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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148421
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電気化学センサユニット
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20231005BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N27/30 B
G01N27/28 301Z
G01N27/30 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056427
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】318004947
【氏名又は名称】株式会社ファーストスクリーニング
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊章
(72)【発明者】
【氏名】浅井 開
(57)【要約】
【課題】電気化学センサユニットの歩留まりを向上させる。
【解決手段】電気化学センサユニットは、支持基板と、支持基板上に設けられた配線と、配線上に設けられた導電性の接合材と、接触した被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を発生可能な上面を有する自立体として構成され、接合材を介して配線上に接合されたセンサ電極と、支持基板上に、または支持基板と一体として設けられ、センサ電極の上面を露出させつつ、センサ電極を囲む絶縁性の保護枠と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に設けられた配線と、
前記配線上に設けられた導電性の接合材と、
接触した被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を発生可能な上面を有する自立体として構成され、前記接合材を介して前記配線上に接合されたセンサ電極と、
前記支持基板上に、または前記支持基板と一体として設けられ、前記センサ電極の前記上面を露出させつつ、前記センサ電極を囲む絶縁性の保護枠と、
を備える
電気化学センサユニット。
【請求項2】
前記保護枠の少なくとも一部は、前記センサ電極から所定の間隔をあけて離間している
請求項1に記載の電気化学センサユニット。
【請求項3】
前記保護枠は、
前記センサ電極から離間した部分に、空隙を有し、
前記センサ電極に対して被検液を供給した際に、前記空隙内への前記被検液の浸入を抑制するよう構成されている
請求項2に記載の電気化学センサユニット。
【請求項4】
前記配線および前記接合材のうち少なくともいずれか一方は、前記空隙内に露出している
請求項3に記載の電気化学センサユニット。
【請求項5】
前記センサ電極の側面の少なくとも一部は、前記空隙内に露出している
請求項3又は4に記載の電気化学センサユニット。
【請求項6】
前記保護枠の少なくとも表面は、撥水性を有する
請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項7】
前記接合材は、導電性接着テープおよび導電性接着ペーストのうち少なくともいずれかを含む
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項8】
前記保護枠の少なくとも一部は、前記接合材と異なる絶縁性の絶縁接合材を介して前記支持基板上に固定されている
請求項1~7のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項9】
前記保護枠の少なくとも一部は、前記センサ電極を前記配線に接合する前記接合材と同じ接合材を介して前記支持基板上に固定され、
前記接合材は、前記保護枠の外周よりも外側に露出していない
請求項1~8のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項10】
前記センサ電極は、
前記接合材を介して前記配線上に配置される導電性基板と、
前記導電性基板の主面上に設けられた電極膜と、
を有する
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項11】
前記電極膜は、多結晶ダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボンからなる
請求項10に記載の電気化学センサユニット。
【請求項12】
前記支持基板上に設けられた参照電極と、
前記支持基板上に設けられ、測定時に前記センサ電極との間に所定の電圧が印加される対電極と、
を備え、
前記センサ電極の前記上面、前記参照電極および前記対電極が前記被検液に触れた状態で使用される
請求項1~11のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【請求項13】
前記センサ電極および前記保護枠を覆い、前記被検液を保持する保液シートをさらに備える
請求項1~12のいずれか1項に記載の電気化学センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を生じさせる電気化学センサユニットが開発されている(例えば、特許文献1)。電気化学センサユニットを用いることで、被検液に含まれる被検物質の定性分析および定量分析が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-244188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、電気化学センサユニットの歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態によれば、
支持基板と、
前記支持基板上に設けられた配線と、
前記配線上に設けられた導電性の接合材と、
接触した被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を発生可能な上面を有する自立体として構成され、前記接合材を介して前記配線上に接合されたセンサ電極と、
前記支持基板上に、または前記支持基板と一体として設けられ、前記センサ電極の前記上面を露出させつつ、前記センサ電極を囲む絶縁性の保護枠と、
を備える
電気化学センサユニットが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、電気化学センサユニットの歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る電気化学センサユニットの概略斜視図である。
図2図2は、本開示の一実施形態に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
図3A図3Aは、本開示の一実施形態の変形例1に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
図3B図3Bは、本開示の一実施形態の変形例2に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
図4A図4Aは、本開示の一実施形態の変形例3に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
