IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤森工業株式会社の特許一覧

特開2023-147185粘着剤組成物、積層体、プリント配線基板、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147185
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、積層体、プリント配線基板、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20231004BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J7/38
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023004571
(22)【出願日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2022053518
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】塚田 高士
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK25A
4F100AL05A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CB05A
4F100GB43
4F100JA07A
4F100JC00A
4F100JG05
4F100JG05A
4F100JK06
4F100JL13
4F100JN01
4F100JN01A
4F100JN10B
4F100JN30
4F100JN30A
4F100YY00A
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA05
4J004FA08
4J040DF021
4J040JB09
4J040LA09
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】生物由来材料を使用し、高周波領域での低誘電特性を有する粘着剤組成物の提供。
【解決手段】アクリル共重合体を含む粘着剤組成物であって、前記アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素であり、10GHzにおける比誘電率が2.80以下である、粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体を含む粘着剤組成物であって、
前記アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素であり、
10GHzにおける比誘電率が2.80以下である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル共重合体は、モノマー成分として(A1)成分と、(A3)成分とを有し、
前記(A1)成分は、下記一般式(1)で表されるモノマー成分であり、
前記(A3)成分は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1~36のアルキル基である。Rで表されるアルキル基が、バイオマス由来のアルキル基である。)
【請求項3】
前記(A1)成分は、イソボルニルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、及びベヘニルアクリレートからなる群より選択される1種又は2種である、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
ヘイズ値が2.5以下であり全光透過率が97%以上である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物により形成される粘着層を有する積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を備えるプリント配線基板。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を、樹脂フィルムの片面又は両面に備える、粘着フィルム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物により形成される、光学フィルム用粘着剤層。
【請求項9】
請求項8に記載の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた画像表示装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光学フィルム用粘着剤層が用いられた粘着剤層付き偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、積層体、プリント配線基板、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出が問題視されており、石油等の化石資源系材料の使用量の低減が求められている。これに伴い、粘着剤分野においても石油由来材料に代えて生物由来材料を用いることで、石油資源の使用を節約する試みがなされている。
【0003】
例えば特許文献1は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤を開示している。特許文献1に開示されたアクリル系粘着剤に含まれる全炭素数の50%以上は、バイオマス由来の炭素である。
【0004】
一方、銅などの金属も接着できるアクリル系粘着剤は、フレキシブルプリント回路基板(FPC:Flexible Printed Circuit)の接着剤としても使用される。
【0005】
近年、第5世代移動通信システム(いわゆる5G)に代表される伝送信号の高速化に伴い、6GHzを超える信号の高周波化が進んでいる。これに伴い、高速伝送向けのFCPには、高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が求められる。
