(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146765
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】生育状況評価システム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20231004BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A01K29/00 D
G01B11/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054131
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 裕
(72)【発明者】
【氏名】矢羽田 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト エリアス ペトリリ バルセロ
(72)【発明者】
【氏名】阿出川 俊和
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065CC16
2F065PP22
(57)【要約】
【課題】動物の育成状況の評価を自動化しつつ適切に得ることのできる生育状況評価システムを提供する。
【解決手段】生育状況評価システム10は、出射したレーザ光の動物(乳牛51)からの反射光を受光することで動物(乳牛51)の外形を三次元座標で示す点群データD1を取得するレーザ測定器13と、7つの制御点Cを有する単一の6次のベジェ曲線を、点群データD1に適合させて近似曲線Acを算出する近似曲線算出部74と、近似曲線Acに基づいて、動物(乳牛51)の評価を示す評価値Evを算出する評価値算出部75と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射したレーザ光の動物からの反射光を受光することで前記動物の外形を三次元座標で示す点群データを取得するレーザ測定器と、
7つの制御点を有する単一の6次のベジェ曲線を、前記点群データに適合させて近似曲線を算出する近似曲線算出部と、
前記近似曲線に基づいて、前記動物の評価を示す評価値を算出する評価値算出部と、を備えることを特徴とする生育状況評価システム。
【請求項2】
前記レーザ測定器が取得した前記点群データを所定のスライス位置に沿って切断した断面となる断面データを生成する切断面抽出部と、
前記断面データにおいて、切断面方向における中心位置から両側に位置する点群の数を比較して点群の数が多い側を選択し、選択した側のデータを反対側に複写して算出用データを生成する算出用データ生成部と、を備え、
前記近似曲線算出部は、前記点群データに基づく前記算出用データに適合させて前記近似曲線を算出することを特徴とする請求項1に記載の生育状況評価システム。
【請求項3】
前記評価値算出部は、前記近似曲線における前記制御点の位置関係を用いて前記評価値を算出することを特徴とする請求項2に記載の生育状況評価システム。
【請求項4】
前記評価値算出部は、前記近似曲線における前記制御点の間隔の比を用いて前記評価値を算出することを特徴とする請求項3に記載の生育状況評価システム。
【請求項5】
7つの前記制御点を、一方の端部から順に、第1制御点、第2制御点、第3制御点、第4制御点、第5制御点、第6制御点、第7制御点とし、
前記第2制御点と前記第3制御点との間隔を第1間隔とし、前記第3制御点と前記第4制御点との間隔を第2間隔とし、前記第2制御点と前記第4制御点との間隔を第3間隔とし、前記第6制御点と前記第5制御点との間隔を第4間隔とし、前記第5制御点と前記第4制御点との間隔を第5間隔とし、前記第6制御点と前記第4制御点との間隔を第6間隔とし、
前記評価値算出部は、前記第3間隔を前記第1間隔と前記第2間隔とを加算した値で除算して前記評価値を算出する、または前記第6間隔を前記第4間隔と前記第5間隔とを加算した値で除算して前記評価値を算出することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の生育状況評価システム。
【請求項6】
前記切断面抽出部は、前記レーザ測定器が取得した前記点群データを互いに異なる複数の前記スライス位置に沿って切断した断面となる複数の前記断面データを生成し、
前記算出用データ生成部は、複数の前記断面データに対して、それぞれ前記算出用データを生成し、
前記近似曲線算出部は、複数の前記算出用データに対して、それぞれ前記近似曲線を算出し、
前記評価値算出部は、それぞれの前記近似曲線における前記評価値の平均値を算出することを特徴とする請求項5に記載の生育状況評価システム。
【請求項7】
前記評価値算出部は、異なる複数の前記スライス位置毎に複数の前記動物に対する前記近似曲線における前記評価値を算出し、異なる複数の前記スライス位置毎に複数の前記評価値の最大値で規格化し、前記動物毎に異なる複数の前記スライス位置のそれぞれの規格化した前記評価値の平均値を算出することを特徴とする請求項6に記載の生育状況評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生育状況評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、牛や豚等の動物の生育状況の判断のために、BCS(ボディーコンディションスコア)等を用いることが知られている。
【0003】
そのBCSは、動物に触れることなく自動で求めることのできる健康状態推定装置が考えられている(例えば、特許文献1参照)。その健康状態推定装置は、距離画像センサを用いることで動物の三次元形状を示す三次元座標群を取得し、その三次元座標群に基づいて動物の体躯の幅を示す特徴値や、動物の背骨の位置を示す特徴値を求めて、それらに基づいてBCSを算出する。このため、従来の健康状態推定装置は、動物への負担を軽減しつつ、バラツキの抑制されたBCSによる評価を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の健康状態推定装置では、動物の三次元座標群を適宜繋ぎ合わせることにより、動物の三次元形状を再現しており、その三次元形状に基づいて、ルーメンの凹み具合を示す特徴量から育成状況の評価を得ている。
【0006】
ここで、牛や豚等の動物は、同じ種類の動物であっても、骨格や肉付き等によって個体毎に三次元形状が異なる。すると、従来の健康状態推定装置では、様々な三次元形状に対してルーメンの凹み具合を示す特徴量を求める必要があるので、ルーメンの位置や範囲の特定やその凹み具合の特徴量の求め方等が多岐に亘ってしまい、多頭数の評価を自動化することが困難である。
【0007】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、動物の育成状況の評価を自動化しつつ適切に得ることのできる生育状況評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本開示の生育状況評価システムは、出射したレーザ光の動物からの反射光を受光することで前記動物の外形を三次元座標で示す点群データを取得するレーザ測定器と、7つの制御点を有する単一の6次のベジェ曲線を、前記点群データに適合させて近似曲線を算出する近似曲線算出部と、前記近似曲線に基づいて、前記動物の評価を示す評価値を算出する評価値算出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の生育状況評価システムによれば、動物の育成状況の評価を自動化しつつ適切に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る生育状況評価システムの一例としての実施例1の生育状況評価システムの全体構成を示す説明図である。
【
図2】生育状況評価システムにおける制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】生育状況評価システムにおける撮像装置が取り付けられている様子を示す説明図である。
【
図4】撮像装置により乳牛が撮像された画像を示す説明図である。
【
図5】生育状況評価システムにおけるレーザ測定器を示す説明図である。
【
図6】レーザ測定器における制御系の構成を示すブロック図である。
【
図7】一方のレーザ測定器(第1)により取得された点群データを示す説明図である。
【
図8】他方のレーザ測定器(第2)により取得された点群データを示す説明図である。
【
図9】両点群データを合成した合成点群データを示す説明図である。
【
図12】動物点群データの他の例を示す説明図である。
【
図13】
図12の動物点群データに対応した特定部位データを示す説明図である。
【
図14】特定部位データにおける背骨方向を基準軸方向に一致させる様子を示す説明図である。
【
図15】特定部位データにおける基準箇所(一対のhook bone)を検出する様子を示す説明図である。
【
図16】
図15の特定部位データに対応した特定部位整列データを示す説明図である。
【
図17】大きさの異なる特定部位整列データを示す説明図であり、左側の(a)が基準軸方向で尻尾側から見た様子を示し、右側の(b)が鉛直方向で上側から見た様子を示す。
【
図18】正規化データ上に4つのスライス位置を設定した様子を示す説明図である。
【
図19】断面データを示す説明図であり、
図18の各スライス位置に対応するものを左から順に並べて示している。
【
図20】断面データから生成した間引き断面データと算出用データとを示す説明図であり、
図19の左から2番目の断面データに対応させている。
【
図21】断面データから生成した間引き断面データと算出用データとを示す説明図であり、
図19の右端の断面データに対応させている。
【
図22】算出用データを示す説明図であり、
図19の断面データに対応させて左から順に並べて示している。
【
図23】算出用データの近似曲線を求める様子を示す説明図である。
【
図24】様々な形状の算出用データと近似曲線との関係を示す説明図である。
【
図25】生育状況評価システムの制御機構で実行される育成状況評価処理(育成状況評価処理方法)を示すフローチャートである。
【
図26】理論断面と、生育状況評価システムで求めた各値と、の関係を纏めて示す表である。
【
図27】
図18に示す1つめのスライス位置におけるBCSの数値別の近似曲線を示す説明図である。
【
図28】
図18に示す2つめのスライス位置におけるBCSの数値別の近似曲線を示す説明図である。
【
図29】
図18に示す3つめのスライス位置におけるBCSの数値別の近似曲線を示す説明図である。
【
図30】
図18に示す4つめのスライス位置におけるBCSの数値別の近似曲線を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る生育状況評価システムの一実施形態としての生育状況評価システム10の実施例1について
図1から
図30を参照しつつ説明する。なお、
図1、
図3では、牛舎50における水飲み場52(データ取得領域14)の周辺を模式的に示しており、必ずしも実際の牛舎50の様子と一致するものではない。
【実施例0012】
本開示に係る生育状況評価システム10は、動物の育成状況を自動で評価するものである。実施例1の生育状況評価システム10は、動物の一例としてホルスタイン種の牛(以下では乳牛51とする)の育成状況を評価する。この生育状況評価システム10は、
図1から
図3に示すように、牛舎50に設けられており、制御機構11とカメラ12と2つのレーザ測定器13とを備える。
【0013】
牛舎50は、複数の乳牛51が飼われており、各乳牛51の移動が可能とされている。牛舎50では、乳牛51のための水飲み場52が設けられている。水飲み場52は、複数の乳牛51が入ることのできる空間(スペース)に水桶53が置かれて構成されている。水桶53は、長尺とされており、水飲み場52の片隅に配置されている。この水飲み場52では、乳牛51が自らの意思で定期的に訪れて、水桶53の前で立ち止まることとなる。このため、生育状況評価システム10では、水飲み場52をデータ取得領域14として設定している。
【0014】
制御機構11は、
