(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147153
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】無機粒子含有スラリーの製造方法およびジルコニア粒子含有スラリー
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20231004BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20231004BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20231004BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231004BHJP
C01G 25/02 20060101ALI20231004BHJP
C01B 33/146 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
C01G25/02
C01B33/146
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145043
(22)【出願日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2022053322
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前 僚太
(72)【発明者】
【氏名】尾関 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】熊山 あかね
(72)【発明者】
【氏名】多田 真樹
【テーマコード(参考)】
3C158
4G048
4G072
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA04
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4G072AA28
4G072CC01
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5F057AA28
5F057BB19
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5F057EA16
5F057EA17
5F057EA26
5F057EA29
5F057EA32
(57)【要約】
【課題】粗大粒子の数を十分に低減することができる無機粒子含有スラリーの製造方法を提供する。
【解決手段】無機粒子と、分散媒と、を含み、前記無機粒子の等電点未満のpHを有する無機粒子分散液を調製する工程と、前記無機粒子分散液に対して、前記無機粒子の等電点に達しないようにアルカリ化合物を添加する工程と、を含む、無機粒子含有スラリーの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、分散媒と、を含み、前記無機粒子の等電点未満のpHを有する無機粒子分散液を調製する工程と、
前記無機粒子分散液に対して、前記無機粒子の等電点に達しないようにアルカリ化合物を添加する工程と、
を含む、無機粒子含有スラリーの製造方法。
【請求項2】
前記無機粒子は、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、セリア粒子、チタニア粒子、および炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ化合物は、アルキルアミンオキシド、アンモニア、第四級アンモニウム塩、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、含窒素複素環化合物、および塩基性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の濃度は5質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ化合物を添加する工程の後に、前記アルカリ化合物を添加する工程で得られた混合物をろ過する工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数が10000個/mL以下である、ジルコニア粒子含有スラリー。
【請求項7】
液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.98μm以上であるパーティクルの数が3000個/mL以下である、請求項6に記載のジルコニア粒子含有スラリー。
【請求項8】
液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が3.03μm以上であるパーティクルの数が1000個/mL以下である、請求項6に記載のジルコニア粒子含有スラリー。
【請求項9】
糖アルコールをさらに含む、請求項6に記載のジルコニア粒子含有スラリー。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載のジルコニア粒子含有スラリーを含む、研磨用組成物。
【請求項11】
窒化ケイ素および炭素含有材料の少なくとも一方を含む研磨対象物の研磨に用いられる、請求項10に記載の研磨用組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の研磨用組成物を用いて、窒化ケイ素および炭素含有材料の少なくとも一方を含む研磨対象物を研磨することを有する、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子含有スラリーの製造方法およびジルコニア粒子含有スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカやアルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、シリコン酸化膜(酸化ケイ素)、シリコン窒化物や、金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
最も多用されている研磨用組成物としては、例えば、砥粒として、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ(酸化珪素)粒子を含む研磨用組成物が挙げられる。シリカ粒子を含む研磨液は、汎用性が高いことが特徴であり、砥粒の含有量、研磨液のpH、添加剤等を適切に選択することで、絶縁材料および導電材料を問わず幅広い種類の材料を研磨できる。
【0004】
また、窒化ケイ素基板、タングステン等の金属、または有機膜の研磨に用いられる研磨用組成物として、ジルコニア粒子を砥粒として含む研磨用組成物も開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体素子の製造工程では、更なる配線の微細化を達成することが求められており、研磨時に発生する研磨傷や残渣が問題となっている。すなわち、研磨用組成物に多くの粗大粒子が存在すると、研磨時に研磨対象物の表面に発生する研磨傷や残渣が増加する傾向がある。そこで、研磨用組成物においては、粗大粒子を低減することが求められているが、特許文献1に係る技術では、組成物中に存在する粗大粒子の数が十分に低減されていないという問題があった。
【0007】
よって、本発明の目的は、粗大粒子の数を十分に低減することができる無機粒子含有スラリーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を進めた。その結果、無機粒子と、分散媒と、を含み、前記無機粒子の等電点未満のpHを有する無機粒子分散液を調製する工程と、前記無機粒子分散液に対して、前記無機粒子の等電点に達しないようにアルカリ化合物を添加する工程と、を含む、無機粒子含有スラリーの製造方法により、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、粗大粒子の数を十分に低減することができる無機粒子含有スラリーの製造方法が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、無機粒子と、分散媒と、を含み、前記無機粒子の等電点未満のpHを有する無機粒子分散液を調製する工程と、前記無機粒子分散液に対して、前記無機粒子の等電点に達しないようにアルカリ化合物を添加する工程と、を含む、無機粒子含有スラリーの製造方法が提供される。かような本発明の製造方法によれば、無機粒子の凝集を抑制することができ、粗大粒子の数(例えば、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数)が十分に低減された無機粒子含有スラリーを得ることができる。また、このようにして得られた無機粒子含有スラリーを含む研磨用組成物も、粗大粒子の数(例えば、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数)が十分に低減され、研磨後の研磨対象物の表面のディフェクト(例えば、残渣、スクラッチ等)の発生を抑えることができる。
【0012】
一方、アルカリ化合物に対して無機粒子分散液を添加し混合物を調製する場合や、無機粒子分散液に対して無機粒子の等電点に達するまたは等電点を超えるようにアルカリ化合物を添加し混合物を調製する場合は、無機粒子の凝集が起こり、粗大粒子の数が増加する。
【0013】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態のみには限定されず、特許請求の範囲内で種々改変することができる。本明細書に記載される実施形態は、任意に組み合わせることにより、他の実施形態とすることができる。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0014】
[無機粒子分散液を調製する工程]
本工程では、無機粒子と、分散媒と、を含み、当該無機粒子の等電点未満のpHを有する無機粒子分散液を調製する。
【0015】
<無機粒子>
本発明で用いられる無機粒子は、特に制限されないが、好ましくはpH6未満、より好ましくはpH3未満において正のゼータ電位を有する。無機粒子の具体的な例としては、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、セリア粒子、チタニア粒子、および炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく挙げられる。
【0016】
これらの無機粒子は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。また、これら無機粒子の形態は、分散媒等を含まない粒子状の形態であってもよいし、分散液の形態であってもよいし、あるいはゾル状、ゲル状、コロイド状など特に限定されない。無機粒子のさらに具体的な例としては、シリカゾル、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、ジルコニアゾル、コロイダルジルコニア、ヒュームドジルコニア、アルミナゾル、コロイダルアルミナ、ヒュームドアルミナ、セリアゾル、コロイダルセリア、ヒュームドセリア、チタニアゾル、コロイダルチタニア、ヒュームドチタニア等が挙げられる。
【0017】
無機粒子の形状は、特に制限されず、球形状であってもよいし、非球形状であってもよい。非球形状の具体例としては、三角柱や四角柱などの多角柱状、円柱状、円柱の中央部が端部よりも膨らんだ俵状、円盤の中央部が貫通しているドーナツ状、板状、中央部にくびれを有するいわゆる繭型形状、複数の粒子が一体化しているいわゆる会合型球形状、表面に複数の突起を有するいわゆる金平糖形状、ラグビーボール形状等、種々の形状が挙げられ、特に制限されない。
【0018】
無機粒子は、表面修飾されていてもよい。具体的な例としては、コロイダルシリカの表面をシランカップリング剤によって表面修飾させた粒子が挙げられる。
【0019】
コロイダルシリカの表面をシランカップリング剤によって表面修飾する方法として、以下のような固定化方法が挙げられる。例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0020】
あるいは、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0021】
上記はアニオン性基を有するコロイダルシリカ(アニオン変性コロイダルシリカ)であるが、カチオン性基を有するコロイダルシリカ(カチオン変性コロイダルシリカ)を使用してもよい。カチオン性基を有するコロイダルシリカとして、アミノ基が表面に固定化されたコロイダルシリカが挙げられる。このようなカチオン性基を有するコロイダルシリカの製造方法としては、特開2005-162533号公報に記載されているような、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカの表面に固定化する方法が挙げられる。これにより、アミノ基が表面に固定化されたコロイダルシリカ(アミノ基変性コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0022】