【0006】
例えば特許文献2は、10GHzにおける比誘電率が3.0以下であり、誘電正接が0.008以下である、プリント配線板用の接着剤組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-105308号公報
【特許文献2】特許第6981581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
環境問題に配慮した上で、5Gを想定した高周波領域での低誘電特性を有する粘着剤が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、生物由来材料を使用し、高周波領域での低誘電特性を有する粘着剤組成物、これを用いた積層体、プリント配線基板、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]アクリル共重合体を含む粘着剤組成物であって、前記アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素であり、10GHzにおける比誘電率が2.80以下である、粘着剤組成物。
[2]前記アクリル共重合体は、モノマー成分として(A1)成分と、(A3)成分とを有し、前記(A1)成分は、下記一般式(1)で表されるモノマー成分であり、前記(A3)成分は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、[1]に記載の粘着剤組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1~36のアルキル基である。Rで表されるアルキル基が、バイオマス由来のアルキル基である。)
[3]前記(A1)成分は、イソボルニルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、及びベヘニルアクリレートからなる群より選択される1種又は2種である、[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]ヘイズ値が2.5以下であり全光透過率が97%以上である、[1]又は[2]に記載の粘着剤組成物。
[5][1]又は[2]に記載の粘着剤組成物により形成される粘着層を有する積層体。
[6][5]に記載の積層体を備えるプリント配線基板。
[7][1]~[3]のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を、樹脂フィルムの片面又は両面に備える、粘着フィルム。
[8][1]~[3]のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成される、光学フィルム用粘着剤層。
[9][8]に記載の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた画像表示装置。
[10][8]に記載の光学フィルム用粘着剤層が用いられた粘着剤層付き偏光板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生物由来材料を使用し、高周波領域での低誘電特性を有する粘着剤組成物、これを用いた積層体、プリント配線基板、粘着フィルム、光学フィルム用粘着剤層、画像表示装置及び偏光板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<粘着剤組成物>
本実施形態は、アクリル共重合体を含む粘着剤組成物である。
本実施形態において「粘着剤」とは、粘着剤組成物が溶剤に溶解した液体を意味する。
本実施形態において「粘着剤組成物」とは、室温(20℃)付近の温度領域において、柔らかい固体(粘弾性体)の状態であって、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料を意味する。
【0012】
≪アクリル共重合体≫
アクリル共重合体は、アルキル(メタ)アクリレートをモノマー成分とする共重合体である。アルキル(メタ)アクリレートをモノマー成分とすると、高透明度で良好な粘着特性を示す粘着剤組成物が得られやすい。
【0013】
本実施形態において、アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素である。
アクリル共重合体のバイオマス炭素比が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。
【0014】
化石資源系材料の使用量を削減する観点から、バイオマス炭素比は高い方が好ましい。本実施形態においては、アクリル共重合体の全炭素数の35%以上がバイオマス由来の炭素であってもよく、40%以上であってもよく、50%以上であってもよく、60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。
【0015】
バイオマス由来の炭素の割合の上限値は特に限定されず、100%以下であってもよく、99%以下であってもよく、98%以下であってもよく、95%以下であってもよく、90%以下であってもよく、85%以下であってもよい。
【0016】
バイオマス由来の炭素の割合の上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
組み合わせの例としては、30%以上100%以下、35%以上99%以下、40%以上98%以下、50%以上95%以下、60%以上90%以下、70%以上85%以下である。
【0017】
バイオマス度は、加速器質量分析法(AMS法)により、質量数14の炭素同位体の含有割合を測定することで測定できる。
【0018】
本実施形態において、粘着剤組成物に含まれる溶剤成分を除去し、固形分を加速器質量分析法(AMS法)により測定することで、アクリル共重合体のバイオマス度を測定できる。
【0019】
