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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148623
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20231005BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231005BHJP
   C09K 5/12 20060101ALI20231005BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C09K5/12 E
H01L23/36 M
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056755
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】行武 初
(72)【発明者】
【氏名】小林 郁恵
(72)【発明者】
【氏名】家村 武志
【テーマコード(参考)】
4J002
5F136
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002DE146
4J002DF016
4J002FD016
4J002GQ01
5F136FA02
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA53
5F136FA63
(57)【要約】
【課題】高い熱伝導性を有するとともに、製造直後の粘度が低粘度であり、適度な硬度を有する硬化物を得ることができる熱伝導性組成物を提供する。
【解決手段】 樹脂組成物と、熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物であって、前記樹脂組成物は、JIS Z8803:2011に準拠して測定される25℃における粘度が20~200,000,000mPa・sである液状シリコーン樹脂と、珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有し、ビニル基を有さないポリシロキサン化合物とを含み、前記液状シリコーン樹脂と、前記ポリシロキサン化合物との質量比率[前記液状シリコーン樹脂/前記ポリシロキサン化合物]が、50/50以上90/10未満であり、前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記樹脂組成物100質量部に対して、300~5,000質量部であり、前記熱伝導性組成物の硬化物のISO22007-2に準拠して測定される熱伝導率が、1.0W/mk以上である、熱伝導性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物と、熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物であって、
前記樹脂組成物は、JIS Z8803:2011に準拠して測定される25℃における粘度が20~200,000,000mPa・sである液状シリコーン樹脂と、珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有し、ビニル基を有さないポリシロキサン化合物とを含み、
前記液状シリコーン樹脂と、前記ポリシロキサン化合物との質量比率[前記液状シリコーン樹脂/前記ポリシロキサン化合物]が、50/50以上90/10未満であり、
前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記樹脂組成物100質量部に対して、300~5,000質量部であり、
前記熱伝導性組成物の硬化物のISO22007-2に準拠して測定される熱伝導率が、1.0W/mk以上である、熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサン化合物が、前記ポリシロキサン化合物を構成する主鎖の一方の末端に2個以上の珪素原子と直接結合していない水酸基を有する、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記ポリシロキサン化合物が、下記一般式(1)で表される、請求項1又は2に記載の熱伝導性組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基であり、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基であり、Rは、炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基、又はフェニル基である。nは5~250であり、mは1~20である。前記R及び前記Rが複数存在する場合、当該複数のR及びRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記Rは、炭素数1~18のアルキル基である、請求項3に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
前記R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基である、請求項3又は4に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
前記液状シリコーン樹脂が、付加反応硬化型シリコーン樹脂、縮合反応硬化型シリコーン樹脂、及び有機過酸化物硬化型シリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記樹脂組成物100質量部に対して、3,000質量部以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
前記液状シリコーン樹脂のJIS Z8803:2011に準拠して測定される25℃における粘度が、10,000,000mPa・s以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項9】
半導体パッケージ用途である、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の熱伝導性組成物を、前記液状シリコーンと、前記ポリシロキサン化合物と、前記熱伝導性フィラーとを混合して得る、熱伝導性組成物の製造方法。
【請求項11】
前記液状シリコーンと、前記ポリシロキサン化合物と、前記熱伝導性フィラーとを混合した後、容器に充填して使用する、熱伝導性組成物の使用方法。
【請求項12】
前記液状シリコーンと、前記ポリシロキサン化合物と、前記熱伝導性フィラーとを、それぞれ単独で容器に充填した後使用する、熱伝導性組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発熱体から熱を取り除くことがさまざまな分野で問題になっている。特に、電子機器、パソコン、自動車用のエンジンコントロールユニット(ECU)や電池など、発熱性の電子部品から熱を取り除くことが重要な問題となっている。最近は発熱部品からの発熱量が大きくなり、そのため熱伝導率の高い放熱材料が熱対策として使われてきている。
【0003】
放熱材料としては、成形用材料としてエラストマーに熱伝導性フィラーが添加された放熱シートや、注型用材料としてシリコーン材料に熱伝導性フィラーを添加して熱伝導率を高めた、ポッティング材と呼ばれるもの等が使われている。これらは比較的熱伝導率が高いため、これらを用いると放熱体の小型化が可能となり、電子部品の小型軽量化が可能となるため、盛んに使用されている。しかしながら、近年の発熱体の発熱量の増加により、さらに熱伝導率の高いものが求められている。
【0004】
これら問題を解決するために従来からさまざまな手法が提案されてきた。例えば、特許文献1には、両末端に珪素原子と直接結合した水酸基を有するポリシロキサンと、両末端にトリアルコキシシリル基を有するポリシロキサンと、チタネート及び/又はジルコネートの群から選択される少なくとも1種の縮合触媒と、熱伝導性充填剤とを含む、多部型縮合硬化性熱伝導性シリコーン接着剤組成物が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、オルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、熱伝導性充填剤として、片末端にアルコキシ基を有するシリコーンにより表面処理したアルミナと窒化アルミニウムを併用した熱伝導性シリコーン組成物及びその硬化物が提案されている。そして、その熱伝導性シリコーン組成物は、5W/mkという高熱伝導性を有することが示されており、付加反応硬化型シリコーン樹脂、縮合反応硬化型シリコーン樹脂、有機過酸化物硬化型シリコーン樹脂、グリース等あらゆる形態のシリコーン樹脂を含む放熱材料が提案されている。
【0006】
また、特許文献3には、片末端にアルコキシ基を有するシリコーン樹脂、あるいは両末端にアルコキシ基を有するシリコーン樹脂により表面処理した各種フィラー含む、付加反応硬化型シリコーン樹脂、縮合反応硬化型シリコーン樹脂、グリース等を含む放熱材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2019-527276号公報
【特許文献2】特開2017-210518号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/230172号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
放熱材料は、高い熱伝導性を有するとともに、成形時及び注型時などの作業性の観点から、製造直後は低粘度であることが求められる。また、同様の観点から、適度な反応速度を有し、保存性に優れることが望ましい。さらに、放熱材料の硬化物は、基板、発熱素子などに荷重を極力かけないよう、硬すぎず適度な硬度を有すること求められる。
