上部側に形成された膜を底部側に形成された膜よりも多く削っておくと、第二の成膜を行うときに空隙なく凹部内にSiN膜を成膜できる。
【0027】
このようにして基板W上の凹部へのシリコン含有膜やメタル含有膜等の所定の元素を有する膜を成膜するとき、成膜とエッチングとを繰り返し行うことで、ボイドの発生を回避し、微細な凹部に所望膜を埋め込むことができる。係る埋込方法では、成膜とエッチングとを別チャンバで行う場合と、同一チャンバで連続的に行う場合がある。
【0028】
同一チャンバで連続的に行う場合、基板Wの大気汚染を回避できる。ただし、この場合、成膜の温度条件とエッチングの温度条件が大きく乖離すると、チャンバ内の温度制御の時間が増加し、生産性が低下する。よって、同一チャンバ内で行う埋込方法では生産性の低下を考慮すると温度条件に制約が生じる。
【0029】
本開示の埋込方法STでは、成膜とエッチングとを別チャンバで行うため、成膜温度とエッチング温度の乖離が大きくてもそれぞれのチャンバ内を異なる温度に制御すればよい。この結果、生産性を維持しつつ、成膜の温度条件とエッチングの温度条件を制約なく自由に設定できる。
【0030】
ところが、チャンバ間で基板Wを搬送する度に基板Wが大気に暴露される。このため、大気中の酸素により基板Wに形成された膜が酸化されて酸化膜が形成されたり、大気中の有機物が膜に付着して汚染されたりする。これにより形成された膜の特性が低下する。よって、基板W表面の酸化膜の形成や汚染を回避する必要がある。
【0031】
これに対して、本開示の埋込方法STによれば、第2チャンバ21から第1チャンバ11へ基板Wを移動させる前に、改質層103を保護膜104により覆う。これにより、基板W表面の保護膜104によって、基板Wの搬送時に改質層103及びSiN膜102を大気汚染から保護することができる。この結果、改質層103及びSiN膜102の表面が酸化して酸化膜が形成されることや有機物による汚染等が生じることを回避できる。また、AFS(改質層103)は熱昇華性の物質であるが、SiO2膜の保護膜104でコーティングされているため、基板Wの搬送時に揮発することなく安定な状態で基板Wを第2チャンバ21から第1チャンバ11へ移載できる。
【0032】
基板Wを第1チャンバ11へ搬送後、第1チャンバ11内で保護膜104及び改質層103を除去し、続けて同チャンバで汚染されていないSiN膜の表面上に新たなSiN膜を成膜する。この結果、最初のSiN膜及びそれ以降のSiN膜において、その界面に自然酸化膜や汚染物を含まない良質なSiN膜を凹部に埋め込むことができる。
【0033】
図2の基板システムでは、基板Wの凹部HにSiO
2膜を埋め込む。この場合、
図3のステップS1では基板処理装置10aにおいてSiO
2膜を成膜する(第1の成膜)。使用するガス種としては、
図2に示すように、基板処理装置10aの第1チャンバ11において、ガスノズル41AからSi原料ガスの一例であるDIPASを供給し、ガスノズル41EからO
2ガスを供給し、凹部内にSiO
2膜を成膜する。SiO
2膜の成膜時、ガスノズル41Bから触媒ガスのB
2H
6ガスを供給してもよい。
図3のステップS2~S3で行う処理は前述した通りであるため説明を省略する。
【0034】
基板Wを第1チャンバ11へ搬送後、
図3のステップS4では、第1チャンバ11内において、ステップS2~S3で形成した保護膜104及び改質層103を除去する。次に、ステップS5では、同一チャンバ内で汚染されていないSiO
2膜上に更にSiO
2膜を成膜する(第2の成膜)。ステップS2~S5の処理を設定回数繰り返した結果、最初のSiO
2膜の成膜及びその後のSiO
2膜の成膜において、その界面に自然酸化膜や汚染物を含まない良質なSiO
2膜を凹部に埋め込むことができる。
【0035】
以上、SiN膜及びSiO
2膜の埋込方法について説明した。凹部へのSiN膜及びSiO
2膜の成膜(ステップS1及びS5)は、原料ガスと反応ガスとを交互に供給して成膜する原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法を使用してもよい。原料ガスと反応ガスとを同時に供給して成膜する化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を使用してもよい。保護膜104としてのSiO
2膜の成膜(ステップS3)についても、ALD法及びCVD法のいずれを用いてもよい。ALD法によるSiN膜の成膜(