本発明者らが鋭意検討した結果、バイオマス炭素比が高い(30%以上)のアクリル共重合体を含む粘着剤組成物は、10GHzという高周波数帯において、比誘電率が2.80以下という低い誘電特性を有することが見いだされた。
この理由は以下のように推察される。
【0020】
クラウジウス・モソッティの関係式によれば、極性が低くなる(分極が小さくなる)ほど、低誘電特性を有する。バイオマス度の高いモノマーは一般的にモノマー側鎖炭素数が多い脂肪酸由来のものが多く、極性が低い(分極が小さい)モノマーとなる。このため、クラウジウス・モソッティの関係式から、本実施形態の粘着組成物は低誘電特性を有すると推察される。
【0021】
本実施形態において、粘着剤組成物の誘電特性は、粘着剤組成物から形成された粘着剤樹脂の単層シートをサンプルとして、例えば、Agilent Technologies社製のE5071Cを用い、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて測定した比誘電率及び誘電正接である。
【0022】
アルキル(メタ)アクリレートは例えば下記一般式(1)で表される。
【0023】
【化2】
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。Rは、炭素数1~36のアルキル基である。)
【0024】
一般式(1)で表されるモノマーは、Rが水素原子であるアルキルアクリレートであってもよく、Rがメチル基であるアルキルメタクリレートであってもよい。
【0025】
一般式(1)のRは、炭素数1~36のアルキル基である。アルキル基の炭素原子数が3以上である場合、アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。また、Rは環状のアルキル基であってもよい。
【0026】
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、イソステアリル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、等が挙げられる。
【0027】
環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基、イソボルニル基が挙げられる。
【0028】
・(A1)成分
本実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートは、バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含む。バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを「(A1)成分」と記載する場合がある。
即ち、(A1)成分は、上記一般式(1)中、Rで表されるアルキル基が、バイオマス由来のアルキル基である。(A1)成分は、粘着剤組成物のバイオマス度を向上させる成分である。
【0029】
(A1)成分は、典型的には、バイオマス由来のアルカノールと、バイオマス由来または非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルである。バイオマス由来のアルカノールの例には、バイオマスエタノール、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物原料に由来するアルカノール等が含まれる。
【0030】
本実施形態において、一般式(1)で表されるアルキル(メタ)アクリレートが(A1)成分である場合、Rは、炭素数8以上のアルキル基が好ましく、炭素数が10以上のアルキル基がより好ましく、炭素数が12以上のアルキル基が特に好ましい。
【0031】
の炭素数が上記下限値以上であると、(A1)成分に含まれる総炭素原子数に占めるバイオマス由来の炭素原子の個数割合が多くなり、バイオマス炭素比が向上する。
【0032】
(A1)成分は、イソボルニルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、及びベヘニルアクリレートからなる群より選択される1種又は2種であることが好ましい。
【0033】
・(A2)成分
本実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートは、非バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。非バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを「(A2)成分」と記載する場合がある。
即ち、(A2)成分は、上記一般式(1)中、Rで表されるアルキル基が、非バイオマス由来のアルキル基である。
【0034】
(A2)成分は任意の成分であるが、(A2)成分を共重合することでアクリル共重合体のガラス転移点や粘着力を調整できる。
【0035】
本実施形態において、一般式(1)で表されるアルキル(メタ)アクリレートが(A2)成分である場合、Rは、最長炭素鎖の炭素数が7以下のアルキル基が好ましい。
【0036】
本実施形態において、Rの炭素数が上記上限値以下であると、アクリル共重合体に含まれる総炭素原子数に占めるバイオマス由来の炭素原子の個数割合が多くなり、バイオマス炭素比が向上する。
【0037】
(A2)成分の具体例としては、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート又はエチルアクリレートである。
【0038】
・(A3)成分
本実施形態において、アルキル(メタ)アクリレートは、水酸基を含有する(メタ)アクリレート、すなわちヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを、「(A3)成分」と記載する場合がある。
【0039】
(A3)成分は任意の成分であるが、(A3)成分を共重合することでアクリル共重合体に架橋点を導入することができる。
