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特開2023-147066ポリインデン化合物、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置
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  • 特開-ポリインデン化合物、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置 図1
  • 特開-ポリインデン化合物、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置 図2
  • 特開-ポリインデン化合物、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置 図3
  • 特開-ポリインデン化合物、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147066
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ポリインデン化合物、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 22/04 20060101AFI20231004BHJP
   C08F 10/14 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 17/266 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 29/44 20060101ALI20231004BHJP
   C07C 33/36 20060101ALI20231004BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231004BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C07C22/04 CSP
C08F10/14
C07C17/266
C07C29/44
C07C33/36
C08J5/24 CEZ
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054611
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンチャン
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
【テーマコード(参考)】
4F072
4H006
4J100
4M109
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AB06
4F072AB09
4F072AB28
4F072AB29
4F072AD03
4F072AG03
4F072AG16
4F072AH02
4F072AL12
4H006AA01
4H006AA02
4H006AC29
4H006AC41
4H006BA02
4H006BA32
4H006BA66
4H006BB11
4H006BC10
4J100AM43Q
4J100AR10P
4J100CA04
4J100CA23
4J100DA57
4J100FA03
4J100FA18
4J100FA28
4J100JA44
4J100JA46
4M109AA01
4M109CA01
4M109CA21
4M109EA11
4M109EB02
4M109EB12
4M109EC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、硬化時において、低誘電正接を示すポリインダン化合物、当該ポリインダン化合物を含有する硬化性組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、インデン化合物と、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物とを反応原料とする、ポリインデン化合物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インデン化合物と、
アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物と、を反応原料とする、ポリインデン化合物。
【請求項2】
以下の一般式(i):
【化1】
(上記一般式(i)中、Ri1はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基又はRi2を表し、Ri2はそれぞれ独立して、前記脱離基を除く前記オレフィン化合物由来の不飽和炭化水素結合を有する基を表し、Ri3はそれぞれ独立して、インデニル基又はインダニル基を表し、pi1は1以上4以下の整数を表し、pi2は1以上3以下の整数を表し、pi3は0以上2以下の整数を表し、pi2+pi3は1以上3以下の整数を表し、*は他の原子との結合を表す。)
で表される構造単位を有する、請求項1に記載のポリインデン化合物。
【請求項3】
前記一般式(i)中のRi2は以下の一般式(ii):
【化2】
(上記一般式(i)中、Riia、Riib及びRiicはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、pii1は1以上の整数を表し、*は他の原子との結合を表す。)
で表される、請求項1又は2に記載のポリインデン化合物。
【請求項4】
熱硬化性化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリインデン化合物。
【請求項5】
酸又は塩基の存在下で、前記インデン化合物と前記オレフィン化合物との反応を行う、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリインデン化合物を製造する方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリインデン化合物と、硬化剤とを含有する硬化性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項6に記載の硬化性組成物の半硬化物を有するプリプレグ。
【請求項9】
請求項8に記載のプリプレグ、及び、銅箔の積層体である回路基板。
【請求項10】
請求項6に記載の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルム。
【請求項11】
請求項6に記載の硬化性組成物を含有する半導体封止材。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体封止材の硬化物を含む半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリインデン化合物、硬化性組成物、硬化物、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のIoT及び大容量データ通信の急速な拡大、あるいは自動運転に必要なセンシング技術等に用いられる種々の電子機器の進歩に伴い、当該電子機器用に使用される材料に対して低誘電化のニーズが高まっている。例えば、電子機器用の回路基板材料として、エポキシ系樹脂又はBT(ビスマレイミド-トリアジン)系樹脂などの熱硬化性樹脂をガラスクロスに含浸し、かつ加熱乾燥して得られるプリプレグ、該プリプレグを加熱硬化した積層板、あるいは該積層板と該プリプレグとを組み合わせ、かつ加熱硬化した多層板が広く使用されている。このような基板は、信号の高速化及び高周波数化が進み、これらの環境下で十分に低い誘電率を維持し、かつ十分に低い誘電正接を発現する硬化物を形成しうる熱硬化性組成物の提供が望まれている。特に、数百MHz~3GHz程度の周波数帯は、移動通信等の無線システムで既に利用されているため、この周波数帯における追加周波数の割当は困難な状況にある。そのため、第5世代移動通信システム(5G)を利用するための技術開発には、より高周波数帯の利用及びそれを可能とするための技術が求められる。