図8、
図9参照)及びALD法によるSiO
2膜の成膜(
図10、
図11参照)については後述する。
【0036】
[プロセス条件]
本開示の埋込方法STのプロセス条件について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、実施形態に係る第1チャンバ11又は第2チャンバ21に各種ガスを供給する各種ガス供給源及び制御装置90の説明図である。
【0037】
基板処理装置10aのガス供給部は、原料ガス供給源44a、反応ガス供給源45a、触媒ガス供給源47a及びエッチングガス供給源48を有し、各ガス供給源は第1チャンバ11と接続され、第1チャンバ11内に各種ガスを供給する。基板処理装置10bのガス供給部は、原料ガス供給源44b、反応ガス供給源45b、改質ガス供給源46、触媒ガス供給源47b及びエッチングガス供給源48を有し、各ガス供給源は第2チャンバ21と接続され、第2チャンバ21内に各種ガスを供給する。第1チャンバ11と各ガス供給源とを接続するガス配管及び第2チャンバ21と各ガス供給源とを接続するガス配管には、ガス流量調整弁が設けられ、制御装置90の制御により各ガスの流量を制御する。
【0038】
[成膜条件(ガス種):
図3 ステップS1及びS5]
まず、
図3のステップS1及びS5で行う成膜時のプロセス条件(ガス種)について、(1)凹部にSiN膜を埋め込む場合、(2)凹部にSiO
2膜を埋め込む場合を順に説明する。
【0039】
(1)凹部にSiN膜を埋め込む場合
原料ガス供給源44aは、
図1の第1チャンバ11内のガスノズル41Aに接続され、後述する複数のガス孔42A(
図6参照)から第1チャンバ11内に原料ガスを供給する。原料ガスは、所定の元素を含有する膜の成膜において、所定の元素を含む。所定の元素がシリコンの場合には、原料ガスはシリコンを含むSi原料ガスである。
【0040】
第1チャンバ11に供給するSi原料ガスとしては、本実施形態のSi原料ガスはDCSガスであるが、本開示の技術はこれに限定されない。Si原料ガスとして、DCSガスの他にモノクロロシラン(MCS:SiH3Cl)ガス、トリクロロシラン(TCS:SiHCl3)ガス、シリコンテトラクロライド(STC:SiCl4)ガス、ヘキサクロロジシラン(HCDS:Si2Cl6)ガス、又はこれらのガスのいずれかを含むガスを用いることができる。これらのガスを基板Wに供給することにより、シリコン(Si)を含む層(Si含有層)を基板Wに形成できる。Si原料ガスとともにハロゲン元素を含むガス(例えばBCl3ガス)を供給してもよい。
【0041】
反応ガス供給源45aは、
図1の第1チャンバ11内のガスノズル41Eに接続され、後述する複数のガス孔42E(
図6参照)からプラズマボックス19内に反応ガス(窒化ガス)を供給する。反応ガス(窒化ガス)は、プラズマボックス19内でプラズマ化されて第1チャンバ11内に供給され、Si含有層を窒化させる。
【0042】
反応ガスとしては、本実施形態の反応ガスはNH3ガスであるが、本開示の技術はこれに限定されない。反応ガスとして、NH3ガスとともに水素(H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、又はこれらのガスのいずれかを含むガスを用いることができる。また、これらのガスに更にドープガスとしてボロン(B)ガス、酸素(O2)ガス等を添加してもよい。
【0043】
反応ガスとしては、例えばNH3ガスの他に、有機ヒドラジン化合物ガス、アミン系ガス、NOガス、N2Oガス、NO2ガス、又はこれらのガスのいずれかを含むガスを用いてもよい。有機ヒドラジン化合物ガスとしては、例えば、ヒドラジン(N2H4)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、またはモノメチルヒドラジン(MMH)ガスなどが用いられる。アミン系ガスとしては、例えば、モノメチルアミンガスなどが用いられる。
【0044】
(2)凹部にSiO
2膜を埋め込む場合
原料ガス供給源44aは、
図2の第1チャンバ11内のガスノズル41Aに接続され、後述する複数のガス孔42A(
図6参照)から第1チャンバ11内に原料ガスを供給する。原料ガスは、所定の元素を含有する膜の成膜において、所定の元素を含む。所定の元素がシリコンの場合には、原料ガスはシリコンを含むSi原料ガスである。
【0045】
