(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146907
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231004BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231004BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231004BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/06
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054339
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 直輝
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA05
4J040DF021
4J040KA26
4J040KA38
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】延伸した状態での電子部品の脱落が抑制される電子部品加工フィルム、及びこの電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法の提供。
【解決手段】粘着層と基材層とを備え、下記(1)又は(2)の少なくとも一方を満たす、電子部品加工フィルム。(1)下記式で示される前記粘着層の変形率が50%以上である。粘着層の変形率=粘着層の押し込み変位量/粘着層の厚み×100(2)粘着層が界面活性剤を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層と基材層とを備え、下記式で示される前記粘着層の変形率が50%以上である、電子部品加工フィルム。
粘着層の変形率=粘着層の押し込み変位量/粘着層の厚み×100
【請求項2】
前記粘着層の粘着力が1.5N/25mm以上である、請求項1に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項3】
前記粘着層が界面活性剤を含む、請求項1又は請求項2に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項4】
前記界面活性剤がノニオン界面活性剤である、請求項3に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項5】
前記界面活性剤が水酸基を有する、請求項3又は請求項4に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項6】
前記粘着層がアルキルフェノール樹脂を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項7】
粘着層と基材層とを備え、前記粘着層が界面活性剤を含む、電子部品加工フィルム。
【請求項8】
前記界面活性剤がノニオン界面活性剤である、請求項7に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項9】
前記界面活性剤が水酸基を有する、請求項7又は請求項8に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルムの前記粘着層の上に、個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程を含む、電子部品加工方法。
【請求項11】
前記電子部品加工フィルムを延伸する工程の後、前記電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工を行う工程を含む、請求項10に記載の電子部品加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ、セラミックコンデンサ等の電子部品の製造方法において、延伸性を有するフィルムの上に配置したウエハを所望のサイズに個片化(ダイシング)し、次いで、フィルムを延伸してチップ間の距離を広げ、チップをピックアップする工程がある。
【0003】
近年、電子部品の加工技術の多様化が進み、個片化されたチップの電子部品としての加工を延伸したフィルムの上で行う技術が検討されている。このため、チップのピックアップを目的とする場合よりもチップ間の間隔を拡げることができるフィルムの開発が行われている。例えば、特許文献1には、フィルム上の個片化されたチップの間隔を100μm以下から300μm以上に拡げる工程を備える半導体装置の製造方法、及びこの方法に用いられるフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個片化された電子部品が配置された状態のフィルムを延伸すると、電子部品の一部がフィルムから脱落する場合がある。電子部品加工の作業性及び生産性を考慮すると、延伸後のフィルムからの電子部品の脱落は少ないことが望ましい。
【0006】
