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特開2023-148443表面処理組成物、表面処理方法、および半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148443
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】表面処理組成物、表面処理方法、および半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231005BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20231005BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20231005BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20231005BHJP
   C11D 7/36 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/22
C11D7/26
C11D7/32
C11D7/36
H01L21/304 622Q
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056460
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉野 努
【テーマコード(参考)】
4H003
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
4H003DA09
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB20
4H003EB24
4H003EB30
4H003EB33
4H003FA04
4H003FA28
5F057AA21
5F057BA18
5F057BB15
5F057BB16
5F057BB19
5F057DA03
5F057DA39
5F057EA32
5F057EC30
5F057FA37
5F157AA29
5F157AA30
5F157AA70
5F157AA96
5F157BC03
5F157BC05
5F157BC07
5F157BF49
5F157BF52
5F157BF55
5F157BF56
5F157BF58
5F157BF59
5F157BF72
5F157BF96
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】窒化ケイ素と、酸化ケイ素およびポリシリコンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含む研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去しうる手段を提供する。
【解決手段】窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、アニオン性高分子と、を含み、前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、100,000未満であり、前記窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量の前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量に対する比(窒素含有ノニオン性高分子/窒素非含有ノニオン性高分子)は、0.1以上10以下であり、pHが7.0未満である、表面処理組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、アニオン性高分子と、を含み、
前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、100,000未満であり、
前記窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量の前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量に対する比(窒素含有ノニオン性高分子/窒素非含有ノニオン性高分子)は、0.1以上10以下であり、
pHが7.0未満である、表面処理組成物。
【請求項2】
前記窒素含有ノニオン性高分子は、アミド結合を有する、請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
前記窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は80,000以下である、請求項1または2に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
前記窒素含有ノニオン性高分子は、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルカプロラクタム、N-イソプロピルアクリルアミドおよびオキサゾリン基含有ポリマーからなる群より選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
前記窒素含有ノニオン性高分子の分子量の前記窒素非含有ノニオン性高分子の分子量に対する比(窒素含有ノニオン性高分子/窒素非含有ノニオン性高分子)は、0.1以上8以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
窒素非含有ノニオン性高分子は、ポリビニルアルコールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
2つ以上のリン酸基を有するキレート剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の表面処理組成物。
【請求項8】
砥粒を実質的に含まない、請求項7に記載の表面処理組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の表面処理組成物を用いて、酸化ケイ素、ポリシリコンおよび窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種を含む研磨済研磨対象物を表面処理して、前記研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する、表面処理方法。
【請求項10】
リンス研磨処理方法または洗浄処理方法である、請求項9に記載の表面処理方法。
【請求項11】
研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、
砥粒を含む研磨用組成物を用いて、酸化ケイ素、ポリシリコンおよび窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種を含む研磨前半導体基板を研磨することによって、研磨済半導体基板を得る研磨工程と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の表面処理組成物を用いて、前記研磨済半導体基板の表面における前記砥粒を含む残渣を低減する表面処理工程と、
を含む半導体基板の製造方法。
【請求項12】
前記研磨用組成物のpHが、2以上6以下である、請求項11に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物、表面処理方法、および半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際に、物理的に半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカ、アルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法であり、研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素や、金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
CMP工程後の半導体基板表面には、不純物(異物または残渣とも称する)が多量に残留している。不純物には、CMPで使用された研磨用組成物由来の砥粒、金属、防食剤、界面活性剤等の有機物、研磨対象物であるシリコン含有材料、金属配線やプラグ等を研磨することによって生じたシリコン含有材料や金属、さらには各種パッド等から生じるパッド屑等の有機物などが含まれる。
【0004】
半導体基板表面がこれらの不純物により汚染されると、半導体の電気特性に悪影響を与え、デバイスの信頼性が低下する可能性がある。したがって、CMP工程後に洗浄工程を導入し、半導体基板表面からこれらの不純物を除去することが望ましい。
【0005】
かような洗浄用組成物として、例えば、特許文献1には、特定の条件を満たす水溶性高分子を含むシリコンウェーハ用のリンス用組成物が開示されており、これによって、研磨後のシリコンウェーハの異物を除去し、研磨後のシリコンウェーハの欠陥を低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-167237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、窒化ケイ素と、酸化ケイ素およびポリシリコンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含む研磨済研磨対象物の洗浄において、異物(残渣)を十分に除去できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、窒化ケイ素と、酸化ケイ素およびポリシリコンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含む研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、アニオン性高分子と、を含み、前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、100,000未満であり、前記窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量の前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量に対する比(窒素含有ノニオン性高分子/窒素非含有ノニオン性高分子)は、0.1以上10以下であり、pHが7.0未満である、表面処理組成物により上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、窒化ケイ素と、酸化ケイ素およびポリシリコンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含む研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去しうる手段が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、アニオン性高分子と、を含み、前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、100,000未満であり、前記窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量の前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量に対する比(窒素含有ノニオン性高分子/窒素非含有ノニオン性高分子)は、0.1以上10以下であり、pHが7.0未満である、表面処理組成物である。かような本発明の表面処理組成物によれば、窒化ケイ素と、酸化ケイ素およびポリシリコンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含む研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去することができる。なお、本明細書中、研磨済研磨対象物とは、研磨用組成物で研磨された後の研磨対象物のことを意味する。本発明では、研磨済研磨対象物は、窒化ケイ素と、酸化ケイ素およびポリシリコンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含む。窒化ケイ素を含む研磨済研磨対象物とは、研磨済研磨対象物が窒化ケイ素を含む膜(層)を有することを意味し、酸化ケイ素を含む研磨済研磨対象物とは、研磨済研磨対象物が酸化ケイ素を含む膜(層)を有することを意味し、ポリシリコンを含む研磨済研磨対象物とは、研磨済研磨対象物がポリシリコンを含む膜(層)を有することを意味する。すなわち、本発明に係る研磨済研磨対象物は、窒化ケイ素を含む膜(層)と、酸化ケイ素およびポリシリコンからなる群から選択される少なくとも1種を含む膜(層)と、を有する。以下では、「窒化ケイ素と、酸化ケイ素およびポリシリコンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含む研磨済研磨対象物」を単に「研磨済研磨対象物」と称する場合がある。