第1チャンバ11に供給するSi原料ガスとしては、本実施形態のSi原料ガスはジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)ガスであるが(
図2の第1チャンバ11参照)、本開示の技術はこれに限定されない。Si原料ガスとして、アミノシラン系ガス、クロロシラン系ガス、シラノールガスを使用できる。アミノシラン系ガスとしては、DIPASガスの他にジメチルアミノシラン(DMAS)ガス、ビスジメチルアミノシラン(BDMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(BTBAS)ガス、ジエチルアミノシラン(DEAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(BDEAS)ガス及びDPAS(ジプロピルアミノシラン)ガス、又はこれらのガスのいずれかを含むガスを用いることができる。
【0046】
クロロシラン系ガスとしては、ヘキサクロロジシラン(HCDS:Si2Cl6)ガス、モノクロロシラン(MCS:SiH3Cl)ガス、トリクロロシラン(TCS:SiHCl3)ガス、シリコンテトラクロライド(STC:SiCl4)ガス、又はこれらのガスのいずれかを含むガスを用いることができる。シラノール系ガスとしては、トリス(tert-ペントキシ)シラノールガス、トリエチルシラノールガス、メチルビス(tert-ペントキシ)シラノールガス、トリス(tert-ブトキシ)シラノールガスを用いることができる。これらのガスを基板Wに供給することにより、Si含有層を基板Wに形成できる。
【0047】
反応ガス供給源45aは
図2の第1チャンバ11内のガスノズル41Eに接続され、後述する複数のガス孔42Eからプラズマボックス19内に反応ガス(酸化ガス)を供給する。反応ガス(酸化ガス)は、プラズマボックス19内でプラズマ化されて第1チャンバ11内に供給され、Si含有層を酸化させる。
【0048】
反応ガスとしては、本実施形態の反応ガスはO
2ガスであるが、本開示の技術はこれに限定されない。アミノシラン系ガス(DIPAS、3DMAS、BTBAS、BDEASガス等)と反応させる反応ガスとして、H
2Oガス、O
2ガス及び/又はオゾン(O
3)ガスを使用してもよい。クロロシラン系ガス(HCDSガス等)と反応させる反応ガスとして、H
2Oガス及びピリジン(C
5H
5N)を供給してもよい。シラノール系ガス(トリス(tert-ペントキシ)シラノールガス等)と反応させる反応ガスとして、H
2Oガス、O
2ガス及び/又はオゾン(O
3)ガスを使用してもよい。これらのガスに更にドープガスとしてボロン(B)含有ガス、酸素(O)含有ガス、窒素(N)含有ガス、炭素(C)含有ガス等を添加してもよい。更に触媒ガス供給源47aから触媒ガスとして、トリメチルアルミニウム(TMA)ガス、トリエチルボラン(TEB)ガス、ジボラン(B
2H
6)ガス等の触媒ガスを供給してもよい。原料ガスとしてシラノール系ガスを用いる場合、触媒ガスを使用することで、反応ガスを使用しなくてもSiO
2膜を形成することもできる。
図2に示す第1チャンバ11では、SiO
2膜の成膜時に触媒ガスであるB
2H
6ガスを供給してもよい。触媒ガス供給源47aは
図2の第1チャンバ11内のガスノズル41Bに接続され、後述する複数のガス孔42B(
図6参照)から第1チャンバ11内に触媒ガスを供給する。ただし、触媒ガスは供給しなくてもよい。
【0049】
[改質条件及び保護膜形成条件(ガス種):
図3 ステップS2及びS3]
次に、
図3のステップS2で行う改質時及びステップS3で行う保護膜形成時のプロセス条件(ガス種)について説明する。
図5に示す改質ガス供給源46は、
図1及び
図2の第2チャンバ21内のガスノズル41B及び41Cに接続され、後述する複数のガス孔42B及び42C(
図6参照)から第2チャンバ21内に改質ガスを供給する。これにより、SiN膜又はSiO
2膜を改質する。
【0050】
改質ガスとしては、本実施形態の改質ガスは、NH
3ガス及びHFガスであるが(
図1及び
図2の第2チャンバ21参照)、本開示の技術はこれに限定されない。改質ガスとして、NH
3ガス及びHFガスの他に、F
2ガス、NF
3ガスを用いてもよい。NF
3ガスを用いる場合、プラズマボックス19にてNF
3ガスをプラズマ化して、第2チャンバ21内に供給してもよい。
【0051】
