(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023147889
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】干渉判定装置、干渉判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/095 20120101AFI20231005BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231005BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60W30/095
G08G1/16 C
B60W40/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055651
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隼
(72)【発明者】
【氏名】寺山 透星
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA32
3D241CE01
3D241DC01Z
3D241DC18Z
3D241DC20Z
3D241DC25Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】安全性を確保しつつ、誤検知を防止し、不要な報知を抑止することを可能とする干渉判定装置、干渉判定方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】干渉判定装置1は、自車両100に搭載される干渉判定装置1であって、自車両100の前後方向Yに交差する方向で自車両100に接近する他車両200を検出する検出処理部31と、検出処理部31による検出可能範囲A1内に設けられる判定エリアA2から他車両200が退出するときの他車両200の移動方向Dに基づいて、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果を出力する干渉判定処理部34と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される干渉判定装置であって、
前記移動体の進行する方向または後退する方向に交差する方向で前記移動体に接近する物標を検出する検出処理部と、
前記検出処理部による検出可能範囲内に設けられる判定エリアから前記物標が退出するときの該物標の移動方向に基づいて、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果を出力する干渉判定処理部と、を備える干渉判定装置。
【請求項2】
前記干渉判定処理部は、前記物標が前記判定エリアに進入した進入位置と前記判定エリアから退出した退出位置とを通る直線である基準線の前記交差する方向に対する角度と、前記移動方向の前記交差する方向に対する角度に基づいて、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動するかを判定する請求項1に記載の干渉判定装置。
【請求項3】
前記干渉判定処理部は、前記基準線の前記交差する方向に対する角度と、前記移動方向の前記交差する方向に対する角度との差分が所定の閾値以上である場合に、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動すると判定する請求項2に記載の干渉判定装置。
【請求項4】
前記干渉判定処理部は、前記退出位置と前記移動体の位置との間の間隔に応じて、前記閾値を設定する請求項3に記載の干渉判定装置。
【請求項5】
前記移動体と前記物標の衝突を防止する衝突防止装置に接続され、前記干渉判定処理部による判定結果を前記衝突防止装置に送信するように構成される請求項1~4に記載の干渉判定装置。
【請求項6】
移動体に搭載される干渉判定装置が実行する干渉判定方法であって、
前記移動体の進行する方向または後退する方向に交差する方向で前記移動体に接近する物標を検出する検出処理ステップと、
前記検出処理ステップにおける検出可能範囲内に設けられる判定エリアから前記物標が退出するときの該物標の移動方向に基づいて、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果を出力する干渉判定処理ステップと、を含む干渉判定方法。
【請求項7】
移動体に搭載される干渉判定装置のコンピュータに、
前記移動体の進行する方向または後退する方向に交差する方向で前記移動体に接近する物標を検出する検出処理機能と、
前記検出処理機能による検出可能範囲内に設けられる判定エリアから前記物標が退出するときの該物標の移動方向に基づいて、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果を出力する干渉判定処理機能と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉判定装置、干渉判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の移動体に搭載され、物標との衝突を防止するための衝突防止装置に関する技術が知られている。例えば特許文献1には、レーダによって検知した他車両等の物標の存在の有無、相対距離及び速度に基づき、所定の報知を行う技術が記載されている。また例えば特許文献2には、自己、障害物検知等のイベント情報を車両間通信により他車両に通知する技術が記載されている。