図4B図4Bは、本開示の一実施形態の変形例4に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
図5A図4Aは、本開示の一実施形態の変形例5に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
図5B図4Bは、本開示の一実施形態の変形例6に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
図6A図6Aは、本開示の一実施形態の変形例7に係る電気化学センサユニットのB-B’線の概略断面図である。
図6B図6Bは、本開示の一実施形態の変形例8に係る電気化学センサユニットのB-B’線の概略断面図である。
図7A図7Aは、本開示の一実施形態の変形例9に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
図7B図7Bは、本開示の一実施形態の変形例10に係る電気化学センサユニットのA-A’線の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<発明者等が得た知見>
発明者等は、電気化学センサユニットとして、配線を有する支持基板上に、自立体(板状、チップ状)としてのセンサ電極を実装したセンサユニットを検討した。
【0009】
しかしながら、発明者等は、上述の電気化学センサユニットでは、以下の課題が生じることを見出した。
【0010】
電気化学センサユニットとして、例えば、センサ電極の上面から底部までの部分が支持基板上で露出した構成が考えられる。このような構成では、センサ電極に対して被検液を供給した際に、センサ電極の底部近傍に被検液が浸入することがある。このとき、センサ電極に接合された導電性の接合材および配線に対して、被検液が接触しうる。このような状況下において、配線および接合材を介してセンサ電極に電圧を印加すると、センサ電極において、被検液内の被検物質の電気化学反応が発生する一方で、センサ電極以外の配線および接合材において、漏洩電流が発生してしまう。
【0011】
上述の漏洩電流が流れると、本来センサ電極上で発生する被検物質による電気化学信号が、漏洩電流に埋もれてしまい、当該信号を検知することが困難になる。また、たとえ漏洩電流が比較的小さく、被検物質の電気化学信号が検知される場合であっても、被検物質の電気化学信号と漏洩電流との和が検出されるため、被検物質に由来する正しいピーク電流値が示されず、正確なセンサ機能が実現されない。
【0012】
このような課題に対し、発明者等は、センサ電極の底部付近に配置された導電性の接合材および配線に対する被検液の接触を抑制するため、センサ電極の底部付近を液状の絶縁性樹脂によって封止した構成を検討した。
【0013】
しかしながら、当該絶縁性樹脂によって封止した構成では、液状の絶縁性樹脂を塗布するときに、センサ電極の上面が絶縁性樹脂自体によって汚染される可能性がある。また、液状の絶縁性樹脂を塗布した後、樹脂を加熱硬化又は紫外線硬化させるときに、加熱硬化時の熱または紫外線硬化時の熱によって、様々な有機物が樹脂から揮発し、センサ電極の上面に付着する可能性がある。これらのため、センサ電極の感度が低下する可能性がある。その結果、電気化学センサユニットの歩留まりが低下するおそれがある。
【0014】
本開示は、本発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0015】
<本開示の一実施態様>
(1)電気化学センサユニット
本実施形態に係る電気化学センサユニット10について、図1および図2を参照して説明する。図1および図2は、それぞれ、本態様に係る電気化学センサユニットの概略斜視図、A-A’線の概略断面図である。
【0016】
本実施形態の電気化学センサユニット10は、例えば、被検液中の被検物質(検知対象物質)の濃度を、三電極法により測定するよう構成されている。被検液および被検物質は、それぞれ、例えば、ヒトの尿、尿酸である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る電気化学センサユニット(以下、「センサユニット」と略すことがある)10は、例えば、支持基板11と、配線13、14および15と、センサ電極12と、参照電極16と、対電極17と、絶縁膜20と、保護枠22と、保液シート(不図示)と、を備えている。なお、センサ電極12、参照電極16および対電極17を「電極群」ともいう。
【0018】
[支持基板]
支持基板11は、例えば、平板状部材(シート状部材、短冊状部材)として構成されている。支持基板11の平面形状は、例えば、長方形である。
【0019】
支持基板11は、例えば、絶縁性を有している。支持基板11を構成する材料としては、例えば、複合樹脂、セラミック、ガラス、プラスチック、不織布、紙、紙エポキシ等が挙げられる。支持基板11を構成する材料は、例えば、可燃性材料、生分解性材料であってもよい。本実施形態の支持基板11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されていることが好ましい。これにより、支持基板11に可撓性を付与することができる。
【0020】
[配線]
配線13、14および15は、例えば、支持基板11の主面上に設けられている。配線13、14および15は、例えば、支持基板11の長手方向に沿って設けられている。配線13、14および15は、例えば、互いに離間して設けられている。
【0021】
配線13~15の材料としては、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、これらの合金、これらの酸化物、カーボン(C)等が挙げられる。なお、配線13~15のそれぞれは、上述の複数の金属の積層構造を有していてもよい。また、配線13~15は、同一の材料からなっていてもよいし、或いは、互いに異なる材料からなっていてもよい。
【0022】
[絶縁膜]
絶縁膜20は、例えば、絶縁性の樹脂を含み、支持基板11上で配線13~15を覆うように設けられている。絶縁膜20を構成する樹脂としては、例えば、ソルダーレジスト、PETなどが挙げられる。
【0023】
絶縁膜20は、例えば、センサ電極12、後述の保護枠22、参照電極16および対電極17を露出させた開口部20aを有している。測定時には、絶縁膜20の開口部20a内に被検液が供給される。
【0024】
[センサ電極]
センサ電極12は、例えば、接触した被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を発生可能な上面121aを有する自立体として構成されている。ここでいう「自立体」とは、支持なしで自立可能な固体のことを意味し、例えば、平板、円盤、立方体、直方体、多面体などのことである。センサ電極12は、例えば、「作用電極」とも呼ばれる。このように、センサ電極12が支持基板11上に形成された薄膜ではなく、支持基板11とは別体として構成された自立体であることで、可撓性の支持基板11を用いたり、チップ状のセンサ電極12を容易に大量生産したりすることができる。
【0025】
本実施形態では、自立体としてのセンサ電極12は、例えば、後述の導電性の接合材18を介して、配線13の長手方向の一端における上面上に接合されている(接着されている)。センサ電極12および保護枠22については、詳細を後述する。
【0026】
[参照電極]
