(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148486
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20231005BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20231005BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20231005BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/417
H01M50/457
H01M50/414
H01M50/489
H01M50/491
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/423
B32B5/24 101
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056535
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】堀江 健作
(72)【発明者】
【氏名】中澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】芝 竜太郎
【テーマコード(参考)】
4F100
5H021
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK17B
4F100AK25B
4F100AK41B
4F100AK46B
4F100AK47B
4F100BA02
4F100DJ00A
4F100DJ00B
4F100EH46B
4F100GB41
4F100JB09B
4F100JD02B
4F100JG10
4F100YY00B
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE10
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH02
(57)【要約】
【課題】耐電圧特性、外力に対する追従性および保液性に優れる非水電解液二次電池用セパレータの提供。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムと、前記多孔質フィルムの片面または両面に積層し、かつ、樹脂を含む多孔質層とを含み、前記多孔質層の透気度が、ガーレ値で、500sec/100mL以下であり、開口率が、2%以下である、非水電解液二次電池用セパレータ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムと、前記多孔質フィルムの片面または両面に積層した多孔質層とを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、
前記多孔質層は、樹脂を含み、
前記多孔質層の透気度が、ガーレ値で500sec/100mL以下であり、
前記多孔質層の開口率が2%以下である、非水電解液二次電池用セパレータ。
(ここで、前記開口率は、前記多孔質層の表面を走査型電子顕微鏡によって測定し、画像処理ソフトにより2値化した値から算出した方法によって得られる。)
【請求項2】
前記多孔質層の空隙率が、40%以上、80%以下である、請求項1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記樹脂が、ポリオレフィン、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される、請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記ポリアミド系樹脂がアラミド樹脂である、請求項3に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項5】
正極と、請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる、非水電解液二次電池用部材。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」とも称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いため、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末などに用いる電池として広く使用され、また最近では車載用の電池として開発が進められてきている。
【0003】
近年、非水電解液二次電池の用途拡大に伴い、セパレータには、電池の安全性をさらに向上させるために、耐熱性が要求される。耐熱性を高めたセパレータとして、例えば、多孔質基材の少なくとも片面に、無機粒子および耐熱性樹脂を含有する多孔質層を有する多孔性フィルムを用いてなる二次電池用セパレータを挙げることができる(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/155288号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のセパレータには、耐電圧特性に改善の余地があった。
【0006】
本発明の一実施形態は、非水電解液二次電池用セパレータについて、耐電圧特性を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、多孔質フィルムの片面または両面上に、特定の透気度を備え、かつ、表面の開口率が特定の値以下である多孔質層が積層してなるセパレータが、前述の課題を解決できることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
本発明の一実施形態は、以下の[1]~[6]に示す発明を含む。
[1]ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムと、前記多孔質フィルムの片面または両面に積層した多孔質層とを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、
前記多孔質層は、樹脂を含み、
前記多孔質層の透気度が、ガーレ値で、500sec/100mL以下であり、
前記多孔質層の開口率が、2%以下である、非水電解液二次電池用セパレータ。
(ここで、前記開口率は、前記多孔質層の表面を走査型電子顕微鏡によって測定し、画像処理ソフトにより2値化した値から算出した方法によって得られる。)