【0003】
ところで、衝突の危険性は、衝突防止装置が搭載される移動体の予測進路と、衝突防止装置によって検出される物標の予測進路とが交差するかに基づいて判定される。例えば物標が移動体の予測進路と交差する前に比較的急な角度で進路を変更する場合、その物標は移動体の予測進路から逸れていき衝突の危険性が低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-182256号公報
【特許文献2】特開2018-165098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのように実際には危険性が少ないものの、依然として衝突の危険性のある物標として報知の対象とされてしまい、ユーザが煩わしさを感じることがある。特許文献1には、移動物の種類に応じて不要な報知を排除することができることが記載されているものの、物標の進路変更に応じた処理については記載されていない。また特許文献2に記載の技術では、車両間通信によりハンドル情報をやり取りした場合であっても、例えば右左折と障害物等を回避するためのハンドル情報の区別がつかない。
【0006】
本発明は、安全性を確保しつつ、誤検知を防止し、不要な報知を抑止することを可能とする干渉判定装置、干渉判定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、移動体に搭載される干渉判定装置であって、前記移動体の進行する方向または後退する方向に交差する方向で前記移動体に接近する物標を検出する検出処理部と、前記検出処理部による検出可能範囲内に設けられる判定エリアから前記物標が退出するときの該物標の移動方向に基づいて、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動するかを判定し、出力する干渉判定処理部と、を備える干渉判定装置に関する。
【0008】
前記干渉判定処理部は、前記物標が前記判定エリアに進入した進入位置と前記判定エリアから退出した退出位置とを通る直線である基準線の前記交差する方向に対する角度と、前記移動方向の前記交差する方向に対する角度に基づいて、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動するかを判定してもよい。
【0009】
前記干渉判定処理部は、前記基準線の前記交差する方向に対する角度と、前記移動方向の前記交差する方向に対する角度との差分が所定の閾値以上である場合に、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動すると判定してもよい。
【0010】
前記干渉判定処理部は、前記退出位置と前記移動体の位置との間の間隔に応じて、前記閾値を設定してもよい。
【0011】
前記移動体と前記物標の衝突を防止する衝突防止装置に接続され、前記干渉判定処理部による判定結果を前記衝突防止装置に送信するように構成されてもよい。
【0012】
また本発明は、移動体に搭載される干渉判定装置が実行する干渉判定方法であって、前記移動体の進行する方向または後退する方向に交差する方向で前記移動体に接近する物標を検出する検出処理ステップと、前記検出処理ステップにおける検出可能範囲内に設けられる判定エリアから前記物標が退出するときの該物標の移動方向に基づいて、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動するかを判定し、出力する干渉判定処理ステップと、を含む干渉判定方法に関する。
【0013】
また本発明は、移動体に搭載される干渉判定装置のコンピュータに、前記移動体の進行する方向または後退する方向に交差する方向で前記移動体に接近する物標を検出する検出処理機能と、前記検出処理機能による検出可能範囲内に設けられる判定エリアから前記物標が退出するときの該物標の移動方向に基づいて、前記物標が前記移動体と干渉しない方向に移動するかを判定し、出力する干渉判定処理機能と、を実行させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安全性を確保しつつ、誤検知を防止し、不要な報知を抑止することを可能とする干渉判定装置、干渉判定方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る干渉判定装置を搭載した車両を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る干渉判定装置の制御部のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る干渉判定装置の制御部の干渉判定処理に関する機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】交差点の手前で停止している車両に搭載された干渉判定装置による干渉判定処理を模式的に説明する平面図である。
【
