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特開2023-148461研磨用組成物、研磨方法、および半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148461
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】研磨用組成物、研磨方法、および半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20231005BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231005BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231005BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056492
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉野 努
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED23
3C158ED26
5F057AA03
5F057AA28
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA26
5F057EA27
5F057EA28
5F057EA32
(57)【要約】
【課題】研磨対象物を緩やかな速度で研磨しつつも、研磨対象物表面の残渣を十分に除去しうる手段を提供する。
【解決手段】
アニオン変性コロイダルシリカと、分散媒と、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子と、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールと、前記重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、を含む研磨用組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン変性コロイダルシリカと、
分散媒と、
スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子と、
重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールと、
前記重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子と、
窒素含有ノニオン性高分子と、を含む研磨用組成物。
【請求項2】
前記窒素非含有ノニオン性高分子は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリグリセリンからなる群から選択される、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記窒素含有ノニオン性高分子は、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ-N-ビニルカプロラクタム、及びオキサゾリン基含有ポリマーからなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記窒素非含有ノニオン性高分子はポリビニルアルコールであり、前記窒素含有ノニオン性高分子はポリビニルピロリドンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、100,000以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
pHが2.0以上5.0未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
防カビ剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項9】
半導体基板を、請求項8に記載の研磨方法により研磨することを有する、半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、研磨方法、および半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration)製造プロセスの微細化がもたらす高集積化によって、コンピューターをはじめとした電子機器は、小型化、多機能化、高速化等の高性能化を果たしてきた。このようなLSIの高集積化に伴う新たな微細加工技術において、化学機械研磨(CMP)法が使用される。
【0003】
半導体デバイスにおける金属プラグや配線の形成は一般に、凹部が形成された酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、ポリシリコン膜の膜等の上に金属からなる導体層を形成した後、導体層の一部を上記膜が露出するまで研磨によって取り除くことにより行われる。この研磨の工程は、取り除くべき対象物の大部分を取り除くための研磨を行うメイン(バルク)研磨工程と、対象物を仕上げ研磨する仕上げ(バフ)研磨工程とに大別される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-273502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、上記膜の薄化が進んでいることもあり、仕上げ研磨工程において、研磨速度を落とし、上記膜を緩やかに研磨することにより研磨対象物の表面状態を向上させる手段に対するニーズが高まっている。また、仕上げ研磨工程では、研磨対象物の表面の残渣を十分に除去することも求められている。
【0006】
そこで、本発明は、研磨対象物を緩やかな速度で研磨しつつも、当該研磨対象物の表面の残渣を十分に除去しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、アニオン変性コロイダルシリカと、分散媒と、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子と、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールと、前記重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、を含む研磨用組成物により上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、研磨対象物を緩やかな速度で研磨しつつも、当該研磨対象物の表面の残渣を十分に除去しうる手段が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、アニオン変性コロイダルシリカと、分散媒と、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子と、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールと、前記重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、を含む研磨用組成物である。かような本発明の研磨用組成物によれば、研磨対象物の表面を緩やかに研磨しつつも、当該表面に残留する残渣を十分に除去しうる手段が提供される。
【0010】
本発明者らは、本発明に係る研磨用組成物が、研磨対象物に対する研磨速度を緩やかにし、さらに研磨対象物表面の残渣を除去するメカニズムを以下のように推測している。
【0011】
すなわち、本発明の研磨用組成物に含まれる各種の高分子(アニオン性水溶性高分子、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子、及び窒素含有ノニオン性高分子)が、研磨対象物の表面に作用することによって、研磨対象物の表面を研磨する速度が緩やかになり、残渣も研磨対象物の表面から除去される。これらのメカニズムの詳細は不明だが、本発明の構成とすることで、各種の高分子が研磨対象物により効果的に吸着し、これにより、研磨対象物の表面が砥粒(アニオン変性コロイダルシリカ)から適度に保護され、研磨速度が緩やかになると考えられる。また、各種の高分子が研磨対象物により効果的に吸着することにより、研磨対象物の表面上の残渣が効率的に脱離しつつ、さらに当該表面への残渣(汚染物質)の再付着を防止することもできるものと考えられる。さらに、本発明の構成とすることで、研磨対象物表面に吸着した各種の高分子も研磨対象物表面から容易に脱離することができ、研磨対象物表面に吸着した各種の高分子が残渣となることがほとんどないか、またはない状態とすることができる。以上のことより、本願発明の研磨用組成物は、砥粒(アニオン変性コロイダルシリカ)による研磨対象物の研磨の速度を緩やかにすることができ、さらに当該表面の残渣を十分に除去することができると考えられる。
【0012】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、本発明は上記メカニズムに何ら限定されるものではない。
【0013】
本発明に係る研磨用組成物は、典型的には研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。本発明に係る研磨用組成物は、例えば、希釈(典型的には、水により希釈)して研磨液として使用されるものであってもよく、そのまま研磨液として使用されるものであってもよい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨に用いられる濃縮液(ワーキングスラリーの原液)との双方が包含される。上記濃縮液の濃縮倍率は、例えば、体積基準で2倍~100倍程度とすることができ、通常は5倍~50倍程度が適当である。
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0015】
<残渣>
本明細書において、残渣とは、研磨対象物の表面に付着した異物を表す。残渣の例は、特に制限されないが、例えば、後述する有機物残渣、研磨用組成物に含まれる砥粒由来のパーティクル残渣、パーティクル残渣および有機物残渣以外の成分からなる残渣、パーティクル残渣および有機物残渣の混合物等の、その他の残渣等が挙げられる。
【0016】
総残渣数とは、種類によらず、全ての残渣の総数を表す。総残渣数は、ウェーハ欠陥検査装置(光学検査機Surfscan(登録商標)SP5;ケーエルエー・テンコール株式会社製)を用いて測定することができる。残渣数の測定方法の詳細は、後述の実施例に記載する。
【0017】
本明細書において、有機物残渣とは、研磨対象物表面に付着した異物のうち、有機低分子化合物や高分子化合物等の有機物や有機塩等からなる成分を表す。
【0018】
研磨対象物に付着する有機物残渣は、例えば、研磨工程において使用したパットから発生するパッド屑、または研磨工程において用いられる研磨用組成物に含まれる添加剤に由来する成分等が挙げられる。
【0019】