【0003】
さらに、最近では各種電材用途、とりわけ先端材料用途においては、誘電特性に代表される性能の一層の向上、及びこれらを兼備する材料、組成物が求められている。これらの要求に対し、低誘電正接を有する材料として炭化水素樹脂が注目を集めている。しかし、一般的には炭化水素材料は、工業的な合成手段が乏しく、かつハンドリング性(各種樹脂との溶融混錬)については満足できるものではなかった。
例えば、特許文献1には、シクロペンタジエン構造を分子内に有する縮合環を含有する種々の硬化性樹脂混合物が記載されている。当該硬化性樹脂混合物は、優れた硬化性を有し、その硬化物は耐熱性と電気特性に優れること、極性が低く、かつ高架橋な硬化物となるため、低吸水率、高弾性特性、低熱膨張特性を併せ持つこと、加えて架橋構造間に応力緩和できる結合基を有しているため、強靭性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/031935号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的には周波数が上がるほど伝送損失は増大するため、高周波領域における伝送損失の低減が求められる。しかし、特許文献1の技術であるシクロペンタジエン構造を分子内に有する縮合環を含有する種々の硬化性樹脂混合物は、1GHzにおける誘電正接を0.005以下にする点しか検討されていないため、既に利用されている周波数帯(数百MHz~3GHz)より高い周波数帯を利用する第5世代移動通信システム(5G)用の技術には不十分である。
そこで、本発明の技術的課題は、既に利用されている周波数帯(数百MHz~3GHz)より高い周波数帯においても低誘電特性を有する硬化物を得ることが可能なポリインデン化合物、当該ポリインデン化合物を含有する硬化性組成物及びその硬化物、並びに、当該硬化物を含む、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、分子骨格中に不飽和二重結合基を有し、かつ芳香環の濃度が高いインデン骨格を有する化合物を用いることにより、既存の炭化水素樹脂より低誘電特性が上回り、かつ工業的な合成が容易なことを見出し、本発明を完成するに至った。特に、本開示は、Sub6以上の周波数帯においても低誘電特性を示し、かつ耐熱性に優れた硬化物を得ることが可能なポリインデン化合物、当該ポリインデン化合物を含有する硬化性組成物及びその硬化物、並びに、当該硬化物を含む、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することを目的とする。
【0007】
本開示は、インデン化合物と、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物と、を反応原料とする、ポリインデン化合物である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、既に利用されている周波数帯(数百MHz~3GHz)より高い周波数帯においても低誘電特性を備えた硬化物を得ることが可能なポリインデン化合物を提供することができる。
本開示によれば、硬化した際にSub6以上の周波数帯においても低誘電特性を示しうるポリインデン化合物を含有する硬化性組成物及び低誘電特性を示す硬化物、並びに、当該硬化物を含む、プリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、実施例1で合成したポリインデン化合物のGPCチャートを示し、図1(b)は、実施例1で合成したポリインデン化合物の13C-NMRチャートを示し、図1(c)は、実施例1で合成したポリインデン化合物のMSチャートを示す。
図2図2(a)は、実施例2で合成したポリインデン化合物のGPCチャートを示し、図2(b)は、実施例2で合成したポリインデン化合物の13C-NMRチャートを示し、図2(c)は、実施例2で合成したポリインデン化合物のMSチャートを示し、図2(d)は、図2(c)で示されるMSチャートの低分子量側を拡大したチャートを示す。
図3図3(a)は実施例3で合成したポリインデン化合物のGPCチャートを示し、図3(b)は実施例3で合成したポリインデン化合物の13C-NMRチャートを示し、図3(c)は実施例3で合成したポリインデン化合物のMSチャートを示し、図3(d)は図3(c)で示されるMSチャートの低分子量側を拡大したチャートを示す。
図4図4(a)は、実施例4で合成したポリインデン化合物のGPCチャートを示し、図4(b)は、実施例4で合成したポリインデン化合物の13C-NMRチャートを示し、図4(c)は、実施例4で合成したポリインデン化合物のMSチャートを示し、図4(d)は、図4(c)で示されるMSチャートの低分子量側を拡大したチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
(用語の説明)
本明細書において特段の記載が無い限り、以下の用語を適用できる。
本明細書における「芳香族基」は、炭素原子数3~30の芳香族環を有することが好ましく、炭素原子数4~26の芳香族環を有することがより好ましい。そして、本明細書における「芳香族基」は、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、置換基、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。また、「芳香族基」は、複素芳香族を含み、「芳香族基」中の-CH-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-又は-N=に置換されてもよい。
当該芳香族環の種類は、例えば、単環芳香族環、縮環芳香族環又は環集合芳香族環等が挙げられる。前記単環芳香族環としては、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。前記縮環芳香族環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。前記環集合芳香族環としては、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等が挙げられる。また、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
なお、一価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を1つ除いた基をいい、二価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を2つ除いた基をいい、三価~六価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を3~6つ除いた基をいう。
