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特開2023-147618酸化物単結晶の育成装置と酸化物単結晶の育成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147618
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】酸化物単結晶の育成装置と酸化物単結晶の育成方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/10 20060101AFI20231005BHJP
   C30B 29/28 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C30B15/10
C30B29/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055214
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095223
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 章三
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】高塚 裕二
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BC24
4G077BC32
4G077BC37
4G077CF10
4G077EG01
4G077EG02
4G077EG15
4G077EG20
4G077EG29
4G077FK12
4G077PD02
4G077PE22
(57)【要約】
【課題】原料融液と同材質の酸化物坩堝を用いた単結晶の育成装置と育成法を提供する。
【解決手段】円筒状加熱室1、加熱室に設けられた酸化物坩堝2と高周波誘導コイル3、酸化物坩堝に組み込まれ上記コイルで誘導加熱される円筒状金属ヒータ5を有する装置本体10と、装置本体上方に設けられ加熱室の上端側開放部に重ね合わされる下端側開放部を有しかつ水平方向へ移動可能な第一重合室20、第二重合室30、第三重合室40をチャンバー内に備え、第一と第三重合室には結晶引き上げ軸21、41用開口22、42と結晶収容部23、43が設けられ、第二重合室には原料融液面に保持容器37を接触配置する原料供給手段31が設けられ、加熱室の上端側開放部と第一重合室~第三重合室の各下端側開放部には仕切り板6、24、32、44が着脱自在に付設されたことを特徴とし、坩堝温度を下げずに酸化物坩堝から育成結晶が取り出せかつ融液飛沫を飛散させずに結晶原料が補給できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き上げ法により酸化物単結晶を育成する装置において、
上端側が開放された円筒状加熱室と、円筒状加熱室内に設けられかつ上記酸化物単結晶の材料で構成されると共に原料融液を貯留保持可能な酸化物坩堝と、上記円筒状加熱室の側壁周囲に設けられた高周波誘導コイルと、上記酸化物坩堝内に組み込まれかつ高周波誘導コイルにより誘導加熱されると共に酸化物坩堝上方に設けられた固定手段により上端部が保持される円筒状金属ヒータを有する装置本体と、
装置本体の上方に設けられかつ上記円筒状加熱室の上端側開放部に重ね合わされる下端側開放部を有すると共に移動手段によりそれぞれ水平方向に移動可能な第一重合室、第二重合室、第三重合室をチャンバー内に備え、
上記第一重合室と第三重合室には結晶引き上げ軸用の開口と育成した酸化物単結晶を収容する結晶収容部が設けられ、
上記第二重合室には装置本体の酸化物坩堝内に結晶原料を供給する原料供給手段が設けられ、該原料供給手段が、底面若しくは側面の少なくとも一方に開口部を有する耐熱性の保持容器とこの保持容器に収容された結晶原料とで構成されると共に、保持容器の開口部が上記酸化物坩堝の原料融液面に接するように配置されて保持容器内に原料融液が侵入するようになっており、かつ、
上記円筒状加熱室の上端側開放部、および、上記第一重合室、第二重合室、第三重合室の各下端側開放部には、各開放部を閉止する仕切り板が着脱自在に付設されていることを特徴とする酸化物単結晶の育成装置。
【請求項2】
上記原料供給手段の保持容器が、白金、イリジウム、ロジウム、タングステンのいずれか、または、これらの合金で構成されることを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶の育成装置。
【請求項3】
第一重合室、第二重合室、第三重合室を水平方向に移動させる上記移動手段が、下端側開放部を下側にして第一重合室、第二重合室、第三重合室が搭載される2本の円弧状走行レールと、該円弧状走行レールの中心部に立設されるシャフトと、シャフト周りに正方向および逆方向に回転可能な回転体と、該回転体と各重合室を連結する回転アームとで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物単結晶の育成装置。
【請求項4】
上記仕切り板が、金属材と断熱材の2層構造を有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成装置。
【請求項5】
上記酸化物単結晶が、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、イットリウムアルミニウムガーネット単結晶のいずれかであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成装置。
【請求項6】
上記円筒状金属ヒータが、白金、イリジウム、ロジウムのいずれか、または、これらの合金で構成されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成装置。
【請求項7】
上記酸化物坩堝の外側底面と側壁周囲を覆うセラミック坩堝を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成装置。
【請求項8】
請求項1に記載の育成装置を用いて酸化物単結晶を育成する方法において、
仕切り板で閉止された円筒状加熱室の上端側開放部に同じく仕切り板で閉止された第一重合室の下端側開放部を重ね合わせた後、各仕切り板を取り外して円筒状加熱室の空間部と第一重合室の空間部を連通させると共に、第一重合室から結晶引き上げ軸を降下させて引き上げ法により酸化物単結晶を育成し、かつ、育成した酸化物単結晶を第一重合室の結晶収容部に収容した後、上記円筒状加熱室の上端側開放部と第一重合室の下端側開放部に再度仕切り板を取り付けて円筒状加熱室の上端側開放部と第一重合室の下端側開放部をそれぞれ閉止し、円筒状加熱室の上端側開放部と第一重合室の下端側開放部が閉止された状態で第一重合室を装置本体から水平方向へ移動させる結晶育成工程と、
仕切り板で閉止された円筒状加熱室の上端側開放部に同じく仕切り板で閉止された第二重合室の下端側開放部を重ね合わせた後、各仕切り板を取り外して円筒状加熱室の空間部と第二重合室の空間部を連通させると共に、第二重合室から原料供給手段の保持容器を降下させて酸化物坩堝内の原料融液面に上記保持容器の開口部が接するように配置し、かつ、高周波誘導コイルにより円筒状金属ヒータを誘導加熱して保持容器内の結晶原料を熔融させた後、上記円筒状加熱室の上端側開放部と第二重合室の下端側開放部に再度仕切り板を取り付けて円筒状加熱室の上端側開放部と第二重合室の下端側開放部をそれぞれ閉止し、円筒状加熱室の上端側開放部と第二重合室の下端側開放部が閉止された状態で第二重合室を装置本体から水平方向へ移動させる原料供給工程と、