また、無機粒子は、結晶構造を安定して保持させるために、構造安定化剤がドープ(固溶)されたものでもよい。具体的な例としては、例えば、ジルコニア粒子に対してイットリウムもしくはその酸化物、酸化カルシウム(CaO)、または酸化マグネシウム(MgO)がドープされた粒子が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、pH6未満で正のゼータ電位を有する無機粒子が好ましく、pH3未満で正のゼータ電位を有する無機粒子がより好ましい。具体的には、カチオン変性シリカ粒子(好ましくはカチオン変性コロイダルシリカ粒子)、ジルコニア粒子(好ましくはコロイダルジルコニア粒子)、アルミナ粒子、セリア粒子、およびチタニア粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0024】
無機粒子分散液中の無機粒子の大きさは特に制限されない。例えば、無機粒子が球形状である場合には、無機粒子の平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることがさらに好ましい。また、無機粒子の平均一次粒子径は、120nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。すなわち、無機粒子の平均一次粒子径は、5nm以上120nm以下であることが好ましく、10nm以上80nm以下であることがより好ましく、15nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、無機粒子の平均一次粒子径は、例えば、BET法から算出した無機粒子の比表面積(SA)を基に、無機粒子の形状が真球であると仮定して算出することができる。
【0025】
また、無機粒子分散液中の無機粒子の平均二次粒子径は、20nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、35nm以上であることがさらに好ましい。また、無機粒子の平均二次粒子径は、250nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましい。すなわち、無機粒子の平均二次粒子径は、20nm以上250nm以下であることが好ましく、30nm以上200nm以下であることがより好ましく、35nm以上150nm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、無機粒子の平均二次粒子径は、レーザー回折散乱法により求められる粒度分布において、微粒子側から積算粒子体積が全粒子体積の50%に達するときの粒子の直径(D50、以下、単に「D50」とも称する)である。具体的には、無機粒子の平均二次粒子径は、実施例に記載の方法により測定される値を採用する。
【0026】
<分散媒>
本工程で用いられる分散媒としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類等や、これらの混合物などが例示できる。これらのうち、分散媒としては水が好ましい。すなわち、本発明のより好ましい形態によると、分散媒は水を含む。本発明のさらに好ましい形態によると、分散媒は実質的に水からなる。なお、上記の「実質的に」とは、本発明の目的効果が達成され得る限りにおいて、水以外の分散媒が含まれ得ることを意図し、より具体的には、好ましくは90質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上10質量%以下の水以外の分散媒とからなり、より好ましくは99質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上1質量%以下の水以外の分散媒とからなる。最も好ましくは、分散媒は水である。
【0027】
研磨用組成物に含まれる成分の作用を阻害しないようにするという観点から、分散媒としては、不純物をできる限り含有しない水が好ましく、具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルターを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水がより好ましい。
【0028】
本工程においては、無機粒子分散液は、上記無機粒子の等電点未満のpHを有するように調製される。無機粒子分散液のpHは、無機粒子の等電点未満のpHを有するのであれば特に制限されないが、無機粒子の等電点と無機粒子分散液のpHの差(無機粒子の等電点-無機粒子分散液のpH)が1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。
【0029】
このようなpHで分散液を調製することにより、無機粒子の凝集が生じ難く、良好な分散性が維持され、最終的に得られる無機粒子含有スラリー中の粗大粒子の数(例えば、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数)を十分に低減することができる。
【0030】
無機粒子の等電点のpHは、特に制限されないが、3.0以上であることが好ましく、4.5以上であることがより好ましく、6.0以上であることがさらに好ましく、7.0以上であることがさらにより好ましい。なお、無機粒子の等電点のpHは、1.0刻みのpH、例えば、1.0刻みのpH3.0~10.0の範囲のpHのゼータ電位測定液を調製して無機粒子のゼータ電位を測定し、ゼータ電位の符号が変化した前後のpHと、前後のpHにおけるゼータ電位から、下記の式により算出することができる。
【0031】
【0032】
ここで、pHは、株式会社堀場製作所製のpHメーター(型番:F-71)で測定することができる。また、ゼータ電位は、Malvern Instruments製のゼータ電位測定装置(商品名「Zetasizer nano ZSP」)で測定することができる。
【0033】
<pH調整剤>
上記の無機粒子と分散媒とを混合することのみで、無機粒子の等電点未満のpHが得られない場合は、本工程においてpH調整剤をさらに添加してもよい。
【0034】
pH調整剤は、pH調整機能を有する化合物であれば特に制限されず、公知の化合物を用いることができる。pH調整剤は、pH調整機能を有するものであれば特に制限されないが、例えば、酸、アルカリ等が挙げられる。
【0035】
酸としては、無機酸または有機酸のいずれを用いてもよい。無機酸としては、特に制限されないが、例えば、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸およびリン酸等が挙げられる。有機酸としては、特に制限されないが、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸および乳酸などのカルボン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸等が挙げられる。
【0036】
アルカリとしては、特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、およびテトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩、エチレンジアミンおよびピペラジンなどのアミン等が挙げられる。これらの中でも、水酸化カリウム、アンモニアが好ましい。
【0037】
これらpH調整剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0038】
pH調整剤の濃度(含有量)は、特に制限されず、pH値を上記無機粒子の等電点未満の値とすることができる量であればよい。
【0039】
無機粒子分散液の調製方法は、特に制限されず、無機粒子と、分散媒(好ましくは水)と、必要に応じて添加されるpH調整剤とを、攪拌混合して、無機粒子分散液を調製すればよい。この際、各成分の混合順序は特に制限されず、例えば、分散媒中に無機粒子を投入し攪拌混合した後、必要に応じて所望のpHになるようにpH調整剤を添加することにより無機粒子分散液が調製される。各成分を攪拌混合する際の温度は特に制限されないが、10~40℃が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0040】
本工程で得られる無機粒子分散液中の無機粒子の濃度(含有量)は、特に制限されないが、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、無機粒子分散液中の無機粒子の濃度(含有量)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。すなわち、無機粒子分散液中の無機粒子の濃度(含有量)は、0.1質量%以上10質量以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
[アルカリ化合物を添加する工程]
本工程では、上記で得られた無機粒子分散液に対して、無機粒子の等電点に達しないように、アルカリ化合物を添加する。ここで、「無機粒子の等電点に達しないように」とは、無機粒子の等電点未満のpHを維持するように、アルカリ化合物を添加することを意味する。
【0042】
アルカリ化合物の例としては、特に制限されず、具体例としては、例えば、N-ラウリル-N,N-ジメチルアミンオキシド(ラウリルジメチルアミンオキシド)、N-ミリスチル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-ラウロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-ミリスチロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド;アンモニア;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム等の炭酸塩;アジリジン、ピリジン、ピリミジン、ピロリジン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾイソキノリン、チアゾリン、イソチアゾリン、イソチアゾリノン、グアニジン、プリン、プテリジン、トリアゾール、トリアゾリジン、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、またはこれらの骨格を有する誘導体等の含窒素複素環化合物;リシン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;等が挙げられる。
【0043】
上記アルカリ化合物は、1種単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。また、上記アルカリ化合物は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0044】
好ましいアルカリ化合物の具体例としては、アンモニア、イソチアゾリノン骨格を有する含窒素複素環化合物、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化カリウム、およびアルギニンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。より好ましいアルカリ化合物の具体例としては、アンモニア、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化カリウム、およびアルギニンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0045】
添加するアルカリ化合物の形態は、特に制限されず、粉末状、粒状、液状、水溶液状のいずれであってもよい。しかしながら、無機粒子分散液中で効率よく混合させるという観点から、水溶液状であることが好ましい。以下、アルカリ化合物が水溶液状である形態の場合について、詳述する。
【0046】
アルカリ化合物を含む水溶液(以下、アルカリ水溶液とも称する)を用いる場合、当該水溶液のpHは、特に制限されないが、7.0以上13.0以下であることが好ましく、9.0以上11.0以下であることがより好ましい。アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度(含有量)は、上記pHの好ましい範囲を満足する量であれば、特に制限されない。
【0047】
無機粒子分散液に対してアルカリ水溶液を添加する際は、無機粒子分散液を攪拌しながら添加することが好ましい。アルカリ水溶液の添加速度は、無機粒子の等電点に達しないような速度であれば、特に制限されない。なお、無機粒子分散液のpHを、pHメーター等で追跡しながらアルカリ水溶液の添加を行ってもよい。
【0048】
アルカリ水溶液を添加する際の温度は特に制限されないが、10~40℃が好ましく、混合を速やかに行うために加熱してもよい。また、アルカリ水溶液添加後の混合時間も特に制限されない。
【0049】
このような製造方法により得られた混合物は、粗大粒子の数(例えば、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数)が低減されたものとなり、そのまま無機粒子含有スラリーとして、各用途に使用することができる。
【0050】
[無機粒子含有スラリーをろ過する工程]
