(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148791
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】加熱処理用バッグ
(51)【国際特許分類】
A61J 1/10 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61J1/10 331A
A61J1/10 333
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057004
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047BB12
4C047BB13
4C047BB30
4C047CC04
4C047DD01
4C047GG12
(57)【要約】
【課題】滅菌処理時に、ポート部材に溶着したバッグ本体に折れ及びシワが生じることを低減することができる加熱処理用バッグを提供する。
【解決手段】本発明に係る加熱処理用バッグは、ポリエチレン系樹脂を主成分として含むシール層と、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むバリア層とが積層された積層フィルムを対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着したシール部と、前記積層フィルム及び前記シール部によって画定され、内容物が保存される収容室と、対向する前記積層フィルムの互いの外周縁部同士が溶着されていない開口部を有するバッグ本体と、前記開口部に溶着される溶着部を有するポートと、を備え、前記溶着部は、前記開口部と接する部分の少なくとも一部に平面を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂を主成分として含むシール層と、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むバリア層とが積層された積層フィルムを対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着したシール部と、前記積層フィルム及び前記シール部によって画定され、内容物が保存される収容室と、対向する前記積層フィルムの互いの外周縁部同士が溶着されていない開口部を有するバッグ本体と、
前記開口部に溶着される溶着部を有するポートと、
を備え、
前記溶着部は、前記開口部と接する部分の少なくとも一部に平面を有する加熱処理用バッグ。
【請求項2】
前記溶着部は、前記ポートの平面視において菱形状に形成され、対向する一対の角部が湾曲している請求項1に記載の加熱処理用バッグ。
【請求項3】
前記シール層が、ポリエチレン系樹脂からなる請求項1又は2に記載の加熱処理用バッグ。
【請求項4】
前記バリア層が、環状ポリオレフィン樹脂からなる請求項1~3の何れか一項に記載の加熱処理用バッグ。
【請求項5】
120℃以上で滅菌処理される請求項1~4の何れか一項に記載の加熱処理用バッグ。
【請求項6】
前記内容物が、医薬品である請求項1~5の何れか一項に記載の加熱処理用バッグ。
【請求項7】
前記加熱処理用バッグが、薬液バッグである、請求項6に記載の加熱処理用バッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理用バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤又は栄養剤等を含有する薬液は、加熱処理用バッグに充填して封止された状態で使用されるまで保管されている。加熱処理用バッグは、プラスチックフィルムにより構成される袋状体に形成されたバッグ本体と、バッグ本体の外周部に固定されたプラスチック成形品であるポートとを備える。加熱処理用バッグは、湿熱下で滅菌処理された後に外装バック等に収容されて、製品として出荷される。
【0003】
このような加熱処理用バッグとして、例えば、熱可塑性プラスチックシートからなる本体の開口部に楕円形状又は舟形に形成された中空筒体の側面を溶着させた輸液用バッグが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の輸液用バッグでは、中空筒体は円筒状に形成され、側面が湾曲しているため、本体の開口部に中空筒体を貼り合わせても、輸液用バッグの滅菌時に本体の開口部を構成する熱可塑性プラスチックシートにシワや折れが生じ易い、という問題があった。
【0006】