仕切り板で閉止された円筒状加熱室の上端側開放部に同じく仕切り板で閉止された第三重合室の下端側開放部を重ね合わせた後、各仕切り板を取り外して円筒状加熱室の空間部と第三重合室の空間部を連通させると共に、第三重合室から結晶引き上げ軸を降下させて引き上げ法により酸化物単結晶を育成し、かつ、育成した酸化物単結晶を第三重合室の結晶収容部に収容した後、上記円筒状加熱室の上端側開放部と第三重合室の下端側開放部に再度仕切り板を取り付けて円筒状加熱室の上端側開放部と第三重合室の下端側開放部をそれぞれ閉止し、円筒状加熱室の上端側開放部と第三重合室の下端側開放部が閉止された状態で第三重合室を装置本体から水平方向へ移動させる結晶育成工程を備え、
上記原料供給工程を挟んで第一重合室が使用される結晶育成工程と第三重合室が使用される結晶育成工程を繰り返して酸化物単結晶を連続的に育成することを特徴とする酸化物単結晶の育成方法。
【請求項9】
上記原料供給工程中、または、原料供給工程とこれに続く結晶育成工程中、装置本体から水平方向へ移動しかつ仕切り板により下端側開放部が閉止された第一重合室または第三重合室における結晶収容部内の酸化物単結晶が冷却される冷却工程を有することを特徴とする請求項8に記載の酸化物単結晶の育成方法。
【請求項10】
上記酸化物単結晶が、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、イットリウムアルミニウムガーネット単結晶のいずれかであることを特徴とする請求項8または9に記載の酸化物単結晶の育成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き上げ法によりタンタル酸リチウム等の酸化物単結晶を連続的に育成可能な育成装置と育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物単結晶の育成方法として、酸化物単結晶となる原料が充填された坩堝を高温に加熱して原料を熔融し、坩堝内の原料融液面に上方から種結晶を接触させた後、回転させながら上昇させることで種結晶と同一方位の酸化物単結晶を育成する引き上げ法(チョクラルスキー法とも称する)が広く利用されている。
【0003】
引き上げ法による酸化物単結晶の育成装置においては、図15に示すように、坩堝100の側壁周囲に高周波誘導コイル101が配置されており、当該高周波誘導コイル101に高周波電流を流すことによって坩堝100に渦電流が生じ、これにより坩堝100が発熱して原料が熔融する。また、引き上げが進むにつれて酸化物単結晶の上部はシード棒(結晶引き上げ軸)102を伝わって冷却されるが、発熱体が坩堝100のみである場合、育成中における単結晶内の温度分布が大きくなるため、金属製のリング状リフレクタ103が坩堝100の開放端部に配置され、かつ、金属製のアフターヒータ104が坩堝100の上端部に配置されている。尚、図15中、符号105は種結晶、符号106は原料融液、符号107と符号108は断熱材、符号109はCP坩堝(多孔質アルミナ坩堝)、符号110は断熱性坩堝台をそれぞれ示す。
【0004】
ところで、近年、酸化物単結晶、特にタンタル酸リチウムは表面弾性波デバイス材料として市場が拡大しており、生産量の確保のため単結晶の引き上げ長さや径が次第に大きくなっている。この大型化に伴い、結晶育成に使用する坩堝は大型化している。
【0005】
また、坩堝は、高周波電流を流すため導電性であることを要し、更に、結晶原料を熔融するため高温に耐えられる高融点かつ酸化性雰囲気で劣化しない材料を用いる必要があり、結晶育成に使用する坩堝は、イリジウム、白金、ロジウム等の貴金属やその合金で作られることが多い。
【0006】
しかし、貴金属坩堝を用いて単結晶の育成を行うと、坩堝が変形するという問題があった。これは、図16(A)に示す円筒形の貴金属坩堝100が原料熔融時に図16(B)に示すように膨張し、冷却すると原料融液106の固化した部分が伸びて図16(C)に示すように変形するためで、貴金属坩堝と酸化物融液の膨張率が異なることに起因する。
【0007】
この貴金属坩堝の変形を防止するには、直胴部の長い結晶を育成して原料融液の固化回数を減らす方法が効果的である。しかし、直胴部の長い結晶を引き上げると、結晶育成に伴って坩堝内の融液面が低下するため原料融液が坩堝の底で固化してしまう問題があり、更に、坩堝が発熱するので坩堝壁からの輻射熱の影響により育成中の結晶に歪み、ねじれ等を生じさせる問題が存在する。
【0008】
そこで、結晶育成に伴う上記融液面の低下を防止するため、特許文献1においては、貴金属製の外側坩堝と、該外側坩堝内に配置されかつ底部において融液が連絡するようにした貴金属製の内側坩堝とで二重坩堝を構成し、結晶育成に伴って消費される原料を外側坩堝と内側坩堝との隙間に供給する単結晶の育成方法が提案され、特許文献2においては、貴金属製の内側坩堝を貴金属製の外側坩堝内に嵌め込む二重坩堝が提案されている。
【0009】
しかし、外側坩堝の側壁周囲に設けられた高周波誘導コイルによる高周波加熱法を用いて上記二重坩堝を加熱しようとすると、高周波電磁場は貴金属製の外側坩堝で遮断されるため、外側坩堝は加熱されるが内側坩堝は加熱されず、該内側坩堝の融液温度が低くなる問題が存在した。特に、大口径の結晶を育成する場合、外側坩堝における底部中央の発熱が弱いため融液が固化し易く、底部の融液が固化すると融液面変動や温度変化が起こって多結晶化し易くなる問題が存在した。更に、底部において融液が連絡するようにした二重坩堝においては、底部の融液が固化した場合、外側坩堝と内側坩堝との隙間に存在する融液が結晶育成を行う内側坩堝に移動できなくなる問題があった。
【0010】
そこで、二重坩堝による上記方法に代えて、特許文献3においては、坩堝と同材質の貴金属にジルコニウム酸化物等が添加された材料から成る強化貴金属板を坩堝本体の外周部に密着させて補強した貴金属坩堝が提案され、特許文献4においては、坩堝周囲をアルミナ等の円筒成形断熱材で覆って坩堝の変形を抑制した育成装置が提案されている。更に、特許文献5においては、坩堝側壁部の外周面にリング状フレームを嵌め込んで坩堝の変形を防止した単結晶育成用坩堝が提案され、特許文献6においては、坩堝底面の板厚を側面の板厚よりも薄くすることで底面側に変形を逃がす構造にしたイリジウム坩堝が提案されている。
【0011】
しかし、特許文献3~6で提案された何れの対策を講じても坩堝の変形を防止することが難しく、特に、大型酸化物単結晶の育成では坩堝の変形量が大きくなるため、より効果的な対策が求められていた。
【0012】
このような技術的背景下、育成結晶を坩堝から取り出す際や結晶原料を坩堝に追加する際に坩堝温度を下げることが坩堝変形の原因になっていることに着目し、坩堝温度を下げることなく育成結晶を坩堝から取り出せると共に結晶原料を坩堝に追加可能な引き上げ法による育成装置が特許文献7において提案されている。
【0013】
すなわち、特許文献7に記載された育成装置は、図17に示すように貴金属坩堝301と該貴金属坩堝301を誘導加熱する高周波誘導コイル302を有するメインチャンバー300と、該メインチャンバー300の上方に設けられかつ温度調節用ヒータ401とポーリング用電極(結晶引き上げ軸兼用)402を有する第一上部チャンバー400と、同じくメインチャンバー300の上方に設けられかつ温度調節用ヒータ501とポーリング用電極(結晶引き上げ軸兼用)502を有する第二上部チャンバー500と、同じくメインチャンバー300の上方に設けられかつメインチャンバー300の貴金属坩堝301に結晶原料を供給する原料チャージユニット600aとで構成され、上記第一上部チャンバー400と第二上部チャンバー500および原料チャージユニット600aは図示外の移動手段により移動可能になっている。尚、図17中、符号403はポーリング用電極、符号404は第一上部チャンバー400用の下蓋を示し、また、符号503はポーリング用電極、符号504は第二上部チャンバー500用の下蓋をそれぞれ示している。
【0014】