【0009】
一方、特許文献1の方法では、熱伝導性充填剤はトリアルコキシシランで前処理がされている。トリアルコキシシランで前処理がされていることで、硬化前の多部型縮合硬化性熱伝導性シリコーン接着剤組成物の粘度を下げることができるが、トリアルコキシシランは架橋剤の役目もあるため、反応が異常に早く、硬化物の硬度が異常に高くなる場合があるという問題があった。
【0010】
特許文献2の方法では、熱伝導性充填剤の表面処理剤として片末端にアルコキシ基を有するシリコーン樹脂を用いており、当該シリコーン樹脂はシラン剤のアルキル基の部分がポリジメチルシロキサン鎖になったものといえる。これを使用することによって、熱伝導性シリコーン組成物の粘度を低下させることができるが、縮合反応硬化型シリコーン樹脂を用いる場合、架橋剤としても作用するため、反応が異常に早くなったり、保存性に劣る、また、硬化物の硬度が異常に高くなる場合があるという問題があった。
【0011】
特許文献3の方法においても特許文献2の方法と同様に、各種フィラー(熱導電性充填剤)の表面処理剤として、アルコキシ基を有するシリコーン樹脂が用いられているため、縮合反応硬化型シリコーン樹脂を用いる場合、反応が異常に早くなったり、保存性に劣る、また、硬化物の硬度が異常に高くなる場合があるという問題があった。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高い熱伝導性を有するとともに、製造直後の粘度が低粘度であり、適度な硬度を有する硬化物を得ることができる熱伝導性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の発明により前記課題を解決できることを見出した。
【0014】
すなわち、本開示は、以下に関する。
[1] 樹脂組成物と、熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物であって、
前記樹脂組成物は、JIS Z8803:2011に準拠して測定される25℃における粘度が20~200,000,000mPa・sである液状シリコーン樹脂と、珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有し、ビニル基を有さないポリシロキサン化合物とを含み、
前記液状シリコーン樹脂と、前記ポリシロキサン化合物との質量比率[前記液状シリコーン樹脂/前記ポリシロキサン化合物]が、50/50以上90/10未満であり、
前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記樹脂組成物100質量部に対して、300~5,000質量部であり、
前記熱伝導性組成物の硬化物のISO22007-2に準拠して測定される熱伝導率が、1.0W/mk以上である、熱伝導性組成物。
[2] 前記ポリシロキサン化合物が、前記ポリシロキサン化合物を構成する主鎖の一方の末端に2個以上の珪素原子と直接結合していない水酸基を有する、上記[1]に記載の熱伝導性組成物。
[3] 前記ポリシロキサン化合物が、下記一般式(1)で表される、上記[1]又は[2]に記載の熱伝導性組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基であり、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基であり、Rは、炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基、又はフェニル基である。nは5~250であり、mは1~20である。前記R及び前記Rが複数存在する場合、当該複数のR及びRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
[4] 前記Rは、炭素数1~18のアルキル基である、上記[3]に記載の熱伝導性組成物。
[5] 前記R及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基である、上記[3]又は[4]に記載の熱伝導性組成物。
[6] 前記液状シリコーン樹脂が、付加反応硬化型シリコーン樹脂、縮合反応硬化型シリコーン樹脂、及び有機過酸化物硬化型シリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
[7] 前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記樹脂組成物100質量部に対して、3,000質量部以下である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
[8] 前記液状シリコーン樹脂の25℃におけるJIS Z8803:2011に準拠して測定される粘度が、10,000,000mPa・s以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
[9] 半導体パッケージ用途である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の熱伝導性組成物。
[10] 上記[1]~[9]のいずれかに記載の熱伝導性組成物を、前記液状シリコーンと、前記ポリシロキサン化合物と、前記熱伝導性フィラーとを混合して得る、熱伝導性組成物の製造方法。
[11] 前記液状シリコーンと、前記ポリシロキサン化合物と、前記熱伝導性フィラーとを混合した後、容器に充填して使用する、熱伝導性組成物の使用方法。
[12] 前記液状シリコーンと、前記ポリシロキサン化合物と、前記熱伝導性フィラーとを、それぞれ単独で容器に充填した後使用する、熱伝導性組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い熱伝導性を有するとともに、製造直後の粘度が低粘度であり、適度な硬度を有する硬化物を得ることができる熱伝導性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書における用語及び表記についての定義を以下に示す。
液状シリコーン樹脂の25℃における粘度とは、JIS Z8803:2011に準拠して、回転粘度計(例えば、東機産業(株)製、商品名:TVB-10、ロータNo.3)を用いて回転速度20rpmの条件で測定した値である。
「珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有し、ビニル基を有さないポリシロキサン化合物」とは、ポリシロキサン化合物を構成する主鎖の一方の末端に、ポリシロキサン化合物が有する珪素原子と直接結合していない少なくとも1個の水酸基を有し、末端だけではなくポリシロキサン化合物を構成する主鎖においてもビニル基を有さない化合物を意味する。
重量平均分子量(Mw)とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
熱伝導性組成物の硬化物の熱伝導率とは、ホットディスク法 熱物性測定装置(京都電子工業株式会社製 商品名 TPS 2500 S)を用いて、ISO22007-2に準拠して測定した値である。
好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
熱伝導性組成物の製造直後の粘度とは、熱伝導性組成物製造から5分後までの粘度を指す。
【0017】
[熱伝導性組成物]
本実施形態の熱伝導性組成物は、樹脂組成物と、熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性組成物であって、前記樹脂組成物は、JIS Z8803:2011に準拠して測定される25℃における粘度が20~200,000,000mPa・sである液状シリコーン樹脂と、珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有し、ビニル基を有さないポリシロキサン化合物とを含み、前記液状シリコーン樹脂と、前記ポリシロキサン化合物との質量比率[前記液状シリコーン樹脂/前記ポリシロキサン化合物]が、50/50以上90/10未満である。そして、前記熱伝導性フィラーの含有量が、前記樹脂組成物100質量部に対して、300~5,000質量部であり、前記熱伝導性組成物の硬化物のISO22007-2に準拠して測定される熱伝導率が、1.0W/mk以上である。
【0018】
本実施形態の熱伝導性組成物が、所定の液状シリコーン樹脂と、所定のポリシロキサン化合物とを含む樹脂組成物を含有することで、製造直後の粘度が低粘度となり、適度な硬度を有する硬化物を得ることができる。
この理由は定かではないが、以下のように考えられる。
珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有するポリシロキサン化合物の水酸基と、熱伝導性フィラーの水酸基が、分子間力や水素結合等の相互作用を生じ、それに伴い熱伝導性フィラー同士の水酸基を介した相互作用が低下するため、樹脂組成物の粘度が下がり、硬度も下がると考えられる。
【0019】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、JIS Z8803:2011に準拠して測定される25℃における粘度が20~200,000,000mPa・sである液状シリコーン樹脂と、珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有し、ビニル基を有さないポリシロキサン化合物とを含む。そして樹脂組成物中の前記液状シリコーン樹脂と、前記ポリシロキサン化合物との質量比率[前記液状シリコーン樹脂/前記ポリシロキサン化合物]が、50/50以上90/10未満である。
【0020】
