(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148450
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】配索構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20231005BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02G3/16
H05K1/02 J
H05K1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056470
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】達川 永吾
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 健作
【テーマコード(参考)】
5E338
5G361
【Fターム(参考)】
5E338CC04
5E338CC06
5E338EE13
5G361BA03
5G361BB01
5G361BC01
(57)【要約】
【課題】低インピーダンス負荷との接続にインピーダンスの高い素材を用いることなく低インピーダンス負荷へのノイズの伝達を抑える。
【解決手段】配索構造1Aは、電源であるバッテリー20から供給される電力を複数の系統に分岐し、分岐した系統毎に接続される負荷へ電力を供給する配索構造であって、分岐した前記系統に接続される負荷へ電力を供給する閉経路のうち、最もインピーダンスが低い低インピーダンス負荷である第1負荷30Aへ電力を供給する閉経路のインピーダンスが、前記低インピーダンス負荷より高いインピーダンスである高インピーダンス負荷である第2負荷30B及び第3負荷30Cへ電力を供給する閉経路のインピーダンスより高い構造である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される電力を複数の系統に分岐し、分岐した系統毎に接続される負荷へ電力を供給する配索構造であって、
分岐した前記系統に接続される負荷へ電力を供給する閉経路のうち、最もインピーダンスが低い低インピーダンス負荷へ電力を供給する閉経路のインピーダンスが、前記低インピーダンス負荷より高いインピーダンスである高インピーダンス負荷へ電力を供給する閉経路のインピーダンスより高い配索構造。
【請求項2】
前記低インピーダンス負荷を含む閉経路において、前記系統から前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する配索材の材料は、前記高インピーダンス負荷を含む閉経路において、前記系統から前記高インピーダンス負荷へ電力を供給する配索材の材料と同種である
請求項1に記載の配索構造。
【請求項3】
前記電源から供給される電力を前記複数の系統に分岐する電気接続箱を備え、
前記低インピーダンス負荷を含む閉経路において、前記電気接続箱の内部で前記系統から前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する配索材の材料は、前記電気接続箱において当該配索材及び前記低インピーダンス負荷へ接続される配索材が接続される端子と材料と同種の材料である
請求項1に記載の配索構造。
【請求項4】
前記電源から供給される電力を前記複数の系統に分岐する電気接続箱を備え、
前記低インピーダンス負荷を含む閉経路において、前記電気接続箱の内部で前記系統から前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する配索材は、前記低インピーダンス負荷のインピーダンスと整合している
請求項1に記載の配索構造。
【請求項5】
前記電源から供給される電力を前記複数の系統に分岐する電気接続箱を備え、
前記電気接続箱は、前記低インピーダンス負荷を含む閉経路に沿って磁性シートを備える
請求項1に記載の配索構造。
【請求項6】
前記電源から供給される電力を前記複数の系統に分岐する電気接続箱を備え、
前記電気接続箱の筐体は、磁性を有する材料で形成されている
請求項1に記載の配索構造。
【請求項7】
前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する閉経路は、比透磁率が1の空間内に位置する場合、当該閉経路の面積をS、当該閉経路の厚さをdとしたときに、S/dの値が50以上200以下である
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の配索構造。
【請求項8】
前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する閉経路は、比透磁率が50以上の空間内に少なくとも一部が位置する場合、当該閉経路の面積をS、当該閉経路の厚さをdとしたときに、S/dの値が25以上200以下である
