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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147216
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】セラミックス基板
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20231004BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H05K1/03 610D
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033365
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2022054654の分割
【原出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】大森 輝行
【テーマコード(参考)】
4G026
【Fターム(参考)】
4G026BA01
4G026BB22
4G026BE04
4G026BF17
4G026BF44
4G026BG02
4G026BH07
(57)【要約】
【課題】コストを抑制しながらも反りを抑制することが可能なセラミックス基板を提供する。
【解決手段】セラミックス基板は、平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さ、及び前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さのうち、厚い方をTaとし、薄い方をTbとしたとき、(Ta-Tb)/Ta≦0.2の関係式を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、
前記絶縁基材の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、
前記絶縁基材の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、
前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、
前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、
任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さ、及び前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さのうち、厚い方をTaとし、薄い方をTbとしたとき、(Ta-Tb)/Ta≦0.2の関係式を満たす、
セラミックス基板。
【請求項2】
前記第1の金属層と前記第2の金属層とは同種の金属である、
請求項1に記載のセラミックス基板。
【請求項3】
前記第1の金属層と前記第2の金属層は、銅板からなる、
請求項2に記載のセラミックス基板。
【請求項4】
前記第1の金属層の厚さと前記第2の金属層の厚さとの差が0.02mm以下である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のセラミックス基板。
【請求項5】
前記絶縁基材が矩形状であり、前記絶縁基材の各辺に沿った方向の100mmあたりの前記絶縁基材の反り量が0.03mm以下である、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のセラミックス基板。
【請求項6】
前記第1の金属層は、少なくとも一部がエッチングされた箇所を有する、
請求項1乃至5の何れか1項に記載のセラミックス基板。
【請求項7】
前記第1のろう材層及び前記第2のろう材層は、銀を含まない、
請求項1乃至6の何れか1項に記載のセラミックス基板。
【請求項8】
前記第1のろう材層および前記第2のろう材層は、いずれの箇所においても厚さが10μm以上25μm以下である、
請求項1乃至7の何れか1項に記載のセラミックス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばパワーモジュール等の発熱量が多い電気回路部品を搭載する基板として、耐熱性が高いセラミックス製の基材を有するセラミックス基板が用いられている。特許文献1に記載の金属-セラミックス接合基板の製造方法では、平板状に形成されたセラミックス製の基材の両面にスクリーン印刷法等によってペースト状のろう材を塗布し、このろう材によって基材の両面に金属板を固定する。その後、エッチングによって金属板の一部を除去することにより、回路パターンを形成する。
【0003】