参照電極16は、例えば、センサ電極12の電位を決定する際の基準となる電極として構成されている。参照電極16としては、例えば、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極が挙げられる。
【0027】
参照電極16は、例えば、配線14の長手方向の一端における上面上に配置されている。
【0028】
[対電極]
対電極17は、例えば、測定時にセンサ電極12および対電極17の間に所定の電圧を印加されるように構成されている。すなわち、対電極17は、センサ電極12で発生した電流の受け手になる電極である。このため、対電極17は、当該対電極17の表面によって電流値が律速しない様に(電流が制限されないように)、センサ電極12の上面121aの面積よりも2倍以上の面積を有していることが好ましい。
【0029】
対電極17は、例えば、配線15の長手方向の一端に設けられている。対電極17は、平面視でセンサ電極12および参照電極16を囲むように設けられている。
【0030】
対電極17は、例えば、配線15と一体に形成されている。対電極17の材料としては、例えば、Pt、Au、Cu、Pd、Ni、Ag、カーボン電極等が挙げられる。
【0031】
[保液シート]
本実施形態では、さらに、保液シート(不図示)が設けられていてもよい。保液シートは、例えば、センサ電極12、後述の保護枠22、参照電極16および対電極17を覆うように設けられ、被検液を保持するよう構成されている。
【0032】
保液シートにおいて、被検液を吸収する保液領域(不図示)は、例えば、(清浄に保たれた)天然繊維、パルプ繊維、再生繊維、合成繊維、ろ紙、メンブレンフィルタ、ガラスフィルタ、ろ布、スポンジ、珪藻土等により構成されている。なお、保液領域は、上述の1つまたは複数の材料からなる集合体に、吸水性ポリマ粒子等を含んでいてもよい。
【0033】
なお、保液シートは、保液領域を囲む非保液領域(不図示)を有していてもよい。非保液領域は、例えば、撥水性または不透液性の材料により構成されている。具体的な非保液領域の材料としては、例えば、プラスチック、シリコン樹脂、テフロン(登録商標)、ゴムなどが挙げられる。
【0034】
また、保液シートは、少なくとも測定時に設けられていればよく、センサユニット10の製造時に設けられていなくてもよい。
【0035】
以上のような構成を有するセンサユニット10を用いた測定では、絶縁膜20の開口部20a内に被検液を供給し、開口部20a内に露出した電極群に被検液が接触した状態で、電極群に所定の電圧を印加することで、センサ電極12の上面121aで被検液の酸化還元反応を生じさせることができる。
【0036】
(2)センサ電極および保護枠
図1および図2を参照して、本実施形態のセンサ電極12およびその周辺構成について説明する。
【0037】
図1および図2に示すように、本実施形態では、例えば、センサ電極12を囲むように、保護枠22が設けられている。
【0038】
[センサ電極]
図2に示すように、本実施形態では、センサ電極12は、例えば、導電性基板122と、電極膜121と、金属膜123と、を有している。
【0039】
導電性基板122は、例えば、導電性を有する半導体基板として構成されている。具体的な半導体基板としては、例えば、単結晶シリコン(Si)基板、多結晶Si基板、炭化シリコン(SiC)基板などが挙げられる。本実施形態の導電性基板122は、例えば、後述するように、電極膜121が形成された後に、チップ状に分断されたものである。
【0040】
なお、導電性基板122の導電型は、特に限定されるものではないが、例えば、電極膜121の導電型と同じであることが好ましい。
【0041】
本実施形態では、例えば、電極膜121が後述のようにp型であるため、導電性基板122は、p型Si基板として構成され、ホウ素(B)などのp型不純物を含むことが好ましい。導電性基板122中のB濃度は、例えば5×1018cm-3以上1.5×1020cm-3以下、好ましくは5×1018cm-3以上1.2×1020cm-3以下である。
【0042】
導電性基板122中のB濃度が上記範囲内であることにより、導電性基板122の比抵抗を低くし、センサ電極12全体としての抵抗を低くすることができる。ここで、酸化還元反応時、センサ電極12自体の抵抗は外部抵抗として働く。センサ電極12の抵抗が高いと、被検物質に由来する電流ピークがなまる(SN比が低下する)可能性がある。これに対し、本実施形態では、導電性基板122中のB濃度が上記範囲内であることで、導電性基板122の抵抗を、例えば、被検物質の酸化還元反応の電子授受を行う後述の電極膜121の抵抗に対して1/10倍以下とすることができる。これにより、被検物質に由来する電流ピークを安定的に検出することができる。
【0043】
なお、導電性基板122の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、150μm以上1mm以下である。導電性基板122の厚さを上記範囲内とすることで、導電性基板122のハンドリングを安定化させることができる。
【0044】
また、導電性基板122の平面形状は、例えば、四角形であり、好ましくは正方形である。導電性基板122の平面積は、例えば、1mm以上25mm以下である。導電性基板122の平面積、すなわち、センサ電極12の平面積を1mm以上とすることで、製造容易性、実装安定性を向上させることができる。例えば、吸着による自動搬送、マウンターの使用が可能となる。一方で、導電性基板122の平面積を25mm以下とすることで、センサユニット10を小型化することができる。
【0045】
電極膜121は、例えば、導電性基板122の主面上に設けられている。電極膜121は、例えば、導電性基板122の主面全体に亘って設けられていることが好ましい。電極膜121は、上述のように、接触した被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を発生可能な上面121aを有している。
【0046】
電極膜121は、例えば、導電性を有する多結晶ダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなっている。導電性を有する多結晶ダイヤモンドは、電位窓が広く、バックグラウンド電流が小さいことから、尿酸等の種々の被検物質の電気化学的検出を高感度で行うことができる。
【0047】
本実施形態では、電極膜121は、例えば、p型の多結晶ダイヤモンドからなっている。電極膜121は、例えば、p型不純物として、Bを含むことが好ましい。電極膜121中のB濃度は、例えば、1×1019cm-3以上1×1022cm-3以下、好ましくは1×1020cm-3以上5×1021cm-3以下である。
【0048】
なお、電極膜121の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、0.5μm以上10μm以下、好ましくは2μm以上4μm以下である。
【0049】
導電性基板122の主面と反対側の裏面には、例えば、金属膜123が設けられていてもよい。金属膜123は、例えば、チタン(Ti)および金(Au)を導電性基板122側からこの順で有する積層構造により構成されている。このような金属膜123を設けることにより、導電性基板122と配線13との間における接触抵抗、すなわち、測定時の外部抵抗を低下させることができる。
【0050】
[接合材]