なお、有機物残渣とその他の異物とは色および形状が大きく異なることから、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、SEM観察によって目視にて行うことができる。また、異物が有機物残渣であるか否かの判断は、必要に応じて、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)による元素分析にて判断してもよい。有機物残渣数は、ウェーハ欠陥検査装置、およびSEMまたはEDX元素分析を用いて測定することができる。
【0020】
<研磨対象物>
本明細書において、研磨対象物とは、本発明に係る研磨用組成物を用いた研磨の対象となるものを意味する。当該研磨対象物の具体的な例としては、特に制限はないが、半導体基板などの表面上に形成された膜が挙げられる。
【0021】
本発明に係る研磨対象物に含まれる材料としては特に制限されず、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素(SiN)、炭窒化ケイ素(SiCN)等の炭素含有シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)、不純物がドープされたシリコン材料、金属単体、合金、金属窒化物、SiGe等の化合物半導体等が挙げられる。これらのうち、窒化ケイ素、酸化ケイ素、およびポリシリコンの少なくとも一が含まれることが好ましい。
【0022】
酸化ケイ素を含む膜の例としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)タイプ酸化ケイ素膜(以下、単に「TEOS膜」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid Thermal Oxidation膜)等が挙げられる。研磨対象物に含まれる酸化ケイ素を含む膜は、1種単独でも、または2種以上の組み合わせであってもよい。
【0023】
また、本発明の一形態に係る研磨用組成物は、親水性材料と、疎水性材料とを、共に含む研磨対象物であっても、研磨対象物の表面の研磨速度を緩やかにし、表面における残渣も低減することができる。ここで、親水性材料とは、水との接触角が50°未満である材料をいい、疎水性材料とは、水との接触角が50°以上である材料をいう。なお、当該水との接触角は、協和界面科学株式会社製の接触角計DropMaster(DMo-501)により測定された値である。
【0024】
親水性材料の具体的な例としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化シリコン、タングステン、窒化チタン、窒化タンタル、ホウ素含有シリコン等が挙げられる。これら親水性材料は1種単独でも、または2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素である。また、疎水性材料の具体的な例としては、例えば、多結晶シリコン、単結晶シリコン、非晶質シリコン、炭素含有シリコン等が挙げられる。これら疎水性材料は1種単独でも、または2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明の好ましい一実施形態によれば、上記疎水性材料が多結晶シリコンである。
【0025】
すなわち、本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が酸化ケイ素であり、上記疎水性材料が多結晶シリコンである。また、本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が窒化ケイ素であり、上記疎水性材料が多結晶シリコンである。さらに、本発明の好ましい一実施形態によれば、上記親水性材料が酸化ケイ素および窒化ケイ素であり、疎水性材料が多結晶シリコンである。
【0026】
<研磨用組成物>
本発明に係る研磨用組成物は、アニオン変性コロイダルシリカと、分散媒と、アニオン性水溶性高分子と、ポリプロピレングリコールと、窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、を含む。また、本明細書において、「ノニオン性高分子」とは、分子内に、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基や、アミノ基、第四級アンモニウム基等のカチオン性基を有しない高分子をいう。「アニオン性高分子」とは、分子内に、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基を有する高分子をいう。以下、各高分子について説明する。
【0027】
(アニオン変性コロイダルシリカ)
本発明に係る研磨用組成物は、砥粒としてアニオン変性コロイダルシリカを含む。アニオン変性コロイダルシリカは、表面がアニオン性基で修飾されたコロイダルシリカであり、研磨用組成物において、研磨対象物を機械的に研磨する作用を有する。
【0028】
アニオン変性コロイダルシリカとしては、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルミン酸基等のアニオン性基が表面に固定化されたコロイダルシリカが好ましく挙げられる。このようなアニオン性基を有するコロイダルシリカの製造方法としては、特に制限されず、例えば、末端にアニオン性基を有するシランカップリング剤とコロイダルシリカとを反応させる方法が挙げられる。
【0029】
具体例として、スルホン酸基をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through of thiol groups”,Chem.Commun.246-247(2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸基が表面に固定化されたコロイダルシリカ(スルホン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0030】
カルボキシ基をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”,Chemistry Letters,3,228-229(2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボキシ基が表面に固定化されたコロイダルシリカ(カルボン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0031】
本発明の一実施形態において、アニオン変性コロイダルシリカの平均一次粒子径は、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、25nm以上であることがよりさらに好ましく、30nm以上であることがよりさらに好ましい。本発明の一実施形態において、アニオン変性コロイダルシリカの平均一次粒子径は、60nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましい。アニオン変性コロイダルシリカが上記の平均一次粒子径を有することによってスクラッチを低減し、欠陥数(残渣数)を低下させ、研磨速度を向上させる効果がある。本発明における平均一次粒子径は、実施例に記載の方法によって測定される値を採用する。
【0032】
本発明の一実施形態において、アニオン変性コロイダルシリカの平均二次粒子径は、40nm以上であることが好ましく、45nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることがさらに好ましく、55nm以上であることがよりさらに好ましく、60nm以上であることがよりさらに好ましく、65nm以上であることがよりさらに好ましい。本発明の一実施形態において、アニオン変性コロイダルシリカの平均二次粒子径は、100nm未満であることが好ましく、90nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらに好ましく、75nm以下であることがよりさらに好ましい。アニオン変性コロイダルシリカが上記の平均二次粒子径を有することによって研磨速度を向上できる効果がある。本発明における平均二次粒子径は、実施例に記載の方法によって測定される値を採用する。
【0033】
本発明の一実施形態において、研磨用組成物中のアニオン変性コロイダルシリカにおける、レーザー回折散乱法により求められる粒度分布において、微粒子側から積算粒子質量が全粒子質量の90%に達するときの粒子の直径D90と、10%に達するときの粒子の直径D10との比(本明細書中、単に「D90/D10」とも称する)の下限は、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、1.6以上であることがよりさらに好ましい。かかる下限であることによって研磨速度を向上できる効果がある。本発明の一実施形態において、アニオン変性コロイダルシリカのD90/D10の上限は、4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましく、2.0以下であることがよりさらに好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態において、アニオン変性コロイダルシリカのアスペクト比の下限は、1.05以上であることが好ましく、1.10以上であることがより好ましく、1.15以上であることがさらに好ましい。かかる実施形態によって、研磨速度向上の技術的効果がある。本発明の一実施形態において、アニオン変性コロイダルシリカのアスペクト比の上限は、5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。かかる実施形態によって、分散安定性を向上させて欠陥数(残渣数)を低減させる技術的効果がある。なお、アニオン変性コロイダルシリカのアスペクト比としては、FE-SEMによって測定された砥粒粒子像をランダムで300個抜き取り、アスペクト比(長径/短径)を測定した値の平均値を採用することができる。
【0035】
