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特開2023-146788液処理装置、液処理方法及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146788
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】液処理装置、液処理方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231004BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20231004BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L21/30 569C
G03F7/30 501
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054164
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 紀勝
(72)【発明者】
【氏名】吉本 知倫
【テーマコード(参考)】
2H196
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196GA29
5F146LA04
5F146LA05
5F146LA07
5F157AA02
5F157AA91
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB22
5F157BB44
5F157CF93
5F157DB02
5F157DB51
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】角型の基板または気流調整部材に向けて吐出された処理液が跳ねて、当該基板の処理が異常となることを抑制する。
【解決手段】本技術の液処理装置は、角型の基板を保持して回転する回転保持部と、前記基板の各辺に沿って当該基板の周囲に設けられ、当該基板と共に回転する気流調整部材と、前記基板及び前記気流調整部材の回転によって、着液位置が当該基板と当該整流部材との間で移動するように処理液を吐出するノズルと、を備え、前記着液位置の移動経路における前記基板の表面と前記気流調整部材の表面との境界領域について、前記基板が前記気流調整部材の回転方向上流側に位置する第1境界領域では、前記基板の表面の方が前記気流調整部材の表面よりも高く、前記基板が前記気流調整部材の回転方向下流側に位置する第2境界領域では、前記気流調整部材の表面の方が前記基板の表面よりも高い。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角型の基板を保持して回転する回転保持部と、
前記基板の各辺に沿って当該基板の周囲に設けられ、当該基板と共に回転する気流調整部材と、
前記基板及び前記気流調整部材の回転によって、着液位置が当該基板と当該整流部材との間で移動するように処理液を吐出するノズルと、
を備え、
前記着液位置の移動経路における前記基板の表面と前記気流調整部材の表面との境界領域について、前記基板が前記気流調整部材の回転方向上流側に位置する第1境界領域では、前記基板の表面の方が前記気流調整部材の表面よりも高く、前記基板が前記気流調整部材の回転方向下流側に位置する第2境界領域では、前記気流調整部材の表面の方が前記基板の表面よりも高い液処理装置。
【請求項2】
前記気流調整部材は、前記基板の各辺に対応して設けられる傾斜面を備え、
前記傾斜面は、当該傾斜面に対応する前記辺に沿った方向において傾斜し、
前記移動経路は、前記各傾斜面により形成される請求項1記載の液処理装置。
【請求項3】
前記各傾斜面において、
対応する前記辺に沿った方向における一端、他端を夫々回転方向上流側の端、回転方向下流側の端とすると、
前記傾斜面の一端は、前記基板の表面よりも低く、
前記傾斜面の他端は、前記基板の表面よりも高い請求項2記載の液処理装置。
【請求項4】
前記気流調整部材は、前記傾斜面を各々備えると共に前記基板の各辺に対応して当該辺毎に設けられる整流部材により構成される請求項3記載の液処理装置。
【請求項5】
前記傾斜面は、前記整流部材における前記辺に沿った方向の一端から他端に亘って形成されると共に、当該他端に向うにつれて上るように形成される請求項4記載の液処理装置。
【請求項6】
回転方向に隣り合う前記整流部材について、回転方向上流側に位置する整流部材の回転方向下流側の端部の高さと、回転方向下流側に位置する整流部材の回転方向上流側の端部の高さと、が異なる請求項4または5記載の液処理装置。
【請求項7】
前記基板及び前記気流調整部材がなす回転体の中心側と周縁側との間で前記着液位置を移動させるために、前記ノズルを移動させる移動機構が設けられる請求項1ないし6のいずれか一つに記載の液処理装置。
【請求項8】
前記第1境界領域及び前記第2境界領域は、
前記回転体の回転中心から最も距離が大きく離れた着液位置の移動経路における前記基板の表面と前記気流調整部材の表面との境界領域を含む請求項7記載の液処理装置。
【請求項9】
前記回転体の回転中心から最も距離が大きく離れた着液位置の移動経路での前記第1境界領域と前記第2境界領域とにおける前記基板の表面と前記気流調整部材の表面との高さの差について、
前記第1境界領域では0.4mm以下であり、
前記第2境界領域では0.2mmより小さい請求項8記載の液処理装置。
【請求項10】
前記回転体の回転中心からの距離が同じ前記第1境界領域と前記第2境界領域とについては、
前記基板の表面と前記気流調整部材の表面との高さの差について、前記第2境界領域よりも前記第1境界領域の方が大きい請求項1ないし9のいずれか一つに記載の液処理装置。
【請求項11】
回転保持部により角型の基板を保持して回転させる工程と、
前記基板の各辺に沿って当該基板の周囲に設けられる気流調整部材を当該基板と共に回転させる工程と、
ノズルから処理液を吐出し、前記基板及び前記気流調整部材の回転によって、着液位置を当該基板と当該整流部材との間で移動させる工程と、
を備え、