また、本出願人は、特許文献2に記載されているように、セラミックス基板の表面及び裏面にろう材を介して金属回路板及び金属放熱板をそれぞれ設けた接合体を-110℃以下で冷却処理することにより、室温における反り量を50mm当り100μm以下としたセラミックス回路基板を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-159926号公報
【特許文献2】特開2003-309210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の方法によれば、セラミックス基板の反りを抑制し得るが、-110℃以下に冷却する工程のコストが増大してしまう。このため、本発明者らは、反りが発生する原因を鋭意研究し、セラミックス製の基材の各部位における一方の面と他方の面に塗布されたろう材の厚みの違いが反りの発生に関与していることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、コストを抑制しながらも、反りを抑制することが可能なセラミックス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、平板状のセラミックスからなる絶縁基材と、前記絶縁基材の第1の主面に設けられた第1のろう材層と、前記絶縁基材の第2の主面に設けられた第2のろう材層と、前記第1のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第1の主面側に固定された金属からなる第1の金属層と、前記第2のろう材層を介して前記絶縁基材の前記第2の主面側に固定された金属からなる第2の金属層とを備え、任意の箇所における前記第1のろう材層の厚さ、及び前記任意の箇所の裏側にあたる箇所の前記第2のろう材層の厚さのうち、厚い方をTaとし、薄い方をTbとしたとき、(Ta-Tb)/Ta≦0.2の関係式を満たす、セラミックス基板を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るセラミックス基板、セラミックス分割基板、及びセラミックス基板の製造方法によれば、コストを抑制しながらも、反りを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るセラミックス基板の構成例を示し、(a)は表面を示す平面図、(b)は側面図、(c)は裏面を示す平面図である。
図2】分割された一つのセラミックス分割基板の表面に電気回路部品が搭載され、裏面に放熱部品としてのヒートシンクが取り付けられた状態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図3】スクリーン印刷装置の構成例を示す概略構成図である。
図4】スクリーン印刷装置に用いられるスクリーンを示す平面図である。
図5】複数の絶縁基材を恒温槽で乾燥させている状態を示す説明図である。
図6】エッチングを行う前の状態のセラミックス基板を示し、(a)は表面を示す平面図、(b)は側面図、(c)は裏面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るセラミックス基板の構成例を示し、(a)は表(おもて)面を示す平面図、(b)は側面図、(c)は裏面を示す平面図である。このセラミックス基板1は、平板状のセラミックスからなる絶縁基材2と、絶縁基材2の第1の主面2aに設けられた第1のろう材層31と、絶縁基材2の第2の主面2bに設けられた第2のろう材層32と、第1のろう材層31を介して絶縁基材2の第1の主面2a側に固定された金属からなる第1の金属層41と、第2のろう材層32を介して絶縁基材2の第2の
主面2b側に固定された金属からなる第2の金属層42とを備えている。
【0010】
本実施の形態では、セラミックス基板1が集合基板であり、より具体的にはセラミック集合回路基板である。セラミックス基板1は、図1(a)及び(b)に示す破線で切断されて複数のセラミックス分割基板11~14に分割される。複数のセラミックス分割基板11~14のそれぞれには、表面側に電気回路部品が搭載され、裏面側に放熱部品が取り付けられる。なお、本実施の形態では、セラミックス基板1がセラミックス分割基板11~14に4分割されるが、セラミックス基板の分割数は4に限らず、2又は3でもよく、5以上であってもよい。
【0011】
第1の金属層41及び第2の金属層42は、厚みが均一になるように形成された金属板からなる。この金属板としては、電気抵抗が低く熱導電性が高いものが望ましい。本実施の形態では第1の金属層41及び第2の金属層42が銅板からなるが、第1の金属層41及び第2の金属層42をアルミニウム板としてもよい。ただし、熱膨張率の違いによる反りの発生を防ぐため、第1の金属層41と第2の金属層42とを同種の金属とすることが望ましい。