そして、図18(A)に示すように上記下蓋404を外した第一上部チャンバー400がメインチャンバー300に挿入されて引き上げ法による結晶育成がなされ、かつ、図18(B)に示すように育成された結晶600を第一上部チャンバー400内に収容した後、図18(C)に示すように第一上部チャンバー400を上方側へ引き上げてメインチャンバー300から第一上部チャンバー400が引き出される。
【0015】
次いで、図19に示すようにメインチャンバー300から引き出された第一上部チャンバー400の開口に下蓋404が嵌合された後、第一上部チャンバー400に収容された結晶600のアニール処理とポーリング処理がなされ、かつ、メインチャンバー300に原料チャージユニット600aが挿入されてメインチャンバー300内の貴金属坩堝301に結晶原料601が供給される。
【0016】
次いで、第一上部チャンバー400のアニール処理とポーリング処理と並行して図20に示すように蓋504を外した第二上部チャンバー500がメインチャンバー300に挿入され、第二上部チャンバー500を用いた引き上げ法による結晶育成がなされる。
【0017】
そして、メインチャンバー300上方に第一上部チャンバー400と第二上部チャンバー500および原料チャージユニット600aが設けられた図17に示す育成装置によれば、結晶育成を連続して実施するかぎり、坩堝温度を下げることなく育成結晶を貴金属坩堝301から取り出せると共に結晶原料を貴金属坩堝301に追加できることから、坩堝の変形を防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2000-344595号公報
【特許文献2】特開2002-137985号公報
【特許文献3】特開平10-338593号公報
【特許文献4】特開2020-164339号公報
【特許文献5】特開2019-112240号公報
【特許文献6】特開2012-250874号公報
【特許文献7】特開2009-007203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献7に記載の育成装置が適用された場合、結晶育成を連続して実施するかぎり、確かに坩堝の変形を防止することは可能となる。
【0020】
しかし、育成装置の保守点検等により結晶育成を停止する必要があり、停止回数を例え最小に抑えたとしても貴金属坩堝を利用するかぎり変形は抑えられないため、特許文献7に記載の育成装置に代わる新たな育成装置が要請されている。
【0021】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、貴金属坩堝に代わる原料融液の貯留保持手段として原料融液と同材質の酸化物坩堝を用いた酸化物単結晶の育成装置と育成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
引き上げ法により酸化物単結晶を育成する装置において、
上端側が開放された円筒状加熱室と、円筒状加熱室内に設けられかつ上記酸化物単結晶の材料で構成されると共に原料融液を貯留保持可能な酸化物坩堝と、上記円筒状加熱室の側壁周囲に設けられた高周波誘導コイルと、上記酸化物坩堝内に組み込まれかつ高周波誘導コイルにより誘導加熱されると共に酸化物坩堝上方に設けられた固定手段により上端部が保持される円筒状金属ヒータを有する装置本体と、
装置本体の上方に設けられかつ上記円筒状加熱室の上端側開放部に重ね合わされる下端側開放部を有すると共に移動手段によりそれぞれ水平方向に移動可能な第一重合室、第二重合室、第三重合室をチャンバー内に備え、
上記第一重合室と第三重合室には結晶引き上げ軸用の開口と育成した酸化物単結晶を収容する結晶収容部が設けられ、
上記第二重合室には装置本体の酸化物坩堝内に結晶原料を供給する原料供給手段が設けられ、該原料供給手段が、底面若しくは側面の少なくとも一方に開口部を有する耐熱性の保持容器とこの保持容器に収容された結晶原料とで構成されると共に、保持容器の開口部が上記酸化物坩堝の原料融液面に接するように配置されて保持容器内に原料融液が侵入するようになっており、かつ、
上記円筒状加熱室の上端側開放部、および、上記第一重合室、第二重合室、第三重合室の各下端側開放部には、各開放部を閉止する仕切り板が着脱自在に付設されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載の酸化物単結晶の育成装置において、
上記原料供給手段の保持容器が、白金、イリジウム、ロジウム、タングステンのいずれか、または、これらの合金で構成されることを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載の酸化物単結晶の育成装置において、
第一重合室、第二重合室、第三重合室を水平方向に移動させる上記移動手段が、下端側開放部を下側にして第一重合室、第二重合室、第三重合室が搭載される2本の円弧状走行レールと、該円弧状走行レールの中心部に立設されるシャフトと、シャフト周りに正方向および逆方向に回転可能な回転体と、該回転体と各重合室を連結する回転アームとで構成されることを特徴とし、
第4の発明は、
第1の発明~第3の発明のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成装置において、
上記仕切り板が、金属材と断熱材の2層構造を有することを特徴とし、
第5の発明は、
第1の発明~第4の発明のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成装置において、
上記酸化物単結晶が、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、イットリウムアルミニウムガーネット単結晶のいずれかであることを特徴とし、
第6の発明は、
第1の発明~第5の発明のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成装置において、
上記円筒状金属ヒータが、白金、イリジウム、ロジウムのいずれか、または、これらの合金で構成されることを特徴とし、
第7の発明は、
第1の発明~第6の発明のいずれかに記載の酸化物単結晶の育成装置において、
上記酸化物坩堝の外側底面と側壁周囲を覆うセラミック坩堝を備えることを特徴とする。
【0024】
次に、本発明に係る第8の発明は、
第1の発明に記載の育成装置を用いて酸化物単結晶を育成する方法において、
仕切り板で閉止された円筒状加熱室の上端側開放部に同じく仕切り板で閉止された第一重合室の下端側開放部を重ね合わせた後、各仕切り板を取り外して円筒状加熱室の空間部と第一重合室の空間部を連通させると共に、第一重合室から結晶引き上げ軸を降下させて引き上げ法により酸化物単結晶を育成し、かつ、育成した酸化物単結晶を第一重合室の結晶収容部に収容した後、上記円筒状加熱室の上端側開放部と第一重合室の下端側開放部に再度仕切り板を取り付けて円筒状加熱室の上端側開放部と第一重合室の下端側開放部をそれぞれ閉止し、円筒状加熱室の上端側開放部と第一重合室の下端側開放部が閉止された状態で第一重合室を装置本体から水平方向へ移動させる結晶育成工程と、
仕切り板で閉止された円筒状加熱室の上端側開放部に同じく仕切り板で閉止された第二重合室の下端側開放部を重ね合わせた後、各仕切り板を取り外して円筒状加熱室の空間部と第二重合室の空間部を連通させると共に、第二重合室から原料供給手段の保持容器を降下させて酸化物坩堝内の原料融液面に上記保持容器の開口部が接するように配置し、かつ、高周波誘導コイルにより円筒状金属ヒータを誘導加熱して保持容器内の結晶原料を熔融させた後、上記円筒状加熱室の上端側開放部と第二重合室の下端側開放部に再度仕切り板を取り付けて円筒状加熱室の上端側開放部と第二重合室の下端側開放部をそれぞれ閉止し、円筒状加熱室の上端側開放部と第二重合室の下端側開放部が閉止された状態で第二重合室を装置本体から水平方向へ移動させる原料供給工程と、