図2に示すように、記憶部18または内蔵する内部メモリ11aに記憶したプログラムを例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、生育状況評価システム10の動作を統括的に制御する。実施例1では、内部メモリ11aは、RAM等で構成され、記憶部18は、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。生育状況評価システム10では、上記した構成の他に、測定完了信号や測定者からの指示に応じて測定結果を印字するプリンタや、測定結果を外部メモリやサーバーに出力する出力部や、動作の状況等を報知する音声出力部が適宜設けられる。
【0015】
制御機構11は、カメラ12と2つのレーザ測定器13(
図2では、一方を第1、他方を第2としている)とが接続されて適宜それらを制御するとともに、それらからの信号(データ)を受け取ることが可能とされている。この接続は、カメラ12および各レーザ測定器13との信号の遣り取りを可能とするものであれば、有線でもよく無線でもよい。この制御機構11は、牛舎50とは異なる位置に設けてもよく、牛舎50内に設けてもよい。制御機構11には、操作部15と表示部16と通信部17と記憶部18とが接続されている。
【0016】
その操作部15は、生育状況の評価のための各種の設定や、カメラ12や各レーザ測定器13の動作や設定等を操作するものである。操作部15は、例えばキーボード、マウス等の入力装置で構成されていてもよく、表示部16の表示画面をタッチパネル式としてそこに表示されたソフトウェアキー等で構成されてもよい。
【0017】
表示部16は、カメラ12で取得した画像I(静止画でもよく動画でもよい(
図4参照))、各レーザ測定器13で取得した点群データD1(
図7、
図8参照)、それらに基づく各種のデータ(
図9から
図22等参照)、動物(乳牛51)の評価を示す評価値Ev等を表示する。表示部16は、一例として液晶表示装置(LCDモニタ)で構成しており、操作部15とともに制御機構11に設けられている。なお、操作部15と表示部16とは、スマートフォンやタブレット等の携帯端末で構成してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0018】
通信部17は、カメラ12や各レーザ測定器13(その通信部45)や外部機器との通信を行うもので、カメラ12や各レーザ測定器13の駆動や、カメラ12からの画像Iや各レーザ測定器13からの点群データD1の受信を可能とする。なお、制御機構11は、タブレット端末で構成することができ、その場合には操作部15や表示部16を制御機構11と一体的な構成とすることができる。
【0019】
カメラ12は、データ取得領域14の全域を撮影可能とされており、実施例1では4Kカメラ(3840×2160画素の解像度を有する)を用いている。カメラ12は、
図1、
図3に示すように、データ取得領域14とされた水飲み場52の上方の設置板54に取り付けられており、乳牛51を邪魔することなく水飲み場52の撮影を可能としている。その設置板54は、カメラ12の設置のために牛舎50の支柱55に設けられている。カメラ12は、生育状況評価システム10が動作状態とされている間、水飲み場52を常時撮影しており、その撮影した画像I(そのデータ(
図4参照))を制御機構11に出力する。
【0020】
2つのレーザ測定器13は、既知点に設置されて測定点へ向けてパルスレーザ光線を投射し、その測定点からのパルスレーザ光線の反射光(パルス反射光)を受光して、パルス毎に測距を行い、測距結果を平均化して高精度の距離測定を行う。そして、各レーザ測定器13は、設定された測定範囲内を走査(スキャン)して測定範囲全体に亘って満遍なく測定点を設定することにより、測定範囲の全域に存在する物体の表面形状を三次元座標で示す三次元位置データの集まり(以下では、点群データD1とする)を取得できる。これにより、各レーザ測定器13は、設定された測定範囲内に存在するものの表面形状を示す点群データD1を取得できる。
【0021】
この2つのレーザ測定器13は、
図1に示すように、データ取得領域14とされた水飲み場52を挟んで対を為す位置であって、乳牛51の移動の邪魔となることのない高さ位置に配置されている。両レーザ測定器13は、水飲み場52(データ取得領域14)にいる乳牛51の姿勢に拘らず、その乳牛51の胴体51aの少なくとも半身(左右のいずれか一方)の点群データD1を取得可能とするように、水飲み場52に対する位置関係が設定されている。この2つのレーザ測定器13は、設けられている位置が異なることを除くと、互いに等しい構成とされている。なお、レーザ測定器13は、所定の周波数で変調された光ビームを用いる位相差測定方式を採用してもよく、他の方式を採用してもよく、実施例1に限定されない。このレーザ測定器13は、
図5、
図6に示すように、台座31と本体部32と鉛直回転部33とを備える。
【0022】
台座31は、設置台34に取り付けられる箇所である。その設置台34は、レーザ測定器13の設置のために牛舎50の支柱55に取り付けられる。本体部32は、台座31に対して鉛直軸心を中心に回転可能に当該台座31に設けられる。本体部32は、全体にU字形状とされており、その間の部分に鉛直回転部33が設けられている。この本体部32には、測定器表示部35と測定器操作部36とが設けられる。測定器表示部35は、後述する測定器制御部43の制御下で、測定のための各種の操作アイコンや設定等を表示する箇所である。この測定器操作部36は、レーザ測定器13における各種機能の利用や設定のための操作が為される箇所であり、入力操作された情報を測定器制御部43へと出力する。実施例1の本体部32では、測定器表示部35に表示された各種の操作アイコンが測定器操作部36として機能するものとされている。なお、測定器表示部35と測定器操作部36とは、その上記した機能を生育状況評価システム10における操作部15と表示部16とに持たせることで、支柱55の設置台34上に設けられた状態のままでの遠隔の操作が可能となる。なお、レーザ測定器13は、後述するようにデータ取得領域14(そこにいる乳牛51等の動物)の走査(スキャン)を可能とするものであれば、設ける場所や設置方法は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0023】
鉛直回転部33は、水平方向に伸びる回転軸を中心に回転可能に本体部32に設けられる。この鉛直回転部33には、測距光学部37が内蔵される。この測距光学部37は、測距光としてのパルスレーザ光線を投射するとともに測定点からの反射光(パルス反射光)を受光して測定点までの光波距離測定を行う。
【0024】
その鉛直回転部33を水平軸心回りに回転可能とする本体部32には、水平回転駆動部38と水平角検出部39とが設けられる。その水平回転駆動部38は、台座31に対して本体部32を鉛直軸心回りにすなわち水平方向に回転させる。水平角検出部39は、その本体部32の台座31に対する水平回転角を検出することで、視準方向の水平角を検出(測角)する。これらは、例えば、水平回転駆動部38をモータで構成することができ、水平角検出部39をエンコーダで構成することができる。
【0025】
また、本体部32には、鉛直回転駆動部41と鉛直角検出部42とが設けられる。その鉛直回転駆動部41は、本体部32に対して鉛直回転部33を水平軸心回りにすなわち鉛直方向に回転させる。鉛直角検出部42は、その鉛直回転部33の本体部32に対する鉛直角を検出することで、視準方向の鉛直角を検出(測角)する。これらは、例えば、鉛直回転駆動部41をモータで構成することができ、鉛直角検出部42をエンコーダで構成することができる。
【0026】
さらに、本体部32には、測定器制御部43が内蔵される。その測定器制御部43は、接続された記憶部44に格納されたプログラムにより、レーザ測定器13の動作を統括的に制御する。その記憶部44は、半導体メモリや各種の記憶媒体により構成され、測定に必要な計算プログラムや、送信する情報を生成して送信するデータ送信プログラム等のプログラムが格納されるとともに、設定データや点群データD1が適宜格納される。その情報やデータは、後述する通信部45と上記した通信部17(
図2参照)とを介して制御機構11に適宜送信される。その測定器制御部43には、測定器表示部35、測定器操作部36、測距光学部37、水平回転駆動部38、水平角検出部39、鉛直回転駆動部41、鉛直角検出部42、記憶部44および通信部45が接続される。
【0027】
通信部45は、通信部17を介してその制御機構11(
図2参照)と測定器制御部43との通信を可能とし、測定器制御部43の制御下において記憶部44に格納された各情報を適宜送信する。この通信部45は、制御機構11(通信部17)とデータ等の遣り取りを可能とする。通信部45は、敷設したLANケーブルを介して通信部17と有線通信するものとしてもよく、通信部17と無線通信するものとしてもよい。
【0028】
その測定器制御部43には、測距光学部37、水平角検出部39および鉛直角検出部42からの測定のための出力値が入力される。測定器制御部43は、それらの出力値に基づき、本体部32内に設けられた基準光路を伝搬してきた基準光と測距光学部37を介して取得した反射光との到達時間差または位相差から測定点(反射点)までの距離を算出する。また、測定器制御部43は、その算出した距離測定時の高低角、水平角の測定(算出)を行う。そして、測定器制御部43は、それらの測定結果を記憶部44に格納するとともに、通信部45を介して、制御機構11(通信部17)に適宜送信する。
【0029】
その測定器制御部43は、水平回転駆動部38および鉛直回転駆動部41の駆動を制御して本体部32および鉛直回転部33(
図1参照)を適宜回転させることにより、当該鉛直回転部33を所定の方向に向けることができ、所定の範囲を走査することができる。実施例1の測定器制御部43は、データ取得領域14である水飲み場52を走査するものとしており、そこにいる乳牛51を含む水飲み場52の各位置を測定点とする。両レーザ測定器13は、水飲み場52との位置関係が予め解っているとともに一定(変化することはない)なので、走査する範囲を水飲み場52の全域に適切に合わせることができる。実施例1の測定器制御部43は、水飲み場52を走査する際、その走査面上において12.5mmの間隔で測定点を設定する。その走査面は、水飲み場52内で適宜設定することができ、実施例1では乳牛51の胴体51aが位置することが想定される位置に設定している。
【0030】
測定器制御部43は、測距光学部37を制御して水飲み場52を走査しつつ設定した各測定点の測距(距離測定)を行う。このとき、測定器制御部43は、視準方向の高低角および水平角を測定(算出)することで、水飲み場52の各測定点の三次元座標位置を測定する。そして、測定器制御部43は、測定した水飲み場52の各測定点の三次元座標位置(座標データ)の集まりである点群データD1(一方の例を
図7に示し、他方の例を
図8に示す)を生成し、適宜通信部45、通信部17を介して制御機構11へと送信する。その点群データD1は、水飲み場52の表面形状を示すこととなり、水飲み場52に乳牛51が存在する場合にはその乳牛51の表面形状も含まれることとなる。
【0031】
制御機構11は、乳牛51の生育状況の評価のために、
図2に示すように、動物検出部61とデータ取得部62とデータ合成部63と動物抽出部64と特定部位切出部65と特定部位整列部66と基準箇所検出部67とデータ整列部68と正規化部69と切断面抽出部71と算出用データ生成部72と算出領域抽出部73と近似曲線算出部74と評価値算出部75とを備える。
【0032】
動物検出部61は、カメラ12が取得した画像Iから、データ取得領域14とされた水飲み場52に動物(実施例1では乳牛51(
図4参照))が存在することを検出する。動物検出部61は、画像Iにおいて、コントラスト等に基づいて各種の形状を認識し、その認識した形状等に基づいて水飲み場52における水桶53等の設備と乳牛51との判別を行う。ここで、動物検出部61は、カメラ12が所定の位置に配置されていることから、水飲み場52における水桶53等の設備の画像が予め解っているので、それを利用することで乳牛51の判別が容易となるとともに、乳牛51が映し出された領域を示すデータの取得も容易にできる。動物検出部61は、画像Iに乳牛51が映し出されている場合には、水飲み場52に乳牛51を検出した旨の信号をデータ取得部62に出力する。このため、動物検出部61は、カメラ12と協働して、データ取得領域14に動物がいることを検出する動物検出機構として機能する。