本明細書における「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。また、当該「アリール基」は、当該アリール基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アリーレン基」は、前記「アリール基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ビフェニル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。当該アラルキル基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルケニル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、「アラルキレン基」は、前記「アラルキル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基が挙げられる。なお、「アルキレン基」は、前記「アルキル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルケニル基」は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等が挙げられる。なお、「アルケニレン基」は、前記「アルケニル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書における「直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基」は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
本明細書における「直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンエーテル基」は、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシ(1-メチルメチレン)基、オキシ(1,1-ジメチルメチレン)基、オキシ(1-メチルエチレン)基、オキシ(1,1-ジメチルエチレン)基、オキシ(1,2-ジメチルエチレン)基、オキシブチレン基、オキシ(1-メチルプロピレン)基、オキシ(2-メチルプロピレン)基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、オキシヘプチレン基、オキシオクチレン基、オキシノニレン基、オキシデシレン基、オキシウンデシレン基、オキシドデシレン基等が挙げられる。
【0012】
[ポリインデン化合物]
本開示は、インデン化合物と、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物(以下、オレフィン化合物とも称する。)と、を反応原料とする、ポリインデン化合物である。
これにより、低誘電特性に優れた硬化物を得ることが可能なポリインデン化合物を提供することができる。特に、Sub6以上の周波数帯においても低誘電特性を示す硬化物を得ることができる。
換言すると、本実施形態にかかるポリインデン化合物は、反応原料中のインデン化合物由来の構造単位と、反応原料中の脱離基を除くオレフィン化合物由来の不飽和結合を有する基とが化学結合により連結された構造を有することが好ましい。
なお、上記「インデン化合物由来の構造単位」とは、インデン化合物の縮合芳香環から1つ以上の水素原子を取り除いた基をいう。例えば、インデン化合物が後述の一般式(a)で表される場合、一般式(a)のインデン環から1又は2つの水素原子を取り除いた基をインデン化合物由来の構造単位という。また、上記「脱離基を除くオレフィン化合物由来の不飽和結合を有する基」とは、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物から前記脱離基だけを取り除いた基をいう。なお、後述するように、前記オレフィン化合物中の脱離基としては、水酸基、ハロゲン原子、エステル基(-OCO-R)、硫酸エステル基(-OSO-R)又はリン酸エステル基(-O-P(=O)-(OR)などが挙げられる。なお、前記R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~12のアルキル基を表す。
本実施形態のポリインデン化合物において、当該ポリインデン化合物分子を構成する全ての原子が炭素原子及び水素原子だけであり、かつ当該ポリインデン化合物分子中には極性官能基が存在しないため、誘電正接が極めて低い。
【0013】
-ポリインデン化合物の好ましい形態-
本実施形態のポリインデン化合物は、以下の一般式(i)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化1】
(上記一般式(i)中、Ri1はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基又はRi2を表し、Ri2はそれぞれ独立して、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、炭素原子数3以上の鎖状のアルケニル基を表し、Ri3はそれぞれ独立して、インダニル基又はインデニル基を表し、pi1は1以上4以下の整数を表し、pi2は1以上3以下の整数を表し、pi3は0以上2以下の整数を表し、pi2+pi2は1以上3以下の整数を表し、*は他の原子との結合を表す。)
上記一般式(i)中のパーレン内の縮合環は、インデン化合物由来の構造単位である。そして、上記一般式(i)中、*は他の原子との結合を表す結合手である。また、上記一般式(i)中の破線は、不在であるか、あるいは単結合を表す。前記破線が不在である場合、上記一般式(i)中のパーレン内の縮合環はインダン環になりうる。一方、前記破線が単結合である場合、破線部分を含めて二重結合になるため(2位の炭素原子と3位の炭素原子との不飽和結合)、上記一般式(i)中のパーレン内の縮合環はインデン環になりうる。
上記一般式(i)中、Ri1はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~12のアルキル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基又はRi2を表すことが好ましい。より好ましくは、水素原子、炭素原子数1~12のアルキル基、アリール基、アラルキル基又はRi2を表す。当該炭素原子数1~12のアルキル基、アリールオキシ基又はアラルキル基としては、上記定義の欄に記載した基が挙げられる。Ri1としての好ましいアリール基は、無置換あるいは炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のアルケニル基又はハロゲン原子に置換されてもよく、当該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基又はテトラリニル基等が挙げられる。当該アリール基は、無置換又は炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基、炭素原子数1~12のアルケニル基若しくはハロゲン原子に置換されてもよい、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基又はインダニル基であることが好ましい。
【0014】
上記一般式(i)中のRi1の位置は、縮合環(インダン環又はインデン環)の1位~7位のいずれでもよく、例えば、1、2、3、4、7位が好ましい。
上記一般式(i)中、Ri2はそれぞれ独立して、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、炭素原子数3以上の鎖状のアルケニル基を表す。反応原料との対応関係を考慮すると、Ri2はアルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物から末端の前記脱離基を除く基であり、オレフィン化合物由来の構造単位とも称する。また、上記一般式(i)中のRi2の位置は、縮合環(インダン環又はインデン環)の1位~7位のいずれでもよく、例えば、1、2、3、4、7位が好ましい。