(A3)成分の具体例としては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、その他のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の少なくとも1種以上が挙げられる。
【0040】
アクリル共重合体は、(A1)成分と(A3)成分との共重合体であってもよい。この場合には、(A1)成分は、上述したアルキル(メタ)アクリレートを1種単独で用いてもよく、Rが異なる2種以上を併用してもよい。
この場合には、アクリル共重合体中の(A3)成分の割合は、(A1)成分の全量(100重量部)に対して、10.0重量部以下が好ましく、7.5重量部以下がより好ましく、6.0重量部以下がさらに好ましく、5.0重量部以下が特に好ましく、3.0重量部以下が殊更好ましい。
また、アクリル共重合体中の(A3)成分の割合は、(A1)成分の全量(100重量部)に対して、0.1重量部以上であってもよく、1.0重量部以上であってもよく、1.5重量部以上であってもよい。
【0041】
また、アクリル共重合体中の(A3)成分の割合は、(A1)成分の全量(100重量部)に対して、例えば0.1重量部以上10.0重量部以下、1.0重量部以上7.5重量部以下、1.0重量部以上6.0重量部以下、1.0重量部以上5.0重量部以下、1.5重量部以上3.0重量部以下である。
【0042】
アクリル共重合体は、(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分の共重合体であってもよい。
この場合、(A1)成分と(A2)成分の合計量(100重量部)中の(A1)成分の割合は、50重量部以上が好ましく、60重量部以上がより好ましく、70重量部以上がさらに好ましい。
また、アクリル共重合体中の(A3)成分の割合は、(A1)成分と(A2)成分の合計量(100重量部)に対して、10.0重量部以下が好ましく、7.5重量部以下がより好ましく、6.0重量部以下がさらに好ましく、5.0重量部以下が特に好ましく、3.0重量部以下が殊更好ましい。
また、アクリル共重合体中の(A3)成分の割合は、(A1)成分と(A2)成分の合計量(100重量部)に対して、0.1重量部以上であってもよく、1.0重量部以上であってもよく、1.5重量部以上であってもよい。
【0043】
また、アクリル共重合体中の(A3)成分の割合は、(A1)成分と(A2)成分の合計量(100重量部)に対して、例えば0.1重量部以上10.0重量部以下、1.0重量部以上7.5重量部以下、1.0重量部以上6.0重量部以下、1.0重量部以上5.0重量部以下、1.5重量部以上3.0重量部以下である。
【0044】
(A1)成分の割合が上記下限値以上であると、アクリル共重合体の全炭素数の30%以上がバイオマス由来の炭素となる。
【0045】
アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、例えば200000以上5000000以下が好ましく、300000以上4000000以下がより好ましく、500000以上2000000以下が特に好ましい。アクリル共重合体の重量平均分子量がこの範囲内であると、得られた粘着剤組成物は、優れた粘着力を発揮することができる。なお、本明細書において重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求められたポリスチレン換算分子量を意味する。
【0046】
アクリル共重合体の合成は、上記のアルキル(メタ)アクリレートのモノマーを、従来公知の方法により重合開始剤の存在下でラジカル反応により重合させればよい。詳細な重合方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、溶液重合が好ましい。
【0047】
本実施形態の粘着剤組成物は、アクリル共重合体と、必要に応じた溶剤、架橋剤、粘着付与剤、シランカップリング剤等を混合することで製造できる。
【0048】
本実施形態の粘着剤組成物が含んでいてもよい架橋剤例としては、3官能以上のイソシアネート化合物が好ましい。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート類が好ましく、トリレンジイソシアネートのTMPアダクト体、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等が特に好ましい。
【0049】
本実施形態の粘着剤組成物のヘイズ値は2.5以下が好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.0以下が特に好ましい。また、粘着剤組成物の全光透過率は97%以上が好ましい。
粘着剤組成物のヘイズ値と全光透過率が上記の範囲であると、例えば透明な被着体同士を貼り合わせる場合に、積層体の透明度を高くすることができる。
【0050】
本実施形態の粘着剤組成物の全光透過率及びヘイズ値は、粘着剤組成物から形成された粘着剤樹脂の単層シートをサンプルとして、例えば日本電色製のヘイズメータ「NDH4000」を使用して測定できる。
【0051】
<積層体>
本実施形態の積層体は、基材に粘着剤組成物を積層した、基材/粘着剤層の2層積層体である。また、基材/粘着剤層/基材をこの順で積層した3層積層体であってもよい。ここで粘着剤層とは、本実施形態の粘着剤組成物を基材に塗布し、乾燥させた後の粘着剤組成物の層を意味する。
【0052】
基材は、例えば変性ポリイミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム、環状オレフィン樹脂フィルム、ポリフェニレンエーテル樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルム、ビスマレイミド樹脂フィルム、トリアジン樹脂フィルム、ベンゾシクロブテン樹脂フィルムからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0053】
本実施形態の積層体において、粘着剤層の厚みは、例えば1μm以上200μm以下である。基材の厚みは、例えば20μm以上200μm以下である。