【0033】
加えて、実施例1の動物検出部61は、検出した動物(乳牛51)を個体別に識別し、その識別した情報を示す個体識別データD2を生成する。先ず、動物検出部61は、乳牛51が映し出された画像Iに基づいて、牛舎50で飼われている乳牛のうちのどの乳牛51が映し出されたものであるのかを特定する。例えば、動物検出部61は、画像Iの乳牛51が映し出された領域から、コントラスト等に基づいて乳牛51における白黒模様の形状や位置を認識し、その認識した白黒模様を予め登録してある各乳牛の白黒模様と比較することで、乳牛51を特定する。そして、動物検出部61は、その特定に従って、乳牛51を個体別に識別した個体識別データD2を生成し、その個体識別データD2をデータ取得部62に出力する。なお、動物検出部61は、画像Iに映し出された乳牛51、すなわちその時点で水飲み場52にいる乳牛51が、牛舎50で飼われている乳牛のうちのいずれであるのかを特定し、それに基づき乳牛51を個体別に識別した個体識別データD2を生成するものであれば、例えばタグを利用する等のように他の方法を用いてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0034】
データ取得部62は、動物検出部61から乳牛51を検出した信号を受け取ると、2つのレーザ測定器13をそれぞれ駆動させて水飲み場52(データ取得領域14)の走査を行わせる。各レーザ測定器13は、それぞれが水飲み場52の点群データD1(
図7、
図8参照)を取得し、その点群データD1に個体識別データD2を関連付けてデータ合成部63に出力する。ここで、上記のようにデータ取得部62が駆動される際には水飲み場52に乳牛51がいることから、点群データD1には個体識別データD2が示す乳牛51が含まれていることとなる。
【0035】
データ合成部63は、2つのレーザ測定器13が取得した点群データD1を合成して、合成点群データD3(
図9参照)を生成する。ここで、2つのレーザ測定器13は、上記のように水飲み場52を挟んで対を為す位置に設けられているので、同じ水飲み場52を互いに異なる方向から測定していることとなる。このため、それぞれの点群データD1を合成(所謂点群合成)することで、水飲み場52の異なる面(例えば、そこにいる乳牛51に対して、一方が右側面、他方が左側面等)の表面形状を含む三次元位置データの集まりとすることができる。データ合成部63は、点群が重なり合う(オーバーラップする)部分を繋げること(所謂点群マッチング)や、目印となるターゲットを使用すること(所謂タイポイント法)やその他の公知の技術を用いて、点群データD1を合成して合成点群データD3を生成する。ここで、生育状況評価システム10では、データ取得領域14として水飲み場52を設定しているとともに、その水飲み場52に対するレーザ測定器13の位置関係が予め解っている。このため、それぞれのレーザ測定器13が取得した2つの点群データD1における点群が重なり合う部分の判別が容易であるので、データ合成部63は、合成点群データD3を適切に生成できる。データ合成部63は、生成した合成点群データD3に個体識別データD2を関連付けて動物抽出部64に出力する。
【0036】
動物抽出部64は、データ合成部63が生成した合成点群データD3の中から、乳牛51に相当する三次元座標位置(座標データ)のみを抽出することで、乳牛51の表面形状を示す動物点群データD4(
図11、
図12参照)を生成する。ここで、生育状況評価システム10では、データ取得領域14として水飲み場52を設定しているとともに、その水飲み場52に対するレーザ測定器13の位置関係が予め解っているので、各レーザ測定器13が取得する水飲み場52の点群データも予め解っている。このため、動物抽出部64は、合成点群データD3と、乳牛51がいない状態の水飲み場52を示す点群データと、の差分を取ることで、仮動物点群データD4´(
図10参照)を生成する。この仮動物点群データD4´は、両レーザ測定器13が上記のように配置されているので、水飲み場52にいる乳牛51の姿勢に拘らず、その胴体51aの少なくとも半身が必ず含まれている。ところが、仮動物点群データD4´は、乳牛51以外の物、例えば、乳牛51が水桶53の水を飲んでいる最中である場合の水桶53やその中の水等の一部のように、乳牛51に極めて近接している物が含まれている場合がある。一例として
図10に仮動物点群データD4´では、乳牛51を示す点群Aと、水桶53の一部を示す点群Bと、を含んでいる。このため、動物抽出部64は、仮動物点群データD4´に対してクラスタリング処理を行って動物点群データD4を生成する。このクラスタリング処理は、傾向や位置や特徴等が似たもの同士をグループ化するもので、乳牛51と他の物とを別のクループとすることができ、
図10の例では乳牛51を示す点群Aと、水桶53の一部を示す点群Bと、の2つのグループを生成する。実施例1の動物抽出部64は、仮動物点群データD4´をクラスタリング処理により近い点群データの塊を複数のグループに分け、その中の最も大きな塊(
図10の例では点群A)を乳牛51であるとして抽出して動物点群データD4(
図11、
図12参照)を生成する。これにより、動物点群データD4は、胴体51aの少なくとも半身が必ず含まれるとともに、乳牛51以外の物を取り除かれている。動物抽出部64は、生成した動物点群データD4に個体識別データD2を関連付けて特定部位切出部65に出力する。
【0037】
なお、動物抽出部64は、動物点群データD4を生成するものであれば、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。例えば、動物抽出部64は、対象とする動物(乳牛51)以外のものを含む可能性が低い場合等には、上記のように生成した仮動物点群データD4´に対してクラスタリング処理を行うことなく、仮動物点群データD4´をそのまま動物点群データD4としてもよい。また、動物抽出部64は、様々な角度や大きさや種類の乳牛51を示す三次元座標位置(座標データ)を予め登録しておき、それらとの比較により動物点群データD4を抽出してもよい。さらに、動物抽出部64は、水飲み場52における床面や壁等の綺麗な平面を合成点群データD3から抽出し、その平面を基準として乳牛51がいそうな場所を閾値処理することにより、乳牛51がいる可能性の高い場所を抽出して仮動物点群データD4´や動物点群データD4を生成してもよい。
【0038】
特定部位切出部65は、乳牛51を示す動物点群データD4(
図12参照)から、頭部近傍51bと尻尾51cとを取り除いて特定部位データD5(
図13参照)を生成する。本開示では、乳牛51における胴体51a特にhook bone(
図13の符号Bh参照)の近傍が、その乳牛51の育成状況を評価する上で重要であると考えているので、動物点群データD4から頭部近傍51bと尻尾51cとを取り除いた特定部位データD5を生成する。実施例1の特定部位切出部65は、動物点群データD4における鉛直方向の上側から所定の数の点群(実施例1では一例として1万点)を抽出し、その抽出した点群における第1主成分を背骨51dが伸びる方向(以下では背骨方向Ds(
図14参照))とする。この第1主成分は、分散が最も大きくなる方向に軸をとったものであり、抽出した上側の点群が伸びる方向を示すこととなる。なお、特定部位切出部65は、例えば、様々な角度や大きさや種類の背骨51dを示す三次元座標位置(座標データ)を予め登録しておき、それらとの比較により背骨方向Dsを抽出してもよく、他の方法を用いても良い。そして、特定部位切出部65は、その背骨方向Dsの一方の端部において細くなっている箇所を頭部近傍51b(首を含む)と判断するとともに、長尺な方向の他方の端部の極めて細い長尺な箇所を尻尾51cと判断する。なお、特定部位切出部65は、動物点群データD4における頭部近傍51bや尻尾51cを判断するものであれば、例えば、予め登録してある形状や位置と比較することで頭部近傍51bや尻尾51cを判断してもよく、他の方法でもよく、実施例1の方法に限定されない。特定部位切出部65は、生成した特定部位データD5に個体識別データD2を関連付けて特定部位整列部66に出力する。
【0039】
特定部位整列部66は、特定部位切出部65が生成した特定部位データD5において、背骨方向Dsを基準軸方向Dbに一致させるように整列させる(
図14参照)。その基準軸方向Dbは、水平面に沿って伸びるものとしており、水平面に沿う方向において基準軸方向Dbに直交する方向を幅方向Dwとし、水平面に直交する方向を鉛直方向Dhとする。実施例1の特定部位整列部66は、背骨方向Dsを基準軸方向Dbに一致させるように、特定部位データD5を水平面上で移動させる(矢印A1参照)。なお、特定部位整列部66は、特定部位データD5における背骨方向Dsを基準軸方向Dbに一致させるように整列させるものであればよく、実施例1の構成に限定されない。特定部位整列部66は、背骨方向Dsを基準軸方向Dbに一致させた状態の特定部位データD5を基準箇所検出部67に出力する。
【0040】
基準箇所検出部67は、背骨方向Dsが基準軸方向Dbに一致された特定部位データD5における基準箇所Pr(
図15参照)を検出する。この基準箇所Prは、データ整列部68による整列の基準とするとともに、正規化部69による正規化の基準とするもので、個体差に拘らず検出が容易であるとともに共通した特徴を有する箇所に設定する。実施例1では、
図15に示すように、基準軸方向Db(背骨51d)を挟んで対を為す2つのhook bone(Bh)を結ぶ直線を基準箇所Prとする。基準箇所検出部67は、先ず、一対のhook boneの位置を検出する。実施例1の基準箇所検出部67は、様々な角度や大きさや種類の乳牛51におけるhook bone(Bh)の近傍を示す三次元座標位置(座標データ)を予め登録しておき、それらとの比較によりhook bone(Bh)の位置を抽出する。なお、基準箇所検出部67は、整列された特定部位データD5におけるhook bone(Bh)の位置を抽出するものであれば、他の方法を用いても良く、実施例1の構成に限定されない。その後、基準箇所検出部67は、検出した一対のhook bone(Bh)(その位置)を結んで基準箇所Pr(そのデータ)を生成する。そして、基準箇所検出部67は、背骨51dが伸びる方向が基準軸方向Dbに一致された特定部位データD5において検出した基準箇所Pr(そのデータ)をデータ整列部68に出力する。なお、基準箇所Prは、育成状況を評価する対象としての動物において、個体差に拘らず検出が容易であるとともに共通した特徴を有する箇所であれば、適宜設定すればよく実施例1の構成に限定されない。
【0041】
データ整列部68は、検出された基準箇所Prを基準として、基準軸方向Dbに対する特定部位データD5の位置を調整して特定部位整列データD6(
図16参照)を生成する。データ整列部68は、基準箇所Prが基準軸方向Dbに直交するように、水平面上での特定部位データD5の傾きを微調整させて特定部位整列データD6(
図16参照)を生成する。また、実施例1のデータ整列部68は、切り取った尻尾51c側の端部51eを基準軸方向Dbにおける原点に位置させることにより、特定部位データD5の向きを揃えることにより、特定部位整列データD6を生成する。このとき、データ整列部68は、基準軸方向Dbにおける基準箇所Prの位置が、基準軸方向Dbにおける特定部位データD5の最大値の半分の値を超えている場合、乳牛51の頭部近傍51b側が原点側に向けられていると判断して、特定部位データD5を180度回転させて尻尾51c側の端部51eを基準軸方向Dbにおける原点に位置させる。なお、データ整列部68は、切り取った頭部近傍51b側の端部を基準軸方向Dbにおける原点に位置させてもよく、実施例1の構成に限定されない。データ整列部68は、特定部位整列データD6を正規化部69に出力する。
【0042】
正規化部69は、上記した基準位置を基準として特定部位整列データD6を正規化することにより、正規化データD7(