【0012】
本発明者らは、上記構成によって、研磨済研磨対象物の表面における残渣が除去されうるメカニズムを以下のように推測している。
【0013】
すなわち、表面処理組成物に含まれる成分が、研磨済研磨対象物の表面に作用することによって、残渣が研磨済研磨対象物の表面から除去される。具体的には、研磨済研磨対象物の表面に、窒素含有ノニオン性高分子、窒素非含有ノニオン性高分子およびアニオン性高分子が吸着することにより、研磨済研磨対象物の表面上に存在していた残渣を脱離させることができる。本発明者は、これらの残渣の除去において、pH7.0未満で、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量が100,000未満であり、窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量の前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量に対する比(窒素含有ノニオン性高分子/窒素非含有ノニオン性高分子)が0.1以上10以下であることにより、研磨済研磨対象物の表面上の残渣がより効率的に除去できることを見出した。これらのメカニズムの詳細は不明だが、上記構成とすることで、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子およびアニオン性高分子が研磨済研磨対象物により効果的に吸着しやすくなり、これにより、研磨済研磨対象物の表面上の残渣がより効率的に脱離しつつ、研磨済研磨対象物表面への残渣(汚染物質)の再付着を防止することができるものと考えられる。
【0014】
窒化ケイ素を含む膜には、アニオン性高分子が吸着しやすく、本発明の表面処理組成物は、窒化ケイ素を含む膜において上記効果を好適に発揮することができる。酸化ケイ素を含む膜および/またはポリシリコンを含む膜には、窒素含有ノニオン性高分子が吸着しやすく、本発明の表面処理組成物は、酸化ケイ素を含む膜および/またはポリシリコンを含む膜において上記効果を好適に発揮することができる。さらに、窒素含有ノニオン性高分子は、窒素非含有ノニオン性高分子と相互作用しやすい。例えば、窒素含有ノニオン性高分子の窒素原子と窒素非含有ノニオン性高分子の酸素原子とが水素結合を形成することにより、酸化ケイ素を含む膜および/またはポリシリコンを含む膜上に親水膜を形成することができ、これにより上記効果がより一層発揮される。また、窒素含有ノニオン性高分子の窒素原子は、酸化ケイ素を含む膜の表面に存在する水酸基と水素結合を形成することにより、酸化ケイ素を含む膜に特に効果的に吸着することができ、これにより上記効果がより一層発揮される。
【0015】
さらに、上記構成とすることで、研磨済研磨対象物表面に吸着した各成分(窒素含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子および窒素非含有ノニオン性高分子)も研磨済研磨対象物表面から容易に脱離することができ、研磨済研磨対象物表面に吸着した各成分自体が残渣となることがほとんどないか、またはない状態とすることができる。以上のことより、本願発明の表面処理組成物は、残渣を十分に除去することができると考えられる。
【0016】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0018】
<残渣>
本明細書において、残渣とは、研磨済研磨対象物の表面に付着した異物を表す。残渣の例は、特に制限されないが、例えば、後述する有機物残渣、研磨用組成物に含まれる砥粒由来のパーティクル残渣、パーティクル残渣および有機物残渣以外の成分からなる残渣、パーティクル残渣および有機物残渣の混合物等のその他の残渣等が挙げられる。
【0019】
総残渣数とは、種類によらず、全ての残渣の総数を表す。総残渣数は、ウェーハ欠陥検査装置(光学検査機Surfscan(登録商標)SP5;ケーエルエー・テンコール株式会社製)を用いて測定することができる。残渣数の測定方法の詳細は、後述の実施例に記載する。
【0020】
本明細書において、有機物残渣とは、研磨済研磨対象物(表面処理対象物)表面に付着した異物のうち、有機低分子化合物や高分子化合物等の有機物や有機塩等からなる成分を表す。
【0021】
研磨済研磨対象物に付着する有機物残渣は、例えば、後述の研磨工程もしくはリンス研磨工程において使用したパッドから発生するパッド屑、または研磨工程において用いられる研磨用組成物もしくはリンス研磨工程において用いられる表面処理組成物に含まれる添加剤に由来する成分等が挙げられる。
【0022】
なお、有機物残渣とその他の異物とは色および形状が大きく異なることから、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、SEM観察によって目視にて行うことができる。また、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、必要に応じて、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分析にて判断してもよい。有機物残渣数は、ウェーハ欠陥検査装置、およびSEMまたはEDX元素分析を用いて測定することができる。
【0023】
<研磨済研磨対象物>
本明細書において、研磨済研磨対象物とは、研磨工程において研磨された後の研磨対象物を意味する。研磨工程としては、特に制限されないが、CMP工程であることが好ましい。
【0024】
本発明に係る研磨済研磨対象物(研磨対象物)は、窒化ケイ素(SiN)と;酸化ケイ素(SiO)およびポリシリコン(多結晶シリコン)からなる群から選択される少なくとも1種と;を含む。本発明の好ましい形態において、研磨済研磨対象物(研磨対象物)は、窒化ケイ素(SiN)と、酸化ケイ素(SiO)と、ポリシリコン(多結晶シリコン)と、を含む。
【0025】
本発明に係る研磨対象物に含まれる材料としては、窒化ケイ素(SiN)と;酸化ケイ素(SiO)およびポリシリコン(多結晶シリコン)からなる群から選択される少なくとも1種と;を含んでいれば特に制限されず、例えば、炭窒化ケイ素(SiCN)等の炭素含有シリコン、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)、不純物がドープされたシリコン材料、金属単体、合金、金属窒化物、SiGe等の化合物半導体等をさらに含んでいてもよい。
【0026】
酸化ケイ素を含む膜の例としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)タイプ酸化ケイ素膜(以下、単に「TEOS膜」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid Thermal Oxidation膜)等が挙げられる。研磨済研磨対象物に含まれる酸化ケイ素を含む膜は、1種単独でも、または2種以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
研磨済研磨対象物は、研磨済半導体基板であることが好ましく、CMP工程後の半導体基板であることがより好ましい。かかる理由は、残渣は半導体デバイスの破壊の原因となりうるため、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板である場合は、半導体基板の洗浄工程としては、残渣をできる限り除去しうるものであることが必要とされるからである。
【0028】
また、本発明の一形態に係る表面処理組成物は、親水性材料と、疎水性材料とを、共に含む研磨済研磨対象物であっても、表面における残渣を低減することができる。ここで、親水性材料とは、水との接触角が50°未満である材料をいい、疎水性材料とは、水との接触角が50°以上である材料をいう。なお、当該水との接触角は、協和界面科学株式会社製の接触角計DropMaster(DMo-501)により測定された値である。
【0029】
親水性材料の具体的な例としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化シリコン、タングステン、窒化チタン、窒化タンタル、ホウ素含有シリコン等が挙げられる。これら親水性材料は1種単独でも、または2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が窒化ケイ素である。本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が窒化ケイ素および酸化ケイ素である。また、疎水性材料の具体的な例としては、例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、非晶質シリコン、炭素含有シリコン等が挙げられる。これら疎水性材料は1種単独でも、または2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の好ましい一実施形態によれば、上記疎水性材料が多結晶シリコンである。
【0030】
すなわち、本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が窒化ケイ素であり、上記疎水性材料が多結晶シリコンである。また、本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が窒化ケイ素および酸化ケイ素であり、上記疎水性材料が多結晶シリコンである。
【0031】
<表面処理組成物>
本発明に係る表面処理組成物は、窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、アニオン性高分子と、を含む。ここで、本明細書において、「高分子」とは、重量平均分子量(Mw)が1000以上の化合物を意味する。また、本明細書において、「ノニオン性高分子」とは、分子内に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基や、アミノ基、第四級アンモニウム基等のカチオン性基を有しない高分子をいう。「アニオン性高分子」とは、分子内に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基を有する高分子をいう。以下、各高分子について説明する。
【0032】
(窒素非含有ノニオン性高分子)
本発明に係る表面処理組成物に含有される窒素非含有ノニオン性高分子は、重量平均分子量が100,000未満である。窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量が100,000以上の場合、最終洗浄後にも研磨済研磨対象物の表面上に窒素非含有ノニオン高分子が残留し、それ自身が欠陥となる。また、後述するが、窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量との比が特定の範囲であることも特徴とする。窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量が上記範囲であることにより、窒素非含有ノニオン性高分子が研磨済研磨対象物へ吸着しやすくなり、残渣が効率的に除去されうる。
【0033】
窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上であり、より好ましくは2,000以上であり、さらに好ましくは3,000以上であり、さらにより好ましくは4,500以上であり、特に好ましくは5,500以上であり、最も好ましくは7,500以上である。また、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは95,000以下であり、より好ましくは90,000以下であり、さらに好ましくは80,000以下であり、さらにより好ましくは50,000以下であり、特に好ましくは30,000以下であり、特により好ましくは25000以下であり、最も好ましくは20,000以下である。すなわち、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上95,000以下であり、より好ましくは2,000以上90,000以下であり、さらに好ましくは3,000以上80,000以下であり、さらにより好ましくは4,500以上50,000以下であり、特に好ましくは5,500以上30,000以下であり、特により好ましくは7500以上25000以下であり、最も好ましくは7,500以上20,000以下である。窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量が上記範囲内であると、表面処理組成物を用いた処理の後に研磨済研磨対象物の表面上の残渣をより効率的に除去することができ、本発明の所期の効果がより発揮される。なお、本明細書中、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子等の高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いたポリエチレングリコール換算の値として測定することができる。
【0034】
窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量が上記範囲内であると、窒素非含有ノニオン性高分子が研磨済研磨対象物(例えば、ポリシリコンを含む膜)に吸着されやすくなり、表面処理組成物を用いた処理の後に研磨済研磨対象物の表面上の残渣をより効率的に除去することができ、本発明の所期の効果がより発揮される。
【0035】
窒素非含有ノニオン性高分子としては、窒素原子を有していないノニオン性高分子であればよいが、窒素原子を有しておらず、かつ酸素原子を有するノニオン性高分子であるのが好ましい。窒素非含有ノニオン性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル類(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなど)、ポリアルキレンオキサイド類(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドなど)、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性の多糖類、アルギン酸多価アルコールエステル、水溶性尿素樹脂、デキストリン誘導体、カゼイン等が挙げられる。また、窒素非含有ノニオン性高分子としては、上記のような主鎖構造を有するもののみならず、ノニオン性ポリマー構造を側鎖に有するグラフト共重合体も好適に用いることができる。窒素非含有ノニオン性高分子としては、同一(単独重合体;ホモポリマー)または相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する高分子であってよく、窒素非含有ノニオン性高分子が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0036】
窒素非含有ノニオン性高分子としては、好ましくはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースであり、より好ましくはポリビニルアルコールである。窒素非含有ノニオン性高分子は、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。
【0037】
表面処理組成物における窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、表面処理組成物の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.07質量%以上3質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以上1質量%以下であり、最も好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下である。表面処理組成物において2種以上の窒素非含有ノニオン性高分子が含まれる場合、窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、これらの合計量とする。
【0038】
(窒素含有ノニオン性高分子)
本発明に係る表面処理組成物に含有される窒素含有ノニオン性高分子は、その重量平均分子量が、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量に対して、0.1以上10以下である。すなわち、窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量と窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量との比(「窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量/窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量」)は、0.1以上10以下である。窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量と窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量との比が上記範囲であることにより、窒素非含有ノニオン性高分子および窒素含有ノニオン性高分子が研磨済研磨対象物へ吸着しやすくなり、残渣が効率的に除去されうる。以下では、窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量と窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量との比を単に「窒素含有/窒素非含有の分子量比」と称する場合がある。窒素含有/窒素非含有の分子量比が0.1未満の場合、窒素非含有ノニオン高分子の分子量が大きいため、それ自身が有機残渣となる可能性がある。一方、窒素含有/窒素非含有の分子量比が10を超える場合、窒素含有ノニオン高分子の分子量が大きいため、それ自身が有機残渣となる可能性がある。
【0039】
窒素含有/窒素非含有の分子量比としては、好ましくは0.1以上8以下であり、より好ましくは0.2以上6.5以下であり、さらに好ましくは0.3以上6以下であり、特に好ましくは0.5以上5.5以下であり、特により好ましくは2以上5.5未満であり、最も好ましくは2.5以上5.3以下である。窒素含有/窒素非含有の分子量比が上記範囲内であると、窒素非含有ノニオン性高分子および窒素含有ノニオン性高分子が研磨済研磨対象物(例えば、酸化ケイ素を含む膜、ポリシリコンを含む膜)に吸着されやすくなり、表面処理組成物を用いた処理の後に研磨済研磨対象物の表面上の残渣をより効率的に除去することができ、本発明の所期の効果がより発揮される。
【0040】
窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上であり、より好ましくは3,000以上であり、さらに好ましくは5,000以上であり、さらにより好ましくは10,000以上であり、特に好ましくは2,5000以上であり、最も好ましくは35,000以上である。また、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下であり、さらに好ましくは300,000以下であり、さらにより好ましくは100,000以下であり、特に好ましくは80,000以下であり、最も好ましくは60,000以下である。すなわち、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上1,000,000以下であり、より好ましくは3,000以上500,000以下であり、さらに好ましくは5,000以上300,000以下であり、さらにより好ましくは10,000以上100,000以下であり、特に好ましくは25,000以上80,000以下であり、最も好ましくは35,000以上60,000以下である。窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量が上記範囲内であると、表面処理組成物を用いた処理の後に研磨済研磨対象物の表面上の残渣をより効率的に除去することができ、本発明の所期の効果がより発揮される。
【0041】
窒素含有ノニオン性高分子としては、窒素原子を有するノニオン性高分子であればよく、例えば、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリ-N-ビニルカプロラクタム、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。窒素含有ノニオン性高分子としては、上記のような主鎖構造を有するもののみならず、ノニオン性ポリマー構造を側鎖に有するグラフト共重合体も好適に用いることができる。窒素含有ノニオン性高分子としては、同一(単独重合体;ホモポリマー)または相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する高分子であってよく、窒素含有ノニオン性高分子が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0042】
窒素含有ノニオン性高分子としては、好ましくはアミド結合を有する高分子であり、より好ましくはポリビニルピロリドン、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリビニルカプロラクタム、N-イソプロピルアクリルアミドおよびオキサゾリン基含有ポリマーからなる群より選択される1種以上である。窒素含有ノニオン性高分子は、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。
【0043】
表面処理組成物における窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、表面処理組成物の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.07質量%以上3質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以上1質量%以下であり、最も好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下である。表面処理組成物において2種以上の窒素含有ノニオン性高分子が含まれる場合、窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、これらの合計量とする。
【0044】
(アニオン性高分子)
本発明に係る表面処理組成物に含有されるアニオン性高分子は、表面処理組成物において、分散剤として作用する。表面処理組成物においてアニオン性高分子を含有することにより、研磨済研磨対象物(例えば、窒化ケイ素を含む研磨済研磨対象物)の表面と砥粒、有機残渣といった欠陥減のゼータ電位を共に負に制御し、静電反発層を形成することにより、結果として研磨済研磨対象物の欠陥数を低減することができる。
【0045】
アニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上であり、より好ましくは3,000以上であり、さらに好ましくは4,000以上であり、さらにより好ましくは5,000以上であり、特に好ましくは6,000以上であり、特により好ましくは7000以上であり、最も好ましくは8,000以上である。また、アニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下であり、さらに好ましくは100,000以下であり、さらにより好ましくは50,000以下であり、特に好ましくは25,000以下であり、特により好ましくは20,000以下であり、最も好ましくは15,000以下である。すなわち、アニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上1,000,000以下であり、より好ましくは3,000以上500,000以下であり、さらに好ましくは4,000以上100,000以下であり、さらにより好ましくは5,000以上50,000以下であり、特に好ましくは6,000以上25,000以下であり、特により好ましくは7,000以上20,000以下であり、最も好ましくは8,000以上15,000以下である。アニオン性高分子の重量平均分子量が上記範囲内であると、表面処理組成物を用いた処理の後に研磨済研磨対象物の表面上の残渣をより効率的に除去することができ、本発明の所期の効果がより発揮される。
