IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人三重大学の特許一覧

<>
  • 特開-光給電装置及び光システム 図1
  • 特開-光給電装置及び光システム 図2
  • 特開-光給電装置及び光システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147364
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】光給電装置及び光システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20231005BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02J7/35 J
H02J1/00 306K
H02J1/00 308A
H02J1/00 308H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022054812
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】川野 友裕
(72)【発明者】
【氏名】中江 和英
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 ひろし
(72)【発明者】
【氏名】片山 和典
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165EA02
5G165EA03
5G165EA04
5G165GA04
5G165KA02
5G165KA05
5G165LA01
5G165NA05
5G165NA06
5G503AA06
5G503BA02
5G503BA07
5G503BB01
5G503DA04
5G503DA17
5G503DA18
(57)【要約】
【課題】本開示では、新たな光源を設置せずに、微弱な光から必要な電力を供給することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る光給電装置は、入力された光を電力に変換する光電変換部と、前記光電変換部で変換された電力の一部を蓄える第1の蓄電部と、前記第1の蓄電部の電圧に基づき、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力を出力する起動部と、前記第1の蓄電部の電圧に基づき、前記光電変換部で変換された電力の残部を出力する蓄電制御部と、前記蓄電制御部から出力された電力を蓄える第2の蓄電部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された光を電力に変換する光電変換部と、
前記光電変換部で変換された電力の一部を蓄える第1の蓄電部と、
前記第1の蓄電部の電圧に基づき、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力を出力する起動部と、
前記第1の蓄電部の電圧に基づき、前記光電変換部で変換された電力の残部を出力する蓄電制御部と、
前記蓄電制御部から出力された電力を蓄える第2の蓄電部と、
を備える光給電装置。
【請求項2】
前記蓄電制御部は、前記起動部が前記第1の蓄電部で蓄えられた電力を出力してから、前記光電変換部で変換された電力を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の光給電装置。
【請求項3】
前記起動部は、第1の閾値電圧と、前記第1の閾値電圧より低い第2の閾値電圧とを有し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第1の閾値電圧以上になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を開始し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第2の閾値電圧以下になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を終了し、
前記蓄電制御部は、前記第1の閾値電圧より大きい第3の閾値電圧を有し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第3の閾値電圧以上である場合に、前記光電変換部で変換された電力を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の光給電装置。
【請求項4】
前記蓄電制御部は、前記起動部が前記第1の蓄電部で蓄えられた電力を出力することと並行して、前記光電変換部で変換された電力を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の光給電装置。
【請求項5】
前記起動部は、第1の閾値電圧と、前記第1の閾値電圧より低い第2の閾値電圧とを有し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第1の閾値電圧以上になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を開始し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第2の閾値電圧以下になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を終了し、
前記蓄電制御部は、前記第1の閾値電圧に等しい第3の閾値電圧を有し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第3の閾値電圧以上である場合に、前記光電変換部で変換された電力を出力する
ことを特徴とする請求項4に記載の光給電装置。
【請求項6】
前記起動部は、
前記第1の蓄電部から出力された電圧を分圧する第1の分圧抵抗と、
前記第1の分圧抵抗で分圧された電圧が前記第1の閾値電圧以上になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を開始し、前記第1の分圧抵抗で分圧された電圧が前記第2の閾値電圧以下になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を終了するロードスイッチと、
を備えることを特徴とした請求項3又は5に記載の光給電装置。
【請求項7】
前記蓄電制御部は、
前記第1の蓄電部から出力された電圧を分圧する第2の分圧抵抗と、
前記第2の分圧抵抗で分圧された電圧に応じて、前記光電変換部から前記蓄電制御部へ出力された電力の一部の通電及び遮断を切り替えるNチャンネルFETと、
前記NチャンネルFETにおける、前記光電変換部から前記蓄電制御部へ出力された電力の一部の通電及び遮断の切り替えに従って、前記光電変換部から前記蓄電制御部へ出力された電力の残部の通電及び遮断を切り替えるPチャンネルFETと、を備え、
前記第3の閾値電圧は、少なくとも前記NチャンネルFETのゲート閾値電圧で決定される
ことを特徴とした請求項3、5又は6に記載の光給電装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の光給電装置と、
前記第2の蓄電部で蓄えられた電力で動作する負荷装置と、
前記光電変換部が出力する電圧、前記第1の蓄電部の電圧及び前記第2の蓄電部の電圧に基づき前記負荷装置の動作を制御する制御装置と、
を備える光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容易に電源を確保できない地下マンホール内や、架空クロージャ内に設置された負荷装置を駆動するための電力を光給電により供給するための光給電装置及び光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの光給電装置としては、例えばセンサーネットワークのための光給電ノード装置が提案されている。電力を供給するための給電用光源を設置し、給電用光源からの光信号を遠隔地に設置された複数のノード装置に伝送し電力を供給し、無線センサ又は有線センサを駆動しセンサ情報を取得する技術である(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Y. Tanaka, S. Kobayashi, A. Shiomichi and T. Kurokawa, “Low power fiber sensor network deploying both wired and wireless sensors using optical power supply with WDM technique,” 2016 IEEE Photonics Conference (IPC), 2016, pp. 819-820, doi: 10.1109/IPCon.2016.7831080.