前記着液位置の移動経路における前記基板の表面と前記気流調整部材の表面との境界領域について、前記基板が前記気流調整部材の回転方向上流側に位置する第1境界領域では、前記基板の表面の方が前記気流調整部材の表面よりも高く、前記基板が前記気流調整部材の回転方向下流側に位置する第2境界領域では、前記気流調整部材の表面の方が前記基板の表面よりも高い液処理方法。
【請求項12】
液処理成装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項11に記載された液処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液処理装置、液処理方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
角型の基板に対して処理を行うにあたり、当該基板と、基板の周囲に配置された気流調整部材とが共に回転し、回転する基板に処理液が吐出されるように構成された装置が用いられる場合が有る。特許文献1ではそのような装置について示されており、上記の気流調整部材については基板の辺に沿って形成されると共に、基板に近接する平坦な面状部を備える。そして、上記の面状部は基板の表面に対して0.5mm低い位置に配置されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3890026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、角型の基板または気流調整部材に向けて吐出された処理液が跳ねて、当該基板の処理が異常となることを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の液処理装置は、角型の基板を保持して回転する回転保持部と、
前記基板の各辺に沿って当該基板の周囲に設けられ、当該基板と共に回転する気流調整部材と、
前記基板及び前記気流調整部材の回転によって、着液位置が当該基板と当該整流部材との間で移動するように処理液を吐出するノズルと、
を備え、
前記着液位置の移動経路における前記基板の表面と前記気流調整部材の表面との境界領域について、前記基板が前記気流調整部材の回転方向上流側に位置する第1境界領域では、前記基板の表面の方が前記気流調整部材の表面よりも高く、前記基板が前記気流調整部材の回転方向下流側に位置する第2境界領域では、前記気流調整部材の表面の方が前記基板の表面よりも高い。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、角型の基板または気流調整部材に向けて吐出された処理液が跳ねて、当該基板の処理が異常となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る現像装置の縦断側面図である。
図2】前記現像装置の平面図である。
図3】前記現像装置及び搬送機構の平面図である。
図4】前記現像装置における気流調整部材の斜視図である。
図5】前記気流調整部材を構成する整流プレートの側面図である。
図6】前記現像装置により処理される基板及び前記気流調整部材の現像装置の平面図である。
図7】前記整流プレートの縦断側面図である。
図8】前記気流調整部材及び基板の平面図である。
図9】前記基板及び整流プレートの縦断側面図である。
図10】比較例における洗浄処理の様子を示す説明図である。
図11】前記現像装置における洗浄処理を示す側面図である。
図12】前記現像装置における洗浄処理を示す側面図である。
図13】前記現像装置における洗浄処理を示す側面図である。
図14】前記現像装置における洗浄処理を示す側面図である。
図15】前記整流プレートの変形例を示す縦断側面図である。
図16】前記整流プレートの変形例を示す縦断側面図である。
図17】前記整流プレートの変形例を示す平面図である。
図18】前記気流調整部材の変形例を示す縦断側面図である。
図19】前記気流調整部材の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の液処理装置の一実施形態に係る現像装置1について、縦断側面図である図1及び平面図である図2を参照しながら説明する。現像装置1には、搬送機構100によって搬送される基板Gに対して処理を行う。この基板Gは、露光装置に用いられる露光マスクであるレクチルを製造するためのガラス製の角型基板であり、例えば平面視で正方形であり、その表面にはレジスト膜が形成されている。現像装置1は、基板Gの表面に現像液を供給することで、上記のレジスト膜にてパターンを解像する現像処理と、その現像処理後に回転する基板Gの表面に洗浄液を供給することで、当該表面を洗浄する洗浄処理と、を行う。
【0009】
現像装置1は水平な円板状の支持体11を備えている。詳しくは後述するが、基板Gは、支持体11上に載置される。なお、図3に示すように搬送機構100は、平面視C字形状の搬送本体部101と、当該搬送本体部101の内周側に突出すると共に、基板Gの各角部を下方から各々支持する4つの支持部102とを備えている。搬送機構100が、支持体11及び後述するように支持体上に設けられる各部材に対して昇降することで、搬送機構100と支持体11との間での基板Gの受け渡しが行われる。
【0010】
図1図2に戻って説明すると、支持体11の下面の中心部は鉛直に伸びる回転軸12上に支持され、回転軸12の下部側は、回転機構13に接続されている。回転機構13によって、回転軸12を介して支持体11が鉛直軸回り且つ平面視において時計回りに回転する。
【0011】
支持体11の側周を囲むようにして、基板Gから飛散する各液を受け止めるためのカップ2が設けられる。カップ2は、内カップ21と、当該内カップ21を囲む外カップ22とを備える。当該内カップ21及び外カップ22については、起立した円筒形をなし、各々の中心軸は鉛直に伸びると共に互いに同軸となるように設けられている。また、内カップ21及び外カップ22の上部側は、上方に向うにつれて開口が狭くなるように、縦断面視で傾斜壁をなす。図示しない昇降機構によって内カップ21及び外カップ22は昇降し、基板Gの処理時には図1に示す上方側に位置し、搬送機構100と支持体11との間での基板Gの受け渡し時には搬送機構100との干渉の回避のために下方側に位置する。