即ち、輸液用バッグを滅菌処理する際、本体を構成する熱可塑性プラスチックシートは柔らかくなり、変形し易くなっているため、熱可塑性プラスチックシートには折れ又はシワが生じ易く、応力が加わり易くなっている。熱可塑性プラスチックシートが変形して折れ又はシワが生じている状態で輸液用バッグを冷やすと、折れ又はシワに熱可塑性プラスチックシートの収縮等によって応力が加わることで、折れ又はシワは大きくなり、熱可塑性プラスチックシートを構成する樹脂層に破断が生じる場合がある。
【0007】
熱可塑性プラスチックシートは、一般に、ポリエチレン(PEP)等の複数の樹脂層の積層体で構成されているため、樹脂層同士の密着性が十分でない部分があると、熱可塑性プラスチックシートの樹脂層に折れ又はシワ等に起因した破断が生じ易い。このような破断部分は外観でも白色で確認できるため、滅菌処理前後で、加熱処理用バッグの外観が変化し、外観不良が生じ易い。
【0008】
本発明の一態様は、滅菌処理時に、ポートに溶着したバッグ本体に折れ及びシワが生じることを低減することができる加熱処理用バッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加熱処理用バッグの一態様は、
ポリエチレン系樹脂を主成分として含むシール層と、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むバリア層とが積層された積層フィルムを対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着したシール部と、前記積層フィルム及び前記シール部によって画定され、内容物が保存される収容室と、対向する前記積層フィルムの互いの外周縁部同士が溶着されていない開口部を有するバッグ本体と、
前記開口部に溶着される溶着部を有するポートと、
を備え、
前記溶着部は、前記積層フィルムと接する部分の少なくとも一部に平面を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る加熱処理用バッグの一態様は、滅菌処理時に、ポートに溶着したバッグ本体に折れ及びシワが生じることを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る加熱処理用バッグの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す加熱処理用バッグの正面図である。
【
図3】積層フィルムの構成を示す概略断面図である。
【
図4】積層フィルムの他の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図7】積層フィルムに破断が生じている状態を示す説明図である。
【
図8】実施例1-1のバッグ本体の外観を観察した部分拡大図である。
【
図9】円筒状のポートの構成の一例を示す斜視図である。
【
図10】比較例1-1のバッグ本体の外観を観察した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0013】
<加熱処理用バッグ>
本発明の実施形態に係る加熱処理用バッグについて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る加熱処理用バッグの一例を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す加熱処理用バッグの正面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る加熱処理用バッグ1は、内容物が充填されるバッグ本体10と、バッグ本体10に取り付けられたポート20とを備える。
【0014】
なお、本実施形において、内容物は、医薬品(薬剤)、栄養剤、飲食物、化粧品等が挙げられる。医薬品は、ニトログリセリン、アルブミン、ビタミン類、微量元素、ラジカル捕捉剤等、一般の樹脂に対する吸着性又は透過性が高い物質でもよいし、ピラゾロン誘導体であるエダラボン又はその薬学的に許容され得る塩を含有する水溶液でもよい。ピラゾロン誘導体は、ピラゾロンの炭素原子又は窒素原子にアルキル基、芳香族基、ハロゲン原子等の置換基を1以上有してもよい。ピラゾロン誘導体は、有機酸、無機酸等と塩類を形成していてもよい。
【0015】
[バッグ本体]
バッグ本体10は、重ね合わされた一対の積層フィルム110を含む包装袋(パウチ)である。バッグ本体10は、一対の積層フィルム110同士を対向するように重ね合わせて互いの外周縁部同士を溶着したシール部11と、一対の積層フィルム110及びシール部11によって画定された収容室12と、一対の積層フィルム110の互いの外周縁部同士が溶着されていない開口部13とを有する。収容室12は、内容物が保存されるための空間である。開口部13は、対向する積層フィルム110同士の間の融着されていない隙間であり、ポート20が溶着等して設けられる。開口部13は、ポート20が溶着等される前に、収容室12に保存される内容物を挿入してもよいし、ポート20が溶着等された後に、収容室12に保存される内容物を挿入してもよい。
