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特開2023-147505材料特性値予測方法、学習済みモデル生成方法、プログラム、および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147505
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】材料特性値予測方法、学習済みモデル生成方法、プログラム、および装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20231005BHJP
   G06V 10/776 20220101ALI20231005BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20231005BHJP
   G01N 23/2251 20180101ALI20231005BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06V10/776
G01N33/00 D
G01N23/2251
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055035
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲
(72)【発明者】
【氏名】今里 聡
(72)【発明者】
【氏名】保木井 悠介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 茂範
(72)【発明者】
【氏名】伏島 歩登志
【テーマコード(参考)】
2G001
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA07
2G001CA03
2G001FA29
2G001HA13
5L096CA01
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】材料の特性値の予測の精度を向上させる。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る方法は、材料の画像を取得し、前記材料の画像を位相的データ解析することにより、前記材料の特徴量を抽出し、前記材料の特徴量から前記材料の特性値を予測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の画像を取得し、
前記材料の画像を位相的データ解析することにより、前記材料の特徴量を抽出し、
前記材料の特徴量から前記材料の特性値を予測する方法。
【請求項2】
材料の画像、および、前記材料の特性値の実測値を取得し、
前記材料の画像を位相的データ解析することにより、前記材料の特徴量を抽出し、
前記材料の特徴量と前記材料の特性値の実測値を用いて機械学習モデルを作成し、前記材料の特徴量から前記材料の特性値を予測するための学習済みモデルを生成する方法。
【請求項3】
前記位相的データ解析は、パーシステントホモロジーである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料は、セラミックス、ガラスセラミックス、高分子材料、コンポジットレジン、グラスアイオノマー、金属のいずれかである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記特性値は、二軸曲げ強さである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記画像は、SEM画像である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記材料の特徴量を次元削減することをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記画像を分割し、
前記分割された画像から前記材料の特徴量を抽出する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記材料の特徴量を可視化することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記材料の特徴量の抽出に用いられるパラメータをベイズ最適化により決定することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータに
材料の画像を取得する手順、
前記材料の画像を位相的データ解析することにより、前記材料の特徴量を抽出する手順、
前記材料の特徴量から前記材料の特性値を予測する手順
を実行させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータに
材料の画像、および、前記材料の特性値の実測値を取得する手順、
前記材料の画像を位相的データ解析することにより、前記材料の特徴量を抽出する手順、
前記材料の特徴量と前記材料の特性値の実測値を用いて機械学習モデルを作成し、前記材料の特徴量から前記材料の特性値を予測するための学習済みモデルを生成する手順
を実行させるためのプログラム。
【請求項13】
材料の画像を取得する取得部と、
前記材料の画像を位相的データ解析することにより、前記材料の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記材料の特徴量から前記材料の特性値を予測する予測部と
を備えた装置。
【請求項14】
材料の画像、および、前記材料の特性値の実測値を取得する取得部と、
前記材料の画像を位相的データ解析することにより、前記材料の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記材料の特徴量と前記材料の特性値の実測値を用いて機械学習モデルを作成し、前記材料の特徴量から前記材料の特性値を予測するための学習済みモデルを生成する学習部と