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物におけるアニオン変性コロイダルシリカの含有量は、特に制限されない。そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合、研磨後の表面粗さの低減の観点から、研磨用組成物中のアニオン変性コロイダルシリカの含有量の下限は、研磨用組成物の総質量に対して、0.001質量%超であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましく、0.05質量%以上であることがよりさらに好ましく、0.1質量%以上であることがよりさらに好ましく、0.3質量%以上であることがよりさらに好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましく、0.8質量%以上であることが最も好ましい。また、そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物中のアニオン変性コロイダルシリカの含有量の上限は、研磨速度の低減やスクラッチ低下、欠陥数(残渣数)低減の観点から、10質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましく、3.0質量%以下であることがよりさらに好ましく、2.0質量%以下であることがよりさらに好ましく、1.5質量%であることが特に好ましく、1.3質量%以下であることが最も好ましい。なお、本明細書中、ある物質の含有量等に関する記載は、その物質が2種以上含まれる場合は、その合計量を意味するものとする。すなわち、研磨用組成物中のアニオン変性コロイダルシリカの含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、0.001質量%超10質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以上4.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以上3.0質量%以下であることがよりさらに好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがよりさらに好ましく、0.3質量%以上2.0質量%以下であることがよりさらに好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることが特に好ましく、0.8質量%以上1.3質量%以下であることが最も好ましい。
【0036】
また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液、ワーキングスラリーの原液)の場合、アニオン変性コロイダルシリカの含有量の下限は、研磨後の表面粗さの低減の観点、また濃縮液とすることの利点を活かす観点等から、研磨用組成物の全質量に対して、1質量%超であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物中のアニオン変性コロイダルシリカの含有量の上限は、保存安定性や濾過性等の観点から、通常は、30質量%以下であることが適当であり、25質量%以下であることがより好ましい。なお、本明細書中、ある物質の含有量等に関する記載は、その物質が2種以上含まれる場合は、その合計量を意味するものとする。
【0037】
本発明に係る研磨用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、アニオン変性コロイダルシリカ以外の他の砥粒をさらに含んでもよい。かような他の砥粒は、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子のいずれであってもよい。無機粒子の具体例としては、例えば、未変性のシリカ、カチオン変性シリカ、アルミナ、セリア、チタニア等の金属酸化物からなる粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子が挙げられる。当該他の砥粒は、1種単独でもまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。また、当該他の砥粒は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0038】
ただし、当該他の砥粒の含有量は、砥粒の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。最も好ましくは、他の砥粒の含有量が0質量%であること、すなわち砥粒がアニオン変性コロイダルシリカのみからなる形態である。
【0039】
(アニオン性水溶性高分子)
本発明に係る研磨用組成物は、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子を含む。当該アニオン性水溶性高分子は、本発明に係る研磨用組成物において、分散剤として作用する。また、当該アニオン性高分子は研磨対象物の表面(特に、窒化ケイ素を含む研磨対象物)に吸着し、砥粒(アニオン変性コロイダルシリカ)による研磨から当該表面を適度に保護するため、研磨速度を緩やかにすることができる。さらに、本発明に係る研磨用組成物が当該アニオン性高分子を含有することにより、研磨対象物(特に、窒化ケイ素を含む研磨対象物)の表面に吸着した窒素非含有ノニオン性高分子や窒素含有ノニオン性高分子が、研磨用組成物中に再度溶解しやすくなることから、これらの高分子が研磨対象物の表面から脱離しやすくなり、結果として研磨対象物の表面の残渣を低減することができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、共重合体を構成するスルホン酸基を有する単量体の例としては、例えば特開2015-168770号公報の段落「0019」~「0036」に記載のポリアルキレングリコール系単量体(A)や、同公報の段落「0041」~「0054」に記載のスルホン酸基含有単量体(C)等が挙げられる。
【0041】
本発明の一実施形態において、共重合体を構成するカルボキシ基を有する単量体の例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-ヒドロキシアクリル酸、α-ヒドロキシメチルアクリル酸、およびこれらの金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等の塩が挙げられる。
【0042】
本発明の一実施形態において、アニオン性水溶性高分子中のスルホン酸基を有する単量体由来の構成単位とカルボキシ基を有する単量体由来の構成単位とのモル比は、スルホン酸基を有する単量体由来の構成単位:カルボキシ基を有する単量体由来の構成単位=1:99~99:1が好ましく、5:95~95:5がより好ましい。
【0043】
アニオン性水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,500以上であり、より好ましくは3,000以上であり、さらに好ましくは5,000以上であり、さらにより好ましくは7,000以上であり、特に好ましくは8,000以上であり、最も好ましくは9,000以上である。また、アニオン性水溶性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下であり、さらに好ましくは100,000以下であり、さらにより好ましくは50,000以下であり、特に好ましくは30,000以下であり、最も好ましくは15,000以下である。すなわち、アニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上1,000,000以下であり、より好ましくは3,000以上500,000以下であり、さらに好ましくは5,000以上100,000以下であり、さらにより好ましくは7,000以上50,000以下であり、特に好ましくは8,000以上30,000以下であり、最も好ましくは9,000以上15,000以下である。アニオン性高分子の重量平均分子量が上記範囲内であると、研磨対象物を研磨する速度をより抑えることができ、さらに研磨対象物の表面上の残渣をより効率的に除去することができ、本発明の所期の効果がより発揮される。
【0044】
なお、本明細書中、重量平均分子量は、実施例にも記載した通り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、分子量が既知のポリエチレングリコールを基準物質として測定することができる。
【0045】
本発明の一実施形態において、そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合には、アニオン性水溶性高分子の含有量は、研磨用組成物の総質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましく、0.15質量%以上であることが特に好ましく、0.20質量%以上であることが最も好ましい。本発明の一実施形態において、アニオン性水溶性高分子の含有量は、研磨用組成物の総質量に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.50質量%以下であることが特に好ましく、0.45質量%以下であることが最も好ましい。すなわち、アニオン性水溶性高分子の含有量は、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、0.10質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.15質量%以上0.50質量%以下であることが特に好ましく、0.20質量%以上0.45質量%以下であることが最も好ましい。
【0046】
また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液、ワーキングスラリーの原液)の場合、アニオン性水溶性高分子の含有量の上限は、研磨用組成物の総質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、アニオン性水溶性高分子の含有量の下限は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態において、アニオン性水溶性高分子は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。また、アニオン性水溶性高分子は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。さらに、アニオン性水溶性高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。研磨用組成物において2種以上のアニオン性水溶性高分子が含まれる場合、アニオン性水溶性高分子の含有量は、これらの合計量とする。
【0048】
(ポリプロピレングリコール)
本発明に係る研磨用組成物は、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールを含む。研磨用組成物において、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールは、研磨対象物の表面(特に、ポリシリコン膜)に吸着し、砥粒(アニオン変性コロイダルシリカ)による研磨から当該表面を適度に保護するため、研磨速度を緩やかにすることができる。また、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールは、研磨対象物の表面(特に、ポリシリコン膜)から容易に離脱するため、結果として研磨対象物の欠陥数(残渣数)を低減することができる。ポリプロピレングリコールの重量平均分子量が200未満であると、研磨対象物の表面(特に、ポリシリコン膜)の研磨速度を抑制することができないため好ましくない。また、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量が700を超えると、研磨対象物の表面に吸着したポリプロピレングリコールが当該表面から離脱しにくくなり、それ自体が残渣となりやすくなるため好ましくない。
【0049】