【0016】
バッグ本体10は、四方袋としているが、バッグ本体10の形態は、特に限定されず、三方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、自立袋等の小型の袋の他に、バッグインボックス用の内袋及びドラム缶内装袋等の大型の袋等に適用できる。
【0017】
(積層フィルム)
積層フィルム110は、ポリエチレン系樹脂を主成分として含むシール層と、シール層に積層して設けられ、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むバリア層とを有する積層フィルムのバリア層同士を対向するように重ね合わせて溶着させることで形成することができる。積層フィルム110は、シール層及びバリア層の各層を2層以上有してもよいし、シール層及びバリア層以外の他の層を有してもよい。
【0018】
-積層フィルムの層構成-
積層フィルム110の層構成について説明する。
図3は、積層フィルム110の構成の一例を示す概略断面図である。
図3に示すように、積層フィルム110Aは、第1シール層111A、バリア層112及び第2シール層111Bを、第1シール層111A側からこの順に積層して備えてよい。
【0019】
(第1シール層)
第1シール層111Aは、ポリエチレン(PE)系樹脂を含み、好ましくはPE系樹脂から実質的に構成され、より好ましくはPE系樹脂から構成される。第1シール層111Aは、PE系樹脂以外に添加剤成分を含んでもよい。なお、実質的にとは、PE系樹脂以外に不可避的に含まれる物質は含んでよいことを意味する。
【0020】
第1シール層111Aに含まれるポリエチレン(PE)系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができる。
【0021】
第1シール層111Aに含まれる直鎖状低密度ポリエチレンは、通常、炭素数4以上のα-オレフィンを共重合させ、短鎖の分岐を導入することで、長鎖の分岐が少なく、直鎖状の分子構造を有する。直鎖状低密度ポリエチレンに共重合されるα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。
【0022】
第1シール層111Aに含まれる直鎖状低密度ポリエチレンの種類としては、チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合された樹脂、シングルサイト系触媒を用いて重合された樹脂等が挙げられる。シングルサイト系触媒を用いて重合された直鎖状低密度ポリエチレンは、分子量分布が狭く、機械的特性に優れるので好ましい。シングルサイト系触媒としては、メタロセン系触媒が挙げられる。メタロセン系触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含み、金属がジルコニウム、ハフニウム等であるメタロセン化合物を含む触媒が挙げられる。
【0023】
第1シール層111Aに含まれる直鎖状低密度ポリエチレンとしては、具体的には、日本ポリエチレン社製のハーモレックス(登録商標)シリーズ、東ソー社製のニポロン(登録商標)Zシリーズ等が挙げられる。具体的には、東ソー社製のニポロン(登録商標)Z
FY11、ニポロン(登録商標)Z FY12等を挙げられる。
【0024】
第1シール層111Aに含まれる直鎖状低密度ポリエチレンは、一種でもよいし、二種以上でもよい。直鎖状低密度ポリエチレンを複数種類用いる場合、複数の直鎖状低密度ポリエチレは適宜任意の割合で混合してよく、等量で混合してもよい。
【0025】
第1シール層111Aに含まれる直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率は、100MPa~450MPaであることが好ましく、150MPa~420MPaであることがより好ましく、170MPa~360MPaであることがさらに好ましい。第1シール層111Aに含まれる直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率が上記の好ましい範囲内であれば、第1シール層111Aは、適度な柔軟性を有すると共にバリア層112に対する接着性を発揮できる。
【0026】
なお、曲げ弾性率は、JIS K7171:2016(ISO 178:2010)に準拠する方法によって測定できる。
【0027】