上記したように、アルカリ化合物を添加する工程後に得られた混合物は、粗大粒子の数が低減されたものとなっており、そのまま無機粒子含有スラリーとして各用途に使用することができる。しかしながら、本発明の製造方法は、上記のアルカリ化合物を添加する工程の後に、得られた混合物をろ過する工程をさらに含んでもよい。本工程を行うことにより、最終的に得られる無機粒子含有スラリー中の粗大粒子の数(例えば、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数)をさらに低減することができる。
【0051】
本工程で使用されるフィルターのメディア形状は特に制限されず、種々の構造、形状、機能を有するフィルターを適宜採用することができる。具体例としては、ろ過性に優れるプリーツ型やデプス型、デプスプリーツ型、メンブレン型、吸着型のフィルターを採用することが好ましい。フィルターの構造は特に制限されず、袋状のバッグ式であってもよく、中空円筒状のカートリッジ式であってもよい。カートリッジ式フィルターは、ガスケットタイプであってもよく、Oリングタイプであってもよい。ろ過の条件(例えばろ過差圧、ろ過速度)については、この分野の技術常識に基づき、目標品質や生産効率等を考慮して適宜設定すればよい。
【0052】
フィルターの目開き(孔径)は、歩留まり向上の観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上である。また、異物や凝集物の除去効果を高める観点から、フィルターの目開き(孔径)は、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm未満である。フィルターの材質は特に制限されず、例えば、セルロース、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ガラス等が挙げられる。
【0053】
ろ過の方法も特に制限されず、例えば、常圧で行う自然ろ過の他、吸引ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等の公知のろ過方法を適宜採用することができる。
【0054】
フィルターは市販品を用いることができる。市販品のフィルターの例としては、例えば、ポリプロピレン不織布を濾材として備える株式会社ロキテクノ製のHCシリーズ、BOシリーズ、SLFシリーズ、SRLシリーズ、MPXシリーズ等が挙げられる。
【0055】
本発明に係る無機粒子含有スラリーは、分散剤を含むことが好ましい。ここで、分散剤は、特に制限されず、所望の用途、目的に応じて適切に選択できる。分散剤の種類としては、リンゴ酸、マロン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、糖アルコール等が挙げられる。これら分散剤の中でも、貯蔵後の無機粒子の分散性(特にジルコニア粒子の分散性)の観点から、糖アルコールが好ましい。分散剤を添加するタイミングは、特に制限されない。
【0056】
無機粒子(特にジルコニア粒子)表面は通常疎水性であり、無機粒子同士が凝集しやすい。無機粒子(特にジルコニア粒子)に糖アルコールを混合すると、無機粒子(特にジルコニア粒子)の疎水表面に糖アルコールの疎水性基(炭化水素基)が付着して糖アルコールの水酸基がジルコニア粒子の外側に配向し、ジルコニア粒子表面が親水化される。この親水化により、無機粒子(特にジルコニア粒子)は分散媒(特に水)と混ざりやすくなり、粒子として別個に存在できる。また、無機粒子(特にジルコニア粒子)の表面に糖アルコールが付着して、立体障害が起こり、無機粒子(特にジルコニア粒子)同士の凝集が抑制できる。なお、上記無機粒子(特にジルコニア粒子)の分散性向上メカニズムは推測であり、本発明は上記推測に限定されない。
【0057】
すなわち、本発明の一実施形態では、無機粒子含有スラリーは、糖アルコールをさらに含む。
【0058】
糖アルコールは、特に制限されないが、分子内に3個以上のヒドロキシ基を有することが好ましい。具体的には、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン、アドニトール、マルチトール、トレイトール、エリトリトール、アラビニトール、リビトール、キシリトール、イジトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、ガラクチトール、ズルシトール、タリトール、アリトール、ペルセイトール、ボレミトール、D-エリトロ-L-ガラオクチトール、D-エリトロ-L-タロオクチトール、エリトロマンノオクチトール、D-トレオ-L-ガラオクチトール、D-アラボ-D-マンノノニトール、D-グルコ-D-ガラデシトール、ボルネシトール、コンズリトール、イノシトール、オノニトール、ピニトール、ピンポリトール、クェブラキトール、バリエノール、ビスクミトール等が挙げられる。中でも直鎖構造の糖アルコールがより好ましく、具体的にはキシリトール、ソルビトール、アドニトール、トレイトール、エリトリトール、アラビニトール、リビトール、イジトール、マンニトール、ガラクチトール、タリトール、アリトール、ペルセイトールが好ましく、キシリトール、ソルビトールがより好ましく、ソルビトールがさらに好ましい。これら糖アルコールは、1種単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0059】
糖アルコールの分子量は、特に制限されないが、80以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、120以上であることがさらに好ましい。また、糖アルコールの分子量は、特に制限されないが、1000未満であることが好ましく、600以下であることがより好ましく、400以下であることがさらに好ましい。すなわち、糖アルコールの分子量は、80以上1000未満であることが好ましく、100以上600以下であることがより好ましく、120以上400以下であることがさらに好ましく、200以下が最も好ましい。
【0060】
本発明に係る無機粒子含有スラリーが分散剤(特に糖アルコール)をさらに含む場合の、分散剤(特に糖アルコール)の濃度(含有量)は、特に制限されず、所望の用途、目的に応じて適切に選択できる。例えば、分散剤(特に糖アルコール)の濃度(含有量)は、無機粒子含有スラリーの全質量に対して、例えば、0.001質量%(10ppm)以上、好ましくは0.005質量%(50ppm)以上、より好ましくは0.005質量%(50ppm)を超え、さらに好ましくは0.008質量%(80ppm)以上である。また、無機粒子含有スラリー中の分散剤(特に糖アルコール)の濃度(含有量)の上限は、無機粒子含有スラリーの全質量に対して、例えば、30質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは0.5質量%(5000ppm)以下、さらに好ましくは0.1質量%(1000ppm)以下、特に好ましくは0.05質量%(500ppm)以下である。すなわち、分散剤(特に糖アルコール)の濃度(含有量)は、無機粒子含有スラリーの全質量に対して、例えば、0.001質量%以上30質量%以下、好ましくは0.005質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.005質量%を超え0.5質量%以下、さらに好ましくは0.008質量%以上0.1質量%以下、特に好ましくは0.008質量%以上0.05質量%以下である。分散剤の含有量がこのような範囲であれば、砥粒(特にジルコニア粒子)を長期間貯蔵した後であっても良好な分散性を維持できる。
【0061】
上記の各工程を含む製造方法により得られる無機粒子含有スラリーは、粗大粒子の数が少ないものとなる。例えば、無機粒子含有スラリーにおいて、液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数は、通常10000個/mL以下、好ましくは7000個/mL以下、より好ましくは5000個/mL以下、さらにより好ましくは3000個/mL以下である。
【0062】
また、例えば、無機粒子含有スラリーにおいて、液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.98μm以上であるパーティクルの数は、通常3000個/mL以下、好ましくは1000個/mL以下、より好ましくは600個/mL以下、さらに好ましくは400個/mL以下、さらにより好ましくは300個/mL以下、特に好ましくは250個/mL以下である。例えば、無機粒子含有スラリーにおいて、液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が3.03μm以上であるパーティクルの数は、好ましくは1000個/mL以下、より好ましくは700個/mL以下、さらに好ましくは400個/mL以下、さらにより好ましくは300個/mL以下、特に好ましくは100個/mL以下、最も好ましくは30個/mL以下である。
【0063】
上記のパーティクルの数は、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
【0064】
最終的に得られる無機粒子含有スラリー中の無機粒子の大きさは、特に制限されない。例えば、無機粒子が球形状である場合には、無機粒子の平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることがさらに好ましい。また、無機粒子の平均一次粒子径は、120nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。すなわち、無機粒子の平均一次粒子径は、5nm以上120nm以下であることが好ましく、10nm以上80nm以下であることがより好ましく、15nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
【0065】
最終的に得られる無機粒子含有スラリー中の無機粒子の平均二次粒子径は、20nm以上250nm以下であることが好ましく、30nm以上200nm以下であることがより好ましく、35nm以上150nm以下であることがさらに好ましく、40nm以上140nm以下であることがさらにより好ましい。無機粒子の粒子径が20nm以上であると、研磨用組成物に用いた場合に充分な研磨速度が得られる。無機粒子の粒子径が250nm以下であると、研磨用組成物に用いた場合に研磨対象物の表面に発生するスクラッチ(引っ掻き傷)や、研磨対象物の表面の残渣を低減することができる。なお、本明細書において、無機粒子の粒子径は、レーザー回折散乱法により求められる粒度分布において、微粒子側から積算粒子体積が全粒子体積の50%に達するときの粒子の直径(D50、以下、単に「D50」とも称する)を指す。より具体的には、無機粒子のD50は、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
【0066】
最終的に得られる無機粒子含有スラリー中の無機粒子の濃度(含有量)は、特に制限されないが、無機粒子含有スラリーの総質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.08質量%以上であることがよりさらに好ましく、0.1質量%超であることが特に好ましい。また、無機粒子含有スラリー中の無機粒子の濃度(含有量)の上限は、無機粒子含有スラリーの総質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがさらにより好ましく、10質量%未満であることが特に好ましい。すなわち、無機粒子含有スラリー中の無機粒子の濃度(含有量)は、無機粒子含有スラリーの総質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.08質量%以上10質量%以下であることがさらにより好ましく、0.1質量%超10質量%未満であることが特に好ましい。
【0067】
最終的に得られる無機粒子含有スラリー中の無機粒子のゼータ電位(ζ電位)は正であることが好ましい。具体的には、無機粒子のゼータ電位(ζ電位)の下限は、10mV以上が好ましく、15mV以上がより好ましく、20mV以上がさらに好ましく、25mV以上が特に好ましい。また、無機粒子のゼータ電位(ζ電位)の上限は、特に制限されないが、70mV以下が好ましく、65mV以下がより好ましく、50mV以下がさらに好ましく、40mV未満が特に好ましい。すなわち、無機粒子含有スラリー中の無機粒子のゼータ電位(ζ電位)は、10mV以上70mV以下が好ましく、15mV以上65mV以下がより好ましく、20mV以上50mV以下がさらに好ましく、25mV以上40mV未満が特に好ましい。
【0068】
最終的に得られる無機粒子含有スラリーのpHは、特に制限されず、通常、1.0以上8.0以下であり、3.0以上6.0以下であることが好ましい。
【0069】
[用途]
本発明に係る製造方法により得られる無機粒子含有スラリーは、研磨用組成物に好適に用いられ、無機粒子が砥粒として用いられる半導体基板の研磨用組成物として特に好適に用いられる。
【0070】