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された低インピーダンス負荷が電源線からのノイズの影響を受けることを回避する発明として、例えば特許文献1に開示された電気接続箱の配索構造がある。この配索構造は、車両用電源に接続された電源線を複数系統に分岐し、複数系統の各々は、バスバーで負荷に接続される。また、この配索構造においては、系統と負荷を接続するバスバーのうち、最もインピーダンスの低い低インピーダンス負荷に接続するバスバーを、低インピーダンス負荷よりインピーダンスが高い負荷に接続するバスバーよりも単位長さ当たりのインピーダンスが高いバスバーとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、単位長さ当たりのインピーダンスが高いバスバーの素材として強磁性体であるニッケルや鉄が例示されている。バスバーは、銅を錫メッキした端子を介して負荷や系統に接続されるが、端子の素材とバスバーの素材が異なると、異種金属接触腐食が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低インピーダンス負荷との接続にインピーダンスの高い素材を用いることなく低インピーダンス負荷へのノイズの伝達を抑える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る配索構造は、電源から供給される電力を複数の系統に分岐し、分岐した系統毎に接続される負荷へ電力を供給する配索構造であって、分岐した前記系統に接続される負荷へ電力を供給する閉経路のうち、最もインピーダンスが低い低インピーダンス負荷へ電力を供給する閉経路のインピーダンスが、前記低インピーダンス負荷より高いインピーダンスである高インピーダンス負荷へ電力を供給する閉経路のインピーダンスより高い構造である。
【0007】
本発明の一態様に係る配索構造においては、前記低インピーダンス負荷を含む閉経路において、前記系統から前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する配索材の材料は、前記高インピーダンス負荷を含む閉経路において、前記系統から前記高インピーダンス負荷へ電力を供給する配索材の材料と同種である。
【0008】
本発明の一態様に係る配索構造においては、前記電源から供給される電力を前記複数の系統に分岐する電気接続箱を備え、前記低インピーダンス負荷を含む閉経路において、前記電気接続箱の内部で前記系統から前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する配索材の材料は、前記電気接続箱において当該配索材及び前記低インピーダンス負荷へ接続される配索材が接続される端子と材料と同種の材料である。
【0009】
本発明の一態様に係る配索構造においては、前記電源から供給される電力を前記複数の系統に分岐する電気接続箱を備え、前記低インピーダンス負荷を含む閉経路において、前記電気接続箱の内部で前記系統から前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する配索材は、前記低インピーダンス負荷のインピーダンスと整合している。
【0010】
本発明の一態様に係る配索構造においては、前記電源から供給される電力を前記複数の系統に分岐する電気接続箱を備え、前記電気接続箱は、前記低インピーダンス負荷を含む閉経路に沿って磁性シートを備える。
【0011】
本発明の一態様に係る配索構造においては、前記電源から供給される電力を前記複数の系統に分岐する電気接続箱を備え、前記電気接続箱の筐体は、磁性を有する材料で形成されている。
【0012】
本発明の一態様に係る配索構造においては、前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する閉経路は、比透磁率が1の空間内に位置する場合、当該閉経路の面積をS、当該閉経路の厚さをdとしたときに、S/dの値が50以上200以下である。
【0013】
本発明の一態様に係る配索構造においては、前記低インピーダンス負荷へ電力を供給する閉経路は、比透磁率が50以上の空間内に少なくとも一部が位置する場合、当該閉経路の面積をS、当該閉経路の厚さをdとしたときに、S/dの値が25以上200以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低インピーダンス負荷との接続にインピーダンスの高い素材を用いることなく低インピーダンス負荷へのノイズの伝達を抑えることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る配索構造の概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、閉経路のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る電気接続箱における磁性シートの配置位置の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、閉経路のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る配索構造の概略構成を示す図である。配索構造1Aは、自動車に設置された電気接続箱10A、バッテリー20、第1負荷30A、第2負荷30B、及び第3負荷30Cを配索材によって電気的に接続した構造である。