[2]前記多孔質層の空隙率が、40%以上、80%以下である、[1]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[3]前記樹脂が、ポリオレフィン、(メタ)アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂および水溶性ポリマーからなる群より1種以上選択される、[1]または[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[4]前記ポリアミド系樹脂がアラミド樹脂である、[3]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[5]正極と、[1]~[4]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる、非水電解液二次電池用部材。
[6][1]~[4]の何れか1つに記載の非水電解液二次電池用セパレータを含む、非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、優れた耐電圧特性を備える非水電解液二次電池用セパレータを提供可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本願実施例において耐電圧特性の測定に使用した耐電圧試験機の円柱型の電極プローブにおける、表面凹凸の形状を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0012】
[実施形態1:非水電解液二次電池用セパレータ]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムと、前記多孔質フィルムの片面または両面に積層した多孔質層とを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、前記多孔質層は、樹脂を含み、前記多孔質層の透気度が、ガーレ値で、500sec/100mL以下であり、前記多孔質層の開口率が、2%以下である。
ここで、前記開口率は、前記多孔質層の表面を走査型電子顕微鏡によって測定し、画像処理ソフトにより2値化した値から算出した方法によって得られる。
【0013】
[多孔質フィルム]
本発明の一実施形態における多孔質フィルムは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする。ここで、「ポリオレフィン系樹脂を主成分とする」とは、多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合が、多孔質フィルムを構成する材料全体の50重量%以上、好ましくは90重量%以上であり、より好ましくは95重量%以上であることを意味する。
【0014】
前記多孔質フィルムは、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体および液体を通過させることが可能となっている。
【0015】
前記多孔質フィルムの膜厚は、4~40μmであることが好ましく、5~20μmであることがより好ましい。前記多孔質フィルムの膜厚が4μm以上であれば、電池の内部短絡を十分に防止することができる。一方、前記多孔質フィルムの膜厚が40μm以下であれば、非水電解液二次電池の大型化を防ぐことができる。
【0016】
前記ポリオレフィン系樹脂には、重量平均分子量が5×105~15×106の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂に重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、得られる多孔質フィルムおよび当該多孔質フィルムを含むセパレータの強度が向上するのでより好ましい。
【0017】
前記ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセン等の単量体を重合してなる、単独重合体または共重合体等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。前記単独重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンを挙げることができる。また、前記共重合体としては、例えばエチレン-プロピレン共重合体を挙げることができる。
【0018】
このうち、セパレータに過大電流が流れることをより低温で阻止すること(シャットダウン)ができるため、ポリエチレンがより好ましい。前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン-α-オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。このうち、前記超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0019】
多孔質フィルムの単位面積当たりの重量目付は、強度、膜厚、重量およびハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。ただし、非水電解液二次電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができるように、前記重量目付は、4~20g/m2であることが好ましく、4~12g/m2であることがより好ましく、5~10g/m2であることがさらに好ましい。
【0020】
多孔質フィルムの透気度は、充分なイオン透過性を得る観点から、ガーレ値で30~500sec/100mLであることが好ましく、50~300sec/100mLであることがより好ましい。
【0021】
多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止する機能を得ることができるように、20~80体積%であることが好ましく、30~75体積%であることがより好ましい。また、多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、充分なイオン透過性を得ることができ、かつ、正極および負極への粒子の入り込みを防止することができるように、0.3μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましい。
【0022】
[多孔質フィルムの製造方法]
多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではない。例えば、ポリオレフィン系樹脂と、無機充填剤または可塑剤等の孔形成剤と、任意で酸化防止剤等とを混練した後に押し出すことにより、シート状のポリオレフィン樹脂組成物を作製する。そして、適当な溶媒にて孔形成剤をシート状のポリオレフィン樹脂組成物から除去する。その後、当該孔形成剤が除去されたポリオレフィン樹脂組成物を延伸することで、ポリオレフィン多孔質フィルムを製造することができる。
【0023】