【0012】
また、カップ2は支持体11の下方側にて回転軸12を囲むリング板23を備えており、当該リング板23は平面視で円形である。リング板23の内周端は鉛直下方へ伸びて円筒体24を形成する。円筒体24の下端が外方へ広がることで、平面視で円環状のカップ2の底部25をなす。底部25上には互いに同軸であると共に鉛直方向に伸びる円筒壁26、27が設けられており、内カップ21の下部側、外カップ22の下部側に夫々接続されている。底部25において、内カップ21よりも中心側且つ平面視でリング板23に重なる領域に排気口28が開口し、円筒壁26、27の各下端の間の領域に排液口29が開口している。
【0013】
以下、支持体11上に設けられる各部材の概略斜視図である図4も参照して説明する。支持体11上には、基板Gの裏面の周縁部が載置されると共に、基板Gの側方位置を規制するための載置部材3が設けられている。載置部材3は、支持体11上に載置される基板Gの各辺に沿うように複数設けられており、支持体11と共に回転保持部を形成する。本例では、載置部材3は正方形状の基板Gの一辺に対して2つずつ設けられているものとして示しており、基板Gの辺の一端、他端よりもやや辺の中心寄りの位置を支持するように配置されている。
【0014】
載置部材3の側面を図5に示している。なお、この図5は後述する整流プレート41の伸長方向に向けて見た側面を示している。載置部材3は、各々上方に向けて伸びると共に平面視で中心軸が互いに一致する下側円柱31と上側円柱32とからなり、下側円柱31の径は上側円柱32の径よりも大きい。従って、下側円柱31の中心部が上方に突出することで、上側円柱32を形成していると見ることができる。下側円柱31の上面の周縁部は、基板Gの下面の端部を載置するための載置面33をなす。
【0015】
そして、上側円柱32における下部側の側面は鉛直面をなし、載置面33上に載置された基板Gの側面に対向して位置を規制する位置規制面34をなす。また、上側円柱32の上部側については上方に向うにつれて縮径されることで、当該上部側の側面は傾斜面35をなす。基板Gの受け渡しの際に、当該基板Gの下面の端がこの傾斜面35に載置された際には、載置面33へと滑落するようにガイドされる。基板Gは各載置部材3の載置面33上に水平に載置される。その際に、基板Gの中心P(図2参照)は、支持体11の回転中心に重なる。従って、当該中心Pは基板Gの回転中心でもあり、基板Gは鉛直軸回りに回転する。
【0016】
支持体11上には鉛直方向に伸びる円柱状の支柱14が設けられており、この支柱14に支持されて、気流調整部材4が設けられる。気流調整部材4は載置部材3上に載置される基板Gの周囲に設けられる部材であり、互いに同様の形状の4つの整流プレート41により構成されている。整流プレート41は、載置部材3上に載置される基板Gの辺毎に設けられた整流部材であり、当該基板Gの1つの辺に対応するように1つの整流プレート41が、当該辺に近接して配置されている。ここでいう対応とは、平面視で並んで配置されることである。そして、4つの整流プレート41は、支持体11の回転によって基板Gと共に回転する。この4つの整流プレート41と基板Gとを合わせて平面で見ると、周方向に等間隔で4つの切り欠きが設けられる円をなす。
【0017】
基板G及び気流調整部材4が上記のように円形の回転体として回転して、当該基板Gへの液処理がなされることで、見かけ上、基板Gには角部が形成されておらず、回転方向における各部の状態が揃うことになる。そのため、当該回転方向における気流のばらつきは抑制され、基板Gの回転方向の各部は同様の気流の作用を受けて処理がなされる。このように気流調整部材4は、基板Gの周囲の気流を調整して、基板Gの面内の各部での処理のばらつきが発生することが抑制されるようにする役割を有している。なお、上記の切り欠きは、基板Gを載置部材3に対して基板Gを受け渡すために搬送機構100が昇降する際に、搬送機構100の支持部102が通過することで、当該受け渡しが行えるようにする目的で形成されている。
【0018】
既述したように基板Gと合わせて切り欠きを有する円形となることから、各整流プレート41は、円板を直径と並行する直線に沿って切断して2つの大きさが異なる分割片を形成したとして、その2つのうちの小さい方の分割片について、長さ方向の両端が切り欠かれたように形成されている。さらに詳しく述べると、整流プレート41は平面視において当該整流プレート41に近接する基板Gの一辺に沿って伸長する側面をなす直線部42と、当該直線部42に対して基板Gが位置する側とは反対側に設けられる側面をなす円弧部43と、を備える。以上のように構成されることで、基板Gの各辺に対して設けられる各整流プレート41については、平面視において当該整流プレート41に対応する基板Gの辺に沿った方向が長さ方向となるように構成されている。
【0019】
また、整流プレート41は平板として構成されることで、その表面全体が平滑面をなしている。この平滑面は後述する整流プレート41の傾斜によって、水平面をなす基板Gの表面に対して傾斜した傾斜面40とされている。既述したように整流プレート41が形成されるため、この傾斜面40については基板Gの辺に対応して基板Gの辺毎に設けられており、平面視で対応する辺に沿って伸びるように形成されている。なお特に記載無い限り、本明細書においては整流プレートの表面とは整流プレートの上面のことを意味し、基板の表面とは基板の上面のことを意味するものとする。
【0020】
以上に述べたように基板Gの1つの辺の一端側、他端側の各々に載置部材3が設けられており、これらの載置部材3の上側円柱32によって、直線部42が挟まれるように整流プレート41が設けられている。そして、整流プレート41の伸長方向に見ると、載置部材3の位置規制面34は直線部42よりも支持体11の中心寄りに位置する。そのような配置によって、図5に示すように直線部42と、載置部材3に載置される基板Gの辺をなす側面とが隙間36を介して近接すると共に対向する。隙間36の幅L1は、例えば1.5mmである。
【0021】