本実施形態の熱伝導性組成物中の前記樹脂組成物の含有量は、熱伝導性組成物全量に対して好ましくは1.0質量%以上30.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上20.0質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上15質量%以下である。前記液状シリコーン樹脂の含有量が1.0質量%以上であると熱伝導性フィラーを液状樹脂で練り合わせることができ、30.0質量%以下であると高い熱伝導性能を付与することができる。
【0021】
(液状シリコーン樹脂)
本実施形態で用いる液状シリコーン樹脂は、JIS Z8803:2011に準拠して測定される25℃における粘度が20~200,000,000mPa・sである。ここで、液状シリコーン樹脂とは、室温(25℃)で液状又は流動性を有するシリコーン樹脂を意味する。
前記粘度が20mPa・s以上であれば熱安定性に優れ、200,000,000mPa・s以下であれば熱伝導性フィラーを高充填できる。このような観点から、前記粘度は、好ましくは25~20,000,000mPa・s、より好ましくは30~10,000,000mPa・s、さらに好ましくは35~5,000,000mPa・sである。
【0022】
液状シリコーン樹脂は、25℃における粘度が前記範囲内であれば特に限定されず、例えば、オルガノポリシロキサン構造を主鎖とする樹脂が挙げられる。
オルガノポリシロキサン構造を主鎖とする樹脂としては、硬化型シリコーン樹脂、非硬化型シリコーン樹脂が挙げられる。硬化型シリコーン樹脂としては、付加反応硬化型シリコーン樹脂、縮合反応硬化型シリコーン樹脂、有機過酸化物硬化型シリコーン樹脂等がある。硬化型シリコーン樹脂は、熱伝導性フィラーを充填したものを放熱シート及び放熱ゲルとして使用できる。非硬化型シリコーン樹脂とは、ベースポリマーがアルケニル基のような硬化性官能基を持たないオルガノポリシロキサンを言い、非反応性シリコーンオイルとも呼ばれる。最も一般的なものとしてジメチルシリコーンオイルが挙げられ、熱伝導性フィラーを充填したものを放熱グリース及び放熱パテとして使用できる。シリコーンオイルは、アルキル変性シリコーンオイルであってもよい。
なお、本明細書において、シリコーンオイルとは、シリコーン樹脂のうち、比較的重合度が低く、常温(25℃)で油状であるのものを意味する。
【0023】
液状シリコーン樹脂が硬化型シリコーン樹脂の場合、硬化性官能基以外の官能基を有していてもよい。
【0024】
本実施形態において、液状シリコーン樹脂は、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、硬化型シリコーン樹脂が好ましく、すなわち付加反応硬化型シリコーン樹脂、縮合反応硬化型シリコーン樹脂、及び有機過酸化物硬化型シリコーン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
付加反応硬化型シリコーン樹脂(単に付加型シリコーン樹脂とも言う。)は、反応性官能基として含まれるアルケニル基が付加反応を生じることにより硬化する樹脂である。
付加型シリコーン樹脂としては、例えば、分子の末端及び/又は側鎖に、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基を備えたオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0026】
縮合反応硬化型シリコーン樹脂(単に縮合型シリコーン樹脂とも言う。)は、加水分解を経て、縮合反応を生じることにより硬化する樹脂であり、珪素原子と直接結合した水酸基を有するものである。
縮合型シリコーン樹脂としては、例えば、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の加水分解反応及び縮合反応により得られる樹脂が挙げられる。
【0027】
有機過酸化物硬化型シリコーン樹脂(単に過酸化物型シリコーン樹脂とも言う。)は、架橋剤である有機過酸化物から発生したラジカルが、過酸化物型シリコーン樹脂のSi-CH基の水素を引き抜き、生成したSi-CHラジカル同士が結合して架橋反応が進行する樹脂である。
過酸化物型シリコーン樹脂としては、例えば、ジメチルシロキサン等を主たる構成単位として有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0028】
本実施形態においては、液状シリコーン樹脂は特に限定されるものではないが、反応速度の制御の容易性、及び保存性向上の観点から、液状シリコーン樹脂として縮合型シリコーン樹脂を含むことが好ましい。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物中の前記液状シリコーン樹脂と、前記ポリシロキサン化合物との質量比率[前記液状シリコーン樹脂/前記ポリシロキサン化合物]は、液状シリコーン樹脂として付加型シリコーン樹脂及び過酸化物型シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む場合、より適度な硬度を有する硬化物を得ること観点から、好ましくは88/12以下、より好ましくは86/14以下、さらに好ましくは84/16以下であり、製造直後の粘度をより低粘度とする観点から、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは65/35以上である。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物中の前記液状シリコーン樹脂と、前記ポリシロキサン化合物との質量比率[前記液状シリコーン樹脂/前記ポリシロキサン化合物]は、液状シリコーン樹脂として縮合型シリコーン樹脂を含む場合、より適度な硬度を有する硬化物を得ること観点から、好ましくは85/15以下、より好ましくは80/20以下であり、製造直後の粘度をより低粘度とする観点から、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上である。
【0031】
液状シリコーン樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
(ポリシロキサン化合物)
本実施形態のポリシロキサン化合物は、珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有し、ビニル基を有さない。前記ポリシロキサン化合物は、珪素原子と直接結合していない水酸基を末端に少なくとも1個有し、ビニル基を有さなければ、特に限定されるものではないが、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得ること観点から、珪素原子と直接結合していない水酸基を、ポリシロキサン化合物を構成する主鎖の一方の末端に少なくとも2個有することが好ましい。また、同様の観点から、前記ポリシロキサン化合物は、珪素原子と直接結合していない水酸基を少なくとも1個有する末端とは別の他方の末端には、珪素原子と直接結合していない水酸基を有さないことが好ましい。すなわち、前記ポリシロキサン化合物は、ポリシロキサン化合物を構成する主鎖の一方の末端に少なくとも1個の珪素原子と直接結合していない水酸基を有し、他方の末端には珪素原子と直接結合していない水酸基は有さないことが好ましく、主鎖の一方の末端に珪素原子と直接結合していない水酸基を少なくとも2個有し、他方の末端には珪素原子と直接結合していない水酸基は有さないことがより好ましい。
【0033】
ポリシロキサン化合物の重量平均分子量(Mw)は、適度な硬さの硬化物を得る観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、製造直後の粘度を低粘度とする観点、及び熱伝導性フィラーを高充填する観点から、好ましくは20,000以下、より好ましくは18,000以下、さらに好ましくは17,000以下である。
【0034】
本実施形態の一態様において、ポリシロキサン化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0035】
【化2】
【0036】
式(1)中、Rは、炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基であり、R~Rは、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルキル基、又はフェニル基であり、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基であり、Rは、炭素数1~3のアルキル基、ヒドロキシ基、又はフェニル基である。nは5~250であり、mは1~20の整数である。前記R及び前記Rが複数存在する場合、当該複数のR及びRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0037】
は、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、好ましくは炭素数1~18のアルキル基、より好ましくは炭素数1~10のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~5のアルキル基、よりさらに好ましくはブチル基である。
【0038】
~Rは、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1~18のアルキル基、より好ましくは炭素数1~10のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~5のアルキル基、よりさらに好ましくはメチル基である。
【0039】
及びRは、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、それぞれ独立して、好ましくはヒドロキシメチル基、又はヒドロキシエチル基、より好ましくはヒドロキシメチル基である。
【0040】