【非特許文献2】TEXAS INSTRUMENTS,“TPS22919-Q1 5.5V,1.5A,90mΩ 自己保護ロード・スイッチデータシート”, https://www.tij.co.jp/product/jp/TPS22919-Q1, (Accessed online 2021.10.18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
関連技術に係る装置では、無線センサ又は有線センサを駆動しセンサ情報を取得するために必要な電力は、それぞれ510μWおよび118μW必要である。例えば510μWの電力を供給するためには、光電変換器の効率を30%とすると1.7mWの光給電が必要になる。既設の光アクセスネットワークに供給されている光信号強度は0.1mW程度であるので、新たな光源を別途設置せずに、無線センサおよび有線センサに必要な電力を供給することは困難であるという課題があった。
【0005】
無線センサ又は有線センサ等の負荷装置を動作させるためには、まずマイクロプロセッサー等の制御装置を動作させる必要がある。マイクロプロセッサー等の制御装置は近年、低消費電力化が進められており、一旦起動した後にはスリープモード等の超低消費動作により、光信号強度0.1mW程度での動作を実現することが可能となっている。しかしながら、制御装置の起動時にはより多くの電力を必要としており、既設の光アクセスネットワークに供給されている微弱な光信号により制御装置を起動し、負荷装置を動作させることは困難であった。そのため、新たな光源を設置せずに、微弱な光信号により負荷装置を動作させることができないという課題があった。
【0006】
前記課題を解決するために、本開示は、新たな光源を設置せずに、微弱な光から必要な電力を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の光給電装置は、光を電力に変換して2つの蓄電部に蓄電し、一方の蓄電部が所望の蓄電量に達したら起動部が電力の供給を始め、他方の蓄電部が蓄電を始める。
【0008】
具体的には、本開示に係る光給電装置は、
入力された光を電力に変換する光電変換部と、
前記光電変換部で変換された電力の一部を蓄える第1の蓄電部と、
前記第1の蓄電部の電圧に基づき、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力を出力する起動部と、
前記第1の蓄電部の電圧に基づき、前記光電変換部で変換された電力の残部を出力する蓄電制御部と、
前記蓄電制御部から出力された電力を蓄える第2の蓄電部と、
を備える。
【0009】
本開示に係る光給電装置では、
前記蓄電制御部は、前記起動部が前記第1の蓄電部で蓄えられた電力を出力してから、前記光電変換部で変換された電力を出力してもよい。
【0010】
本開示に係る光給電装置では、
前記起動部は、第1の閾値電圧と、前記第1の閾値電圧より低い第2の閾値電圧とを有し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第1の閾値電圧以上になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を開始し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第2の閾値電圧以下になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を終了し、
前記蓄電制御部は、前記第1の閾値電圧より大きい第3の閾値電圧を有し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第3の閾値電圧以上である場合に、前記光電変換部で変換された電力を出力してもよい。
【0011】
本開示に係る光給電装置では、
前記蓄電制御部は、前記起動部が前記第1の蓄電部で蓄えられた電力を出力することと並行して、前記光電変換部で変換された電力を出力してもよい。
【0012】
本開示に係る光給電装置では、
前記起動部は、第1の閾値電圧と、前記第1の閾値電圧より低い第2の閾値電圧とを有し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第1の閾値電圧以上になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を開始し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第2の閾値電圧以下になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を終了し、