【0046】
アニオン性高分子としては、アニオン性基を有していればよく、具体例としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、(メタ)アクリル酸-イソプレンスルホン酸共重合体、(メタ)アクリル酸-[2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸]共重合体、(メタ)アクリル酸-イソプレンスルホン酸-[2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸]共重合体等が挙げられる。これらアニオン性高分子は、中和塩の形態を有していてもよい。
【0047】
また、アニオン性高分子としては、上記のような主鎖構造を有するもののみならず、アニオン性ポリマー構造を側鎖に有するグラフト共重合体も好適に用いることができる。アニオン性高分子としては、同一(単独重合体;ホモポリマー)または相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する高分子であってよく、アニオン性高分子が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0048】
アニオン性高分子は、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。表面処理組成物において2種以上のアニオン性高分子が含まれる場合、アニオン性高分子の含有量は、これらの合計量とする。
【0049】
表面処理組成物におけるアニオン性高分子の含有量は、表面処理組成物の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上1質量%以下であり、さらに好ましくは0.07質量%以上0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.008質量%以上0.3質量%以下であり、最も好ましくは0.009質量%以上0.1質量%以下である。
【0050】
(その他の高分子)
本発明に係る表面処理組成物は、上記窒素非含有ノニオン性高分子、窒素非含有ノニオン性高分子およびアニオン性高分子以外の他の高分子をさらに含んでいてもよい。その他の高分子としては、カチオン性高分子、両性高分子のいずれも使用可能である。また、その他の高分子としては、水溶性高分子であるのが好ましい。ここでいう水溶性高分子とは、同一の繰り返し構成単位を有する水溶性の高分子(単独重合体;ホモポリマー)、または相異なる繰り返し構成単位を有する水溶性の高分子(共重合体;コポリマー)をいい、典型的には重量平均分子量(Mw)が1000以上の化合物である。
【0051】
カチオン性高分子としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、カチオン性のアクリルアミドの重合体等が挙げられる。
【0052】
両性高分子の例としては、例えば、アニオン性基を有するビニル単量体とカチオン性基とを有するビニル単量体との共重合体、カルボキシベタイン基またはスルホベタイン基を有するビニル系の両性高分子等が挙げられ、具体的には、アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体、アクリル酸/ジエチルアミノエチルメタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0053】
(溶媒)
本発明に係る表面処理組成物は、溶媒を含む。溶媒は、各成分を分散または溶解させる機能を有する。溶媒は、水を含むことが好ましく、水のみであることがより好ましい。また、溶媒、各成分の分散または溶解のために、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。この場合、用いられる有機溶媒としては、例えば、水と混和する有機溶媒であるアセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、これらの有機溶媒を水と混合せずに用いて、各成分を分散または溶解した後に、水と混合してもよい。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0054】
水は、研磨済研磨対象物の汚染や他の成分の作用を阻害することを防ぐという観点から、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
【0055】
(キレート剤)
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、キレート剤を含むことが好ましい。表面処理組成物がキレート剤を含有することにより、砥粒残渣をより減少させることができる。また、キレート剤は、表面処理組成物のpHを調整する機能も有する。キレート剤としては、リン酸基(-OP(=O)(OH))を少なくとも1つ有する有機化合物が好ましく、リン酸基(-OP(=O)(OH))を2つ以上有する有機化合物がより好ましい。すなわち、一実施形態において、本発明の表面処理組成物は、2つ以上のリン酸基を有するキレート剤をさらに含む。キレート剤としては、具体的には、オルトリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ペンテト酸、フィチン酸、エチドロン酸、エデト酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、ポリリン酸、メタリン酸、ヘキサメタリン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸またはこれらの塩等が挙げられる。
【0056】
(界面活性剤)
本発明に係る表面処理組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤の種類は、特に制限はなく、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、および両性の界面活性剤のいずれであってもよい。
【0057】
ノニオン性界面活性剤の例としては、上記の窒素非含有ノニオン性高分子および窒素含有ノニオン性高分子以外の化合物が挙げられ、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型等が挙げられる。その他、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、モノエタノールアミン、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、3級アセチレングリコール、アルカノールアミド等も、ノニオン性界面活性剤として用いることができる。なお、上記窒素非含有ノニオン性高分子および窒素含有ノニオン性高分子は、ノニオン性界面活性剤としての機能を有しうるため、別途のノニオン性界面活性剤を添加しなくてもよい。
【0058】
アニオン性界面活性剤の例としては、上記アニオン性高分子以外の化合物が挙げられ、例えば、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル型;ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル型;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸型等が挙げられる。なお、上記アニオン性高分子は、アニオン性界面活性剤としての機能を有しうるため、別途のアニオン性界面活性剤を添加しなくてもよい。
【0059】
カチオン性界面活性剤の例としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩等のアミン類;ポリエトキシアミン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;ラウリルピリジニウムクロライド等のピリジウム塩等が挙げられる。
【0060】
両性界面活性剤の例としては、例えば、レシチン、アルキルアミンオキシド、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のアルキルベタインやスルホベタイン等が挙げられる。
【0061】
界面活性剤は、1種単独でも、または2種以上を組み合わせても用いることができる。また、界面活性剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0062】
表面処理組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量の下限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、表面処理組成物中の界面活性剤の含有量の上限は、表面処理組成物の総質量を100質量%として、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。なお、表面処理組成物が2種以上の界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0063】
<表面処理組成物のpH>
本発明に係る表面処理組成物のpHは、7.0未満である。表面処理組成物のpHが7.0未満であることにより、窒化ケイ素膜の表面上のゼータ電位が正となり、負電荷であるアニオン性高分子が静電引力により窒化ケイ素膜の表面上に吸着し、表面保護の観点から欠陥数が低減する。表面処理組成物のpHが7.0以上の場合、窒化ケイ素膜の表面上のゼータ電位が負となり、アニオン性高分子は窒化ケイ素膜に静電反発してしまい吸着せず、これにより窒化ケイ素膜は表面保護されず、結果として窒化ケイ素膜における欠陥数が増加する。表面処理組成物のpHは、好ましくは2以上7.0未満であり、より好ましくは2以上6以下であり、さらに好ましくは2.3以上5.5以下であり、さらにより好ましくは2.4以上5未満であり、特に好ましくは2.4以上4未満であり、最も好ましくは2.4以上3未満である。
【0064】
(pH調整剤)
表面処理組成物のpHは、上述したキレート剤で調整することができるが、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。
【0065】
pH調整剤は、特に制限されず、表面処理組成物の分野で用いられる公知のpH調整剤を用いることができ、上述したキレート剤以外の公知の酸、塩基、またはこれらの塩等を用いることができる。pH調整剤の例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸、アントラニル酸等のカルボン酸や、スルホン酸、有機ホスホン酸等の有機酸;硝酸、炭酸、塩酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、フッ化水素酸などの無機酸;水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリム(NaCO)等のアルカリ金属の炭酸塩;第2族元素の水酸化物;アンモニア(水酸化アンモニウム);水酸化第四アンモニウム化合物等の有機塩基等が挙げられる。
【0066】
pH調整剤は、合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。また、これらpH調整剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0067】
表面処理組成物中のpH調整剤の含有量は、所望の表面処理組成物のpH値となるような量を適宜選択すればよい。
【0068】
なお、表面処理組成物のpHは、実施例に記載の方法により測定した値を採用する。
【0069】
<他の添加剤>