は、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、より好ましくはエチル基である。
【0041】
nは、液状シリコーン樹脂として付加型シリコーン樹脂及び縮合型シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む場合、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、好ましくは5~80、より好ましくは8~70であり、液状シリコーン樹脂として過酸化物型シリコーン樹脂を含む場合、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、好ましくは50~250、より好ましくは60~230である。
【0042】
mは、液状シリコーン樹脂として付加型シリコーン樹脂及び縮合型シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む場合、製造直後の粘度をより低粘度とし、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。
【0043】
<熱伝導性フィラー>
本実施形態の熱伝導性組成物中の前記熱伝導性フィラーの含有量は、前記樹脂組成物100質量部に対して、300~5,000質量部である。より高い熱伝導性を有する熱伝導性組成物を得る観点から、熱伝導性組成物中の前記熱伝導性フィラーの含有量は、前記樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは500質量部以上、より好ましくは600質量部以上、さらに好ましくは700質量部以上であり、熱伝導性フィラーを液状シリコーン樹脂で均一に練り合わせる観点から、好ましくは4,000質量部以下、より好ましくは3,000質量部以下、さらに好ましくは2,000質量部以下である。
【0044】
本実施形態で用いる熱伝導性フィラーは、電子部品等から発生した熱を系外に伝熱させる機能を有するものであり、例えば、金属、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、金属水酸化物等が挙げられる。熱伝導性フィラーは単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
熱伝導性フィラーは、高熱伝導性及び絶縁性の観点から、金属窒化物、金属酸化物が好ましく、金属窒化物と金属酸化物を併用してもよい。
金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素等が挙げられる。中でも、熱伝導性が高く、樹脂への充填性が高いという観点から、窒化アルミニウムが好ましい。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化鉄等が挙げられる。中でも、熱伝導性が高く、多様な粒度がラインナップされており、金属窒化物との組み合わせの自由度が高いという観点から、アルミナが好ましい。
【0045】
熱伝導性フィラーのレーザー回折散乱法による粒度分布における累積体積50%での粒子径(以下、D50と表記する。)は、熱伝導材料の厚みの調整、及び液状樹脂に熱伝導性フィラーを混練する際のハンドリング性の観点から、好ましくは0.2μm以上200μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上50μm以下である。
なお、熱伝導性フィラーのD50は、粒度分析測定装置により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
(窒化アルミニウム)
窒化アルミニウムは、市販品など公知のものを使用することができる。窒化アルミニウムは、どのような製法で得られたものでもよく、例えば、金属アルミニウム粉と窒素又はアンモニアとを直接反応させる直接窒化法、アルミナを炭素還元しながら窒素又はアンモニア雰囲気下で加熱して同時に窒化反応を行う還元窒化法で得られたものでもよい。
【0047】
窒化アルミニウムの形状は、特に限定されず、例えば、無定形(破砕状)、球形、楕円状、板状(鱗片状)などが挙げられる。
また、窒化アルミニウムのレーザー回折散乱法による粒度分布における累積体積50%での粒子径(D50)は、好ましくは0.2μm以上200μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0048】
窒化アルミニウムは、その表面に珪素含有酸化物被膜を有することが耐湿性向上の観点から好ましい。すなわち、窒化アルミニウムは、表面処理されたものであることが好ましい。珪素含有酸化物被膜は、窒化アルミニウムの表面の一部を覆っていてもよく、全部を覆っていてもよいが、窒化アルミニウムの表面の全部を覆っていることが好ましい。
窒化アルミニウムは熱伝導性に優れるため、表面に珪素含有酸化物被膜を有する窒化アルミニウム(以下、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムともいう)も熱伝導性に優れる。
珪素含有酸化物被膜および珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子の「珪素含有酸化物」としては、シリカ、並びに珪素およびアルミニウムを含む酸化物が挙げられる。
【0049】
珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムは、窒化アルミニウムの表面を覆う珪素含有酸化物被膜のLEIS分析による被覆率が、好ましくは70%以上100%以下であり、より好ましくは70%以上95%以下であり、さらに好ましくは72%以上90%以下であり、特に好ましくは74%以上85%以下である。前記被覆率が70%以上100%以下であると、より耐湿性に優れる。また、95%を超えると熱伝導率が低下する場合がある。
【0050】
窒化アルミニウムの表面を覆う珪素含有酸化物被膜(SiO)のLEIS(Low Energy Ion Scattering)分析による被覆率(%)は、下記式で求められる。
(SAl(AlN)-SAl(AlN+SiO))/SAl(AlN)×100
上記式中、SAl(AlN)は、窒化アルミニウムのAlピークの面積であり、SAl(AlN+SiO)は、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムのAlピークの面積である。Alピークの面積は、イオン源と希ガスとをプローブにする測定方法である低エネルギーイオン散乱(LEIS)による分析から求めることができる。LEISは、数keVの希ガスを入射イオンとする分析手法で、最表面の組成分析を可能とする評価手法である(参考文献:The TRC News 201610-04(October2016))。
【0051】
窒化アルミニウムの表面に珪素含有酸化物被膜を形成する方法としては、例えば、窒化アルミニウムの表面を、下記式(2)で表される構造を含むシロキサン化合物により覆う第1工程と、シロキサン化合物により覆われた窒化アルミニウムを300℃以上800℃以下の温度で加熱する第2工程とを有する方法が挙げられる。
【0052】
【化3】
【0053】
式(2)中、Rは炭素数が4以下のアルキル基である。
【0054】
式(2)で表される構造は、Si-H結合を有するハイドロジェンシロキサン構造単位である。式(2)中、Rは炭素数が4以下のアルキル基、すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基又はt-ブチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0055】
前記シロキサン化合物としては、式(2)で表される構造を繰り返し単位として含むオリゴマー又はポリマーが好ましい。また、前記シロキサン化合物は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。前記シロキサン化合物の重量平均分子量は、均一な膜厚の珪素含有酸化物被膜の形成容易性の観点から、好ましくは100~2000であり、より好ましくは150~1000であり、さらに好ましくは180~500である。なお、前記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値とする。
【0056】
前記シロキサン化合物としては、下記式(3)で表される化合物及び/又は下記式(4)で表される化合物が好適に用いられる。
【0057】
【化4】
【0058】
式(3)中、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であり、R10及びR11の少なくともいずれかは水素原子である。lは0~10の整数であり、好ましくは1~5、より好ましくは1である。
【0059】
【化5】
【0060】
式(4)中、kは3~6の整数であり、好ましくは3~5、より好ましくは4である。
【0061】
前記シロキサン化合物としては、良好な珪素含有酸化物被膜の形成容易性の観点から、特に、式(4)においてnが4である環状ハイドロジェンシロキサンオリゴマーが好ましい。
【0062】
第1工程では、前記窒化アルミニウムの表面を、前記式(2)で示される構造を含むシロキサン化合物により覆う。
第1工程では、上記窒化アルミニウムの表面を、前記式(2)で示される構造を含むシロキサン化合物により覆うことができれば、特に方法は限定されない。第1工程の方法としては、一般的な粉体混合装置を用いて、原料の窒化アルミニウムを撹拌しながら前記シロキサン化合物を噴霧などで添加して、乾式混合することで被覆する乾式混合法などが挙げられる。
前記粉体混合装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)、容器回転型のVブレンダー、ダブルコーン型ブレンダーなど、混合羽根を有するリボンブレンダー、スクリュー型ブレンダー、密閉型ロータリーキルン、マグネットカップリングを用いた密閉容器の撹拌子による撹拌などが挙げられる。温度条件は、特に限定されないが、好ましくは10℃以上200℃以下であり、より好ましくは20℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは40℃以上100℃以下の範囲である。