上記一般式(i)中のRi3の位置は、縮合環(インダン環又はインデン環)の1位~7位のいずれでもよく、例えば、1、2、3、4、7位が好ましい。
【0015】
本実施形態において、一般式(i)中のRi2は、以下の一般式(ii):
【化2】
(上記一般式(ii)中、Riia、Riib及びRiicはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、pii1は1以上の整数を表し、*は他の原子との結合を表す。)で表されることが好ましい。
上記一般式(ii)で表される基は、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物から前記末端の前記脱離基を除く基(換言するとオレフィン化合物由来の構造単位)を表すことが好ましい。そして、上記一般式(ii)中、*は他の原子との結合を表す結合手であり、上記一般式(i)中のパーレン内の縮合環(インダン環又はインデン環)に対する前記一般式(ii)で表される基の結合位置は、具体的には、1位~7位のいずれでもよく、例えば、1、2、3,4、7位が好ましい。
【0016】
上記一般式(ii)中、前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基又はテトラリニル基が挙げられる。これらアリール基の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
上記一般式(ii)中、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基又はシクロノニル基が挙げられる。
【0017】
上記一般式(ii)中、pii1は1以上10以下の整数を表すことが好ましく、1以上8以下の整数を表すことがより好ましく、1以上6以下の整数を表すことがさらに好ましい。
本実施形態における一般式(ii)の好ましい形態としては、Riia又はRiibはそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基又はアントリル基であることが好ましい。
本実施形態における一般式(ii)の好ましい形態としては、Riicは、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、フェニル基又はナフチル基であることが好ましい。
本実施形態において、一般式(ii)で表される基の一例としては、例えば、以下の一般式(ii-1)~(ii-4)で表される。
【化3】
(上記一般式(ii-1)~(ii-4)中、pii1はそれぞれ独立して、1以上15以下の整数を表す。)
【0018】
上記一般式(i)中、pi1は1以上4以下の整数を表すことが好ましく、1以上3以下の整数であることがより好ましく、1以上2以下の整数であることがさらに好ましい。
上記一般式(i)中、pi2は1以上3以下の整数を表し、1以上3以下の整数であることがさらに好ましい。
上記一般式(i)中、pi3は0以上2以下の整数を表し、0又は1であることがさらに好ましい。また、上記一般式(i)中、pi2+pi3は、1以上3以下であることが好ましい。
【0019】
本実施形態のポリインデン化合物において、上記一般式(i)で表される縮合環1つに対して化学結合した、脱離基を除くオレフィン化合物由来の不飽和結合を有する基の数は、1以上4以下であることが好ましい。
縮合環1つに対して化学結合したオレフィン化合物由来の基が上記範囲であると、熱硬化性樹脂として架橋密度を向上させることができる。
なお、縮合環1つに対する脱離基を除くオレフィン化合物由来の不飽和結合を有する基の平均値は、後述の実施例の欄に示す、H-NMR及び13C-NMRを用いて算出する。
【0020】
本実施形態のポリインデン化合物は、ポリインデン化合物全体に対する、上記一般式(i)で表される構造単位の占める割合は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、25モル%以上であることがさらに好ましい。
上記一般式(i)で表される構造単位の占める割合の算出方法は、後述の実施例の欄に示す、H-NMR及び13C-NMRを用いて算出する。
【0021】
本実施形態において、一般式(i)中のRi3はそれぞれ独立して、インデニル基又はインダニル基であり、かつ前記インデニル基又は前記インダニル基の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~12のアルキル基に置換されてもよい。
【0022】
(反応原料)
以下、本実施形態のポリインデン化合物の反応原料の構成成分である、インデン化合物及びアルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物について説明した後、ポリインデン化合物の製造方法について説明する。
<インデン化合物>
本実施形態におけるインデン化合物は、インデン環を有していればよく、具体的には、以下の一般式(a)で表されることが好ましい。
【化4】
(上記一般式(a)中、Ra1はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基を表し、pa1は0以上7以下の整数を表す。)
なお、上記一般式(a)中、角括弧全体に対してRa1が結合している態様は、角括弧内におけるインデン環の1~7位の炭素原子のいずれかにRa1が化学的に結合されてもよいことを示す。
本実施形態における好ましいインデン化合物としては、上記一般式(a)中のpa1が0であるインデン等が挙げられる。
【0023】
<オレフィン化合物>
本実施形態において、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物は、末端に少なくとも1以上の脱離基と、少なくとも1以上の不飽和結合とを有する直鎖状又は分岐状の分子構造を備え、かつアルキル基又はアリール基に置換されてもよい、炭素原子数3以上のオレフィン化合物である。
前記オレフィン化合物の炭素原子数は、3以上の30以下であることが好ましく、4以上の26以下であることがより好ましく、5以上の22以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本実施形態におけるオレフィン化合物は、具体的には、以下の一般式(b)で表されることが好ましい。
【化5】
(上記一般式(b)中、Riia、Riib及びRiicはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、pii1は1以上の整数を表し、Xは脱離基を表す。)
【0025】
上記一般式(b)中、Xは脱離基を表し、具体的には、水酸基、ハロゲン原子、エステル基(-OCO-R)、硫酸エステル基(-OSO-R)又はリン酸エステル基(-O-P(=O)-(OR)であることが好ましい。脱離基が上記の列挙した基であると、酸又は塩基共存下において、反応がスムーズに進行し、インデン化合物のインデン環に対して求電子反応等が進みやすくなる。
【0026】
上記一般式(b)中、脱離基であるXがエステル基又は硫酸エステル基(-OSO-R)である場合、R及びRとしては、炭素原子数1~12のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基又はイソヘキシル基であることがより好ましい。
【0027】
上記一般式(b)中、脱離基であるXがリン酸エステル基(-O-P(=O)-(OR)である場合、2つ存在するRは、互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよく、炭素原子数1~12のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基又はイソヘキシル基であることがより好ましい。