前記蓄電制御部は、前記第1の閾値電圧に等しい第3の閾値電圧を有し、前記第1の蓄電部の電圧が前記第3の閾値電圧以上である場合に、前記光電変換部で変換された電力を出力してもよい。
【0013】
本開示に係る光給電装置では、
前記起動部は、
前記第1の蓄電部から出力された電圧を分圧する第1の分圧抵抗と、
前記第1の分圧抵抗で分圧された電圧が前記第1の閾値電圧以上になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を開始し、前記第1の分圧抵抗で分圧された電圧が前記第2の閾値電圧以下になった場合に、前記第1の蓄電部で蓄えられた電力の出力を終了するロードスイッチと、
を備えてもよい。
【0014】
本開示に係る光給電装置では、
前記蓄電制御部は、
前記第1の蓄電部から出力された電圧を分圧する第2の分圧抵抗と、
前記第2の分圧抵抗で分圧された電圧に応じて、前記光電変換部から前記蓄電制御部へ出力された電力の一部の通電及び遮断を切り替えるNチャンネルFETと、
前記NチャンネルFETにおける、前記光電変換部から前記蓄電制御部へ出力された電力の一部の通電及び遮断の切り替えに従って、前記光電変換部から前記蓄電制御部へ出力された電力の残部の通電及び遮断を切り替えるPチャンネルFETと、を備え、
前記第3の閾値電圧は、少なくとも前記NチャンネルFETのゲート閾値電圧で決定されてもよい。
【0015】
具体的には、本開示に係る光システムは、
前記光給電装置と、
前記第2の蓄電部で蓄えられた電力で動作する負荷装置と、
前記光電変換部が出力する電圧、前記第1の蓄電部の電圧及び前記第2の蓄電部の電圧に基づき前記負荷装置の動作を制御する制御装置と、
を備える。
【0016】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、新たな光源を設置せずに、微弱な光信号から必要な電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る光システムの構成の一例を示す。
図2】実施形態に係る起動部の構成の一例を示す。
図3】実施形態に係る蓄電制御部の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態に係る光システムの概略構成の一例を図1に示す。光システム10は、光給電装置11と、制御装置7と、負荷装置8とを備える。
【0021】
光給電装置11は、入力された光を電力に変換する光電変換部1と、光電変換部1で変換された電力の一部を蓄える第1の蓄電部として機能する起動用蓄電部3と、起動用蓄電部3の電圧に基づき、起動用蓄電部3で蓄えられた電力を出力する起動部6と、起動用蓄電部3の電圧に基づき、光電変換部1で変換された電力の残部を出力する蓄電制御部4と、前記蓄電制御部から出力された電力を蓄える第2の蓄電部として機能する動作用蓄電部5と、を備える。
【0022】
光電変換部1は、光ファイバ9と接続されている。光電変換部1は、光ファイバ9から入力された光を電力に変換し、変換した電力の一部を起動用蓄電部3へ出力し、変換した電力の残部を蓄電制御部4へ出力する。
【0023】
光給電装置11は、光電変換部1と起動用蓄電部3との間、及び光電変換部1と蓄電制御部4との間にそれぞれ逆流防止部2-1、2-2を備え、電力の逆流を防止してもよい。例えば、逆流防止部2-1、2-2はショットキバリアダイオードであってもよい。
【0024】
起動用蓄電部3は、光電変換部1で変換した電力の一部が入力される。起動用蓄電部3は、光電変換部1からの電力を蓄電する。以下、起動用蓄電部3の電圧をVsupplyとする。
【0025】
起動部6は、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyに基づいて、起動用蓄電部3に蓄電された電力を出力する。例えば、起動部6が図1に示すように、制御装置7と接続している場合は、起動部6が起動用蓄電部3に蓄積された電力を制御装置7へ出力することにより、制御装置7を起動させてもよい。起動部6の構成の一例は後述する。
【0026】
蓄電制御部4は、光電変換部1で変換した電力の残部が入力される。蓄電制御部4は、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyに基づいて、光電変換部1からの電力を出力する。例えば、蓄電制御部4は、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが、制御装置7を動作させるために必要な電圧に到達した段階で動作用蓄電部5が蓄電を開始するように光電変換部1からの電力の出力を制御してもよい。