【0063】
また、前記シロキサン化合物の蒸気単独もしくは窒素ガスなどの不活性ガスとの混合ガスを、静置した窒化アルミニウム表面に付着又は蒸着させる気相吸着法を用いることもできる。温度条件は、特に限定されないが、好ましくは10℃以上200℃以下であり、より好ましくは20℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは40℃以上100℃以下の範囲である。さらに必要な場合には、系内を加圧あるいは減圧させることもできる。この場合に使用できる装置としては、密閉系、且つ、系内の気体を容易に置換できる装置が好ましく、例えば、ガラス容器、デシケーター、CVD装置などを使用できる。
【0064】
前記シロキサン化合物の第1工程での使用量は、特に限定されない。第1工程で得られる、前記シロキサン化合物により覆われた窒化アルミニウムにおいて、前記シロキサン化合物の被覆量が、窒化アルミニウムのBET法から求めた比表面積(m/g)から算出した表面積1m当たり0.1mg以上1.0mg以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mg以上0.8mg以下の範囲であり、さらに好ましくは0.3mg以上0.6mg以下の範囲である。前記シロキサン化合物の被覆量が前記範囲内であると均一な膜厚の珪素含有酸化物被膜を有する窒化アルミニウムを得ることができる。
なお、前記窒化アルミニウムのBET法から求めた比表面積(m/g)から算出した表面積1m当たりの、前記シロキサン化合物の被覆量は、シロキサン化合物で被覆する前後の窒化アルミニウムの質量差を、窒化アルミニウムのBET法から求めた比表面積(m/g)から算出した表面積(m)で除すことで求めることができる。
【0065】
なお、BET法から求める比表面積は、ガス流動法による窒素吸着BET1点法から測定することができる。評価装置としては、Mountech社製Macsorb HM model-1210を用いることができる。
【0066】
第2工程では、第1工程で得られたシロキサン化合物により覆われた窒化アルミニウムを、300℃以上850℃以下の温度で加熱する。これにより、窒化アルミニウム表面に珪素含有酸化物被膜を形成することができる。加熱温度は、より好ましくは400℃以上であり、さらに好ましくは500℃以上である。
【0067】
加熱時間は、十分な反応時間を確保し、また、良好な珪素含有酸化物被膜の形成を効率的に行う観点から、30分以上6時間以下が好ましく、より好ましくは45分以上4時間以下であり、さらに好ましくは1時間以上2時間以下の範囲である。
前記加熱処理時の雰囲気は、酸素ガスを含む雰囲気下、例えば大気中(空気中)で行うことが好ましい。
【0068】
第2工程の熱処理後に、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウム粒子同士が、部分的に融着することがあるが、このような場合には、例えば、ローラーミル、ハンマーミル、ジェットミル、ボールミル等の一般的な粉砕機を用いて解砕し、固着及び凝集のない珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムを得ることができる。
【0069】
また、第2工程終了後に、さらに、第1工程及び第2工程を順に行ってもよい。すなわち、第1工程及び第2工程を順に行う工程を、繰り返し実行してもよい。
【0070】
(アルミナ)
アルミナは、熱伝導性を有し且つ耐湿性に優れる。アルミナは、α-アルミナ(α-Al)が好ましい。α-アルミナ以外に、γ-アルミナ、θ-アルミナ、δ-アルミナ等が含まれていてもよい。
アルミナは、市販品など公知のものを使用することができる。市販品など公知のアルミナは、粒径及び形状などの種類が豊富で最適なものを選択でき、また、安価である。
アルミナの製法は、どのような製法で得られたものでもよく、例えば、アンモニウムミョウバンの熱分解法、アンモニウムアルミニウム炭酸塩の熱分解法、アルミニウムの水中火花放電法、気相酸化法、及びアルミニウムアルコキシドの加水分解法などで得られたものでもよい。
【0071】
アルミナの形状は、特に限定されず、例えば、無定形(破砕状)、球形、丸み状、多面体状などが挙げられる。
また、アルミナのレーザー回折散乱法による粒度分布における累積体積50%での粒子径(D50)は、特に限定されないが、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0072】
例えば、アルミナの場合は、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、表面処理が施されることが好ましい。表面処理の方法としては、例えば、シランカップリング剤を用いてアルミナの表面処理をする方法が挙げられる。シランカップリング剤は、例えば、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシランが好ましく、デシルトリメトキシシランがより好ましい。
シランカップリング剤は単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
【0073】
シランカップリング剤の使用量は、アルミナ100質量部に対して好ましくは0.01質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは0.02質量部以上5質量部以下である。シランカップリング剤を前記範囲内で使用することにより、アルミナの表面処理を十分に行うことができる。
【0074】
アルミナのシランカップリング剤処理の代表的な方法としては、一般的な粉体混合装置を用いて、原料のアルミナを撹拌しながら前記シランカップリング剤を噴霧などで添加して、乾式混合する方法がある。
前記粉体混合装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)、スパルタンリューザー(ダルトン(株)製)が挙げられる。
【0075】
前記アルミナのシランカップリング剤処理では混合後、温度100~140℃で1~5時間加熱処理を行うことが好ましく、温度110~130℃で2~4時間加熱処理を行うことがより好ましい。
【0076】
前記熱伝導性フィラー中に含まれる窒化アルミニウム及びアルミナの合計含有量は、熱伝導性を高める観点から、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0077】
前記熱伝導性フィラーは、粒径の異なるものを用いてもよい。例えば、粒径の小さいアルミナ(例えばD50が0.1μm以上50μm以下)とアルミナよりも粒径の大きい窒化アルミニウム(例えばD50が10μm以上100μm以下)とで構成することにより、熱伝導性組成物中の熱伝導性粉末充填量(質量%)を多くすることができるため、熱伝導性組成物の熱伝導率をより高くすることができる。
【0078】
前記熱伝導性フィラーの含有量は、本実施形態の熱伝導性組成物全量に対して好ましくは70.0質量%以上99.0質量%以下、より好ましくは75.0質量%以上99.0質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上98質量%以下である。前記熱伝導性粉末の含有量が70.0質量%以上であると熱伝導性組成物の熱伝導性を高めることができ、99.0質量%以下であると熱伝導性フィラーを液状シリコーン樹脂で練り合わせることができる。
【0079】
本実施形態の熱伝導性組成物は、以上の各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、架橋剤、反応促進剤、遅延剤、耐熱剤、難燃剤、顔料、可撓剤、無機イオン捕捉剤、顔料、染料、希釈剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0080】
熱伝導性組成物中の添加剤の含有量は、本実施形態の樹脂組成物100質量部に対して好ましくは0質量部以上200質量部以下である。
熱伝導性組成物中の添加剤の含有量は、本実施形態の熱伝導性組成物全量に対して好ましくは0質量%以上20質量%以下である。
【0081】
<架橋剤>
本実施形態の熱伝導性組成物は、より適度な硬度を有する硬化物を得る観点から、架橋剤を含んでもよい。
架橋剤としては、液状シリコーン樹脂が付加型シリコーン樹脂を含む場合、珪素-水素結合を有するポリジメチルハイドロシロキサン等が挙げられ、液状シリコーン樹脂が縮合型シリコーン樹脂を含む場合、アルコキシ基を2個以上有するシランカップリング剤に代表されるトリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の熱伝導性組成物は、液状シリコーン樹脂が縮合型シリコーン樹脂を含む場合、架橋剤を含むことが好ましい。
【0082】
液状シリコーン樹脂が付加型シリコーン樹脂を含む場合、下記式(5)で表される付加型シリコーン樹脂と、下記式(6)で表される架橋剤とを併用することが好ましい。
【0083】
【化6】
【0084】
式(5)中、R12及びR19は、それぞれ独立して、アルケニル基であり、好ましくはビニル基、又はアリル基である。
13~R18は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、又はフェニル基であり、好ましくはメチル基である。
oは、10~1,000の整数である。
【0085】
【化7】
【0086】
式(6)中、R20及びR21は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基であり、より好ましくはメチル基である。