重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールは、1種単独用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールは、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0050】
重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールは、当該重量平均分子量が、200以上600以下であることが好ましく、200以上500以下であることがより好ましく、200以上450以下であることがさらに好ましく、250以上450以下であることが特に好ましい。ポリプロピレングリコールの重量平均分子量が当該範囲にあることで、残渣数をより低減させることができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合には、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールの含有量の下限は、研磨用組成物の総質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましく、0.10質量%以上であることが特に好ましく、0.15質量%以上であることが最も好ましい。また、ポリプロピレングリコールの含有量の上限は、研磨用組成物の総質量に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.30質量%以下であることが特に好ましく、0.25質量%以下であることが最も好ましい。すなわち、ポリプロピレングリコールの含有量は、研磨用組成物の総質量に対して、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.10質量%以上0.30質量%以下であることが特に好ましく、0.15質量%以上0.25質量%以下であることが最も好ましい。当該範囲にあることで、研磨対象物の表面(特に、ポリシリコン膜)の研磨速度をより十分に低減でき、さらに当該表面における残渣数もより十分に低減させることができる。
【0052】
また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液、ワーキングスラリーの原液)の場合、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールの含有量の上限は、研磨用組成物の総質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールの含有量の下限は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましい。当該範囲にあることで、研磨対象物の表面(特に、ポリシリコン膜)の研磨速度をより十分に低減でき、さらに当該表面における残渣数もより十分に低減させることができる。
【0053】
(窒素非含有ノニオン性高分子)
本発明に係る研磨用組成物は、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子を含む。窒素非含有ノニオン性高分子は、後述する窒素含有ノニオン性高分子と相互作用することにより、本発明の所期の効果がより発揮される。このメカニズムの詳細は不明だが、窒素非含有ノニオン性高分子中のヒドロキシ基と、窒素含有ノニオン性高分子中の窒素元素と、が水素結合することにより、強固な親水膜を形成し、研磨対象物の表面(特に、ポリシリコン膜)の親水性を向上させることにより、当該表面に残渣が付着したり、離脱した残渣が再度付着したりすることを防ぐと考えられる。
【0054】
窒素非含有ノニオン性高分子としては、窒素原子を有していないノニオン性高分子であればよく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルエーテル類(ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテルなど)、ポリアルキレンオキサイド類(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドなど)、ポリグリセリン、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性の多糖類、アルギン酸多価アルコールエステル、水溶性尿素樹脂、デキストリン誘導体、カゼイン等が挙げられる。また、窒素非含有ノニオン性高分子としては、上記のような主鎖構造を有するもののみならず、ノニオン性ポリマー構造を側鎖に有するグラフト共重合体も好適に用いることができる。窒素非含有ノニオン性高分子としては、同一(単独重合体;ホモポリマー)または相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する高分子であってよく、窒素非含有ノニオン性高分子が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0055】
窒素非含有ノニオン性高分子は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリグリセリンからなる群から選択されることが好ましく、より好ましくはポリビニルアルコールである。窒素非含有ノニオン性高分子は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。また、窒素非含有ノニオン性高分子は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0056】
窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上であり、より好ましくは2,000以上であり、さらに好ましくは3,000以上であり、さらにより好ましくは4,500以上であり、特に好ましくは5,500以上であり、最も好ましくは7,500以上である。また、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは100,000以下であり、より好ましくは90,000以下であり、さらに好ましくは70,000以下であり、さらにより好ましくは50,000以下であり、特に好ましくは25,000以下であり、最も好ましくは20,000以下である。すなわち、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上100,000以下であり、より好ましくは2,000以上90,000以下であり、さらに好ましくは3,000以上70,000以下であり、さらにより好ましくは4,500以上50,000以下であり、特に好ましくは5,500以上25,000以下であり、最も好ましくは7,500以上20,000以下である。
【0057】
窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量が上記範囲内であると、窒素非含有ノニオン性高分子が研磨対象物(例えば、ポリシリコンを含む膜)に吸着されやすくなり、研磨用組成物を用いた処理の後に研磨対象物の表面上の残渣をより効率的に除去することができ、本発明の所期の効果がより発揮される。
【0058】
本発明の一実施形態において、そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合には、窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上1質量%以下であり、特に好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液、ワーキングスラリーの原液)の場合、窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.005質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは0.025質量%以上15質量%以下である。研磨用組成物において2種以上の窒素非含有ノニオン性高分子が含まれる場合、窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、これらの合計量とする。
【0059】
(窒素含有ノニオン性高分子)
本発明に係る研磨用組成物は、窒素含有ノニオン性高分子を含有する。窒素含有ノニオン性高分子は、前述したように、窒素非含有ノニオン性高分子との相互作用することにより、本発明に係る所期の効果の発揮に寄与する。また、本発明に係る研磨用組成物において、窒素含有ノニオン性高分子が研磨対象物表面(特に、酸化ケイ素を含む膜)に吸着することで、当該表面の研磨速度が緩やかになり、さらに残渣(汚染物質)の再付着を防止することができ得る。
【0060】
窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上であり、より好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは9,000以上であり、さらにより好ましくは10,000以上であり、特に好ましくは20,000以上であり、最も好ましくは40,000以上である。また、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下であり、より好ましくは500,000以下であり、さらに好ましくは300,000以下であり、さらにより好ましくは100,000以下であり、特に好ましくは70,000以下であり、最も好ましくは50,000以下である。すなわち、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量は、好ましくは1,500以上1,000,000以下であり、より好ましくは5,000以上500,000以下であり、さらに好ましくは9,000以上300,000以下であり、さらにより好ましくは10,000以上100,000以下であり、特に好ましくは20,000以上70,000以下であり、最も好ましくは40,000以上48,000以下である。窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量が上記範囲内であると、研磨対象物に対する研磨速度がより緩やかになり、さらに当該研磨対象物の表面上の残渣をより効率的に除去することができる。
【0061】
窒素含有ノニオン性高分子としては、窒素原子を有するノニオン性高分子であればよく、例えば、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリ-N-ビニルカプロラクタム、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、オキサゾリン基含有ポリマー等が挙げられる。窒素含有ノニオン性高分子としては、上記のような主鎖構造を有するもののみならず、ノニオン性ポリマー構造を側鎖に有するグラフト共重合体も好適に用いることができる。窒素含有ノニオン性高分子としては、同一(単独重合体;ホモポリマー)または相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する高分子であってよく、窒素含有ノニオン性高分子が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0062】