【0018】
第1負荷30Aは、例えば、第2負荷30B及び第3負荷30Cよりインピーダンスが低いECU(Electronic Control Unit)やカーオーディオ、ディスプレイ装置等の機器である。第1負荷30Aは、グランドGNDに接続されており、電線L51を介して電気接続箱10が備える端子T31に接続され、電線L61を介して電気接続箱10Aが備える端子T41に接続されている。第1負荷30Aは、第1負荷30A、第2負荷30B、及び第3負荷30Cのうち最もインピーダンスが低い低インピーダンス負荷の一例である。
【0019】
第2負荷30Bは、例えば、第1負荷30Aよりインピーダンスの高いランプ等の灯火系の機器である。第2負荷30Bは、グランドGNDに接続されており、電線L52を介して電気接続箱10が備える端子T32に接続され、電線L62を介して電気接続箱10Aが備える端子T42に接続されている。第2負荷30Bは、第1負荷30Aよりインピーダンスが高い高インピーダンス負荷の一例である。
【0020】
第3負荷30Cは、例えば、第1負荷30Aよりインピーダンスの高いモータを用いるドアロックや電動ミラー、インバーター等の機器である。第3負荷30Cは、グランドGNDに接続されており、電線L53を介して電気接続箱10が備える端子T33に接続され、電線L63を介して電気接続箱10Aが備える端子T43に接続されている。第3負荷30Cは、第1負荷30Aよりインピーダンスが高い高インピーダンス負荷の一例である。
【0021】
バッテリー20は、車両に設置された二次電池である。バッテリー20は、車両に設置された図示省略したオルタネーターにより充電され、第1負荷30A、第2負荷30B、第3負荷30Cへ電気接続箱10Aを介して電力を供給する。バッテリー20の正極は、電線L1を介して電気接続箱10Aが備える端子T11に接続されている。バッテリー20の負極は、電線L71を介して電気接続箱10Aが備える端子T21に接続され、電線L71及び電線L72を介して電気接続箱10Aが備える端子T22に接続され、電線L71及び電線L73を介して電気接続箱10Aが備える端子T23に接続されている。
【0022】
電気接続箱10Aは、バッテリー20から供給される電力を第1負荷30A、第2負荷30B及び第3負荷30Cへ供給する機器である。電気接続箱10Aは、金属製の筐体101と、筐体101に配置された端子T11、T12、T21~T23、T31~T33、T41~T43と、バスバーL31~L33と、バスバーL41~L43とを備える。また、電気接続箱10Aは、DC/DCコンバーター102と、電力分配回路103とを備える。
【0023】
DC/DCコンバーター102は、バッテリー20からの直流電圧を変換するデバイスである。DC/DCコンバーター102は、端子T11と、グランドGNDに接続された端子T12に接続されている。また、DC/DCコンバーター102は、電力分配回路103に接続されており、電圧変換した電力を電力分配回路103へ供給する。
【0024】
電力分配回路103は、DC/DCコンバーター102から供給された電力を分配し、分配した電力の第1負荷30A、第2負荷30B及び第3負荷30Cへの供給を制御する回路である。
【0025】
バスバーL31~L33及びバスバーL41~L43は、配索材の一例であり、大容量の電流を導電可能な導体である。バスバーL31は、電力分配回路103と端子T31とを接続し、バスバーL32は、電力分配回路103と端子T32とを接続し、バスバーL33は、電力分配回路103と端子T33とを接続する。バスバーL31を介して供給される電力は、端子T31と電線L51を介して第1負荷30Aへ供給され、バスバーL32を介して供給される電力は、端子T32と電線L52を介して第2負荷30Bへ供給され、バスバーL33を介して供給される電力は、端子T33と電線L53を介して第3負荷30Cへ供給される。バスバーL41は、端子T21と端子T41とを接続し、バスバーL42は、端子T22と端子T42とを接続し、バスバーL43は、端子T23と端子T43とを接続する。
【0026】
なお、バスバーL31~L33、バスバーL41~L43の材料は、異種金属接触腐食が発生しないように、接続される端子と同種の材料であるのが好ましい。また、電線L1、電線L51~L53、電線L61~L63及び電線L71~L73に圧着されて電気接続箱10Aの端子に接続される端子は、異種金属接触腐食が発生しないように、接続される電気接続箱10Aの端子と同種の材料であるのが好ましい。また、第1負荷30Aに接続される配索材の材料は、第2負荷30Bに接続される配索材の材料及び第3負荷30Cに接続される配索材の材料と実質的に同一な材料であるのが好ましい。
【0027】