を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料特性値予測方法、学習済みモデル生成方法、プログラム、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料開発では、実際に材料を作り当該材料の特性値を評価するという手法がとられていた。現在、マテリアルズインフォマティクスと呼ばれる、機械学習を用いて材料の特性値を予測する手法もとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-111360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、材料開発において、材料の特性値をさらに高い精度で予測できることが求められていた。本発明では、材料の特性値の予測の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る方法は、材料の画像を取得し、前記材料の画像を位相的データ解析することにより、前記材料の特徴量を抽出し、前記材料の特徴量から前記材料の特性値を予測する。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、材料の特性値の予測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る全体の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る予測装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る学習装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る予測処理のフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る学習処理のフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る画像の分割について説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態に係る画像の前処理について説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態に係る位相的データ解析(パーシステントホモロジー)について説明するための図である。
図9】本発明の一実施形態に係るベクトルの次元削減について説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態に係るベクトルの次元削減について説明するための図である。
図11】本発明の一実施形態に係る機械学習について説明するための図である。
図12】本発明の一実施形態に係る逆解析について説明するための図である。
図13】本発明の一実施形態に係る逆解析について説明するための図である。
図14】本発明の一実施形態に係る予測装置および学習装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
<用語の説明>
・本明細書において、「材料」は、任意の材料であってよい。例えば、「材料」は、医療用材料(例えば、歯科用材料)である。例えば、「材料」は、セラミックス、ガラスセラミックス、高分子材料、コンポジットレジン、グラスアイオノマー、金属(例えば、歯科用のセラミックス、歯科用のガラスセラミックス、歯科用の高分子材料、歯科用のコンポジットレジン、歯科用のグラスアイオノマー、歯科用の金属)のいずれかである。
・本明細書において、「特性値」は、任意の特性値であってよい。例えば、「特性値」は、機械的特性(例えば、二軸曲げ強さ、耐摩耗性等)である。
【0010】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る全体の構成を示す図である。ユーザ30は、予測装置10および学習装置20を操作する。なお、図1では、予測装置10と学習装置20とを別々の装置として説明したが、予測装置10と学習装置20とを1つの装置で実装してもよい。
【0011】
<<予測装置>>
予測装置10は、材料の特性値を予測する装置である。予測装置10は、1つまたは複数のコンピュータから構成される。予測装置10は、任意のネットワークを介して、学習装置20とデータを送受信することができる。
【0012】
<<学習装置>>
学習装置20は、材料の特性値を予測するときに用いられる学習済みモデルを生成する装置である。学習装置20は、1つまたは複数のコンピュータから構成される。学習装置20は、任意のネットワークを介して、予測装置10とデータを送受信することができる。
【0013】
<機能ブロック>
以下、図2を参照しながら予測装置10の機能ブロックについて説明し、図3を参照しながら学習装置20の機能ブロックについて説明する。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係る予測装置10の機能ブロック図である。予測装置10は、画像取得部101と、特徴量抽出部102と、予測部103と、を備える。また、予測装置10は、プログラムを実行することによって、画像取得部101、特徴量抽出部102、予測部103、として機能する。
【0015】
画像取得部(単に、取得部ともいう)101は、材料の画像を取得する。なお、画像取得部101は、取得した画像を分割し、当該分割した画像を用いてもよい。例えば、画像は、SEM(走査電子顕微鏡)画像である。
【0016】
特徴量抽出部102は、画像取得部101が取得した材料の画像(あるいは、分割した画像)に対して位相的データ解析を実施することにより、材料の特徴量を抽出する。例えば、位相的データ解析は、パーシステントホモロジーである。なお、特徴量抽出部102は、抽出した材料の特徴量の次元を削減(例えば、主成分分析)してもよい。
【0017】