上記で説明した本発明に係る製造方法は、主に研磨用組成物に用いられるジルコニア含有スラリーの製造に特に適している。得られるジルコニア粒子含有スラリーは、粗大粒子の数(例えば、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数)が非常に少ないものとなる。また、当該スラリーを用いて得られる研磨用組成物も、粗大粒子の数が低減されたものとなり、この研磨用組成物を用いた研磨の後に得られる研磨済研磨対象物の表面のディフェクト(例えば、残渣、スクラッチ等)を低減することができる。以下、ジルコニア粒子含有スラリーおよびこれを含む研磨用組成物、ならびに当該研磨用組成物を用いた研磨方法について説明する。
【0071】
[ジルコニア粒子含有スラリー]
<ジルコニア粒子>
本発明に係るジルコニア粒子含有スラリーは、ジルコニア粒子を含む。ジルコニア粒子は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、ジルコニア粒子は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0072】
なお、通常、ジルコニアは、不可避不純物であるハフニア(HfO2)を含む。本明細書中、含有量など組成に関連した数値は、不可避不純物であるハフニア(HfO2)をジルコニア(ZrO2)とみなして算出される数値である。
【0073】
ジルコニア粒子は、ジルコニアゾル粒子であってもよく、コロイダルジルコニア粒子であってもよく、ヒュームドジルコニア粒子であってもよいが、コロイダルジルコニア粒子であることが好ましい。また、ジルコニア粒子は、ドープされていないか、あるいは、結晶構造の安定化のために、例えば、イットリウム(Y)もしくはその酸化物、酸化カルシウム、または酸化マグネシウム等の構造安定化剤でドープ(固溶)されていてもよい。なお、ジルコニア粒子の結晶構造は、特に制限されず、単斜晶、正方晶、立方晶、またはこれらが任意の割合で混合した形態のいずれであってもよい。
【0074】
ジルコニア粒子の形状は、特に制限されず、球形状であってもよいし、非球形状であってもよい。非球形状の具体例としては、三角柱や四角柱などの多角柱状、円柱状、円柱の中央部が端部よりも膨らんだ俵状、円盤の中央部が貫通しているドーナツ状、板状、中央部にくびれを有するいわゆる繭型形状、複数の粒子が一体化しているいわゆる会合型球形状、表面に複数の突起を有するいわゆる金平糖形状、棒状、菱形形状、角状、ラグビーボール形状等、種々の形状が挙げられ、特に制限されない。
【0075】
ジルコニア粒子は、一次粒子および/または二次粒子を含む凝集体である。凝集体は個々の粒子の組み合わせから形成され得、これらの個々の粒子は、当技術分野では一次粒子として知られているが、粒子の凝集した組み合わせは、当技術分野では二次粒子として知られている。研磨用組成物中のジルコニア粒子は、一次粒子の形態、または一次粒子の凝集体である二次粒子の形態であり得る。あるいは、ジルコニア粒子は、一次粒子の形態および二次粒子の形態の両方で存在し得る。好ましい実施形態では、ジルコニア粒子は、研磨用組成物中に少なくとも部分的に二次粒子の形態で存在する。
【0076】
ジルコニア粒子含有スラリーに含まれるジルコニア粒子の大きさは、特に制限されない。例えば、ジルコニア粒子が球形状である場合には、ジルコニア粒子の平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることがさらに好ましい。また、ジルコニア粒子の平均一次粒子径は、120nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。すなわち、ジルコニア粒子の平均一次粒子径は、5nm以上120nm以下であることが好ましく、10nm以上80nm以下であることがより好ましく、15nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
【0077】
ジルコニア粒子含有スラリーに含まれるジルコニア粒子の平均二次粒子径は、20nm以上250nm以下であることが好ましく、30nm以上200nm以下であることがより好ましく、35nm以上150nm以下であることがさらに好ましく、40nm以上140nm以下であることがさらにより好ましい。ジルコニア粒子の粒子径が20nm以上であると、研磨用組成物に用いた場合に充分な研磨速度が得られる。ジルコニア粒子の粒子径が250nm以下であると、研磨用組成物に用いた場合に研磨対象物の表面に発生するスクラッチ(引っ掻き傷)や、研磨対象物表面の残渣を抑制することができる。
【0078】
ジルコニア粒子含有スラリー中のジルコニア粒子の濃度(含有量)は、特に制限されないが、ジルコニア粒子含有スラリーの総質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.08質量%以上であることがよりさらに好ましく、0.1質量%超であることが特に好ましい。また、ジルコニア粒子含有スラリー中のジルコニア粒子の濃度(含有量)の上限は、ジルコニア粒子含有スラリーの総質量に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることがさらにより好ましく、10質量%未満であることが特に好ましい。すなわち、ジルコニア粒子含有スラリー中のジルコニア粒子の濃度(含有量)は、ジルコニア粒子含有スラリーの総質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましく、0.08質量%以上10質量%以下であることがさらにより好ましく、0.1質量%超10質量%未満であることが特に好ましい。
【0079】
ジルコニア粒子含有スラリー中のジルコニア粒子のゼータ電位(ζ電位)は正であることが好ましい。具体的には、ジルコニア粒子のゼータ電位(ζ電位)の下限は、10mV以上が好ましく、15mV以上がより好ましく、20mV以上がさらに好ましく、25mV以上が特に好ましい。また、ジルコニア粒子のゼータ電位(ζ電位)の上限は、特に制限されないが、70mV以下が好ましく、65mV以下がより好ましく、50mV以下がさらに好ましく、40mV未満が特に好ましい。すなわち、ジルコニア粒子含有スラリー中のジルコニア粒子のゼータ電位(ζ電位)は、10mV以上70mV以下が好ましく、15mV以上65mV以下がより好ましく、20mV以上50mV以下がさらに好ましく、25mV以上40mV未満が特に好ましい。
【0080】
本明細書において、ジルコニア粒子のゼータ電位は、上記無機粒子のゼータ電位と同様の方法によって測定される値を採用する。ジルコニア粒子のゼータ電位は、ジルコニア粒子の結晶構造、研磨用組成物のpH等により調整することができる。
【0081】
<分散媒>
ジルコニア粒子含有スラリーに含まれる分散媒は、上記無機粒子含有スラリーで説明した分散媒と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、ジルコニア粒子含有スラリーに含まれ得る他の添加剤も、上記の無機粒子含有スラリーの項で説明した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0082】
ジルコニア粒子含有スラリーのpHは、特に制限されず、通常、2.0以上8.0以下であり、3.0以上6.0以下であることが好ましい。
【0083】
当該ジルコニア粒子含有スラリーは、粗大粒子の数が少ないものとなる。よって、本発明の他の一実施形態によれば、液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数が10000個/mL以下である、ジルコニア粒子含有スラリーが提供される。
【0084】
当該ジルコニア粒子含有スラリーにおいて、液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数は、通常10000個/mL以下であり、好ましくは7000個/mL以下であり、より好ましくは5000個/mL以下であり、さらに好ましくは3000個/mL以下である。
【0085】
また、例えば、当該ジルコニア粒子含有スラリーにおいて、液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.98μm以上であるパーティクルの数は、通常3000個/mL以下であり、好ましくは1000個/mL以下であり、より好ましくは600個/mL以下であり、さらに好ましくは400個/mL以下、さらにより好ましくは300個/mL以下、特に好ましくは250個/mL以下である。例えば、当該ジルコニア粒子含有スラリーにおいて、液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が3.03μm以上であるパーティクルの数は、通常1000個/mL以下であり、好ましくは700個/mL以下であり、より好ましくは400個/mL以下であり、さらに好ましくは300個/mL以下、特に好ましくは100個/mL以下、最も好ましくは30個/mL以下である。
【0086】
本発明に係るジルコニア粒子含有スラリーは、上記したようなリンゴ酸、マロン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、糖アルコール等の無機粒子の凝集を抑制し得るような分散剤をさらに含んでもよい。これら分散剤の中でも、糖アルコールが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、ジルコニア含有スラリーは、糖アルコールをさらに含む。
【0087】
糖アルコールの種類や好ましい分子量、ジルコニア粒子含有スラリー中の分散剤(特に糖アルコール)の好ましい濃度(含有量)の範囲等は、上記無機粒子含有スラリーにおいて説明した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0088】
[研磨用組成物]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、上記のジルコニア粒子含有スラリーを含む。換言すれば、本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、および必要に応じて添加される他の添加剤を含む。本発明に係る研磨用組成物は、粗大粒子の数(例えば、粒子径が1.01μm以上のパーティクルの数)が少なく、研磨後に得られる研磨済研磨対象物の表面のディフェクト(例えば、残渣、スクラッチ等)を低減することができる。また、窒化ケイ素および炭素含有材料の少なくとも一方を含む研磨対象物を、速い研磨速度で研磨することができる。
【0089】
本発明に係る研磨用組成物は、典型的には研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。本発明に係る研磨用組成物は、例えば、希釈(典型的には、水により希釈)して研磨液として使用されるものでもよく、そのまま研磨液として使用されるものでもよい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨に用いられる濃縮液(ワーキングスラリーの原液)との双方が包含される。上記濃縮液の濃縮倍率は、例えば、体積基準で2倍~100倍程度とすることができ、通常は1.5倍~20倍、1.5倍~10倍、2倍~10倍、または2倍~5倍程度が適当である。
【0090】
<研磨対象物>
本発明に係る研磨対象物は、窒化ケイ素(Si3N4)および炭素含有材料の少なくとも一方を含むことが好ましい。当該用途において、本発明に係る研磨用組成物は、特に有効な効果を奏する。
【0091】
炭素含有材料としては、特に制限されないが、アモルファス炭素(アモルファスカーボン)、スピンオンカーボン(SOC)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ナノ結晶ダイヤモンド、グラフェン;低誘電率(Low-k)材料であるSiOC(SiO2にCをドープした、炭素含有酸化ケイ素)、炭化ケイ素;等が挙げられる。これらの中でも、アモルファス炭素、スピンオンカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、またはSiOCが好ましい。
【0092】
炭素含有材料を含む膜は、CVD、PVD、スピンコート法等によって形成することができる。
【0093】
本発明に係る研磨対象物は、炭素含有材料以外に、他の材料をさらに含んでもよい。他の材料の例としては、窒化ケイ素以外の窒素を含む材料、酸化ケイ素、単結晶シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)、n型またはp型不純物がドープされた多結晶シリコン、n型またはp型不純物がドープされた非晶質シリコン、金属単体、SiGe等が挙げられる。
【0094】
窒素を含む材料としては、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)等が挙げられる。
【0095】
酸化ケイ素を含む研磨対象物の例としては、例えばオルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)タイプ酸化ケイ素膜(以下、「TEOS」、「TEOS膜」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid Thermal Oxidation)膜等が挙げられる。
【0096】
金属単体の例としては、例えば、タングステン、銅、コバルト、ハフニウム、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等が挙げられる。
【0097】