直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に基づく測定(230℃、21N荷重)において、0.9g/10分~1.5g/10分が好ましく、1.1g/10分~1.4g/10分がより好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンのMFRが上記の好ましい範囲内であれば、第1シール層111Aを押出成形等して形成する場合、押出性が比較的安定し、成形不良が抑えられるので、フィルム状に安定して成形し易くなり、成形時に第1シール層111Aにバリ等の成形不良が生じることが抑えられる。
【0028】
直鎖状低密度ポリエチレンの融点は、128℃~135℃が好ましく、130℃~132℃がより好ましい。
【0029】
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.905g/cm3~0.950g/cm3が好ましく、0.910g/cm3~0.940g/cm3がより好ましく、0.915g/cm3~0.930g/cm3がさらに好ましい。
【0030】
直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、40質量%~95質量%であることが好ましく、50質量%~90質量%であることがさらに好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が上記の好ましい範囲内であれば、第1シール層111Aは十分な柔軟性を有すると共にバリア層112に対する接着性を発揮できる。
【0031】
(バリア層112)
バリア層112は、環状オレフィン系樹脂を主として含み、好ましくは環状ポリオレフィン系樹脂から実質的に構成され、より好ましくは環状ポリオレフィン系樹脂から構成される。
【0032】
バリア層112に含まれる環状オレフィン系樹脂は、1種以上のオレフィンモノマーからなる重合体又はその二重結合が水素化された重合体であり、かつ、オレフィンモノマーのうち少なくとも1種は環状炭化水素骨格を有する環状オレフィンモノマーである。環状オレフィンモノマーとしては、例えばノルボルネン化合物等が挙げられる。なお、以下の説明で、単に「環状オレフィン系樹脂」というのは、バリア層112に含まれる環状オレフィン系樹脂を指す。
【0033】
環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン化合物の開環メタセシス重合の後、残った二重結合を水素化した重合体、2種以上の環状オレフィンモノマーからなる付加重合体、環状オレフィンモノマーと非環状オレフィンモノマーとを共重合した付加重合体等を包含する。ただし、環状オレフィンモノマー1種のみの単独付加重合体は好ましくない。環状オレフィン系樹脂の製造方法としては、ノルボルネン化合物の開環メタセシス重合体を水素化する方法、2種以上の環状オレフィンモノマーの共重合反応による方法、環状オレフィンモノマーとα-オレフィンの共重合反応による方法が挙げられる。
【0034】
環状オレフィン系樹脂のうち、ノルボルネン化合物の開環メタセシス重合体を水素化した重合体の基本構造としては、例えば、下記式(I)が挙げられる。即ち、下記式(I)の重合体は、環状骨格とエチレン骨格が交互配置されたポリマーとして記述される。下記式(1)の環状骨格は、1,3-シクロペンチレン骨格である。但し、ノルボルネン化合物の開環メタセシス重合体自体は、共重合体である必要はない。
【0035】
【0036】
式(I)において、nは1以上の整数であり、R1及びR2は水素原子又はアルキル基を示す。R1及びR2は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。R1及びR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0037】
上記の式(I)に示す構造は、n個の1,3-シクロペンチレン骨格の有する置換基R1及びR2が互いに同一で、ノルボルネン化合物の開環メタセシス重合体が単独重合体(ホモポリマー)である場合に限られない。
【0038】
上記の式(I)に示す構造は、2種以上のノルボルネン化合物の開環メタセシス重合体を水素化したポリマーでもよい。そのようなポリマーとして、例えば、下記式(II)が挙げられる。
【0039】
【0040】
式(II)において、m及びnは1以上の整数であり、R1及びR2は水素原子又はアルキル基を示す。m及びnは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。R1及びR2は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。R1及びR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0041】