予測部103は、学習装置20が生成した学習済みモデルを用いて、材料の特徴量から材料の特性値を予測する。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態に係る学習装置20の機能ブロック図である。学習装置20は、学習用データ取得部201と、特徴量抽出部202と、学習部203と、特徴量可視化部204と、最適化部205と、を備える。また、学習装置20は、プログラムを実行することによって、学習用データ取得部201、特徴量抽出部202、学習部203、特徴量可視化部204、最適化部205、として機能する。
【0019】
学習用データ取得部(単に、取得部ともいう)201は、学習済みモデルを生成するときに用いられる学習用データを取得する。具体的には、学習用データ取得部201は、材料の画像、および、当該材料の特性値の実測値を取得する。なお、学習用データ取得部201は、取得した画像を分割し、当該分割した画像を用いてもよい。例えば、画像は、SEM(走査電子顕微鏡)画像である。
【0020】
特徴量抽出部202は、学習用データ取得部201が取得した材料の画像(あるいは、分割した画像)に対して位相的データ解析を実施することにより、材料の特徴量を抽出する。例えば、位相的データ解析は、パーシステントホモロジーである。なお、特徴量抽出部202は、抽出した材料の特徴量の次元を削減(例えば、主成分分析)してもよい。
【0021】
学習部203は、材料の特徴量と材料の特性値の実測値を用いて機械学習モデルを作成し、材料の特徴量から材料の特性値を予測するための学習済みモデルを生成する。
【0022】
特徴量可視化部204は、材料の特徴量を可視化する。
【0023】
最適化部205は、材料の特徴量の抽出に用いられるパラメータをベイズ最適化により決定する。
【0024】
<処理方法>
以下、図4を参照しながら予測処理について説明し、図5を参照しながら学習処理について説明する。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態に係る予測処理のフローチャートである。
【0026】
ステップ11(S11)において、予測装置10の画像取得部101は、材料の画像を取得する。
【0027】
ステップ12(S12)において、予測装置10の画像取得部101は、S11で取得した画像を分割する。なお、S12は、省略されうる。
【0028】
ステップ13(S13)において、予測装置10の特徴量抽出部102は、S11で取得した材料の画像あるいはS12で分割した画像に対して位相的データ解析を実施することにより、材料の特徴量を抽出する。
【0029】
ステップ14(S14)において、予測装置10の特徴量抽出部102は、S13で抽出した材料の特徴量の次元を削減(例えば、主成分分析)する。なお、S14は、省略されうる。
【0030】
ステップ15(S15)において、予測装置10の予測部103は、学習装置20が生成した学習済みモデルを用いて、S13で抽出した材料の特徴量あるいはS14で次元削減した材料の特徴量から材料の特性値を予測する。
【0031】
ステップ16(S16)において、予測装置10の予測部103は、S15の予測の結果をユーザ30に提示(例えば、画面に表示)する。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態に係る学習処理のフローチャートである。
【0033】
ステップ21(S21)において、学習装置20の学習用データ取得部201は、学習済みモデルを生成するときに用いられる学習用データを取得する。具体的には、学習用データ取得部201は、材料の画像、および、当該材料の特性値の実測値を取得する。
【0034】
ステップ22(S22)において、学習装置20の学習用データ取得部201は、S21で取得した画像を分割する。なお、S22は、省略されうる。
【0035】
ステップ23(S23)において、学習装置20の最適化部205は、材料の特徴量の抽出に用いられるパラメータを決定する。例えば、学習装置20の最適化部205は、材料の特徴量の抽出に用いられるパラメータをベイズ最適化により決定する。
【0036】
ステップ24(S24)において、学習装置20の特徴量抽出部202は、S21で取得した材料の画像あるいはS22で分割した画像に対して位相的データ解析を実施することにより、材料の特徴量を抽出する。
【0037】
ステップ25(S25)において、学習装置20の特徴量抽出部202は、S24で抽出した材料の特徴量の次元を削減(例えば、主成分分析)する。なお、S25は、省略されうる。
【0038】
ステップ26(S26)において、学習装置20の特徴量可視化部204は、材料の特徴量を可視化する。
【0039】
ステップ27(S27)において、学習装置20の学習部203は、材料の特徴量と材料の特性値の実測値を用いて機械学習し、材料の特徴量から材料の特性値を予測するための学習済みモデルを生成する。
【0040】
以下、各処理について詳細に説明する。一例として、歯科用のガラスセラミックス(なお、ガラスセラミックスに対してアルカリエッチングを行い(つまり、ガラス質を溶かす)、結晶粒を露出させたもの)を用いた場合を説明する。
【0041】
<<画像の分割>>
まず、予測装置10および学習装置20は、SEM画像を分割する。図6は、本発明の一実施形態に係る画像の分割について説明するための図である。図6の左側は、分割前のSEM画像を示し、図6の右側は、分割後のSEM画像を示す。
【0042】
図6の左側の<分割前>に示されるように、SEM画像内に不要な部分がある場合には、当該不要な部分が切り取られる。そして、SEM画像が分割される(図6の例では4分割)。
【0043】
図6の右側の<分割後>に示されるように、1枚のSEM画像が複数枚の画像に分割される。なお、分割し過ぎると、画像に含まれている情報が失われてしまい予測の精度が悪くなるため、2~4分割が好ましい。このように、画像を分割することによって、機械学習用の学習データを増やすことができる。また、画像を分割することによって、ある1つの材料の画像内に不均一なところがあった場合に主成分分析で抽出することができる。