仕切り板で閉止された円筒状加熱室の上端側開放部に同じく仕切り板で閉止された第三重合室の下端側開放部を重ね合わせた後、各仕切り板を取り外して円筒状加熱室の空間部と第三重合室の空間部を連通させると共に、第三重合室から結晶引き上げ軸を降下させて引き上げ法により酸化物単結晶を育成し、かつ、育成した酸化物単結晶を第三重合室の結晶収容部に収容した後、上記円筒状加熱室の上端側開放部と第三重合室の下端側開放部に再度仕切り板を取り付けて円筒状加熱室の上端側開放部と第三重合室の下端側開放部をそれぞれ閉止し、円筒状加熱室の上端側開放部と第三重合室の下端側開放部が閉止された状態で第三重合室を装置本体から水平方向へ移動させる結晶育成工程を備え、
上記原料供給工程を挟んで第一重合室が使用される結晶育成工程と第三重合室が使用される結晶育成工程を繰り返して酸化物単結晶を連続的に育成することを特徴とし、
第9の発明は、
第8の発明に記載の酸化物単結晶の育成方法において、
上記原料供給工程中、または、原料供給工程とこれに続く結晶育成工程中、装置本体から水平方向へ移動しかつ仕切り板により下端側開放部が閉止された第一重合室または第三重合室における結晶収容部内の酸化物単結晶が冷却される冷却工程を有することを特徴とし、
また、第10の発明は、
第8の発明または第9の発明に記載の酸化物単結晶の育成方法において、
上記酸化物単結晶が、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、イットリウムアルミニウムガーネット単結晶のいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る酸化物単結晶の育成装置によれば、
酸化物坩堝と高周波誘導コイルと円筒状金属ヒータを有する装置本体の上方に、結晶引き上げ軸用開口と結晶収容部が設けられた第一重合室と第三重合室、および、原料供給手段が設けられた第二重合室を備えているため、結晶育成を連続して行うかぎり坩堝温度を下げることなく酸化物坩堝から育成結晶を取り出せると共に酸化物坩堝に結晶原料を追加することが可能となる。
【0026】
また、第二重合室に設けられる上記原料供給手段が、底面若しくは側面の少なくとも一方に開口部を有する耐熱性の保持容器とこの保持容器に収容された結晶原料とで構成されると共に、保持容器の開口部が酸化物坩堝の原料融液面に接するように配置されて保持容器内に原料融液が侵入するようになっており、結晶原料を原料融液面に落下させて補給する方法に較べて融液飛沫の飛散が回避されるため、融液飛沫に起因した装置内の汚損を防止することが可能となる。
【0027】
更に、原料融液の貯留保持手段として原料融液と同材質の酸化物坩堝が適用されるため坩堝の変形を抑制でき、かつ、酸化物単結晶の育成時、円筒状金属ヒータの内側に存在する原料融液と円筒状金属ヒータの外側に存在する原料融液により円筒状金属ヒータが挟まれた状態になるため円筒状金属ヒータの熱変形も抑制することが可能となる。
【0028】
このため、同品質の酸化物単結晶を安定して連続的に育成できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る育成装置の構成説明図。
図2】第一重合室、第二重合室、第三重合室を水平方向に移動させる移動手段の構成説明図。
図3】本発明に係る装置本体の製造工程を示す説明図。
図4】本発明に係る装置本体の製造工程を示す説明図。
図5】本発明に係る装置本体の製造工程を示す説明図。
図6】本発明に係る結晶育成工程を示す説明図。
図7】本発明に係る結晶育成工程を示す説明図。
図8】本発明に係る結晶育成工程を示す説明図。
図9】本発明に係る結晶育成工程を示す説明図。
図10】本発明に係る結晶育成工程を示す説明図。
図11】第一重合室若しくは第三重合室の結晶収容部に収容された酸化物単結晶を保持する結晶引き上げ軸が固定治具により固定された状態を示す説明図。
図12図12(A)は本発明に係る原料供給手段の概略斜視図、図12(B)は原料供給手段の構成説明図。
図13】本発明に係る原料供給工程を示す説明図。
図14】本発明に係る原料供給工程を示す説明図。
図15】原料融液の貯留保持手段として貴金属坩堝を利用する従来の育成装置を用いた育成方法の説明図。
図16図16(A)は貴金属坩堝の断面図、図16(B)は投入された結晶原料の熔融時における貴金属坩堝の断面図、図16(C)は原料融液が固化することで変形した貴金属坩堝の断面図。
図17】特許文献7に記載された育成装置の構成説明図。
図18図18(A)~(C)は特許文献7に記載された育成装置のメインチャンバーと第一上部チャンバーを用いた引き上げ法による酸化物単結晶の育成工程を示す説明図。
図19】特許文献7に記載された育成装置の原料チャージユニットの説明図。
図20】特許文献7に記載された育成装置のメインチャンバーと第二上部チャンバーを用いた引き上げ法による酸化物単結晶の育成工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0031】
1.従来の育成装置と育成方法
(1)従来の育成装置とこの装置を用いた育成方法
従来の育成装置として、上述したように、チャンバー200(図15参照)内に、CP坩堝(多孔質アルミナ坩堝)109と、坩堝100と、断熱性坩堝台110と、リング状リフレクタ103と、アフターヒータ104と、断熱材107、108と、シード棒(結晶引き上げ軸)102と、高周波誘導コイル101を備える装置が知られている。そして、高温の結晶育成に使用される坩堝100としては、タングステンやタンタルのような高融点金属坩堝、白金、ロジウムやイリジウム等の貴金属坩堝、アルミナやマグネシア、カーボンやPBN(Pyrolytic Boron Nitride)のような非金属性坩堝が知られている。
【0032】
ところで、ニオブ酸リチウム(LiNbO3:以下、LNと略称する)、タンタル酸リチウム(LiTaO3:以下、LTと略称する)、イットリウムアルミニウムガーネット(Y3Al512:以下、YAGと略称する)等の酸化物単結晶を育成する場合、酸素を含んだ育成雰囲気にするため、酸化され易いタングステン、タンタル、カーボンは使用できない。同様に、アルミナ、マグネシアは酸化物融液と反応するため使用することができず、また、PBNは高価でかつ大型坩堝の作成が難しいという問題がある。
【0033】
このため、酸化物単結晶を育成する場合、酸化されず、割れて原料融液が流出することのない、白金、ロジウム、イリジウム等の貴金属坩堝が使用されている。
【0034】
(2)従来の課題
しかし、貴金属坩堝は、図16(A)~(C)に示すように原料熔融時に熱膨張し、原料融液の残渣が固化するときに酸化物と貴金属で熱膨張率が異なるため変形する。この変形に起因して、高周波誘導加熱の場合、発熱状態が変わるため育成条件が変化し、坩堝の変形が進むと単結晶が得られなくなる課題が存在した。
【0035】
また、坩堝温度を下げることなく育成結晶を坩堝から取り出せると共に結晶原料を坩堝に追加可能な特許文献7に記載の育成装置においても、育成装置の保守点検等により結晶育成を停止する必要があるため、貴金属坩堝を利用しているかぎり坩堝の変形を抑えられない課題が存在した。
【0036】
2.本発明の育成装置
引き上げ法(チョクラルスキー法)を用いる本発明の育成装置は、大気中または酸素を含んだ不活性ガス雰囲気中で育成されるLN、LT、YAG等の酸化物単結晶の製造に用いる装置である。チョクラルスキー法は、ある結晶方位に従って切り出された種結晶と呼ばれる、通常、棒状に加工された単結晶先端を、同一組成の原料融液に浸潤し、回転させながら徐々に引き上げることによって種結晶の方位と同一の単結晶を育成する方法である。
【0037】
本発明者は、従来の課題を解決するため、変形する貴金属坩堝に代わる原料融液の貯留保持手段として、原料融液と同材質の酸化物坩堝を用いた酸化物単結晶の育成装置と育成方法を見出した。
【0038】
(1)育成装置
(1-1)本発明に係る育成装置は、