窒素含有ノニオン性高分子としては、好ましくはアミド基またはオキサゾリン基を有する高分子であり、より好ましくはポリビニルピロリドン、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリ-N-ビニルカプロラクタム、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミドおよびオキサゾリン基含有ポリマーからなる群から選択される1種以上であり、さらに好ましくはポリビニルピロリドンである。上記の窒素含有ノニオン性高分子であれば、研磨対象物(特に、酸化ケイ素を含む膜)の研磨速度をより緩やかにすることができ、さらに当該研磨対象物表面の残渣もより効率よく除去することができる。なお、窒素含有ノニオン性高分子は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いられていてもよい。また、窒素含有ノニオン性高分子は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0063】
また、窒素含有ノニオン性高分子がポリビニルピロリドンである場合、前述の窒素非含有ノニオン性高分子はポリビニルアルコールであることが好ましい。ポリビニルピロリドンとポリビニルアルコールとを組み合わせることにより、研磨対象物(特に、酸化ケイ素を含む膜)に対する研磨速度をより十分に緩やかにすることができ、さらに当該研磨対象物表面の残渣もより十分に除去することができる。
【0064】
本発明の一実施形態において、そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合には、窒素含有ノニオン性高分子の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以上1質量%以下であり、特に好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下であり、最も好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。また、また、希釈して研磨に用いられる研磨用組成物(すなわち濃縮液、ワーキングスラリーの原液)の場合、窒素含有ノニオン性高分子の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.005質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは0.025質量%以上15質量%以下である。研磨用組成物において2種以上の窒素含有ノニオン性高分子が含まれる場合、窒素非含有ノニオン性高分子の含有量は、これらの合計量とする。
【0065】
窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量と、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量との比(窒素含有ノニオン性高分子/窒素非含有ノニオン性高分子)は、好ましくは0.1以上50以下であり、より好ましくは0.2以上40以下であり、さらに好ましくは0.3以上30以下であり、特に好ましくは0.3以上5.5以下である。窒素含有ノニオン性高分子の重量平均分子量と、窒素非含有ノニオン性高分子の重量平均分子量との比が上記範囲内であると、窒素非含有ノニオン性高分子および窒素含有ノニオン性高分子が研磨対象物(例えば、酸化ケイ素を含む膜、ポリシリコンを含む膜)の表面に吸着されやすくなり、当該表面を研磨する速度を緩やかにすることができ、さらに当該表面上の残渣をより効率的に除去することができるため、本発明の所期の効果がより発揮される。
【0066】
(分散媒)
本発明に係る研磨用組成物は、分散媒を含む。分散媒は、各成分を分散または溶解させる機能を有する。分散媒は、水を含むことが好ましく、水のみであることがより好ましい。また、分散媒、各成分の分散または溶解のために、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。この場合、用いられる有機溶媒としては、例えば、水と混和する有機溶媒であるアセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの有機溶媒を水と混合せずに用いて、各成分を分散または溶解した後に、水と混合してもよい。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0067】
水は、研磨対象物の汚染や他の成分の作用を阻害することを防ぐという観点から、残渣をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる残渣イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。
【0068】
(その他の高分子)
本発明に係る研磨用組成物は、上記アニオン性水溶性高分子、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子、及び窒素含有ノニオン性高分子以外の他の高分子をさらに含んでいてもよい。その他の高分子としては、カチオン性高分子、両性高分子のいずれも使用可能である。また、その他の高分子としては、水溶性高分子であるのが好ましい。ここでいう水溶性高分子とは、同一の繰り返し構成単位を有する水溶性の高分子(単独重合体;ホモポリマー)、または相異なる繰り返し構成単位を有する水溶性の高分子(共重合体;コポリマー)をいい、典型的には重量平均分子量(Mw)が1000以上の化合物である。
【0069】
カチオン性高分子としては、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、カチオン性のアクリルアミドの重合体等が挙げられる。
【0070】
両性高分子の例としては、例えば、アニオン性基を有するビニル単量体とカチオン性基とを有するビニル単量体との共重合体、カルボキシベタイン基またはスルホベタイン基を有するビニル系の両性高分子等が挙げられ、具体的には、アクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体、アクリル酸/ジエチルアミノエチルメタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0071】
(界面活性剤)
本発明に係る研磨用組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤の種類は、特に制限はなく、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、および両性の界面活性剤のいずれであってもよい。
【0072】
ノニオン性界面活性剤の例としては、上記のポリプロピレングリコール、窒素非含有ノニオン性高分子および窒素含有ノニオン性高分子以外の化合物が挙げられ、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型等が挙げられる。その他、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、モノエタノールアミン、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、3級アセチレングリコール、アルカノールアミド等も、ノニオン性界面活性剤として用いることができる。なお、上記窒素非含有ノニオン性高分子および窒素含有ノニオン性高分子は、ノニオン性界面活性剤としての機能を有しうるため、別途のノニオン性界面活性剤を添加しなくてもよい。
【0073】
アニオン性界面活性剤の例としては、上記アニオン性水溶性高分子以外の化合物が挙げられ、例えば、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル型;ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル型;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸型等が挙げられる。なお、上記アニオン性高分子は、アニオン性界面活性剤としての機能を有しうるため、別途のアニオン性界面活性剤を添加しなくてもよい。
【0074】
カチオン性界面活性剤の例としては、例えば、ラウリルアミン塩酸塩等のアミン類;ポリエトキシアミン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;ラウリルピリジニウムクロライド等のピリジウム塩等が挙げられる。
【0075】
両性界面活性剤の例としては、例えば、レシチン、アルキルアミンオキシド、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタイン等のアルキルベタインやスルホベタイン等が挙げられる。
【0076】
界面活性剤は、1種単独でも、または2種以上を組み合わせても用いることができる。また、界面活性剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0077】
そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合、界面活性剤の含有量の下限は、研磨用組成物の総質量を100質量%として、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、界面活性剤の含有量の上限は、研磨用組成物の総質量を100質量%として、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。なお、研磨用組成物が2種以上の界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、これらの合計量を意図する。
【0078】
<研磨用組成物のpH>
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物のpHは、2.0以上5.0未満であることが好ましい。研磨用組成物のpHが当該範囲にあることにより、研磨対象物(特に、窒化ケイ素を含む研磨対象物)の表面に対する研磨速度がより緩やかになり、さらに当該表面上の残渣もより低減することができる。
【0079】
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物のpHは、2.0以上4.5以下であることがより好ましく、2.0以上4.0以下であることがさらに好ましく、2.0以上3.5以下であることがよりさらに好ましく、2.0以上3.0以下であることが特に好ましく、2.2以上2.8以下であることが最も好ましい。研磨用組成物のpHが当該範囲にあることにより、研磨対象物(特に、窒化ケイ素を含む研磨対象物)に対する研磨速度がより十分に緩やかなものとなり、さらに当該研磨対象物の表面上の残渣もより十分に低減することができる。
【0080】
(pH調整剤)
本発明に係る研磨用組成物は、pH調整剤をさらに含んでいてもよい。
【0081】