図18参照)を生成する。これは、動物(乳牛51)は、骨格や肉付きが個々に異なるので、特定部位整列データD6では、
図17に示すように、上記のように整列されてはいても鉛直方向Dhでの位置が異なるとともに、その鉛直方向Dhの大きさが異なることとなる。実施例1の正規化部69は、正規化の基準として基準箇所Pr(両hook boneの位置)を用いており、各特定部位整列データD6における上記した基準箇所Prが均一の大きさとなるように、各特定部位整列データD6を拡大または縮小して調整することにより、各正規化データD7(
図18参照)を生成する。これは、本開示では、hook bone(Bh)を含む骨格の大きさではなく、肉付きにより各乳牛の生育状況を判断することによる。なお、正規化部69は、正規化の基準とする箇所を適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。正規化部69は、正規化データD7を切断面抽出部71に出力する。
【0043】
切断面抽出部71は、正規化データD7から、乳牛51(その胴体)を所定の平面に沿って切断した断面となる断面データD8(
図19参照)を生成する。実施例1の切断面抽出部71は、所定の平面を乳牛51の前後方向に直交するものとし、その前後方向における任意の位置に設定されたスライス位置Spに沿って正規化データD7を切断することにより、断面データD8を生成する。このスライス位置Spは、適宜設定すればよいが、実施例1では
図18に示す4箇所に設定しており、個別に示す際には頭側から順に末尾に1から4の数字を付している。そのスライス位置Sp1からSp3は、基準軸方向Dbに直交する面としている。また、スライス位置Sp4は、幅方向Dwに直交する面としている。
【0044】
スライス位置Sp1は、基準軸方向Dbにおいて、hook boneの位置(基準箇所Pr)と、尻尾51c側の端部51e(基準軸方向Dbにおける原点)と、の中間位置としている。スライス位置Sp2は、基準軸方向Dbにおける基準箇所Pr(hook bone)の位置としている。スライス位置Sp3は、基準軸方向Dbにおいて、端部51e(基準軸方向Dbの原点)からスライス位置Sp2までの間隔の1.5倍の位置としている。スライス位置Sp4は、幅方向Dwにおいて、一方のhook boneの位置と、基準軸方向Dbと、の中間位置としている。
【0045】
その断面データD8の一例を
図19に示す。その
図19では、各スライス位置Spの末尾の数字に対応させて正面視して左側から順に並べており、末尾に1から4の数字を付している。すなわち、断面データD81がスライス位置Sp1に、断面データD82がスライス位置Sp2に、断面データD83がスライス位置Sp3に、断面データD84がスライス位置Sp4に、それぞれ対応している。切断面抽出部71は、生成した断面データD8に個体識別データD2を関連付けて算出用データ生成部72に出力する。なお、切断面抽出部71は、それぞれの正規化データD7に対して生成する断面データD8の数や位置は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0046】
算出用データ生成部72は、断面データD8から算出に用いるための算出用データD9(
図20参照)を生成する。この一例について、
図19のスライス位置Sp2に対応する断面データD82(以下では、単に断面データD8とする)を用いて説明する。先ず、算出用データ生成部72は、断面データD8(
図19参照)の点群を平均値で補間することにより、点群の数を間引きする間引き断面データD8´(
図20参照の左側)を生成する。また、算出用データ生成部72は、間引き断面データD8´における背骨51dを示す位置が切断面方向(
図20に示す例では幅方向Dw)の原点(中心位置)に位置するように、間引き断面データD8´を切断面方向(幅方向Dw)に変位させる(矢印A2参照)。そして、算出用データ生成部72は、間引き断面データD8´において、切断面方向(幅方向Dw)における原点(中心位置)の両側に位置する点群の数および分布の態様を比較して、点群の数が多い側または切断面方向(幅方向Dw)で分布の空きが少ない側を選択し、選択した側のデータ(点群)を反対側にコピー(複写)して、算出用データD9(
図20参照の右側)を生成する。これにより、算出用データD9は、データ量の増大を抑えつつ、幅方向Dwにおけるデータが欠落した箇所を少なくできるとともに、幅方向Dwで対象な形状(分布)とされている。
【0047】
ここで、断面データD8では、元となる動物点群データD4が乳牛51の表面形状を極めて精彩な点群として表したものではあるものの、所定の位置の断面上では必ずしも全体に亘っては点群が分散していない虞がある。そして、断面データD8では、切断面方向の両側が揃って点群が大きく欠落している可能性は低い。このことから、算出用データD9は、育成状況の評価のための近似曲線を求めるために必要な点群を有しつつ、データ量の増大を抑えることができる。
【0048】
また、算出用データ生成部72は、幅方向Dwに直交する面をスライス位置Spとした場合、次のように算出用データD9を生成する。この一例について、
図19のスライス位置Sp4に対応する断面データD84を用いて説明する。先ず、算出用データ生成部72は、断面データD84(
図19参照)の点群を平均値で補間することにより、点群の数を間引きする間引き断面データD84´(
図21参照の左側)を生成する。また、算出用データ生成部72は、間引き断面データD84´における右端(
図21の例では最も高い位置)が切断面方向(
図21に示す例では基準軸方向Db)の原点(中心位置)に位置するように、間引き断面データD84´を切断面方向(基準軸方向Db)に変位させる(矢印A3参照)。すると、間引き断面データD84´は、幅方向Dwに直交する面をスライス位置Spとしているので、切断面方向(基準軸方向Db)の一方のみに点群が存在することとなり、他方が分布の空きが少ない側となる。このため、算出用データ生成部72は、間引き断面データD84´において、一方に存在する点群(そのデータ)を反対側にコピー(複写)して、算出用データD9(
図21参照の右側)を生成する。なお、算出用データD9は、切断面方向(基準軸方向Db)で間引き断面データD84´の2倍の大きさとなるが、
図21では切断面方向(基準軸方向Db)での縮尺を変化させて示している。
【0049】
このように生成した算出用データD9の一例を
図22に示す。その
図22では、各スライス位置Spの末尾の数字に対応させて正面視して左側から順に並べており、末尾に1から4の数字を付している。すなわち、算出用データD91が断面データD81に、算出用データD92が断面データD82に、算出用データD93が断面データD83に、算出用データD94が断面データD84に、それぞれ対応している。算出用データ生成部72は、生成した算出用データD9に個体識別データD2を関連付けて算出領域抽出部73に出力する。このとき、算出用データ生成部72は、単一の個体識別データD2に対して、複数の算出用データD9を生成した場合には、スライス位置Spを合わせて関連付けて算出領域抽出部73に出力する。
【0050】
算出領域抽出部73は、算出用データD9において、点群の並びが示す曲線において後述する近似曲線Acを算出するための始点Psと終点Peとを抽出する。ここで、本出願人は、乳牛51のhook boneの近傍を基準軸方向Dbに直交する断面で見ると、基準軸方向Dbでの位置に拘らず、大まかに端から凸部、凹部、凸部、凹部、凸部を描きつつ真ん中の凸部に背骨51dが位置する曲線となる傾向があることに着眼した。このため、本出願人は、7つの制御点を用いる6次のベジェ曲線を適用することにより、算出用データD9に適合する滑らかな近似曲線Acを算出できると考えた。このため、算出領域抽出部73は、算出用データD9を6次のベジェ曲線で適切に近似させるために、その算出用データD9が示す外形形状(乳牛51の輪郭)の両端、すなわち中心の凸部からその両側の凹部を経てその外側の凸部の終点(変曲点)の一方を始点Psとし、他方を終点Peとして抽出する(
図22参照)。そして、算出領域抽出部73は、算出用データD9における始点Psと終点Peとを近似曲線算出部74に出力する。
【0051】
また、本出願人は、乳牛51のhook boneの近傍を幅方向Dwに直交する面をスライス位置Spとした場合には、hook boneの近傍を頂点として尻尾51cへ向けて凸部、凹部、凸部を描く曲線となる傾向があることにも着眼した。このため、算出用データ生成部72は、上記したように、幅方向Dwに直交する面をスライス位置Spとした場合、間引き断面データD84´における右端が切断面方向の原点に位置するように、間引き断面データD84´を切断面方向に変位させるとともに、それを反対側にコピー(複写)して、算出用データD9を生成している。これにより、幅方向Dwに直交する面をスライス位置Spとした算出用データD9であっても、端から凸部、凹部、凸部、凹部、凸部を描く曲線とすることができる。このため、算出領域抽出部73は、幅方向Dwに直交する面をスライス位置Spとした算出用データD9であっても、上記と同様に算出用データD9が示す外形形状(乳牛51の輪郭)の両端の一方を始点Psとし、他方を終点Peとして抽出して、近似曲線算出部74に出力する。
【0052】
近似曲線算出部74は、算出領域抽出部73が抽出した始点Psと終点Peとを用いて、算出用データD9に適合する近似曲線Ac(
図23、
図24参照)を算出する。本出願人は、
図23に示すように、各算出用データD9を6次のベジェ曲線で適切に近似させるために、その算出用データD9が示す外形形状(乳牛51の輪郭)の両端となる始点Psと終点Peとを固定の制御点Cとして設定するとともに、その始点Psと終点Peとの間に5つの制御点Cを設定することとした。以下では、始点Psと終点Peとを含めて7つの制御点Cを設定することとなり、個別に示す際には始点Psから順に頭に第1から7の数字を付すとともに末尾に1から7の数字を付すこととする。すなわち、個別に示す際には、始点Psが第1制御点C1となり、その隣が第2制御点C2となり、その隣から順に第3制御点C3から第6制御点C6となり、終点Peが第7制御点C7となる。そして、本出願人は、算出用データD9に対して鉛直方向Dhで見て、始点Psに固定した第1制御点C1の隣の第2制御点C2を上側に設け、その隣から順に、第3制御点C3を下側に、第4制御点C4を上側に、第5制御点C5を下側に、第6制御点C6を上側に、それぞれ設ける。そして、固定した第1制御点C1(始点Ps)と第7制御点C7(終点Pe)とを除く、残りの5つの第2制御点C2から第6制御点C6を切断面上で適宜移動させることにより、算出用データD9に適合する近似曲線Acを算出する。
【0053】
このため、近似曲線算出部74は、算出用データD9における始点Psと終点Peとを固定の第1制御点C1と第7制御点C7として設定するとともに、それらの間に5つの制御点(第2制御点C2から第6制御点C6)を設定する。そして、近似曲線算出部74は、始点Ps(第1制御点C1)から終点Pe(第7制御点C7)に至る曲線が算出用データD9(それが示す外形形状)と重なるように、5つの制御点(第2制御点C2から第6制御点C6)の位置を調整することにより、近似曲線Acを算出する。
【0054】
ここで、実施例1では、算出用データD9が、断面データD8における切断面方向の一方を選択するとともにそれを反転させて生成されている。このため、算出用データD9では、切断面上において、中間位置を通る鉛直方向Dhに伸びる線分(以下では中心線Lcとする)に関して、始点Ps(第1制御点C1)と終点Pe(第7制御点C7)と、第2制御点C2と第6制御点C6と、第3制御点C3と第5制御点C5と、が線対称な位置関係とされている。そして、算出用データD9では、切断面上において、第4制御点C4が中心線Lc上に設けられている。これらのことから、実施例1の近似曲線算出部74は、切断面上において、第2制御点C2と第6制御点C6とのいずれか一方の位置と、第3制御点C3と第5制御点C5とのいずれか一方の位置と、を調整するとともに、中心線Lc上での第5制御点C5の位置を調整する。そして、実施例1の近似曲線算出部74は、第2制御点C2と第6制御点C6との他方の位置を一方の位置から求めるとともに、第3制御点C3と第5制御点C5との他方の位置を一方の位置から求める。このため、実施例1の近似曲線算出部74は、実質的に、3つの制御点Cの位置を調整することにより、算出用データD9の各凸部および各凹部に適合するように始点Ps(第1制御点C1)から終点Pe(第7制御点C7)に至るベジェ曲線の曲がり方を調整して、近似曲線Acを算出する。