【0027】
動作用蓄電部5は、蓄電制御部4からの電力を蓄電する。
【0028】
制御装置7は、光電変換部1が出力する電圧、起動用蓄電部3の電圧および動作用蓄電部5の電圧を監視し、これらに基づき負荷装置8の動作を制御する。例えば、光ファイバ9により供給される光が光信号であって、光信号を変調することで光電変換部1の出力電圧に動作指示信号を重畳させることができる。制御装置7は、動作指示信号により負荷装置8を動作させる指示があった場合には、動作用蓄電部5の電圧を確認し、負荷装置8を動作させるために必要な電力が蓄電されていることを確認した上で、負荷装置8に動作指示を与えてもよい。なお、本実施形態に係る制御装置7は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0029】
負荷装置8は、動作用蓄電部5に蓄えられた電力を用いて、制御装置7の動作指示に従って動作する。なお、本実施形態に係る負荷装置8としては、N×M光切替スイッチ、傾斜センサ、水位センサ、無線伝送装置、光伝送装置等、一般的な多種多様なデバイスを用いてもよい。
【0030】
起動部6の構成の一例を図2に示す。起動部6は、起動用分圧抵抗601と、ロードスイッチ602と、を備える。さらに、ロードスイッチ602は、入力端子603と、出力端子604と、出力制御端子605と、を備える。
【0031】
起動用分圧抵抗601は、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyを分圧し、分圧した電圧をロードスイッチ602の出力制御端子605に入力する。
【0032】
ロードスイッチ602は、起動用蓄電部3で蓄電された電力Vsupplyが入力端子603に入力される。ロードスイッチ602は、出力制御端子605に入力される電圧に基づき、入力端子603に入力された電力Vsupplyを出力制御端子605から出力する。
【0033】
具体的には、ロードスイッチ602は、出力制御端子605に入力される電圧とロードスイッチ602の閾値電圧との大小関係に応じて、電力を入力端子603から出力端子604に導通又は遮断することができる半導体素子である。ロードスイッチ602には、市販品を利用してもよい。ロードスイッチ602の一例としては、非特許文献2が挙げられる。
【0034】
ここで、出力制御端子605の閾値電圧をVthreshold、起動用分圧抵抗601の電圧側抵抗値をR1、グランド側抵抗値をR2とすると、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyを用いて式(1)の関係を得る。
(数1)
Vthreshold=Vsupply×R2/(R1+R2) (1)
式(1)の右辺が出力制御端子605に入力される電圧である。即ち、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが式(1)を満たす時に、入力端子603から出力端子604への電力の導通が開始され、制御装置7に電力が出力される。
【0035】
したがって、起動部6では、起動用分圧抵抗601の抵抗値を調整することで、任意の電圧で制御装置7を起動させることが可能となる。例えば、ロードスイッチ602の出力制御端子605の閾値電圧Vthresholdが1Vであったとする。この場合において、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが2Vであるときに制御装置7を起動させるためには、R1=R2とする必要がある。これにより、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが2Vであるときには、起動用分圧抵抗601により出力制御端子605に1Vの電圧が入力される。この時、出力制御端子605の電圧が閾値電圧Vthreshold(=1V)以上となるので、ロードスイッチ602は、起動用蓄電部3からの電力を、入力端子603から出力端子604へ通電する。その結果、ロードスイッチ602は、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが2Vになった時に、起動用蓄電部3からの電力を、出力端子604から制御装置7へ出力し始め、制御装置7を起動することが可能となる。