pH調整剤は、特に制限されず、研磨用組成物の分野で用いられる公知のpH調整剤を用いることができ、上述したキレート剤以外の公知の酸、塩基、またはこれらの塩等を用いることができる。pH調整剤の例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、アミノ酸、アントラニル酸等のカルボン酸や、スルホン酸、有機ホスホン酸等の有機酸;硝酸、炭酸、塩酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、フッ化水素酸などの無機酸;水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリム(Na2CO3)等のアルカリ金属の炭酸塩;第2族元素の水酸化物;アンモニア(水酸化アンモニウム);水酸化第四アンモニウム化合物等の有機塩基等が挙げられる。
【0082】
pH調整剤は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0083】
研磨用組成物中のpH調整剤の含有量は、所望の研磨用組成物のpH値となるような量を適宜選択すればよい。
【0084】
なお、研磨用組成物のpHは、実施例に記載の方法により測定した値を採用する。
【0085】
<他の成分>
本発明の一形態に係る研磨用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、他の成分を任意の割合で含有していてもよい。ただし、本発明の一形態に係る研磨用組成物の必須成分以外の成分は、異物(残渣)の原因となりうるためできる限り添加しないことが望ましいため、その添加量はできる限り少ないことが好ましい。他の成分としては、例えば、防カビ剤(防腐剤)、還元剤、酸化剤等が挙げられる。本発明に係る研磨用組成物は、酸性である。また、本発明に係る研磨用組成物は、高分子を含む。このため、これらのうち、本発明に係る研磨用組成物は、防カビ剤(防腐剤)を含むことが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、アニオン変性コロイダルシリカ、水、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、ならびにpH調整剤、有機溶媒および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から実質的に構成される。本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、アニオン変性コロイダルシリカ、水、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、pH調整剤、ならびに有機溶媒および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される。ここで、「アニオン変性コロイダルシリカ、水、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、ならびにpH調整剤、有機溶媒および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から実質的に構成される」および「アニオン変性コロイダルシリカ、水、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、pH調整剤、ならびに有機溶媒および防カビ剤の少なくとも一方から実質的に構成される」とは、アニオン変性コロイダルシリカ、水、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、pH調整剤、有機溶媒および防カビ剤の合計含有量が、研磨用組成物に対して、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意図する。好ましくは、研磨用組成物は、アニオン変性コロイダルシリカ、水、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子、pH調整剤、有機溶媒および防カビ剤から構成される(上記合計含有量=100質量%)。
【0086】
防カビ剤(防腐剤)は、特に制限されず、高分子の種類に応じて適切に選択できる。具体的には、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)等のイソチアゾリン系防腐剤、およびフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0087】
または、防カビ剤(防腐剤)は、下記化学式1で表される化合物でありうる。
【0088】
【化1】
【0089】
上記化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される少なくとも2種の原子から構成される置換基である。
【0090】
炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される少なくとも2種の原子から構成される置換基の例としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数1以上20以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上20以下のアルコキシ基、炭素数1以上20以下のヒドロキシアルコキシ基、炭素数2以上21以下のアルコキシカルボニル基、炭素数6以上30以下のアリール基、炭素数7以上31以下のアラルキル基(アリールアルキル基)、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基、炭素数6以上30以下のアリールオキシカルボニル基、炭素数8以上32以下のアラルキルオキシカルボニル基、炭素数2以上20以下のアシル基、炭素数2以上20以下のアシルオキシ基等が挙げられる。
【0091】
さらに具体的には、炭素数1以上20以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基等の分岐状のアルキル基;シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。
【0092】
炭素数1以上20以下のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシ-n-プロピル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、2-ヒドロキシ-n-ブチル基、3-ヒドロキシ-n-ブチル基、4-ヒドロキシ-n-ブチル基、2-ヒドロキシ-n-ペンチル基、3-ヒドロキシ-n-ペンチル基、4-ヒドロキシ-n-ペンチル基、5-ヒドロキシ-n-ペンチル基、2-ヒドロキシ-n-ヘキシル基、3-ヒドロキシ-n-ヘキシル基、4-ヒドロキシ-n-ヘキシル基、5-ヒドロキシ-n-ヘキシル基、6-ヒドロキシ-n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0093】
炭素数1以上20以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等の直鎖状のアルコキシ基;イソプロピルオキシ基、イソブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、t-アミルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジエチルプロピルオキシ基、1,1-ジメチルブチルオキシ基、1-メチル-1-プロピルブチルオキシ基、1,1-ジプロピルブチルオキシ基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピルオキシ基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピルオキシ基等の分岐状のアルコキシ基;シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、ノルボルネニルオキシ基等の環状のアルコキシ基等が挙げられる。
【0094】
炭素数1以上20以下のヒドロキシアルコキシ基の例としては、ヒドロキシメトキシ基、2-ヒドロキシエトキシ基、2-ヒドロキシ-n-プロピルオキシ基、3-ヒドロキシ-n-プロピルオキシ基、2-ヒドロキシ-n-ブチルオキシ基、3-ヒドロキシ-n-ブチルオキシ基、4-ヒドロキシ-n-ブチルオキシ基、2-ヒドロキシ-n-ペンチルオキシ基、3-ヒドロキシ-n-ペンチルオキシ基、4-ヒドロキシ-n-ペンチルオキシ基、5-ヒドロキシ-n-ペンチルオキシ基、2-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基、3-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基、4-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基、5-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基、6-ヒドロキシ-n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0095】
炭素数2以上21以下のアルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0096】
炭素数6以上30以下のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、ピレニル基等が挙げられる。
【0097】
炭素数7以上31以下のアラルキル基(アリールアルキル基)の例としては、ベンジル基、フェネチル基(フェニルエチル基)等が挙げられ、炭素数6以上30以下のアリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基(フェノキシ基)、ナフチルオキシ基、アントラニルオキシ基、ピレニルオキシ基等が挙げられる。
【0098】
炭素数7以上31以下のアリールオキシカルボニル基の例としては、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、アントラニルオキシカルボニル基、ピレニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0099】
炭素数8以上32以下のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0100】
炭素数1以上20以下のアシル基の例としては、メタノイル基(ホルミル基)、エタノイル基(アセチル基)、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0101】
炭素数1以上20以下のアシルオキシ基の例としては、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、デカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0102】