本開示の一実施態様は、延伸した状態での電子部品の脱落が抑制される電子部品加工フィルム、及びこの電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>粘着層と基材層とを備え、下記式で示される前記粘着層の変形率が50%以上である、電子部品加工フィルム。
粘着層の変形率=粘着層の押し込み変位量/粘着層の厚み×100
<2>前記粘着層の粘着力が1.5N/25mm以上である、<1>に記載の電子部品加工フィルム。
<3>前記粘着層が界面活性剤を含む、<1>又は<2>に記載の電子部品加工フィルム。
<4>前記界面活性剤がノニオン界面活性剤である、<3>に記載の電子部品加工フィルム。
<5>前記界面活性剤が水酸基を有する、<3>又は<4>に記載の電子部品加工フィルム。
<6>前記粘着層がアルキルフェノール樹脂を含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルム。
<7>粘着層と基材層とを備え、前記粘着層が界面活性剤を含む、電子部品加工フィルム。
<8>前記界面活性剤がノニオン界面活性剤である、<7>に記載の電子部品加工フィルム。
<9>前記界面活性剤が水酸基を有する、<7>又は<8>に記載の電子部品加工フィルム。
<10><1>~<9>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルムの前記粘着層の上に、個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程を含む、電子部品加工方法。
<11>前記電子部品加工フィルムを延伸する工程の後、前記電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工を行う工程を含む、<10>に記載の電子部品加工方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施態様によれば、延伸した状態での電子部品の脱落が抑制される電子部品加工フィルム、及びこの電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電子部品加工フィルムの構成の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲の上限値または下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率または含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率または含有量を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0011】
<電子部品加工フィルム(第1実施形態)>
第1実施形態の電子部品加工フィルムは、粘着層と基材層とを備え、下記式で示される前記粘着層の変形率が50%以上である、電子部品加工フィルムである。
粘着層の変形率=粘着層の押し込み変位量/粘着層の厚み×100
【0012】
本発明者らの検討の結果、上記の電子部品加工フィルムは、延伸した状態での電子部品の脱落が抑制されることがわかった。その理由は、例えば、下記のように考えられる。
【0013】
粘着層の変形率が50%以上であると、電子部品の転写、個片化等の作業を実施する際に加わる力によって、粘着層が電子部品の形状にあわせて変形しやすい。その結果、電子部品の底部が粘着層に埋め込まれた状態となって、電子部品加工フィルムの延伸後も電子部品が粘着層によって良好に保持され、脱落が抑制されると考えられる。
【0014】
本開示において、粘着層の変形率は50%以上であればよく、60%以上又は70%以上であってもよい。
粘着層の変形率の上限は特に限定されないが、電子部品のピックアップしやすさの観点からは85%以下であってもよい。
【0015】
本開示において、粘着層の押し込み変位量は特に制限されない。電子部品の脱落を抑制する観点からは、粘着層の押し込み変位量は7μm以上であることが好ましく、電子部品のピックアップしやすさの観点からは20μm以下であることが好ましい。
【0016】
本開示において、粘着層の変形率を導くための押し込み変位量は、JIS K 7161-1:2014に準拠した方法で想定する。
具体的には、株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械分析装置(TMA)「EXSTAR TMA/SS6100」またはこれに類似した試験機であって、針入プローブを有するものを使用し、23℃±2℃の環境下で、φ5mmのプローブを用いて荷重300mNを5分間付与し続けた際の変位量を測定する。
【0017】
粘着層の押し込み変位量の測定は、粘着層のみに対して実施しても、基材層を含んだ状態で実施してもよい。
粘着層の押し込み変位量を基材層を含んだ状態で実施する場合、測定された変位量から基材層に相当する変位量を差し引くことで粘着層の変位量を算出できる。
【0018】
粘着層の変形率、例えば、粘着層に含まれる成分(高分子材料、ポリイソシアネート、界面活性剤、粘着付与剤、可塑剤)の種類及び量、粘着層の厚みなどを変更することにより調整することができる。
【0019】
上記成分の中でも、粘着層に界面活性剤を含有させることが粘着層の変形率を高めるために有効である。
【0020】
図1は電子部品加工フィルムの構成の一例を概略的に示す断面図である。