図2に示すように、本実施形態では、センサ電極12は、例えば、上述のように、配線13上に設けられた導電性の接合材18を介して、配線13上に接合されている。接合材18は、例えば、金属を含んでいる。接合材18は、例えば、導電性接着テープおよび導電性接着ペーストのうち少なくともいずれかを含んでいることが好ましい。ここでは、接合材18は、例えば、導電性接着テープからなっている。導電性接着テープまたは導電性接着ペーストにより、センサ電極12と配線13とを物理的に接着するとともに、電気的に接続することができる。
【0051】
[保護枠]
ここで、図1および図2に示すように、本実施形態では、絶縁性の枠状部材として構成された保護枠22が、支持基板11上に設けられている。保護枠22は、例えば、センサ電極12の上面121aを露出させつつ、センサ電極12を囲んでいる。これにより、センサ電極12に対して被検液を供給した際に、センサ電極12の底部近傍への被検液の浸入を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、保護枠22(の内周面)の少なくとも一部は、例えば、センサ電極12から所定の間隔をあけて離間している。また、保護枠22の少なくとも一部がセンサ電極12から離間していれば、保護枠の他部がセンサ電極12と接触していてもよい。本実施形態では、保護枠22は、例えば、センサ電極12の側面全周から所定の間隔をあけて離間していることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態では、保護枠22は、例えば、センサ電極12から離間した部分に、空隙22sを有している。ここでいう「空隙22s」とは、他の部材が非含有である空間のことをいう。すなわち、保護枠22とセンサ電極12との間の空隙22s内には、何も充填されておらず、空隙22s内に空気層(空気絶縁層)が形成されている。
【0054】
空隙22s内に空気層が形成されていることで、例えば、配線13および接合材18のうち少なくともいずれか一方は、空隙22s内に露出している。また、例えば、センサ電極12の側面(導電性基板122の側面)の少なくとも一部は、空隙22s内に露出している。
【0055】
このように、保護枠22の少なくとも一部をセンサ電極12から離すことで、センサ電極12を保護する保護枠22などの部材の形成または設置に起因したセンサ電極12の汚染を抑制することができる。
【0056】
なお、保護枠22がセンサ電極12から離間した部分の少なくとも一部に、空隙22sが設けられていればよい。保護枠22がセンサ電極12から離間した部分のうち、空隙22s以外の他の部分に、例えば、接合材18または後述の絶縁接合材23などの一部が入り込んでいてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、保護枠22は、例えば、センサ電極12に対して被検液を供給した際に、空隙22s内で生じる被検液の表面張力および空隙22s内に閉じ込められる空気の反発力のうち少なくともいずれかによって、空隙22s内への被検液の浸入を抑制するよう構成されている。空隙22s内に閉じ込められる空気の反発力は、空隙22s内の空気の逃げ道がないことによって生じうる。このような構成により、センサ電極12の底部近傍における配線13および接合材18への被検液の接触を抑制することができる。
【0058】
上述した保護枠22による被検液浸入抑制効果は、例えば、空隙22sの間隔、空隙22sの断面におけるアスペクト比、空隙22sの容積、保護枠22の表面状態などの、様々な要素に依存しうる。
【0059】
本実施形態では、センサ電極12から保護枠22までの間隔は、例えば、50μm以上600μm以下であり、好ましくは100μm以上300μm以下である。これらの間における空隙22sの間隔を50μm以上とすることで、センサ電極12に対して被検液を供給した際に、毛細管現象の発現を抑制し、毛細管現象に起因した空隙22s内への被検液の浸入を抑制することができる。さらに空隙22sの間隔を100μm以上とすることで、毛細管現象の発現を安定的に抑制することができる。一方で、空隙22sの間隔を600μm以下とすることで、センサ電極12に対して被検液を供給した際に、空隙22s内で生じる被検液の表面張力および空隙22s内に閉じ込められる空気の反発力のうち少なくともいずれかを確保することができる。さらに空隙22sの間隔を300μm以下とすることで、上述の被検液の表面張力および空気の反発力のうち少なくともいずれかを安定的に確保することができる。
【0060】
また、本実施形態では、例えば、保護枠22の少なくとも表面は、撥水性を有している。保護枠22は、例えば、全体として、撥水性材料を含んでいることが好ましい。保護枠22を構成する材料としては、対水接触角が例えば60°以上の樹脂材料が好ましく、例えば、PET、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)などが挙げられる。このような構成により、空隙22s内への被検液の浸入を安定的に抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、例えば、空隙22Sの間隔と空隙22Sの高さの組合せにおいて、最適範囲が存在する。当該最適範囲は、被検液の表面張力の影響を受けるため、被検液に依存する。発明者等の検討により、被検液がリン酸系緩衝溶液(PB)、水、またはヒトの実尿である場合では、下記の範囲で効果があることが確かめられている。
【0062】
空隙22Sの間隔に対する空隙22Sの高さで求められるアスペクト比は、例えば、1以上が好ましい。具体的には、例えば、空隙22sの高さが380μmの場合は、空隙22Sの間隔は、0以上380μm以下が好ましく、100μmがより好ましい(アスペクト比3.8)。または、例えば、空隙22sの高さが200μmの場合は、空隙22Sの間隔は、0以上200μm以下が好ましく、80μmがより好ましい(アスペクト比2.5)。
【0063】
なお、実装精度の観点からは、空隙22Sの間隔は、例えば、50μm以上が好ましい。また、空隙22s内に空気を閉じ込める観点からは、保護枠22の内周を構成する少なくとも1辺は、センサ電極12から間隔をあけることが望ましい。
【0064】
また、本実施形態では、保護枠22は、例えば、透光性を有することが好ましい。これにより、被検液供給時に、空隙22sの有無を容易に判別することができる。
【0065】
なお、保護枠22の色は、特に限定されるものではないが、例えば、白色または淡色であることがこのましい。これにより、黒色に近い色を有する導電性基板122を実装する際に、導電性基板122を自動機により画像認識することができる。
【0066】
また、本実施形態では、保護枠22の上面は、例えば、センサ電極12が配置された位置における支持基板11の主面を基準として、センサ電極12の上面121aと同じ高さを有している。また、保護枠22の上面は、例えば、センサ電極12の上面121aと同一面を形成している。このような構成により、センサ電極12の上面121a上に被検液を安定的に保持することができる。
【0067】
また、本実施形態では、図1に示すように、上述した保護枠22の外周面は、例えば、参照電極16および対電極17よりも内側に配置されている。言い換えれば、保護枠22の外周面よりも外側に、参照電極16および対電極17が露出されている。これにより、測定時に電圧を印加する電極群のそれぞれの上面に被検液が接触可能な状態を確保しつつ、保護枠22によりセンサ電極12の底部近傍への被検液の浸水を抑制することができる。
【0068】
[絶縁接合材]