【0012】
第1の金属層41は、電気回路部品が搭載される回路板である。第2の金属層42は、第1の金属層41に搭載された電気回路部品で発生した熱を放熱する放熱板である。セラミックス基板1の反りを抑制するため、第1の金属層41の厚さと第2の金属層42の厚さとは同程度であることが望ましく、本実施の形態では第1の金属層41の厚さと第2の金属層42の厚さとの差が0.02mm以下である。より具体的には、第1の金属層41の各部位における厚みの最大値と第2の金属層42の各部位における厚さの最小値との差、及び第1の金属層41の各部位における厚みの最小値と第2の金属層42の各部位における厚さの最大値との差が、何れも0.02mm以下である。
【0013】
図2は、分割された一つのセラミックス分割基板11の表面側に第1乃至第3の電気回路部品51~53が搭載され、裏面側に放熱部品としてのヒートシンク50が取り付けられた状態を示し、(a)は表面を示す平面図、(b)は側面図である。第1乃至第3の電気回路部品51~53は、例えばトランジスタやダイオード等のパワーモジュールであり、発熱部品である。ヒートシンク50は、平板状のベースプレート501と、ベースプレート501から突出するようにして設けられた複数の突片502とを有しており、第1乃至第3の電気回路部品51~53で発生して絶縁基材2から第2の金属層42に伝導した熱を空気中に放熱する。なお、セラミックス分割基板11~14に搭載される電気回路部品の種類、形状、及び数量等は、図2に例示するものに限らず、適宜変更して実施することが可能である。セラミックス分割基板11~14のそれぞれに搭載される電気回路部品の数は一つ以上であればよく、特に限定はない。また、図2では、裏面側にヒートシンク50を取り付けた例を示しているが、裏面側にヒートシンク50を取り付けなくてもよいし、裏面側にも電気回路部品を搭載してもよい。
【0014】
絶縁基材2は、一例として、珪素粉末と焼結助剤と有機バインダとを混合したスラリーをドクターブレード法によって厚みが一定の平板状に成形して切断し、脱脂処理及び窒化処理を施し、さらに焼結して形成した窒化珪素基板である。図1に示す例では、絶縁基材2が長方形状であり、長辺方向の長さL1が短辺方向の長さL2よりも長く形成されている。第1のろう材層31及び第2のろう材層32は、銅粉及び銀粉をバインダ及び溶剤と共に混成したろう材を、スクリーン印刷法によって絶縁基材2の第1の主面2a及び第2の主面2bに塗布して形成したものである。なお、絶縁基材2の原料が珪素粉末でなく窒化珪素粉末である場合には、窒化処理を省略してもよい。また、第1のろう材層31及び第2のろう材層32は、銀粉を含まないものであってもよい。
【0015】
次に、セラミックス基板1の製造方法について説明する。この製造方法は、例えば100から200のロット数の複数個のセラミックス基板1を連続して製造する方法であり、複数個の絶縁基材2の第1の主面2aにろう材を塗布して第1のろう材層31を形成する第1のろう材層形成工程と、複数個の絶縁基材2の第2の主面2bにろう材を塗布して第2のろう材層32を形成する第2のろう材層形成工程と、第1のろう材層31及び第2のろう材層32にそれぞれ金属板を重ねてろう付け及びエッチングし、第1の金属層41及び第2の金属層42を形成する金属層形成工程とを有する。第2のろう材層形成工程は、ロット数分の複数個の絶縁基材2の全てに第1のろう材層形成工程を施した後に行われ、金属層形成工程は、ロット数分の複数個の絶縁基材2の全てに第2のろう材層形成工程を施した後に行われる。
【0016】
図3は、第1のろう材層形成工程及び第2のろう材層形成工程において、ろう材をスクリーン印刷するためのスクリーン印刷装置6の構成例を示す概略構成図である。図4は、スクリーン印刷装置6に用いられるスクリーン7を示す平面図である。スクリーン印刷装置6は、絶縁基材2を載置する載置台61と、スキージユニット62と、スキージユニット62を絶縁基材2の長辺方向に沿って移動させる移動機構63と、スクリーン7を載置台61に対して移動不能に支持する支持部材64とを有している。第1のろう材層形成工程では、第1の主面2aを鉛直方向上側に向けて絶縁基材2を載置台61に載置し、第2のろう材層形成工程では、第2の主面2bを鉛直方向上側に向けて絶縁基材2を載置台61に載置する。
【0017】
移動機構63は、一例として、電動モータ631、ボールねじ632、及びガイドレール633を有して構成されており、スキージユニット62を図3に実線で示す原位置と二点鎖線で示す移動端位置との間で直線移動させる。スキージユニット62は、ユニットケース620と、往路用の第1のスキージ621と、復路用の第2のスキージ622と、第1のスキージ621に連結された第1の昇降ロッド623と、第2のスキージ622に連結された第2の昇降ロッド624とを備えている。ユニットケース620は、ボールねじ632の回転によってスクリーン7の上方を移動する。第1の昇降ロッド623及び第2の昇降ロッド624は、例えば油圧又は空気圧により、ユニットケース620に対して上下方向に移動する。