保護膜形成時、原料ガス供給源44bは第2チャンバ21内にSi原料ガスを供給する。第2チャンバ21に供給するSi原料ガスとしては、本実施形態のSi原料ガスはジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)ガスであるが(
図1及び
図2の第2チャンバ21参照)、本開示の技術はこれに限定されない。Si原料ガスとしては、原料ガス供給源44aから供給するSi原料ガスと同じガスを供給できる。
【0052】
反応ガス供給源45bは、第2チャンバ21内に反応ガス(酸化ガス)を供給し、Si含有層を酸化させる。反応ガス(酸化ガス)としては、本実施形態の反応ガスはO2ガスであるが、本開示の技術はこれに限定されない。反応ガスとしては反応ガス供給源45aから供給する酸化ガスと同じガスを供給できる。
【0053】
[エッチング条件及び成膜条件(ガス種):
図3 ステップS4及びS5]
次に、
図3のステップS4で行う保護膜除去時及びS5で行う成膜時のプロセス条件(ガス種)について説明する。
図5に示すエッチングガス供給源48は、
図1及び
図2の第1チャンバ11内のガスノズル41C、
図1及び
図2の第1チャンバ11内のガスノズル41Bに接続され、後述する複数のガス孔42B、42C(
図6参照)から第1チャンバ11内にエッチングガスを供給する。これにより、保護膜をエッチングする。
【0054】
保護膜をエッチングするガスは、ハロゲン含有ガスである。エッチングガスとしては、本実施形態のエッチングガスはF
2ガス及びHFガス(
図1、
図2の第1チャンバ11参照)であるが、本開示の技術はこれに限定されない。エッチングガスとしては、F
2ガス、HFガス、ClF
3ガス、NF
3ガス及びこれらの組み合わせ等のフッ素含有ガスを用いてもよい。
【0055】
エッチング条件としては、保護膜としてのSiO2膜が削れやすく、埋込対象のSiN膜、またはSiO2膜が削れにくい条件が良いが、これに限られるものではない。例えば、第2チャンバ21で形成された保護膜としてのSiO2膜は、低温で成膜されたものであり、低膜質のため、埋込対象のSiN膜、またはSiO2膜よりも削れやすい。
【0056】
保護膜をエッチングするとき、AFSの改質層が熱昇華される。このようにして保護膜と、エッチングの中間体であるAFS(改質層)とが除去される。保護膜及び改質層の除去後、
図3のステップS1で成膜されたSiN膜又はSiO2膜の第2膜が成膜される。成膜条件は、
図3のステップS1において説明した条件と同じであってよいし、異なっていてもよい。
【0057】
なお、第1チャンバ11ではSiN成膜時にプラズマボックス19においてNH3ガスのプラズマを生成する例を説明した。また、第2チャンバ21では保護膜のSiO2成膜時にプラズマボックス19においてO2ガスのプラズマを生成する例を説明した。ただし、プラズマボックス19はなくてもよい。Si含有膜の窒化を熱処理で行ったり、アンモニアに替えてヒドラジン系のガスを使用して熱エネルギ-だけでSi含有膜を窒化させたりする場合や、SiO2膜の形成にO3ガスを使用する場合には、基板処理装置10にプラズマボックス19はなくてもよい。
【0058】
更に、図示しないパージガス供給源が設けられてもよい。第1チャンバ11及び第2チャンバの内部にパージガスを供給することにより、第1チャンバ11及び第2チャンバの内部に残留するガスを除去する。パージガスとしては、例えば不活性ガスが用いられる。不活性ガスとしては、Arガス等の希ガス、またはN2ガスが用いられる。
【0059】
なお、
図1の第1チャンバ11に供給されるF
2ガス及びHFガス、
図2の第1チャンバ11に供給されるF
2ガス及びHFガス、
図1及び
図2の第2チャンバ21に供給されるHFガスは、各チャンバをクリーニングするクリーニングガスとしても使用できる。
【0060】
[プロセス条件(温度):
図3 ステップS1~S5]
次に、
図3のステップS1~S5のプロセス条件(温度)について説明する。本開示の埋込方法STでは、第1チャンバ11にて行う成膜(ステップS1及びS5)及びエッチング(ステップS4)と比較して、第2チャンバ21にて行う改質および保護膜形成(ステップS2及びS3)は低い温度帯で行われる。以下では、埋込対象にSiN膜を例に挙げて説明するが、SiO
2膜やその他の膜であっても同じ温度制御が行われる。
【0061】