さらに、上記化学式1で表される防カビ剤は、下記化学式1-a~1-cで表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0103】
【化2】
【0104】
上記化学式1-a~1-c中、R~Rは、それぞれ独立して、炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される少なくとも2種の原子から構成される置換基である。
【0105】
炭素原子、水素原子、および酸素原子からなる群より選択される少なくとも2種の原子から構成される置換基の例は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0106】
上記化学式1で表される化合物のより具体的な例としては、パラオキシ安息香酸メチル(パラヒドロキシ安息香酸メチル)、パラオキシ安息香酸エチル(パラヒドロキシ安息香酸エチル)、パラオキシ安息香酸ブチル(パラヒドロキシ安息香酸ブチル)、パラオキシ安息香酸ベンジル(パラヒドロキシ安息香酸ベンジル)等のパラオキシ安息香酸エステル(パラヒドロキシ安息香酸エステル);、サリチル酸、サリチル酸メチル、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、イソプロピルフェノール、クレゾール、チモール、フェノキシエタノール、フェニルフェノール(2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール)、2-フェニルエチルアルコール(フェネチルアルコール)等が挙げられる。
【0107】
これらの中でも、本発明の所期の効果がより効果的に奏されるという観点から、上記化学式1で表される化合物としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、およびフェニルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、パラオキシ安息香酸ブチルがより好ましい。
【0108】
または、防カビ剤(防腐剤)は、不飽和脂肪酸でありうる。不飽和脂肪酸の例としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リシノール酸等のモノ不飽和脂肪酸;ソルビン酸、リノール酸、エイコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸;リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸等のトリ不飽和脂肪酸;ステアリドン酸やアラキドン酸等のテトラ不飽和脂肪酸;ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸等のペンタ不飽和脂肪酸;ドコサヘキサエン酸、ニシン酸等のヘキサ不飽和脂肪酸;等が挙げられる。
【0109】
これらの中でも、本発明の所期の効果がより効果的に奏されるという観点から、不飽和脂肪酸としては、ソルビン酸が好ましい。
【0110】
また、上記以外に、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール等の1,2-アルカンジオール;2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(エチルヘキシルグリセリン)等のアルキルグリセリルエーテル;カプリン酸、デヒドロ酢酸等の化合物を、防カビ剤(防腐剤)として用いてもよい。
【0111】
上記防カビ剤(防腐剤)は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0112】
研磨用組成物が防カビ剤(防腐剤)を含む場合の、防カビ剤(防腐剤)の含有量(濃度)の下限は、特に制限されない。そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(典型的にはスラリー状の研磨液であり、ワーキングスラリーまたは研磨スラリーと称されることもある)の場合、研磨用組成物の全質量に対して、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましい。また、そのまま研磨液として研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物中の防カビ剤(防腐剤)の含有量(濃度)の上限は、特に制限されないが、研磨用組成物の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。すなわち、研磨用組成物中の防カビ剤(防腐剤)の含有量(濃度)は、研磨用組成物の全質量に対して、好ましくは0.0001質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.001質量%以上1質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以上0.1質量%以下である。このような範囲であれば、微生物を不活性化または破壊するのに十分な効果が得られる。なお、研磨用組成物が2種以上の防カビ剤(防腐剤)を含む場合には、上記含有量はこれらの合計量を意図する。
【0113】
<研磨用組成物の製造方法>
本発明の研磨用組成物の製造方法は、例えば、アニオン変性コロイダルシリカと、分散媒と、アニオン性水溶性高分子と、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールと、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、必要に応じて他の成分とを、攪拌混合することにより得ることができる。各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も特に制限されない。
【0114】
<研磨方法>
本発明の他の一形態は、上記研磨用組成物を用いて研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法である。このような研磨方法によれば、研磨対象物の表面を緩やかに研磨しつつも、当該表面に残留する残渣を十分に除去することができる。
【0115】
本発明に係る研磨用組成物は、半導体基板を研磨対象物とする研磨に好適に用いられる。半導体基板の研磨方法は、取り除くべき対象物の大部分を取り除くための研磨を行うメイン(バルク)研磨工程と、対象物を仕上げ研磨する仕上げ(バフ)研磨工程とに大別される。例えば、半導体基板表面を大まかに研磨するメイン(バルク)研磨工程では加工力(研磨力)の高い研磨用組成物が使用され、より繊細に研磨する仕上げ(バフ)研磨工程では研磨力の低い研磨用組成物が使用される傾向にある。一実施形態において、本発明の研磨用組成物は、半導体基板の仕上げ(バフ)研磨工程に好適に用いられる。
【0116】
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0117】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0118】
本実施形態において、研磨工程(特に仕上げ研磨工程)における、研磨対象物と、パッドとの圧力は、0.3psi(2.07kPa)以上3psi(20.7kPa)以下であることが好ましく、0.6psi(4.14kPa)以上2psi(13.8kPa)以下であることがより好ましい。また、本実施形態において、研磨工程におけるヘッド(キャリア)回転数は、50rpm(0.83s-1)以上100rpm(1.67s-1)以下であることが好ましい。本実施形態において、研磨工程における定盤の回転数は、50rpm(0.83s-1)以上100rpm(0.83s-1)以下であることが好ましい。また、研磨工程における掛け流しの供給量に制限はないが、研磨対象物の表面が研磨用組成物で覆われていることが好ましく、例えば、50~300ml/分であることが好ましい。また、研磨時間も特に制限されないが、5~60秒間であることが好ましい。
【0119】
研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明に係る研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
【0120】
研磨終了後、基板を流水中で洗浄し、スピンドライヤ等により基板上に付着した水滴を払い落として乾燥させることにより、研磨済みの研磨対象物が得られる。
【0121】
本発明に係る研磨用組成物は、一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。
【0122】
<半導体基板の製造方法>
本発明の一形態に係る研磨方法は、研磨対象物が半導体基板である場合に、好適に使用される。すなわち、本発明の他の一形態によれば、研磨対象物が半導体基板であり、当該半導体基板を、上記研磨方法によって研磨することを含む、半導体基板の製造方法もまた提供される。よって、本発明によれば、アニオン変性コロイダルシリカと、分散媒と、スルホン酸基若しくはその塩の基を有する構成単位と、カルボキシ基若しくはその塩の基を有する構成単位と、を含む共重合体である、アニオン性水溶性高分子と、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコールと、重量平均分子量が200以上700以下であるポリプロピレングリコール以外の窒素非含有ノニオン性高分子と、窒素含有ノニオン性高分子と、を含む研磨用組成物を用いて、研磨対象物を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法が提供される。かかる製造方法が適用される半導体基板の詳細については、上記研磨用組成物によって研磨される研磨対象物の説明の通りである。なお、当該製造方法において、その他の工程については、公知の半導体基板の製造方法に採用されうる工程を適宜採用することができる。
【実施例0123】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件下で行った。
【0124】
[砥粒の準備]
アニオン変性コロイダルシリカとして、スルホン酸修飾コロイダルシリカ(“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で作製したもの、平均一次粒子径32nm、平均二次粒子径69nm、平均会合度2.2)を準備した。
【0125】
アニオン変性コロイダルシリカ粒子の平均一次粒子径は、マイクロメリティックス社製の“Flow Sorb II 2300”を用いて測定されたBET法によるシリカ粒子の比表面積と、シリカ粒子の密度とから算出した。また、アニオン変性コロイダルシリカ粒子の平均二次粒子径は、日機装株式会社製 動的光散乱式粒子径・粒度分布装置 UPA-UTI151により測定した。砥粒の平均会合度は、砥粒の平均二次粒子径の値を砥粒の平均一次粒子径の値で除することにより算出した。
【0126】
[高分子の準備]
下記のアニオン性水溶性高分子、添加剤、窒素非含有ノニオン性高分子、および窒素含有ノニオン性高分子を準備した。
【0127】
「アニオン性水溶性高分子」
・アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体のナトリウム塩(以下、「(アクリル酸/スルホン酸)共重合体」)のナトリウム塩(製品名:アロンA-6012(東亞合成株式会社));重量平均分子量10,000
【0128】
「添加剤」
・ポリプロピレングリコール
ニューポール(登録商標)PP-200(三洋化成工業株式会社):数平均分子量200
ポリプロピレングリコール400(富士フイルム和光純薬株式会社):重量平均分子量400
ポリプロピレングリコール700(富士フイルム和光純薬株式会社):重量平均分子量700
ポリプロピレングリコール1000(富士フイルム和光純薬株式会社):重量平均分子量1000
ポリプロピレングリコール2000(富士フイルム和光純薬株式会社):重量平均分子量2000
・ポリエチレングリコール
PEG200(第一工業製薬株式会社):重量平均分子量200
PEG600(第一工業製薬株式会社):重量平均分子量600
ポリエチレングリコール1000(富士フイルム和光純薬株式会社):重量平均分子量1000
ポリエチレングリコール2000(富士フイルム和光純薬株式会社):重量平均分子量2000
【0129】
「窒素非含有ノニオン性高分子」
・ポリビニルアルコール
JMR-3HH(日本酢ビ・ポバール株式会社):重量平均分子量5,000
JMR-10HH(日本酢ビ・ポバール株式会社):重量平均分子量10,000
JMR-170HH(日本酢ビ・ポバール株式会社):重量平均分子量77,000
デンカポバール(登録商標) K-05 (デンカ株式会社):重量平均分子量22,000
ポリビニルアルコール(シグマ-アルドリッチジャパン社):重量平均分子量10,2000
・ヒドロキシエチルセルロース
ヒドロキシエチルセルロース(シグマ-アルドリッチジャパン):重量平均分子量25,000
HEC CF-W(住友精化社):重量平均分子量1,200,000
【0130】
「窒素含有ノニオン性高分子」
・ポリビニルピロリドン
ピッツコール(登録商標)K30A(第一工業製薬株式会社);重量平均分子量45,000
ピッツコール(登録商標)K17L(第一工業製薬株式会社);重量平均分子量9,000
・ポリ-N-ビニルアセトアミド
PNVA GE191-107(昭和電工株式会社);重量平均分子量50,000
PNVA GE191-104(昭和電工株式会社);重量平均分子量300,000
・ポリジメチルアクリルアミド
ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)(シグマ-アルドリッチジャパン);重量平均分子量10,000
・ポリN-イソプロピルアクリルアミド
ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(シグマ-アルドリッチジャパン);重量平均分子量40,000
・ポリN-ビニルカプロラクタム
ルビスコール(登録商標) Plus(BASFジャパン株式会社);重量平均分子量70,000
・オキサゾリン基含有ポリマー
エポクロス(登録商標) WS-700(株式会社日本触媒);重量平均分子量40,000
【0131】
上記の高分子の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定した。
【0132】
[高分子の重量平均分子量(Mw)の測定]
高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)の値を用いた。重量平均分子量は、下記の装置および条件によって測定した:
GPC装置:株式会社島津製作所製
型式:Prominence + ELSD検出器(ELSD-LTII)
カラム:VP-ODS(株式会社島津製作所製)
移動相 A:MeOH
B:酢酸1%水溶液
流量:1mL/分
検出器:ELSD temp.40℃、Gain 8、NGAS 350kPa
オーブン温度:40℃
注入量:40μL。
【0133】
[研磨用組成物のpH]
研磨用組成物のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(株式会社堀場製作所製 型番:F-23)を使用し、標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液pH:4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液pH:6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液pH:10.01(25℃))を用いて3点校正した後で、ガラス電極を研磨用組成物に入れて、2分以上経過して安定した後の値をpH値とした。
【0134】
[研磨用組成物の調製]
(実施例1)
砥粒として、上記で得られたアニオン変性コロイダルシリカを1質量%となるように分散媒である純水に室温(25℃)で加え、さらに最終濃度0.3g/kgとなるように防カビ剤として防カビ剤(1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン水溶液(商品名:サンアイバックR-30);三愛石油株式会社製)を加えて混合液を得た。
【0135】
得られた混合液に、アニオン性水溶性高分子として、重量平均分子量10,000の(アクリル酸/スルホン酸)共重合体と;添加剤として、重量平均分子量400のポリプロピレングリコールと;窒素非含有ノニオン性高分子として、重量平均分子量10,000のポリビニルアルコールと;窒素含有ノニオン性高分子として、重量平均分子量45,000のポリビニルピロリドンと;を、25℃で5分間攪拌混合することにより調製した。その後、硝酸を用いて、混合液をpH2.5となるように調整し、実施例1の研磨用組成物を得た。
【0136】
ここで、(アクリル酸/スルホン酸)共重合体の含有量は、研磨用組成物の全質量に対して0.25質量%であり;ポリプロピレングリコールの含有量は、研磨用組成物の全質量に対して0.20質量%であり;ポリビニルアルコールの含有量は、研磨用組成物の全質量に対して0.10質量%であり;ポリビニルピロリドンの含有量は、研磨用組成物の全質量に対して0.10質量%であった。
【0137】
(実施例2~27、比較例1~13)
砥粒、アニオン性水溶性高分子、添加剤、窒素非含有ノニオン性高分子、窒素含有ノニオン性高分子の種類及び/又は含有量を下記表1に記載のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~27及び比較例1~13の研磨用組成物を調製した。
【0138】
なお、表1A~1Cにおいて、「PPG」は「ポリプロピレングリコール」を表し、「PEG」は「ポリエチレングリコール」を表し、「PVA」は「ポリビニルアルコール」を表し、「HEC」は「ヒドロキシエチルセルロース」を表し、「PVP」はポリビニルピロリドンを表し、「PNVA」はポリ-N-ビニルアセトアミドを表し、「PDMA」はポリジメチルアクリルアミドを表し、「PNIPAM」はポリ-N-イソプロピルアクリルアミドを表し、「PNVCL」はポリ-N-ビニルカプロラクタムを表す。
【0139】
また、下記表1中の「-」は、その剤を使用しなかったことを表す。比較例1は窒素含有ノニオン性高分子を使用しなかった例であり、比較例2~5は窒素非含有ノニオン性高分子使用しなかった例である。
【0140】
【表1A】
【0141】
【表1B】
【0142】
【表1C】
【0143】
[研磨試験]
研磨対象物として、(1)多結晶シリコンウェーハ(300mm、アドバンスマテリアルズテクノロジー株式会社製)、(2)表面に厚さ10000ÅのTEOS膜を形成したシリコンウェーハ(TEOS基板)(300mm、ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック製)、および(3)表面に厚さ2500ÅのSiN膜を形成したシリコンウェーハ(SiN基板)(300mm、ブランケットウェーハ、株式会社アドバンテック製)を準備した。
【0144】
上記で準備した多結晶シリコンウェーハ、TEOS基板およびSiN基板について、上記実施例1~27および比較例1~13で調製した研磨用組成物をそれぞれ用いて、下記の条件にて研磨を行った。
【0145】
<研磨装置および研磨条件>
研磨装置:株式会社荏原製作所製 FREX300E
研磨パッド:ニッタ・デュポン株式会社製 硬質ポリウレタンパッド IC1010
コンディショナー(ドレッサー):ナイロンブラシ(A188、3M社製)
研磨圧力:2.0psi(1psi=6894.76Pa、以下同じ)
研磨定盤回転数:80rpm
ヘッド回転数:80rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:200mL/分
研磨時間:30秒間。
【0146】
[評価]
以下の評価方法に従い、研磨速度及び残渣数を評価した。
【0147】
(研磨速度)
研磨速度(研磨レート)(Å/min)は、以下の式により計算した。
【0148】
【数1】
【0149】
研磨前後の研磨対象物の膜厚(Å)を、光学式膜厚測定器(ASET-f5x:ケーエルエー・テンコール社製)により求めて、研磨前後の膜厚の差を研磨時間で除することにより、研磨速度(研磨レート)(Å/min)を評価した。本発明の一形態に係る研磨用組成物による研磨速度は、5(Å/min)以上50(Å/min)以下であることが好ましく、10(Å/min)以上40(Å/min)以下であることがより好ましく、10(Å/min)以上30(Å/min)以下であることがさらに好ましい。なお、下記表1では、ポリシリコン(Poly-Si)基板、TEOS基板および窒化ケイ素(SiN)基板の研磨速度を、それぞれ、「poly-Si」、「TEOS」および「SiN」の欄に記す。
【0150】
(残渣数測定)
ケーエルエー・テンコール株式会社製、光学検査機Surfscan(登録商標)SP5を用いて、研磨処理後のPoly-Si基板、TEOS基板およびSiN基板のそれぞれにおいて表面上の残渣数を評価した。具体的には、研磨済みのTEOS基板、Poly-Si基板およびSiN基板の片面の外周端部から幅5mmの部分(外周端部を0mmとしたときに、幅0mmから幅5mmまでの部分)を除外した残りの部分について、Poly-Si基板は直径70nm、TEOS基板およびSiN基は直径50nmを超える残渣の数をカウントした。その後、上記研磨済みのPoly-Si基板、TEOS基板およびSiN基板に関して、砥粒残渣数および有機残渣数を、株式会社日立ハイテク製Review SEM RS6000を使用し、SEM観察によって測定した。まず、SEM観察にて、研磨済みのPoly-Si基板、TEOS基板およびSiN基板の片面の外周端部から幅5mmの部分を除外した残りの部分に存在する残渣を100個サンプリングした。次いで、サンプリングした100個の残渣の中から、目視によるSEM観察にて残渣の種類(砥粒または有機残)を判別し、砥粒残渣(SiO残渣)および有機残渣(パッド屑や高分子など)のそれぞれについて、その個数を確認した。評価結果を下記表2A及び2Bに示す。
【0151】
【表2A】
【0152】
【表2B】
【0153】
上記表2A及び2Bから明らかなように、実施例1~27の研磨用組成物は、比較例1~13の研磨用組成物に比べて、研磨対象物表面の研磨速度を低減しながらも、当該表面上の残渣数も低減できることが分かった。