本発明の一形態に係る表面処理組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、他の添加剤を任意の割合で含有していてもよい。ただし、本発明の一形態に係る表面処理組成物の必須成分以外の成分は、異物(残渣)の原因となりうるためできる限り添加しないことが望ましいため、その添加量はできる限り少ないことが好ましい。他の添加剤としては、例えば、防カビ剤(防腐剤)、溶存ガス、還元剤、酸化剤等が挙げられる。本発明に係る表面処理組成物は、酸性である。また、本発明に係る表面処理組成物は、高分子を含む。このため、これらのうち、本発明に係る表面処理組成物は、防カビ剤(防腐剤)を含むことが好ましい。本発明に係る表面処理組成物が防カビ剤(防腐剤)を含む場合に使用できる、防カビ剤(防腐剤)は、特に制限されず、高分子の種類に応じて適切に選択できる。具体的には、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、およびフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0070】
または、防カビ剤(防腐剤)は、下記化学式1で表される化合物でありうる。
【0071】
【化1】
【0072】
前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される少なくとも2種の原子から構成される置換基である。
【0073】
炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される少なくとも2種の原子から構成される置換基の例としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、炭素数1以上20以下のヒドロキシアルコキシ基、炭素数2以上21以下のアルコキシカルボニル基、炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数7以上31以下のアラルキル基(アリールアルキル基)、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、炭素数6以上30以下のアリールオキシカルボニル基、炭素数8以上32以下のアラルキルオキシカルボニル基、炭素数2以上20以下のアシル基、炭素数2以上20以下のアシルオキシ基等が挙げられる。
【0074】
さらに具体的には、炭素数1以上20以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基等の分岐状のアルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。
【0075】
炭素数1以上20以下のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシ-n-プロピル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、2-ヒドロキシ-n-ブチル基、3-ヒドロキシ-n-ブチル基、4-ヒドロキシ-n-ブチル基、2-ヒドロキシ-n-ペンチル基、3-ヒドロキシ-n-ペンチル基、4-ヒドロキシ-n-ペンチル基、5-ヒドロキシ-n-ペンチル基、2-ヒドロキシ-n-ヘキシル基、3-ヒドロキシ-n-ヘキシル基、4-ヒドロキシ-n-ヘキシル基、5-ヒドロキシ-n-ヘキシル基、6-ヒドロキシ-n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0076】
炭素数1以上20以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等の直鎖状のアルコキシ基;イソプロピルオキシ基、イソブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、t-アミルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジエチルプロピルオキシ基、1,1-ジメチルブチルオキシ基、1-メチル-1-プロピルブチルオキシ基、1,1-ジプロピルブチルオキシ基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピルオキシ基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピルオキシ基等の分岐状のアルコキシ基;シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、ノルボルネニルオキシ基等の環状のアルコキシ基等が挙げられる。
【0077】
炭素数1以上20以下のヒドロキシアルコキシ基の例としては、ヒドロキシメトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-ヒドロキシ-n-プロピルオキシ基、3-ヒドロキシ-n-プロピルオキシ基、2-ヒドロキシ-n-ブチルオキシ基、3-ヒドロキシ-n-ブチルオキシ基、4-ヒドロキシ-n-ブチルオキシ基、2-ヒドロキシ-n-ペンチルオキシ基、3-ヒドロキシ-n-ペンチルオキシ基、4-ヒドロキシ-n-ペンチルオキシ基、5-ヒドロキシ-n-ペンチルオキシ基、2-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基、3-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基、4-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基、5-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基、6-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0078】
炭素数2以上21以下のアルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0079】
炭素数6以上30以下のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0080】
炭素数7以上31以下のアラルキル基(アリールアルキル基)の例としては、ベンジル基、フェネチル基(フェニルエチル基)等が挙げられ、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基(フェノキシ基)、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基、ピレニルオキシ基等が挙げられる。
【0081】
炭素数7以上31以下のアリールオキシカルボニル基の例としては、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラニルオキシカルボニル基、ピレニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0082】
炭素数8以上32以下のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0083】
炭素数1以上20以下のアシル基の例としては、メタノイル基(ホルミル基)、エタノイル基(アセチル基)、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0084】
炭素数1以上20以下のアシルオキシ基の例としては、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、デカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0085】
さらに、上記化学式1で表される防カビ剤は、下記化学式1-a~1-cで表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0086】
【化2】
【0087】
前記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される少なくとも2種の原子から構成される置換基である。
【0088】
炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される少なくとも2種の原子から構成される置換基の例は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0089】
上記化学式1で表される化合物のより具体的な例としては、パラオキシ安息香酸メチル(パラヒドロキシ安息香酸メチル)、パラオキシ安息香酸エチル(パラヒドロキシ安息香酸エチル)、パラオキシ安息香酸ブチル(パラヒドロキシ安息香酸ブチル)、パラオキシ安息香酸ベンジル(パラヒドロキシ安息香酸ベンジル)等のパラオキシ安息香酸エステル(パラヒドロキシ安息香酸エステル);、サリチル酸、サリチル酸メチル、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、イソプロピルフェノール、クレゾール、チモール、フェノキシエタノール、フェニルフェノール(2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール)、2-フェニルエチルアルコール(フェネチルアルコール)等が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、本発明の所期の効果がより効果的に奏されるという観点から、上記化学式1で表される化合物としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、およびフェニルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パラオキシ安息香酸ブチルがより好ましい。
【0091】
または、防カビ剤(防腐剤)は、不飽和脂肪酸でありうる。不飽和脂肪酸の例としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノール酸等のモノ不飽和脂肪酸;ソルビン酸、リノール酸、エイコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸;リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸等のトリ不飽和脂肪酸;ステアリドン酸やアラキドン酸等のテトラ不飽和脂肪酸;ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸等のペンタ不飽和脂肪酸;ドコサヘキサエン酸、ニシン酸等のヘキサ不飽和脂肪酸;等が挙げられる。
【0092】
これらの中でも、本発明の所期の効果がより効果的に奏されるという観点から、不飽和脂肪酸としては、ソルビン酸が好ましい。
【0093】
また、上記以外に、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等の1,2-アルカンジオール;2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(エチルヘキシルグリセリン)等のアルキルグリセリルエーテル;カプリン酸、デヒドロ酢酸等の化合物を、防カビ剤(防腐剤)として用いてもよい。
【0094】
上記防カビ剤(防腐剤)は、単独で使用されてもまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
表面処理組成物が防カビ剤(防腐剤)を含む場合の、防カビ剤(防腐剤)の含有量(濃度)の下限は、特に制限されないが、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましい。また、防カビ剤(防腐剤)の含有量(濃度)の上限は、特に制限されないが、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。すなわち、表面処理組成物中の防カビ剤(防腐剤)の含有量(濃度)は、好ましくは0.0001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.001質量%以上1質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以上0.1質量%以下である。このような範囲であれば、微生物を不活性化または破壊するのに十分な効果が得られる。なお、表面処理組成物が2種以上の防カビ剤(防腐剤)を含む場合には、上記含有量はこれらの合計量を意図する。
【0096】