図1に示すように上端側が開放された円筒状加熱室1と、円筒状加熱室1内に設けられかつ酸化物単結晶の材料で構成されると共に原料融液を貯留保持可能な酸化物坩堝2と、円筒状加熱室1の側壁周囲に設けられた高周波誘導コイル3と、酸化物坩堝2内に組み込まれかつ上記高周波誘導コイル3により誘導加熱されると共に円筒状加熱室1内に付設されたヒータ固定用棒材(固定手段)4により上端部が保持される円筒状金属ヒータ5を有する装置本体10と、
装置本体10の上方に設けられかつ上記円筒状加熱室1の上端側開放部に重ね合わされる下端側開放部を有すると共に移動手段(図示せず)によりそれぞれ水平方向に移動可能な第一重合室20、第二重合室30、第三重合室40をチャンバー(図示せず)内に備え、かつ、
第一重合室20と第三重合室40には結晶引き上げ軸21、41用の開口22、42と育成した酸化物単結晶(図示せず)を収容する結晶収容部23、43が設けられ、上記第二重合室30には装置本体10の酸化物坩堝2内に結晶原料を供給する原料供給手段31が設けられていると共に、
上記円筒状加熱室1の上端側開放部、および、上記第一重合室20、第二重合室30、第三重合室40の各下端側開放部には、各開放部を閉止する仕切り板6、24、32、44が着脱自在に付設されていることを特徴とし、更に、装置本体10における高周波誘導コイル3の下端部3aが円筒状金属ヒータ5の下端部5aより下側に位置するように配置されて円筒状金属ヒータ5の下端部5aも誘導加熱されるようになっている。
【0039】
尚、図1中、符号7はリング状リフレクタ、符号8はアフターヒータ、符号9はセラミック坩堝(PC坩堝)、符号10aは支持台をそれぞれ示し、また、符号25、45は断熱材、符号26、46は断熱材25、45を支持する支持棒、符号31aは結晶原料、符号35は耐熱性の保持容器37を上下動させる容器引き上げ軸、符号36は保持容器37の底面若しくは側面に設けられる開口部をそれぞれ示している。
【0040】
(1-2)本発明に係る育成装置によれば、
酸化物坩堝2と高周波誘導コイル3と円筒状金属ヒータ5を有する装置本体10の上方に、結晶引き上げ軸21、41用開口22、42と結晶収容部23、43が設けられた第一重合室20と第三重合室40、および、原料供給手段31が設けられた第二重合室30を備え、第二重合室30が使用される原料供給工程を挟んで、第一重合室20が使用される結晶育成工程と第三重合室40が使用される結晶育成工程を繰り返すことにより坩堝温度を下げることなく酸化物坩堝2から育成結晶を取り出せると共に酸化物坩堝2に結晶原料を追加することが可能となる。
【0041】
また、第二重合室30に設けられる上記原料供給手段31が、底面若しくは側面の少なくとも一方に開口部36を有する耐熱性の保持容器37とこの保持容器37に収容された結晶原料31aとで構成されると共に、保持容器37の開口部36が酸化物坩堝2の原料融液面に接するように配置されて保持容器37内に原料融液が侵入するようになっており、結晶原料を原料融液面に落下させて補給する方法に較べて融液飛沫の飛散が回避されるため、融液飛沫に起因した装置内の汚損を防止することが可能となる。
【0042】
更に、原料融液の貯留保持手段として原料融液と同材質の酸化物坩堝2が適用されるため坩堝の変形を抑制でき、かつ、酸化物単結晶の育成時、円筒状金属ヒータ5の内側に存在する原料融液と円筒状金属ヒータ5の外側に存在する原料融液により円筒状金属ヒータ5が挟まれた状態になるため円筒状金属ヒータ5の熱変形も抑制することが可能となる。
【0043】
このため、同品質の酸化物単結晶を安定して連続的に育成できる効果を有する。
【0044】
(2)移動手段
次に、チャンバー内に設けられ、かつ、第一重合室20、第二重合室30、第三重合室40を水平方向に移動させる移動手段50としては、図2に示すように、下端側開放部を下側にして第一重合室20、第二重合室30、第三重合室40が搭載される2本の円弧状走行レール51、51と、該円弧状走行レール51、51の中心部に立設されるシャフト52と、シャフト52周りに時計回り方向および反時計回り方向(すなわち正方向および逆方向)に回転可能な回転体53と、該回転体53と各重合室20、30、40を連結する回転アーム54とで構成されるものが例示される。尚、図2中、符号55は、第一重合室20若しくは第三重合室40の結晶収容部23、43に収容された育成結晶が冷却される際、第一重合室20若しくは第三重合室40を支持する冷却時支持台を示している。
【0045】
(3)装置本体の製造
本発明に係る育成装置の一部を構成し、かつ、チャンバー60内に収容される装置本体10は、例えば、以下のようにして製造される。
【0046】
まず、図3に示すように円筒状加熱室1内に組み込まれたセラミック坩堝(CP坩堝)9内に、その上方側空間部11を残して結晶材料12aを投入する。尚、結晶材料12aとしては結晶原料粉あるいは結晶原料塊が例示される。
【0047】
次いで、セラミック坩堝(CP坩堝)9の上方側空間部11に円筒状金属ヒータ5を組み込み、かつ、円筒状加熱室1内に付設されたヒータ固定用棒材(固定手段)4により円筒状金属ヒータ5の上端部5bを固定する。
【0048】
そして、図4に示すように円筒状金属ヒータ5が組み込まれたセラミック坩堝(CP坩堝)9の上方側空間部11に結晶材料12aを投入し、円筒状金属ヒータ5の内部とセラミック坩堝(CP坩堝)9の上方側空間部11に結晶材料12aを充填する。
【0049】
次いで、図5に示すようにヒータ固定用棒材(固定手段)4で保持された円筒状金属ヒータ5の上端部5bにリング状リフレクタ7を載置し、かつ、リング状リフレクタ7上にアフターヒータ8を載置する。
【0050】
そして、セラミック坩堝(CP坩堝)9の側壁周囲に設けられた高周波誘導コイル3により円筒状金属ヒータ5を誘導加熱し、円筒状金属ヒータ5内の結晶材料12aおよび円筒状金属ヒータ5側壁近傍と下端部5a近傍の結晶材料12aを熔融させて原料融液12とし、かつ、円筒状金属ヒータ5側壁から離れた部位と下端部5aから離れた部位の結晶材料12a間に原料融液12を流入させて連続した酸化物層2cを形成し、該酸化物層2cを内表面に有しかつ原料融液12を貯留保持可能な酸化物坩堝2を形成して上記装置本体10を製造することができる。
【0051】
(4)酸化物坩堝とセラミック坩堝
上記酸化物層2cを内表面に有しかつ結晶材料で構成される酸化物坩堝2は、坩堝全体が一つの結晶で構成される必要はない。焼結体や多結晶体で坩堝全体が構成されることが好ましいが一部粉末の状態であってもよい。尚、酸化物坩堝2の酸化物層2cから離れている結晶材料の未熔融部分は、図15に示した従来の育成装置における断熱材108や断熱性坩堝台110と同様に機能する。
【0052】
また、酸化物坩堝2の外側底面2bと側壁周囲を覆うセラミック坩堝を構成する材料としては、アルミナやジルコニア、マグネシア、カルシア等の焼結体耐火物が好ましい。
【0053】
(5)金属ヒータ、リング状リフレクタ、アフターヒータ
上記金属ヒータの形状は高周波誘導加熱が可能であれば任意であるが、チョクラルスキー法で良質な結晶を育成する場合、原料融液がシード(種結晶)に対し回転対称性を持つことが望ましい。このため、金属ヒータも回転対称の形状を持つことが好ましく円筒状であることを要する。
【0054】
また、金属ヒータは、酸素を含む雰囲気で酸化されず、割れずに高周波加熱が可能な材料で構成することが好ましく、具体的には、白金、イリジウム、ロジウムの単体またはこれらの合金で構成することが望ましい。
【0055】
また、金属ヒータの上端部を固定する固定手段としては、図5に示す円筒状加熱室1内に付設されたヒータ固定用棒材4が例示され、金属ヒータの上端部を棒材4に通すことで固定され、ヒータ固定用棒材4の本数は2本から6本程度が好ましい。
【0056】
また、金属ヒータ上端部に載置されるリング状リフレクタ、および、リング状リフレクタ上に載置されたアフターヒータの材料は、金属ヒータと同様の材料、具体的には、白金、イリジウム、ロジウムの単体またはこれらの合金を用いることが好ましい。