前記無機充填剤としては、無機フィラー、具体的には炭酸カルシウム等が挙げられる。前記可塑剤としては、流動パラフィン等の低分子量の炭化水素が挙げられる。
【0024】
[多孔質層]
本発明の一実施形態における多孔質層は、透気度が、ガーレ値で500sec/100mL以下であり、かつ、開口率が2%以下である。
【0025】
前記透気度が、ガーレ値で500sec/100mL以下であるとは、前記多孔質層の内部に、空気等の気体が通過するための通路となる、ある程度の大きさの空隙(空孔)が特定の量存在することを表す。また、前記開口率は、前記多孔質層における前記多孔質フィルムと接する面と対向する面、すなわち表面において、後述の方法によって測定される空隙の割合を表すパラメータである。前記「開口率が2%以下である」とは、前記多孔質層の表面において、後述の方法によって測定される空隙がほとんど存在しないことを意味する。前記多孔質層は、前記透気度および前記開口率が前述の範囲内であることにより、空孔を有さない層を備えるのではなく、表面に、後述の方法によって前記開口率が5%以下としか測定できない程度に小さな孔径を備え、緻密な孔構造を形成している。前記緻密な孔構造は、過剰な電圧が加えられた場合であっても、崩壊し難い。従って、本発明の一実施形態に係るセパレータは、前記多孔質層を備えることによって、耐電圧特性に優れるという効果を奏する。
【0026】
前記開口率は、前記多孔質層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定し、画像処理ソフトにより2値化した値から算出した方法によって得られる。具体的には、前記開口率は、実施例に記載の方法によって測定され得る。なお、前記多孔質層の「表面」とは、前記多孔質層における前記多孔質フィルムと接する面と対向する面を、一般的な条件でSEMによって観測した場合に観測可能な範囲を意味する。
【0027】
前記耐電圧特性を向上させる観点から、前記多孔質層は、前記透気度が、ガーレ値で500sec/100mL以下であり、かつ、前記開口率が1%以下であることが好ましく、0.05%以下であることがより好ましい。また、前記開口率は、0%以上であり、好ましくは、0.01%以上である。
【0028】
加えて、前記多孔質層は、前記透気度が、ガーレ値で500sec/100mL以下であることによって、外力に対して変形し易く、当該外力を吸収し易くなっている。本発明の一実施形態に係る前記セパレータは、前記多孔質層を備えるため、非水電解液二次電池において、充放電を繰り返した際に発生する電極の膨張・収縮に対する追従性にも優れる。なお、前記「内部」とは、前記多孔質層において、後述の「表面」に該当する部分以外の部分を意味する。
【0029】
前記追従性の観点から、前記透気度は、ガーレ値で300sec/100mL以下であることが好ましく、200sec/100mL以下であることがより好ましい。また、前記透気度は、ガーレ値で、50sec/100mL以上であることが好ましく、70sec/100mL以上であることがより好ましい。
【0030】
また、前記多孔質層は、表面に緻密な孔構造を備えつつ、その内部には特定の大きさの空隙を有するという構造を備える。よって、前記多孔質層は、前記空隙内に非水電解液を保持することができる。また、前記多孔質層の表面における孔構造が緻密であるため、当該非水電解液は漏れ難い。従って、本発明の一実施形態に係るセパレータは、前記多孔質層を備えることによって、保液性にも優れる。
【0031】
[樹脂]
本発明の一実施形態において、前記多孔質層は、樹脂を含む。前記樹脂は、前記多孔質層が後述のフィラーを含む場合には、前記フィラー同士、前記フィラーと正極もしくは負極、または、前記フィラーと前記多孔質フィルムとを接着させるバインダー樹脂として機能し得る。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記樹脂は、電池の電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。また、前記樹脂は、耐熱性樹脂であることが好ましい。
【0033】
前記樹脂は、特に限定されない。前記樹脂の具体例としては、例えば、ポリオレフィン;(メタ)アクリレート系樹脂;含フッ素樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。また、前記樹脂は1種類でもよく、2種類以上の樹脂の混合物であってもよい。
【0034】
前記樹脂の具体例のうち、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂および水溶性ポリマーが好ましい。ポリアミド系樹脂としては、例えば、芳香族ポリアミド、好ましくは全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)を挙げることができる。ポリエステル系樹脂としては、ポリアリレートおよび液晶ポリエステルが好ましい。含フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が好ましい。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等を挙げることができる。
【0035】
アラミド樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(メタベンズアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(メタフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2-クロロパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、メタフェニレンテレフタルアミド/2,6-ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体、ポリ(4,4’-ジフェニルスルホニルテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/4,4’-ジフェニルスルホニルテレフタルアミド共重合体等が挙げられる。このうち、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)がより好ましい。
【0036】
また、ポリアミド系樹脂としては、アミド結合の一部を、アミド結合以外の結合に置き換えた構造を有する樹脂、すなわち、アミド結合とアミド結合以外の結合とを有するポリアミド系樹脂を使用することもできる。前記アミド結合以外の結合としては特に限定されず、例えば、スルホニル結合、アルケニル結合(例えば、C1~C5のアルケニル結合)、エーテル結合、エステル結合、イミド結合、ケトン結合、スルフィド結合等を挙げることができる。前記アミド結合以外の結合は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0037】