図5】
図4における退出位置及びその近傍を拡大した拡大平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る干渉判定装置の干渉判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態に係る干渉判定装置1について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る干渉判定装置1を搭載した車両(以下、自車両という)100の模式図である。
【0018】
干渉判定装置1は、移動体としての自車両100に搭載され、衝突防止装置としてのECU(Electric Control Unit)2に接続され、ECU2の動作を補助する装置である。干渉判定装置1は、例えば自車両100の前部右側のバンパ内と前部左側のバンパ内に配置される。なお、干渉判定装置1の配置場所は、自車両100の自車両100の前部右側のバンパ内と前部左側のバンパ内に限定されず、自車両100の後部右側のバンパ内または後部左側のバンパ内などに配置されてもよい。
【0019】
干渉判定装置1は、制御部10とアンテナ部20とを備えるレーダ装置である。アンテナ部20は、電磁波を送信する送信アンテナ21と、物標によって反射された反射波を受信する受信アンテナ22と、を有する。即ち、干渉判定装置1は、アンテナ部20による電磁波の送受信により自車両100の周囲の物標を検出する。送信アンテナ21及び受信アンテナ22は、それぞれ、複数のアンテナ素子によって構成される。アンテナ部20は、受信アンテナ22の受信信号を処理し、制御部10に送信する。
【0020】
制御部10は、受信アンテナ22からの受信信号に基づいて物標に関する情報(距離、速度、及び、方位角等)を検出し、物標が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果をECU2に出力する。干渉しない方向とは、自車両100との衝突の危険性がなくなる他車両200の移動方向をいう。制御部10の構成や処理の具体的な内容については後述する。
【0021】
ECU2は、自車両100の電子部品の各種の制御を行うコンピュータである。ECU2は、受信アンテナ22からの受信信号等に基づいて判定された自車両100と物標の衝突の危険性を示す情報を受信すると、報知部を動作させる制御を行う。
【0022】
報知部は、ユーザに衝突の危険性が生じていることを光、音、映像又はこれらの組み合わせによって報知する機器である。報知部は、例えば、光を点灯する表示灯、音を発生させるスピーカ、映像を表示するディスプレイ等によって構成される。
【0023】
次に、干渉判定装置1の制御部10のハードウェアの構成について
図2を参照しながら説明する。
図2は、制御部10のハードウェアの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部10は、プロセッサ11、ROM(read-only memory)12、RAM(random-access memory)13、補助記憶装置14、通信I/F(interface)15を備え、各部がバス16等によって接続されるコンピュータである。
【0024】
プロセッサ11は、干渉判定装置1の動作に必要な演算及び制御等の処理を行うコンピュータの中枢部分であり、各種演算及び処理等を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。あるいは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであっても良い。
【0025】
プロセッサ11は、ROM12又は補助記憶装置14等に記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等のプログラムに基づいて、干渉判定装置1の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサ11は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていても良い。
【0026】
ROM12及びRAM13は、プロセッサ11を中枢としたコンピュータの主記憶装置である。ROM12は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM12は、上記のプログラムのうち、例えばファームウェア等を記憶する。また、ROM12は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ等も記憶する。RAM13は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM13は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリア等として利用される。RAM13は、典型的には揮発性メモリである。
【0027】