なお、このように基板Gと整流プレート41とが密着せずに隙間36が設けられるのは、基板Gの受け渡しの際の搬送機構100の位置が設計上の位置に対して横方向に僅かにずれたとしても、当該受け渡しが行えるようにするためである。また、上記の支柱14は整流プレート41に対して2つずつ設けられ、整流プレート41の長さ方向における一端側、他端側を夫々支持する。この支柱14による整流プレート41の支持については、後に詳しく説明する。
【0022】
以上に述べた載置部材3、支柱14及び4つの整流プレート41については、支持体11上に平面視で回転対称となるレイアウト、具体的には4回対称となるレイアウトで設けられている。つまり、支持体11を90°回転させる前後における当該支持体11上の各部の平面視のレイアウトは、互いに同じである。
【0023】
図1図2に戻って説明すると、現像装置1には現像液供給部6A及び洗浄液供給部6Bが設けられている。現像液供給部6Aは、現像ノズル61A、アーム62A、移動機構63A、ガイド64A、現像液供給機構65Aにより構成され、洗浄液供給部6Bは、洗浄ノズル61B、アーム62B、移動機構63B、ガイド64B及び洗浄液供給機構65Bにより構成されている。
【0024】
ガイド64A、64Bは、カップ2に対する後方側にて、互いに並行して左右に水平に伸びる。移動機構63A、63Bは、ガイド64A、64Bの伸長方向に沿って夫々移動自在である。アーム62A、62Bは、移動機構63A、63Bから夫々前方へ向って伸びている。そして、アーム62Aの前端側、アーム62Bの前端側に現像ノズル61A、洗浄ノズル61Bが夫々設けられている。移動機構63Aはアーム62Aを介して現像ノズル61Aを昇降させることができ、移動機構63Bはアーム62Bを介して処理液ノズルである洗浄ノズル61Bを昇降させることができる。以上の構成により、現像ノズル61A及び洗浄ノズル61Bは、平面視で基板G及び気流調整部材4の外側の待機領域と、基板G上との間を夫々移動することができ、また、基板G上において水平に移動する。
【0025】
現像液供給機構65Aにより、現像ノズル61Aへの現像液の給断が行われる。現像ノズル61Aは前後方向に長尺に構成されており、現像液供給機構65Aから供給された現像液を回転が停止した状態の基板Gに吐出しつつ、当該基板G上の左右の一方側から他方側へ移動することで、基板Gの表面全体に現像液を供給することができる。また、洗浄液供給機構65Bにより洗浄ノズル61Bへの洗浄液の給断が行われ、当該洗浄ノズル61Bに設けられる円形の吐出口から当該洗浄液が吐出される。基板Gの処理液である当該洗浄液は、例えば純水である。
【0026】
続いて、図6の気流調整部材4の平面図及び図7も参照して説明する。なお、図7は整流プレート41についての図6に示すA-A′矢視断面図であり、当該整流プレート41の長さ方向に沿った縦断面を示している。以降の説明では、基板Gと気流調整部材4(4つの整流プレート41)とを合わせて、疑似円板G1として記載する。そして、洗浄ノズル61Bの吐出口について、洗浄液の吐出方向に向けて疑似円板G1へ投影した領域を投影領域R1とする。従って投影領域R1は、洗浄液の疑似円板G1上での着液位置である。投影領域R1の中心をP1として示している。また、図中では洗浄ノズル61Bからの洗浄液の吐出方向をD1、回転体である疑似円板G1の回転方向をD2として示している。さらに、基板Gの中心Pを中心とした当該基板Gに対する内接円をG2として示している。
【0027】
洗浄処理については、洗浄ノズル61Bから洗浄液を吐出させつつ、当該洗浄ノズル61Bを上記した移動機構63Bによって水平に移動させ、投影領域R1を疑似円板G1の中心(即ち、基板Gの中心P)から当該疑似円板G1の周縁部へ向けて、回転する疑似円板G1の径方向に沿って移動させることでわれる。図6中にて、洗浄液の吐出開始時の洗浄ノズル61Bの位置を中心吐出位置として鎖線で示し、洗浄液の吐出終了時の洗浄ノズル61Bの位置を周縁側吐出位置として実線で示している。そして、洗浄ノズル61Bが、中心吐出位置に位置する際の投影領域R1、周縁側吐出位置に位置する際の投影領域R1についても鎖線、実線で夫々示している。上記した洗浄ノズル61Bの水平移動と、疑似円板G1の回転とによって、洗浄処理中の投影領域R1の移動経路としては、スパイラル状に疑似円板G1の外側へと向うものとなる。周縁側吐出位置に洗浄ノズル61Bが位置するときの投影領域R1の中心P1と、基板Gの中心Pとの距離L2は、例えば80mm~90mmである。
【0028】
平面視での洗浄液の吐出方向D1は、疑似円板G1の回転方向に倣う方向、即ち疑似円板G1の回転方向に逆らわない方向とされ、投影領域R1から洗浄液が跳ねることが抑制されるようにしている。より具体的には、投影領域R1の疑似円板G1の径方向に沿った移動経路を当該疑似円板G1の周端(即ち、整流プレート41の円弧部43)へと伸ばし、当該円弧部43における接線L3を引くとする。本例では、この接線L3に対して平面視での吐出方向D1は並行する。なお、洗浄ノズル61Bが疑似円板G1の中心側から周縁側へ向けて洗浄液を吐出することで、接線L3に対して吐出方向D1が傾いていてもよい。また、投影領域R1からの洗浄液の跳ねが抑制されるようにするために、側面視において、水平面をなす基板Gの表面に対して、洗浄液の吐出方向D1がなす角度θ1は、例えば10°~80°に設定されており、本例では45°に設定されている。
【0029】
ところで基板Gの角部に対する洗浄力を高める目的で、図6に示すように周縁側吐出位置に対応する投影領域R1の位置(洗浄ノズル61Bが周縁側吐出位置に位置する際の投影領域R1の位置)は、内接円G2の外側であって、疑似円板G1の周縁部付近である。そして、投影領域R1が内接円G2の外側を移動している間は、当該投影領域R1は疑似円板G1の回転によって、基板Gと整流プレート41とを交互に通過することになる。図8にて、周縁側吐出位置に対応する投影領域R1の移動経路をR2として表示している。なお、既述したように洗浄ノズル61Bの移動中に洗浄液が吐出されるため、実際の投影領域R1の移動経路はスパイラル状であるが、良好な洗浄作用を得るために疑似円板G1の回転数は、後に例示するように比較的高い。そのため、投影領域R1が疑似円板G1を1周する間の投影領域R1の移動経路を見れば概ね環状となることから、図8の移動経路R2は環状として示している。従って、このような環状の移動経路R2は、疑似円板G1の回転中心から最も距離が大きく離れた着液位置の移動経路である。