すなわち、本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子、キレート剤、および水、ならびに防カビ剤、有機溶媒、界面活性剤およびpH調整剤からなる群より選択される少なくとも一から実質的に構成される。本発明の一実施形態では、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子、キレート剤、および水、ならびに防カビ剤および有機溶媒の少なくとも一方から実質的に構成される。本発明の一実施形態では、表面処理組成物は、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子、キレート剤、および水から実質的に構成される。当該形態において、「表面処理組成物が、Xから実質的に構成される」とは、Xの合計含有量が、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意味する。好ましくは、表面処理組成物は、Xから構成される(上記合計含有量=100質量%)。例えば、「表面処理組成物が、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子、キレート剤、および水、ならびに防カビ剤および有機溶媒の少なくとも一方から実質的に構成される」とは、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子、キレート剤、および水、ならびに防カビ剤および有機溶媒の合計含有量が、表面処理組成物の総質量を100質量%として(表面処理組成物に対して)、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意味し、表面処理組成物が、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子、キレート剤、および水、ならびに防カビ剤および有機溶媒の少なくとも一方から構成される(上記合計含有量=100質量%)ことが好ましい。
【0097】
異物除去効果のさらなる向上のため、本発明の表面処理組成物は、砥粒を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「砥粒を実質的に含有しない」とは、表面処理組成物全体に対する砥粒の含有量が0.1質量%未満(好ましくは0.01質量%未満)である場合をいう。すなわち、本発明の表面処理組成物は、一実施形態において、砥粒の含有量が、表面処理組成物に対して、0.1質量%未満である。
【0098】
<表面処理組成物の製造方法>
本発明の表面処理組成物の製造方法は、例えば、窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、アニオン性高分子と、溶媒と、必要に応じて他の成分とを、攪拌混合することにより得ることができる。各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0099】
<表面処理方法>
本発明の他の一形態は、上記表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理することを含む、表面処理方法である。本明細書において、表面処理方法とは、研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する方法をいい、広義の洗浄を行う方法である。
【0100】
本発明の一形態に係る表面処理方法によれば、研磨済研磨対象物の表面に残留する残渣を十分に除去することができる。すなわち、本発明の他の一形態によれば、上記表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物を表面処理する、研磨済研磨対象物の表面における残渣低減方法が提供される。また、本発明の他の一形態によれば、上記表面処理組成物を用いて、酸化ケイ素、ポリシリコンおよび窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種を含む研磨済研磨対象物を表面処理して、研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する、表面処理方法も提供される。
【0101】
本発明の一形態に係る表面処理方法は、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させる方法により行われる。
【0102】
表面処理方法としては、主として、(I)リンス研磨処理による方法、(II)洗浄処理による方法が挙げられる。すなわち、本発明の一形態によれば、上記表面処理は、リンス研磨処理または洗浄処理によって行われることが好ましい。すなわち、上記表面処理方法は、リンス研磨処理方法または洗浄処理方法であるのが好ましい。リンス研磨処理および洗浄処理は、研磨済研磨対象物の表面上の異物(パーティクル、金属汚染、有機物残渣、パッド屑など)を除去し、清浄な表面を得るために実施される。以下、上記(I)および(II)について説明する。
【0103】
(I)リンス研磨処理
本発明に係る表面処理組成物は、リンス研磨処理において好適に用いられる。すなわち、本発明の一形態に係る表面処理組成物は、リンス研磨用組成物として好ましく用いることができる。リンス研磨処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、研磨対象物の表面上の異物の除去を目的として、研磨パッドが取り付けられた研磨定盤(プラテン)上で行われる。このとき、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させることにより、リンス研磨処理が行われる。その結果、研磨済研磨対象物表面の異物は、研磨パッドによる摩擦力(物理的作用)および表面処理組成物による化学的作用によって除去される。異物のなかでも、特にパーティクルや有機物残渣は、物理的な作用により除去されやすい。したがって、リンス研磨処理では、研磨定盤(プラテン)上で研磨パッドとの摩擦を利用することで、パーティクルや有機物残渣を効果的に除去することができる。
【0104】
すなわち、本明細書において、リンス研磨処理、リンス研磨方法およびリンス研磨工程とは、それぞれ、研磨パッドを用いて表面処理対象物の表面における残渣を低減する処理、方法および工程をいう。
【0105】
具体的には、リンス研磨処理は、研磨工程後の研磨済研磨対象物表面を研磨装置の研磨定盤(プラテン)に設置し、研磨パッドと研磨済半導体基板とを接触させてその接触部分に表面処理組成物を供給しながら、研磨済研磨対象物と研磨パッドとを相対摺動させることにより行うことができる。
【0106】
研磨装置としては、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0107】
リンス研磨処理は、片面研磨装置、両面研磨装置のいずれを用いても行うことができる。また、上記研磨装置は、研磨用組成物の吐出ノズルに加え、表面処理組成物の吐出ノズルを備えていることが好ましい。研磨装置のリンス研磨処理時の稼働条件は特に制限されず、当業者であれば適宜設定可能である。
【0108】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、表面処理組成物が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0109】
リンス研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転数、ヘッド(キャリア)回転数は、10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが好ましく、研磨済研磨対象物にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)以下であることが好ましい。研磨パッドに表面処理組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に表面処理組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。リンス研磨時間も特に制限されないが、5秒以上180秒以下であることが好ましい。
【0110】
本発明の一形態に係る表面処理組成物によるリンス研磨処理の後、研磨済研磨対象物(表面処理対象物)は、本発明の一形態に係る表面処理組成物をかけながら引き上げられ、取り出されることが好ましい。
【0111】
(II)洗浄処理
本発明に係る表面処理組成物は、洗浄処理において用いられてもよい。すなわち、本発明の一形態に係る表面処理組成物は、洗浄用組成物として好ましく用いることができる。洗浄処理は、研磨対象物について最終研磨(仕上げ研磨)を行った後、上記リンス研磨処理を行った後、または本発明の表面処理組成物以外のリンス研磨用組成物を用いた他のリンス研磨処理を行った後、研磨済研磨対象物(洗浄対象物)の表面上の異物の除去を目的として行われることが好ましい。なお、洗浄処理と、上記リンス研磨処理とは、これらの処理を行う場所によって分類され、洗浄処理は、洗浄処理は、研磨定盤(プラテン)上ではない場所で行われる表面処理であり、研磨済研磨対象物を研磨定盤(プラテン)上から取り外した後に行われる表面処理であることが好ましい。洗浄処理においても、本発明に係る表面処理組成物を研磨済研磨対象物に直接接触させて、当該対象物の表面上の異物を除去することができる。
【0112】
洗浄処理を行う方法の一例として、(i)研磨済研磨対象物を保持した状態で、洗浄ブラシを研磨済研磨対象物の片面または両面と接触させて、その接触部分に表面処理組成物を供給しながら洗浄対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法、(ii)研磨済研磨対象物を表面処理組成物中に浸漬させ、超音波処理や攪拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。かかる方法において、研磨済研磨対象物表面の異物は、洗浄ブラシによる摩擦力または超音波処理や攪拌によって発生する機械的力、および表面処理組成物による化学的作用によって除去される。
【0113】
上記(i)の方法において、表面処理組成物の研磨済研磨対象物への接触方法としては、特に限定されないが、ノズルから研磨済研磨対象物上に表面処理組成物を流しながら研磨済研磨対象物を高速回転させるスピン式、研磨済研磨対象物に表面処理組成物を噴霧して洗浄するスプレー式などが挙げられる。
【0114】
短時間でより効率的な汚染除去ができる点からは、洗浄処理は、スピン式やスプレー式を採用することが好ましく、スピン式であることがさらに好ましい。
【0115】
このような洗浄処理を行うための装置としては、カセットに収容された複数枚の研磨済研磨対象物を同時に表面処理するバッチ式洗浄装置、1枚の研磨済研磨対象物をホルダーに装着して表面処理する枚葉式洗浄装置などがある。洗浄時間の短縮等の観点からは、枚葉式洗浄装置を用いる方法が好ましい。
【0116】
さらに、洗浄処理を行うための装置として、研磨定盤(プラテン)から研磨済研磨対象物を取り外した後、当該対象物を洗浄ブラシで擦る洗浄用設備を備えている研磨装置が挙げられる。このような研磨装置を用いることにより、研磨済研磨対象物の洗浄処理を、より効率よく行うことができる。
【0117】
かような研磨装置としては、研磨済研磨対象物を保持するホルダー、回転数を変更可能なモーター、洗浄ブラシ等を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。なお、CMP工程の後、リンス研磨工程を行う場合、当該洗浄処理は、リンス研磨工程にて用いた研磨装置と同様の装置を用いて行うことが、より効率的であり好ましい。
【0118】
洗浄ブラシは、特に制限されないが、好ましくは、樹脂製ブラシである。樹脂製ブラシの材質は、特に制限されないが、PVA(ポリビニルアルコール)が好ましい。洗浄ブラシは、PVA製スポンジであることがより好ましい。
【0119】