電線L1、電線L2、電線L51~電線L53、電線L61~電線L63及び電線L71~電線L73は、配索材の一例であり、例えば、撚り線の形態の扁平電線、平型電線、丸電線、又はこれらの電線の組み合わせである。電線L71は、バッテリー20の負極に接続されている。電線L72は、端子T22と電線L71に接続され、電線L73は、端子T23と電線L71に接続されている。
【0028】
配索構造1Aにおいては、前述の配索材、前述の端子、バッテリー20、DC/DCコンバーター102、電力分配回路103、第1負荷30A~第3負荷30Cにより3つの閉経路が形成されている。
【0029】
図2は、閉経路の一例である第1閉経路RT1の模式図である。第1閉経路RT1は、バッテリー20の正極から、電線L1、端子T1、DC/DCコンバーター102、電線L2、電力分配回路103、バスバーL31、端子T31、電線L51、第1負荷30A、電線L61、端子41、バスバーL41、端子T21、及び電線L71を介してバッテリー20の負極へ至る経路である。第1閉経路RT1は、
図2においてハッチングで示した第1領域AR1を断面とするコイルとして機能するため、インダクタンス成分を有し、第1閉経路RT1の抵抗成分と合わせてローパスフィルタとして機能する。なお、第1閉経路RT1を構成する配索材のインピーダンスは、第1負荷30Aのインピーダンスと整合しているのが好ましい。
【0030】
図3は、閉経路の一例である第2閉経路RT2の模式図である。第2閉経路RT2は、バッテリー20の正極から、電線L1、端子T1、DC/DCコンバーター102、電線L2、電力分配回路103、バスバーL32、端子T32、電線L52、第2負荷30B、電線L62、端子42、バスバーL42、端子T22、電線L72、及び電線L71を介してバッテリー20の負極へ至る経路である。第2閉経路RT2も、
図3においてハッチングで示した第2領域AR2を断面とするコイルとして機能するため、インダクタンス成分を有し、第2閉経路RT2の抵抗成分と合わせてローパスフィルタとして機能する。なお、第2閉経路RT2を構成する配索材のインピーダンスは、第2負荷30Bのインピーダンスと整合しているのが好ましい。
【0031】
図4は、閉経路の一例である第3閉経路RT3の模式図である。第3閉経路RT3は、バッテリー20の正極から、電線L1、端子T1、DC/DCコンバーター102、電線L2、電力分配回路103、バスバーL33、端子T33、電線L53、第3負荷30C、電線L63、端子43、バスバーL43、端子T23、電線L73及び電線L71を介してバッテリー20の負極へ至る経路である。第3閉経路RT3も、
図4においてハッチングで示した第3領域AR3を断面とするコイルとして機能するため、インダクタンス成分を有し、第3閉経路RT3の抵抗成分と合わせてローパスフィルタとして機能する。なお、第3閉経路RT3を構成する配索材のインピーダンスは、第3負荷30Cのインピーダンスと整合しているのが好ましい。
【0032】
上述した閉経路のインダクタンスは、透磁率、閉経路内の面積、閉経路の厚さとなる配索材の厚さによって定まり、閉経路内の面積を広くすることにより大きくすることができる。配索構造1Aにおいては、配索材である電線及びバスバーの厚さを各閉経路で同じとし、第1領域AR1の面積を第2領域AR2より広く、且つ、第1領域AR1の面積を第3領域AR3より広くした。これにより、第1閉経路RT1により形成されるローパスフィルタのインダクタンスは、第2閉経路RT2により形成されるローパスフィルタのインダクタンスより大きく、且つ、第3閉経路RT3により形成されるローパスフィルタのインダクタンスより大きくなる。
【0033】
第1負荷30Aは低インピーダンス負荷であるが、ローパスフィルタとして作用する第1閉経路RT1のインダクタンスを大きくすることにより、ローパスフィルタとしてのカットオフ周波数が下がるため、高周波のノイズが低インピーダンス負荷である第1負荷30Aへ伝達されるのを抑えることができる。また、第1負荷30Aへ電力を供給するバスバーL31と電線L61のインピーダンスを第1負荷30Aのインピーダンスと整合させているため、負荷と配索材とのインピーダンスの不整合によるサージの発生を抑えることができる。
【0034】
ところで、第1領域AR1の面積が狭いとカットオフ周波数が下がらず、第1負荷30Aへノイズが伝達されることとなる。一方、第1領域AR1の面積を広くすることによりカットオフ周波数が下がるが、車両内で広い面積を得るためのスペースが必要となり、第1閉経路RT1を構成する配索材の配索が困難となる。そこで、本発明の発明者は、第1領域AR1の面積として好ましい面積を検討した。
【0035】
図5は、閉経路内の面積S及び閉経路の厚さdと閉経路のインダクタンスである経路インダクタンスとの関係、及びこの経路インダクタンスとローパスフィルタとして作用する閉経路のカットオフ周波数との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、