【0030】
以上に述べたことから、洗浄処理中に投影領域R1は基板Gと整流プレート41との境界領域を通過することになる。このように境界領域を通過するにあたり、後に図示して述べるが、整流プレート41と基板Gとの高さの関係が不適切であると、当該境界領域において洗浄液が跳ねるおそれが有る。その洗浄液の跳ねを抑制する目的で、整流プレート41については図7に示すように、その長さ方向において傾斜している。この傾斜の状態について詳しく述べると、上記したように基板Gの1つの辺に対応して1つの整流プレート41が近接して設けられるが、互いに対応する辺及び整流プレート41について見ると、辺に沿った方向において整流プレート41が傾斜している。
【0031】
上記したように、平面視で整流プレート41は対応する基板Gの辺に沿って伸びるように形成されている。整流プレート41の当該対応する辺に沿った方向における、回転方向上流側に位置する端を整流プレート41の一端、回転方向下流側に位置する端を整流プレート41の他端として説明を続ける。既に述べたように整流プレート41が傾斜することで、整流プレート41の表面は傾斜面40として形成されている。この傾斜面40について、一端は基板Gの表面よりも低く、他端は基板Gの表面よりも高い。そして、この傾斜面40は、整流プレート41の一端から他端に亘って形成されると共に、当該他端に向うにつれて上る。
【0032】
4つの整流プレート41は互いに同様の傾斜とされ、且つ互いに同じ高さに配置されている。従って回転方向に見て、隣り合って並ぶ整流プレート41について、回転方向上流側に位置する整流プレート41の回転方向下流側の端部(対応する辺に沿った方向の他端部)の高さと、回転方向下流側に位置する整流プレート41の回転方向上流側の端部(対応する辺に沿った方向の一端部)の高さと、が互いに異なる。より詳しくは、これらの端部の間では、回転方向下流側に位置する整流プレート41の回転方向上流側の端部の高さの方が低い。
【0033】
以下、整流プレート41を傾斜させる理由を説明するが、この説明にあたり、投影領域R1の移動経路における基板Gと整流プレート41との境界領域について、A1、A2として記載することにする。境界領域A1は、整流プレート41に対して回転方向上流側に基板Gが近接して位置する関係となる第1境界領域であり、境界領域A2は、整流プレート41に対して回転方向下流側に基板Gが近接して位置する関係となる第2境界領域である。図8では、上記した周縁側吐出位置に対応する移動経路R2上の境界領域A1、A2について示している。そして図9は、図8のB-B′矢視縦断面図であり、当該移動経路R2における縦断側面を示している。より詳しくは、図9では移動経路R2のうちの投影領域R1の中心P1の経路に沿った縦断側面を示している。
【0034】
図9に示す、中心P1の移動経路における境界領域A1、A2の各部の高さの関係について述べる。図7で示したように整流プレート41が傾けられていることで、この境界領域A1においては基板Gの表面の方が整流プレート41の表面よりも高く、この境界領域A2においては整流プレート41の表面の方が基板Gの表面よりも高い。また、境界領域A1と境界領域A2との間は回転方向に沿った円弧状の経路であり、当該経路は上記した整流プレート41の傾斜面40により形成されることで、回転方向上流側から回転方向下流側へ向うにつれて上る傾斜面をなす。
【0035】
ここで仮に境界領域A1、A2の各々において整流プレート41の表面と、基板Gの表面との相対高さが既述した相対高さとは逆であり、境界領域A1では整流プレート41の方が高く、境界領域A2では基板Gの方が高いものとする。その場合は、洗浄ノズル61Bから投影領域R1へ向けて洗浄液の液流Mが形成されて洗浄処理が行われるにあたり、基板Gと整流プレート41との段差がなす壁Wが回転方向の上流側から下流側へ向けて移動することで、当該液流Mに対して衝突して横切る。図10では境界領域A2に壁Wが形成されているものとして、当該壁Wが液流Mを横切る様子を示している。
【0036】
上記の壁Wの液流Mに対する衝突及び横切りによって、液跳ねが比較的多く生じてしまうと考えられる。そして、その液跳ねした洗浄液の液滴が、基板Gの洗浄済みの領域(疑似円板G1の径方向において投影領域R1が位置する領域よりも中心P寄りの領域)に付着すると、洗浄処理後においても基板Gに残留してしまい、処理の欠陥となってしまうおそれが有る。そのように飛散する液滴の数を抑制して欠陥が発生することを防止するために、整流プレート41と基板Gの境界領域A1、A2において、回転方向下流側に位置するものの表面の高さよりも、回転方向上流側に位置するものの表面の高さの方が高いという、図9で示した高さ関係となるようにしている。
【0037】
なお、図10で述べた基板Gと整流プレート41とがなす壁Wが液流Mを横切らないようにするためには、整流プレート41の表面の高さと、基板Gの表面の高さとを同じにすることが考えられる。しかし、図9に示したように境界領域A1、A2で回転方向上流側におけるものの高さを高くすることが、液跳ねを抑える上でより好ましい。これは、既述したように搬送機構100に対する受け渡しを行う目的により、境界領域A1、A2においては隙間36が形成されている。整流プレート41の表面の高さと基板Gの表面の高さとが同じ場合は、当該隙間36を形成している壁が回転方向上流側から液流Mに衝突して横切ることに起因して、液跳ねが起きる場合が有るものと考えられる。
【0038】
ところで図9を参照して、周縁側吐出位置に対応する投影領域R1における中心P1の移動経路上の各部の高さの差について、具体的な値を例示しておく。境界領域A1における高さの差H1は例えば0.4mm以下、好ましくは0.3mmであり、境界領域A2における当該高さの差H2は例えば0.2mmより小さく、好ましくは0.1mmである。上記の高さの差H1、H2については、本技術に関する試験に基づいて設定された、液跳ねを抑制する上で好ましい高さである。このように高い液跳ねの抑制効果を得ることを目的として、疑似円板G1の回転中心からの距離が同じとなる境界領域A1、A2における基板Gと整流プレート41との高さの差については、境界領域A1の方が大きくなるように設定されている。