図1に示す電子部品加工フィルム40は、基材層10と、基材層10の主面上に設けられた粘着層30と、粘着層20の基材層10とは反対側の面を覆うセパレータ20と、を備える。
電子部品加工フィルムを平面視したときの形状は、特に制限されない。たとえば、電子部品を個片化する工程に一般的に用いられるフィルムのように円形であってもよい。
【0021】
(粘着層)
粘着層は、例えば、樹脂等の高分子材料を含有する。
電子部品加工フィルムの延伸性等の特性の観点からは、粘着層に含まれる高分子材料は(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)等のスチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等の水添スチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0023】
(メタ)アクリル樹脂及びウレタン樹脂は、架橋剤で架橋されていてもよい。天然ゴム及び合成ゴムは、過酸化物、硫黄等で加硫されていてもよい。
【0024】
上記した中でも、電子部品加工フィルムの延伸性、及び延伸した状態での電子部品の脱落を抑制する観点から、粘着層は(メタ)アクリル樹脂を含むことが好ましく、ポリイソシアネートにより架橋される(メタ)アクリル樹脂を含むことがより好ましい。
【0025】
電子部品に対する粘着性を確保する観点から、(メタ)アクリル樹脂としては、ガラス転移温度が低い(例えば、-20℃以下)のモノマーを共重合成分に含む共重合体(アクリル共重合体)が好ましい。ガラス転移温度が-20℃以下のモノマーとしては、n-ブチルアクリレート(-54℃)、エチルアクリレート(-22℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(-70℃)等が挙げられる。モノマーの上記ガラス転移温度は、当該モノマーを用いて得られるホモポリマーの示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。
(メタ)アクリル樹脂は、ガラス転移温度が-20℃以下のモノマーをモノマー全体の50量%以上含むことが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、ガラス転移温度が-20℃以下のモノマーと、アクリロニトリルとを共重合成分として含む共重合体であってもよい。
【0026】
(メタ)アクリル樹脂の架橋剤は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリル樹脂と反応し得る官能基を有する化合物を意味し、具体的にはポリイソシアネート、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等が挙げられる。
基材層との投錨性の確保のしやすさ、及び使用量による特性の制御しやすさの観点から、架橋剤としてポリイソシアネートが好ましい。
【0027】
本開示においてポリイソシアネートとは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味し、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0028】
ポリイソシアネートとしては、多官能イソシアネート化合物(1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する化合物)が好ましい。多官能イソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物の三量体、2官能イソシアネート化合物の三量体を分子中に有する高分子化合物などが挙げられる。
【0029】
2官能イソシアネート化合物の三量体としては、2官能イソシアネート化合物のイソシアヌレート体、2官能イソシアネート化合物のアダクト体、2官能イソシアネート化合物のビウレット体等が挙げられる。
2官能イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。
ポリイソシアネートの中でも脂肪族ジイソシアネート化合物のアダクト体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体がより好ましい。
【0030】
粘着層がポリイソシアネートで架橋された(メタ)アクリル樹脂を含む場合、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対するポリイソシアネートの量は0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上であることがさらに好ましい。
ポリイソシアネートの含有量を上記数値範囲とすることにより、電子部品加工フィルムの電子部品の脱落を効果的に抑制できる。
ポリイソシアネートの含有量の上限は、特に限定されるものはないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して4.0質量部以下とすることができる。
【0031】