【0036】
なお、一般的なロードスイッチ602では出力制御端子605に入力される電圧をデジタル的に操作することから、出力制御端子605にはヒステリシス特性を持たせる。具体的には、ロードスイッチ602は閾値電圧を2つ有し、出力端子604からの出力をOFFにする第2の閾値電圧を、出力端子604からの出力をONにする第1の閾値電圧よりも低く設定する。
【0037】
従って、ロードスイッチ602は、出力制御端子605に入力された電圧が第1の閾値電圧以上になった場合に、出力端子604からの電力の出力を開始する。ロードスイッチ602は、出力端子604からの電力の出力を開始した後は、出力制御端子605に入力された電圧が第2の閾値電圧以下になった場合に、出力端子604からの電力の出力を終了する。
【0038】
起動部6は、ロードスイッチ602を用いることで、起動用蓄電部3に制御装置7の起動に必要な電力が蓄電されるまで起動用蓄電部3と制御装置7を電気的に切り離しておくことができる。起動部6は、起動用蓄電部3に必要な電力が蓄電された時に、出力制御端子605の電圧が第1の閾値電圧以上になるように蓄電制御用分圧抵抗403の抵抗値を設定する。これにより、起動部6は、制御装置7の起動に必要な電力を供給することが可能となる。即ち、起動部6は、光電変換部1から常時出力される電力に比して大きな電力を制御装置7に供給することが可能になるので、制御装置7を起動することができる。
【0039】
蓄電制御部4の構成の一例を図3に示す。蓄電制御部4は、NチャンネルFET401、PチャンネルFET402、蓄電制御用分圧抵抗403及びプルアップ抵抗404により構成されてもよい。また、光電変換部1から蓄電制御部4へ出力された電力の一部は、プルアップ抵抗404に入力され、残部はPチャンネルFET402のソース端子に入力される。
【0040】
蓄電制御用分圧抵抗403は、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyを分圧し、分圧した電圧をNチャンネルFET401のゲート端子に入力する。
【0041】
NチャンネルFET401は、前述したように、蓄電制御用分圧抵抗403で分圧した電圧がゲート端子に入力される。NチャンネルFET401は、光電変換部1から蓄電制御部4へ出力された電力の一部がプルアップ抵抗404を介してドレイン端子に入力される。NチャンネルFET401は、ソース端子がグランドと接続されている。NチャンネルFET401は、ゲート端子に入力された電圧がゲート閾値電圧以上の場合に、ドレイン端子及びソース端子間を通電し、ドレイン端子に入力された電力をソース端子から出力する。
【0042】
PチャンネルFET402は、NチャンネルFET401のドレイン端子の電圧がゲート端子に入力される。PチャンネルFET402は、前述したように、光電変換部1から蓄電制御部4へ出力された電力の残部がソース端子に入力される。PチャンネルFET402は、ドレイン端子が動作用蓄電部5に接続されている。
【0043】
ここで、NチャンネルFET401では、NチャンネルFET401のドレイン端子及びソース端子間が通電すると、NチャンネルFET401のドレイン端子の電圧が0V付近まで低下する。これに伴い、PチャンネルFET402のゲート端子の電圧も0V付近まで低下する。この時、PチャンネルFET402は、ソース端子及びドレイン端子間を通電し、ソース端子に入力された電力をドレイン端子から動作用蓄電部5へ出力する。これにより、動作用蓄電部5は蓄電を開始する。
【0044】
つまり、NチャンネルFET401がドレイン端子及びソース端子間の電力を通電又は遮断すると、これに従ってPチャンネルFET402もソース端子及びドレイン端子間の電力を通電又は遮断することになる。したがって、蓄電制御部4が動作用蓄電部5へ電力を出力するか否かは、起動用蓄電部3の電圧VsupplyとNチャンネルFET401のゲート閾値電圧との大小関係によって定まる。
【0045】
NチャンネルFET401のゲート閾値電圧をVg_threshold、蓄電制御用分圧抵抗403の電圧側抵抗値をR3、グランド側抵抗値をR4とすると、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyを用いて式(2)の関係を得る。
(数2)
Vg_threshold=Vsupply×R4/(R3+R4) (2)