【0054】
<プリント配線板>
本実施形態のプリント配線板は、上記本発明の積層体を備える。より詳細には、導電回路を形成する金属箔と樹脂基材とを、本実施形態の粘着剤組成物で貼り合わせた積層体を構成要素として含む。プリント配線板は、例えばフレキシブルプリント回路基板や、金属箔として銅を使用した銅張回路基板である。
【0055】
従来から、プリント配線板用の積層体として、接着剤層を介して樹脂基材と金属基材とが積層された積層体がある。本発明の粘着剤組成物はバイオマス材料であって、高周波領域での低誘電特性を有する。このため、従来プリント配線板用に使用されてきた化石原料由来の接着剤をバイオマス材料に代替することができる。
【0056】
<粘着フィルム>
本実施形態の粘着フィルムは、樹脂フィルムの片面又は両面に前記本実施形態の粘着剤組成物により形成される粘着剤層を備える。
【0057】
<光学フィルム用粘着剤層>
本実施形態の光学フィルム用粘着剤層は、前記本実施形態の粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋させることで形成することができる。架橋後の光学フィルム用粘着剤層のゲル分率は、60~90%が好ましい。
【0058】
本実施形態の光学フィルム用粘着剤層を、光学部材の層間の貼り合わせなどに用いる場合、薄い粘着剤層であることが望ましい。光学フィルム用粘着剤層の厚みは、5~25μmが好ましい。
【0059】
<画像表示装置>
本実施形態は、前記本実施形態の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた画像表示装置である。
前記本実施形態の光学フィルム用粘着剤層は、画像表示装置のガラス板等の貼り合わせに用いることができる。
【0060】
本実施形態の画像表示装置としては、液晶表示装置(液晶パネル)、有機EL表示装置(液晶パネル)、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
<偏光板>
本実施形態は、前記本実施形態の光学フィルム用粘着剤層が、光学フィルムの貼り合わせに用いられた偏光板である。
前記本実施形態の光学フィルム用粘着剤層は、十分な透明性を有するため、偏光板の貼り合わせに好適に用いられる。
【実施例0062】
以下、実施例として、より具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
<粘着剤組成物の調製>
≪実施例1≫
(1)アクリル共重合体の製造
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にイソボルニルアクリレート50重量部、2-エチルヘキシルアクリレート50重量部、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート1.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、アクリル共重合体溶液を得た。
【0064】
GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算による、アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分散度(Mw/Mn)を表1に記載する。
【0065】
(2)粘着剤組成物の製造
得られたアクリル共重合体100重量部に、0.5質量部の架橋剤(コロネート(登録商標)L45E)と、加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0066】
(3)粘着シートの製造
この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着シートを得た。
【0067】
≪実施例2~11、比較例1~2≫
実施例1と同様の方法により、下記表1に示す実施例2~11、比較例1~2の粘着剤組成物をそれぞれ調製した。
【0068】
【表1】
【0069】
表1中、各記号は以下の材料を意味する。[]内の数値は配合量(重量部)である。
IBOA:イソボルニルアクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
LA:ラウリルアクリレート
OCA:オクチルアクリレート
ISTA:イソステアリルアクリレート
SA:ステアリルアクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
THFA:テトラヒドロフリルアクリレート
BHA:ベヘニルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
【0070】
[バイオマス度の測定]
表1に示すバイオマス度は、以下の方法で算出した値である。
ASTM D6866に準拠して測定される加速器質量分析法(AMS法)により、質量数14の炭素同位体の含有割合を測定することで、粘着剤組成物が含むアクリル共重合体のバイオマス度を測定した。
具体的には、上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートについて、ASTM D6866に準拠して測定される加速器質量分析法(AMS法)により、質量数14の炭素同位体の含有割合を測定することで、粘着剤組成物が含むアクリル共重合体のバイオマス度を測定した。
上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートは粘着剤組成物の溶剤成分が除去された固形分に相当するため、粘着シートのバイオマス度は、粘着剤組成物が含むアクリル共重合体のバイオマス度とみなすことができる。
【0071】
[誘電特性の測定]
上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートの両面に、シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムを貼合し、剥離フィルムA、粘着層C及び剥離フィルムBの3層構成の積層シートを得た。