前記ポリアミド系樹脂において、前記アミド結合と前記アミド結合以外の結合との合計数に対して、前記アミド結合が占める割合は、前記多孔質層の耐熱性の観点から、45~85%であることが好ましく、55~75%であることがより好ましい。
【0038】
前記アミド結合以外の結合は、耐高電圧性を備える多孔質層を得る観点から、アミド結合よりも電子吸引性が強い基を含むことが好ましい。アミド結合よりも電子吸引性が強い結合としては、例えば、スルホニル結合、エステル結合等を挙げることができる。
【0039】
前記ポリアミド系樹脂において、前記アミド結合と前記アミド結合以外の結合との合計数に対して、前記アミド結合よりも電子吸引性が強い結合の占める割合は、15~35%がより好ましく、25~35%がさらに好ましい。当該割合は、前記多孔質層の耐高電圧性をより向上させる観点から好ましい。
【0040】
前記アミド結合およびアミド結合以外の結合を備える樹脂として、例えば、ポリアミドおよびポリアミドイミド;ポリアミドまたはポリアミドイミドと、スルホニル結合、エーテル結合およびエステル結合から1種以上選択される結合を備えるポリマーとの共重合体を挙げることができる。前記共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0041】
前記樹脂を構成する前記ポリアミドは、芳香族ポリアミドであることが好ましい。前記芳香族ポリアミドの例としては、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)、半芳香族ポリアミドが挙げられる。前記芳香族ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミドが好ましい。芳香族ポリアミドの例としては、パラアラミド、メタアラミドが挙げられる。
【0042】
前記樹脂を構成する前記ポリアミドイミドは、芳香族ポリアミドイミドであることが好ましい。前記芳香族ポリアミドイミドの例としては、全芳香族ポリアミドイミド、半芳香族ポリアミドイミドが挙げられる。前記芳香族ポリアミドイミドとしては、全芳香族ポリアミドイミドが好ましい。
【0043】
前記スルホニル結合、エーテル結合およびエステル結合から1種以上選択される結合を備えるポリマーとしては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエステル等を挙げることができる。
【0044】
(樹脂の製造方法)
前記樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜用いることができる。
【0045】
例えば、前記樹脂が芳香族ポリアミドである場合、芳香族ジアミンと、芳香族アシルとを、有機溶媒中で反応させることによって製造することができる。
【0046】
前記芳香族ジアミンとしては、例えば、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,6’-ナフタレンジアミン、2-クロロパラフェニレンジアミン、2,6-ジクロロパラフェニレンジアミン等を挙げることができる。このうち、パラフェニレンジアミンがより好ましい。これら芳香族ジアミンは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
前記芳香族アシルとしては、例えば、芳香族酸二ハロゲン化物を挙げることができる。芳香族酸二ハロゲン化物としては、例えば、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ピロメリット酸ジクロライド、1,5-ナフチレンジカルボン酸ジクロライド、3,3’-ビフェニレンジカルボン酸ジクロライド、3,3’-ベンゾフェノンジカルボン酸ジクロライド、3,3’-ジフェニルスルフォンジカルボン酸ジクロライド等が挙げられる。これら芳香族アシルは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
芳香族ポリアミドは、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を溶解させた有機溶媒中で、前記芳香族ジアミンと前記芳香族アシルとを、-20℃~50℃の反応温度で反応(重合)させることによって得ることができる。前記芳香族ジアミンと前記芳香族アシルとのモル比(芳香族ジアミン/反応性基含有化合物)は、1.0~1.1であることが好ましい。また、前記有機溶媒に溶解している前記ハロゲン化物の濃度は、2重量%~10重量%であることが好ましい。
【0049】
前記ハロゲン化物としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属の塩化物が挙げられる。このうち、塩化カルシウムがより好ましい。これら塩化物は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
そして、以下の(1)~(3)を満たすことにより、耐熱性により優れる多孔質層を形成するのに充分な重合度の芳香族重合体を得ることができる。
(1)芳香族ジアミンと芳香族アシルとのモル比(芳香族ジアミン/芳香族アシル)を前記範囲内に調整する。
(2)反応温度を前記範囲内に調整する。
(3)有機溶媒に溶解している塩化物の濃度を前記範囲内に調整する。
【0051】
前記芳香族ジアミンまたは前記芳香族アシルの前記有機溶媒への添加方法は、特に制限されるものではない。例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を溶解させた有機溶媒に芳香族アシルを溶解させ、次いで芳香族ジアミンを添加してもよい。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を溶解させた有機溶媒に芳香族ジアミンを溶解させ、次いで芳香族アシルを添加してもよい。
【0052】
芳香族ジアミンまたは芳香族アシルは、粉末状の固体として添加してもよく、融点以上に維持された融液として添加してもよい。また、有機溶媒に溶解させた溶液として添加してもよく、予めアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物を溶解させた有機溶媒に溶解させた溶液として添加してもよい。
【0053】
芳香族ジアミンまたは芳香族アシルの有機溶媒への添加は、一括で行ってもよく、分割して行ってもよい。
【0054】
前記有機溶媒としては、非プロトン性の極性溶媒、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、ヘキサン、アセトン、トルエン、キシレン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。このうち、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。これら有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