【0028】
上記一般式(b)中、脱離基であるXがハロゲン原子である場合、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はアスタチン原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることがより好ましい。
上記一般式(b)中、Riia、Riib、Riic及びpii1の態様及び好ましい態様は、上記一般式(ii)と同様であるため、ここでは省略する。
【0029】
本実施形態における好ましいオレフィン化合物としては、例えば、一般式(b-1)~(b-4)で表される。
【化6】
(上記一般式(b-1)~(b-4)中、Xは、ハロゲン原子、エステル基(-OCO-R)、硫酸エステル基(-OSO-R)又はリン酸エステル基(-O-P(=O)-(OR)を表し、R~Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~12のアルキル基を表し、pii1は、1以上15以下の整数である。)
【0030】
本実施形態におけるポリインデン化合物の反応原料中における、インデン化合物に対するオレフィン化合物のモル比(オレフィン化合物/インデン化合物)は、0.5~5/1であることが好ましく、より好ましくは、1~4/1である。
ポリインデン化合物の反応原料中におけるインデン化合物に対するオレフィン化合物のモル比が上記範囲であると、より低い誘電正接を実現する点で好ましい。
【0031】
本開示のポリインデン化合物の数平均分子量(Mn)は、100~10000の範囲であることが好ましく、100~5000の範囲であることがより好ましい。当該ポリインデン化合物の数平均分子量(Mn)の下限は、100、150、180、200又は250であることが好ましく、当該ポリインデン化合物の数平均分子量(Mn)の上限は、10000、5000、3000、2000、1500、1200又は980であることが好ましい。
また、ポリインデン化合物の重量平均分子量(Mw)は100~30000の範囲であることが好ましく、100~10000の範囲であることがより好ましい。
当該ポリインデン化合物の重量平均分子量(Mw)の下限は、100、250、280、320又は350であることが好ましく、当該ポリインデン化合物の重量平均分子量(Mw)の上限は、30000、10000、6000、4000、2500、1200又は990であることが好ましい。
上記数平均分子量(Mn)及び上記重量平均分子量(Mw)の好ましい範囲は、上記各上限及び各下限を任意に組み合わせした範囲でありうる。
ポリインデン化合物の数平均分子量又は重量平均分子量が上記範囲であると、より低い誘電正接を実現する点で好ましい。
本開示のポリインデン化合物は、低誘電特性及び耐熱性に優れる点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1~10の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1~7であり、さらに好ましくは1~5である。
なお、本実施形態のポリマレイミド化合物の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0032】
(ポリインデン化合物の製造方法)
以下、本開示のポリインデン化合物の製造方法について説明する。
本実施形態のポリインデン化合物は、その製法は特に限定されず、インデン化合物と、オレフィン化合物とを反応原料として使用する、あるいは、上記一般式(i)で表される構造単位を有する限りどのように製造されたものでもよい。本開示のポリインデン化合物の製造方法の一例としては、例えば、以下の工程を含む製造方法が挙げられる。
工程:酸又は塩基の存在下で、インデン化合物と、アルキル基又はアリール基に置換されてもよい、末端に脱離基を有する炭素原子数3以上の鎖状のオレフィン化合物とを反応させて、本実施形態におけるポリインデン化合物を得る工程。
前記インデン化合物と、前記オレフィン化合物の配合割合としては、得られる硬化物の製造時の成形性、硬化性の物性バランスを考慮すると、前記インデン化合物1モルに対して、前記オレフィン化合物のモル割合として、0.5~5モルが好ましく、1~4モルがより好ましい。
また、上記反応を実施する具体的方法としては、全反応原料を一括装入し、そのまま所定の温度で反応させるか、又は、オレフィン化合物と酸基又は塩基とを装入し、所定の温度に保ちつつ、インデン化合物やその他の化合物等を滴下させながら反応させる方法が一般的である。この際、滴下時間は、通常、0.1~12時間であり、6時間以下が好ましい。反応後、溶媒を使用した場合は、必要により、溶媒と未反応物を留去させて、目的物であるポリインデン化合物を得ることができ、溶媒を使用しない場合は、未反応物を留去することによって目的物であるポリインデン化合物を得ることができる。
【0033】
本実施形態のポリインデン化合物の製造方法において、酸又は塩基の選択は、使用するオレフィン化合物の種類によって適宜選択する。
例えば、反応原料として使用するオレフィン化合物が、上記一般式(b)中の脱離基Xがハロゲン原子の条件を満たすオレフィン化合物である場合(すなわち、アリルハライド等のハロゲン原子を有するオレフィン化合物である場合)、当該ハロゲン原子を有するオレフィン化合物及びインデン化合物を含有する反応原料に対して、塩基を作用させることにより、上記一般式(ii)で表される基(例えば、アリル基)がインデン化合物のインデン環に修飾する。その際、発生するハロゲン化水素によって、インデン化合物のポリマー化も同時に進行しうる。
また、例えば、反応原料として使用するオレフィン化合物が、上記一般式(b)中の脱離基Xが水酸基の条件を満たすオレフィン化合物である場合(すなわち、アリルアルコール等の水酸基を有するオレフィン化合物である場合)、当該水酸基を有するオレフィン化合物及びインデン化合物を含有する反応原料に対して、酸(例えば、ブレンステッド酸)を作用させることにより、上記一般式(ii)で表される基(例えば、シンナミル基)がインデン化合物のインデン環に修飾する。その際、酸(例えば、ブレンステッド酸)によるアルコールの脱水反応と、インデン化合物のポリマー化が同時に進行しうる。
【0034】
本実施形態において使用可能な塩基としては、有機塩基又は無機塩基のいずれでも使用できる。上記有機塩基としては、ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類;トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の炭素数1から4のアルキル基を有するアニリン誘導体;ピリジン、2,6-ルチジン等の、炭素原子数1~4のアルキル置換基を有していてもよいピリジン誘導体;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等の含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
一方、上記無機塩基としては、ナトリウムハイドライド、リチウムハイドライド等のアルカリ金属水素化物;カルシウムハイドライド等のアルカリ土類金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩;フッ化カリウム、フッ化セシウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化化合物;を挙げることができる。これらの塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において好ましい塩基としては、アルキル金属アルコキシド類、含窒素複素環化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、カリウムターシャリーブトキシド又はナトリウムターシャリーブトキシドがより好ましい。