ステップS1において第1チャンバ11内を100℃以上(好ましくは、250~700℃)の温度に制御し、基板Wを100℃以上に加熱してSiN膜を成膜する。ステップS2において、第2チャンバ21内を100℃未満の温度に制御し、HFガス及びNH3ガスをSiN膜の表面に供給し、AFS(改質層)を形成する。このとき、SiN膜の一部は改質され、改質層に取り込まれる。
【0062】
ステップS3において、第2チャンバ21内を100℃未満の温度に制御した状態で、SiO2膜の保護膜が形成される。例えば、DIPASのSi原料ガスと、O2プラズマ中のO2ラジカルによりSiO2膜を成膜する場合、室温で反応させることが可能である。
【0063】
改質後のSiO2膜の保護膜形成では同じ温度帯を使用するが、AFSが昇華しなければ同一温度でなくてもよい。よって、第2チャンバ21内の温度は、AFSが昇華しない25℃~100℃未満の温度帯(例えば70℃)を使用する。係る温度帯での成膜を可能とするために、必要に応じて触媒ガスを添加し、第2チャンバ21内を100℃未満に制御した状態でSiO2膜を成膜できるようにする。
【0064】
ステップS4では、第1チャンバ11内を100℃以上(好ましくは、250~700℃)の温度に制御し、基板Wを100℃以上に加熱する。そうすると、エッチングガスによりSiO2膜の保護膜をエッチングすると同時にAFSの改質層が揮発され、除去される。ステップS4の後、ステップS5において、引き続き第1チャンバ11内を100℃以上の温度に制御し、基板Wを100℃以上に加熱してSiN膜を成膜する。
【0065】
第1チャンバ11の温度は250~700℃の温度帯(例えば550℃)に維持されている。よって、AFSの改質層を保護膜でコーティングしていないと、第1チャンバ11へ基板Wを移載した時点でAFSの熱昇華が生じてしまい、その気化したAFSは第1チャンバ11のみならず移載用モジュール内に拡散し、汚染の原因となる。
【0066】
また、第2チャンバ21内でAFSの改質層を昇華させるためには、第2チャンバ21内の温度を、AFSの昇華温度まで上昇させる必要がある。かかる時間のロスをなくすために、本開示の埋込方法STでは、AFSの昇華は第1チャンバ11で行う。
【0067】
つまり、本開示の埋込方法STでは、100℃未満に温度制御された第2チャンバ21においてAFSの改質層を形成後に、同チャンバ内で100℃未満の低温成膜においてAFSの改質層をSiO2膜の保護膜でキャップした状態で第1チャンバ11に移載する。これにより、第1チャンバ11への基板W搬送時に熱を与えられてもAFSの改質層の昇華を防止できる。
【0068】
第1チャンバ11に移載後、次のSiN膜の成膜の前にAFSの改質層をキャップしたSiO2膜の保護膜を除去する。このSiO2膜はSiN膜の成膜の温度帯近傍の処理温度において除去される。SiO2膜の保護膜が除去されると同時に、AFSの改質層が熱によって昇華される。
【0069】
これにより、成膜とエッチングとを別チャンバで行う際に、1度目と2度目の成膜において、その界面に酸化膜や汚染を生じさせることなくSiN膜の積層が可能となる。また、同一チャンバ内で連続的に埋込方法を実行する場合、各ステップにて広範に及ぶ処理温度の昇降温が必要になる。これに対して、本開示の埋込方法STでは、別チャンバを用いて埋込方法の各処理を行うため、温度制御に時間を要さず、短時間で良質な膜特性の成膜が可能になる。
【0070】
図3に示すように、基板処理装置10は、基板処理装置10を制御する制御装置90を有する。制御装置90は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリ92とを有する。メモリ92には、基板処理装置10において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御装置90は、メモリ92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、基板処理装置10の動作を制御する。また、制御装置90は、入力インターフェース93と、出力インターフェース94とを有する。制御装置90は、入力インターフェース93で外部からの信号を受信し、出力インターフェース94で外部に信号を送信する。
【0071】
かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な媒体に記憶されていたものであって、その媒体から制御装置90のメモリ92にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。なお、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、制御装置90のメモリ92にインストールされてもよい。