洗浄条件にも特に制限はなく、表面処理対象物(研磨済研磨対象物)の種類、ならびに除去対象とする残渣の種類および量に応じて、適宜設定することができる。例えば、洗浄ブラシの回転数は10rpm(0.17s-1)以上200rpm(3.33s-1)以下であることが、洗浄対象物の回転数は10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが、それぞれ好ましい。表面処理対象物(研磨済研磨対象物)にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)以下であることが好ましい。洗浄ブラシに表面処理組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、洗浄ブラシおよび洗浄対象物の表面が常に表面処理組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。洗浄時間も特に制限されないが、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いる工程については5秒以上180秒以下であることが好ましい。このような範囲であれば、異物をより効果的に除去することが可能である。
【0120】
洗浄の際の表面処理組成物の温度は、特に制限されず、通常は室温でよいが、性能を損なわない範囲で、40℃以上70℃以下程度に加温してもよい。
【0121】
上記(ii)の方法において、浸漬による洗浄方法の条件については、特に制限されず、公知の手法を用いることができる。
【0122】
上記(I)または(II)の方法による表面処理を行う前に水による洗浄を行ってもよい。
【0123】
(後洗浄処理)
また、表面処理方法としては、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いた前記(I)または(II)の表面処理の後、研磨済研磨対象物をさらに洗浄処理することが好ましい。本明細書では、この洗浄処理を後洗浄処理と称する。後洗浄処理としては、特に制限されないが、例えば、単に表面処理対象物に水を掛け流す方法、単に表面処理対象物を水に浸漬する方法等が挙げられる。また、上記説明した(II)の方法による表面処理と同様に、表面処理対象物を保持した状態で、洗浄ブラシと表面処理対象物の片面または両面とを接触させて、その接触部分に水もしくは水溶液(例えば、NH水溶液)を供給しながらまたは水および水溶液(例えば、NH水溶液)をいずれかの順番で供給(水を供給した後水溶液を供給または水溶液を供給した後水を供給)しながら、表面処理対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法(ブラシ洗浄)、表面処理対象物を水中に浸漬させ、超音波処理や攪拌を行う方法(ディップ式)等が挙げられる。これらの中でも、表面処理対象物を保持した状態で、洗浄ブラシと、表面処理対象物の片面または両面と、を接触させてその接触部分に水もしくは水溶液(例えば、NH水溶液)または水および水溶液(例えば、NH水溶液)をいずれかの順番で供給(水を供給した後水溶液を供給または水溶液を供給した後水を供給)しながら表面処理対象物の表面を洗浄ブラシで擦る方法であることが好ましい。なお、後洗浄処理の装置および条件としては、前述の(II)の表面処理の説明を参照することができる。ここで、後洗浄処理に用いる水としては、特に脱イオン水を用いることが好ましい。
【0124】
本発明の一形態に係る表面処理組成物で表面処理を行うことによって、残渣が極めて除去されやすい状態となる。このため、本発明の一形態の表面処理に係る表面処理組成物で表面処理を行った後、水を用いてさらなる洗浄処理を行うことで、残渣が極めて良好に除去されることとなる。
【0125】
また、表面処理後または後洗浄後の研磨済研磨対象物(表面処理対象物)は、スピンドライヤー等により表面に付着した水滴を払い落として乾燥させることが好ましい。また、エアブロー乾燥により、表面処理対象物の表面を乾燥させてもよい。
【0126】
<半導体基板の製造方法>
本発明の一形態に係る表面処理方法は、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板である場合に、好適に適用される。すなわち、本発明の他の一形態によれば、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、当該研磨済半導体基板を、上記表面処理方法によって研磨済半導体基板の表面における残渣を低減することを含む、半導体基板の製造方法もまた提供される。よって、本発明によれば、研磨済研磨対象物が研磨済半導体基板であり、砥粒を含む研磨用組成物を用いて、酸化ケイ素、ポリシリコンおよび窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種を含む研磨前半導体基板を研磨することによって、研磨済半導体基板を得る研磨工程と、上記表面処理組成物を用いて、研磨済半導体基板の表面における砥粒を含む残渣を低減する表面処理工程と、を含む半導体基板の製造方法が提供される。
【0127】
かかる製造方法が適用される半導体基板の詳細については、上記表面処理組成物によって表面処理される研磨済研磨対象物の説明の通りである。
【0128】
また、半導体基板の製造方法は、研磨済半導体基板の表面を、本発明の一形態に係る表面処理組成物を用いて表面処理する工程(表面処理工程)を含むものであれば、特に制限されない。かかる製造方法として、例えば、研磨済半導体基板を形成するための研磨工程および洗浄工程を有する方法が挙げられる。また、他の一例としては、研磨工程および洗浄工程に加え、研磨工程および洗浄工程の間に、リンス研磨工程を有する方法が挙げられる。以下、これらの各工程について説明する。
【0129】
[研磨工程]
半導体基板の製造方法に含まれうる研磨工程は、半導体基板を研磨して、研磨済半導体基板を形成する工程である。
【0130】
研磨工程は、半導体基板を研磨する工程であれば特に制限されないが、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)工程であることが好ましい。また、研磨工程は、単一の工程からなる研磨工程であっても複数の工程からなる研磨工程であってもよい。複数の工程からなる研磨工程としては、例えば、予備研磨工程(粗研磨工程)の後に仕上げ研磨工程を行う工程や、1次研磨工程の後に1回または2回以上の2次研磨工程を行い、その後に仕上げ研磨工程を行う工程等が挙げられる。本発明に係る表面処理組成物を用いた表面処理工程は、上記仕上げ研磨工程後に行われると好ましい。
【0131】
研磨用組成物としては、半導体基板の特性に応じて、公知の研磨用組成物を適宜使用することができる。研磨用組成物としては、特に制限されないが、例えば、砥粒、溶媒、pH調整剤、および電気伝導度調整剤を含むもの等を好ましく用いることができる。かかる研磨用組成物の具体例としては、酸化ケイ素(例えば、アニオン修飾コロイダルシリカ)、マレイン酸、硫酸アンモニウム、および水を含む研磨用組成物等が挙げられる。また、研磨用組成物のpHが、2以上6以下であるのが好ましい。
【0132】
砥粒としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、例えば、酸化ケイ素、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。また、該砥粒は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。さらに、該砥粒は、表面修飾されていてもよい。砥粒は、1種単独で用いてもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0133】
砥粒の平均一次粒子径の下限は、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。かような範囲であれば、高い研磨速度を維持できるため、粗研磨工程において好適に使用できる。また、砥粒の平均一次粒子径の上限は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。いくつかの態様において、平均一次粒子径は75nm以下でもよく、60nm以下でもよく、50nm以下であってもよい。かような範囲であれば、研磨後の研磨対象物の表面に欠陥が生じるのをより抑えることができる。なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法で測定される砥粒の比表面積に基づいて算出される。
【0134】
砥粒の平均二次粒子径の下限は、15nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることがさらにより好ましく、60nm以上であることが特に好ましい。かような範囲であれば、高い研磨速度を維持することができる。また、砥粒の平均二次粒子径の上限は、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることがさらにより好ましく、80nm以下が特に好ましい。かような範囲であれば、研磨後の研磨対象物の表面に欠陥が生じるのをより抑えることができる。砥粒の平均二次粒子径は動的光散乱法により測定することができる。例えば、大塚電子株式会社製の型式「FPAR-1000」またはその相当品を用いて測定することができる。
【0135】
研磨用組成物がそのまま研磨液として用いられる場合、砥粒の含有量は、研磨用組成物に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。砥粒の含有量の増大によって、研磨速度が向上する。また、研磨用組成物がそのまま研磨液として用いられる場合、スクラッチ防止等の観点から、砥粒の含有量は、通常は10質量%以下が適当であり、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。砥粒の含有量を少なくすることは、経済性の観点からも好ましい。なお、砥粒を2種以上組み合わせて用いる場合は、上記の含有量は2種以上の砥粒の合計含有量を指す。
【0136】
pH調整剤および溶媒は、それぞれ、上記(pH調整剤)および(溶媒)の項にて規定したのと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0137】
電気伝導度調整剤は、研磨用組成物の電気伝導度を適切な範囲へと調整することで、研磨促進の効果を相乗的に高めたり、研磨用組成物の分散安定性を向上させたりするよう作用する。電気伝導度調整剤としては、電気伝導度調整機能を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸塩、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸塩、硫酸アンモニウム等の硫酸塩などの塩化合物が挙げられる。電気伝導度調整剤の添加量(濃度)は、所望の研磨用組成物の電気伝導度となるような量を適宜選択すればよい。
【0138】
研磨装置としては、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。
【0139】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0140】
研磨条件にも特に制限はなく、例えば、研磨定盤の回転数、ヘッド(キャリア)回転数は、10rpm(0.17s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが好ましく、研磨対象物にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)以下であることが好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨用組成物で覆われていることが好ましく、10mL/分以上5000mL/分以下であることが好ましい。研磨時間も特に制限されないが、研磨用組成物を用いる工程については5秒以上180秒以下であることが好ましい。
【0141】
[表面処理工程]
表面処理工程とは、本発明に係る表面処理組成物を用いて研磨済研磨対象物の表面における残渣を低減する工程をいう。半導体基板の製造方法において、リンス研磨工程の後、表面処理工程としての洗浄工程が行われてもよいし、リンス研磨工程のみ、または洗浄工程のみが行われてもよい。
【0142】
(リンス研磨工程)
リンス研磨工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程および洗浄工程の間に設けられてもよい。リンス研磨工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(リンス研磨処理方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
【0143】
リンス研磨工程で用いられるリンス研磨方法の詳細は、上記リンス研磨処理に係る説明に記載の通りである。