当該塩基の添加量は、オレフィン化合物のモル数に対して1~15倍(モル)の範囲であることが好ましい。
【0035】
本実施形態において使用可能な酸としては、有機酸、無機酸又は固体酸のいずれでも使用でき、ブレンステッド酸が好ましい。上記有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸若しくはフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;3-モルホリノプロパンスルホン酸、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、10-カンファースルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸若しくはトリフルオロメタンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;リン酸ジメチル若しくはリン酸ジエチル等のアルキルリン酸;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、ラウリル硫酸等のアルキル硫酸;硫酸フェニル、フルオリド硫酸フェニル等の芳香族硫酸;シュウ酸等の種々の酸が挙げられる。
上記無機酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等が挙げられる。上記固体酸としては、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。これらの酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において好ましいブレンステッド酸としては、塩酸、硫酸、フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-アミノエタンスルホン酸、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸、3-モルホリノプロパンスルホン酸、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、10-カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、3-ピリジンスルホン酸、2-アミノエタンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸、4-メチルベンゼンスルフィン酸等が好ましい。
前記酸の添加量は、オレフィン化合物のモル数に対して0.5~15モル%の範囲であることが好ましい。
【0036】
本実施形態において、酸基又は塩基存在下での、オレフィン化合物とインデン化合物との反応温度は、通常40~200℃の範囲であればよく、60~180℃がより好ましい。
また、使用する触媒、反応条件又は反応原料の種類によって適宜反応温度を選択することができる。例えば、塩基存在下で、オレフィン化合物とインデン化合物との反応させる場合の反応温度は、20~180℃が好ましい。一方、例えば、酸存在下で、オレフィン化合物とインデン化合物との反応させる場合の反応温度は、60~180℃が好ましい。
本実施形態において、酸基又は塩基存在下での、オレフィン化合物とインデン化合物との反応時間は、通常0.5~24時間の範囲であればよいが、使用する触媒、反応条件又は反応原料の種類によって適宜反応時間を選択することができる。例えば、塩基存在下で、オレフィン化合物とインデン化合物との反応させる場合の反応時間は、0.5~24時間が好ましい。一方、例えば、酸存在下で、オレフィン化合物とインデン化合物との反応させる場合の反応時間は、0.5~24時間が好ましい。
なお、オレフィン化合物とインデン化合物との反応雰囲気は、大気又は不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)など適宜選択できる。
【0037】
本実施形態におけるインデン化合物の製造方法においては、インデン化合物(例えば、インデン又はその誘導体)が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくてもよいが、溶剤を用いることも可能である。例えば、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶剤を用いて、必要により触媒等に含まれる水分を共沸脱水させた後、溶媒を留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
【0038】
[硬化性組成物]
本開示のポリインデン化合物は、硬化性組成物を調製するために用いることができる。本開示の硬化性組成物は、上述したポリインデン化合物を含有することが好ましい。本実施形態のポリインデン化合物が、溶剤溶解性、加熱溶融時の流動性、及び、ハンドリング性に優れ、さらに、寸法安定性、低吸湿性、耐脆性、耐熱性、及び、低誘電率・低誘電正接に寄与できるため、前記ポリインデン化合物を含有する硬化性組成物より得られる硬化物は、寸法安定性、吸湿性及び誘電特性に優れる。
【0039】
本開示の硬化性組成物は、硬化剤を含有してもよく、さらに必要に応じて、硬化促進剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤、非ハロゲン系難燃剤、無機充填材、難燃剤(例えば、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤)、溶媒等の種々の配合剤を添加することができる。また、本開示の目的を損なわない範囲であれば、前記ポリインデン化合物以外に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、スチレン無水マレイン酸共重合体、ポリブタジエン及びその変性物、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル等を適宜配合することも可能である。
【0040】
[硬化物]
本開示の硬化物は、前記硬化性組成物により得られることが好ましい。前記硬化物は、前記硬化性組成物を硬化反応させて得ることができる。前記硬化性組成物は、上述した各成分(例えば、硬化剤、配合剤)を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0041】
[半導体封止材料]
本開示は、本実施形態の硬化性組成物を含有する半導体封止材料である。本実施形態の硬化性組成物を用いて得られる半導体封止材料は、本開示のポリインデン化合物を使用することにより、吸湿性、低誘電正接性率又は寸法安定性が改善されているため、製造工程における加工性や成形性、耐リフロー性に優れ、好ましい態様となる。
前記半導体封止材料に用いられる本実施形態の硬化性組成物には、無機充填剤を含有することができる。なお、前記無機充填剤の充填率としては、本実施形態の硬化性組成物100質量部に対して、例えば、無機充填剤を0.5~1200質量部の範囲で用いることができる。また、当該無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、等を挙げることができる。
【0042】
前記半導体封止材料を得る方法としては、本実施形態の硬化性組成物に、更に任意成分である添加剤とを必要に応じて、押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法などが挙げられる。
【0043】
[半導体装置]