【0018】
スクリーン7は、枠体71と、枠体71に固定された平板状のスクリーンマスク72とを有している。スクリーンマスク72は、ペースト状のろう材30を透過させる複数の透過孔730が形成されたメッシュ部73と、透過孔730が形成されていない非メッシュ部74とを有している。メッシュ部73は、枠体71の内側の中心部を含む位置に矩形状に設けられ、非メッシュ部74は、メッシュ部73の外側を囲むように形成されている。なお、図3では、枠体71の一部を破断してスクリーンマスク72を示している。
【0019】
メッシュ部73は、絶縁基材2の長辺方向と平行に張り渡された複数の縦糸731と、絶縁基材2の短辺方向と平行に張り渡された複数の横糸732とを格子状に編み合わせて構成されており、二本の縦糸731及び二本の横糸732によって囲まれた部分が透過孔730となっている。スキージユニット62の移動方向に沿った方向のメッシュ部73の長さL3は、絶縁基材2の長辺方向の長さL1よりも僅かに短く、スキージユニット62の移動方向に対して垂直な方向のメッシュ部73の長さL4は、絶縁基材2の短辺方向の長さL2よりも僅かに短い。
【0020】
第1の昇降ロッド623が下降すると、第1のスキージ621がスクリーンマスク72に接触し、第1の昇降ロッド623が上昇すると、第1のスキージ621がスクリーンマスク72から離間する。同様に、第2の昇降ロッド624が下降すると、第2のスキージ622がスクリーンマスク72に接触し、第2の昇降ロッド624が上昇すると、第2のスキージ622がスクリーンマスク72から離間する。第1のスキージ621及び第2のスキージ622は、スキージユニット62の移動方向に対して垂直な方向に延在する長板状であり、その延在方向の長さがメッシュ部73の同方向の長さL4よりも長く形成されている。
【0021】
第1のろう材層形成工程及び第2のろう材層形成工程の開始時には、図3及び図4に示すように、メッシュ部73よりもスキージユニット62の原位置側における非メッシュ部74上にろう材30が盛られ、第1のスキージ621がろう材30を透過孔730から絶縁基材2側に押し出しながら、メッシュ部73上をスキージユニット62の移動端に向かって移動する。スキージユニット62が移動端まで移動すると、第1のスキージ621が上昇すると共に第2のスキージ622が下降し、第2のスキージ622がろう材30を透過孔730から絶縁基材2側に押し出しながらメッシュ部73上を移動する。この一回のスキージユニット62の往復移動によって、メッシュ部73の厚みに応じた厚みでろう材30が絶縁基材2に塗布される。なお、1枚の絶縁基材2に対して、複数回のスキージユニット62の往復移動によってろう材30を塗布するようにしてもよく、往路又は復路の何れかのスキージユニット62の片道移動によってろう材30を塗布するようにしてもよい。
【0022】
第1のろう材層形成工程及び第2のろう材層形成工程では、スクリーン7上にろう材30を複数回にわたって補給しながら、ろう材30を第1のスキージ621及び第2のスキージ622によって絶縁基材2側に押し出すスクリーン印刷によってろう材30を塗布する。例えば、第1のろう材層形成工程又は第2のろう材層形成工程において200枚の絶縁基材2に対して連続してスクリーン印刷を行う場合には、10枚の絶縁基材2に対してスクリーン印刷を行うたびに、合計19回のろう材30の補給を行う。このように、第1のろう材層形成工程及び第2のろう材層形成工程では、ろう材30を補給した後、次にろう材30を補給するまでの間に、複数(上記の例では10枚)の絶縁基材2に対してスクリーン印刷法によってろう材30を塗布する。
【0023】
第1のろう材層形成工程では、複数の絶縁基材2の第1の主面2aにろう材30を塗布した後、このろう材30を恒温槽で乾燥させて固化させる。第2のろう材層形成工程でも同様に、複数の絶縁基材2の第2の主面2bにろう材30を塗布した後、このろう材30を恒温槽で乾燥させて固化させる。金属層形成工程では、ろう材30が固化した第1のろう材層31及び第2のろう材層32にそれぞれ金属板を重ね、これら2枚の金属板によって絶縁基材2を挟んで荷重を加えた状態で800℃程度に加熱し、ろう付けを行う。その後、これらの金属板のそれぞれの一部をエッチングにより除去し、第1の金属層41及び第2の金属層42を形成する。なお、第1の金属層41及び第2の金属層42を予め所定の形状に加工することで、エッチングを省略してもよい。
【0024】