式(2)の右辺がNチャンネルFET401のゲート端子に入力される電圧である。即ち、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが式(2)を満たす時に、前述したように、NチャンネルFET401がドレイン端子及びソース端子間の電力を通電するとともに、PチャンネルFET402がソース端子及びドレイン端子間の電力を通電し、動作用蓄電部5へ電力が出力される。
【0046】
したがって、蓄電制御部4では、蓄電制御用分圧抵抗403の抵抗値を調整することで、任意の電圧で動作用蓄電部5の蓄電を開始させることが可能となる。例えば、NチャンネルFET401のゲート閾値電圧Vg_thresholdが1Vであったとする。この場合において、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが2Vである時に動作用蓄電部5の蓄電を開始させるためには、R3=R4とする必要がある。これにより、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが2Vであるときには、蓄電制御用分圧抵抗403によりNチャンネルFET401のゲート端子に1Vの電圧が入力される。この時、NチャンネルFET401のゲート端子の電圧がゲート閾値電圧Vg_threshold(=1V)以上となるので、NチャンネルFET401は、ドレイン端子及びソース端子間の電力を通電する。これに伴い、PチャンネルFET402がソース端子及びドレイン端子間の電力を通電する。その結果、PチャンネルFET402は、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが2Vになった時に、光電変換部1から蓄電制御部4に入力された電力の残部を、ドレイン端子から動作用蓄電部5へ出力し始め、動作用蓄電部5の蓄電を開始させることが可能となる。
【0047】
なお、蓄電制御部4の動作は、NチャンネルFET401のゲート端子の電圧がゲート閾値電圧以上になるとPチャンネルFET402のドレイン端子からの出力がONとなる点で起動部6の動作と同様である。しかし、NチャンネルFET401のゲート端子にヒステリシス特性はなく、PチャンネルFET402のドレイン端子からの出力がOFFになるNチャンネルFET401のゲート閾値電圧が、PチャンネルFET402のドレイン端子からの出力がONになるNチャンネルFET401のゲート閾値電圧と等しい点で異なる。
【0048】
したがって、起動用蓄電部3の電圧Vsupplyが2V未満となると、NチャンネルFET401のゲート端子に入力される電圧が1V未満となる。その結果、NチャンネルFET401のゲート端子の電圧がゲート閾値電圧(=1V)未満となるので、PチャンネルFET402のドレイン端子から動作用蓄電部5への蓄電は停止する。蓄電制御部4では、蓄電制御用分圧抵抗403の抵抗値を調整することで、起動用蓄電部3の任意の電圧Vsupplyで動作用蓄電部5の蓄電を開始させることができる。
【0049】
本実施形態に係る光給電装置11では、起動部6が起動用蓄電部3で蓄えられた電力を出力してから、蓄電制御部4が光電変換部1で変換された電力を出力してもよい。これは、例えば、蓄電制御用分圧抵抗403及び起動用分圧抵抗601が同じ構成である場合には、NチャンネルFET401のゲート閾値電圧を起動部6の第1の閾値電圧より大きくすることにより実現できる。
【0050】
本実施形態に係る光給電装置11では、起動部6が起動用蓄電部3で蓄えられた電力を出力することと並行して、蓄電制御部4が光電変換部1で変換された電力を出力してもよい。これは、例えば、蓄電制御用分圧抵抗403及び起動用分圧抵抗601が同じ構成である場合には、NチャンネルFET401のゲート閾値電圧を起動部6の第1の閾値電圧に等しくすることにより実現できる。
【0051】
以上説明したように、本開示によって、新たな光源を設置せずに、微弱な光信号から必要な電力を供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示に係る光給電装置及び光システムは、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:光電変換部
2-1、2-2:逆流防止部
3:起動用蓄電部
4:蓄電制御部
5:動作用蓄電部
6:起動部
7:制御装置
8:負荷装置
9:光ファイバ
10:光システム
11:光給電装置
401:NチャンネルFET
402:PチャンネルFET
403:蓄電制御用分圧抵抗
404:プルアップ抵抗
601:起動用分圧抵抗
602:ロードスイッチ
603:入力端子
604:出力端子
605:出力制御端子
図1
図2
図3