【0044】
<<画像の前処理>>
次に、予測装置10および学習装置20は、画像を前処理する。図7は、本発明の一実施形態に係る画像の前処理について説明するための図である。
【0045】
画像は、8ビットのグレースケールに統一された後、コンピュータ上で扱いやすいようにテキスト形式に変換される。1枚の画像につき、1つのテキスト形式のファイルが作成され、試作品や製品ごとに分けられる。
【0046】
画像を撮影した日にち、試作品や製品ごとに画像の明るさにバラつきがあるので、画像を標準化または正規化する。全画像の輝度の平均値、最大値、最小値を用いて、標準化(平均値が0、分散(標準偏差)が1になるようにスケーリング)、あるいは、正規化(最小値が0、最大値が1になるようにスケーリング)の計算を全画像に対して行う。
【0047】
<<位相的データ解析(パーシステントホモロジー)>>
次に、予測装置10および学習装置20は、画像を位相的データ解析(パーシステントホモロジー)する。図8は、本発明の一実施形態に係る位相的データ解析(パーシステントホモロジー)について説明するための図である。
【0048】
本発明の一実施形態では、各SEM画像(具体的には、テキスト形式)に対して、パーシステントホモロジーの計算を行い、n次のパーシステント図(例えば、0次のパーシステント図および1次のパーシステント図)を得る。なお、解析の対象となる画像によっては、あらかじめ二値化してから位相的データ解析をしてもよい。
【0049】
ここで、パーシステントホモロジーについて説明する。パーシステントホモロジーは、数学のトポロジーの概念を用いたデータ解析(位相的データ解析)の一種であり、図形の連結部分、孔、空隙等の構造に基づいて、データの形の情報を定量的に示す。パーシステント図では、図形の連結部分、孔、空隙等の発生(Birth)と消滅(Death)を示す。0次のパーシステントホモロジーは、点と点の連結、1次のパーシステントホモロジーは、点の集まりが作る環の関係性を計算している。このように、パーシステントホモロジーを用いることによって、材料の画像の位相的な特徴を見い出すことができる。
【0050】
<<特徴量の抽出(ベクトル化)>>
次に、予測装置10および学習装置20は、パーシステント図から特徴量を抽出(ベクトル化)する。具体的には、PI(Persistence Image)の手法(例えば、「パーシステントホモロジーの基礎と材料工学への適用例(https://www.jim.or.jp/journal/m/pdf3/58/01/17.pdf)」)を用いる。パーシステント図を格子状に区切り(例えば、128×128区画)、区画ごとのデータの点の頻度(密度)を、ベクトルの各要素とする。頻度(密度)は、正規分布に従うとする。
【0051】
分布関数ρは、式(1)で表される。D(X)は、Xのk次のパーシステント図であり、bは、birth(つまり、図形の連結部分、孔、空隙等の発生)であり、dは、death(つまり、図形の連結部分、孔、空隙等の消滅)である。
【0052】
式(2)により、パーシステント図の対角線からの距離に応じて、数値に重み付けをする(逆正接関数を用いる)。このように、パーシステント図上の各点の重要度(なお、パーシステント図の対角線から離れるほど重要度が高い)を反映させることができる。
【0053】
σ(標準偏差)、C、pは、パラメータであり、事前に人間が決定しておく必要がある。後述するように、材料の特徴量の抽出に用いられるパラメータ(σ(標準偏差)、C、p)をベイズ最適化により決定することができる。
【0054】
【数1】
【0055】
【数2】
【0056】
<<ベクトルの次元削減>>
次に、予測装置10および学習装置20は、特徴量(ベクトル)を次元削減する。図9および図10は、本発明の一実施形態に係るベクトルの次元削減について説明するための図である。パーシステント図から特徴量を抽出(ベクトル化)した結果、SEM画像1枚が、1300個程度の要素を有するベクトルに変換された。今回、合計1376枚のSEM画像を用いたため、データ全体が1300×1376の巨大な行列で構成されることとなる。このままでは、特徴量の可視化による確認や機械学習による高精度な予測ができないため、主成分分析を用いて特徴量(ベクトル)を次元削減した。
【0057】
図9では、累積寄与率を示す。縦軸は、累積寄与率を示し、横軸は、主成分の数を示す。特徴量(ベクトル)を次元削減した結果、第2主成分まででほぼ元のデータの100パーセントを説明できることが確認できた。
【0058】
図10では、第1主成分(横軸)と第2主成分(縦軸)を用いてデータを可視化した。各試作品・製品がクラスタを作っており、かつ、少しずつ異なるグラフ上の領域に存在しており、各材料に特有の情報を取り出せていることが確認できた。特徴量可視化部204は、図10のような各材料の分布を示すことによって、材料の特徴量を可視化する。
【0059】
<<機械学習>>
次に、学習装置20は、特徴量(ベクトル)を用いて機械学習を行う。図11は、本発明の一実施形態に係る機械学習について説明するための図である。
【0060】
主成分分析によってデータを12個の主成分まで縮約した(つまり、SEM画像1枚が12個の要素を有するベクトルで表現できるようになった)。この12個の主成分を説明変数、ガラスセラミックスの二軸曲げ強さ(実測値)を目的変数として、機械学習(サポートベクトル回帰、ランダムフォレスト回帰等)による回帰分析を行い、図11の右側に示す精度を得た(テストデータにおいてR2が0.9前後)。なお、機械学習モデルがもつハイパーパラメータの調整は、任意の最適化アルゴリズムにて実施してよい。例えば、グリッドサーチ、ランダムサーチ、ベイズ最適化、遺伝的アルゴリズムである。図11の左側は、学習用データ(dataset_train)と精度検証用データ(dataset_test)の二軸曲げ強さの実測値(横軸の実測値(MPa))と二軸曲げ強さの予測値(縦軸の予測値(MPa))を示す。