pは、0~1,000であり、qは0~100であり、p/qは0~100であることが好ましい。
【0087】
液状シリコーン樹脂が縮合型シリコーン樹脂を含む場合、下記式(7)で表される縮合型シリコーン樹脂と、架橋剤として、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシラン、ジアルコキシシラン、両末端トリアルコキシアルケン、アルキルトリアセトキシシラン、アルケニルトリアセトキシシラン、両末端アルコキシ基シリコーン、片末端アルコキシ基シリコーン、並びに上記化合物の部分加水分解物と、上記化合物とは異なる二種以上の加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1種を併用することが好ましい。
【0088】
【化8】
【0089】
式(7)中、R22~R27は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、又はフェニル基であり、好ましくはメチル基又はフェニル基である。
rは、10~500である。
【0090】
液状シリコーン樹脂が過酸化物型シリコーン樹脂を含む場合、下記式(8)で表される液状シリコーン樹脂と、架橋剤として、有機過酸化物を併用することが好ましい。
【0091】
【化9】
【0092】
式(8)中、R28及びR35は、それぞれ独立して、炭素1~8のアルキル基、アルケニル基又は水酸基であり、好ましくはアルケニル基、より好ましくはビニル基である。
29~R34は、メチル基又はフェニル基であり、好ましくはメチル基である。
sは、600~3000である。
【0093】
前記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-ビス(2,5-t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン等が挙げられる。
これらの中でも、押し出し加工の可能性の観点から、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、及びo-メチルベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
【0094】
熱伝導性組成物中の架橋剤の含有量は、本実施形態の熱伝導性組成物全量に対して好ましくは0.001質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0095】
<反応促進剤>
本実施形態の熱伝導性組成物は、反応促進剤を含んでもよい。
液状シリコーン樹脂が、付加型シリコーン樹脂を含む場合、反応促進剤としては、例えば、白金触媒等が挙げられる。白金触媒としては、例えば、塩化白金酸、アルコール変性白金、シロキサン変性白金等が挙げられる。
液状シリコーン樹脂が、縮合型シリコーン樹脂を含む場合、反応促進剤としては、例えば、有機金属化合物、第三アミン化合物等が挙げられる。有機金属化合物としては、例えば、有機錫化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルルコニウム化合物、有機ビスマス化合物、有機タングステン化合物、有機モリブデン化合物、有機コバルト酸化合物、有機亜鉛化合物、有機カリウム化合物、有機鉄化合物等が挙げられる。
液状シリコーン樹脂が、過酸化物型シリコーン樹脂を含む場合、反応促進剤としては、例えば、アミン化合物、有機コバルト酸等が挙げられる。
反応促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
反応促進剤は、反応機構に適切な化合物及びその量を選択することが好ましい。
【0096】
熱伝導性組成物中の反応促進剤の含有量は、本実施形態の樹脂組成物100質量部に対して好ましくは0質量部以上1質量部以下である。
熱伝導性組成物中の反応促進剤の含有量は、本実施形態の熱伝導性組成物全量に対して好ましくは0質量%以上1質量%以下である。
【0097】
<遅延剤>
本実施形態の熱伝導性組成物は、遅延剤を含んでもよい。
液状シリコーン樹脂が、付加型シリコーン樹脂を含む場合、遅延剤としては、例えば、アセチレンアルコール等が挙げられる。アセチレンアルコールの具体例としては、例えば、2-メチル-3-ブチン-2-オール、エチニルシクロヘキサノール等が挙げられる。
液状シリコーン樹脂が、縮合型シリコーン樹脂を含む場合、遅延剤としては、例えば、低分子量であり、かつ両末端に水酸基を有するシロキサン等が挙げられる。
液状シリコーン樹脂が、過酸化物型シリコーン樹脂を含む場合、遅延剤としては、例えば、ハイドロキノン類が挙げられる。ハイドロキノン類の具体例としては、例えば、4-tert-ブチルフェノール等が挙げられる。
反応促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
反応促進剤は、反応機構に適切な化合物及びその量を選択することが好ましい。
【0098】
熱伝導性組成物中の遅延剤の含有量は、本実施形態の樹脂組成物100質量部に対して好ましくは0質量部以上5質量部以下である。
熱伝導性組成物中の遅延剤の含有量は、本実施形態の熱伝導性組成物全量に対して好ましくは0質量%以上1質量%以下である。
【0099】
本実施形態の熱伝導性組成物の製造直後の粘度は、好ましく50Pa・s以上2,000Pa・s以下であり、より好ましくは100Pa・s以上1,500Pa・s以下であり、さらに好ましくは150Pa・s以上1,000a・s以下である。
前記粘度は、フロー粘度計を用いてJIS K7210:2014に準拠した方法で測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0100】
本実施形態の熱伝導性組成物の稠度は、好ましくは250以上400以下であり、より好ましくは260以上350以下である。
なお、本明細書において稠度とは、熱伝導性組成物の柔らかさを示す指標であり、値が大きい程、熱伝導性組成物が柔らかい、すなわち粘度が低いことを示す。
前記稠度は、JIS K2220:2013に準拠した方法で測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0101】
[熱伝導性組成物の製造方法]
熱伝導性組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、前記液状シリコーン樹脂、前記ポリシロキサンと、前記熱伝導性フィラー、必要に応じて配合される各種添加剤を一括又は分割して、分散・溶解装置へ供給し、必要に応じて加熱しながら混合、溶解、混練することで得ることができる。分散・溶解装置としては、例えば、らいかい器、プラネタリーミキサー、自転・公転ミキサー、ニーダー、ロールミル等が挙げられる。
【0102】
[熱伝導性組成物の硬化物]
本実施形態の熱伝導性組成物の硬化物のISO22007-2に準拠して測定される熱伝導率は、1.0W/mK以上である。発熱体からより熱を取り除く観点から、熱伝導率は、好ましくは3W/mK以上、より好ましくは5.0W/mK以上、さらに好ましくは12W/mK以上であり、粘度すなわち塗布性、加工性の観点から、好ましくは12W/mK以下、より好ましくは10W/mK以下、さらに好ましくは8W/mK以下である。
【0103】
本実施形態の熱伝導性組成物が、付加型シリコーン樹脂を含む場合、熱伝導性組成物の硬化物は、 JIS K7312:1996の硬さ試験(タイプC)に準拠して測定したC硬度が、好ましくは20以上75以下であり、より好ましくは25以上70以下であり、さらに好ましくは30以上65以下である。前記C硬度が前記範囲内であると適度な硬さを有する硬化物とすることができる。
前記C硬度は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、当該C硬度の測定用の硬化物は、付加型シリコーン樹脂を含んでいる実施例に記載の方法により作製することができる。
【0104】
本実施形態の熱伝導性組成物が、縮合型シリコーン樹脂を含む場合、又は過酸化物型シリコーン樹脂を含む場合、熱伝導性組成物の硬化物は、 JIS K7312:1996の硬さ試験(タイプA)に準拠して測定したA硬度が、好ましくは20以上100以下であり、より好ましくは25以上97以下であり、さらに好ましくは30以上95以下である。前記A硬度が前記範囲内であると適度な硬さを有する硬化物とすることができる。
前記A硬度は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、縮合型シリコーン樹脂を含む熱伝導性組成物における、前記A硬度測定用の硬化物は、縮合型シリコーン樹脂を含んでいる実施例に記載の方法により作製することができる。
また、過酸化物型シリコーン樹脂を含む熱伝導性組成物における、前記A硬度測定用の硬化物は、過酸化物型シリコーン樹脂を含んでいる実施例に記載の方法により作製することができる。
【0105】
[熱伝導性組成物の硬化物の製造方法]
本実施形態の熱伝導性組成物の硬化物は、例えば、熱伝導性組成物を、室温(25℃)、加熱、又は湿気により硬化させることで硬化物を得ることができる。
液状シリコーン樹脂が付加型シリコーン樹脂を含む場合、例えば、室温(25℃)又は加熱により反応させることで硬化物を得ることができる。前記熱伝導性組成物を加熱により硬化させる場合、該加熱は、温度50℃以上150℃以下で、5分間以上2時間以下の条件で行うことが好ましく、温度60℃以上120℃以下で、10分間以上1時間以下の条件で行うことがより好ましい。
【0106】
液状シリコーン樹脂が縮合型シリコーン樹脂を含む場合、例えば、室温(25℃)又は加熱により反応させることで硬化物を得ることができる。前記熱伝導性組成物を加熱により硬化させる場合、該加熱は、温度50℃以上150℃以下で、5分間以上2時間以下の条件で行うことが好ましく、温度60℃以上120℃以下で、10分間以上1時間以下の条件で行うことがより好ましい。
【0107】