ノルボルネン化合物の開環メタセシス重合体を水素化した重合体の具体例としては、例えば、日本ゼオン株式会社製のZEONEX(登録商標)シリーズ、ZEONOR(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0042】
また、環状オレフィンモノマーと非環状オレフィンモノマーとを共重合した付加重合体としては、下記式(III)が挙げられる。下記式(III)の付加重合体は、環状骨格とエチレン骨格がランダム配置されたポリマーとして記述される。下記式(I1I)の環状骨格は、2,3-ノルボルナニレン骨格である。
【0043】
【0044】
式(III)において、m及びnは1以上の整数であり、R1、R2及びR3は水素原子又はアルキル基を示す。m及びnは互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。R1、R2及びR3は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。R1及びR2は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0045】
R1、R2及びR3が何れも水素原子であるポリマーとしては、例えば、ポリプラスチック株式会社製のTOPAS(登録商標)等が挙げられる。また、R1及びR2がアルキル基であり、R3が水素原子であるポリマーとしては、例えば、三井化学株式会社製のアペル(登録商標)等が挙げられる。
【0046】
これらの環状オレフィン系樹脂は、水蒸気バリア性に優れ、入手も容易である。上述のよう、積層フィルム110Aは、バリア層112の主成分として、これらの環状オレフィン系樹脂を使用することができる。バリア層112は、1種の環状オレフィン系樹脂を含んでもよく、2種以上の環状オレフィン系樹脂を含んでもよい。
【0047】
ここで、2種以上の環状オレフィン系樹脂とは、上記の式(I)~(III)のうちの何れか1つの式に該当する2種以上の環状オレフィン系樹脂でもよいし、式(I)~(III)のうちの2つ以上の式について各々1種以上の環状オレフィン系樹脂でもよい。2種以上の環状オレフィン系樹脂とは、更に上記の式(I)~(III)に該当しない環状オレフィン系樹脂を含んでもよい。
【0048】
バリア層112は、積層フィルム110における最内層とし、シーラント層として用いてよい。
【0049】
環状オレフィン系樹脂の市販品としては、上記と一部重複するが、例えば、ZEONEX(登録商標)(日本ゼオン株式会社製、ノルボルネン系モノマーの開環メタセシス重合体の水素化ポリマー)、ZEONOR(登録商標)(日本ゼオン株式会社製、ジシクロペンタジエンとテトラシクロペンタドデセンとの開環重合に基づくコポリマー)、TOPAS(登録商標)(ポリプラスチックス株式会社製、ノルボルネンとエチレンとのコポリマー)、アペル(登録商標)(三井化学株式会社製、エチレンとテトラシクロドデセンとのコポリマー)、アートン(登録商標)(JSR株式会社製、ジシクロペンタジエン及びメタクリル酸エステルを原料とする極性基を含む環状オレフィン樹脂)等を挙げることができる。
【0050】
バリア層112は、環状オレフィン系樹脂以外に、他の樹脂成分を含有してもよい。他の樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミド系樹脂、スチレン系樹脂、シラン系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらのうち、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン系エラストマー等が挙げられる。中でも、特に、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、これらの水素添加物(例えば、SEBS、SEPS等)、スチレンブタジエンランダム共重合体等の1種又は2種以上の成分が0.05質量%~20質量%の範囲でバリア層112に含有されることが好ましい。
【0051】
バリア層112は、他の樹脂成分を含有することで、プラスチック容器の低温での耐衝撃性及び高圧蒸気滅菌処理直後の透明性の維持、柔軟性の向上等、プラスチック容器として所望の性能を向上させることができる。
【0052】
バリア層112は、環状オレフィン系樹脂のみを樹脂成分とすること(樹脂でない添加剤を含んでもよい)が好ましく、環状オレフィン系樹脂を100質量%含有してもよい(他に添加剤も含まない)。上記の他の樹脂成分を含む場合、環状オレフィン系樹脂層が環状オレフィン系樹脂を主成分とすることが好ましい。即ち、バリア層112は、1種の環状オレフィン系樹脂又は2種以上の環状オレフィン系樹脂の合計で50質量%以上含有することが好ましく、特に70質量%以上含有することが好ましい。環状オレフィン系樹脂の組成比率が低い場合、微量成分やプラスチックと親和性の高い薬剤成分が吸着され、収容される薬剤成分の保存安定性が不十分となるおそれがある。