前記有機溶媒は、水分を含んでいても良い。水分を含むことで、分子量や重合組成物の粘度を制御できる。
【0056】
芳香族ジアミンおよび芳香族アシルの合計量に対する前記有機溶媒の使用量、即ち、前記有機溶媒における反応終了時の芳香族ポリアミドの濃度は、1重量%~50重量%に制御することが好ましい。
【0057】
[フィラー]
本発明の一実施形態において、前記多孔質層は、フィラーを含み得る。前記フィラーの含有量は、前記多孔質全体の重量に対して、20重量%以上、80重量%以下であることが好ましく、30重量%以上、70重量%以下であることがより好ましい。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記フィラーを構成する材質は特に限定されない。また、前記フィラーは、1種類の材質からなるフィラーのみから構成させていてもよく、それぞれの構成材質が異なる2種類以上のフィラーから構成されていてもよい。
【0059】
前記フィラーは、無機フィラーまたは有機フィラーであり得る。前記無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライトおよびガラス等の無機物からなるフィラーを挙げることができる。前記無機フィラーとしては、その中でも、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、水酸化アルミニウム、またはベーマイト等の無機酸化物からなるフィラーが好ましく、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナからなるフィラーがより好ましく、アルミナからなるフィラーがさらに好ましい。また、前記有機フィラーとしては、樹脂からなるフィラーが挙げられる。
【0060】
前記フィラーの形状は、例えば、球状、楕円形状、板状、棒状および不定形状であり得、特に限定されない。その中でも、前記フィラーの形状は、球状であることが好ましい。
【0061】
前記フィラーの平均粒子径は、0.01μm以上、10μm以下であることが好ましく、0.02μm以上、5μm以下であることがより好ましい。
【0062】
[多孔質層の物性]
前記多孔質層の厚さは、0.5~15μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。前記厚さが当該範囲内である場合、非水電解液二次電池の破損等による内部短絡の抑制、多孔質層における電解液の保持、レート特性またはサイクル特性の低下抑制等にとって好適である。
【0063】
前記多孔質層の単位面積当たりの重量目付は、多孔質層の強度、膜厚、重量およびハンドリング性を考慮して適宜決定することができる。前記重量目付は、多孔質層一層当たり、0.5~20g/m2であることが好ましく、0.5~10g/m2であることがより好ましい。前記重量目付をこれらの数値範囲とすることにより、非水電解液二次電池の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度を高くすることができる。
【0064】
前記多孔質層の空隙率は、40%以上、80%以下であることが好ましく、50%以上、70%以下であることがより好ましい。前記空隙率が前述の範囲内であることにより、前記セパレータおよび当該セパレータを備える非水電解液二次電池は、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0065】
前記多孔質層が有する細孔の孔径は、1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。細孔の孔径をこれらのサイズとすることにより、前記セパレータおよび当該セパレータを備える非水電解液二次電池は、充分なイオン透過性を得ることができる。
【0066】
前記多孔質層は、前記樹脂および前記フィラー以外のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤およびワックスなどを挙げることができる。また、前記その他の成分の含有量は、多孔質層の全重量に対して、0重量%~10重量%であることが好ましい。
【0067】
[多孔質層の製造方法]
前記多孔質層の製造方法としては、例えば、前記樹脂を溶媒に溶解させることにより塗工液を調製し、当該塗工液を基材上に塗布して塗工層を形成した後、当該塗工層から溶媒を除去して当該多孔質層を形成する方法が挙げられる。前記基材は、例えば、前記多孔質フィルムを挙げることができる。また、前記多孔質層が前記フィラーを含む場合は、前記塗工液として、前記樹脂を溶媒に溶解させると共に、前記フィラーを分散させることにより調製される塗工液を使用することができる。
【0068】
前記溶媒(分散媒)は、多孔質フィルム等の基材に悪影響を及ぼさず、前記樹脂を均一かつ安定に溶解できればよく、前記フィラーを含む場合には、それに併せて、当該フィラーを均一かつ安定に分散させることができればよい。前記溶媒としては、具体的には、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール等の低級アルコール;アセトン、トルエン、キシレン、ヘキサン、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
前記塗工液は、所望の多孔質層を得るのに必要な樹脂固形分(樹脂濃度)等の条件、およびフィラーを含む場合には、当該フィラーの量等の条件を満足することができれば、形成方法は問わない。前記形成方法としては、具体的には、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法等が挙げられる。また、前記フィラーを含む場合には、例えば、スリーワンモーター等の従来公知の分散機を使用して当該フィラーを前記溶媒に分散させてもよい。また、前記塗工液は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記樹脂および前記フィラー以外に、分散剤、可塑剤、界面活性剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0070】
前記塗工液の前記基材への塗布方法は、特に制限されるものではない。例えば、基材の一方の面に多孔質層を形成した後、他方の面に多孔質層を形成する逐次積層方法、基材の両面に多孔質層を同時に形成する同時積層方法等を行うことができる。
【0071】