【0057】
(6)仕切り板
上記円筒状加熱室1の上端側開放部、上記第一重合室20、第二重合室30、第三重合室40の各下端側開放部を閉止する仕切り板の材料としては、強度的に優れるSUS等の金属材が好ましい。しかし、高温の原料融液や引き上げ結晶からの輻射熱を遮るには断熱材が好ましい。このため、金属材と断熱材の2層構造を有することが好ましく、断熱材としては、アルミナ、ジルコニア、カルシア等を利用できるが、軽い材料としてはアルミナやカルシアが好ましい。また、金属材としては、SUS等のFe系材料を利用できる。
【0058】
3.本発明の育成方法
本発明に係る育成装置を用いた酸化物単結晶の育成方法は、第一重合室20が使用される下記結晶育成工程と、第二重合室30が使用される下記原料供給工程と、第三重合室40が使用される下記結晶育成工程を備え、
第二重合室30が使用される上記原料供給工程を挟んで、第一重合室20が使用される結晶育成工程と第三重合室40が使用される結晶育成工程を繰り返して酸化物単結晶を連続的に育成することを特徴とするものである。
【0059】
以下、図面を用いて本発明の育成方法について説明する。
【0060】
(1)第一重合室20が使用される結晶育成工程
(1-1)円筒状加熱室1と第一重合室20の重ね合わせ工程
図6に示すように原料融液12が貯留された酸化物坩堝2を内部に有しかつ上端側開放部が仕切り板6により閉止された円筒状加熱室1の該上端側開放部に、下端側開放部が仕切り板24により閉止された第一重合室20の該下端側開放部を重ね合わせる。
【0061】
(1-2)仕切り板6、24の取り外し工程
次いで、各仕切り板6、24を取り外して図7に示すように円筒状加熱室1の空間部と第一重合室20の空間部を連通させると共に、図示外の上下動兼回転機構に取り付けられた結晶引き上げ軸21を降下させて種結晶27を酸化物坩堝2の原料融液12に接触させ、然る後、図8に示すように結晶引き上げ軸21を回転させながら上昇させて酸化物単結晶70を育成する。
【0062】
(1-3)仕切り板6、24の取り付け工程
次いで、図9に示すように育成した酸化物単結晶70を上記第一重合室20の結晶収容部23に収容した後、図10に示すように円筒状加熱室1の上端側開放部と上記第一重合室20の下端側開放部に、再度、仕切り板6、24を取り付けて円筒状加熱室1の上端側開放部と第一重合室20の下端側開放部をそれぞれ閉止し、かつ、上記上下動兼回転機構から結晶引き上げ軸21が取り外されて第一重合室20は水平方向へ移動できるようになっている。尚、上下動兼回転機構から取り外された結晶引き上げ軸21は、図11に示す固定治具28により固定されるようになっている。
【0063】
(1-4)第一重合室20と第二重合室30の移動工程
次いで、円筒状加熱室1の上端側開放部と第一重合室20の下端側開放部が閉止された状態で図2に示す移動手段50により第一重合室20を装置本体10から時計周り方向の冷却時支持台55の位置まで移動させ、かつ、待機する第二重合室30も時計周り方向へ移動させてその下端側開放部が仕切り板32により閉止された第二重合室30の該下端側開放部を円筒状加熱室1の上端側開放部に重ね合わせた後、第二重合室30の下記容器引き上げ軸35が上下動兼回転機構(但し、上下動機構のみが作動し回転機構は停止)に取り付けられる。
【0064】
(1-5)冷却工程
次いで、第二重合室30が使用される原料供給工程中、または、上記原料供給工程とこれに続く第三重合室40が使用される結晶育成工程中、上記冷却時支持台55に移動させた第一重合室20の酸化物単結晶70は、第一重合室20内に酸素が含まれるガスを流しながら所定の温度になるまで冷却された後、第一重合室20から取り出される。尚、酸化物単結晶70が取り出された上記第一重合室20は、第三重合室40を使用する結晶育成工程が終了するまで空の重合室として待機させる。
【0065】
(2)第二重合室30が使用される原料供給工程
原料供給工程で用いられる原料供給手段31としては、図12(A)(B)~図13に示すように底面若しくは側面の少なくとも一方に開口部36を有し内部に結晶原料31aが収容される耐熱性かつ円筒形状を有する保持容器37と、該保持容器37を上下動させる容器引き上げ軸35とでその主要部が構成され、保持容器37の開口部36が酸化物坩堝2の原料融液面に接するように配置され、これにより保持容器37内に原料融液が侵入して結晶原料31aを融解させるようになっているものが例示され、上述したように結晶原料を原料融液面に落下させて補給する方法に較べ補給時における融液飛沫の飛散が回避される利点を有している。尚、結晶原料31aとしては、ウエハ切り出し後におけるインゴット等の結晶塊と結晶粉末を使用できるが、結晶粉末の場合、開口部36が保持容器37の底面にあると粉末が零れてしまうため、開口部36が側面に形成された保持容器37の使用が望ましい。そして、上記保持容器37の材質としては、原料融液と反応せず、酸化等が起こり難い材料が好ましく、Ir、Pt、Rhやこれらの合金材料、または、アルミナ、ジルコニア、カルシア等の高融点酸化物材料が好ましい。
【0066】
(2-1)円筒状加熱室1と第二重合室30の重ね合わせ工程
図13に示すように原料融液12が残留する酸化物坩堝2を内部に有しかつ上端側開放部が仕切り板6により閉止された円筒状加熱室1の該上端側開放部に、原料供給手段31を有しかつ下端側開放部が仕切り板32により閉止された第二重合室30の該下端側開放部を重ね合わせる。尚、この重ね合わせ工程は、上述したように酸化物単結晶70を結晶収容部23に収容した上記第一重合室20が移動手段50により冷却時支持台55の位置まで移動されるタイミングと同期してなされる。
【0067】
(2-2)仕切り板6、32の取り外し工程
次いで、各仕切り板6、32を取り外して図14に示すように円筒状加熱室1の空間部と第二重合室30の空間部を連通させると共に、上下動兼回転機構に取り付けられた容器引き上げ軸35により保持容器37を降下させて該保持容器37の開口部36が酸化物坩堝2の原料融液12に接するように配置し、かつ、開口部36から保持容器37内に原料融液12を侵入させると同時に高周波誘導コイル3により円筒状金属ヒータ5を誘導加熱して結晶原料31aを熔融させる。尚、上下動兼回転機構に設けられた重量センサにより保持容器37の重量が計測され、保持容器37の結晶原料31aが熔融して酸化物坩堝2内に補給されたことを確認することができる。
【0068】
(2-3)仕切り板6、32の取り付け工程
原料の補給が終了した後、上記保持容器37は容器引き上げ軸35により引き上げられて第二重合室30内に収容され、然る後、円筒状加熱室1の上端側開放部と上記第二重合室30の下端側開放部に、再度、仕切り板6、32を取り付けて円筒状加熱室1の上端側開放部と第二重合室30の下端側開放部をそれぞれ閉止し、かつ、上下動兼回転機構から容器引き上げ軸35が取り外されて第二重合室30は水平方向へ移動できるようになっている。尚、上下動兼回転機構から取り外された容器引き上げ軸35も、上記結晶引き上げ軸と同様、固定治具により固定されるようになっている。
【0069】
(2-4)第二重合室30と第三重合室40の移動工程
次いで、円筒状加熱室1の上端側開放部と第二重合室30の下端側開放部が閉止された状態で上記移動手段50により第二重合室30を装置本体10から時計周り方向へ移動させ、かつ、待機する第三重合室40も時計周り方向へ移動させて円筒状加熱室1の上端側開放部に下端側開放部が仕切り板44により閉止された第三重合室40の該下端側開放部を重ね合わせた後、第三重合室40の結晶引き上げ軸41が上下動兼回転機構に取り付けられる。
【0070】
尚、移動手段50により移動された第二重合室30は、第三重合室40を使用する結晶育成工程が終了するまで移動された位置において待機させ、かつ、消費された結晶原料31aを保持容器37内に補充する。
【0071】
(3)第三重合室40が使用される結晶育成工程