補助記憶装置14は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリ等である。補助記憶装置14は、上記のプログラムのうち、例えば、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等を記憶する。また、補助記憶装置14は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ11での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値等を記憶する。
【0028】
通信I/F15は、ECU2と通信するためのインターフェースである。制御部10の検出結果は、通信I/F15からECU2に送信される。
【0029】
次に、干渉判定装置1の制御部10の機能について
図3~
図5を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態の干渉判定装置1の干渉判定に関する機能的構成の一例を示すブロック図である。
図4は、道路R1と道路R2が交差する交差点の手前で停車している自車両100に搭載された干渉判定装置1による干渉判定処理を模式的に説明する平面図である。
図5は、
図4に示す領域Zを拡大した拡大平面図である。
【0030】
図3に示すように、干渉判定装置1の制御部10は、プロセッサ11によって実行される機能部として、検出処理部31と、判定エリア設定部32と、進入退出判定部33と、干渉判定処理部34と、を備える。
【0031】
検出処理部31は、アンテナ部20の受信アンテナ22が受信した信号に基づいて物標を検出する処理を実行する。検出処理部31は、視野角θ1の検出可能範囲A1内に進入した車両(以下、他車両)200等を物標として検出する。例えば検出処理部31は、
図4に示すように、自車両100の進行する方向または後退する方向(以下、前後方向Yという)に交差する方向(以下、左右方向Xという)で自車両100に接近する他車両200等の物標を検出する。また、検出処理部31は、物標に関する情報(距離、相対速度、及び、方位角等)を取得する。
【0032】
判定エリア設定部32は、自車両100が停止している状態になるか又は所定速度Vs(例えば、10km/h)以下で移動する状態になると、検出可能範囲A1内に判定エリアA2を設定する。
【0033】
判定エリア設定部32によって設定される判定エリアA2の詳細について
図4を参照しながら説明する。
図4は、道路R1における交差点の手前で停止している自車両100の前部右側に配置される干渉判定装置1の判定エリア設定部32が設定する判定エリアA2を示している。
図4は、自車両100は、片側2車線の道路R1の最も左側のレーンに停止している。なお、自車両100は、片側1車線以上の道路R1のどのレーンに停止していてもよい。
【0034】
図4に示すように、例えば判定エリアA2は、左右方向Xに長い矩形状であり、基準ラインA21、左折用ラインA22、右折用ラインA23、及び開始ラインA24の4本の線によって囲まれたエリアである。
【0035】
基準ラインA21は、自車両100から前方に所定の距離d1をおいた点P1から、自車両100の進行方向に所定の距離d2延びる線である。基準ラインA21は、前後方向Yに対して略平行に延びる。
【0036】
左折用ラインA22は、点P1を始点として自車両100から見て右側に所定の距離d3延びる線である。左折用ラインA22は、左右方向Xと略平行に延びる。
【0037】
右折用ラインA23は、基準ラインA21における点P1とは反対側の端部P2を始点として自車両100から見て右側に左折用ラインA22と同じ距離d3延びる線である。右折用ラインA23は、左折用ラインA22に対して略平行に対向するように延びる。
【0038】
開始ラインA24は、左折用ラインA22の基準ラインA21とは反対側の端部P3から右折用ラインA23の基準ラインA21とは反対側の端部P4に延びる線である。即ち、開始ラインA24は、自車両100から見て所定の距離d3右側に基準ラインA21に対して略平行に対向するように形成される線である。
図4に示す例では、判定エリアA2は、道路R2に沿って設けられている。
【0039】
進入退出判定部33は、他車両200等の物標の判定エリアA2への進入と退出を判定する処理を実行する。進入退出判定部33は、例えば判定エリア設定部32によって設定された判定エリアA2の位置情報を参照し、検出処理部31によって検出された他車両200が判定エリアA2に進入したか、判定エリアA2内から退出したかを判定する。また、進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2内に進入したと判定した場合、他車両200の判定エリアA2への進入位置Bを補助記憶装置14等に記憶する。また、進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2内から退出したと判定した場合、他車両200の判定エリアA2からの退出位置Cを補助記憶装置14等に記憶する。
【0040】
図4に示す判定エリアA2内の一点鎖線は、判定エリアA2内を移動した他車両200の軌跡Tを示し、退出位置Cから延びる一点鎖線の矢印は、判定エリアA2から他車両200が退出するときの移動方向Dを示している。
【0041】