【0039】
整流プレート41を支持する支柱14について図7図8を参照して説明を補足する。各支柱14は、上記した移動経路R2の外側に設けられる。そして、同じ整流プレート41を支持する2つの支柱14(対となる支柱14とする)の中心軸間の距離L4は、例えば100mmである。上記した0.3mmとなる高さの差H1を形成するために、対となる支柱14のうちの回転方向上流側の支柱14の中心軸に重なる整流プレート41の表面の点P3と、基板Gの表面との高さの差H3は、例えば0.4mmである。そして、上記した0.1mmとなる高さの差H2を形成するために、対となる支柱14のうちの回転方向下流側の支柱14の中心軸上における整流プレート41の表面の点P4と、基板Gの表面との高さの差H4は、例えば0.2mmである。
【0040】
なお、図7に、整流プレート41の傾斜面40と水平面とのなす角度をθ2として示している。傾斜面40は装置の製造上、不可避的に形成されるものではなく、角度θ2は、例えば0.1°以上となるように構成される。角度θ2が大き過ぎると、疑似円板G1上に形成される凹凸が大きくなってしまうことになり、整流効果が低下してしまうことから、角度θ2は例えば3°以下とすることが好ましい。
【0041】
ところで投影領域R1はスパイラル状に移動することから、境界領域A1、A2を各々複数通過する。従って、図8図9では代表して周縁側吐出位置に対応する境界領域A1、A2を例示しているが、投影領域R1は、この図8図9に示した位置以外の境界領域A1、A2も通過する。投影領域R1が疑似円板G1の周端付近で且つ図8に示す位置よりも疑似円板G1の中心P寄りに位置している場合も、投影領域R1が疑似円板G1を1周する移動経路を環状とみなすとすると、境界領域A1、A2における整流プレート41の表面と基板Gの表面との高さの関係は、既述のとおりである。即ち、図9で述べたように、整流プレート41の表面と基板Gの表面のうち、回転方向下流側に位置するものの高さよりも、回転方向上流側に位置するものの高さの方が高い。そして、疑似円板G1の回転中心からの距離が同じとなる境界領域A1、A2間で基板Gの表面と整流プレート41の表面との高さの差を比較した場合は、境界領域A1の高さの差の方が大きい。
【0042】
なお、上記のように高さの差H1~H4を設定した場合、基板Gの辺の中心付近では、整流プレート41の表面よりも基板Gの表面の方が高い(図7参照)。そのため、投影領域R1の位置が内接円G2の外側で当該内接円G2に近い場合における境界領域A2については既述した高さ関係とは異なり、整流プレート41の表面よりも基板Gの表面の方が高くなる。しかし、そのような位置に形成される境界領域A2以外の境界領域A2では、整流プレート41の表面と基板Gの表面との間に図9で説明した高さ関係が成立することから液跳ねが抑制されるので、液滴が基板Gへ付着するリスクを低減させることができる。つまり整流プレート41を傾けるのは、飛散する液滴の数を抑えることで基板Gの処理が不良となることを防ぐためであり、境界領域A1、A2の全てにおいて図9で述べた高さの関係が成立していなくてもよく、一部において当該高さの関係が成立していることで処理の不具合を防ぐ効果を得ることができる。
【0043】
なお、疑似円板G1の中心部側よりも周縁部側の方が角速度について大きいことから、図10で示した段差による壁Wが形成されているとした場合、液跳ねは中心部側よりも周縁部側の方で発生しやすい。上記したように基板Gの表面の方が整流プレート41の表面よりも高い境界領域A2は、基板Gの辺の中心付近に位置する。即ち当該境界領域A2の位置は、疑似円板G1の中心部寄りであるため、当該境界領域A2からの液跳ねは比較的発生し難い。そして角速度が大きい位置での液跳ねを抑えるという観点から、疑似円板G1の回転中心から投影領域R1が最も大きく離れた際における当該投影領域R1の移動経路R2での境界領域A1、A2について、図9で述べたように回転方向上流側に位置するものの方が高いとされる本例は好ましい構成である。
【0044】
また図1図2に示すように現像装置1は、制御部10を備えている。制御部10はコンピュータにより構成されており、プログラムを備えている。プログラムには、後述する現像装置1における一連の動作を実施することができるように、ステップ群が組み込まれている。そして、当該プログラムによって制御部10は現像装置1の各部に制御信号を出力し、当該各部の動作が制御される。具体的には、回転機構13による支持体11及び疑似円板G1の回転数、現像液供給機構65Aから現像ノズル61Aへの現像液の供給、洗浄液供給機構65Bから洗浄ノズル61Bへの洗浄液の供給、移動機構63A、63Bによる現像ノズル61A、洗浄ノズル61Bの夫々の移動などについて制御される。上記のプログラムは、例えばコンパクトディスク、ハードディスク、DVDなどの記憶媒体に格納されて、制御部10にインストールされる。
【0045】
続いて現像装置1による基板Gに対する処理について説明する。搬送機構100によって載置部材3上に基板Gが載置されると、現像ノズル61Aが基板G上を、当該基板Gの一方側から他方側へと移動する。この移動中に現像液が吐出され、基板Gの表面全体が現像液の液膜で覆われて、レジストパターンが解像される。
【0046】
続いて、疑似円板G1が例えば300rpm以上の回転数、例えば800rpmで回転し、この回転中に中心吐出位置に位置した洗浄ノズル61Bから基板Gの中心Pへ洗浄液が吐出される。この洗浄液の吐出の開始と共に、洗浄ノズル61Bが周縁側処理位置に向けて移動を開始して、当該洗浄ノズル61Bの吐出口の投影領域R1が疑似円板G1の周縁へ向けて基板G上を移動する。投影領域R1に吐出された洗浄液は、疑似円板G1の回転の遠心力により、当該疑似円板G1の外側へと向い、現像液及び現像によって生じた反応生成物を押し流す。
【0047】
そして、投影領域R1が図6に示した内接円G2の外側の領域へ移動してからは、基板Gの表面と整流プレート41の表面とを交互に移動しつつ、疑似円板G1の周縁へと向う。この内接円G2の外側で液処理がなされる様子を、図11図14を参照して説明する。