(3-1)円筒状加熱室1と第三重合室40の重ね合わせ工程
上記第一重合室20が使用される場合と同様、原料融液が貯留された酸化物坩堝を内部に有しかつ上端側開放部が仕切り板6により閉止された円筒状加熱室1の該上端側開放部に、下端側開放部が仕切り板44により閉止された第三重合室40の該下端側開放部を重ね合わせる。尚、この重ね合わせ工程は、上述したように原料供給を終えた第二重合室30が移動手段50により移動されるタイミングと同期してなされる。
【0072】
(3-2)仕切り板6、44の取り外し工程
次いで、各仕切り板6、44を取り外して円筒状加熱室1の空間部と第三重合室40の空間部を連通させると共に、上下動兼回転機構に取り付けられた結晶引き上げ軸41を降下させて種結晶27を酸化物坩堝の原料融液に接触させ、然る後、結晶引き上げ軸41を回転させながら上昇させて酸化物単結晶を育成する。
【0073】
(3-3)仕切り板6、44の取り付け工程
次いで、育成した酸化物単結晶を第三重合室40の結晶収容部43に収容した後、円筒状加熱室1の上端側開放部と上記第三重合室40の下端側開放部に、再度、仕切り板6、44を取り付けて円筒状加熱室1の上端側開放部と第三重合室40の下端側開放部をそれぞれ閉止し、かつ、上記上下動兼回転機構から結晶引き上げ軸41が取り外されて第三重合室40は水平方向へ移動できるようになっている。尚、上下動兼回転機構から取り外された結晶引き上げ軸41も、上記結晶引き上げ軸21と同様、固定治具により固定されるようになっている。
【0074】
(3-4)第三重合室40と第二重合室30の移動工程
次いで、円筒状加熱室1の上端側開放部と第三重合室40の下端側開放部が閉止された状態で上記移動手段50により第三重合室40を装置本体から反時計周り方向の冷却時支持台55の位置まで移動させ、かつ、待機する第二重合室30も反時計周り方向へ移動させてその下端側開放部が仕切り板32により閉止された第二重合室30の該下端側開放部を円筒状加熱室1の上端側開放部に重ね合わせた後、第二重合室30の容器引き上げ軸35が上下動兼回転機構(但し、上下動機構のみが作動し回転機構は停止)に取り付けられる。
【0075】
(3-5)冷却工程
次いで、第二重合室30が使用される原料供給工程中、または、上記原料供給工程とこれに続く第一重合室20が使用される結晶育成工程中、上記冷却時支持台55に移動させた第三重合室40の酸化物単結晶は、第三重合室40内に酸素が含まれるガスを流しながら所定の温度になるまで冷却された後、第三重合室40から取り出される。尚、酸化物単結晶が取り出された上記第三重合室40は、第一重合室20を使用する結晶育成工程が終了するまで空の重合室として待機させる。
【実施例0076】
以下、本発明の実施例について比較例(従来例)を挙げて具体的に説明する。
【0077】
[実施例1]
1.実施例1に係る育成装置
(1)装置本体10の製造
図3に示す円筒状加熱室1内に組み込んだ内径270mm、内部高さ340mmのセラミック坩堝(CP坩堝)9内に、上方側空間部11を残して、タンタル酸リチウム粉末(結晶材料)12aを投入した。
【0078】
次いで、セラミック坩堝(CP坩堝)9の上方側空間部11に、内径170mm、高さ170mm、厚さ2mmのイリジウム製円筒状金属ヒータ5を組み込み、かつ、円筒状加熱室1内に付設したヒータ固定用棒材4により上記円筒状金属ヒータ5の上端部5bを固定した。
【0079】
そして、図4に示すように上記円筒状金属ヒータ5が組み込まれたセラミック坩堝(CP坩堝)9の上方側空間部11にタンタル酸リチウム粉末(結晶材料)12aを投入し、円筒状金属ヒータ5の内部とセラミック坩堝(CP坩堝)9の上方側空間部11にタンタル酸リチウム粉末(結晶材料)12aを充填した。
【0080】
次いで、図5に示すようにヒータ固定用棒材4で保持された円筒状金属ヒータ5の上端部5bにリング状リフレクタ7を載置し、かつ、リング状リフレクタ7上にアフターヒータ8を載置した。
【0081】
そして、セラミック坩堝(CP坩堝)9の側壁周囲に設けられた高周波誘導コイル3により円筒状金属ヒータ5を誘導加熱し、円筒状金属ヒータ5内のタンタル酸リチウム粉末(結晶材料)12aおよび円筒状金属ヒータ5側壁近傍と下端部5a近傍のタンタル酸リチウム粉末(結晶材料)12aを熔融させて原料融液12とし、かつ、円筒状金属ヒータ5側壁から離れた部位と下端部5aから離れた部位のタンタル酸リチウム粉末(結晶材料)12a間に原料融液12を流入させて連続した酸化物層2cを形成し、該酸化物層2cを内表面に有しかつ原料融液12を貯留保持可能な酸化物坩堝2を形成して実施例1に係る装置本体10を製造した。
【0082】
尚、タンタル酸リチウム粉末(結晶材料)12aを熔融させて酸化物層2cを形成する際、上記円筒状金属ヒータ5外側の融液量を増やすため、高周波誘導コイル5の投入パワーを結晶育成時より10%多く設定している。これによりタンタル酸リチウム粉末(結晶材料)12a間に原料融液が流入して連続した酸化物層2cが形成される。
【0083】
また、円筒状加熱室1の上端側開放部を閉止する仕切り板6については、金属材(SUS)と断熱材(アルミナ)の2層構造体とした。
【0084】
(2)結晶育成に使用する第一重合室20と第三重合室40
図1に示す円筒状加熱室1の上端側開放部に重ね合わされる下端側開放部を有し、かつ、結晶引き上げ軸21、41用の開口22、42と育成した酸化物単結晶を収容する結晶収容部23、43を有すると共に、支持棒26、46で支持された断熱材25、45を内部に有する第一重合室20と第三重合室40については、高さが60mmのSUS製円筒体とし、各下端側開放部を閉止する仕切り板24、44については、上記円筒状加熱室1と同様、金属材(SUS)と断熱材(アルミナ)の2層構造体とした。
【0085】
(3)原料供給に使用する第二重合室30
図1に示す円筒状加熱室1の上端側開放部に重ね合わされる下端側開放部を有し、かつ、内部に原料供給手段31を有すると共に、下端側開放部に断熱材33が設けられた第二重合室30についてもSUS製円筒体で構成し、下端側開放部を閉止する仕切り板32については、上記円筒状加熱室1と同様、金属材(SUS)と断熱材(アルミナ)の2層構造体とした。尚、上記原料供給手段31は、図1に示すように底面と側面に開口部36を有しかつ内部にインゴット等の結晶塊と結晶粉末から成る結晶原料31aが収容されたイリジウム製保持容器37と、図示外の上下動兼回転機構に取り付けられ保持容器37を上下動させる容器引き上げ軸35とで構成されている。
【0086】
(4)移動手段
図2に示したように下端側開放部を下側にして第一重合室20、第二重合室30、第三重合室40が搭載される2本の円弧状走行レール51、51と、該円弧状走行レール51、51の中心部に立設されるシャフト52と、シャフト52周りに時計回り方向および反時計回り方向に回転可能な回転体53と、該回転体53と各重合室20、30、40を連結する回転アーム54とで実施例1に係る移動手段50を構成した。
【0087】
2.タンタル酸リチウム単結晶の育成
(1)第一重合室20を使用する結晶育成
上端側開放部が仕切り板6により閉止された円筒状加熱室1の該上端側開放部に下端側開放部が仕切り板24により閉止された第一重合室20の該下端側開放部を重ね合わせた後、上記仕切り板6、24を取り外して円筒状加熱室1の空間部と第一重合室20の空間部を連通させると共に、上下動兼回転機構に取り付けられた結晶引き上げ軸21を降下させて種結晶27を酸化物坩堝2の原料融液に接触させ、然る後、結晶引き上げ軸21を回転させながら上昇させて径4インチで直胴長が約50mmのタンタル酸リチウム単結晶を育成した。
【0088】
次いで、育成したタンタル酸リチウム単結晶を第一重合室20の結晶収容部23に収容した後、円筒状加熱室1の上端側開放部と第一重合室20の下端側開放部に、再度、仕切り板6、24を取り付けて円筒状加熱室1の上端側開放部と第一重合室20の下端側開放部をそれぞれ閉止し、かつ、上記上下動兼回転機構から結晶引き上げ軸21を取り外して第一重合室20を水平方向へ移動できるようにした。