図5は、第1のろう材層形成工程後に複数の絶縁基材2を恒温槽81で乾燥させている状態を示す説明図である。複数の絶縁基材2は、第1の主面2a側に空間が形成されるようにトレー82に乗せられ、第1のろう材層形成工程においてろう材30が塗布された順に従って、下からトレー82が順次積み上げられる。これにより、第1のろう材層形成工程においてろう材30が塗布された絶縁基材2の順番を管理することができる。第2のろう材層形成工程では、第1のろう材層形成工程においてろう材30が塗布された順に、複数の絶縁基材2の第2の主面2bにろう材30を塗布する。つまり、第1のろう材層形成工程においてn番目(nはロット数以下の自然数)にろう材30が塗布された絶縁基材2は、第2のろう材層形成工程においても、n番目にろう材30が塗布される。これは、それぞれの絶縁基材2について、第1のろう材層31の厚さT1(図1(b)参照)と、第2のろう材層32の厚さT2(図1(b)参照)とを均等化するための措置である。
【0025】
上記のようにスクリーン印刷を行った場合、塗布されるろう材30の厚さが、スクリーン7上にろう材30を補給した直後では薄く、その後スクリーン印刷を繰り返すたびに徐々に厚くなること、及びろう材30の厚さの変化の程度がメッシュ部73の部位によって異なることが本発明者らによって確認されている。これには、ろう材30のバインダの揮発成分の揮発による粘性の増加が関与していると考えられる。ろう材30の粘性が増加すると、ろう材30が絶縁基材2に粘着しやすくなり、第1のろう材層31及び第2のろう材層32が厚くなりやすい。すなわち、第1のろう材層形成工程及び第2のろう材層形成工程において塗布される絶縁基材2上の各部位におけるろう材30の厚さは、ろう材30の補給を行った後のスクリーン印刷の実行回数と相関がある。
【0026】
また、本発明者らによって、第1のろう材層31の厚さと第2のろう材層32の厚さとの差が大きくなると、セラミックス基板1に生じる反りが大きくなることが確認されている。これは、金属層形成工程における加熱後の冷却時に第1のろう材層31及び第2のろう材層32が収縮するため、例えば第1のろう材層31の厚さが第2のろう材層32の厚さよりも大きいと、第1のろう材層31の収縮力によって第1の主面2a側が凹状となるように絶縁基材2が湾曲し、逆に第2のろう材層32の厚さが第1のろう材層31の厚さよりも大きいと、第2のろう材層32の収縮力によって第2の主面2b側が凹状となるように絶縁基材2が湾曲するためであると考えられる。
【0027】
このため、本実施の形態では、絶縁基材2のそれぞれについて、第1のろう材層形成工程においてろう材30を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値と、第2のろう材層形成工程においてろう材30を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値とを一致させる。つまり、第1のろう材層形成工程において、ろう材30を補給した後、例えば3回目にスクリーン印刷を行った絶縁基材2については、第2のろう材層形成工程においても同様に、ろう材30を補給した後の3回目にスクリーン印刷を行う。これにより、セラミックス基板1における第1のろう材層31の厚さと第2のろう材層32の厚さとの差を小さくすることができ、絶縁基材2の反り量を抑制することが可能となる。
【0028】
本実施の形態では、セラミックス基板1の任意の箇所における第1のろう材層31の厚さと第2のろう材層32の厚さとの差が、4.0μm以下である。また、セラミックス基板1の任意の箇所における第1のろう材層31の厚さ及び第2のろう材層32の厚さのうち、厚い方をTaとし、薄い方をTbとしたとき、(Ta-Tb)/Ta≦0.2の関係式を満たす。これにより、セラミックス基板1は、絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの絶縁基材2の反り量が0.03mm以下となっている。なお、ここで反り量とは、測定対象範囲の両端を結ぶ線分に対するセラミックス基板1の厚さ方向のずれ量の常温(20℃)における最大値をいう。
【0029】
(実施例)
次に、セラミックス基板1のより具体的な実施例について説明する。図6は、金属層形成工程におけるエッチングを行う前の状態のセラミックス基板10を示し、(a)は表面を示す平面図、(b)は側面図、(c)は裏面を示す平面図である。このセラミックス基板10は、絶縁基材2の第1の主面2a側に第1のろう材層31によって第1の金属板401がろう付けされ、絶縁基材2の第2の主面2b側に第2のろう材層32によって第2の金属板402がろう付けされている。
【0030】
第1の金属板401は、エッチングによって不要部分が除去されて第1の金属層41となり、第2の金属板402は、エッチングによって不要部分が除去されて第2の金属層42となる。このエッチングでは、第1の金属板401及び第2の金属板402に所定形状のエッチングレジストパターンを形成し、薬液により第1の金属板401及び第2の金属板402の一部を除去する。その後、ろう材除去用の薬液を用いて、第1の金属板401及び第2の金属板402が除去された部分の第1のろう材層31及び第2のろう材層32を除去する。