本開示は、前記半導体封止材料の硬化物を含む半導体装置である。本実施形態の硬化性組成物を用いて得られる半導体封止材料を用いて得られる半導体装置は、本開示のポリインデン化合物を使用するため、低粘度で流動性に優れ、更に、吸湿性、熱時弾性率又は金属材料との接着性が改善されているため、製造工程における加工性や成形性、耐リフロー性に優れ、好ましい態様となる。
【0044】
前記半導体装置を得る方法としては、前記半導体封止材料を注型、又は、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに室温(20℃)~250℃の温度範囲で、加熱硬化する方法が挙げられる。
【0045】
[プリプレグ]
本開示は、補強基材、及び、前記補強基材に含浸した本実施形態の硬化性組成物の半硬化物を有するプリプレグである。上記硬化性組成物からプリプレグを得る方法としては、後述する有機溶媒を配合して、ワニス化した硬化性組成物を、補強基材(紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布など)に含浸したのち、用いた溶媒種に応じた加熱温度、好ましくは50~170℃で加熱することによって、前記硬化性組成物を半硬化(あるいは未硬化)してプリプレグを得る方法が挙げられる。この時用いる硬化性組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
本実施形態において、硬化性組成物の半硬化物は、加熱温度及び加熱時間を調整して、硬化反応を完了させずに途中で停止させることによって得られる。また、例えば、半硬化物は、例えば85%以下5%以上の硬化度でありうる。一方、本実施形態における硬化物は、半硬化物より高い硬化度を有しうる。
なお、当該半硬化物の硬化度は、硬化性組成物を加熱する際の硬化発熱量と、その半硬化物の硬化発熱量をDSCにより測定し、以下の式から算出できる。
硬化度(%)=[1-(半硬化物の硬化発熱量/硬化性組成物の硬化発熱量)]×100
【0046】
プリプレグの製造に用いる有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、下記のようにプリプレグからプリント回路基板をさらに製造する場合には、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶媒を用いることが好ましく、また、不揮発分が40~80質量%となる割合で用いることが好ましい。
【0047】
[回路基板]
本開示は、前記プリプレグ、及び、銅箔の積層体である回路基板である。本実施形態の硬化性組成物からプリント回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる。
【0048】
[ビルドアップフィルム]
本開示は、本実施形態の硬化性組成物を含有するビルドアップフィルムである。本実施形態のビルドアップフィルムを製造する方法としては、上記硬化性組成物を、支持フィルム上に塗布し、硬化性組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとすることにより製造する方法が挙げられる。
【0049】
硬化性組成物からビルドアップフィルムを製造する場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール、あるいは、スルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0050】
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は、通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0051】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の上記硬化性組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶媒を乾燥させて硬化性組成物からなる組成物層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0052】
形成される組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とすることが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0053】
なお、本実施形態における組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0054】
上記した支持フィルム(Y)及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0055】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0056】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0057】
[耐熱材料及び電子材料]
本開示のポリインデン化合物を含有する硬化性組成物により得られる硬化物が、低吸湿性を示し、かつ寸法安定性及び誘電特性に優れることから、耐熱部材又は電子部材に好適に使用可能である。特に、プリプレグ、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、導電性ペーストを用いた接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性又は寸法変化率が小さいプリプレグとして特に適している。また、前記硬化性組成物に含まれる前記ポリインデン化合物は、各種溶剤への優れた溶解性を示すことから塗料化が可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【実施例0058】
以下に、実施例を挙げて本開示をさらに詳しく説明するが、本開示は下記の実施例に何ら限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、GPC測定、H-NMR測定、13C-NMR測定及びFD-MSスペクトル測定に関しては、以下の条件等にて測定した。
【0059】
(評価方法)
<GPC測定>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成例・実施例又は比較例に記載の、ポリインデン化合物、インデン化合物、及びオレフィン化合物のGPCチャートを得た。前記GPCチャートの結果より、原料ピークの減少及び消失から、目的生成物(ポリインデン化合物)が生成していることを確認した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:以下に示す合成例・実施例等で得られた、ポリインデン化合物の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)を使用した。
【0060】
H-NMR測定>
H-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
前記H―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
13C-NMR測定>
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:150MHz
積算回数:320回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
前記13C―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