【0144】
(洗浄工程)
洗浄工程は、半導体基板の製造方法において、研磨工程の後に設けられてもよいし、リンス研磨工程の後に設けられてもよい。洗浄工程は、本発明の一形態に係る表面処理方法(洗浄方法)によって、研磨済研磨対象物(研磨済半導体基板)の表面における異物を低減する工程である。
【0145】
洗浄工程で用いられる洗浄方法の詳細は、上記洗浄方法に係る説明に記載の通りである。
【実施例0146】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件下で行った。
【0147】
[高分子の準備]
下記の窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子を準備した。
【0148】
「窒素非含有ノニオン性高分子」
・ポリビニルアルコール
(x1)JMR-3HH(日本酢ビ・ポバール株式会社);重量平均分子量5,000
(x2)JMR-10HH(日本酢ビ・ポバール株式会社);重量平均分子量10,000
(x3)デンカポバールK-05(デンカ株式会社);重量平均分子量22,000。
【0149】
「窒素含有ノニオン性高分子」
・ポリビニルピロリドン
(a1)ピッツコールK17L(第一工業製薬株式会社);重量平均分子量9,000
(a2)ピッツコールK30A(第一工業製薬株式会社);重量平均分子量45,000
(a3)ピッツコールK50(第一工業製薬株式会社);重量平均分子量250,000
・ポリジメチルアクリルアミド
(b)ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)(シグマ-アルドリッチジャパン);重量平均分子量10,000
・ポリ-N-ビニルアセトアミド
(c1)PNVA GE191-107(昭和電工株式会社);重量平均分子量50,000
(c2)PNVA GE191-104(昭和電工株式会社);重量平均分子量300,000
(c3)PNVA GE191-103(昭和電工株式会社);重量平均分子量9000,000
・ポリN-イソプロピルアクリルアミド
(d)ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(シグマ-アルドリッチジャパン);重量平均分子量40,000
・オキサゾリン基含有ポリマー
(e)エポクロスWS-700(株式会社日本触媒);重量平均分子量40,000
・ポリN-ビニルカプロラクタム
(f)ルビスコール Plus(BASF);重量平均分子量70,000。
【0150】
「アニオン性高分子」
・アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体(以下、「(アクリル酸/スルホン酸)共重合体」)のナトリウム塩(製品名:アロンA-6012(東亞合成株式会社));重量平均分子量12,000
上記の高分子の重量平均分子量は、下記の方法により測定した。
【0151】
[高分子の重量平均分子量(Mw)の測定]
高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)の値を用いた。重量平均分子量は、下記の装置および条件によって測定した:
GPC装置:株式会社島津製作所製
型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII)
カラム:VP-ODS(株式会社島津製作所製)
移動相 A:MeOH
B:酢酸1%水溶液
流量:1mL/分
検出器:ELSD temp.40℃、Gain 8、NGAS 350kPa
オーブン温度:40℃
注入量:40μL。
【0152】
[表面処理組成物のpHの測定]
表面処理組成物(液温:25℃)のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))によって確認した。
【0153】
[表面処理組成物の調製]
(実施例1)
窒素非含有ノニオン性高分子として、重量平均分子量22,000のポリビニルアルコールと;窒素含有ノニオン性高分子として、重量平均分子量9,000のポリ-N-ビニルアセトアミドと;アニオン性高分子として、重量平均分子量12,000の(アクリル酸/スルホン酸)共重合体と;溶媒として、水(脱イオン水)と;キレート剤として、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(以下、「HEDP」)(製品名:Dequest 2010EL(イタルマッチジャパン株式会社))と;を、25℃で5分間攪拌混合することにより、表面処理組成物A1を調製した。
【0154】
ここで、窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、表面処理組成物A1の全質量に対して0.1質量%であり;窒素含有ノニオン性高分子の含有量は、表面処理組成物A1の全質量に対して0.1質量%であり;アニオン性高分子水溶性高分子の含有量は、表面処理組成物A1の全質量に対して0.01質量%であり;キレート剤の含有量は、表面処理組成物A1のpHが2.5となる量(表面処理組成物A1の全質量に対して0.02質量%)とした。
【0155】
(実施例2~24、比較例1~35)
窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、アニオン性高分子の種類および/または含有量を下記表1A~1Dに記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理組成物A2~A24、表面処理組成物B1~B35を調製した。実施例10および12の表面処理組成物A10およびA12、比較例28~31の表面処理組成物B28~B31においては、表1Aおよび表1Cに記載の量のキレート剤を添加したほか、アンモニアを用いて表1Aおよび表1Cに記載のpHに調整した。なお、比較例10~13では、アニオン性高分子の代わりに、ノニオン性高分子として、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)を用いた。
【0156】
表1A~1Dおよび後述の表2A~2Dにおいて、窒素含有(窒素非含有)ノニオン性高分子を「N含有(N非含有)ノニオン性高分子」と表記し、(アクリル酸/スルホン酸)共重合体を「AA/SA共重合体」と表記し、ポリビニルアルコールを「PVA」と表記した。また、表1A~1Dおよび後述の表2A~2Dにおいて、「N含有/N非含有分子量比」は、「N含有ノニオン性高分子の重量平均分子量/N非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量比」を示す。
【0157】
【表1A】
【0158】
【表1B】
【0159】
【表1C】
【0160】
【表1D】
【0161】
[研磨済研磨対象物の準備]
下記の化学的機械的研磨(CMP)工程によって研磨された後の研磨済研磨対象物を準備した。
【0162】
(CMP工程)
研磨対象物として、(1)表面に厚さ10000ÅのTEOS膜を形成したシリコンウェーハ(TEOS基板)(300mm、ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック製)、(2)多結晶シリコンウェーハ(300mm、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製)、および(3)表面に厚さ2500ÅのSiN膜を形成したシリコンウェーハ(SiN基板)(300mm、ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック社製)を準備した。
【0163】
上記で準備したTEOS基板および多結晶シリコンウェーハについて、研磨用組成物(組成;スルホン酸修飾コロイダルシリカ(平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径70nm)2質量%、マレイン酸 0.0006質量%、硫酸アンモニウム 0.25質量%、溶媒:水、pH:3.0)を使用し、下記の条件にて研磨を行った。
【0164】
なお、スルホン酸修飾コロイダルシリカは、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径70nm、平均会合度2のコロイダルシリカを用いて、“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で作製したものを準備した。
【0165】
<研磨装置および研磨条件>
研磨装置:株式会社荏原製作所製 FREX300E
研磨パッド:富士紡ホールディングス株式会社製 発泡ポリウレタンパッド H800-Type1
コンディショナー(ドレッサー):ナイロンブラシ(3M社製)
研磨圧力:2.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同じ)
研磨定盤回転数:80rpm
ヘッド回転数:80rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:200mL/分
研磨時間:30秒間。
【0166】
(リンス研磨)
上記CMP工程にて研磨対象物表面を研磨した後、研磨済研磨対象物を研磨定盤(プラテン)上から取り外した。続いて、同じ研磨装置内で、研磨済研磨対象物を別の研磨定盤(プラテン)上に取り付け、下記の条件にて、上記実施例1~24および比較例1~35で調製した表面処理組成物A1~A24、B1~B35を用いて、研磨済研磨対象物表面に対してリンス研磨処理を行った。
【0167】
<リンス研磨装置およびリンス研磨条件>
研磨圧力:1.0psi
定盤回転数:60rpm
ヘッド回転数:80rpm
表面処理組成物の供給:掛け流し
表面処理組成物供給量:300mL/分
研磨時間:60秒間。
【0168】
リンス研磨処理後、TEOS基板、SiN基板に関しては0.3%NH水溶液を用いて20秒間、基板表面のブラシ洗浄を行い、その後、脱イオン水による洗浄を40秒間行うことで、リンス研磨済の研磨済研磨対象物を得た。Poly-Si基板に関しては脱イオン水を用いて60秒間、基板表面のブラシ洗浄を行うことで、リンス研磨済の研磨済研磨対象物を得た。
【0169】
[評価]
(残渣数測定)
ケーエルエー・テンコール株式会社製、光学検査機Surfscan(登録商標)SP5を用いて、リンス研磨処理後の研磨済のTEOS基板、Poly-Si基板およびSiN基板のそれぞれにおいて表面上の残渣数を評価した。具体的には、研磨済TEOS基板、Poly-Si基板およびSiN基板の片面の外周端部から幅5mmの部分(外周端部を0mmとしたときに、幅0mmから幅5mmまでの部分)を除外した残りの部分について、TEOS基板およびSiN基は直径50nm、Poly-Si基板は直径70nmを超える残渣の数をカウントした。その後、上記研磨済みTEOS基板、Poly-Si基板およびSiN基板に関して、砥粒残渣数および有機残渣数を、株式会社日立ハイテク製Review SEM RS6000を使用し、SEM観察によって測定した。まず、SEM観察にて、研磨済TEOS基板、Poly-Si基板およびSiN基板の片面の外周端部から幅5mmの部分を除外した残りの部分に存在する残渣を100個サンプリングした。次いで、サンプリングした100個の残渣の中から、目視によるSEM観察にて残渣の種類(砥粒または有機残)を判別し、砥粒残渣(SiO残渣)および有機残渣(パッド屑や高分子など)のそれぞれについて、その個数を確認した。
【0170】
評価結果を下記表2A~2Dに示す。表2A~2Dにおいて、「PVP」はポリビニルピロリドンを表し、「PNVA」はポリ-N-ビニルアセトアミドを表し、「PDMA」はポリジメチルアクリルアミドを表し、「PNVCL」はポリ-N-ビニルカプロラクタムを表し、「PNIPAM」はポリ-N-イソプロピルアクリルアミドを表す。
【0171】
【表2A】
【0172】
【表2B】
【0173】
【表2C】
【0174】
【表2D】
【0175】
上記表2A~2Dから明らかなように、実施例1~24の表面処理組成物A1~A24は、比較例1~35の表面処理組成物B1~B35に比べて、シリコン含有材料を含む研磨済研磨対象物の表面上の残渣を低減できることが分かった。
【0176】
上記は、表面処理組成物製造直後に評価した結果であるが、長期間保存または貯蔵する場合には、防カビ剤(防腐剤)を含むことが好ましい。なお、防カビ剤(防腐剤)は上記結果に影響をほとんど及ぼさないまたは及ぼさないので、防カビ剤(防腐剤)を含む表面処理組成物も上記と同様の結果となると考察される。