干渉判定処理部34は、判定エリアA2から他車両200が退出するときの移動方向Dに基づいて、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果をECU2に送信する処理を実行する。干渉しない方向とは、自車両100との衝突の危険性がなくなる他車両200の移動方向をいう。移動方向Dは、例えば判定エリアA2から退出する直前(退出時よりも所定の時間前)から退出時の他車両200の軌跡Tに基づいて特定してもよく、退出位置Cにおける他車両200の相対速度ベクトルに基づいて特定してもよい。なお、他車両200の軌跡Tは、例えば検出処理部31によって連続して検出された他車両200の複数の位置等のデータから特定してもよい。
【0042】
干渉判定処理部34は、例えば通信I/F15を介して他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動すると判定した場合に、報知部による他車両200の接近を報知する動作を禁止させる報知禁止信号をECU2に送信する。報知禁止信号を受信するとECU2による報知部を動作させる制御が禁止され、報知部によるユーザへの報知動作が抑制される。なお制御部10の機能に報知判定部を持ち、報知する動作を抑制してもよい。
【0043】
干渉判定処理部34による干渉判定処理の詳細について
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0044】
図5に示すように、干渉判定処理部34は、他車両200が開始ラインA24上の進入位置Bと左折用ラインA22上の退出位置Cとを通る直線である基準線Lの左右方向Xに対する角度θ2と、移動方向Dの左右方向Xに対するか角度θ3に基づいて、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定する。より具体的には、例えば干渉判定処理部34は、基準線Lの左右方向Xに対する角度θ2と移動方向Dの左右方向Xに対する角度θ3との差分が所定の閾値以上である場合に、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動すると判定し、角度θ2と角度θ3との差分が閾値未満である場合に、他車両200が自車両100と干渉する方向に移動すると判定してもよい。角度θ2と角度θ3とを比較することで、進入位置Bから退出位置Cまで直進する場合に比べて、他車両200がどの程度右左折したかを特定できる。なお、閾値は、固定値であってもよく、退出位置Cと自車両100の位置との間の間隔に応じて変動する値であってもよい。例えば干渉判定処理部34は、退出位置Cと自車両100の位置との間の間隔が狭くなるほど閾値を大きい値に設定してもよい。
【0045】
ここで、衝突防止装置は、自車両100の予測進路と、相対速度等から特定された他車両200の予測進路とが交差するかに基づいて衝突の危険性を判定し、衝突の危険性があると判定した場合、自車両100のユーザに対して警報等を報知する。
図4に示す例では、他車両200は軌跡Tに示す道路R2から交差点に向かって直進した後に交差点に差し掛かったところで左折し、道路R1における自車両100が停止している車線R11の対向車線である車線R12に進入するように進路を変更している。このような他車両200は、実際には車線R12に向かって左折するので自車両100と衝突する可能性が低いものの、判定エリアA2内を直進しているときの相対速度等を用いて衝突の危険性を予め予測しているので報知対象とされる場合がある。
【0046】
本実施形態に係る干渉判定装置1によれば、判定エリアA2の退出位置Cでの移動方向Dに基づいて他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定するので、他車両200の直進動作と左折動作を判別することができる。例えば、基準線Lのように自車両100に対して斜め方向から直線的に接近する衝突の危険性が高い他車両200と、軌跡Tに示すように道路R2に沿って走行し、車線R12を走行するために左折する他車両200と、を判別し、その情報を出力できる。この情報を受信したECU2は、自車両100と干渉しないような他車両200に対する報知の発生を防止することや報知されていた不要な報知を停止することができる。即ち、干渉判定装置1は、安全性を確保しつつ、不要な報知を抑止することを可能とする。
【0047】
次に、本実施形態に係る干渉判定装置1が実行する干渉判定処理の流れの一例について
図6を参照しながら説明する。
図6は、干渉判定装置1による干渉判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図6では、干渉判定装置1が搭載される自車両100が停止しているときの処理の例を示している。
【0048】
図6に示すように、ステップS11において、検出処理部31は、検出可能範囲A1の他車両200を検出する。このとき、判定エリア設定部32によって判定エリアA2が検出可能範囲A1内に設定されている。
【0049】