研磨対象物は、市販品を用いてもよいし、または公知の方法により製造してもよい。
【0098】
<ジルコニア粒子>
本発明に係る研磨用組成物に含まれるジルコニア粒子は、研磨対象物を機械的に研磨する作用を有する。ジルコニア粒子の詳細(結晶構造、構造安定化剤、粒子径、ゼータ電位等)は、上記ジルコニア粒子含有スラリーの項で説明したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0099】
研磨用組成物中のジルコニア粒子の濃度(含有量)は、特に制限されない。そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合には、研磨用組成物中のジルコニア粒子の含有量の下限は、研磨用組成物の総質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.08質量%以上であることがよりさらに好ましく、0.1質量%超であることが特に好ましい。また、研磨用組成物中のジルコニア粒子の濃度(含有量)の上限は、研磨用組成物の総質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、4質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることがさらにより好ましく、1質量%未満であることが特に好ましい。すなわち、研磨用組成物中のジルコニア粒子の濃度(含有量)は、研磨用組成物の総質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%以上4質量%以下であることがさらに好ましく、0.08質量%以上1質量%以下であることがさらにより好ましく、0.1質量%超1質量%未満が特に好ましい。ジルコニア粒子の含有量がこのような範囲であれば、窒化ケイ素および炭素含有材料をより高い研磨速度で研磨することができる。また、研磨後のディフェクト(例えば、残渣、スクラッチ等)を低減することができる。
【0100】
また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液、ワーキングスラリーの原液)の場合、ジルコニア粒子の濃度(含有量)は、保存安定性や濾過性等の観点から、通常は、30質量%以下であることが適当であり、25質量%以下であることがより好ましい。また、濃縮液とすることの利点を活かす観点から、ジルコニア粒子の濃度(含有量)は、好ましくは1質量%を超え、より好ましくは2質量%以上である。
【0101】
なお、研磨用組成物が2種以上のジルコニア粒子を含む場合、ジルコニア粒子の濃度(含有量)は、これらの合計量を意図する。
【0102】
本発明に係る研磨用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、ジルコニア粒子以外の他の砥粒をさらに含んでもよい。かような他の砥粒は、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、例えば、未変性のシリカ、カチオン変性シリカ、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。当該他の砥粒は、1種単独でもまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。また、当該他の砥粒は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0103】
ただし、当該他の砥粒の含有量は、砥粒の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。最も好ましくは、他の砥粒の含有量が0質量%であること、すなわち砥粒がジルコニア粒子のみからなる形態である。
【0104】
[pHおよびpH調整剤]
本発明に係る研磨用組成物のpHは、好ましくは7未満である。pHが7未満であれば、窒化ケイ素および炭素含有材料の研磨速度を高く維持できる。研磨用組成物のpHは、6.5以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、さらに好ましくは6.0未満であることがさらに好ましい。また、当該pHの下限は、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物のpHは、1.0以上6.5以下であることが好ましく、2.0以上6.0以下であることがより好ましく、2.5以上6.0未満であることがさらに好ましい。所望の成分を混合によっては上記の所望のpHが得られない場合、本発明の研磨用組成物は、pH調整剤を含んでもよい。すなわち、本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、pH調整剤をさらに含む。本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒およびpH調整剤から実質的に構成される。ここで、「研磨用組成物が、ジルコニア粒子、分散媒およびpH調整剤から実質的に構成される」とは、ジルコニア粒子、分散媒およびpH調整剤の合計含有量が、研磨用組成物に対して、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意図する。好ましくは、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒およびpH調整剤から構成される(上記合計含有量=100質量%)。
【0105】
pH調整剤は、無機酸、有機酸、およびアルカリ(塩基)のいずれであってもよい。pH調整剤は、1種単独でも、または2種以上組み合わせても用いることができる。
【0106】
pH調整剤として使用できる無機酸の具体例としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、およびリン酸が挙げられる。これらのうち、塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸が好ましく、硝酸がより好ましい。
【0107】
pH調整剤として使用できる有機酸の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2-フランカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、およびイセチオン酸等が挙げられる。
【0108】
無機酸または有機酸の代わりにあるいは無機酸または有機酸と組み合わせて、無機酸または有機酸のアルカリ金属塩等の塩をpH調整剤として用いてもよい。弱酸と強塩基、強酸と弱塩基、または弱酸と弱塩基の組み合わせの場合、pHの緩衝作用が期待できる。
【0109】
pH調整剤として使用できるアルカリ(塩基)の具体例としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。pH調整剤の添加量は、特に制限されず、研磨用組成物が所望のpHとなるように適宜調整すればよい。
【0110】
研磨用組成物のpHは、例えばpHメーターにより測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0111】
[その他の成分]
本発明に係る研磨用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、分散剤、酸化剤、錯化剤、界面活性剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物に用いられ得る公知の添加剤をさらに含有してもよい。これらの中でも、研磨用組成物は、酸化剤および防カビ剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。本発明に係る研磨用組成物は、酸性である。このため、研磨用組成物は、防カビ剤を含むことがより好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、ならびにpH調整剤、酸化剤および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から実質的に構成される。本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤、ならびに酸化剤および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される。ここで、「研磨用組成物が、ジルコニア粒子、分散媒、ならびにpH調整剤、酸化剤および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から実質的に構成される」および「研磨用組成物が、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤、ならびに酸化剤および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される」とは、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤、酸化剤および防カビ剤(含む場合)の合計含有量が、研磨用組成物に対して、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意図する。好ましくは、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤、ならびに酸化剤および防カビ剤(含む場合)の少なくとも一方から構成される(上記合計含有量=100質量%)。
【0112】
<酸化剤>
酸化剤は、研磨対象物の表面を酸化する作用を有し、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度をより向上させうる。
【0113】
酸化剤の例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、オゾン水、銀(II)塩、鉄(III)塩、過マンガン酸、クロム酸、重クロム酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過硫酸、ジクロロイソシアヌル酸およびそれらの塩等が挙げられる。これら酸化剤は、1種単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。これらの中でも、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過ヨウ素酸、次亜塩素酸、およびジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが好ましく、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムがより好ましい。
【0114】
本発明の研磨用組成物が酸化剤をさらに含む場合の、研磨用組成物中の酸化剤の濃度(含有量)は、特に制限されない。例えば、ワーキングスラリー(研磨スラリー)では、研磨用組成物中の酸化剤の濃度(含有量)は、研磨用組成物の全質量に対して、0.1質量%以上4質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、有機材料をより高い研磨速度で研磨することができる。また、研磨後のスクラッチ数を低減することができる。なお、研磨用組成物が2種以上の酸化剤を含む場合には、酸化剤の濃度(含有量)は、これらの合計量を意図する。
【0115】
<防カビ剤(防腐剤)>
防カビ剤(防腐剤)は、特に制限されず、所望の用途、目的に応じて適切に選択できる。具体的には、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)等のイソチアゾリノン系防腐剤、およびフェノキシエタノール等が挙げられる。なお、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)等のイソチアゾリノン系防腐剤は、pH調整剤(アルカリ化合物)としての役割も果たし得る。
【0116】
上記防カビ剤(防腐剤)は、単独で使用されてもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0117】
研磨用組成物が防カビ剤(防腐剤)を含む場合の、研磨用組成物中の防カビ剤(防腐剤)の濃度(含有量)は、特に制限されない。例えば、そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合には、研磨用組成物中の防カビ剤(防腐剤)の濃度(含有量)の下限は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。また、防カビ剤(防腐剤)の濃度(含有量)の上限は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。すなわち、研磨用組成物中の防カビ剤(防腐剤)の濃度(含有量)は、好ましくは0.001質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上1質量%未満である。このような範囲であれば、微生物を不活性化または破壊するのに十分な効果が得られる。
【0118】