【0055】
このように、近似曲線算出部74は、近似曲線Acの求め方を規格化している。すなわち、算出領域抽出部73が算出用データD9における始点Psと終点Peとを抽出し、近似曲線算出部74が始点Psと終点Peとを含めた合計7つの制御点Cを設定している。そして、近似曲線算出部74は、始点Ps(第1制御点C1)と終点Pe(第7制御点C7)とを固定しつつ、残りの5つの制御点Cを調整することにより、始点Psから終点Peに至る6次のベジェ曲線として近似曲線Acを求めている。このように、近似曲線算出部74は、上記のように共通の特徴に基づいて7つの制御点Cの位置を調整することにより、個々の算出用データD9(乳牛51)に対して個体差に拘らず外形形状を近似曲線Acで表すことができる。これにより、近似曲線算出部74は、乳牛51の個体差に拘らず7つの制御点Cを用いた6次のベジェ曲線による近似曲線Acで算出用データD9すなわちその元となる断面(断面データD8)の輪郭を表すことができるとともに、乳牛51の個体差に応じてそれぞれの近似曲線Acにおける係数や各制御点Cの位置を変化させることができる。
【0056】
このように求めた近似曲線Acの一例を
図24に示す。その
図24では、3つの異なる算出用データD9と、それに合わせた近似曲線Acと、を並べて示している。そして、
図24では、各近似曲線Acとした際の始点Psと終点Peとを含む7つの制御点Cの位置も併せて示している。近似曲線算出部74は、7つの制御点Cを含む6次のベジェ曲線による近似曲線Ac(そのデータ)を、そこに個体識別データD2を関連付けて評価値算出部75に出力する。
【0057】
評価値算出部75は、近似曲線算出部74からの各近似曲線Acに基づいて、水飲み場52にいた各乳牛51の育成状況の評価を示す評価値Evを算出する。評価値算出部75は、近似曲線Acにおける各制御点Cの位置関係を用いて評価値Evを算出するもので、実施例1では第2制御点C2(第6制御点C6)と第3制御点C3(第5制御点C5)と第4制御点C4との位置関係を用いる。これについて、
図23を用いて説明する。先ず、
図23に示すように、第2制御点C2と第3制御点C3との間隔(その大きさ)を第1間隔aとし、第3制御点C3と第4制御点C4との間隔(その大きさ)を第2間隔bとし、第2制御点C2と第4制御点C4との間隔(その大きさ)を第3間隔cとする。また、
図23に示すように、第6制御点C6と第5制御点C5との間隔(その大きさ)を第4間隔dとし、第5制御点C5と第4制御点C4との間隔(その大きさ)を第5間隔eとし、第6制御点C6と第4制御点C4との間隔(その大きさ)を第6間隔fとする。
【0058】
ここで、乳牛51は、肉付きが良いほど背骨51dやhook bone等の各種の骨が目立たなくなる、すなわち全体として凹凸が丸みの帯びた形状となり、肉付きが悪い場合には各種の骨が角張って見えるようになる。また、乳牛51は、肉付きが良いほど、外側に膨らむような形状となる。このことは、算出用データD9に当て嵌めると、第2制御点C2(第6制御点C6)と第4制御点C4との鉛直方向Dhの差分が大きくなるすなわち第3間隔c(第6間隔f)が大きくなるほど、凹凸の角がきつくなり、肉付きを悪い形状となる傾向が見受けられる。このため、評価値Evは、第3間隔c(第6間隔f)が大きくなるほど、肉付きが悪くなる、すなわち低い評価となることが望ましい。また、算出用データD9に当て嵌めると、第2制御点C2(第6制御点C6)と第3制御点C3(第5制御点C5)とが離れるすなわち第1間隔a(第4間隔d)が大きくなるほど、全体として外側に膨らんで、肉付きの良い形状となる傾向が見受けられる。このため、評価値Evは、第1間隔a(第4間隔d)が大きくなるほど、肉付きが良くなり、高い評価となることが望ましい。そして、上記した2つの条件を満たすためには、第2制御点C2(第6制御点C6)と第4制御点C4とが離れることとなり、第2間隔b(第5間隔e)が大きくなる傾向が見受けられる。これらのことから、本開示の評価値Evは、第3間隔cを第1間隔aと第2間隔bとを加算した値で割る(評価値Ev=第3間隔c/(第1間隔a+第2間隔b))こととし、大きくなるほど低い評価(肉付きが悪い)とし、小さくなるほど高い評価(肉付きが良い)とするものとした。
【0059】
同様に、本開示の評価値Evは、第6間隔fを第4間隔dと第5間隔eとを加算した値で割る(評価値Ev=第6間隔f/(第4間隔d+第5間隔e))こととする。ここで、実施例1の算出用データD9は、切断面上において、中心線Lcに関して、始点Ps(第1制御点C1)と終点Pe(第7制御点C7)と、第2制御点C2と第6制御点C6と、第3制御点C3と第5制御点C5と、が線対称な位置関係とされている。このため、第1間隔aと第4間隔dとが等しくなり、第2間隔bと第5間隔eとが等しくなり、第3間隔cと第6間隔fとが等しくなる。このため、実施例1では、第1間隔aと第2間隔bと第3間隔cとを用いて算出した評価値Evと、第4間隔dと第5間隔eと第6間隔fとを用いて算出した評価値Evと、が互いに等しくなるので、いずれか一方を算出すればよい。
【0060】
このことから、本開示の評価値算出部75は、近似曲線Acすなわちそのための第2制御点C2(第6制御点C6)と第3制御点C3(第5制御点C5)と第4制御点C4との位置(座標データ)に基づいて、上記した第1間隔a(第4間隔d)と第2間隔b(第5間隔e)と第3間隔c(第6間隔f)とを算出する。そして、評価値算出部75は、上記した算出式(第3間隔c/(第1間隔a+第2間隔b))または(第6間隔f/(第4間隔d+第5間隔e))に当て嵌めることにより、評価値Evを算出する。評価値算出部75は、乳牛51の評価値Evに個体識別データD2を関連付けて、適宜記憶部18に格納する。
【0061】
制御機構11は、記憶部18に格納された評価値Evを、表示部16に適宜表示させたり、通信部17を介して外部の機器に適宜出力させたりする。ここで、評価値Evには、個体識別データD2が関連付けられているので、いずれの乳牛51の育成状況を示すものであるのかを容易に把握できる。これにより、制御機構11は、乳牛51の評価値Evを報知することができる。
【0062】
次に、生育状況評価システム10を用いて、乳牛51の育成状況の評価を行う一例としての育成状況評価処理(育成状況評価制御方法)について、
図25を用いて説明する。この育成状況評価処理は、記憶部18または内部メモリ11aに記憶されたプログラムに基づいて、制御機構11が実行する。以下では、この
図25のフローチャートの各ステップ(各工程)について説明する。この
図25のフローチャートは、生育状況評価システム10が起動されてブラウザまたはアプリが立ち上がってカメラ12が駆動されるとともに、両レーザ測定器13が待機状態とされることにより開始される。
【0063】
ステップS1では、水飲み場52(データ取得領域14)に乳牛51が存在するか否かを判断し、YESの場合はステップS2へ進み、NOの場合はステップS1を繰り返す。ステップS1では、動物検出部61が、カメラ12が取得した画像Iを解析することで、水飲み場52に乳牛51がいるか否かを判断し、乳牛51がいる場合にはその旨の信号をデータ取得部62に出力する。加えて、実施例1のステップS1は、乳牛51を検出した場合、その乳牛51を個体別に識別した個体識別データD2を生成し、その個体識別データD2をデータ取得部62に出力する。
【0064】
ステップS2では、水飲み場52の点群データD1を取得して、ステップS3へ進む。ステップS2では、データ取得部62が、動物検出部61から乳牛51を検出した信号を受け取ると、2つのレーザ測定器13を駆動させて水飲み場52(データ取得領域14)の走査を行わせて、水飲み場52の点群データD1を取得させる。そして、ステップS2では、データ取得部62が、両レーザ測定器13からの点群データD1を受け取ると、それぞれの点群データD1に個体識別データD2を関連付けてデータ合成部63に出力する。
【0065】
ステップS3では、合成点群データD3を生成して、ステップS4へ進む。ステップS3では、データ合成部63が、両レーザ測定器13が取得した点群データD1を合成して、合成点群データD3を生成し、その生成した合成点群データD3に個体識別データD2を関連付けて動物抽出部64に出力する。
【0066】
ステップS4では、動物点群データD4を生成して、ステップS5へ進む。ステップS4では、動物抽出部64が、データ合成部63が生成した合成点群データD3から乳牛51に相当する三次元座標位置(座標データ)のみを抽出して動物点群データD4を生成し、その生成した動物点群データD4に個体識別データD2を関連付けて特定部位切出部65に出力する。
【0067】
ステップS5では、特定部位データD5を生成して、ステップS6へ進む。ステップS6では、特定部位切出部65が、動物抽出部64が生成した動物点群データD4から乳牛51の頭部近傍51bと尻尾51cとを取り除いた特定部位データD5を生成し、その生成した特定部位データD5に個体識別データD2を関連付けて基準箇所検出部67に出力する。
【0068】
ステップS6では、特定部位データD5を整列させて、ステップS7へ進む。ステップS6では、特定部位整列部66が、特定部位切出部65が生成した特定部位データD5における第1主成分を乳牛51の背骨51dとして抽出し、その第1主成分(背骨51dが伸びる方向)を基準軸方向Dbに一致させるように、特定部位データD5を水平面上で移動させる。そして、ステップS6では、特定部位整列部66が、背骨51dが伸びる方向を基準軸方向Dbに一致させて整列させた状態の特定部位データD5を基準箇所検出部67に出力する。
【0069】
ステップS7では、特定部位データD5における基準箇所Prの位置を検出して、ステップS8へ進む。ステップS7では、基準箇所検出部67が、特定部位整列部66により整列された状態の特定部位データD5からhook boneの位置を抽出し、その抽出したhook boneの位置を結ぶ基準箇所Prを生成して、その基準箇所Pr(そのデータ)をデータ整列部68に出力する。
【0070】
ステップS8では、特定部位整列データD6を生成して、ステップS9へ進む。ステップS8では、基準箇所検出部67が検出した基準箇所Prが基準軸方向Dbに直交するように水平面上での特定部位データD5の傾きを微調整させて特定部位整列データD6を生成する。そして、ステップS8では、データ整列部68が、生成した特定部位整列データD6を正規化部69に出力する。
【0071】
ステップS9では、正規化データD7を生成して、ステップS10へ進む。ステップS9では、正規化部69が、データ整列部68が生成した各特定部位整列データD6における基準箇所Prが均一の大きさとなるように、各特定部位整列データD6を拡大または縮小して各正規化データD7を生成する。そして、ステップS9では、正規化部69が、生成した正規化データD7を切断面抽出部71に出力する。
【0072】
ステップS10では、断面データD8を生成して、ステップS11へ進む。ステップS10では、切断面抽出部71が、正規化部69が生成した正規化データD7を、任意の位置に設定されたスライス位置Spに沿って切断して断面データD8を生成する。そして、ステップS10では、切断面抽出部71が、生成した各断面データD8を個体識別データD2に関連付けて算出用データ生成部72に出力する。
【0073】
ステップS11では、算出用データD9を生成して、ステップS12へ進む。ステップS11では、算出用データ生成部72が、切断面抽出部71が生成した断面データD8の点群の数を間引きした間引き断面データD8´を生成し、その切断面方向で分布の空きが少ない側を選択して他方にコピー(複写)して算出用データD9を生成する。そして、ステップS11では、算出用データ生成部72が、生成した算出用データD9を算出領域抽出部73に出力する。
【0074】