必要に応じ、粘着層は、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤は、粘着層の変形率の増大に寄与すると考えられる。その結果、延伸した状態での電子部品の脱落が抑制されると考えられる。
【0032】
本開示において界面活性剤とは、親水基と疎水基を1分子中に持つ化合物を意味する。
界面活性剤として具体的には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤の種類は特に制限されず、粘着剤の種類等に応じて選択できる。粘着層に含まれる界面活性剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。
界面活性剤は、25℃で液状であることが好ましい。
【0033】
上記界面活性剤の中でも、粘着性に含まれる他の成分との混和性の観点からはノニオン界面活性剤が好ましい。
本開示においてノニオン界面活性剤とは、水中でイオンに解離しない界面活性剤を意味する。
【0034】
粘着層に含まれるノニオン界面活性剤は、特に制限されない。
ノニオン界面活性剤は、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル型、エステル型、エーテル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アルキルグリコシド、ソルビタンエステル型、モノグリセライト型、ポリエーテルアミン型等が挙げられる。
【0035】
ノニオン界面活性剤の中でも、親水基としてポリオキシエチレン基(-(C2H4O)n-)を有するものが好ましく、親水基として水酸基とポリオキシエチレン基(-(C2H4O)n-)を有するものがより好ましく、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル型の界面活性剤がさらに好ましい。ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル型の界面活性剤としては、下記式で示される界面活性剤が挙げられる。
【0036】
【0037】
界面活性剤は、水酸基を有することが好ましく、分子中に2個以上の水酸基を有することがより好ましい。
界面活性剤が水酸基を有していると、粘着層中の高分子材料又は架橋剤の持つ官能基と界面活性剤の持つ水酸基とが反応して、界面活性剤の分子を高分子材料に直接又は架橋剤を介して化学結合させることができる。
例えば、粘着層が高分子成分の架橋剤としてポリイソシアネートを含んでいる場合において、高分子成分と反応していないポリイソシアネートのイソシアネート基と界面活性剤の水酸基とを反応させることで、界面活性剤の分子をポリイソシアネートを介して高分子成分に化学結合させることができる。
その結果、粘着層中での界面活性剤の相分離がより抑制され、粘着層の特性の安定化を図ることができる。
【0038】
界面活性剤の分子量は、特に制限されない。粘着層に含まれる他の成分との混和性の観点からは、5000以下であることが好ましい。粘着層からのブリードアウト抑制の観点からは、1000以上であることが好ましい。
【0039】
粘着層が界面活性剤を含む場合、高分子材料100質量部に対する界面活性剤の含有量は、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2.5質量部以上であることがさらに好ましい。
高分子材料100質量部に対する界面活性剤の含有量の上限は、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。
【0040】
必要に応じ、粘着層は、粘着付与剤を含んでもよい。粘着付与剤の種類は特に制限されず、粘着剤の種類等に応じて選択できる。具体的には、石油樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、アルキルフェノール樹脂、クロマン-インデン樹脂、ピュアモノマー樹脂、脂環族飽和水素樹脂、β-ピネン重合体、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。
【0041】
粘着層が界面活性剤を含む場合、粘着付与剤をさらに含むことで電子部品の脱落がより抑制される。この理由としては、粘着層に界面活性剤を含有させると粘着層の表面の粘着力が低下する場合があるため、粘着付与剤をさらに含むことで粘着力の低下が補われることが考えられる。
【0042】
上記粘着付与剤の中でも、粘着層の凝集力を向上させる観点からは、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂との相溶性の観点からは、アルキルフェノール樹脂がより好ましい。
アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールをベースとしたフェノール樹脂である。アルキルフェノールとは、ベンゼンの水素を水酸基とアルキル基とで置換した化合物である。
粘着層に含まれる粘着付与剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0043】
粘着層に含有される高分子材料100質量部に対する粘着付与剤の含有量は、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2.5質量部以上であることがさらに好ましい。