液状シリコーン樹脂が過酸化物型シリコーン樹脂を含む場合、例えば、室温(25℃)又は加熱により反応させることで硬化物を得ることができる。前記熱伝導性組成物を加熱により硬化させる場合、温度50℃以上150℃以下、好ましくは温度60℃以上120℃以下、5分間以上2時間以下、好ましくは10分間以上1時間以下の条件で一次加硫し、続いて、温度100℃以上250℃以下、好ましくは150℃以上230℃以下、1時間以上10時間以下、好ましくは2時間以上6時間以下の条件で二次加硫して行うことが好ましい。なお、一次加硫の際には、圧力0.1~1.0MPaの条件で行うことが好ましい。
【0108】
[熱伝導性組成物の使用方法]
本実施形態の一態様において、本実施形態の熱伝導性組成物は、前記液状シリコーンと、前記ポリシロキサン化合物と、前記熱伝導性フィラーとを混合した後、容器に充填して使用してもよい。
本実施形態の他の態様において、本実施形態の熱伝導性組成物は、前記液状シリコーンと、前記ポリシロキサン化合物と、前記熱伝導性フィラーとを、それぞれ単独で容器に充填した後使用してもよい。
【0109】
本実施形態の熱伝導性組成物は、製造直後の粘度が低粘度であり、適度な硬度を有する硬化物を得ることができるため、電子機器、パソコン、自動車用のECUや電池等、発熱性の電子部品に好適に用いることができ、特に半導体パッケージ用途に好適である。
【実施例0110】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0111】
[原料化合物]
製造例A-1~A-4、製造例B-1及びB-2、実施例1~14、並びに比較例1~20で使用した原料化合物の詳細は、以下のとおりである。
【0112】
(金属酸化物(熱伝導性フィラー))
・フィラーA-1(アルミナ):AES-12、住友化学株式会社製、平均粒径:0.5μm、比表面積(BET法):5.8m/g
・フィラーA-2(アルミナ):BAK-5、上海百図株式会社製、平均粒径:5μm、比表面積(BET法):0.36m/g
・フィラーA-3(アルミナ):高純度アルミナ AKP-30、住友化学株式会社製、平均粒径:0.3μm、比表面積(BET法):7.0m/g
・フィラーA-4(アルミナ)アドバンストアルミナ AA-03、住友化学株式会社製、平均粒径:3.0μm、比表面積(BET法):0.5m/g
・フィラーA-5(アルミナ):アルミナ AL45H、昭和電工株式会社製、平均粒径:3.0μm、比表面積(BET法):1.2m/g
・フィラーA-6(アルミナ):丸み状アルミナ AS-05、昭和電工株式会社製、平均粒径:45μm、比表面積(BET法):0.1m/g
【0113】
(アルコキシシラン)
・アルコキシシラン1:KBM-3103C(デシルトリメトキシシラン)、信越化学工業株式会社製
・アルコキシシラン2:Dynasylan(R)9116(ヘキサデシルトリメトキシシラン)、エボニックジャパン社
【0114】
(金属窒化物(熱伝導性フィラー))
・フィラーB-1(窒化アルミニウム):トーヤルナイト TFZ-S60X、東洋アルミニウム株式会社製、平均粒径:55μm、比表面積(BET法):0.1m/g、粉砕状
・フィラーB-2(窒化アルミニウム):トーヤルナイト TFZ-N15P、東洋アルミニウム株式会社製、平均粒径:15μm、比表面積(BET法):0.9m/g、粉砕状
フィラーB-3(窒化アルミニウム):FAN-f80-A1、古河電子株式会社製、平均粒径:76μm、比表面積(BET法):0.05m/g、顆粒状
【0115】
(シロキサン化合物)
・シロキサン化合物1(D4H):1,3,5、7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、東京化成工業株式会社
【0116】
(液状シリコーン樹脂)
・付加型シリコーン樹脂1:DOWSILTM EG-3100(ビニル基含有ジメチルシリコーンゴム)、ダウ・東レ株式会社製、25℃における粘度:320mPa・s
・縮合型シリコーン樹脂1:XP1465(両末端水酸基ポリシロキサン)、JNC株式会社製、重量平均分子量:14,000、25℃における粘度:230mPa・s
・縮合型シリコーン樹脂2:FM-9915(両末端水酸基ポリシロキサン)、JNC株式会社製、重量平均分子量:3700、25℃における粘度:63mPa・s
・過酸化物型シリコーン樹脂1:TSE201、モメンティブ社製、重量平均分子量:800,000、25℃における粘度:1,000,000mPa・s以上3,000,000mPa・s以下
【0117】
(ポリシロキサン化合物)
・ポリシロキサン化合物1:下記式(9)で表される化合物(末端ジオールポリシロキサン、下記式(9)のnは5~250)、重量平均分子量:5,000、25℃における粘度:80~160mPa・s
【化10】

・ポリシロキサン化合物2:上記式(9)で表される化合物(末端ジオールポリシロキサン、上記式(9)のnは5~250)、重量平均分子量:15,000、25℃における粘度:300~700mPa・s
・ポリシロキサン化合物3:KF96-100cs(ジメチルシリコーンオイル、末端に水酸基を有しない)、信越化学工業株式会社、重量平均分子量:6000、25℃における粘度:96.5mPa・s
・ポリシロキサン化合物4:KF96-500cs(ジメチルシリコーンオイル、末端に水酸基を有しない)、信越化学工業株式会社、重量平均分子量:17300、25℃における粘度:96.5mPa・s
【0118】
(架橋剤)
・架橋剤1:TSL8123N(メチルトリエトキシシラン)、モメンティブ社製
・架橋剤2:HTS―M(ヘキシルトリメトキシシラン)、JNC株式会社製
【0119】
(可塑剤)
・可塑剤1:TSF458―50(ポリジメチルシロキサン)、モメンティブ社製、粘度50mPa・s
【0120】
(触媒)
・触媒1:ネオスタンS-1(アルキルスズ塩とシリケートの反応物)、日東化成株式会社製
・触媒2:オルガチックスTC-100(チタンアセチルアセトネート)、マツモトファインケミカル株式会社
【0121】
(有機過酸化物)
・加硫剤(硬化剤):TC-1(ベンゾイルパーオキサイド)、モメンティブ社製
(添加剤)
・KN320(四酸化三鉄、顔料)、戸田工業株式会社製
【0122】
[熱伝導性フィラーの表面処理]
金属酸化物である熱伝導性フィラー(フィラーA―1~A-4)、及び金属窒化物である熱導電性フィラー(フィラーB―1~A-4)について、表面処理を行った。
なお、前記金属酸化物及び前記金属窒化物の平均粒径及び比表面積は、下記の測定方法により測定した。
(1)平均粒径
レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:MT3300EXII)を用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径(50%粒径D50)から求めた。
なお、本明細書において、「体積累積粒径D50」とは、ある粒度分布に対して体積累計の積算値が50%となる粒径を示しており、前記レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した粒度分布において積算体積が50%となる粒径(50%粒径D50)から求めた値である。
【0123】
(2)比表面積
比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、商品名:Macsorb MS30)を用いて、窒素吸着によるBET 1点法により測定した。
【0124】
<金属酸化物の表面処理>
金属酸化物の表面処理を、下記製造例A-1~A-4にて行った。
【0125】
(製造例A-1)
フィラーA-1 100質量部に、フィラーA-1の比表面積を乗じてアルコキシシラン1の最小被覆面積(298m/g)で除した値(1.95質量部)をアルコキシシラン1の含有量として計量し加え、エタノールをフィラーA-1 100質量部に対して5質量部添加し、さらに水をフィラーA-1 100質量部にフィラー1の比表面積を乗じてアルコキシシラン1の最小被覆面積で除した値の半分の量(0.97質量部)を添加し薬剤とし、フィラーA-1に添加し、自転・公転混合ミキサー(株式会社シンキー製、商品名:ARV-310P)にて、回転数1000rpmで30秒間、撹拌混合した後ほぐす操作を4回繰り返し、一旦風乾した。次に、熱風循環オーブン中で、温度120℃で2時間加熱しその後冷却し、アルコキシシラン1により表面処理された処理フィラーA-1を得た。
【0126】
(製造例A-2)
製造例A-1において、フィラーA-1の代わりにフィラーA-2を用い、フィラーA-2 100質量部に、フィラーA-2の比表面積を乗じてアルコキシシラン1の最小被覆面積(298m/g)で除した値(0.12質量部)をアルコキシシラン1の含有量として計量し加え、エタノールをフィラーA-2 100質量部に対して5質量部添加し、さらに水をフィラーA-2 100質量部にフィラー2の比表面積を乗じてアルコキシシラン1の最小被覆面積で除した値の半分の量(0.06質量部)を添加し薬剤とし、フィラーA-2に添加したこと以外は同様の操作にて、アルコキシシラン1により表面処理された処理フィラーA-2を得た。
【0127】
(製造例A-3)
フィラーA-3 100質量部に、フィラーA-3の比表面積を乗じてアルコキシシラン2の最小被覆面積(226m/g)で除した値(3.10質量部)をアルコキシシラン2の含有量として計量し加え、エタノールをフィラーA-3 100質量部に対して5質量部添加し、さらに水をフィラーA-3 100質量部にフィラーA-3の比表面積を乗じてアルコキシシラン2の最小被覆面積で除した値の半分の量(1.55質量部)を添加し薬剤とし、フィラーA-3に添加し、自転・公転混合ミキサー(株式会社シンキー製、商品名:ARV-310P)にて、回転数1000rpmで30秒間、撹拌混合した後ほぐす操作を4回繰り返し、一旦風乾した。次に、熱風循環オーブン中で、温度120℃で2時間加熱しその後冷却し、アルコキシシラン2により表面処理された処理フィラーA-3を得た。