ステップS12では、算出用データD9における始点Psと終点Peとを抽出して、ステップS13へ進む。ステップS12では、算出領域抽出部73が、算出用データD9において、近似曲線Acを算出するための始点Psと終点Peとを抽出し、その始点Psと終点Peとの位置(そのデータ)を近似曲線算出部74に出力する。
【0075】
ステップS13では、近似曲線Acを算出して、ステップS14へ進む。ステップS13では、近似曲線算出部74が、算出用データD9に対して、始点Psと終点Peとを固定の制御点Cとして設定するとともに、その間に5つの制御点Cを設定し、その後者の5つの制御点Cの位置を調整して近似曲線Acを算出する。なお、実施例1のステップS13では、近似曲線算出部74が、切断面上において、第2制御点C2と第6制御点C6とのいずれか一方の位置と、第3制御点C3と第5制御点C5とのいずれか一方の位置と、を調整するとともに、中心線Lc上での第5制御点C5の位置を調整して算出用データD9(外表面側の輪郭)に適合する近似曲線Acを算出する。そして、ステップS13では、近似曲線算出部74が、算出した近似曲線Acをその各制御点C(そのデータ)とともに個体識別データD2を関連付けて評価値算出部75に出力する。
【0076】
ステップS14では、評価値Evを算出して、ステップS15へ進む。ステップS14では、評価値算出部75が、近似曲線算出部74からの各近似曲線Acに基づいて、水飲み場52にいた乳牛51の育成状況の評価を示す評価値Evを算出し、その評価値Evに個体識別データD2を関連付けて適宜記憶部18に格納する。
【0077】
ステップS15では、育成状況評価処理が終了されたか否かを判断し、YESの場合はこの育成状況評価処理を終了し、NOの場合はステップS1に戻る。ステップS15は、生育状況評価システム10が停止される、もしくは操作部15に育成状況評価処理を終了する旨の操作が為されると、育成状況評価処理が終了されたと判断する。
【0078】
次に、生育状況評価システム10を用いて、育成状況評価を行う様子について説明する。
生育状況評価システム10は、カメラ12を介して水飲み場52に乳牛51がいることを検出すると、両レーザ測定器13により水飲み場52の点群データD1を取得する(ステップS1、S2)。その後、生育状況評価システム10は、各点群データD1に基づいて各特定部位データD5を生成(ステップS3からS5)し、その各特定部位データD5を整列させて特定部位整列データD6を生成(ステップS6からS8)する。そして、生育状況評価システム10は、各特定部位整列データD6から基準箇所Prを基準とした各正規化データD7を生成(ステップS9)することにより、乳牛51の大きさに拘らず肉付きの様子を判断できるものとし、その各正規化データD7から各断面データD8を生成(ステップS10)する。
【0079】
その後、生育状況評価システム10は、各断面データD8の点群を平均値で補間して間引き断面データD8´を生成し、その切断面方向で分布の空きが少ない側を選択して他方にコピー(複写)して算出用データD9を生成する(ステップS11)。これにより、生育状況評価システム10は、切断面方向のいずれか一方の点群が大きく欠落している場合であっても肉付きの様子を適切に判断できるものとしつつ、データ量を抑制できる。
【0080】
その後、生育状況評価システム10は、算出用データD9に適合する滑らかな近似曲線Acを算出するために、6次のベジェ曲線を適用することとする。このために、生育状況評価システム10は、各算出用データD9が示す凸部、凹部、凸部、凹部、凸部となる外形形状(乳牛51の輪郭)の両端となる始点Psと終点Peとを固定の制御点Cとして設定するとともに、その始点Psと終点Peとの間に5つの制御点Cを設定する(ステップS12、S13)。そして、生育状況評価システム10は、第2制御点C2と第6制御点C6とのいずれか一方の位置と、第3制御点C3と第5制御点C5とのいずれか一方の位置と、を調整するとともに、中心線Lc上での第5制御点C5の位置を調整して算出用データD9(外形形状)に適合する近似曲線Acを算出する(ステップS13)。すなわち、生育状況評価システム10は、始点Psと終点Peとの間に5つの制御点Cの位置を調整することにより、算出用データD9に適合する近似曲線Acを算出する。その後、生育状況評価システム10は、第2制御点C2(第6制御点C6)の位置と、第3制御点C3と(第5制御点C5)の位置と、第5制御点C5の位置と、に基づいて評価値Evを算出(ステップS14)し、適宜記憶部18に格納する。生育状況評価システム10は、表示部16に評価値Evを適宜表示させたり、通信部17を介して外部の機器に評価値Evを適宜出力させたりすることで、評価値Evを報知できる。
【0081】
ここで、実際の乳牛51に対して、生育状況評価システム10を用いて上記のように求めた評価値Evがどのような値となったのかについて、
図26を参照しつつ説明する。先ず、生育状況の評価の視標としては、文献(Journal of Dairy Science Vol.72,No.1,1989)において断面(以下では、理論断面Dtとする)とともに例示されている。
図26は、理論断面Dtと、生育状況評価システム10で求めた各値と、の関係を表に纏めて示したものである。ここで、実際の乳牛51の中から理論断面Dtに合致する個体を見付けるのは容易ではない。このため、
図26では、取得した沢山の乳牛51のデータから、上記の文献の例示の理論断面Dtに近い形状の断面が得られた2つを示している。その一つが、文献の例示の中の肉付きの良くない例(definite depression)に近いものであり、もう一つが文献の例示の中の肉付きの良い例(slight depression)に近いものである。このため、
図26では、左の列を肉付きの良くない例とし、右の列を肉付きの良い例とする。そして、
図26では、一番上の行に、上記した2つの理論断面Dtを示している。以下では、肉付きの良くない例の各データに対しては、末尾にaを付し、肉付きの良い例の各データに対しては、末尾にbを付して示す。すなわち、左側の肉付きの良くない例を理論断面Dtaとし、右側に肉付きの良い例を理論断面Dtbとする。このことは、理論断面Dtよりも下の行の各データでも同様とする。
【0082】
また、
図26では、実際に取得した乳牛51のデータとして、理論断面Dtの下の行に、乳牛51の実断面データDaを示している。この実断面データDaは、上記した動物点群データD4(特定部位データD5)から断面を示すデータとして作成したものである。これは、実際の乳牛51の断面を得るのは困難であることによる。ここで、動物点群データD4(特定部位データD5)は、取得した合成点群データD3のうちの乳牛51に相当する三次元座標位置(座標データ)を示すものである。このため、実断面データDaは、実際の乳牛51の断面の外形形状を極めて正確に描きだしているものと考えられる。このことから、
図26では、乳牛51のデータとして実断面データDaを用いており、左側に理論断面Dtaに近い形状の乳牛51の実断面データDaaを示し、右側に理論断面Dtbに近い形状の乳牛51の実断面データDabを示している。
図26に示すように、各実断面データDaは、対応する理論断面Dtとそれぞれ極めて近いものとなっている。
【0083】
そして、
図26では、実断面データDaaおよび実断面データDabの元となる乳牛51から生育状況評価システム10で求めた各値として、上から順に算出用データD9、近似曲線Ac、評価値Evを記載している。ここで、両理論断面Dtと両実断面データDaとが極めて近いものであるので、両実断面データDaに対して求めた算出用データD9、近似曲線Ac、評価値Evは、実質的に両理論断面Dtに対して求めた算出用データD9、近似曲線Ac、評価値Evと略等しいものとなる。このため、両理論断面Dtに対して、両算出用データD9、両近似曲線Acおよび両評価値Evが適切なものとされていれば、生育状況評価システム10が乳牛51の生育状況を適切に評価できていると考えることができる。
【0084】
先ず、
図26からは、算出用データD9aは、その元となる実断面データDaaと極めて近い形状とされていることがわかる。また、算出用データD9bも、その元となる実断面データDabと極めて近い形状とされていることがわかる。このことから、生育状況評価システム10は、算出に用いる各算出用データD9を、元となる乳牛51の実際の断面の外形形状を適切に表すことができていることがわかる。
【0085】
次に、
図26からは、近似曲線Acaは、その元となる算出用データD9aに極めて近い形状とされていることがわかる。また、近似曲線Acbは、その元となる算出用データD9bに極めて近い形状とされていることがわかる。このことから、生育状況評価システム10は、近似曲線Acから求めた評価値EVを、算出用データD9aすなわちその元となる実断面データDaを適切に反映させていることがわかる。そして、生育状況評価システム10は、各近似曲線Acに基づいて、肉付きの良くない例の評価値EVとして0.211を算出し、肉付きの良い例の評価値EVとして0.186を算出した。このため、生育状況評価システム10は、肉付きの良くない例の理論断面Dtaに対する評価値EVとして0.211を算出し、肉付きの良い例の理論断面Dtaに対する評価値EVとして0.186を算出したものと考えることができる。ここで、評価値EVは、小さな数値となるほど肉付きが良いことを示しているので、生育状況評価システム10は、上記した文献が示す生育状況の評価の視標と同様に、乳牛51の育成状況を適切に表していることがわかる。
【0086】
次に、近似曲線Acに対するBCSと評価値Evとの関係について、
図27から
図30を用いて説明する。この
図27から
図30では、上記した4つのスライス位置Sp(
図18参照)のそれぞれで得られた断面データD8に基づく4つの近似曲線Acを、従来のBCSにおける数値別に示している。この
図27は、スライス位置Sp1での各近似曲線Acを示し、
図28は、スライス位置Sp2での各近似曲線Acを示し、
図29は、スライス位置Sp3での各近似曲線Acを示し、
図30は、スライス位置Sp4での各近似曲線Acを示す。この
図27から
図30では、4つの近似曲線Acとして、BCSが2.50となる検体Saと、BCSが2.75となる検体Sbと、BCSが3.00となる検体Scと、BCSが3.25となる検体Sdと、を示している。ここで、
図27から
図29では、各検体Sの近似曲線Acすなわち算出用データD9の形状の差異の把握を容易とするために、各検体Sの近似曲線Acにおいて、始点Psとなる第1制御点C1と、終点Peとなる第7制御点C7と、その間に位置する頂点Cvと、を略一致するものとしている。また、
図27から
図29では、図が煩雑となってそれぞれの把握が困難となることを避けるために、その他の制御点Cについては省略している。
【0087】
ここで、スライス位置Sp4は、上述したように、幅方向Dwに直交する面であり、切断面方向(基準軸方向Db)の一方のみに点群が存在することとなる。このため、上記した算出用データD9は、上記したように、点群が存在する一方のデータを他方にコピー(複写)することにより、他のスライス位置Spと同様の凸部、凹部、凸部、凹部、凸部を描く曲線としている。しかしながら、実際の乳牛51では、スライス位置Sp4で得られた断面が上記のように一方のみとなるので、
図30では、各検体Sの近似曲線Acとして、一方のみのデータすなわち凸部、凹部、凸部を描く曲線としている。このため、
図30では、各検体Sの近似曲線Acを、始点Psとなる第1制御点C1と、頂点Cvと、を結ぶ曲線としている。
図30では、各検体Sの近似曲線Acすなわち算出用データD9の形状の差異の把握を容易とするために、各検体Sの近似曲線Acにおいて、始点Psとなる第1制御点C1と、頂点Cvと、を略一致するものとしている。そして、
図30では、
図27から
図29と同様に、図が煩雑となってそれぞれの把握が困難となることを避けるために、その他の制御点Cについては省略している。
【0088】
図27から
図30に示すように、スライス位置Spに拘らず、最も外側に検体Sdの近似曲線Acが位置し、その内側に検体Scの近似曲線Acが位置し、その内側に検体Sbの近似曲線Acが位置し、その内側に検体Saの近似曲線Acが位置している。このため、各近似曲線Acすなわちその元となる乳牛51では、BCSが3.25の検体Sdが最も肉付きが良く、BCSが3.00の検体Scがその次に肉付きが良く、BCSが2.75の検体Sbがその次に肉付きが良く、BCSが2.50の検体Saが最も肉付きが良くないことがわかる。