【0061】
<<ベイズ最適化>>
上述したように、学習装置20は、材料の特徴量の抽出に用いられるパラメータ(式(1)および式(2)のσ(標準偏差)、C、p)をベイズ最適化により決定することができる。さらに、学習装置20は、材料の特徴量の抽出に用いられるパラメータである主成分の数をベイズ最適化により決定することができる。なお、50回程度試行させると、最適値の組み合わせが見つかった。
【0062】
具体的には、ガウス過程回帰モデルを用いて、材料の特徴量から特性値の予測値および当該予測値のばらつきを算出して、獲得関数を算出する。この獲得関数に基づいて、最適なパラメータが決定される。このように、ベイズ最適化のアルゴリズムを併用することにより、人間が学習用データを作成して入力するだけで、学習装置20は自動で機械学習をして学習済みモデルを生成することができる。
【0063】
<<逆解析>>
上記のパーシステント図や主成分分析の結果を用いて、逆解析することができる。
【0064】
例えば、図12のように、パーシステント図上で一定の期間より長い寿命(Life time(つまり、BirthからDeathまでの期間))を有する点(例えば、図12の所定の線よりも左上の部分)は、画像上、重要な点であると想定される。そのため、一定の期間より長い寿命(Life time)を有する点(例えば、図12の所定の線よりも左上の部分)が、結晶のどのような構造に相当するのかを解析することによって、結晶の重要な構造を見い出すことができる。
【0065】
例えば、図13のように、他から離れた領域上に小さなクラスタを作る点は、結晶のどのような構造に由来するのかを解析することができる。
【0066】
<ハードウェア構成>
図14は、本発明の一実施形態に係る予測装置10および学習装置20のハードウェア構成を示す図である。予測装置10および学習装置20は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003を有する。CPU1001、ROM1002、RAM1003は、いわゆるコンピュータを形成する。また、予測装置10および学習装置20は、補助記憶装置1004、表示装置1005、操作装置1006、I/F(Interface)装置1007、ドライブ装置1008を有することができる。なお、予測装置10および学習装置20の各ハードウェアは、バスBを介して相互に接続されている。
【0067】
CPU1001は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。CPU1001がプログラムを実行することによって、本明細書に記載の各処理が行われる。
【0068】
ROM1002は、不揮発性メモリである。ROM1002は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムを1001が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM1002はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0069】
RAM1003は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM1003は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムがCPU1001によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0070】
補助記憶装置1004は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0071】
表示装置1005は、予測装置10および学習装置20の内部状態等を表示する表示デバイスである。
【0072】
操作装置1006は、予測装置10および学習装置20の操作者が予測装置10および学習装置20に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0073】
I/F装置1007は、ネットワークに接続し、他のデバイスと通信を行うための通信デバイスである。
【0074】
ドライブ装置1008は記憶媒体1009をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体1009には、CD(Compact Disk)-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記憶媒体1009には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0075】
なお、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体1009がドライブ装置1008にセットされ、該記憶媒体1009に記録された各種プログラムがドライブ装置1008により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、I/F装置1007を介して、ネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0076】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 予測装置
20 学習装置
30 ユーザ
101 画像取得部
102 特徴量抽出部
103 予測部
201 学習用データ取得部
202 特徴量抽出部
203 学習部
204 特徴量可視化部
205 最適化部
1001 CPU
1002 ROM
1003 RAM
1004 補助記憶装置
1005 表示装置
1006 操作装置
1007 I/F装置
1008 ドライブ装置
1009 記憶媒体
図1
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