【0072】
得られた3層構成の積層シートについて、それぞれ誘電特性を測定した。
両面それぞれの剥離フィルム単層の誘電特性を測定し、さらに、積層シートの誘電特性を測定した。
剥離フィルム単層及び積層シートの測定結果から得られる複素誘電率の値を用い、各層の厚みの情報から、粘着組成物単体の誘電特性を算出した。
【0073】
具体的には、下記の方法で算出した。
剥離フィルムAの厚みをtA(μm)、複素誘電率の値をεAとする。
剥離フィルムBの厚みをtB(μm)、複素誘電率の値をεBとする。
粘着層Cの厚みをtC(μm)、複素誘電率の値をεCとする。
この場合、3層構成の積層シートの全体の複素誘電率(εTotal)の関係は以下の式で表される。
下記の式から粘着組成物単体の複素誘電率εCを算出した。
εTotal×(tA+tB+tC)=εA×tA+εB×tB+εC×tC
【0074】
誘電特性は、Agilent Technologies社製のE5071Cを用い、スプリットポスト誘電体共振器法により、周波数10GHzについて、比誘電率及び誘電正接を測定した。その結果を表2に記載する。
【0075】
[全光線透過率の測定方法]
上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートについて、日本電色工業株式会社製ヘイズメーター(商品名:NDH4000)を使用して、JIS K7361-1(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法-第1部:シングルビーム法)に準拠して、粘着シートの全光線透過率(%)をN3で測定しその平均値を全光線透過率とした。
【0076】
[ヘイズ値の測定方法]
上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートについて、日本電色工業株式会社製ヘイズメーター(商品名:NDH4000)を使用して、JIS K7136(プラスチック-透明材料のヘイズの求め方)に準拠して、粘着シートのヘイズ値(%)をN3で測定しその平均値をヘイズ値とした。
【0077】
[粘着強度の測定]
厚みが50μmのポリエステルフィルムの基材の片面に、上記「(3)粘着シートの製造」で得た粘着シートを転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。得られた粘着フィルムを、厚みが2mmのステンレス箔の表面に圧着ロールで貼り合せて、23℃×50%RHの雰囲気下で20分間経過させた。前記ステンレス箔の表面から粘着フィルムを剥離するときの粘着力を測定する方法として、引張試験機によって、JIS Z0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に準拠して、粘着フィルムの剥離強度を測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、粘着フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。
【0078】
【表2】
【0079】
バイオマス由来の炭素が0%である比較例1と、30%未満の比較例2は、比誘電率が2.80を超えていた。
一方、アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素である実施例1~11は、すべて比誘電率が2.80以下であり高周波領域で低誘電特性を有することが確認できた。
バイオマス度が78.0%を最も高い実施例5は比誘電率が最も低く、バイオマス度が高いほど、比誘電率が低くなる傾向がみられた。
実施例1~11は、バイオマスに由来しない比較例1と同程度の高い全光透過率とヘイズ値を発揮することが確認できた。
実施例1~11は、粘着強度が弱い範囲(0.5N/25mm)から強い範囲(16.5N/25mm)まで任意に対応できることが確認できた。
【0080】
≪実施例12~25、比較例3~4≫
実施例1と同様の方法により、下記表3に示す実施例12~25、比較例3~4の粘着剤組成物をそれぞれ調製した。
【0081】
【表3】
【0082】
表3中、各記号は以下の材料を意味する。[]内の数値は配合量(重量部)である。
IBOA:イソボルニルアクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
LA:ラウリルアクリレート
OCA:オクチルアクリレート
ISTA:イソステアリルアクリレート
SA:ステアリルアクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
THFA:テトラヒドロフリルアクリレート
BHA:ベヘニルアクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
EA:エチルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
【0083】
表3に示すバイオマス度の値は、上記[バイオマス度の測定]に記載の方法により測定した値である。
【0084】
実施例12~25、比較例3~4の粘着剤組成物について、上記[誘電特性の測定]、[全光線透過率の測定方法]、[ヘイズ値の測定方法]及び[粘着強度の測定]に記載の方法により、比誘電率、誘電正接、全光透過率、ヘイズ値及び粘着強度をそれぞれ測定した。その結果を表4に記載する。
【0085】
【表4】
【0086】
バイオマス由来の炭素が0%である比較例4は、比誘電率が2.80を超えていた。
また、バイオマス由来の炭素が41.0%である比較例3は、比誘電率が2.80を超えていた。
一方、アクリル共重合体の全炭素数の30%以上はバイオマス由来の炭素である実施例12~25は、すべて比誘電率が2.80以下であり高周波領域で低誘電特性を有することが確認できた。
実施例12~25は、粘着強度が弱い範囲(0.5N/25mm)から強い範囲(16.5N/25mm)まで任意に対応できることが確認できた。