また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液、ワーキングスラリーの原液)の場合、防カビ剤(防腐剤)の濃度(含有量)は、研磨速度の向上等の観点から、通常は、10質量%以下であることが適当であり、5質量%以下であることがより好ましい。また、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減等の観点から、防カビ剤(防腐剤)の濃度(含有量)は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。
【0119】
なお、研磨用組成物が2種以上の防カビ剤(防腐剤)を含む場合には、上記濃度(含有量)はこれらの合計量を意図する。
【0120】
本発明に係る研磨用組成物は、上記したようなリンゴ酸、マロン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、糖アルコール等の無機粒子の凝集を抑制し得るような分散剤をさらに含んでもよい。これら分散剤の中でも、糖アルコールが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、糖アルコールをさらに含む。
【0121】
糖アルコールの種類や好ましい分子量は、上記無機粒子含有スラリーにおいて説明した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0122】
すなわち、本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、分散剤、ならびにpH調整剤、酸化剤および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から実質的に構成される。本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤および分散剤から実質的に構成される。本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤、分散剤、ならびに酸化剤および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される。ここで、「研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤および分散剤から実質的に構成される」、「研磨用組成物が、ジルコニア粒子、分散媒、分散剤、ならびにpH調整剤、酸化剤および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から実質的に構成される」および「研磨用組成物が、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤、分散剤、ならびに酸化剤および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される」とは、ジルコニア粒子、分散媒、分散剤、ならびにpH調整剤、酸化剤および防カビ剤(含む場合)の合計含有量が、研磨用組成物に対して、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意図する。好ましくは、研磨用組成物は、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤および分散剤から構成される(上記合計含有量=100質量%)(実施例)。好ましくは、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、分散剤、ならびにpH調整剤、酸化剤および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から構成される(上記合計含有量=100質量%)。好ましくは、研磨用組成物は、ジルコニア粒子、分散媒、pH調整剤、分散剤、ならびに酸化剤および防カビ剤の少なくとも一方から構成される(上記合計含有量=100質量%)。
【0123】
好ましい分散剤である糖アルコールの具体的な種類は、上記で説明した内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0124】
本発明に係る研磨用組成物が分散剤(特に糖アルコール)をさらに含む場合の、分散剤(特に糖アルコール)の濃度(含有量)は、特に制限されず、所望の用途、目的に応じて適切に選択できる。例えば、例えば、ワーキングスラリー(研磨スラリー)では、研磨用組成物中の分散剤(特に糖アルコール)の濃度(含有量)は、研磨用組成物の全質量に対して、例えば、0.001質量%(10ppm)以上、好ましくは0.005質量%(50ppm)以上、より好ましくは0.005質量%(50ppm)を超え、さらに好ましくは0.008質量%(80ppm)以上である。また、研磨用組成物中の分散剤(特に糖アルコール)の濃度(含有量)の上限は、研磨用組成物の全質量に対して、例えば、30質量%以下であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは0.5質量%(5000ppm)以下、さらに好ましくは0.1質量%(1000ppm)以下、特に好ましくは0.05質量%(500ppm)以下である。すなわち、分散剤(特に糖アルコール)の濃度(含有量)は、研磨用組成物の全質量に対して、例えば、0.001質量%以上30質量%以下、好ましくは0.005質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.005質量%を超え0.5質量%以下、さらに好ましくは0.008質量%以上0.1質量%以下、特に好ましくは0.008質量%以上0.05質量%以下である。分散剤の含有量がこのような範囲であれば、砥粒(特にジルコニア粒子)を長期間貯蔵した後であっても良好な分散性を維持できる。
【0125】
[研磨用組成物の製造方法]
本実施形態に係る研磨用組成物の製造方法は、特に制限されず、例えば、ジルコニア粒子含有スラリー、および必要に応じて他の添加剤を攪拌混合することにより得ることができる。各成分の詳細は上記の通りである。
【0126】
各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も、均一混合できれば特に制限されない。
【0127】
[研磨方法および半導体基板の製造方法]
上記のように、本実施形態に係る研磨用組成物は、窒化ケイ素および炭素含有材料を有する研磨対象物の研磨に特に好適に用いられる。よって、本発明は、窒化ケイ素および炭素含有材料の少なくとも一方を含む研磨対象物を、本実施形態に係る研磨用組成物で研磨する研磨方法を提供する。また、本発明は、窒化ケイ素および炭素含有材料の少なくとも一方を含む半導体基板を上記研磨方法により研磨することを有する、半導体基板の製造方法を提供する。
【0128】
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0129】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0130】
研磨条件については、例えば、研磨定盤およびキャリアの回転速度は、10rpm(0.17s-1)以上500rpm(8.33s-1)が好ましい。研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.45kPa)以上10psi(68.9kPa)が好ましい。
【0131】
研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明に係る研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
【0132】
本実施形態に係る研磨用組成物は、一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。また、上述したように、本発明に係る研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水などの希釈液を使って、例えば、体積基準で1.5倍~20倍、1.5倍~10倍、2倍~10倍、または2倍~5倍に希釈することによって調製されてもよい。
【0133】
研磨が終わった後の研磨済研磨対象物に対して、必要に応じてリンス研磨処理や洗浄処理を行うことにより、研磨済研磨対象物の表面上の残渣を低減することができる。以下では、洗浄処理について説明する。
【0134】
洗浄処理を行う方法の一例として、(i)研磨済研磨対象物を保持した状態で、洗浄ブラシを研磨済研磨対象物の片面または両面に接触させて、その接触部分に界面活性剤等を含む洗浄用組成物(または表面処理組成物)を供給しながら研磨済研磨対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法、(ii)研磨済研磨対象物を洗浄用組成物(または表面処理組成物)中に浸漬させ、超音波処理や攪拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。かかる方法において、研磨済研磨対象物の表面の残渣は、洗浄ブラシによる摩擦力または超音波処理や攪拌によって発生する機械的力、および界面活性剤等による化学的作用によって除去される。
【0135】
上記(i)の方法において、洗浄用組成物(または表面処理組成物)の研磨済研磨対象物への接触方法としては、特に限定されないが、ノズルから研磨済研磨対象物上に洗浄用組成物を流しながら研磨済研磨対象物を高速回転させるスピン式、研磨済研磨対象物に洗浄用組成物を噴霧して洗浄するスプレー式などが挙げられる。
【0136】
短時間でより効率的な汚染除去ができる点からは、洗浄処理は、スピン式やスプレー式を採用することが好ましく、スピン式であることがさらに好ましい。
【0137】
このような洗浄処理を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の研磨済研磨対象物を同時に表面処理するバッチ式洗浄装置、1枚の研磨済研磨対象物をホルダーに装着して表面処理する枚葉式洗浄装置などがある。洗浄時間の短縮等の観点からは、枚葉式洗浄装置を用いる方法が好ましい。
【0138】
さらに、洗浄処理を行うための装置として、研磨定盤(プラテン)から研磨済研磨対象物を取り外した後、当該対象物を洗浄ブラシで擦る洗浄用設備を備えている研磨装置が挙げられる。このような研磨装置を用いることにより、研磨済研磨対象物の洗浄処理を、より効率よく行うことができる。
【0139】
かような研磨装置としては、研磨済研磨対象物を保持するホルダー、回転数を変更可能なモーター、洗浄ブラシ等を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。
【0140】
洗浄ブラシとしては、特に制限されないが、好ましくは、樹脂製ブラシを使用する。樹脂製ブラシの材質は、特に制限されないが、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)を使用するのが好ましい。そして、洗浄ブラシとしては、PVA製スポンジを用いることが特に好ましい。
【0141】
洗浄条件にも特に制限はなく、研磨済研磨対象物の種類、ならびに除去対象とする残渣の種類および量に応じて、適宜設定することができる。例えば、洗浄ブラシの回転数は10rpm(0.17s-1)以上200rpm(3.33s-1)以下、研磨済研磨対象物の回転数は、10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下、研磨済研磨対象物にかける圧力(洗浄圧力)は、0.5psi(3.45kPa)以上10psi(68.9kPa)以下がそれぞれ好ましい。洗浄ブラシに洗浄用組成物(または表面処理組成物)を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、洗浄ブラシおよび洗浄対象物の表面が常に洗浄用組成物(または表面処理組成物)で覆われていることが好ましく、10mL/min以上5000mL/min以下であることが好ましい。洗浄時間も特に制限されないが、本発明の一形態に係る洗浄用組成物(または表面処理組成物)を用いる工程については5秒間以上180秒間以下であることが好ましい。このような範囲であれば、残渣をより効果的に除去することが可能である。
【0142】
洗浄の際の洗浄用組成物(または表面処理組成物)等の温度は、特に制限されず、通常は室温(25℃)でよいが、性能を損なわない範囲で、40℃以上70℃以下程度に加温してもよい。
【0143】
上記(ii)の方法において、浸漬による洗浄方法の条件については、特に制限されず、公知の手法を用いることができる。
【0144】
上記(i)、(ii)の方法による洗浄処理を行う前、後またはその両方において、水による洗浄を行ってもよい。
【0145】
また、洗浄後の研磨済研磨対象物は、スピンドライヤー等により表面に付着した水滴を払い落として乾燥させることが好ましい。また、エアブロー乾燥により研磨済研磨対象物の表面を乾燥させてもよい。
【0146】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0147】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
1. 無機粒子と、分散媒と、を含み、前記無機粒子の等電点未満のpHを有する無機粒子分散液を調製する工程と、