図2に示すように、本実施形態では、保護枠22の少なくとも一部は、例えば、支持基板11上に、接合材18と異なる絶縁性の絶縁接合材23を介して固定されている。絶縁接合材23は、例えば、絶縁性の樹脂を含んでいることが好ましい。具体的な絶縁接合材23としては、例えば、PET接着テープが挙げられる。このような構成により、保護枠22を支持基板11に安定的に固定することができる。
【0069】
(3)電気化学センサユニットの製造方法
次に、本実施形態に係る電気化学センサユニットの製造方法について説明する。
【0070】
本実施形態の電気化学センサユニットの製造方法は、例えば、準備工程S10と、接合材配置工程S20と、保護枠形成工程S30と、センサ電極接合工程S40と、保液シート形成工程S50と、を有している。
【0071】
(S10:準備工程)
まず、例えば、PETからなる支持基板11を準備する。
【0072】
支持基板11を準備したら、支持基板11の主面上に、支持基板11の長手方向に沿って、配線13、14および15を形成する。このとき、例えば、Cuを含む配線13~15を、サブトラクティブ法またはセミアディティブ法等により形成する。なお、配線13~15を、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、蒸着法等により形成してもよい。
【0073】
このとき、配線15の長手方向の一端に、対電極17を形成する。このとき、対電極17を、例えば、配線13~15と同様の材料を用い、サブトラクティブ法またはセミアディティブ法等により配線15と一体に形成する。
【0074】
次に、配線14の長手方向の一端に、参照電極16を形成する。このとき、例えば、Ag/AgClからなるインクを用い、参照電極16を配線14上に形成する。
【0075】
配線13~15、対電極17および参照電極16を形成したら、支持基板11上に、配線13~15を覆うように、例えば、ソルダーレジストからなる絶縁膜20を形成する。このとき、絶縁膜20に開口部20aを形成し、当該開口部20a内に、センサ電極12並びに保護枠22の配置予定領域、参照電極16および対電極17を露出させる。
【0076】
一方で、例えば、以下の手順で、センサ電極12を準備する。
【0077】
例えば、Bを含む単結晶Siからなる導電性基板122を準備する。
【0078】
次に、導電性基板122の主面に、例えば、Bを含む多結晶ダイヤモンドからなる電極膜121を、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法、物理蒸着(Phisical Vapor Deposition:PVD)法等により成長させる(堆積させる)。CVD法としては、タングステンフィラメントを用いた熱フィラメント(ホットフィラメント)CVD法、プラズマCVD法等が例示され、PVD法としては、イオンビーム法やイオン化蒸着法等が例示される。
【0079】
電極膜121の形成後、導電性基板122の裏面に、例えば、TiおよびAuをこの順で成膜することで、金属膜123を形成する。
【0080】
金属膜124の形成後、導電性基板122の裏面にレーザで切り込みを入れ、導電性基板122を破断させる。これにより、チップ状のセンサ電極12が形成される。
【0081】
さらに、保護枠22を準備する。保護枠22を、例えば、樹脂により金型成型したり、型抜きのプレス加工により形成したりする。この際に生じる樹脂の突起、または金型の内側に生じる切れ込みなどは、空隙22aの間隔以内の大きさであれば、問題とならない。
【0082】
(S20:接合材配置工程)
準備工程S10が完了したら、導電性の接合材18を配線13上に配置する。このとき、接合材18として、例えば、導電性接着テープを用いる。
【0083】
(S30:保護枠形成工程)
接合材配置工程S20が完了したら、本実施形態では、保護枠形成工程S30を行う。すなわち、保護枠形成工程S30を、センサ電極接合工程S40よりも前に行う。これにより、保護枠22の形成に起因したセンサ電極12の上面121aの汚染を抑制することができる。
【0084】
このとき、後工程で配置されるセンサ電極12の上面121aを露出させつつ、センサ電極12を囲むことができるように、絶縁性の保護枠22を、支持基板11上に設ける。
【0085】
また、このとき、保護枠22の少なくとも一部を、例えば、支持基板11上に、接合材18と異なる絶縁性の絶縁接合材23を介して固定する。例えば、保護枠22の裏面側に、絶縁接合材23としての両面接着テープを貼り付け、両面接着テープを介して保護枠22を支持基板11上に接着させる。
【0086】
(S40:センサ電極接合工程)
保護枠形成工程S30が完了したら、センサ電極12を、導電性の接合材18を介して配線13上に接合する。
【0087】
このとき、保護枠22の少なくとも一部が、例えば、センサ電極12から所定の間隔をあけて離間するように、センサ電極12を配置する。また、このとき、例えば、保護枠22がセンサ電極12から離間した部分に、空隙22sを形成し、保護枠22を、センサ電極12に対して被検液を供給した際に、空隙22s内で生じる被検液の表面張力および空隙22s内に閉じ込められる空気の反発力のうち少なくともいずれかによって、空隙22s内への被検液の浸入を抑制するよう構成する。
【0088】
(S50:保液シート形成工程)
センサ電極接合工程S40が完了したら、センサ電極12および保護枠22を覆うように、保液シート(不図示)を形成する。
【0089】
以上により、本実施形態のセンサユニット10が製造される。
【0090】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0091】
(a)本実施形態では、保護枠22が、支持基板11に設けられ、センサ電極12の上面121aを露出させつつ、センサ電極12を囲んでいる。当該保護枠22を設けることにより、センサ電極12に対して被検液を供給した際に、センサ電極12の底部近傍への被検液の浸入を抑制することができる。すなわち、配線13および接合材18への被検液の接触を抑制することができる。これにより、センサ電極12の上面121aにおいて、被検液内の被検物質の電気化学反応を発生させる際に、配線13および接合材18において、漏洩電流の発生を抑制することができる。その結果、測定精度(感度、S/N比)の低下を抑制したセンサユニット10を得ることが可能となり、すなわち、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0092】
(b)本実施形態では、保護枠22の少なくとも一部は、センサ電極12から所定の間隔をあけて離間している。これにより、センサ電極12の過剰な汚染を抑制することができる。
【0093】
ここで、比較例として、センサ電極12の上面121a以外の表面を、絶縁性の樹脂で覆う場合について考える。比較例では、上述のように、センサ電極の上面が絶縁性樹脂自体によって汚染されたり、硬化時の熱で揮発した有機物がセンサ電極の上面に付着したりする可能性がある。
【0094】
これに対し、本実施形態では、保護枠22の少なくとも一部をセンサ電極12から離すことで、センサ電極12への保護枠22の過度な接触を抑制しつつ、保護枠22を形成することができる。これにより、上述の比較例と比較して、電極膜121の上面121aを清浄な状態で維持することができ、すなわち、センサ電極12を保護する保護枠22などの部材の形成または設置に起因したセンサ電極12の汚染を抑制することが可能となる。
【0095】