【0031】
絶縁基材2は、長辺方向の長さL1が190.5mm、短辺方向の長さL2が138.0mm、厚さT0が0.32mmである。第1の金属板401及び第2の金属板402は、矩形状の平板であり、長辺方向の長さL11,L21が188.4mm、短辺方向の長さL12,L22が133.6mm、厚さT10,T20が0.8mmである。第1のろう材層31及び第2のろう材層32は、第1の金属板401及び第2の金属板402と同じ大きさで形成されている。
【0032】
図6(a)には、第1のろう材層31の厚みの第1乃至第9の測定箇所311~319を示し、図6(c)には、第2のろう材層32の厚みの第1乃至第9の測定箇所321~329を示している。第2のろう材層32の第1の測定箇所321は、第1のろう材層31の第1の測定箇所311の裏側にあたる。第2のろう材層32の第2乃至第9の測定箇所322~329についても同様に、第1のろう材層31の第2乃至第9の測定箇所312~319の裏側にあたる。図6(a)及び(c)に示す矢印A1,A2は、第1のろう材層形成工程及び第2のろう材層形成工程においてスクリーン印刷を行う際のスキージユニット62の往路の移動方向を示している。
【0033】
また、図6(a)及び(c)に示すように、第1の測定箇所311,321、第3の測定箇所313,323、第7の測定箇所317,327、及び第9の測定箇所319,329は、第1の金属板401及び第2の金属板402の角部にあたる。第5の測定箇所315,325は、第1の金属板401及び第2の金属板402の中央部にあたる。第2の測定箇所312,322及び第8の測定箇所318,328は、第1の金属板401及び第2の金属板402の長辺の中央部にあたる。第4の測定箇所314,324及び第6の測定箇所316,326は、第1の金属板401及び第2の金属板402の短辺の中央部にあたる。
【0034】
表1は、第1のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値と、第2のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値とを一致させた場合の各測定箇所311~319における第1のろう材層31の厚み、各測定箇所321~329における第2のろう材層32の厚み、及びそれぞれの厚みの差(第1のろう材層31の厚みから第2のろう材層32の厚みを減算した値)を示す。表1に示すように、本実施例では、何れの測定箇所311~319,321~329においても、第1のろう材層31の厚みと第2のろう材層32の厚みとの差の絶対値が4.0μm以下である。また、第1のろう材層31の厚さ及び第2のろう材層32の厚さのうち、厚い方をTaとし、薄い方をTbとしたとき、(Ta-Tb)/Ta≦0.2の関係式を満たしている。
【0035】
【表1】
【0036】
表2は、第1のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値と、第2のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値とを一致させなかった場合の比較例に係る各測定箇所311~319における第1のろう材層31の厚み、各測定箇所321~329における第2のろう材層32の厚み、及びそれぞれの厚みの差を示す。この比較例では、測定箇所311~319の一部において、第1のろう材層31の厚みと第2のろう材層32の厚みとの差の絶対値が4.0μmを超えている。また、測定箇所311~319の一部では、(Ta-Tb)/Taの値が0.2よりも大きい。
【0037】
【表2】
【0038】
この比較例では、実施例よりも絶縁基材2の反りが大きく、絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量が0.03mmよりも大きかった。すなわち、第1のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値と、第2のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値とを一致させることにより、第1のろう材層31の厚みと第2のろう材層32の厚みとの差を小さくすることができ、絶縁基材2の各辺に沿った方向の100mmあたりの反り量を0.03mm以下にできることが確認された。