【0089】
そして、本出願人は、
図27から
図30に示す各近似曲線Acすなわちその元となる乳牛51のそれぞれのスライス位置Spでの各断面に対して、生育状況評価システム10により評価値EVを算出した。その評価値EVは、スライス位置Sp1での断面となる
図27の例では、検体Saの近似曲線Acが0.403となり、検体Sbの近似曲線Acが0.395となり、検体Scの近似曲線Acが0.374となり、検体Sdの近似曲線Acが0.354となった。このように、肉付きが良くなるほど、すなわちBCSが大きくなるほど、評価値Evが順に小さくなっていることがわかる。
【0090】
同様に、評価値EVは、スライス位置Sp2での断面となる
図28の例では、検体Saの近似曲線Acが0.233となり、検体Sbの近似曲線Acが0.231となり、検体Scの近似曲線Acが0.221となり、検体Sdの近似曲線Acが0.207となった。また、評価値EVは、スライス位置Sp3での断面となる
図29の例では、検体Saの近似曲線Acが0.411となり、検体Sbの近似曲線Acが0.396となり、検体Scの近似曲線Acが0.370となり、検体Sdの近似曲線Acが0.340となった。さらに、評価値EVは、スライス位置Sp4での断面となる
図30の例では、検体Saの近似曲線Acが0.543となり、検体Sbの近似曲線Acが0.511となり、検体Scの近似曲線Acが0.468となり、検体Sdの近似曲線Acが0.413となった。これらのことから、スライス位置Spに拘らず、肉付きが良くなるほど、すなわちBCSが大きくなるほど、評価値Evが順に小さくなっていることがわかる。
【0091】
このため、評価値Evは、スライス位置Spに応じて数値範囲が変化するものの、BCSと同様に、肉付きの良し悪しを適切に示していることがわかる。このことから、生育状況評価システム10は、各算出用データD9に基づく近似曲線Acから算出した評価値Evが実際の乳牛51の育成状況を適切に表していることがわかる。そして、生育状況評価システム10は、各算出用データD9を6次のベジェ曲線を用いて近似曲線Acを求め、その近似曲線Acから評価値Evを算出するので、骨格や肉付き等によって個体毎に三次元形状が異なる場合であっても、簡易にかつ適切に評価値Evを算出でき、多頭数の評価を自動化することができる。
【0092】
生育状況評価システム10は、上記したように評価値Evとして算出した数値を示すことで、乳牛51の育成状況を表すことができる。ところで、生育状況評価システム10は、上記したように、スライス位置Spに応じて評価値Evの数値範囲が変化する。このため、生育状況評価システム10は、評価したスライス位置Spにおける基準の値とともに評価値Evを示すことで、乳牛51の育成状況を表すことができる。また、生育状況評価システム10は、評価したスライス位置Spに応じたそれぞれの評価値Evの数値範囲を、スライス位置Spの差異に拘らず統一した値に変換して示すものとしてもよい。この場合、例えば、それぞれのスライス位置Spにおいて、各評価値Evを最大値で規格化し、異なる複数のスライス位置Spのそれぞれの規格化した評価値Evを算出することがあげられる。さらに、生育状況評価システム10は、評価したスライス位置Spに応じたそれぞれの評価値Evを、BCSに変換する変換係数を乗算することにより、BCSに対応する値に変換するものとしてもよい。この場合、例えば、上記した
図27から
図30に示す近似曲線Acのように、同じ近似曲線Acに対するBCSと評価値Evとの双方(それぞれが変化する範囲)を求めることにより、変換係数を求めることができる。これらの場合であっても、生育状況評価システム10は、算出した評価値Evを予め決められた方法で規格化したり予め決められた変換係数を用いてBCSに対応する値に変換したりするのみであるので、多頭数の評価を自動化することができる。
【0093】
加えて、上記したように、評価値Evの数値と肉付きの良し悪しとが比例する関係であることから、生育状況評価システム10は、段階的なランクとして乳牛51の育成状況を表すものとしてもよい。これは、例えば、上記した数値を用いると、各スライス位置Spにおいて、BCSが3.25以上となる評価値Evを肉付きが最も良いランクAとし、BCSが3.25未満で3.00以上となる評価値Evを次に肉付きが良いランクBとし、BCSが3.00未満で2.75以上となる評価値Evを次に肉付きが良いランクCとし、BCSが2.75未満で2.50以上となる評価値Evを肉付きがあまり良くないランクDとし、BCSが2.50未満となる評価値Evを肉付きが良くないランクEとすることができる。このように段階的なランクで示すと、スライス位置Spの差異に拘らず統一した評価として肉付きの良し悪しの判断ができるとともに、評価値Evとしての数値で示すよりも直感的に肉付きの良し悪しを把握させることができる。この場合であっても、生育状況評価システム10は、上記したように算出した評価値Evを予め決められたランクに振り分けるのみであるので、多頭数の評価を自動化することができる。なお、上記したランクの数や、各ランクに対して当て嵌める各評価値Evの数値や、各ランクの評価コメント等は適宜設定すればよく、上記した例に限定されない。
【0094】
ここで、従来技術の生育状況評価システムは、距離画像センサを用いて動物の三次元座標群を取得している。その距離画像センサは、取得する三次元座標群の精度や解像度を高めることに限界があるので、その三次元座標群が実際の動物の輪郭を適切に表すことが困難である。このため、従来技術の健康状態推定装置では、三次元座標群を用いても、BCSにより適切な評価を得ることが困難となる。
【0095】
また、従来の健康状態推定装置では、距離画像センサを用いているので、三次元座標群が示す動物の輪郭がギザギザな凹凸となる等のように実際の動物とは異なり、適切な輪郭形状を数式(近似曲線)で表すことが困難となる。このため、従来の健康状態推定装置では、輪郭形状を適切に表す数式を得ることが困難となり、輪郭を用いて育成状況を適切に評価することが困難である。
【0096】
そして、従来、獣医等は、手触り等で乳牛の形状を把握することで、BCSを求めることが一般的である。すると、BCSでは、それを求める者(獣医等)が、自身の見え方に応じて、骨や肉付き等に基づく形状がどこに当て嵌まるのかを判断するので、求める者によってバラツキが生じてしまい、適切な評価を得ることが困難である。すなわち、従来のBCSは、求める者による個人差や、同じ者が求めた場合であっても判断の揺らぎが生じることにより、評価の精度を高めることが困難である。加えて、BCSでは、乳牛の形状を把握のために触れられたりすることが、乳牛にとってストレスとなってしまう。
【0097】
さらに、従来の健康状態推定装置では、動物の三次元座標群から再現した動物の三次元形状に基づいて、ルーメンの凹み具合を示す特徴量から育成状況の評価を得ている。ここで、牛や豚等の動物では、生育状況として、肉付きの様子(良し悪し)を判断できることが求められるが、同じ種類の動物であっても、骨格の大きさが異なる。このため、従来の健康状態推定装置では、骨格の大きさの差異に拘わらず単にルーメンの凹み具合を示す特徴量を用いていることから、肉付きの様子を適切に判断することが困難である。これは、同じ凹み具合(大きさ)であっても、大きな骨格の動物と小さな骨格の動物とでは、当然に肉付きが異なることが考えられることによる。
【0098】
加えて、従来の健康状態推定装置では、動物の三次元座標群を適宜繋ぎ合わせることにより、動物の三次元形状を再現しており、その三次元形状に基づいて、ルーメンの凹み具合を示す特徴量から育成状況の評価を得ている。ここで、牛や豚等の動物は、同じ種類の動物であっても、骨格や肉付き等によって個体毎に三次元形状が異なる。このため、従来の健康状態推定装置では、様々な三次元形状に対してルーメンの凹み具合を示す特徴量を求める必要があるので、ルーメンの位置や範囲の特定やその凹み具合の特徴量の求め方等が多岐に亘ってしまい、多頭数の評価を自動化することが困難である。
【0099】
これらに対して、生育状況評価システム10は、レーザ測定器13を用いて動物(実施例1では乳牛51)の三次元座標群を取得している。そのレーザ測定器13は、精密な測量に用いられる水準での精度の三次元座標群(点群データD1)を取得可能であるとともに、解像度も極めて高くする(実施例1では12.5mmの間隔)ことができるので、その点群データD1が実際の乳牛51の輪郭を極めて忠実に表すことができる。ここで、実施例1のレーザ測定器13は、一例として、パルスレーザ光線の到達距離の精度を3.5mm以下の誤差とすることができ、走査面の精度を2.0mm以下の誤差とすることができ、測角の精度を鉛直、水平ともに6秒(角度)以下の誤差とすることができる。また、実施例1のレーザ測定器13は、低出力のモードとすることもできるが、その場合であってもパルスレーザ光線の到達距離の精度を4.0mm以下の誤差となることを除くと、その他に関しては上記した精度とすることができる。このように、生育状況評価システム10は、レーザ測定器13を用いることにより、極めて高い精度で三次元座標群を取得できるとともに解像度も極めて高くできる。このため、生育状況評価システム10は、レーザ測定器13からの点群データD1を用いることで、育成状況の評価を適切に得ることができる。
【0100】
また、生育状況評価システム10は、レーザ測定器13を用いているため、乳牛51を示す点群データD1の外形形状が実際の乳牛51の輪郭を極めて忠実に表すことができるので、その輪郭を滑らかな曲線で近似することができ、実際の乳牛51の輪郭に適切に表す近似曲線Acを求めることができる。このため、生育状況評価システム10では、乳牛51の輪郭を標準化した数式である近似曲線Acで示すことができ、バラツキのない育成状況の評価を得ることができる。すなわち、生育状況評価システム10は、点群データD1に基づく外形形状に近似して近似曲線Acを求めることにより、乳牛51の体形を数式で表すことができるようになって、育成状況の評価を計算により算出できるようになるので、その評価を客観的かつ適切なものにできる。
【0101】
さらに、生育状況評価システム10は、各点群データD1に基づいて生成した各特定部位整列データD6から基準箇所Prを検出し、その基準箇所Prが均一の大きさとなるように各特定部位整列データD6を拡大または縮小して各正規化データD7を生成する。また、生育状況評価システム10は、その各正規化データD7から各断面データD8を生成し、その各断面データD8から算出用データD9を生成し、その算出用データD9に適合させた近似曲線Acから評価値Evを算出している。このため、生育状況評価システム10は、骨格に対する肉付きの様子を近似曲線Acとして表すことができ、その近似曲線Acから評価値Evを算出するので、骨格の大きさの差異の影響を大幅に抑えた評価値Evを得ることができ、肉付きの様子を適切に判断できる。また、生育状況評価システム10は、骨等を利用した特徴部分に基づいて定めた共通のスライス位置Spの断面データD8に基づいて評価値Evを算出できるので、動物同士の比較を容易として育成状況を適切に評価できる。
【0102】
生育状況評価システム10は、骨格や肉付き等によって個体毎に三次元形状が異なるものであっても、全体の傾向として、凸部、凹部、凸部、凹部、凸部を描きつつ真ん中の凸部に背骨51dが位置する曲線となっていることに着目している。そして、生育状況評価システム10は、各点群データD1に基づく算出用データD9に適合する滑らかな近似曲線Acを算出するために、6次のベジェ曲線を適用することとする。このため、生育状況評価システム10は、算出用データD9が示す外形形状の両端となる始点Psと終点Peとを固定の制御点Cとして設定するとともに、その始点Psと終点Peとの間に5つの制御点Cを設定する。そして、生育状況評価システム10は、その5つの制御点Cの位置を調整することにより、算出用データD9に適合させた近似曲線Acを算出し、その近似曲線Acから評価値Evを算出する。このため、生育状況評価システム10は、骨格や肉付き等によって個体毎に三次元形状が異なっていても、算出用データD9を6次のベジェ曲線を用いた近似曲線Acで表すことができ、その近似曲線Acから評価値Evを算出できる。これにより、生育状況評価システム10は、近似曲線Acや評価値Evの算出を規格化することができ、多頭数の評価の自動化を容易なものにできる。