(c)本実施形態では、保護枠22は、センサ電極12から離間した部分に空隙22sを有している。保護枠22は、センサ電極12に対して被検液を供給した際に、空隙22s内で生じる被検液の表面張力および空隙22s内に閉じ込められる空気の反発力のうち少なくともいずれかによって、空隙22s内への被検液の浸入を抑制するよう構成されている。すなわち、保護枠22の少なくとも一部がセンサ電極12から離れているにもかかわらず、被検液の表面張力および空隙22s内の空気の反発力のうち少なくともいずれかによって、空隙22s内への被検液の浸入を抑制することができる。これにより、センサ電極12の底部近傍における配線13および接合材18への被検液の接触を抑制することができる。その結果、配線13および接合材18において、漏洩電流の発生を安定的に抑制することが可能となる。
【0096】
(d)本実施形態では、保護枠22とセンサ電極12との間に空隙22sが設けられていることで、配線13および接合材18のうち少なくともいずれか一方は、空隙22s内に露出している。また、センサ電極12の側面の少なくとも一部は、空隙22s内に露出している。このように、本実施形態では、配線13、接合材18、センサ電極12の側面が空隙22s内に露出していても、これらを保護枠22によって保護することができ、漏洩電流を抑制することができる。
【0097】
(e)本実施形態では、保護枠22の少なくとも表面は、撥水性を有している。これにより、空隙22s内で生じる被検液の表面張力を強くすることができる。その結果、空隙22s内への被検液の浸入を安定的に抑制することが可能となる。
【0098】
(f)本実施形態では、接合材18は、導電性接着テープおよび導電性接着ペーストのうち少なくともいずれかを含んでいる。このような接合材18を用いた場合に、接合材18と被検液とが接触すると、漏洩電流が生じやすくなる。これに対し、上述の保護枠22を設けることで、接合材18に起因した漏洩電流を安定的に抑制することができる。
【0099】
(g)本実施形態では、保護枠22の少なくとも一部は、支持基板11上に、接合材18と異なる絶縁性の絶縁接合材23を介して固定されている。このような絶縁接合材23を用いることで、保護枠22を支持基板11に安定的に固定しつつ、絶縁接合材23を起因とした漏洩電流を抑制することができる。
【0100】
(h)本実施形態では、センサユニット10は、センサ電極12および保護枠22を覆い、被検液を保持する保液シートを有していてもよい。センサ電極12に対する被検液の供給を保液シートを介して行い、所定量の被検液を保液シートに保持させることで、空隙22s内への被検液の浸入を安定的に抑制することができる。
【0101】
また、保液シートを用いることで、センサ電極12および保護枠22の上面全体に亘って均一に被検液を供給することができる。これにより、空隙22s内からの残留空気の逃げ道の発生を抑制することができる。この観点でも、空隙22s内への被検液の浸入を安定的に抑制することができる。
【0102】
(5)本実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例1~10のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0103】
図3A図7Bを参照し、本実施形態の変形例1~10について説明する。図3A図7Bは、それぞれ、本実施形態の変形例1~10に係る電気化学センサユニットの概略断面図である。なお、図6Aおよび6Bにおいて、対電極17は省略している。
【0104】
[変形例1]
図3Aに示すように、変形例1では、保護枠22の少なくとも一部は、例えば、センサ電極12を配線13に接合する接合材18と同じ接合材18を介して支持基板11上に固定されている。接合材18は、保護枠22の外周よりも外側に露出していない。言い換えれば、保護枠22が接合材18を覆い隠している。
【0105】
変形例1によれば、接合材18が、センサ電極12を配線13に接合しつつ、保護枠22を支持基板11に固定している。これにより、これらの接合に係る部材を減らすことができ、部材コストを低減することができる。
【0106】
[変形例2]
図3Bに示すように、変形例2では、保護枠22は、例えば、センサ電極12を配線13に接合する接合材18と、絶縁接合材23との両方を介して、支持基板11上に固定されている。
【0107】
変形例2によれば、センサ電極12を配線13に接合する接合材18により、支持基板11への保護枠22の固定を補助している。これにより、保護枠22を支持基板11に安定的に固定することができる。
【0108】
[変形例3]
図4Aに示すように、変形例3では、保護枠22は、例えば、センサ電極12が配置された位置における支持基板11の主面を基準として、センサ電極12よりも高くなっている。
【0109】
なお、保護枠22の高さは、例えば、センサ電極12の高さに対して+50μm以下であることが好ましい。これにより、センサ電極12の上に空気層が形成されることを抑制することができる。その結果、空気層を介在させることなく、センサ電極12の上面121aを被検液に接触させることができる。
【0110】
変形例3によれば、保護枠22をセンサ電極12よりも高くすることで、センサ電極12上に被検液を集め易くすることができる。また、センサユニット10を傾けた場合であっても、センサ電極12上に被検液を保持し易くすることができる。
【0111】
[変形例4]
図4Bに示すように、変形例4では、保護枠22は、例えば、保護枠22の内周側から外周側に向かうにつれて、徐々に高くなっている。本変形例では、保護枠22は、例えば、保護枠22の内周側から外周側に向かうにつれて、徐々に高くなった傾斜面を有している。
【0112】
変形例4によれば、保護枠22の高さの変化(傾斜)に応じて、センサ電極12上に被検液を流れ込ませ、センサ電極12上に被検液を安定的に集めることができる。また、センサユニット10を傾けた場合であっても、保護枠22の高さの変化に応じて、保護枠22によって被検液の溢れを抑制し、センサ電極12上に被検液を安定的に保持することができる。
【0113】
[変形例5]
図5Aに示すように、変形例5では、保護枠22は、例えば、センサ電極12が配置された位置における支持基板11の主面を基準として、センサ電極12よりも低くなっている。
ている。
【0114】
なお、保護枠22の高さは、例えば、センサ電極12の高さに対して-50μm以上であることが好ましい。これにより、保護枠22の表面張力の弱化を抑制することができる。
【0115】
変形例5によれば、センサ電極12に対して被検液を供給した際に、余剰な量の被検液をセンサ電極12の上面121aから排出することができる。これにより、センサ電極12上の被検液内において、気泡が生じたり、気泡が残存したりすることを抑制することができる。その結果、測定時におけるセンサ電極12の有効面積を広げることが可能となる。
【0116】
[変形例6]
図5Bに示すように、変形例6では、保護枠22は、例えば、保護枠22の内周側から外周側に向かうにつれて、徐々に低くなっている。本変形例では、保護枠22は、例えば、保護枠22の内周側から外周側に向かうにつれて、徐々に低くなった傾斜面を有している。
【0117】
変形例6によれば、保護枠22の高さの変化(傾斜)に応じて、センサ電極12上から被検液を適度に流出させ、余剰な量の被検液をセンサ電極12の上面121aから安定的に排出することができる。これにより、センサ電極12上の被検液内における気泡の発生および残存を安定的に抑制することができる。
【0118】
[変形例7または8]