【0072】
(膜種)
凹部へ埋め込む膜種は、SiN膜及びSiO2膜に限らず、所定の元素を含有する膜であってよい。所定の元素は、Si、ゲルマニウム(Ge)又は金属のいずれかである。所定の元素がSiの場合、所定の元素を含有する膜は、シリコン膜、シリコン含有酸化膜及びシリコン含有窒化膜であり得る。例えばSi膜、SiN膜、SiON膜、SiCN膜、SiOCN膜、SiBN膜、SiBCN膜、SiFN膜であってよい。
【0073】
所定の元素が金属の場合、金属は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)又はタングステン(W)のいずれかである。この場合、所定の元素を含有する膜は、Ti、Al又はWの金属膜、又はかかる金属の酸化膜及び窒化膜であり得る。
【0074】
保護膜はSiO2膜に限らない。保護膜は、所定の元素を含む膜の酸化膜であってよい。
【0075】
[基板処理装置]
次に、
図6及び
図7を参照し、実施形態に係る埋込方法STを実行可能な基板処理装置10について説明する。
図6は実施形態に係る基板処理装置10の一例を示す図であり、
図7は
図6におけるA-A線矢視断面図である。
【0076】
基板処理装置10が基板処理装置10aの場合、基板処理装置10aは、第1チャンバ11、ガス供給装置40、排気装置50、加熱装置60及び制御装置90を有する。基板処理装置10aのガス供給装置40は、4本のガスノズル41A~41C、41Eを有する。ガスノズル41A~41C、41Eは複数のガス孔42A~42C、42Eを有する。
【0077】
基板処理装置10が基板処理装置10bの場合、基板処理装置10bは、第2チャンバ21、ガス供給装置40、排気装置50、加熱装置60及び制御装置90を有する。基板処理装置10bのガス供給装置40は、5本のガスノズル41A~41Eを有する。ガスノズル41A~41Eは複数のガス孔42A~42Eを有する。
【0078】
図7は、4本のガスノズル41A~41C、41Eを有する基板処理装置10aの構成を示す。他の構成については基板処理装置10aと基板処理装置10bとでは同一であるため、以下では、基板処理装置10として基板処理装置10aの構成について説明する。
【0079】
第1チャンバ11内の上端近傍には、天井板12が設けられ、天井板12の下側の領域は、封止されている。第1チャンバ11及び天井板12は、例えば石英により形成され、基板保持具30を収容する。第1チャンバ11の下端の開口には、円筒形状に成形された金属製のマニホールド14がOリング等のシール部材16を介して連結されている。マニホールド14は、第1チャンバ11の下端を支持し、基板保持具30はマニホールド14の下方から第1チャンバ11内に挿入される。
【0080】
基板保持具30は、半導体ウエハを一例とする複数(例えば25~150枚)の基板Wを棚状に保持する。基板保持具30は、例えば石英により形成されている。基板保持具30は、3本の支柱により複数の基板Wを支持する。基板保持具30は、石英により形成された保温筒28を介してテーブル27上に載置されている。保温筒28は、第1チャンバ11の下方側からの放熱による第1チャンバ11内の温度低下を抑制する。テーブル27は、回転軸24上に支持される。回転軸24は、マニホールド14の下端の開口を開閉する金属(例えばステンレス鋼)製の蓋体20を貫通する。
【0081】
回転軸24の貫通部には、磁性流体シール23が設けられている。磁性流体シール23は、回転軸24を気密に封止すると共に、回転軸24を回転可能に支持する。蓋体20の周辺部とマニホールド14の下端との間には、第1チャンバ11内の気密性を保持するためのOリング等のシール部材15が設けられている。回転軸24は、例えばボートエレベータ等の昇降機構25に支持されたアーム26の先端に取り付けられている。アーム26が昇降することにより、基板保持具30と蓋体20とが一体となって昇降して第1チャンバ11内に対して挿脱される。
【0082】
プラズマボックス19は、第1チャンバ11の側壁の一部に設けられている。
図7の例では、ガスノズル41A~41Cは、第1チャンバ11内に配置され、ガスノズル41Eは、プラズマボックス19内に配置されている。
【0083】