図5に示すグラフでは、厚さdを変えずに面積Sを変えて面積S/厚さdを12.5mから225mまで12.5mずつ増加させたときの経路インダクタンスを三角で示し、このインダクタンスのときのローパスフィルタのカットオフ周波数を丸でプロットしている。
【0036】
図5に示すように、面積S/厚さdが50mより小さくしていくとカットオフ周波数が高くなり、第1負荷30Aへノイズが伝達する虞がある。また、カットオフ周波数を低くするには面積Sを大きくする必要があるが、面積を大きくして面積S/厚さdが200mを超えると、第1閉経路RT1を形成する電線の長さも長くなるため、閉経路を形成する電線の車両への配索が困難となる。よって、本実施形態においては、面積S/厚さdを、50m以上200m以下とするのが好ましい。
【0037】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、電気接続箱の構成が第1実施形態と異なる。他の構成については、第1実施形態と同じであるため、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、以下の説明においては、第1実施形態との相違点について説明する。
【0038】
第2実施形態に係る電気接続箱10Bは、磁性を有するシートである磁性シート104を備えている点で電気接続箱10Aと相違する。
図6は、電気接続箱10Bにおける磁性シート104の配置位置の一例を示す模式図である。なお、
図6においては、図面が煩雑になるのを防ぐため、バッテリー20、第1負荷30A、第2負荷30B、及び第3負荷30Cの図示を省略している。
図6に示すように、第1閉経路RT1が筐体101の上面と下面に沿っている場合、磁性シート104は、筐体101内部の上面と下面に配置される。なお、磁性シート104の透磁率は、50以上であるのが好ましい。
【0039】
筐体101において第1閉経路RT1に沿って磁性シート104を配置することにより、磁性シート104を配置しない場合と比較して第1閉経路RT1のインダクタンス成分が増加する。第1閉経路RT1のインダクタンス成分が増加すると、第1閉経路RT1のローパスフィルタとしてのカットオフ周波数が下がるため、磁性シート104を筐体101に配置しない場合より第1領域AR1の面積を狭くすることができる。
【0040】
図7は、筐体101に磁性シート104を配置したときの閉経路内の面積S及び閉経路の厚さdと経路インダクタンスとの関係、及びこの経路インダクタンスとローパスフィルタとして作用する閉経路のカットオフ周波数との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、
図7に示すグラフでは、厚さdを変えずに面積Sを変えて面積S/厚さdを12.5mから225mまで12.5mずつ増加させたときの経路インダクタンスを三角で示し、このインダクタンスのときのローパスフィルタのカットオフ周波数を丸でプロットしている。また、このシミュレーションにおいては、磁性シート104の比透磁率を50としている。
【0041】
図7に示すグラフによれば、面積S/厚さdが200のときにカットオフ周波数が63Hzとなり、電源電圧の変動によるノイズが第1負荷30Aへ伝達されるのを抑えることができる。
【0042】
なお、磁性シート104は、
図6に示す位置に加えて筐体101の手前側と奥側の側面にも配置してもよい。また、第1閉経路RT1、第2閉経路RT2及び第3閉経路RT3が
図6に示す筐体101の手前側と奥側の側面に沿って位置している場合、磁性シート104を、
図6に示す筐体101の手前側の側面と奥側の側面にも配置するようにしてもよい。また、第2実施形態においては、磁性シート104を配置する構成に替えて、筐体101を磁性材料で形成して磁化する構成としてもよい。
【0043】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0044】
本発明においては、電気接続箱10Aに接続される負荷は、第1負荷30A、第2負荷30B及び第3負荷30Cに限定されるものではなく、さらに他の負荷が接続される構成であってもよい。さらに他の負荷が接続される場合、最もインピーダンスが低い負荷を含む閉経路の面積を最も大きくする。
【0045】
上述した実施形態では、配索構造1Aは自動車に適用されているが、配索構造が適用されるのは自動車に限定されるものではなく、電力を分岐して低インピーダンス負荷と高インピーダンス負荷へ供給する電気機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1A 配索構造
10A、10B 電気接続箱
20 バッテリー
30A 第1負荷
30B 第2負荷
30C 第3負荷
101 筐体
102 DC/DCコンバーター
103 電力分配回路
104 磁性シート
AR1 第1領域
AR2 第2領域
AR3 第3領域
L1、L2、L51~L53、L61~L63、L71~L73 電線
L31~L33、L41~L43 バスバー
RT1 第1閉経路
RT2 第2閉経路
RT3 第3閉経路
T11、T12、T31~T33、T41~T43 端子