【0048】
基板Gに洗浄液が吐出される状態(投影領域R1が基板G上に位置する状態)で、疑似円板G1の回転により、境界領域A1が回転方向流側から投影領域R1に接近し(図11)、当該投影領域R1に達する。境界領域A1は基板Gの回転方向の下流側の端部と、当該端部よりも低い整流プレート41の回転方向の上流側の端部と、により形成されている。従って、これらの端部がなす段差については、図10で説明したような回転方向上流側から洗浄ノズル61Bからの液流Mを横切る壁Wを形成していない。従って、投影領域R1が境界領域A1を通過するにあたり、洗浄液の跳ねが抑制される。そしてこの境界領域A1の通過中に、投影領域R1は基板Gの回転方向の下流側の端部から整流プレート41の回転方向の上流側の端部へと移ることで、投影領域R1の高さとしては基板Gの表面よりも低くなる(図12)。
【0049】
疑似円板G1の回転が続けられ、投影領域R1は整流プレート41上を移動する。整流プレート41の表面は回転方向に上る傾斜面となっているため、この傾斜面を伝わって投影領域R1の高さは上昇し、基板Gの表面よりも高くなる(図13)。そして、境界領域A2が回転方向上流側から投影領域R1に接近し、当該投影領域R1に達する。境界領域A2は整流プレート41の回転方向の下流側の端部と、当該端部よりも低い基板Gの回転方向の上流側の端部と、により形成されている。従って、これらの端部がなす段差についても上記の壁Wを形成していないため、投影領域R1が境界領域A2を通過するにあたり、洗浄液の跳ねが抑制される。そして、この境界領域A2の通過中に、投影領域R1は整流プレート41の回転方向の下流側の端部から基板Gの回転方向の上流側の端部へと移ることで、投影領域R1の高さは低くなる(図14)。
【0050】
洗浄ノズル61Bの移動中、以上のような投影領域R1の高さの変移が繰り返されて、洗浄処理が進行する。そして、洗浄ノズル61Bが周縁側吐出位置に到達し、図8で示した移動経路R2が洗浄されると、洗浄ノズル61Bからの洗浄液の吐出が停止する。洗浄液の吐出停止後も疑似円板G1の回転が続けられることで洗浄液が振り切られ、疑似円板G1が乾燥すると、当該疑似円板G1の回転が停止する。そして、搬送機構100に基板Gが受け渡されて、現像装置1から搬出される。
【0051】
以上に述べたように、この現像装置1によれば境界領域A1、A2での洗浄液の液跳ねを抑制することができる。従って、基板Gから製造される露光マスクの歩留りの低下を抑制することができる。また、このように境界領域A1、A2での液跳ねを抑制できるということは見方を変えれば、そのように液跳ねを抑制できることにより、内接円G2の外側へと投影領域R1を移動させて洗浄処理を行えるということである。従って、現像装置1については、基板Gの角部付近に投影領域R1を位置させて、当該角部に対して高い洗浄作用を得ることができることになる。そのように、より広い範囲で高い洗浄効果が得られるように洗浄処理を行えるという観点からも、露光マスクの歩留りの低下を抑制することができる。
【0052】
また、境界領域A1、A2での液跳ねを抑えるにあたっては、内接円G2の外側へ洗浄液を吐出する際の疑似円板G1の回転数を比較的低い値にすることで、図10で説明した壁Wが液流Mに衝突する際の衝撃を低減させることが考えられる。ただし、その回転数が低いと、基板Gの角部に洗浄液が残留したことにより発生したと考えられる欠陥が生じることが確認されている。これは回転による遠心力が不足したことで、洗浄液が基板G上から十分に排出されなかったことによるものと考えられている。従って境界領域A1、A2で基板Gの表面と整流プレート41の表面との間に上記した高さの関係を形成することは、疑似円板G1の回転数について、例示したような比較的高い値での設定を可能とし、上記の基板Gの角部における欠陥の発生を抑制することができることになる。
【0053】
以下、整流プレートの変形例について整流プレート41との差異点を中心に説明する。図15に示す整流プレート71については、長さ方向の中央側が下方に向けて若干突するように湾曲された板であり、その表面は曲面72として構成されている。なお、図15は、既述した整流プレート41に代わって整流プレート71が現像装置1に設けられたとした場合についての図9のB-B′矢視断面を示したものであり、従って、この図15は回転方向に沿った縦断面を表している。上記の曲面72は、境界領域A1から回転方向下流側に向うにつれて下った後に、境界領域A2に向けて上る傾斜面として形成されている。
【0054】
また他の変形例として、整流プレート73を図16に示している。この図16図15と同様に図9のB-B′矢視断面を表す。整流プレート73は、長さ方向の中央が上方に向けて若干突するように屈曲された板である。そのように屈曲されることで、整流プレート73の表面は境界領域A1から回転方向下流側へ向うにつれて上る傾斜面74と、境界領域A2から回転方向上流側へ向うにつれて上る傾斜面75とを備えている。
【0055】
また、図17には他の変形例として、整流プレート76の平面図を示している。この整流プレート76の表面において、図8に示した移動経路R2及び当該移動経路R2よりも疑似円板G1の中心寄りとなる領域は、整流プレート41の傾斜面40と同様の傾きを有する傾斜面77として形成されている。つまり、洗浄処理中に投影領域R1が通過する領域が傾斜面77として構成され、境界領域A1、A2における基板Gの表面と整流プレートの表面との間に既述した高さの関係が成り立つようにしている。なお、その高さの関係が成り立つようにするために、対応する辺に沿った方向において、傾斜面77の一端は基板Gの表面よりも低く、傾斜面77の他端は前記基板Gの表面よりも高い。
【0056】
そして整流プレート41の表面のうち、傾斜面77の外側については例えば、基板Gの表面よりも高い水平面78として構成されている。図17では各面の識別を容易にするために傾斜面77にドットを付し、水平面78に斜線を付して示している。図18には、当該整流プレート76のC-C′矢視縦断面図を示しており、当該図18は整流プレート76の長さ方向に沿った断面図である。図18に示すように整流プレート76の表面に底浅の凹部が形成され、凹部の底面が傾斜面77であり、凹部の外側が水平面78をなす。