前記塗工液を基材に塗布する方法は、必要な目付および塗工面積を実現し得る方法であればよい。前記塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法等の従来公知の方法を用い得る。
【0072】
前記多孔質層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、以下の(a)または(b)に示す方法を挙げることができる。
(a)前記塗工層を析出液に浸漬させて、前記塗工層を析出させた後、水洗・乾燥して前記溶媒を除去して、前記多孔質層を形成する方法(以下、「浸漬法」と称する)。
(b)前記塗工層を形成した基材を乾燥させて、前記溶媒を除去することによって前記塗工層を析出させ、前記多孔質層を形成する方法(以下、「乾燥法」と称する)。
【0073】
浸漬法において、前記塗工層を前記析出液に浸漬させる方法は、特に限定されない。前記塗工層および前記基材を、共に前記析出液に浸漬させてもよく、前記塗工層のみを前記析出液に浸漬させてもよい。
【0074】
前記析出液として、前記樹脂を溶解できない溶媒と前記樹脂を溶解し得る有機溶媒との混合液を使用することができる。前記析出液において、前記樹脂を溶解できない溶媒と前記有機溶媒との混合比率を調節することによって、前記樹脂の析出速度を制御することができる。具体的には、前記有機溶媒の混合比率が小さい場合、前記樹脂の析出速度は速くなる。
【0075】
前記樹脂の析出速度が速い場合、前記樹脂は、粒径の小さい微粒子として析出する。前記塗工層が前記析出液に浸漬されている間は、析出した前記微粒子は、前記塗工層の内部に入り込み、前記塗工層の内部において、前記塗工層中に浸透した前記析出液中を流動している。ここで、前記微粒子の一部が、流動中に凝集して粒径の大きな粒子(二次粒子)となる。前記二次粒子は、粒径が大きく堆積し易いため、前記多孔質フィルム上に堆積し、前記多孔質層の内部を形成する。従って、得られる多孔質層の内部は、前記二次粒子によって形成される、ある程度の大きさの空隙を特定量備える構造となる。
【0076】
また、前記浸漬が終了する時点では、前記塗工層には、堆積した前記二次粒子と、凝集することなく、前記塗工層内部を流動している微粒子が存在する。前記浸漬後の水洗・乾燥により、堆積した前記二次粒子によって構成される前記多孔質層の内部の上に、前記微粒子が凝集することなく堆積し、前記多孔質層の表面を形成する。従って、得られる多孔質層の表面は、前記微粒子によって形成される、緻密な孔構造となる。以上のように、前記析出液における前記有機溶媒の混合比率を適度に小さくし、前記樹脂の析出速度を適度に速くすることによって、本発明の一実施形態における多孔質層を製造することができる。
【0077】
前記樹脂を溶解できない溶媒としては、特に限定されず、例えば、水等を挙げることができる。前記有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、NMP等を挙げることができる。前記析出液における前記有機溶媒の混合比率の好適な範囲は、前記樹脂、前記樹脂を溶解できない溶媒および前記有機溶媒の種類によって変動し得る。例えば、前記樹脂がアラミド樹脂、前記樹脂を溶解できない溶媒が水、前記有機溶媒がNMPである場合、前記析出液におけるNMPの混合比率を0~20%に調節することによって、本発明の一実施形態における多孔質層を好適に製造することができる。
【0078】
また、乾燥法において、前記樹脂が析出される速度は、乾燥温度等の乾燥条件を調節することによって制御することができる。具体的には、乾燥温度を高くする等、乾燥条件を激しくする場合、前記樹脂の析出速度は速くなる。また、乾燥法においても、浸漬法と同様に、最初に、前記多孔質層の内部を構成する樹脂が析出し、最後に、前記多孔質層の表面を構成する樹脂が析出する。
【0079】
よって、本発明の一実施形態における多孔質層を製造する方法として、乾燥法において、乾燥温度が低温である等の緩やかな条件下で前記塗工層を乾燥させた後、乾燥温度が高温である等の激しい条件下で前記塗工層を乾燥させる方法を挙げることもできる。
【0080】
前記方法により、得られる多孔質層の内部は、緩やかな条件下の乾燥によって析出される粒径の大きな粒子によって形成される、ある程度の大きさの空隙を特定量備える構造となる。一方、得られる多孔質層の表面は、激しい条件下の乾燥によって析出される粒径の小さな微粒子によって形成される、緻密な孔構造となる。その結果、本発明の一実施形態における多孔質層を好適に製造することができる。
【0081】
前記多孔質層が前記フィラーを含む場合、当該多孔質層において、当該フィラーが、前記樹脂の層間を押し広げることにより、空隙を形成し得る。その場合、前記フィラーの粒径および含有量を制御することによっても、前記多孔質層における空隙の態様を制御することができる。前記フィラーの粒径および含有量が、前記[フィラー]の項に記載した好ましい範囲にあることにより、前記空隙の大きさおよび数(空隙率)を好適な範囲に制御することができ、本発明の一実施形態における多孔質層を好適に製造することができる。
【0082】
[実施形態3:非水電解液二次電池用部材、実施形態4:非水電解液二次電池]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材は、正極と、本発明の一実施形態に係るセパレータと、負極とがこの順で配置されてなる。また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、本発明の一実施形態に係るセパレータを備える。
【0083】
前記非水電解液二次電池用部材は、前記セパレータを備えることによって、非水電解液二次電池において、耐電圧特性に優れるという効果を奏する。前記非水電解液二次電池は、前記セパレータを備えることによって、耐電圧特性に優れるという効果を奏する。
【0084】
前記非水電解液二次電池の製造方法としては、従来公知の製造方法を採用することができる。例えば、正極、前記セパレータおよび負極をこの順で配置することにより前記非水電解液二次電池用部材を形成する。ここで、前記セパレータにおける前記多孔質層は、前記多孔質フィルムと、正極および負極の少なくとも一方と、の間に存在する。次いで、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れる。当該容器内を前記非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉する。これにより、前記非水電解液二次電池を製造することができる。
【0085】
<正極>