図6Aまたは図6Bに示すように、変形例7または8では、保護枠22は、例えば、支持基板11と一体として構成されている。保護枠22は、支持基板11とともにモールド成形されていてもよいし、或いは、支持基板11を加工して形成されていてもよい。
【0119】
図6Aに示す変形例7のように、例えば、保護枠22の上面は、保護枠22の外側で配線13が延在する位置での支持基板11の主面よりも高くなっていてもよい。
【0120】
或いは、図6Bに示す変形例8のように、例えば、保護枠22の上面は、保護枠22の外側で配線13が延在する位置での支持基板11の主面と同じ高さに配置されていてもよい。
【0121】
変形例7または8では、配線13は、例えば、保護枠22の上面を通って保護枠22の外側に延在して設けられている。
【0122】
なお、変形例7および8では、準備工程S10において、保護枠22を支持基板11と一体として形成すればよい。
【0123】
変形例7および8によれば、保護枠22を支持基板11と一体として構成することで、保護枠22を支持基板11に強固に固定することができる。また、上述の実施形態のように、別体としての保護枠22を支持基板11に接合する場合よりも、本変形例では、保護枠22を支持基板11に精度よく配置することができる。
【0124】
[変形例9]
図7Aに示すように、変形例9では、センサ電極12から保護枠22までの間隔は、例えば、保護枠22の上側から下側に向かうにつれて、徐々に広がっている。
【0125】
変形例9によれば、センサ電極12および保護枠22をこの順で設置する場合に、これらの設置を容易に行うことができる。例えば、保護枠22の内周面の段階的変化(傾斜)を利用して、センサ電極12を中心として均等に離れた位置に、保護枠22を容易に配置することができる。
【0126】
[変形例10]
図7Bに示すように、変形例10では、例えば、センサ電極12から保護枠22までの間隔は、例えば、保護枠22の上側から下側に向かうにつれて、徐々に狭まっている。
【0127】
変形例10によれば、保護枠22およびセンサ電極12をこの順で設置する場合に、これらの設置を容易に行うことができる。例えば、保護枠22の内周面の段階的変化(傾斜)を利用して、保護枠22の中心に向けて、センサ電極12を容易に配置することができる。
【0128】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。なお、以下でいう「上述の実施形態」とは、実施形態および変形例1~10を含んでいる。
【0129】
上述の実施形態では、センサユニット10が、支持基板11上に、センサ電極12、参照電極16および対電極17を有している場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。センサユニット10は、少なくともセンサ電極12を有していればよい。
【0130】
上述の実施形態では、支持基板11がPETで形成されている場合について説明したが、支持基板11は、主面が絶縁性で構成された半導体基板または金属基板であってもよい。
【0131】
上述の実施形態では、参照電極16がAg/AgCl電極である場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。参照電極16は、例えば、標準水素電極、可逆水素電極、パラジウム・水素電極、飽和カロメル電極、カーボン電極等であってもよい。または、参照電極16は、Pt、Au、Cu、Pd、Ni、Ag等の金属で形成された電極であってもよい。これら金属の場合、参照電極16は、例えば、ディスペンス、スクリーン印刷等により、配線14と一体に形成してもよい。
【0132】
上述の実施形態では、対電極17が配線15と一体に形成されている場合について説明したが、対電極17は、配線15と別体に形成し、導電性ペースト等の導電性接合部材を介して配線15に接続されていてもよい。
【0133】
上述の実施形態では、導電性基板122の裏面に金属膜123が設けられている場合について説明したが、金属膜123は設けられていなくてもよい。
【0134】
上述の実施形態では、導電性基板122の裏面における金属膜123が、接合材18としての導電性接着テープなどを介して、配線13上に接合されている場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。金属膜123が配線13に直接接合していてもよい。この場合、金属膜123を導電性の接合材18として考えればよい。
【0135】
上述の実施形態では、センサ電極12が、導電性を有する多結晶ダイヤモンドまたはDLCからなる電極膜121を導電性基板122上に有する場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。センサ電極12全体が、導電性を有する多結晶ダイヤモンドまたはDLCからなっていてもよい。
【0136】
上述の実施形態では、保護枠22の少なくとも一部が、センサ電極12から所定の間隔をあけて離間している場合について説明したが、センサ電極12の上面121aの汚染を抑制することができるのであれば、保護枠22は、センサ電極12の側面全体に接触していてもよい。
【0137】
上述の実施形態では、保護枠22が撥水性材料を含んでいる場合について説明したが、保護枠22の表面における撥水性は、表面処理を施すことにより生じさせてもよい。
【0138】
上述の実施形態では、保護枠22の少なくとも一部が、支持基板11上に絶縁接合材23などの接合材を介して固定されている場合について説明したが、保護枠22の底面が接着性を有し、保護枠22が、接合材などを介することなく、支持基板11上に直接接着されていてもよい。
【0139】
上述の変形例3~6では、保護枠22の高さがセンサ電極12を挟んで対称である構成を図示したが、保護枠22の高さはセンサ電極12を挟んで非対称であってもよい。
【0140】
上述の変形例4および6では、保護枠22の上面が傾斜面となっている構成を図示したが、保護枠22の上面は、傾斜面ではなく、階段状に変化していてもよい。
【0141】
上述の変形例9および10は、センサ電極12から保護枠22までの間隔がセンサ電極12を挟んで対称である構成を図示したが、当該間隔はセンサ電極12を挟んで非対称であってもよい。
【0142】
上述の変形例9および10では、保護枠22の内周面が傾斜面となっている構成を図示したが、保護枠22の内周面は、傾斜面ではなく、階段状に変化していてもよい。
【0143】
上述の実施形態では、センサユニット10の製造方法において、準備工程S10と、接合材配置工程S20と、保護枠形成工程S30と、センサ電極接合工程S40と、をこの順で実施する場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。センサユニット10の製造方法において、準備工程S10以降の工程の順序は適宜入れ替えてもよい。
【0144】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0145】
(付記1)
支持基板と、
前記支持基板上に設けられた配線と、
前記配線上に設けられた導電性の接合材と、
接触した被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を発生可能な上面を有する自立体として構成され、前記接合材を介して前記配線上に接合されたセンサ電極と、
前記支持基板上に、または前記支持基板と一体として設けられ、前記センサ電極の前記上面を露出させつつ、前記センサ電極を囲む絶縁性の保護枠と、
を備える
電気化学センサユニット。
【0146】
(付記2)