前記無機粒子分散液に対して、前記無機粒子の等電点に達しないようにアルカリ化合物を添加する工程と、
を含む、無機粒子含有スラリーの製造方法。
2.前記無機粒子は、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、セリア粒子、チタニア粒子、および炭化ケイ素粒子からなる群より選択される少なくとも1種である、上記1.に記載の製造方法。
3.前記アルカリ化合物は、アルキルアミンオキシド、アンモニア、第四級アンモニウム塩、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、含窒素複素環化合物、および塩基性アミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種である、上記1.または2.に記載の製造方法。
4.前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の濃度は5質量%以下である、上記1.~3.のいずれかに記載の製造方法。
5.前記アルカリ化合物を添加する工程の後に、前記アルカリ化合物を添加する工程で得られた混合物をろ過する工程をさらに含む、上記1.~4.のいずれかに記載の製造方法。
6.液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数が10000個/mL以下である、ジルコニア粒子含有スラリー。
7.液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が1.98μm以上であるパーティクルの数が3000個/mL以下である、上記6.に記載のジルコニア粒子含有スラリー。
8.液中パーティクルカウンターによって測定される粒子径が3.03μm以上であるパーティクルの数が1000個/mL以下である、上記6.または7.に記載のジルコニア粒子含有スラリー。
9.糖アルコールをさらに含む、上記6.~8.のいずれかに記載のジルコニア粒子含有スラリー。
10.上記6.~9.のいずれかに記載のジルコニア粒子含有スラリーを含む、研磨用組成物。
11.窒化ケイ素および炭素含有材料の少なくとも一方を含む研磨対象物の研磨に用いられる、上記10.に記載の研磨用組成物。
12.上記10.または11.に記載の研磨用組成物を用いて、窒化ケイ素および炭素含有材料の少なくとも一方を含む研磨対象物を研磨することを有する、研磨方法。
【実施例0148】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。なお、各物性は以下のようにして測定を行った。
【0149】
<pH>
原料となるコロイダルジルコニア分散液、コロイダルシリカ分散液、無機粒子分散液、およびアルカリ水溶液、ならびに最終的に得られる研磨用組成物のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(型番:F-23))を用い、液温25℃での値を測定した。
【0150】
<無機粒子の粒子径>
コロイダルジルコニア分散液およびコロイダルシリカ分散液中の無機粒子のD50(平均二次粒子径)、ならびに研磨用組成物中の無機粒子のD10、D50、およびD90は、マイクロトラック・ベル株式会社製、UPA-UT151を用いて測定した。
【0151】
<無機粒子のゼータ電位および等電点>
(ゼータ電位の測定)
コロイダルジルコニア分散液、コロイダルシリカ分散液、および研磨用組成物中の無機粒子のゼータ電位は、Malvern Instruments社製のゼータ電位測定装置(商品名「Zetasizer nano ZSP」)で測定した。
【0152】
(等電点の測定)
コロイダルジルコニア分散液およびコロイダルシリカ分散液のそれぞれに対して、pH調整剤として0.01~0.1MのNaOHおよびHClを加え、pH3.0から10.0まで1.0刻みでpHを調整したゼータ電位測定液を調製した。ここで、pHは、株式会社堀場製作所製のpHメーター(型番:F-71)を用いて測定した。
【0153】
上記で調製したpH3.0から10.0まで1.0刻みのpHのゼータ電位測定液に含まれる無機粒子のゼータ電位を、上記のゼータ電位測定装置により測定した。無機粒子のゼータ電位の符号が変化した前後のpHと、前後のpHにおけるゼータ電位とから上記で説明した式により、無機粒子の等電点のpHを算出した。
【0154】
<LPC測定>
アルカリ化合物添加前のコロイダルジルコニア分散液およびコロイダルシリカ分散液、ならびに最終的に得られる無機粒子含有スラリー(研磨用組成物)に含まれるパーティクルの数を、アキュサイザー(登録商標)FX(米国パーティクルサイジングシステムズ社製)を用いて測定した。具体的には、コロイダルジルコニア分散液およびコロイダルシリカ分散液については、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数を測定した。無機粒子含有スラリー(研磨用組成物)については、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数、粒子径が1.98μm以上であるパーティクルの数、および粒子径が3.03μm以上であるパーティクルの数をそれぞれ測定した。
【0155】
(実施例1)
コロイダルジルコニアを含む分散液(Nyacol Nano Technologies, Inc.製、NYACOL(登録商標)ZR70/20、ジルコニア粒子濃度:20質量%、水分散体、pH2.7、ジルコニア粒子のD50:59nm、ジルコニア粒子のゼータ電位:正)を準備した。
【0156】
準備したコロイダルジルコニア分散液25gに対して超純水475gを加え、ジルコニア粒子の濃度が1質量%である無機粒子分散液(pH:4.3)を調製した。この無機粒子分散液中のジルコニア粒子のゼータ電位は35.1mVであり、等電点はpH9.0であった。また、無機粒子分散液中の粒子径1.01μm以上のパーティクル数を測定したところ、24957個/mLであった。
【0157】
別途、超純水498.7gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(表中では「BIT」と表記する)の30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 0.3gを加え、アルカリ水溶液500g(pH:9.5)を調製した。
【0158】
上記の無機粒子分散液125gを直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記のアルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、25℃で10分間攪拌し、全量1kgのジルコニア粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。この際、アルカリ水溶液添加中の混合液のpHは、ジルコニア粒子の等電点未満であった。
【0159】
(実施例2)
実施例1で準備した分散液と同じコロイダルジルコニア分散液(Nyacol Nano Technologies, Inc.製、NYACOL(登録商標)ZR70/20、ジルコニア粒子濃度:20質量%、水分散体、pH2.7、ジルコニア粒子のD50:59nm、ジルコニア粒子のゼータ電位:正)25gに、超純水100gを加え、ジルコニア粒子の濃度が4質量%である無機粒子分散液(pH:3.7)を調製した。この無機粒子分散液中のジルコニア粒子のゼータ電位は35.1mVであり、等電点はpH9.0であった。また、無機粒子分散液中の粒子径1.01μm以上のパーティクル数を測定したところ、24957個/mLであった。
【0160】
別途、超純水498gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 1gを加え、アルカリ水溶液500g(pH:10.0)を調製した。
【0161】
上記の無機粒子分散液を直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記アルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、25℃で10分間攪拌し、さらに超純水375gを加え、全量1kgのジルコニア粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。この際、アルカリ水溶液添加中の混合液のpHは、ジルコニア粒子の等電点未満であった。
【0162】
(実施例3)
3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)0.1gを超純水473.9gに溶解させた溶液(pH:8.5)を調製した。この溶液に、コロイダルシリカ分散液(シリカ粒子濃度:20質量%、水分散体、pH:7.5、シリカ粒子のD50:37nm)25gを加え、25℃で300分間攪拌混合した。これにより、表面がアミノ基で変性されたアミノ基変性コロイダルシリカ粒子を1質量%の濃度で含む無機粒子分散液(pH8.5)を得た。さらに60質量%硝酸を0.2g加え、pHが4.3である無機粒子分散液を得た。pHを4.3に調整した後の無機粒子分散液中のアミノ基変性コロイダルシリカ粒子のゼータ電位は32.1mVであり、等電点はpH6.0であった。また、無機粒子分散液中の粒子径が1.01μm以上であるパーティクル数を測定したところ、6435個/mLであった。さらに、得られたアミノ基変性コロイダルシリカ粒子のゼータ電位は、pH3未満において正であった。
【0163】
別途、超純水498.7gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 0.3gを加え、アルカリ水溶液500g(pH9.5)を調製した。
【0164】
pH4.3に調整した無機粒子分散液125gを直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記アルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、25℃で10分間攪拌し、さらに超純水375gを加え、全量1kgのアミノ基変性コロイダルシリカ粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。この際、アルカリ水溶液添加中の混合液のpHは、シリカ粒子の等電点未満であった。
【0165】
(実施例4)
コロイダルジルコニアを含む分散液(Nyacol Nano Technologies, Inc.製、NYACOL(登録商標)ZR70/20、ジルコニア粒子濃度:20質量%、水分散体、pH2.7、ジルコニア粒子のD50:43nm、ジルコニア粒子のゼータ電位:正)を準備した。
【0166】
準備したコロイダルジルコニア分散液25gに超純水475gを加え、ジルコニア粒子の濃度が1質量%である無機粒子分散液(pH:4.3)を調製した。この無機粒子分散液中のジルコニア粒子のゼータ電位は35.1mVであり、等電点はpH9.0であった。また、無機粒子分散液中の粒子径1.01μm以上のパーティクル数を測定したところ、3830個/mLであった。
【0167】
別途、超純水498.7gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 0.3gを加え、アルカリ水溶液500g(pH:9.5)を調製した。
【0168】
上記の無機粒子分散液を直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記アルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、25℃で10分間攪拌し、全量1kgのジルコニア粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。この際、アルカリ水溶液添加中の混合液のpHは、ジルコニア粒子の等電点未満であった。
【0169】
(実施例5)
コロイダルジルコニア分散液(Nyacol Nano Technologies, Inc.製、NYACOL(登録商標)ZR100/20、ジルコニア粒子濃度:20質量%、水分散体、pH2.3、ジルコニア粒子のD50:140nm)を準備した。
【0170】
準備したコロイダルジルコニア分散液25gに超純水475gを加え、ジルコニア粒子の濃度が1質量%である無機粒子分散液(pH:3.6)を調製した。この無機粒子分散液中のジルコニア粒子のゼータ電位は35.1mVであり、等電点はpH9.0であった。また、無機粒子分散液中の粒子径1.01μm以上のパーティクル数を測定したところ、35363個/mLであった。
【0171】
別途、超純水498.7gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 1.2gを加え、アルカリ水溶液500g(pH:10.2)を調製した。
【0172】
上記の無機粒子分散液を直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記アルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、25℃で10分間攪拌し、全量1kgのジルコニア粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。この際、アルカリ水溶液添加中の混合液のpHは、ジルコニア粒子の等電点未満であった。