ガスノズル41A~41C、41Eは、例えば石英により形成されている。ガスノズル41A~41Cは、マニホールド14の側壁を内側へ貫通して上方へ屈曲されて垂直に延びる。ガスノズル41A~41Cの基端は第1チャンバ11の外部に位置し、
図5に示す各ガス供給源のいずれかに接続されている。ガスノズル41A~41Cの垂直部分は、第1チャンバ11内に位置する。ガスノズル41A~41Cの垂直部分には、基板保持具30の基板支持範囲に対応する上下方向の長さに亘って複数のガス孔42A~42Cが所定の間隔をあけて形成されている。ガスノズル41A~41Cは、ガス供給源からガス配管を介して
図1又は
図2に一例を示す原料ガス等を、複数のガス孔42A~42Cから第1チャンバ11内に水平方向に吐出する。
【0084】
ガスノズル41Eは、マニホールド14の側壁を内側へ貫通して上方へ屈曲されて垂直に延びる。ガスノズル41Eの基端は第1チャンバ11の外部に位置し、ガス供給源に接続されている。ガスノズル41Eの垂直部分は、プラズマボックス19内に位置する。ガスノズル41Eの垂直部分には、基板保持具30の基板支持範囲に対応する上下方向の長さに亘って複数のガス孔42Eが所定の間隔をあけて形成されている。ガスノズル41Eは、ガス供給源からガス配管を介して導入される
図1又は
図2に一例を示すガスを、複数のガス孔42Eからプラズマボックス19内に水平方向に吐出する。
【0085】
第1チャンバ11の周方向の一部には開口部17が形成される。その開口部17を囲むように、プラズマボックス19が第1チャンバ11の側面に形成される。
図7に示すように、プラズマボックス19を挟むように一対の電極81、82が配置される。電極81、82は、プラズマボックス19の外側に対面して設置した一対の並行電極である。電極81、82は、RF電源55に接続され、RF電源55から高周波電圧を印加される。
【0086】
図6に戻り、排気装置50は真空ポンプを含み、第1チャンバ11の内部を排気する。第1チャンバ11には排気口18が形成され、第1チャンバ11内のガスは、排気口18を通った後、排気管43から排気される。
【0087】
加熱装置60は、第1チャンバ11の外部に配置され、第1チャンバ11の内部を加熱する。例えば、加熱装置60は、第1チャンバ11を取り囲むように円筒形状に形成される。加熱装置60は、例えば電気ヒータで構成される。加熱装置60は、第1チャンバ11の内部を加熱することにより、第1チャンバ11内に供給されるガスの処理能力を向上させる。
【0088】
[SiN膜の成膜方法]
基板処理装置10により実施されるSiN膜の成膜方法の一例について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
図8は、実施形態に係るSiN膜の成膜方法の一例を示すフローチャートである。
図9は、実施形態に係るSiN膜の成膜方法の一例を示すタイムチャートである。以下、Si原料ガスとしてDCSガス、反応ガスとしてNH
3ガス、パージガスとしてArガスを用いたALD法によりSiN膜を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0089】
まず、第1チャンバ11内を100℃以上の温度に調整し、複数の基板Wを搭載した基板保持具30を第1チャンバ11内に搬入する。続いて、排気装置50により第1チャンバ11内を排気しながら、第1チャンバ11内を所定の圧力に調整する。
【0090】
図8のステップS21では、
図9に示す時刻t1から時刻t2まで第1チャンバ11内にDCSガスを供給する。これにより、基板Wの表面にシリコン含有ガスが吸着し、Si含有層を形成する。
【0091】
次に、ステップS22では、排気装置50により第1チャンバ11内を排気しながら、第1チャンバ11内をArガスに置換する。
図9に示すようにパージガスは時刻t1以前から供給され続けている。これにより、第1チャンバ11内に残るシリコン含有ガスが排出され、第1チャンバ11内の雰囲気がArガスに置換される。
【0092】
次に、ステップS23では、
図9に示す時刻t3から時刻t4までプラズマボックス19にNH
3ガスを供給すると共に、
図9に示す時刻t3から時刻t4までRF電源55から電極81、82に高周波電圧が印加される。これにより、プラズマボックス19においてNH
3ガスのプラズマが生成され、プラズマ中のラジカル等の反応種が第1チャンバ11内に供給される。
【0093】