前記保護枠の少なくとも一部は、前記センサ電極から所定の間隔をあけて離間している
付記1に記載の電気化学センサユニット。
【0147】
(付記3)
前記保護枠は、前記センサ電極の側面全周から所定の間隔をあけて離間している
付記2に記載の電気化学センサユニット。
【0148】
(付記4)
前記保護枠は、
前記センサ電極から離間した部分に、空隙を有し、
前記センサ電極に対して被検液を供給した際に、前記空隙内への前記被検液の浸入を抑制するよう構成されている
付記2又は3に記載の電気化学センサユニット。
【0149】
(付記5)
前記センサ電極から前記保護枠までの前記間隔は、50μm以上600μm以下である
付記4に記載の電気化学センサユニット。
【0150】
(付記6)
前記配線および前記接合材のうち少なくともいずれか一方は、前記空隙内に露出している
付記4又は5に記載の電気化学センサユニット。
【0151】
(付記7)
前記センサ電極の側面の少なくとも一部は、前記空隙内に露出している
付記4~6のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0152】
(付記8)
前記保護枠の少なくとも表面は、撥水性を有する
付記1~7のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0153】
(付記9)
前記接合材は、導電性接着テープおよび導電性接着ペーストのうち少なくともいずれかを含む
付記1~8のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0154】
(付記10)
前記保護枠の少なくとも一部は、前記接合材と異なる絶縁性の絶縁接合材を介して前記支持基板上に固定されている
付記1~9のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0155】
(付記11)
前記保護枠の少なくとも一部は、前記センサ電極を前記配線に接合する前記接合材と同じ接合材を介して前記支持基板上に固定され、
前記接合材は、前記保護枠の外周よりも外側に露出していない
付記1~10のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0156】
(付記12)
前記センサ電極は、
前記接合材を介して前記配線上に配置される導電性基板と、
前記導電性基板の主面上に設けられた電極膜と、
を有する
付記1~11のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0157】
(付記13)
前記電極膜は、多結晶ダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボンからなる
付記12に記載の電気化学センサユニット。
【0158】
(付記14)
前記導電性基板は、導電性を有する半導体基板である
付記12又は付記13に記載の電気化学センサユニット。
【0159】
(付記15)
前記センサ電極は、前記導電性基板の前記主面と反対側の裏面に設けられた金属膜をさらに有する
付記12~付記14のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0160】
(付記16)
前記金属膜は、前記接合材を兼ねる
付記15に記載の電気化学センサユニット。
【0161】
(付記17)
前記保護枠は、前記センサ電極が配置された位置における前記支持基板の主面を基準として、前記センサ電極よりも高い
付記1~16のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0162】
(付記18)
前記保護枠は、前記保護枠の内周側から外周側に向かうにつれて、徐々に高くなっている
付記1~16のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0163】
(付記19)
前記保護枠は、前記センサ電極が配置された位置における前記支持基板の主面を基準として、前記センサ電極よりも低い
付記1~16のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0164】
(付記20)
前記保護枠は、前記保護枠の内周側から外周側に向かうにつれて、徐々に低くなっている
付記1~16のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0165】
(付記21)
前記センサ電極から前記保護枠までの間隔は、前記保護枠の上側から下側に向かうにつれて、徐々に広がっている
付記1~20のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0166】
(付記22)
前記センサ電極から前記保護枠までの間隔は、前記保護枠の上側から下側に向かうにつれて、徐々に狭まっている
付記1~20のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0167】
(付記23)
前記保護枠は、前記支持基板と一体として構成されている
付記1~22のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0168】
(付記24)
前記支持基板上に設けられた参照電極と、
前記支持基板上に設けられ、測定時に前記センサ電極との間に所定の電圧が印加される対電極と、
を備え、
前記センサ電極の前記上面、前記参照電極および前記対電極が前記被検液に触れた状態で使用される
付記1~23のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0169】
(付記25)
前記センサ電極および前記保護枠を覆い、前記被検液を保持する保液シートをさらに備える
付記1~24のいずれか1つに記載の電気化学センサユニット。
【0170】
(付記26)
配線が設けられた支持基板を準備する工程と、
接触した被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を発生可能な上面を有する自立体として構成されたセンサ電極を、前記接合材を介して前記配線上に接合する工程と、
前記センサ電極の前記上面を露出させつつ、前記センサ電極を囲む絶縁性の保護枠を、前記支持基板上に設ける工程と、
を備える
電気化学センサユニットの製造方法。
【0171】
(付記27)
前記保護枠を設ける工程は、前記センサ電極を接合する工程の前に行う
付記26に記載の電気化学センサユニットの製造方法。
【0172】
(付記28)
配線が設けられた支持基板を準備する工程と、
接触した被検液に含まれる被検物質に電気化学反応を発生可能な上面を有する自立体として構成されたセンサ電極を、前記接合材を介して前記配線上に接合する工程と、
を備え、
前記支持基板を準備する工程は、
前記センサ電極の前記上面を露出させつつ、前記センサ電極を囲むことができるように、絶縁性の保護枠を、前記支持基板と一体として形成する工程を有する
電気化学センサユニットの製造方法。
【符号の説明】
【0173】
10 電気化学センサユニット
11 支持基板
12 センサ電極
13 配線
14 配線
15 配線
16 参照電極
17 対電極
18 接合材
20 絶縁膜
20a 開口部
22 保護枠
22s 空隙
23 絶縁接合材
121 電極膜
121a 上面
122 導電性基板
123 金属膜
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B