粘着付与剤の含有量の上限は、50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。
【0044】
必要に応じ、粘着層は、可塑剤を含んでもよい。可塑剤の種類は特に制限されず、粘着剤の種類等に応じ選択できる。具体的には、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等のフタル酸エステル、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等のテレフタル酸エステル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)等のアジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油等が挙げられる。
【0045】
上記可塑剤の中でもポリエステル可塑剤、テレフタル酸エステル及びフタル酸エステルが好ましく、生体及び環境への親和性の観点からは、ポリエステル可塑剤及びテレフタル酸エステルがより好ましい。粘着層に含まれる可塑剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0046】
粘着層が可塑剤を含む場合、高分子材料100質量部に対する可塑剤の含有量は、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2.5質量部以上であることがさらに好ましい。
可塑剤の含有量の上限は、高分子材料100質量部に対して50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。
【0047】
電子部品に対する充分な粘着力を確保する観点からは、粘着層の厚みは1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。経済性の観点からは、粘着層の厚みは100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0048】
電子部品の脱落を抑制する観点からは、粘着層の粘着力は大きいほど好ましい。例えば、粘着層の粘着力は1.5N/25mm以上、2.0N/25mm以上、または2.5N/25mm以上であってもよい。粘着力の上限は、特に限定されないが、電子部品のピックアップを行う観点からは、3.0N/25mm以下であることが望ましい。
【0049】
本開示において、粘着力の測定には、株式会社オリエンテック製のテンシロン引張試験機「RTA-100型」またはこれに類似した試験機であって、つまみ治具及び90度剥離装置を有すものを使用する。
【0050】
粘着力測定の試験片は、冷間圧延ステンレス鋼304BAを使用する。試験に先立ち、ステンレス板の表面張力を一定にする為に、加熱処理を実施し、更に試験片の表面の汚れ除去の為、トルエンによる超音波洗浄を実施する。加熱処理及び超音波洗浄の条件は、ステンレス板の状態により適宜変更可能とする。
【0051】
電子部品加工フィルムを幅50mm、長さ100mmの大きさに切断し、セパレータがある場合はこれを剥離して、粘着層をステンレス板に貼り付けて試験片を作製する。この試験片を、23℃の環境下、圧力5880N/mのかかったゴムロール間を2m/分の速度で通過させて、粘着層を圧着する。圧着した試験片を30分放置後、試験片を幅25mmに切断し、電子部品加工フィルムをステンレス板と直角方向(90℃剥離)に200mm/分の速度で剥離した際の剥離力を測定し、粘着力とする。
【0052】
(基材層)
電子部品加工フィルムの基材層の材質は、特に制限されない。良好な延伸性を得る観点からは、基材層は樹脂を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂を含むことがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。延伸性の観点からは、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0053】
基材層に柔軟性を付与する観点から、基材層は可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤の種類は特に制限されず、上述した粘着層に含まれている可塑剤から選択してもよい。基材の延伸性及び粘着層への移行性の観点からは、ポリエステル可塑剤が好ましい。
【0054】
基材層に含まれる可塑剤の含有量は、例えば、基材層に含まれる樹脂100重量部に対して10質量部~55質量部であってもよく、20質量部~50質量部であってもよく、25質量部~45質量部であってもよい。
【0055】
加工の際の視認性向上の観点から、基材層は着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、染料、顔料などが挙げられ、耐久性の観点からは顔料が好ましい。着色剤の色としては、黒以外の色であることが好ましく、青色であることがより好ましい。具体的には、アルカリブルー、ジスアゾエロー、フタロシアニンブルー、紺青、群青、コバルト青などが挙げられる。
【0056】