次に、ステップS24では、排気装置50により第1チャンバ11内を排気しながら、第1チャンバ11内をArガスに置換する。これにより、第1チャンバ11内に残るNH3ガスが排出され、第1チャンバ11内の雰囲気がArガスに置換される。
【0094】
次に、ステップS25において設定回数繰り返したと判定されるまで、ステップS21~S24を繰り返し、所定の膜厚のSiN膜を成膜する。続いて、SiN膜が成膜された複数の基板Wを搭載した基板保持具30を第1チャンバ11内から搬出し、処理を終了する。
【0095】
上記の実施形態では、プラズマALD法によりシSiN膜を形成する場合を説明したがこれに限定されない。例えば、窒化を熱処理で行ってもよい。例えば、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によりSiN膜を形成してもよい。例えば、SiN膜に代えてSiO2膜、金属窒化膜、金属酸化膜等を形成してもよい。
【0096】
[SiO
2膜の成膜方法]
基板処理装置10により実施されるSiO
2膜の成膜方法の一例について、
図10及び
図11を参照しながら説明する。
図10は、実施形態に係るSiO
2膜の成膜方法の一例を示すフローチャートである。
図11は、実施形態に係るSiO
2膜の成膜方法の一例を示すタイムチャートである。ここでいうSiO
2膜は第1チャンバ11で行われる成膜により凹部へ埋め込まれる膜であってもよいし、第2チャンバ21で行われる保護膜としてのSiO
2膜であってもよい。以下では、Si原料ガスとしてDIPASガス、反応ガスとしてO
2ガス、パージガスとしてArガスを用いたALD法によりSiO
2膜を形成する。
【0097】
凹部へ埋め込まれるSiO2膜を形成する場合、第1チャンバ11内を100℃以上の温度に調整し、複数の基板Wを搭載した基板保持具30を第1チャンバ11内に搬入する。続いて、排気装置50により第1チャンバ11内を排気しながら、第1チャンバ11内を所定の圧力に調整する。
【0098】
一方、保護膜としてのSiO2膜を形成する場合、第2チャンバ21内を100℃未満の温度に調整し、複数の基板Wを搭載した基板保持具30を第2チャンバ21内に搬入する。続いて、排気装置50により第2チャンバ21内を排気しながら、第2チャンバ21内を所定の圧力に調整する。
【0099】
図10のステップS31では、
図11に示す時刻t11から時刻t12まで第1チャンバ11内にDIPASガスを供給する。これにより、基板Wの表面にシリコン含有ガスが吸着し、Si含有層を形成する。
【0100】
次に、ステップS32では、排気装置50によりチャンバ内を排気しながら、チャンバ内をArガスに置換する。
図11に示すようにパージガスは時刻t11以前から供給され続けている。これにより、チャンバ内に残るシリコン含有ガスが排出され、チャンバ内の雰囲気がArガスに置換される。
【0101】
次に、ステップS33では、
図11に示す時刻t13から時刻t14までプラズマボックス19にO
2ガスを供給すると共に、
図11に示す時刻t13から時刻t14までRF電源55から電極81、82に高周波電圧が印加される。これにより、プラズマボックス19においてO
2ガスのプラズマが生成され、プラズマ中のラジカル等の反応種がチャンバ内に供給される。
【0102】
次に、ステップS34では、排気装置50によりチャンバ内を排気しながら、チャンバ内をArガスに置換する。これにより、チャンバ内に残るO2ガスが排出され、第1チャンバ11内の雰囲気がArガスに置換される。
【0103】
次に、ステップS35において設定回数繰り返したと判定されるまで、ステップS31~S34を所定の回数だけ繰り返し、所定の膜厚のSiO2膜を成膜する。続いて、SiO2膜が成膜された複数の基板Wを搭載した基板保持具30をチャンバ内から搬出し、処理を終了する。
【0104】
以上に説明したように、本実施形態の埋込方法及び基板処理システムによれば、チャンバ間を移動する基板に形成された凹部内の膜を酸化や汚染から保護し、膜特性を高めることができる。
【0105】
今回開示された実施形態に係る埋込方法及び基板処理システムは、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0106】
10 基板処理装置
11 第1チャンバ
21 第2チャンバ
40 ガス供給部
50 排気部
60 加熱部
90 制御装置
102 SiN膜
103 改質層
104 保護膜
41A~41E ガスノズル