【0039】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、第1のろう材層31の厚さと第2のろう材層32の厚さとの差を4.0μm以下とすることにより、セラミックス基板1の反りを抑制することが可能となる。また、第1のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値と、第2のろう材層形成工程におけるスクリーン印刷の回数値とを一致させることにより、工程を追加することなく、各測定箇所における第1のろう材層31の厚さと第2のろう材層32の厚さとの差を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、コストを抑制しながらも、反りを抑制することが可能となる。
【0040】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0041】
[1]平板状のセラミックスからなる絶縁基材(2)と、前記絶縁基材(2)の第1の主面(2a)に設けられた第1のろう材層(31)と、前記絶縁基材(2)の第2の主面(2b)に設けられた第2のろう材層(32)と、前記第1のろう材層(31)を介して前記絶縁基材(2)の前記第1の主面(2a)側に固定された金属からなる第1の金属層(41)と、前記第2のろう材層(32)を介して前記絶縁基材(2)の前記第2の主面(2b)側に固定された金属からなる第2の金属層(42)とを備え、任意の箇所における前記第1のろう材層(31)の厚さと前記第2のろう材層(32)の厚さとの差が、4.0μm以下である、セラミックス基板(1)。
【0042】
[2]任意の箇所における前記第1のろう材層(31)の厚さ及び前記第2のろう材層(32)の厚さのうち、厚い方をTaとし、薄い方をTbとしたとき、(Ta-Tb)/Ta≦0.2の関係式を満たす、上記[1]に記載のセラミックス基板(1)。
【0043】
[3]前記第1の金属層(41)及び前記第2の金属層(42)は、一方が電気回路部品(51~53)が搭載される回路板であり、他方が熱を放熱する放熱板であり、前記第1の金属層(41)の厚さと前記第2の金属層(42)の厚さとの差が0.02mm以下である、上記[1]又は[2]に記載のセラミックス基板(1)。
【0044】
[4]前記絶縁基材(2)が矩形状であり、前記絶縁基材(2)の各辺に沿った方向の100mmあたりの前記絶縁基材(2)の反り量が0.03mm以下である、上記[1]乃至[3]の何れか一つに記載のセラミックス基板(1)。
【0045】
[5]上記[1]乃至[4]の何れか一つに記載のセラミックス基板(1)を複数個連続して製造するセラミックス基板の製造方法であって、前記複数個の前記絶縁基材(2)の前記第1の主面(2a)にろう材(30)を塗布して前記第1のろう材層(31)を形成する第1のろう材層形成工程と、前記複数個の前記絶縁基材(2)の前記第2の主面(2b)にろう材(30)を塗布して前記第2のろう材層(32)を形成する第2のろう材層形成工程と、前記第1のろう材層(31)及び前記第2のろう材層(32)にそれぞれ金属板(401,402)を重ねてろう付けし、前記第1の金属層(41)及び前記第2の金属層(42)を形成する金属層形成工程と、を備え、前記第1のろう材層形成工程及び前記第2のろう材層形成工程では、スクリーン(7)上に前記ろう材(30)を複数回にわたって補給しながら前記ろう材(30)をスキージによって前記絶縁基材(2)側に押し出すスクリーン印刷によって前記ろう材(30)を塗布し、前記ろう材(30)を補給した後、次に前記ろう材(30)を補給するまでの間に、複数の前記絶縁基材(2)に対して前記ろう材(30)を塗布し、前記絶縁基材(2)のぞれぞれについて、前記第1のろう材層形成工程において前記ろう材(30)を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値と、前記第2のろう材層形成工程において前記ろう材(30)を補給した後の何回目のスクリーン印刷であるかを示す回数値とを一致させる、セラミックス基板の製造方法。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0047】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、セラミックス基板1が集合基板であり、複数のセラミックス分割基板11~14に分割される場合について説明したが、これに限らず、集合基板ではないセラミックス基板に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…セラミックス基板 2…絶縁基材
2a…第1の主面 2b…第2の主面
30…ろう材 31…第1のろう材層
32…第2のろう材層 401…第1の金属板
402…第2の金属板 41…第1の金属層
42…第2の金属層 621…第1のスキージ
622…第2のスキージ 7…スクリーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6