【0089】
次いで、円筒状加熱室1の上端側開放部と第一重合室20の下端側開放部が閉止された状態で、上記移動手段50により第一重合室20を装置本体10から時計周り方向の冷却時支持台55の位置まで移動させ、かつ、待機する第二重合室30も時計周り方向へ移動させてその下端側開放部が仕切り板32により閉止された第二重合室30の該下端側開放部を円筒状加熱室1の上端側開放部に重ね合わせた後、容器引き上げ軸35に上下動兼回転機構を取り付けた。
【0090】
そして、冷却時支持台55に移動させた第一重合室20のタンタル酸リチウム単結晶を冷却して径4インチで直胴長が約50mmのタンタル酸リチウム単結晶を取り出した。
【0091】
(2)第二重合室30を使用する原料供給
上記第一重合室20が冷却時支持台55まで移動されるタイミングと同期して上端側開放部が仕切り板6により閉止された円筒状加熱室1の該上端側開放部に下端側開放部が仕切り板32により閉止された第二重合室30の該下端側開放部を重ね合わせた後、上記仕切り板6、32を取り外して円筒状加熱室1の空間部と第二重合室30の空間部を連通させると共に、上下動兼回転機構に取り付けられた容器引き上げ軸35により保持容器37を降下させて該保持容器37の開口部36が酸化物坩堝2の原料融液12に接するように配置し、かつ、開口部36から保持容器37内に原料融液12を侵入させると同時に高周波誘導コイル3により円筒状金属ヒータ5を誘導加熱して結晶原料を熔融させた。
【0092】
次いで、原料補給を終えたら、容器引き上げ軸35により保持容器37を引き上げて第二重合室30内に収容し、然る後、円筒状加熱室1の上端側開放部と上記第二重合室30の下端側開放部に、再度、仕切り板6、32を取り付けて円筒状加熱室1の上端側開放部と第二重合室30の下端側開放部をそれぞれ閉止し、かつ、上記上下動兼回転機構から容器引き上げ軸35を取り外して第二重合室30を水平方向へ移動できるようにした。
【0093】
次いで、円筒状加熱室1の上端側開放部と第二重合室30の下端側開放部が閉止された状態で上記移動手段50により第二重合室30を装置本体10から時計周り方向へ移動させ、かつ、待機する第三重合室40も時計周り方向へ移動させて円筒状加熱室1の上端側開放部に下端側開放部が仕切り板44により閉止された第三重合室40の該下端側開放部を重ね合わせた後、第三重合室40の結晶引き上げ軸41に上下動兼回転機構を取り付けた。尚、移動手段50により移動させた第二重合室30は、第三重合室40を使用する結晶育成工程が終了するまで待機させ、かつ、消費された結晶原料を保持容器37内に補充した。
【0094】
(3)第三重合室40を使用する結晶育成
上記第二重合室30が移動されるタイミングと同期して上端側開放部が仕切り板6により閉止された円筒状加熱室1の該上端側開放部に下端側開放部が仕切り板44により閉止された第三重合室40の該下端側開放部を重ね合わせた後、上記仕切り板6、44を取り外して円筒状加熱室1の空間部と第三重合室40の空間部を連通させると共に、上下動兼回転機構に取り付けられた結晶引き上げ軸41を降下させて種結晶を酸化物坩堝の原料融液に接触させ、然る後、結晶引き上げ軸41を回転させながら上昇させて径4インチで直胴長が約50mmのタンタル酸リチウム単結晶を育成した。
【0095】
次いで、育成した育成したタンタル酸リチウム単結晶を第三重合室40の結晶収容部43に収容した後、円筒状加熱室1の上端側開放部と第三重合室40の下端側開放部に、再度、仕切り板6、44を取り付けて円筒状加熱室1の上端側開放部と第三重合室40の下端側開放部をそれぞれ閉止し、かつ、上記上下動兼回転機構から結晶引き上げ軸41を取り外して第三重合室40を水平方向へ移動できるようにした。
【0096】
次いで、円筒状加熱室1の上端側開放部と第三重合室40の下端側開放部が閉止された状態で、上記移動手段50により第三重合室40を装置本体から反時計周り方向の冷却時支持台55の位置まで移動させ、かつ、待機する第二重合室30も反時計周り方向へ移動させてその下端側開放部が仕切り板32により閉止された第二重合室30の該下端側開放部を円筒状加熱室1の上端側開放部に重ね合わせた後、容器引き上げ軸35に上下動兼回転機構を取り付けた。
【0097】
そして、冷却時支持台55に移動させた第三重合室40のタンタル酸リチウム単結晶を冷却して径4インチで直胴長が約50mmのタンタル酸リチウム単結晶を取り出した。
【0098】
(4)連続育成
そして、第二重合室30を使用する原料供給を挟んで、第一重合室20を使用する結晶育成と第三重合室40を使用する結晶育成を50回繰り返したところ、径4インチで直胴長が約50mmである49本のタンタル酸リチウム単結晶を育成することができ、残り1本はタンタル酸リチウム多結晶であった。
【0099】
尚、連続育成終了後、円筒状加熱室1内の酸化物坩堝2を観察したところ大きな変形は確認されなかった。
【0100】
[比較例(従来例)]
図15に示す従来例の育成装置を用い、かつ、イリジウム製で径170mm、高さ170mmの坩堝100を用いて引き上げ法(チョクラルスキー法)により径4インチで直胴長が約50mmのタンタル酸リチウム単結晶を育成した。
【0101】
そして、結晶育成を30回繰り返したところ、タンタル酸リチウム単結晶が得られた回数は30回中21回であり、22回以降は単結晶が得らなかった。
【0102】
22回目以降、上記坩堝100が大きく変形したためであった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、同品質の酸化物単結晶を繰り返し安定して育成できるため、表面弾性波デバイス材料として用いられるタンタル酸リチウム単結晶等酸化物単結晶の育成装置として利用される産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0104】
1 円筒状加熱室
2 酸化物坩堝
2b 外側底面
2c 酸化物層
3 高周波誘導コイル
3a 下端部
4 ヒータ固定用棒材(固定手段)
5 円筒状金属ヒータ
5a 下端部
5b 上端部
6 仕切り板
7 リング状リフレクタ
8 アフターヒータ
9 セラミック坩堝(PC坩堝)
10 装置本体
10a 支持台
11 上方側空間部
12 原料融液
12a 結晶材料
20 第一重合室
21 結晶引き上げ軸
22 開口
23 結晶収容部
24 仕切り板
25 断熱材
26 支持棒
27 種結晶
28 固定治具
30 第二重合室
31 原料供給手段
31a 結晶原料
32 仕切り板
33 断熱材
35 容器引き上げ軸
36 開口部
37 保持容器
40 第三重合室
41 結晶引き上げ軸
42 開口
43 結晶収容部
44 仕切り板
45 断熱材
46 支持棒
50 移動手段
51 円弧状走行レール
52 シャフト
53 回転体
54 回転アーム
55 冷却時支持台
60 チャンバー
70 酸化物単結晶
100 坩堝
101 高周波誘導コイル
102 シード棒(結晶引き上げ軸)
103 リング状リフレクタ
104 アフターヒータ
105 種結晶
106 原料融液
107 断熱材
108 断熱材
109 CP坩堝(多孔質アルミナ坩堝)
110 断熱性坩堝台
200 チャンバー
300 メインチャンバー
301 貴金属坩堝
302 高周波誘導コイル
400 第一上部チャンバー
401 温度調節用ヒータ
402 ポーリング用電極(結晶引き上げ軸兼用)
403 ポーリング用電極
404 下蓋
500 第二上部チャンバー
501 温度調節用ヒータ
502 ポーリング用電極(結晶引き上げ軸兼用)
503 ポーリング用電極
504 下蓋
600 結晶
600a 原料チャージユニット
601 結晶原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20