本発明の一実施形態における正極は、一般に非水電解液二次電池の正極として使用されるものであれば、特に限定されない。例えば、正極として、正極活物質および結着剤を含む活物質層が正極集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0086】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムイオンまたはナトリウムイオン等の金属イオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料として例えば、V、Mn、Fe、CoおよびNi等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0087】
前記導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0088】
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。
【0089】
前記正極集電体としては、例えば、Al、Niおよびステンレス等の導電体が挙げられる。
【0090】
正極シートの製造方法としては、例えば、正極活物質、導電剤および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法等が挙げられる。
【0091】
<負極>
本発明の一実施形態における負極としては、一般に非水電解液二次電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されない。例えば、負極として、負極活物質および結着剤を含む活物質層が負極集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、前記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0092】
前記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンまたはナトリウムイオン等の金属イオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、例えば、天然黒鉛等の炭素質材料等が挙げられる。
【0093】
前記負極集電体としては、例えば、Cu、Niおよびステンレス等が挙げられる。
【0094】
負極シートの製造方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法等が挙げられる。
【0095】
<非水電解液>
本発明の一実施形態における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であれば特に限定されない。前記非水電解液としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、Li2B10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩およびLiAlCl4等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0096】
非水電解液を構成する有機溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、アミド類、カーバメート類および含硫黄化合物、並びにこれらの有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【実施例0097】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0098】
[各種物性の測定方法]
実施例および比較例における各種物性の測定を、以下の方法によって行った。
【0099】
[膜厚]
セパレータの膜厚を、株式会社ミツトヨ製の高精度デジタル測長機(VL-50)を用いて測定した。
【0100】
[多孔質層の重量目付]
セパレータから、一辺の長さ8cmの正方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルの重量W1(g)を測定した。また、予め、後述の実施例、比較例において使用した多孔質フィルムから、一辺の長さ8cmの正方形をサンプルとして切り取り、当該サンプルの重量W2(g)を測定した。
【0101】
測定されたW1およびW2の値を用いて、下記式(1)に従って、前記多孔質層の重量目付[g/m2]を算出した。
【0102】
多孔質層の重量目付=(W1-W2)/(0.08×0.08)・・式(1)
[多孔質層の透気度]
セパレータおよび多孔質フィルムの透気度(ガーレ値)を、JIS P8117に準拠して測定した。測定されたセパレータおよび多孔質フィルムの透気度を用いて、以下の式(2)に基づき、多孔質層の透気度(ガーレ値)を算出した。
【0103】
多孔質層の透気度(sec/100mL)=(セパレータの透気度)-(多孔質フィルムの透気度)・・式(2)
[多孔質層の空隙率]
多孔質層の構成材料をそれぞれ、a、b、c…、とする。前記構成材料それぞれの質量組成をWa、Wb、Wc…、Wn(g/cm3)とする。前記構成材料それぞれの真密度をda、db、dc…、dn(g/cm3)とする。前記多孔質層の膜厚をt(cm)とする。前記多孔質層の空隙率ε[%]は、これらのパラメータを用いて、以下の式(3)によって算出した。
【0104】
多孔質層の空隙率ε=[1-{(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}]×100・・式(3)
また、フィラーの真密度としては、用いたフィラーの製品情報に記載の密度を用い、樹脂の真密度としては、文献1(野間隆著, 繊維と工業「合成繊維の開発動向」特集 p242,「アラミド繊維の特徴と用途」)に記載の密度を用いた。
【0105】
[セパレータの空隙率]
セパレータの構成材料をそれぞれ、a、b、c…、とする。前記構成材料それぞれの質量組成をWa、Wb、Wc…、Wn(g/cm3)とする。前記構成材料それぞれの真密度をda、db、dc…、dn(g/cm3)とする。前記セパレータの膜厚をt(cm)とする。前記セパレータの空隙率ε[%]は、これらのパラメータを用いて、以下の式(4)によって算出した。
【0106】
セパレータの空隙率ε=[1-{(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}]×100・・式(4)
また、フィラーの真密度としては、用いたフィラーの製品情報に記載の密度を用い、樹脂の真密度としては、文献1(野間隆著, 繊維と工業「合成繊維の開発動向」特集 p242,「アラミド繊維の特徴と用途」)に記載の密度を用いた。ポリエチレンからなるポリオレフィン多孔質フィルムの真密度としては、用いたフィルムの製品情報に記載の密度を用いた。
【0107】
[多孔質層の開口率]