【0103】
生育状況評価システム10は、幅方向Dwに直交する面をスライス位置Spとした場合、間引き断面データD84´における右端が切断面方向の原点に位置するように、間引き断面データD84´を切断面方向に変位させるとともに、それを反対側にコピー(複写)して、算出用データD9を生成する。このため、生育状況評価システム10は、基準軸方向Dbに直交する面をスライス位置Spとした算出用データD9であっても、幅方向Dwに直交する面をスライス位置Spとした場合と同様に、6次のベジェ曲線を用いた近似曲線Acで表すことのできる算出用データD9を生成できる。
【0104】
生育状況評価システム10は、その近似曲線Acの求め方を規格化することで、乳牛51の輪郭の個体差を、近似曲線Acにおける各制御点Cの位置で示すことができる。このため、生育状況評価システム10は、各制御点Cの位置等の変化等で評価値Evを生成することができ、よりバラツキのない育成状況の判断を可能とする。
【0105】
生育状況評価システム10は、レーザ測定器13で取得した点群データD1から求めた近似曲線Acを用いて評価値Evを生成するので、その評価値Evを育成状況の評価として知らせることができる。このため、生育状況評価システム10は、求める者による個人差や判断の揺らぎが育成状況の評価に反映することを防止できるとともに、場所や施設や時間等が異なることに起因する差異をなくすことができる。これにより、生育状況評価システム10は、統一した基準で評価値Evを生成することができ、定量的な数値として乳牛51(動物)を評価できる。
【0106】
生育状況評価システム10は、カメラ12を介して水飲み場52に乳牛51がいることを検出したときだけ、両レーザ測定器13により水飲み場52の点群データD1を取得し、それに基づいて評価値Evを生成できる。このため、生育状況評価システム10は、乳牛51が自らの意思で水飲み場52にくることを利用しつつ、その乳牛51に触れることなく評価値Evを得られる。よって、生育状況評価システム10は、評価値Evの生成のために、触れたり意思に反した場所等へ導いたりする等のストレスを乳牛51に与えることなく、適切な育成状況の判断を可能とする。また、生育状況評価システム10は、乳牛51の自然な行動を利用して自動で評価値Evを得るものなので、時刻の制限をなくすことができ、一日中(24時間)管理できる。さらに、生育状況評価システム10は、水飲み場52に乳牛51がいない場合には、両レーザ測定器13により点群データD1を取得することはないので、不要なデータの取得や蓄積を防止することができ、効率良く運用できる。加えて、生育状況評価システム10は、データ取得領域14を挟んで対を為して設けレーザ測定器13を設けているので、動物の位置や姿勢や向いている方向等に拘らず、評価値Evの生成に必要な点群データD1の取得の可能性を極めて高めることができる。
【0107】
本開示に係る生育状況評価システムの実施例1の生育状況評価システム10は、以下の各作用効果を得ることができる。
生育状況評価システム10は、出射したレーザ光(パルスレーザ光線)の動物(乳牛51)からの反射光を受光することで動物の外形を三次元座標で示す点群データD1を取得するレーザ測定器13を備える。また、生育状況評価システム10は、7つの制御点Cを有する単一の6次のベジェ曲線を、点群データD1に適合させて近似曲線Acを算出する近似曲線算出部74と、近似曲線Acに基づいて、動物(乳牛51)の評価を示す評価値Evを算出する評価値算出部75と、を備える。このため、生育状況評価システム10は、骨格や肉付き等によって個体毎に三次元形状が異なっていても、7つの制御点Cの位置を調整することにより、点群データD1に適合させた近似曲線Acを算出することができる。これにより、生育状況評価システム10は、近似曲線Acや評価値Evの算出を規格化することができ、多頭数の動物(乳牛51)の育成状況の評価の自動化を容易なものにできる。
【0108】
また、生育状況評価システム10は、レーザ測定器13が取得した点群データD1を所定のスライス位置Spに沿って切断した断面となる断面データD8を生成する切断面抽出部71と、断面データD8において、切断面方向における中心位置(中心線Lc)から両側に位置する点群の数を比較して点群の数が多い側を選択し、選択した側のデータを反対側に複写して算出用データD9を生成する算出用データ生成部72と、を備える。そして、生育状況評価システム10は、近似曲線算出部74が、点群データD1に基づく算出用データD9に適合させて近似曲線Acを算出する。このため、生育状況評価システム10は、データ量の増大を抑えつつ、幅方向Dwにおけるデータが欠落した箇所を少なくした算出用データD9を生成することができる。また、生育状況評価システム10は、実質的に、3つの制御点Cの位置を調整することにより、算出用データD9の各凸部および各凹部に適合するように始点Ps(第1制御点C1)から終点Pe(第7制御点C7)に至るベジェ曲線の曲がり方を調整して、近似曲線Acを算出でき、近似曲線Acや評価値Evの算出をより容易なものにできる。
【0109】
さらに、生育状況評価システム10は、評価値算出部75が、近似曲線Acにおける制御点Cの位置関係を用いて評価値Evを算出する。このため、生育状況評価システム10は、単一のベジェ曲線とされた近似曲線Acにおける制御点Cの位置関係だけを用いて評価値Evを算出できるので、評価値Evの算出を簡易なものにできる。
【0110】
生育状況評価システム10は、評価値算出部75が、近似曲線Acにおける制御点Cの間隔の比を用いて評価値Evを算出する。このため、生育状況評価システム10は、近似曲線Acにおける各制御点Cの間隔を求めるだけで評価値Evを算出でき、評価値Evの算出をより簡易なものにできる。
【0111】
生育状況評価システム10は、7つの制御点Cを、一方の端部から順に、第1制御点C1、第2制御点C2、第3制御点C3、第4制御点C4、第5制御点C5、第6制御点C6、第7制御点C7とする。また、生育状況評価システム10は、第2制御点C2と第3制御点C3との間隔を第1間隔aとし、第3制御点C3と第4制御点C4との間隔を第2間隔bとし、第2制御点C2と第4制御点C4との間隔を第3間隔cとし、第6制御点C6と第5制御点C5との間隔を第4間隔dとし、第5制御点C5と第4制御点C4との間隔を第5間隔eとし、第6制御点C6と第4制御点C4との間隔を第6間隔fとする。そして、生育状況評価システム10は、評価値算出部75が、第3間隔cを第1間隔aと第2間隔bとを加算した値で除算して評価値Evを算出する、または第6間隔fを第4間隔dと第5間隔eとを加算した値で除算して評価値Evを算出する。このため、生育状況評価システム10は、評価値Evの算出をより簡易なものにできる。
【0112】
したがって、本開示に係る生育状況評価システムの一実施例としての生育状況評価システム10では、動物(乳牛51)の育成状況の評価を自動化しつつ適切に得ることができる。
【0113】
以上、本開示の生育状況評価システムを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0114】
例えば、実施例1では、水飲み場52をデータ取得領域14として設定している。しかしながら、データ取得領域14は、適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。ここで、データ取得領域14は、餌場等のように、水飲み場52と同様に動物が自らの意思で定期的に訪れる場所を設定することで、動物にとってのストレスとなることなく育成状況の評価を適切に得ることができる。加えて、データ取得領域14は、各レーザ測定器13による走査を完了するために必要な時間だけ、動物が自らの意思で立ち止まる場所に設定することで、動物のストレスをより低減しつつ育成状況の評価を適切に得ることができる。ここで、上記の必要な時間は、各レーザ測定器13における走査の速度に左右されるもので、例えば、一度に放射するパルスレーザ光線の本数を増やすことで短くすることができ、立ち止まる時間を短くしても点群データD1を適切に取得できる。
【0115】
また、実施例1では、動物の一例として乳牛51を対象として、その育成状況の評価を示す評価値Evを生成している。しかしながら、評価値Evを生成(育成状況を評価する対象と)するものは、育成状況の評価が求められる動物であればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0116】
さらに、実施例1では、単一のスライス位置Spに対応する算出用データD9から近似曲線Acおよび評価値Evを算出している。しかしながら、各動物(乳牛51)に対して、複数のスライス位置Spに対応する算出用データD9から近似曲線Acおよび評価値Evを算出するとともに、それぞれの近似曲線Acにおける評価値Evの平均値を算出するものとしてもよい。ここで、生育状況評価システム10は、スライス位置Spの差異によって乳牛51の育成状況が反映される度合いが変わることも考えられるので、各評価値Evに対して適宜重みづけをしてから平均値を求めるものとしてもよい。このようにすると、生育状況評価システム10は、複数のスライス位置Spにおける肉付きを示す評価値Evの平均値を得ることができ、場所によって肉付きに偏りがある場合であっても適切な生育状況の評価を得ることができる。
【0117】
そして、生育状況評価システム10は、上記したように、スライス位置Spに応じて評価値Evの数値範囲が変化するので、上記のように複数の評価値Evの平均値を求める場合、異なる複数のスライス位置Sp毎に複数の評価値Evの最大値で規格化し、動物(乳牛51)毎に異なる複数のスライス位置Spのそれぞれの規格化した評価値Evの平均値を算出するものとしてもよい。また、上述したように、BCSに対応する値に変換してから平均値を算出するものとしてもよい。これらのようにすると、生育状況評価システム10は、スライス位置Spの差異による肉付きの評価への影響の差異を抑制でき、より適切な生育状況の評価を得ることができる。
【0118】
実施例1では、基準箇所検出部67が、点群データD1における基準箇所Prを検出し、正規化部69が、基準箇所Prが均一の大きさとなるように点群データD1の大きさを調整して正規化データD7を生成し、その正規化データD7に基づく算出用データD9から近似曲線Acおよび評価値Evを算出している。しかしながら、評価値Evは、近似曲線Acにおける制御点Cの間隔の比を用いて算出されているので、基準箇所Prが均一の大きさとなるように大きさを調整することのない点群データD1に基づく算出用データD9から近似曲線Acおよび評価値Evを算出してもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0119】
実施例1では、動物検出部61が、カメラ12からの画像に基づいて、データ取得領域14に動物がいることを検出する動物検出機構として機能している。しかしながら、動物検出機構は、データ取得領域14に動物がいることを検出するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。この一例として、例えば、カメラ12に替えて赤外線スキャナや赤外線サーモグラフィのように赤外線を利用したものを用いることができる。この場合には、暗い状況であっても動物の検出をより確実なものにできる。また、他の例として、例えば、水飲み場52の蛇口に圧力センサを設けたり、データ取得領域14に重さを検知する装置を設けたり、データ取得領域14の出入り口にセンサを設けたりすることができる。
【0120】
実施例1では、レーザ測定器13を、データ取得領域14を挟んで対を為して設けている。しかしながら、レーザ測定器13は、データ取得領域14に存在する動物の点群データD1を取得するものであれば、単一としてもよく、3つ以上設けてもよく、実施例1の構成に限定されない。
10 生育状況評価システム 12 (一例としての動物検出機構の一部を構成する)カメラ 13 レーザ測定器 14 データ取得領域 51 (動物の一例としての)乳牛