【0128】
(製造例A-4)
製造例A-3において、フィラーA-3の代わりにフィラーA-4を用い、フィラーA-4 100質量部に、フィラーA-4の比表面積を乗じてアルコキシシラン2の最小被覆面積(226m/g)で除した値(0.22質量部)をアルコキシシラン2の含有量として計量し加え、エタノールをフィラーA-4 100質量部に対して5質量部添加し、さらに水をフィラーA-4 100質量部にフィラーA-4の比表面積を乗じてアルコキシシラン2の最小被覆面積で除した値の半分の量(0.11質量部)を添加し薬剤とし、フィラーA-4に添加したこと以外は同様の操作にて、アルコキシシラン2により表面処理された処理フィラーA-4を得た。
【0129】
<金属窒化物の表面処理>
金属窒化物の表面処理を、下記製造例B-1及びB-2にて行った。
【0130】
(製造例B-1及びB-2)
板厚20mmのアクリル樹脂製で内寸法が260mm×260mm×100mmであり、貫通孔を有する仕切りで上下三段に分けられた構造の真空デシケーターを使用して、上段に、フィラーB-1及びB-2をそれぞれ200gずつ、アルミステンレストレーに均一に広げて静置した。次に、真空デシケーターの下段には、シロキサン化合物1を10g、ガラス製シャーレに入れて静置した。その後、真空デシケーターを閉じ、80℃のオーブンで30時間の加熱を行った。なお、反応により発生する水素ガスは、真空デシケーターに付随する開放弁から逃がす等の安全対策を取って操作を行った。次に、デシケーターから取り出したサンプルをアルミナ製のるつぼに入れ、大気中で、D4Hが付着したフィラーB-1及びB-2を700℃で3時間の条件で熱処理を行うことで珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムである、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムB-1及びB-2を得た。
【0131】
(製造例B-3)
板厚20mmのアクリル樹脂製で内寸法が260mm×260mm×100mmであり、貫通孔を有する仕切りで上下三段に分けられた構造の真空デシケーターを使用して、上段に、フィラーB-3を200g、アルミステンレストレーに均一に広げて静置した。次に、真空デシケーターの下段には、シロキサン化合物1を10g、ガラス製シャーレに入れて静置した。その後、真空デシケーターを閉じ、80℃のオーブンで30時間の加熱を行った。なお、反応により発生する水素ガスは、真空デシケーターに付随する開放弁から逃がす等の安全対策を取って操作を行った。次に、デシケーターから取り出したサンプルをアルミナ製のるつぼに入れ、大気中で、D4Hが付着したフィラーB-3を800℃で3時間の条件で熱処理を行うことで珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムである、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムB-3を得た。
【0132】
<実施例1>
付加型シリコーン樹脂1 85質量部、ポリシロキサン化合物1 15質量部、処理フィラーA-1 400質量部と処理フィラーA-2 500質量部を、自転・公転混合ミキサー(株式会社シンキー製、商品名:ARV-310P)に投入し、回転数2000rpmで30秒間、減圧をしながら撹拌混合した。続いて、室温(25℃)まで冷却をした後、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムB-1 800質量部を投入し、回転数2000rpmで30秒間撹拌混合して、実施例1の熱伝導性組成物を得た。
【0133】
<実施例2~4、並びに比較例1及び2>
表1に記載の種類及び配合量の各成分に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2~4並びに比較例1及び2の熱伝導性組成物を得た。
【0134】
<実施例5>
縮合型シリコーン樹脂1 85質量部、ポリシロキサン化合物1 15質量部 フィラーA-5 520質量部、及びフィラーA-6 520質量部を、温度100℃で30分間オーブンにて乾燥させた後、自転・公転混合ミキサー(株式会社シンキー製、商品名:ARV-310P)で、回転数2000rpmで30秒間撹拌した。室温(25℃)まで冷却した後、架橋剤2 4質量部添加し、自転・公転混合ミキサーにて回転数2000rpmで30秒間脱泡撹拌した。室温(25℃)まで冷却した後、さらに、触媒2(TC-100) 4質量部添加し、自転・公転混合ミキサーにて回転数2000rpmで30秒間脱泡撹拌をして、実施例5の熱伝導性組成物を得た。
【0135】
<実施例6~15、及び比較例3~9>
表2~4に記載の種類及び配合量の各成分に変更したこと以外は実施例5と同様にして各実施例及び比較例の熱伝導性組成物を得た。
【0136】
<実施例16>
過酸化物型シリコーン樹脂1 80質量部、ポリシロキサン化合物2 20質量部、処理フィラーA-3 200質量部、処理フィラーA-4 250質量部、添加剤(四酸化三鉄) 2質量部、有機過酸化物(TC-1)5質量部を、自転・公転混合ミキサー(株式会社シンキー製、商品名:ARV-310P)に投入し、回転数2000rpmで30秒間、減圧をしながら撹拌混合した。続いて、室温(25℃)まで冷却をした後、珪素含有酸化物被覆窒化アルミニウムB-2 400質量部を投入し、回転数2000rpmで30秒間脱泡撹拌して、実施例16の熱伝導性組成物を得た。
【0137】
<実施例17、並びに比較例10~12>
表5に記載の種類及び配合量の各成分に変更したこと以外は実施例16と同様にして各実施例及び比較例の熱伝導性組成物を得た。
なお、比較例12においては、末端に少なくとも1個の珪素原子と直接結合していない水酸基を有するポリシロキサン化合物を含まないため、組成物の粘度が十分に低下せず、熱伝導性フィラーを充填(熱伝導性フィラーと混合)できなかった。
【0138】
[試験片(硬化物)の作製]
(1)実施例1~4、並びに比較例1及び2の熱伝導性組成物の硬化物
フッ素離型処理を施した厚み0.1mmのポリエステルフィルム上に、脱泡した熱伝導性組成物を流し込み、その上から厚み0.1mmのポリエステルフィルムを空気が混入しないように被せ、圧延ロールにて成形し、100℃で15分間硬化させ、さらに一日室温(23℃)で放置後、厚み2mmのシートを作製した。このシートを幅20mmに短冊に切り、3枚重ねて各実施例及び比較例の試験片(縦80mm、横20mm、厚み6mm)とした。
【0139】
(2)実施例5~15、及び比較例3~9の熱伝導性組成物の硬化物
フッ素離型処理を施した厚み0.1mmのポリエステルフィルムを、直径45mm、厚み6mmの金型内に設置した。そこに脱泡した熱伝導性組成物を空気が入らないように流し込み、表面をへらで平らにならした後、温度23±2℃、湿度50±10%RHの恒温室に1週間放置し、各実施例及び比較例の試験片(直径45mm、厚み6mm)を得た。
【0140】
(3)実施例16~17、及び比較例10~12の熱伝導性組成物の硬化物
フッ素離型処理を施した厚み0.1mmのポリエステルフィルムを、直径45mm、厚み6mmの金型内に設置した。そこに脱泡した熱伝導性組成物を空気が入らないように流し込み、さらに厚み0.1mmのポリエステルフィルムを空気が入らないように載せた。それをアルミ板で挟み、プレスにて120℃で30分間0.5MPaにて一次加硫した後、さらに,熱風循環オーブンで200℃ 4時間、二次加硫をして、各実施例及び比較例の試験片(直径45mm、厚み6mm)を得た。
【0141】
[測定評価]
以下に示す測定条件により、各実施例及び比較例で得られた熱伝導性組成物、及びその硬化物である試験片を用いて特性を測定した。結果を表1~5に示す。
【0142】
(1)粘度
熱伝導性組成物の製造直後(製造後~5分)の粘度を、JIS K7210:2014に準拠して、フロー粘度計(GFT-100EX、(株)島津製作所製)を用いて、温度30℃、ダイ穴径(直径)1.0mm、試験力40(重り7.8kg)の条件で測定した。
【0143】
(2)硬度
実施例1~4、並びに比較例1及び2で得られた熱伝導性組成物の硬化物である試験片については、JIS K7312:1996に準拠して、ゴム用硬度計(高分子計器株式会社、商品名:アスカーゴム硬度計C型)を用いて、アスカーC硬度を測定した。
実施例5~17、及び比較例3~12で得られた熱伝導性組成物の硬化物である試験片については、JIS K7312:1996に準拠して、ゴム用硬度計(高分子計器株式会社、商品名:アスカーゴム硬度計A型)を用いて、アスカーA硬度を測定した。
【0144】
(3)熱伝導率
ホットディスク法 熱物性測定装置(京都電子工業株式会社製 商品名 TPS 2500 S)を用いて、ISO22007-2に準拠して、前記試験片の熱伝導率を測定した。
【0145】
(4)タックフリータイム
フッ素離型処理を施した厚み0.1mmのポリエステルフィルムを用意し、直径45mm、厚み6mmの金型内に設置した。そこに脱泡した熱伝導性組成物を空気が入らないように流し込み、表面をへらで平らにならした後、温度23±2℃、湿度50±10%RHの恒温室に置き、表面のタックがなくなるまでの時間を15分毎あるいは5分毎に測定した。
なお、タックフリータイムは、速乾燥性の指標であり、タックフリータイムが長い程、反応速度が遅いことを示す。
【0146】
(5)稠度
熱伝導性樹脂組成物の稠度は、JIS K2220:2013に記載の1/4コーンによる針入度であり、自動針入度試験器(株式会社離合社製、RPM-101)を用いて測定した。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
実施例と比較例との比較により、熱伝導性組成物が末端に水酸基を有するポリシロキサン化合物を含むことで、製造直後の粘度が低く、適度な硬さを有する硬化物が得られることが分かる。