【0053】
(第2シール層)
第2シール層111Bは、第1シール層111Aと同様、PE系樹脂を含み、好ましくはPE系樹脂から実質的に構成され、より好ましくはPE系樹脂から構成される。第2シール層111Bで用いられるPE系樹脂は、第1シール層111Aと同様であるため、詳細は省略する。
【0054】
積層フィルム110Aは、第1シール層111A、バリア層112及び第2シール層111Bの各層の何れかを2層以上有してもよいし、他の層を有してもよい。
【0055】
図4は、積層フィルム110の構成の一例を示す概略断面図である。
図4に示すように、積層フィルム110Bは、バリア層112、第1シール層111A及び第2シール層111Bを、バリア層112側からこの順に積層して備える。
【0056】
積層フィルム110A及び110Bは、第1シール層111A、第2シール層111B及びバリア層112の3層を有しているが、上述の通り、これらの層の何れかを複数備えてもよい。例えば、積層フィルム110Aは、第1シール層111A、バリア層112、第2シール層111B、バリア層112及び第1シール層111Aをこの順に積層した5層を含んでもよい。積層フィルム110Bは、バリア層112、第1シール層111A、第2シール層111B、第1シール層111A及び第2シール層111Bをこの順に積層した5層を含んでもよい。
【0057】
積層フィルム110を構成する各層、即ち、シール層及びバリア層等を構成する材料には、容器外観の向上や品質の安定化、その他必要とされる性能を付与するために、安全性及び衛生性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤等を含有してもよい。
【0058】
シール層及びバリア層の各層の厚さは、積層フィルム110を用いて成形される容器の用途等に適宜設計される。例えば、シール層の厚みは、90μm~170μmであり、バリア層の厚みは、15μm~30μmとしてよい。
【0059】
積層フィルム110を構成する各層を成形する方法は、特に限定されないが、Tダイ成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。Tダイ成形法を用いる場合、Tダイ成形後に、積層フィルム110を構成する各層をフィルム(シート)等とした後、冷却ロールで急冷してもよい。積層フィルム110を構成する各層のフィルム等を連続的に成形する場合には、成形後に、積層フィルム110を構成する各層のフィルム等の長尺成形体を巻き取ると、生産性に優れるため、好ましい。
【0060】
積層フィルム110は、シーラント層及び基材等、必要に応じて他の層を積層してもよい。即ち、各層間には接着剤層又はアンカー剤層を介してもよいし、層間が直接接するように積層されていてもよい。他の層としては、補強層、ガスバリア層、遮光層、印刷層等、適宜、一層又は複数層を選択することができる。シーラント層とは、ヒートシールに用いられる層であり、包装材料としては内容品に接する最内層に配置される。ヒートシールは、シーラント層を溶融させることにより接着させる方法であるが、シール方法は特に限定されず、熱板シール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等が挙げられる。基材は、積層体のうちシーラント層とは反対側である他方の最表面であってもよいし、他方の最表面より内側に積層されてもよい。
【0061】
積層フィルム110の総厚みは、適宜設計可能であり、必要とされる性能(透明性、柔軟性)及びコスト(生産性、材料費)とのバランスの観点から、例えば、150μm~300μmが好ましく、190μm~250μmでより好ましい。
【0062】
積層フィルム110の製造方法としては、特に限定されることなく、押出ラミネート工法、ドライラミネート工法、共押出工法、又はこれらのうち2以上の工法の併用により、積層フィルム110を構成する各層を適宜積層すればよい。
【0063】
積層フィルム110が、
図4に示すように、第1シール層111A、第2シール層111B及びバリア層112を、バリア層112、第1シール層111A及び第2シール層111Bの順に積層されている場合、シーラント層として機能するバリア層112の厚みは、積層フィルム110を用いて成形される容器の用途等に適宜設計され、特に限定されないが、例えば、5μm~150μmとしてよく、好ましくは70μm~100μmである。
【0064】
積層フィルム110の製造時に、積層フィルム110が
図3及び
図4に示すように、第1シール層111A、第2シール層111B及びバリア層112の3層を共押出工法で積層すると、これら3層の間が接着剤層又はアンカー剤層を介することなく積層されせることができる。