着色剤が粒子状である場合、その最大粒子径が基材層の延伸時の厚みより小さいことが好ましい。基材層に含まれる着色剤の最大径が基材層の延伸時の厚みより小さいと、基材層を延伸した時の着色剤の基材からの脱落が抑制され、電子部品加工装置のメンテナンスの点で有利である。例えば、着色剤の最大粒子径は25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
本開示において着色剤の最大粒子径は、着色剤の粒子(好ましくは100個以上)の投影像から得られる個々の粒子の最大径(投影像の径が最長となる時の長さ)の最大値とする。
【0057】
基材層に含まれる着色剤の含有率は、例えば、基材層の固形分全体の0.1質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~1.5質量%であることがより好ましく、0.3質量%~1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0058】
基材層の厚みは、十分な強度を確保する観点からは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。十分な延伸性を確保する観点からは、基材層の厚みは500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0059】
必要に応じ、基材層の粘着層を塗布する反対側の面にはマット加工、帯電防止加工などが施されていてもよい。
【0060】
(セパレータ)
必要に応じ、粘着層の外表面(基材層に対向する側と反対側の面)にはセパレータを備えていてもよい。
【0061】
セパレータの材質は、特に制限されるものではないが、粘着層の塗工性及び形成される粘着層の平滑性の観点からは、樹脂フィルムの表面に離型処理を施したフィルムであることが好ましい。離型処理としては、離型材料を樹脂フィルム表面に塗布し、離型層を形成することなどが挙げられる。
【0062】
樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよく、無延伸フィルムであってもよい。電子部品加工フィルムの巻取り性及び加工性の観点からは、延伸フィルムであることが好ましい。
【0063】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0064】
セパレータの厚みは、特に制限されないが、例えば10μm~300μmとすることができる。
【0065】
<電子部品加工フィルム(第2実施形態)>
第2実施形態の電子部品加工フィルムは、粘着層と基材層とを備え、前記粘着層が界面活性剤を含む、電子部品加工フィルムである。
【0066】
本発明者らの検討の結果、粘着層が界面活性剤を含む電子部品加工フィルムは、延伸した状態での電子部品の脱落が抑制されることがわかった。その理由は、例えば、下記のように考えられる。
【0067】
粘着層が界面活性剤を含んでいると、粘着層が低弾性化する。このため、電子部品の転写、個片化等の作業を実施する際に加わる力によって、粘着層が電子部品の形状にあわせて変形しやすくなる。その結果、電子部品の底部が粘着層に埋め込まれた状態となって、電子部品加工フィルムの延伸後も電子部品が粘着層によって良好に保持され、脱落が抑制されると考えられる。
【0068】
第2実施形態の電子部品加工フィルムにおいて、粘着層に含まれる界面活性剤の詳細及び好ましい態様は、第2実施形態の電子部品加工フィルムの粘着層に含まれてもよい界面活性剤の詳細及び好ましい態様と同様である。
第2実施形態の電子部品加工フィルムの詳細及び好ましい態様としては、第1実施形態の電子部品加工フィルムの詳細及び好ましい態様を参照できる。
【0069】
<電子部品加工方法>
本開示の電子部品加工方法は、上述した電子部品加工フィルムの上に個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程(延伸工程)を含む。
【0070】
上記方法において、電子部品加工フィルムの上に配置された電子部品は、電子部品加工フィルムの上で個片化されたものであっても、電子部品加工フィルムの上に配置する前に個片化されたものであってもよい。
【0071】
電子部品加工フィルムの上に配置する前に電子部品が個片化されている場合、個片化された電子部品の電子部品加工フィルムへの配置は、例えば、別のフィルムの上で電子部品を個片化し、次いで、電子部品加工フィルムの粘着層を個片化された電子部品に貼り付けて、電子部品を電子部品加工フィルムに転写して行うことができる。
【0072】
延伸工程における電子部品加工フィルムの延伸倍率は特に制限されず、延伸後に行う加工の種類等に応じて選択できる。例えば、延伸倍率が1.2以上となるように行ってもよく、1.5以上となるように行ってもよい。
【0073】
前記延伸倍率は、下記式により求められる値である。
延伸倍率 = 延伸後の電子部品加工フィルムの延伸方向における寸法 / 延伸前の電子部品加工フィルムの延伸方向における寸法
【0074】
延伸工程後の隣接する電子部品間の距離(距離が一定でない場合は、距離の最小値)は特に制限されず、延伸後に行う加工の種類などに応じて選択できる。例えば、電子部品間の距離が100μm以上となるように行ってもよく、200μm以上となるように行ってもよく、300μm以上となるように行ってもよい。