【0057】
以上に例示したように整流プレートの表面としては、図10で説明した洗浄液の液流Mに対して回転方向上流側から横切る壁Wに類する構造、例えば比較的大きい突起が形成されるものでなければ任意の形状とすることができるので、平滑面によって形成することには限られない。そして整流プレート76の例を挙げて示したように、境界領域A1、A2間における傾斜面としては整流プレートの表面において、対応する辺に沿った方向の一端から他端に亘って形成されていることに限られない。
【0058】
ただし整流プレートは、既述したように基板Gに近接して配置されることで、基板Gの各部の気流を調整するための部材である。従って、整流プレートの表面の高さと基板Gの表面との高さの差が大き過ぎたり、表面の形状が複雑化したりすると、その役割を十分に果たせなくなるおそれが有る。上記した整流プレート41によれば平板が傾けられることで、対応する辺に沿った方向の一端から他端に亘るように傾斜面40が形成されると共に、傾斜面40が他端に向うにつれて上る構成であるが、当該構成によって、基板Gの表面に対しての高さの差が大きくなることや、形状が複雑化することが防止される。そのため、投影領域R1の移動経路を形成しつつ、高い整流効果を得られるという効果を得る上で好ましい。
【0059】
なお、整流プレートの表面について、境界領域A1から境界領域A2に至る投影領域R1の移動領域を、境界領域A2側に向かうにつれて上る階段状に形成してもよい。なお、当該階段の段差については、当該整流プレートの表面での液跳ねが抑制されるようにごく微小なものとする。従って、境界領域A1、A2間には傾斜面が設けられる構成とすることには限られない。ただし液跳ねをより確実に抑えるためには、境界領域A1、A2間に傾斜面が設けられる構成とすることが好ましい。
【0060】
ところで、支持体11に複数の貫通孔81を設けると共に、この貫通孔81を介して載置部材3の上方へと先端が突出可能な昇降ピン82を設けることで、搬送機構100の昇降動作の代わりに昇降ピン82の昇降動作によって基板Gの受け渡しが行われるようにしてもよい。その場合には疑似円板G1については、搬送機構100の支持部102に対応する切り欠きを設けなくてもよい。つまり、平面視での各整流プレート41の長さ方向の大きさについて、基板Gの一辺と略同じ大きさとし、回転方向に隣り合う整流プレート41の長さ方向の端部同士が互いに接する構成としてもよい。なお、その場合は図2に示すように基板Gの辺の一端側、他端側に配置される載置部材3については、基板Gに向かう側とは反対側が平面視で整流プレート41に覆われるようにすればよい。
【0061】
そして、気流調整部材としては、基板Gの辺毎に設けられる整流部材によって構成されることには限られない。詳しく述べると、これまでに述べた例は疑似円板G1を周方向に見たときに、基板Gによって疑似円板G1の周縁をなす気流調整部材が基板Gの辺毎に分割された構成となっているが、そのように辺毎に分割された構成とすることには限られない。具体例を挙げると、図19に示す気流調整部材8においては、既述した整流プレートの回転方向に隣り合うもの同士が互いに接続されて、一体化されたように構成されている。さらに詳しく述べると、気流調整部材8は平面視において角型の貫通孔83を備えた円形部材として構成されており、貫通孔83内に基板Gが収まった状態で処理が行われる。なお基板Gについては、上記した貫通孔81及び昇降ピン82を介して、搬送機構100と載置部材3との間で受け渡しが行われる。
【0062】
なお、この気流調整部材8においては、例えば図15図18で説明した各整流プレートの構成を適用して、その表面に屈曲部を設けたり、凹部を設けたりする。それによって、境界領域A1、A2における気流調整部材8の表面と基板Gの表面との間での高さの差を形成すると共に、平面視で基板Gの各辺に対応する傾斜面を形成すればよい。ただし、気流調整部材の表面が複雑化することになるので、気流調整部材の表面を平滑として高い整流効果を得る観点から、これまでに述べた各例のように気流調整部材は基板Gの辺毎に設けられた整流プレートとすることが好ましく、整流プレート41のように表面を平滑とすることがより好ましい。
【0063】
ところで洗浄処理について、処理中に使用する洗浄ノズルを切り替えてもよい。例えば疑似円板G1のうち内接円G2の内側については洗浄ノズル61Bと同様の洗浄ノズル(61Cとする)を洗浄ノズル61Bと同様に、疑似円板G1の周縁に向けて移動させることで洗浄を行うようにする。そして、洗浄ノズル61Cの吐出口の投影領域R1が内接円G2上に位置したら、洗浄ノズル61Cからの洗浄液の吐出を停止する一方、洗浄ノズル61Bから内接円G2の外側に洗浄液を吐出する。そして、洗浄ノズル61Bの吐出口を比較的大きく形成し、静止した状態で内接円G2の外側に洗浄液を吐出するようにしてもよい。つまり洗浄処理を行うにあたり、内接円G2の外側の境界領域A1、A2を含む領域を洗浄するノズルについては、洗浄処理中に移動しない構成であってもよい。
【0064】
また、洗浄液の吐出が停止される際の投影領域R1の位置は図6等に示した既述の例に限られず、例えば投影領域R1を疑似円板G1の周端に至るまで移動させ、当該周端に位置したら洗浄液の吐出が停止されるようにしてもよい。ただし、基板Gの角に洗浄液の液流Mが当ることで液跳ねが生じるおそれが有るため、既述した位置で洗浄液の吐出を停止することが好ましい。なお、液処理装置としては、例えば現像処理を行わずに洗浄処理のみを行う装置構成であってもよく、現像装置として構成されることには限られない。また、洗浄液としては、純水に限られず任意の洗浄液を用いることができる。そして、基板Gとしては露光用のマスクを形成する基板に限られず、角型の基板であれば本技術を適用することができる。
【0065】
そして、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0066】
A1、A2 境界領域
G 基板
11 支持部
3 載置部材
4 気流調整部材
61B 洗浄ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19