【0173】
(比較例1)
超純水498.7gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾリン-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 0.3gを加え、アルカリ水溶液500g(pH:9.5)を調製した。
【0174】
別途、実施例1で準備した分散液と同じコロイダルジルコニア分散液(Nyacol Nano Technologies, Inc.製、NYACOL(登録商標)ZR70/20、ジルコニア粒子濃度:20質量%、水分散体、pH2.7、ジルコニア粒子のD50:59nm、ジルコニア粒子のゼータ電位:正)25gに超純水を475g加え、ジルコニア粒子の濃度が1質量%である無機粒子分散液(pH:4.3)を調製した。この無機粒子分散液中のジルコニア粒子のゼータ電位は35.1mVであり、等電点はpH9.0であった。また、無機粒子分散液中の粒子径1.01μm以上であるパーティクル数を測定したところ、24957個/mLであった。
【0175】
上記のアルカリ水溶液を直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記無機粒子分散液を100mL/minの添加速度で加え、全量1kgのジルコニア粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。この際、無機粒子分散液の添加中に、混合液のpHは、ジルコニア粒子の等電点以上となった。
【0176】
(比較例2)
実施例1で準備した分散液と同じコロイダルジルコニア分散液(Nyacol Nano Technologies, Inc.製、NYACOL(登録商標)ZR70/20、ジルコニア粒子濃度:20質量%、水分散体、pH2.7、ジルコニア粒子のD50:59nm、ジルコニア粒子のゼータ電位:正)25gに超純水を475g加え、ジルコニア粒子の濃度が1質量%である無機粒子分散液(pH:4.3)を調製した。この無機粒子分散液中のジルコニア粒子のゼータ電位は35.1mVであり、等電点はpH9.0であった。また、無機粒子分散液中の粒子径1.01μm以上のパーティクル数を測定したところ、24957個/mLであった。
【0177】
別途、超純水489gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾリン-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 10gを加えたアルカリ水溶液500g(pH:10.8)を調製した。
【0178】
上記の無機粒子分散液500gを直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記アルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、全量1kgの分散液(pH:9.2)を調製した。この際、分散液のpHは、ジルコニア粒子の等電点以上となった。その後、この分散液に60質量%硝酸 2.5gをさらに加え、ジルコニア粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。
【0179】
実施例および比較例で用いた無機粒子分散液およびアルカリ水溶液の構成を、下記表1に示す。
【0180】
【0181】
(実施例6)
実施例1で用いたコロイダルジルコニア分散液と同じコロイダルジルコニア分散液(ジルコニア粒子の濃度:20質量%、水分散体、pH:2.7、ジルコニア粒子のD50:59nm、ジルコニア粒子のゼータ電位:正)25gに超純水475gを加え、ジルコニア粒子の濃度が1質量%である無機粒子分散液(pH:4.3)を調製した。この無機粒子分散液中のジルコニア粒子のゼータ電位は35.1mVであり、等電点はpH9.0であった。また、無機粒子分散液中の粒子径1.01μm以上のパーティクル数を測定したところ、24957個/mLであった。
【0182】
別途、超純水498.7gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 0.3gを加え、アルカリ水溶液500g(pH:9.5)を調製した。
【0183】
上記の無機粒子分散液を直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記アルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、全量1kgの混合液を調製した。この際、アルカリ水溶液添加中の混合液のpHは、ジルコニア粒子の等電点未満であった。その混合液を目開き0.2μmのフィルター(株式会社ロキテクノ製、品番:43L-SLF-002)を用いて濾過し、ジルコニア粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。
【0184】
(実施例7~12)
実施例1と同様にして、無機粒子分散液を得た。
【0185】
別途、超純水498.7gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 0.3gを加え、アルカリ水溶液500g(pH:9.5)を調製した。
【0186】
上記の無機粒子分散液を直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記アルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、全量1kgの混合液を調製した。この際、アルカリ水溶液添加中の混合液のpHは、ジルコニア粒子の等電点未満であった。その混合液に分散剤としてソルビトールを加えた。ソルビトールの濃度(含有量)は、最終的に得られるジルコニア粒子含有スラリーの総量に対して、それぞれ、0.001質量%(10ppm)(実施例7)、0.005質量%(50ppm)(実施例8)、0.008質量%(80ppm)(実施例9)、0.01質量%(100ppm)(実施例10)、0.02質量%(200ppm)(実施例11)、および0.05質量%(500ppm)(実施例12)となる量とした。
【0187】
(実施例13)
実施例1と同様にして、無機粒子分散液を得た。
【0188】
別途、超純水498.7gに、アルカリ化合物として1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンの30質量%水溶液 1g、および29質量%アンモニア水 0.3gを加え、アルカリ水溶液500g(pH:9.5)を調製した。
【0189】
上記の無機粒子分散液を直径2cmの攪拌子を用いて500rpmで攪拌しているところへ、上記アルカリ水溶液を100mL/minの添加速度で加え、全量1kgの混合液を調製した。この際、アルカリ水溶液添加中の混合液のpHは、ジルコニア粒子の等電点未満であった。その混合液に分散剤としてキシリトールを加えた。キシリトールの濃度(含有量)は、最終的に得られるジルコニア粒子含有スラリーの総量に対して、0.01質量%(100ppm)となる量とした。このようにして、ジルコニア粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。
【0190】
(参考例1)
上記実施例3と同様にして調製したアミノ基変性コロイダルシリカ粒子含有スラリー(pH:5.0)を、さらに目開き0.2μmのフィルター(株式会社ロキテクノ製、品番:43L-SLF-002)を用いてろ過し、参考例1のアミノ基変性コロイダルシリカ粒子含有スラリー(pH:5.0)を調製した。
【0191】
[LPCおよびディフェクトの評価]
<無機粒子含有スラリーのLPC測定>
実施例1~13、比較例1~2、および参考例1で得られた無機粒子含有スラリーに含まれる、粒子径が1.01μm以上であるパーティクルの数、粒子径が1.98μm以上であるパーティクルの数、および粒子径が3.03μm以上であるパーティクルの数を、アキュサイザー(登録商標)FX(米国パーティクルサイジングシステムズ社製)を用いて測定した。
【0192】
<研磨および洗浄後のディフェクト>
実施例1~13、比較例1~2、および参考例1で得られた無機粒子含有スラリーをそのまま研磨用組成物として用い、下記の研磨条件で窒化ケイ素(Si3N4)基板の研磨(CMP)を行った。
【0193】
(研磨装置および研磨条件)
研磨対象物:表面に厚さ2500Åの窒化ケイ素(Si3N4)膜をCVDで形成したシリコンウェーハ(Si3N4基板)(300mm ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック製)
研磨装置:株式会社荏原製作所製 FREX300E
研磨パッド:ニッタ・デュポン株式会社製 硬質ポリウレタンパッド IC1010
研磨圧力:1.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同様)
プラテン(定盤)回転速度:83rpm
ヘッド(キャリア)回転速度:77rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物(スラリー)の流量:200mL/min
研磨時間:1分間。
【0194】
(洗浄)
上記研磨がなされた後の研磨済Si3N4基板について、洗浄用組成物として酸性タイプの界面活性剤(MCX-SDR4、三菱ケミカル株式会社製)を用い、さらに洗浄ブラシであるポリビニルアルコール(PVA)製スポンジを用いて、圧力をかけながら、下記条件で、研磨済Si3N4基板をこする洗浄方法によって洗浄した:
(洗浄装置および洗浄条件)
洗浄装置:株式会社荏原製作所製 FREX300E
洗浄ブラシ回転数:100rpm
研磨済研磨対象物回転数:50rpm
洗浄圧力:1psi
洗浄用組成物の種類:酸性タイプ界面活性剤(MCX-SDR4 三菱ケミカル株式会社製)
洗浄用組成物の供給量:1000mL/min
洗浄時間:1分間。
【0195】
洗浄後のSi3N4基板表面について、ウェーハ欠陥検査装置(SP-5、KLA-Tencor社製)を使用し、0.1μm以上のサイズの総ディフェクト(残渣)数を測定した。測定は、研磨済Si3N4基板の片面の外周端部から幅5mmの部分を除外した残りの部分について行った。
【0196】
評価結果を下記表2に示す。
【0197】
【0198】
上記表2から明らかなように、実施例1~13の無機粒子含有スラリーは、液中パーティクルカウンターにより測定される粗大粒子の数が少ないものとなった。また、当該スラリーを研磨用組成物として用いてSi3N4基板の研磨を行った場合、研磨済研磨対象物の表面のディフェクトが低減されることが分かった。一方、比較例1~2の無機粒子含有スラリーは、液中パーティクルカウンターにより測定される粗大粒子の数が多く、当該スラリーを研磨用組成物として用いてSi3N4基板の研磨を行った場合、研磨済研磨対象物の表面のディフェクトが増加することが分かった。
【0199】
[研磨速度]
上記実施例1、実施例6~13、比較例1、および参考例1で得られた無機粒子含有スラリーをそのまま研磨用組成物として用いて、上記(研磨装置および研磨条件)の項で説明した条件と同じ条件で、Si3N4基板の研磨(CMP)を行った。Si3N4基板の研磨速度は、光干渉式膜厚測定装置(フィルメトリクス株式会社製:型番Filmetrics F50)を用いて測定される研磨前後のSi3N4基板の厚み(Å)の差を、研磨時間(min)で除することにより求めた。
【0200】
[保管安定性]
実施例1~13および比較例1~2の研磨用組成物中の無機粒子の平均二次粒子径(D50)を、粒子径分布測定装置(ナノトラック UPA-UT151、マイクロトラック・ベル社製)を用いた動的光散乱法により、室温(25℃)で測定した。詳細には、測定機器による解析により、無機粒子の粒子径の粒度分布において、微粒子側から積算粒子体積が全粒子体積の50%に達するときの粒子の直径D50(nm)を算出し、これを無機粒子の平均二次粒子径(D50A)(nm)とする。
【0201】
別途、各研磨用組成物100gをポリ瓶に秤量した。次に、各ポリ瓶を80℃に設定した恒温槽に入れ2週間放置する。所定期間放置後、各研磨用組成物中の無機粒子の平均二次粒子径(D50B)(nm)を上記と同様にして測定した。
【0202】
これら放置前後の無機粒子の平均二次粒子径(D50A(nm)およびD50B(nm))に基づいて、下記式に従って、平均二次粒子径の増加率(%)を算出し、これを保管安定性の指標とした。保管安定性(平均二次粒子径の増加率)(%)は絶対値が小さいほど保管安定性に優れることを示す。保管安定性(平均二次粒子径の増加率)(%)の絶対値は、60%以下であれば許容でき、35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、10%未満であることがさらに好ましく、5%未満であることが特に好ましい。
【0203】
【0204】
研磨速度および保管安定性の評価結果を下記表3に示す。
【0205】
【0206】
上記表3から明らかなように、実施例の研磨用組成物を用いた場合、Si3N4基板を速く研磨することができることが分かった。また、実施例9~13の研磨用組成物は、保管安定性に特に優れていることが分かった。