【0061】
[誘電正接の測定方法]
後述の表1に示す組成でポリインデン化合物を含有する硬化性組成物を配合・硬化し、得られた硬化物をJIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用い空洞共振法にて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHz及び10GHzでの誘電正接を測定した。
【0062】
(実施例1)ポリインデン化合物(1)の合成
撹拌機及び冷却管を備わったフラスコに、インデン116.2質量部、カリウムターシャリーブトキシド(以下、tBuOK)145.9質量部及びトルエン814.4質量部を仕込み、70℃まで加熱して混合物を得た。次に、アリルブロミド145.19質量部を70~80℃を維持しながら、前記混合物に滴下した後、70℃において3時間撹拌を続けて反応液を得た。前記反応液を80℃まで冷却した後、中和して156.2質量部の水で3回洗浄することにより、反応溶液から触媒残渣を除去した。そして、触媒残渣を除去した反応溶液を150℃まで昇温し、減圧蒸留することにより揮発分を除去して、目的物であるポリインデン化合物(1)を得た(ポリインデン化合物(1)のMn:293、Mw:597)。得られたポリインデン化合物(1)について、図1(a)にGPCチャート、図1(b)に13C-NMRチャート及び図1(c)にFS-MSチャートをそれぞれ示す。
【0063】
(実施例2)ポリインデン化合物(2)の合成
実施例1において、トルエン814.4質量部の替わりにトルエン370.7質量部、アリルブロミド145.19質量部の替わりに3-クロロ-2-メチルー1-プロペン108.7部、156.2質量部の水の替わりに181.0質量部の水に変更した以外、実施例1と同様な操作を行うことで、ポリインデン化合物(2)を得た(ポリインデン化合物(2)のMn:299、Mw:582)。得られたポリインデン化合物(2)について、図2(a)にGPCチャート、図2(b)に13C-NMRチャート及び図2(c),(d)にFS-MSチャートをそれぞれ示す。
【0064】
(実施例3)ポリインデン化合物(3)の合成
撹拌機及びディーンスターク装置と冷却管を備わったフラスコに、インデン75.7質量部、シンナミルアルコール131.2質量部、トルエン206.9質量部及びp-トルエンスルホン酸1水和物4.14質量部を仕込み、加熱して反応液を得た。反応途中で生じた水を、ディーンスターク装置を使用して除去しながら、還流温度まで昇温し、2時間撹拌を続けて前記反応溶液を得た。得られた反応液を80℃まで冷却した後、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.80質量部を使用して中和した。続いて、189.3質量部のメチルイソブチルケトンで有機層を希釈し、189.3質量部の水で有機層を3回水洗して触媒残渣を除去した後、触媒残渣を除去した反応液を150℃まで昇温、減圧により揮発分を留去することによって、ポリインデン化合物(3)を得た(ポリインデン化合物(3)のMn:370、Mw:672)。得られたポリインデン化合物(3)について、図3(a)にGPCチャート、図3(b)に13C-NMRチャート及び図3(c),(d)にFS-MSチャートをそれぞれ示す。
【0065】
(実施例4)ポリインデン化合物(4)の合成
実施例3において、インデン75.7質量部の替わりにインデン116.2質量部に、トルエン206.9質量部の替わりにトルエン245.4質量部に、シンナミルアルコール131.2質量部の替わりに3-メチル-2-ブテン-1-オール129.2部に、p-トルエンスルホン酸1水和物4.14質量部の替わりにp-トルエンスルホン酸1水和物4.91部に、49質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.80質量部の替わりに49質量%の水酸化ナトリウム2.13質量部に、メチルイソブチルケトンの仕込みを省略し、189.3質量部の水の替わりに109.2質量部の水に変更した以外、実施例3と同様な操作を行うことで、ポリインデン化合物(4)を得た(ポリインデン化合物(4)のMn:297、Mw:431)。得られたポリインデン化合物(4)について、図4(a)にGPCチャート、図4(b)に13C-NMRチャート及び図4(c),(d)にFS-MSチャートをそれぞれ示す。
【0066】
(比較例1)インデン化合物(C1)の合成
温度計、冷却管及び攪拌器を取り付けたフラスコにノルボルネン72.0質量部、DVB-810(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、ジビニルベンゼン81質量%及びエチルスチレン19質量%含有)25.0部、DVB-570(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、ジビニルベンゼン57質量%及びエチルスチレン43質量%含有)を75.0質量部仕込むことにより、ノルボルネン1モルに対し、ジビニルベンゼン0.63モル、エチルスチレンを0.37モルで仕込み量を調整した。続いて、酢酸ブチル35.6質量部及びトルエン114.7質量部を仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温し、トリフルオロボラン・ジエチルエーテル錯体を加え、同温度で6時間反応させて反応溶液を得た。反応終了後、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、水洗により触媒残渣を除去し、60℃減圧下で揮発分を除去することによりインデン化合物(C1)を得た。
【0067】
(実施例5~9及び:硬化物(1)~(5)の調製)
下記表1に示す組成比になるよう、マレイミド系樹脂(1,6'-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(大和化成工業株式会社製BMI-TMH))と、ポリインデン化合物(1)~(4)とを溶融混錬し、ジクミルパーオキサイド(以下、DCPOとも称する。)をポリインデン化合物(1)~(4)及び前記マレイミド系樹脂の合計量に対して0.5質量部添加し、厚さ2mmになるよう加工した型枠内に流し込み、200℃で3時間加熱硬化させることにより硬化物を得た。そして、上記評価方法に記載の手順に従って、表1に記載の「誘電正接」の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0068】
(比較例2:硬化物(C2))
下記表1に示す組成比になるよう、マレイミド系樹脂(1,6'-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(大和化成工業株式会社製BMI-TMH))と、インデン系化合物とを溶融混錬し、DCPOを前記マレイミド系樹脂の合計量に対して0.5質量部を加え、厚さ2mmになるよう加工した型枠内に流し込み、200℃で3時間加熱硬化させることにより硬化物を得た。そして、上記評価方法に記載の手順に従って、表1に記載の「誘電正接」の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1の結果から、実施例のポリインデン化合物を使用した場合、比較例に比べ、誘電特性に優れた硬化物が得られたことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示によれば、得られる硬化物において、誘電特性に優れたポリインダン化合物、及び当該ポリインダン化合物を含有する硬化性組成物、並びに、前記硬化性組成物を用いて得られる、硬化物、プリプレグ、ビルドアップフィルム、半導体封止材及び半導体装置を提供することができる。
図1
図2
図3
図4