多孔質層の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM、S-4800(日立ハイテク社製))を用いて、加速電圧2kV、作動距離(WD、working distance)=5mm、二次電子像、画像分解能496nm/pixを用いて観測することにより、SEM画像を取得した。なお、前記SEM画像の取得において、オートフォーカス機能、オートコントラスト機能等を用いて画質を調整した。前記SEM画像を対象として、ラトックシステムエンジニアリング社のソフトウェア(3D-BON-FCS 2D粒子解析オプション)を用い、AutoLWにより、前記多孔質層における細孔と固形分部分とが二階調化されてなる画像を取得した。取得された前記画像に基づき、前記多孔質層の表面における開孔数および開口率を算出した。
【0108】
[耐電圧特性]
セパレータに対して、Φ8mmであり、かつ、
図1に示すような凸部の直径がΦ100μm、凸部の高さが800μm、凸部間の距離が200μmの表面凹凸を有する、耐電圧試験機(KIKUSUI製 TOS9200)の円柱型の電極プローブを載せた。続いて、前記電極プローブの上に400gのおもりを載せた。その後、印加速度200mV/secにて加圧し、破壊電圧を測定した。測定された破壊電圧の値を、耐電圧特性の値とした。
【0109】
なお、前記耐電圧試験は、実際の非水電解液二次電池における充放電時における、非水電解液二次電池用セパレータに荷重が加えられながら、電圧が加えられる態様を模したものである。従って、前記耐電圧試験にて測定される耐電圧特性の値が高い場合には、実際の非水電解液二次電池用セパレータの充放電時において、前記多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータの耐電圧特性が良好であることを示す。
【0110】
[合成例]
合成用の容器として、攪拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有する、容量3Lのセパラブルフラスコを使用した。充分に乾燥させた前記セパラブルフラスコに、408.6gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を仕込んだ。この中に、31.4gの塩化カルシウム粉末を加え、100℃に昇温して、当該塩化カルシウム粉末を完全に溶解させ、溶液1を得た。前記塩化カルシウム粉末は、予め200℃にて2時間真空乾燥させたものを用いた。
【0111】
次に、前記セパラブルフラスコ内の溶液1の温度(液温)を室温に戻して、13.2gのパラフェニレンジアミンを加え、当該パラフェニレンジアミンを完全に溶解させ、溶液Aを得た。溶液Aの温度(液温)を20℃±2℃に保ったまま、23.9gのテレフタル酸ジクロライドを、3分割して約10分おきに溶液Aに対して添加して、溶液Bを得た。その後も150rpmの撹拌速度にて攪拌を続けながら、溶液Bの温度を20℃±2℃に保ったまま1時間熟成して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を含むアラミド重合液1を得た。アラミド重合液1に含まれているポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の真密度を、文献1を参照して、1.44g/cm2とした。
【0112】
[実施例1]
100gのアラミド重合液1をフラスコに秤取し、6.0gのアルミナC(日本アエロジル社製、平均粒径0.013μm、真密度:3.27g/cm3)および6.0gのAKP-3000(住友化学社製、平均粒径0.7μm、真密度:3.97g/cm3)を加えた。このとき、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)とアルミナの全量との重量比は、33:67であった。次に、固形分が6.0重量%となるようにNMPを加えて、240分間攪拌した。ここで言う「固形分」とは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)とアルミナとの総重量のことである。次に、0.73gの炭酸カルシウムを加えて240分間攪拌することにより、溶液を中和させ、スラリー状の塗工液1を調製した。
【0113】
塗工液1を8分間静置した。その後、塗工液1を、ポリエチレンからなるポリオレフィン多孔質フィルム(厚さ:11.8μm、透気度:159sec/100mL)上に、ドクターブレード法により塗布した。得られた塗布物1を、イオン交換水に浸漬させ、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を析出させた。次に、塗布物1を70℃のオーブンで乾燥させて、セパレータ1を得た。セパレータ1の各物性を表1に示す。
【0114】
[実施例2]
塗布物を浸漬させた液体がイオン交換水:NMP=20:80(重量比)であること以外は、実施例1と同様の操作を実施し、セパレータ2を得た。セパレータ2の各物性を表1に示す。
【0115】
[実施例3]
塗布物を浸漬させた液体がイオン交換水:NMP=30:70(重量比)であること以外は実施例1と同様の操作を実施し、セパレータ3を得た。セパレータ3の各物性を表1に示す。
【0116】
[比較例1]
塗布物を浸漬させた液体がイオン交換水:NMP=40:60(重量比)であること以外は実施例1と同様の操作を実施し、セパレータ4を得た。セパレータ4の各物性を表1に示す。
【0117】
[比較例2]
塗布物を浸漬させた液体がNMPであること以外は、実施例1と同様の操作を実施した。しかしながら、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)が析出されず、塗布物を得ることができなかった。
【0118】
[比較例3]
塗布物を50℃、相対湿度70%の空気中に1分間静置して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)を析出させ、次いで塗布物1をイオン交換水に浸漬させて、塩化カルシウムおよび溶媒を除去した。この点以外は実施例1と同様の操作を実施し、セパレータ5を得た。セパレータ5の各物性を表1に示す。
【0119】
[結果]
【0120】
【0121】
表1に示すように、セパレータ1~3は、多孔質層の透気度が500sec/100mL以下であり、かつ、開口率が2%以下であった。その結果、耐電圧特性の値は1.9kV以上であった。つまり、セパレータ1~3は、耐電圧特性が良好なセパレータであった。
【0122】
一方、セパレータ4および5は、多孔質層の透気度が500sec/100mL以下であるが、開口率が2%を超えていた。そして、セパレータ4および6は、耐電圧特性の値が1.9kV未満であり、耐電圧特性が良好ではないことが分かった。
【0123】
以上のことから、本発明の一実施形態に係るセパレータは、透気度が500sec/100mL以下であり、かつ、開口率が2%以下の多孔質層を備えることによって、耐電圧特性に優れるという効果を奏することが分かった。