ステップS12において、進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2に進入したかを判定する。進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2に進入したと判定した場合(ステップS12;YES)、処理をステップS13に移行させる。一方で、進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2に進入していないと判定した場合(ステップS12;NO)、所定の時間をおいてステップS12の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS13において、進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2に進入した進入位置Bを補助記憶装置14等に記憶する。
【0051】
ステップS14において、進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2から退出したかを判定する。進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2から退出したと判定した場合(ステップS14;YES)、処理をステップS15に移行させる。一方で、進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2から退出していないと判定した場合(ステップS14;NO)、所定の時間をおいてステップS14の処理を繰り返す。
【0052】
ステップS15において、進入退出判定部33は、他車両200が判定エリアA2から退出した退出位置Cや退出時の他車両200の移動方向Dを補助記憶装置14等に記憶する。
【0053】
ステップS16において、干渉判定処理部34は、判定エリアA2から他車両200が退出するときの移動方向Dに基づいて、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定する。例えば干渉判定処理部34は、ステップS13で記憶された進入位置BとステップS15で記憶された退出位置Cとを通る直線である基準線Lの左右方向Xに対する角度θ2と、移動方向Dの左右方向Xに対する角度θ3との差分が所定の閾値以上である場合に、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動すると判定し、角度θ2と角度θ3との差分が所定の閾値未満である場合に、他車両200が自車両100と干渉する方向に移動すると判定する。干渉判定処理部34は、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動すると判定した場合(ステップS16;YES)、処理をステップS17に移行させる。一方で、干渉判定処理部34は、他車両200が自車両100と干渉する方向に移動すると判定した場合(ステップS16;NO)、干渉判定処理において干渉判定装置1が実行する処理が終了する。
【0054】
ステップS17において、干渉判定処理部34は、他車両200の自車両100への接近に関するユーザへの報知動作を禁止させる報知禁止信号をECU2に送信する。この結果、ECU2から報知部に報知禁止信号が送信され、他車両200の自車両100への接近に関するユーザへの報知動作が抑制される。ステップS17の処理の後、干渉判定装置1が実行する干渉判定処理が終了する。なお、制御部10の機能に報知判定部を持つ場合には、報知判定部へ報知禁止信号を送信して報知動作を抑制してもよい。
【0055】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0056】
本実施形態に係る干渉判定装置1は、自車両100に搭載される干渉判定装置1であって、自車両100の前後方向Yに交差する方向で自車両100に接近する他車両200を検出する検出処理部31と、検出処理部31による検出可能範囲A1内に設けられる判定エリアA2から他車両200が退出するときの他車両200の移動方向Dに基づいて、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果を出力する干渉判定処理部34と、を備える。
【0057】
これにより、他車両200が判定エリアAを退出するときの移動方向Dを考慮して干渉しない方向に移動するか判定し、出力するので、自車両100の予測進路と交差する前に移動方向を変更する他車両200と、直進する他車両200を判別できるとともに、ECU2等に判定結果を出力できる。即ち、自車両100の予測進路から逸れていき衝突の危険性が低下する物標を報知の対象から除外でき、報知部による不要な報知の発生を低減でき、ユーザの煩わしさを低減できる情報をECU2に供給できる。よって、安全性を確保しつつ、不要な報知を抑止することを可能とする。
【0058】
また本実施形態に係る干渉判定装置1において、干渉判定処理部34は、他車両200が判定エリアA2に進入した進入位置Bと判定エリアA2から退出した退出位置Cとを通る直線である基準線Lの左右方向Xに対する角度θ2と、移動方向Dの左右方向Xに対する角度θ3に基づいて、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定する。
【0059】
これにより、直進する他車両200と、直進した後に自車両100に干渉しない方向に進むような角度で進路変更をする物標とをより正確に判別できる。
【0060】