【0075】
電子部品の加工時の作業性の観点からは、延伸工程後の電子部品間の距離のばらつきが小さいことが好ましい。例えば、延伸工程後の電子部品間の距離の最大値の最小値に対する比(最大値/最小値)に100を乗じて得られる値が300以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、150以下であることが更に好ましい。
【0076】
必要に応じ、延伸工程の後、電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工(封止処理、熱処理等)を行ってもよい。
【0077】
延伸工程及び必要に応じて行われる電子部品の加工を行った後、電子部品加工フィルムから電子部品をピックアップする。ピックアップの方法は特に制限されず、公知の手法で行うことができる。
ピックアップを行う前に、粘着層の粘着力を低下させる為の処理(紫外線照射、熱処理など)を行ってもよい。
【0078】
上記方法で使用される電子部品の種類は、特に制限されない。例えば、各種の半導体チップ、セラミックコンデンサなどが挙げられる。
【実施例0079】
以下、実施例を挙げて本開示の一実施形態について更に具体的に説明する。ただし、本開示は、これら実施例に限定されるものではない。
【0080】
(粘着層用組成物の調整)
表1に示す成分を表1に示す混合比(質量部、固形分換算)で混合して、実施例及び比較例の粘着層用組成物を調製した。
【0081】
高分子成分:アクリル系粘着剤(株式会社トウペ、XE-2644、n-ブチルアクリレート80質量~90質量%とアクリロニトリル10質量%~20質量%との共重合体)
可塑剤:アジピン酸ポリエステル、株式会社ADEKA、アデカサイザーP-200
界面活性剤:下記式で表される分子末端に水酸基を有するノニオン界面活性剤(日油株式会社、プロノン#104、分子量1670)
【0082】
【0083】
粘着付与剤:アルキルフェノール樹脂(アイカ工業株式会社、ショウノールCKM-927)
ポリイソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(旭化成株式会社、デュラネートE405-80T)
【0084】
(押し込み変位量の測定)
片面が離型処理された仮基材の上に粘着層用組成物を乾燥後の厚みが表1に記載の値となるように塗工し、乾燥して粘着層を形成した。次いで、粘着層を仮基材から剥離して押し込み変位量の測定をJIS K 7161-1:2014に準拠した方法で実施した。
具体的には、株式会社日立ハイテクサイエンス製の熱機械分析装置「EXSTAR TMA/SS6100」を使用し、23℃±2℃の環境下で、φ5mmのプローブを用いて荷重300mNを5分間付与し続けた際の変位量を測定し、測定された値から粘着層の変形率(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0085】
(電子部品加工フィルムの作製)
片面が離型処理された厚み38μmのPETフィルムの離型処理された側の面に、粘着層用組成物を、乾燥後の厚みが表1に記載の値となるように塗工し、乾燥して粘着層を形成した。次いで、基材の片面に上記PETフィルムの粘着層側を室温(25℃)にて貼り合わせ、ゴムロールで加圧して粘着層を基材上に転写し、PETフィルムを剥離して、基材層と粘着層とを備える電子部品加工フィルムを作製した。
【0086】
基材層としては、ポリエステル可塑剤を全体の44質量%、顔料(フタロシアニンブルー、最大粒子径10μm)を全体の0.5質量%の量で含むポリ塩化ビニルフィルム(厚み80μm)を使用した。
得られた各電子部品加工フィルムに関して、以下の特性を評価した。結果を表1に示す。
【0087】
(電子部品の脱落の程度の評価)
電子部品加工フィルムを直径400mmの円形に切断し、1mm×1mmのサイズに個片化された状態の電子部品を転着した。この状態で、電子部品加工フィルムを60℃で放射方向に延伸した。延伸は、電子部品を転着した領域の半径が延伸前の2.0倍となるように実施した。この際の電子部品の脱落の状況を、下記基準に従い評価した。
【0088】
A:電子部品が脱落しないか、脱落する電子部品の数が全体の50%未満である
B:脱落する電子部品の数が全体の50%以上である
【0089】
(残渣の評価)
電子部品加工フィルムを幅50mm、長さ100mmの大きさに切断し、試験板としての冷間圧延ステンレス鋼304No.8(鏡面仕上げ)に貼り付けて試験片を作製した。この試験片を、23℃の環境下、圧力5880N/mのかかったゴムロール間を2m/分の速度で通過させて、粘着層を圧着した。圧着した試験片を30分放置後、油圧プレス(王子機械株式会社、「エコプレス」)を用いて80℃、16MPa、5分の加熱加圧プレスを実施し、室温(25℃)で1時間以上冷却した。その後、試験片を手で試験板から剥離角度約50°、速度30m/分で剥離した時の試験板の表面を目視観察し、下記の基準で評価した。
【0090】
OK:試験板の表面に目視可能な残渣がない
NG:試験板の表面に目視可能な残渣がある
【0091】
【0092】
表1に示されるように、実施例で作製した電子部品加工フィルムは延伸した状態での電子部品の脱落が抑制されていた。