また本実施形態に係る干渉判定装置1において、干渉判定処理部34は、基準線Lの左右方向Xに対する角度θ2と、移動方向Dの左右方向Xに対する角度θ3との差分が所定の閾値以上である場合に、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動すると判定する。
【0061】
これにより、直進する他車両200と、直進した後に自車両100に干渉しない方向に進むような角度で進路変更をする他車両200とをより正確に判別できる。
【0062】
また本実施形態に係る干渉判定装置1において、干渉判定処理部34は、退出位置Cと自車両100の位置との間の間隔d4に応じて、閾値を設定する。
【0063】
これにより、進路変更する他車両200のうち自車両100に干渉しない方向に進むような角度で進路変更をする他車両200をより正確に判別できる。
【0064】
また本実施形態に係る干渉判定装置1は、自車両100と他車両200の衝突を防止するECU2に接続され、干渉判定処理部34による判定結果をECU2に送信するように構成される。
【0065】
これにより、干渉判定装置1は、自車両100に干渉する方向に進む角度で進路変更をする他車両200のみを対象としてECU2に通知するので、誤検知による誤報知を防止でき、自車両100のユーザが感じる煩わしさをより確実に低減できる。
【0066】
本実施形態に係る干渉判定方法は、自車両100に搭載される干渉判定装置1が実行する干渉判定方法であって、自車両100の前後方向Yに交差する方向で自車両100に接近する他車両200を検出する検出処理ステップと、検出処理ステップにおける検出可能範囲A1内に設けられる判定エリアA2から他車両200が退出するときの他車両200の移動方向Dに基づいて、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果を出力する干渉判定処理ステップと、を含む。
【0067】
これにより、他車両200が判定エリアAを退出するときの移動方向Dを考慮して干渉しない方向に移動するか判定し、出力するので、自車両100の予測進路と交差する前に移動方向を変更する他車両200と、直進する他車両200を判別できるとともに、ECU2等に判定結果を出力できる。即ち、自車両100の予測進路から逸れていき衝突の危険性が低下する物標を報知の対象から除外でき、報知部による不要な報知の発生を低減でき、ユーザの煩わしさを低減できる情報をECU2に供給できる。よって、安全性を確保しつつ、不要な報知を抑止することを可能とする。
【0068】
本実施形態に係るプログラムは、自車両100に搭載される干渉判定装置1のコンピュータに、自車両100の前後方向Yに交差する方向で自車両100に接近する他車両200を検出する検出処理機能と、検出処理機能による検出可能範囲A1内に設けられる判定エリアA2から他車両200が退出するときの他車両200の移動方向Dに基づいて、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動するかを判定し、その判定結果を出力する干渉判定処理機能と、を実行させる。
【0069】
これにより、他車両200が判定エリアAを退出するときの移動方向Dを考慮して干渉しない方向に移動するか判定し、出力するので、自車両100の予測進路と交差する前に移動方向を変更する他車両200と、直進する他車両200を判別できるとともに、ECU2等に判定結果を出力できる。即ち、自車両100の予測進路から逸れていき衝突の危険性が低下する物標を報知の対象から除外でき、報知部による不要な報知の発生を低減でき、ユーザの煩わしさを低減できる情報をECU2に供給できる。よって、安全性を確保しつつ、不要な報知を抑止することを可能とする。
【0070】
なお、本発明は、例えば片側2車線以上の道路が交差する交差点等での手前で停止する自車両100が交差点をわたるために安全確認を行っているような状況において特に有効に作用する。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0072】
上記実施形態では、干渉判定装置1は電磁波の送受信によって物標の位置や相対速度等を検出するレーダ装置によって構成されていたが、物標を検出する機構は特に限定されない。例えば超音波の送受信によって物標の位置や相対速度等を検出可能な超音波センサ構成であってもよく、画像によって物標の位置や速度を検出可能なカメラ等の撮像装置であってもよい。
【0073】
また例えば、干渉判定処理部34は、移動方向Dの基準線Lに対する角度が所定の閾値以上である場合に、他車両200が自車両100と干渉しない方向に移動すると判定してもよく、移動方向Dの基準線Lに対する角度が所定の閾値未満である場合に、他車両200が自車両100と干渉する方向に移動すると判定してもよい。
【0074】
また、上述した上記実施形態及び変形例における一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。そして、コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 干渉判定装置
100 自車両(移動体)
200 他物標(物標)
31 検出処理部
34 干渉判定部
A1 検出可能範囲
A2 判定エリア
D 移動方向
X 前後方向(進行する方向または後退する方向)