【0065】
[ポート]
図5及び
図6に示すように、ポート20は、中空のポート本体21と、ポート本体21の側面に設けられ、バッグ本体10の開口部13に接合される接続部22を有し、軸方向に貫通孔23を有する。ポート本体21及び接続部22は一体に形成されてよい。
【0066】
ポート本体21は、円筒状に形成されている。ポート本体21は、側面の接続部22よりも上方(
図5中、上方向)に2つのフランジ部211A及び211Bを有し、不図示のキャップが溶着される。
【0067】
接続部22は、開口部13と接する部分の少なくとも一部に平面を有する。
図5及び
図6に示すように、接続部22は、ポート20の平面視において菱形状に形成され、4つの平面221を有する。
【0068】
短軸方向において対向する一対の角部222は、湾曲していてよい。一対の角部222の曲率は小さいことが好ましい。即ち、一対の角部222は鋭角でなく緩やかであり、尖っていない程度の角度であることが好ましい。一対の角部222が曲率は小さいと、緩やかなカーブとなるため、接続部22と積層フィルム110を隙間が生じないように溶着させると共に、滅菌処理する際に、積層フィルム110が変形してシワ等を生じ難くすることができる。
【0069】
長軸方向において対向する一対の角部223は、対向する積層フィルム110同士が貼り合わせられシールされる位置であるため、鋭角としてよい。
【0070】
接続部22は、4つの平面221に、それぞれ、複数(
図5では、4つ)のスリット221aを有してもよい。
【0071】
ポート20は、合成樹脂の成形品を用いることができる。ポート20を形成する材料としては、例えば、積層フィルム110と溶着等が可能な一般的な熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0072】
加熱処理用バッグ1の製造方法の一例について説明する。包装袋を構成する一組の積層フィルム110のシーラント層となるシール層又はバリア層同士を向き合わせてポート20が溶着される開口部13以外の外周部を溶着する。積層フィルム110のシール層又はバリア層とヒートシール可能な樹脂からなるポート20を用いて、積層フィルム110とポート20の接続部22とはヒートシールして溶着することが好ましい。積層フィルム110と接続部22をヒートシールする場合、バッグ本体10の開口部13にポート20の接続部22を配置して、バッグ本体10の開口部内面とヒートシールする。これにより、加熱処理用バッグ1が得られる。
【0073】
このように、本実施形態に係る加熱処理用バッグ1は、バッグ本体10と、ポート20を有し、ポート20はバッグ本体10の開口部13に溶着される接続部22を有する。接続部22は、バッグ本体10の開口部13と接する部分の少なくとも一部に平面を有する。接続部22は、開口部13と接する部分の少なくとも一部を平面とし、開口部13と溶着する部分に湾曲した部分を少なくすることで、加熱処理用バッグ1は、積層フィルム110の開口部13に接続部22を溶着する際、開口部13を構成する積層フィルム110の曲げ及び撓み等を抑えることができる。これにより、加熱処理用バッグ1を滅菌処理する際、バッグ本体10が加熱されて積層フィルム110が柔らかくなっても、接続部22に溶着された開口部13を構成する積層フィルム110に撓み等の変形が生じ難く、折れ及びシワの発生を抑えることができる。このため、開口部13を構成する積層フィルム110に生じる折れ及びシワが少ないか殆ど生じていない状態で加熱処理用バッグ1を常温まで冷却して積層フィルム110の収縮等によって応力が加わっても、折れ及びシワの拡大が抑えられる。よって、加熱処理用バッグ1は、滅菌処理時に、ポート20に溶着したバッグ本体10に折れ及びシワが生じることを低減することができる。
【0074】
なお、積層フィルム110の折れ及びシワは、積層フィルム110を構成する樹脂層、特にバリア層に破断(クラック)が生じる可能性がある指標にでき、特に外観が白色に変色している場合には、樹脂層、特にバリア層が破断していることを外観観察で把握する指標にできる。
【0075】
一般的な円筒状ポートを使用した場合には、開口部13を構成する積層フィルムは湾曲してポートに貼り付けられることになるため、開口部13を構成する積層フィルムに撓んだ状態で貼り付けられ、折れ及びシワが多く生じ易い。開口部13を構成する積層フィルムに折れ及びシワが生じている状態で加熱処理用バッグ1を常温まで冷却すると、積層フィルム110の収縮等によって応力が加わって折れ及びシワが拡大して、例えば、
図7に示すように、積層フィルム110を構成するバリア層の一部に破断が生じ易い。
【0076】
加熱処理用バッグ1は、滅菌処理時に、ポート20に溶着したバッグ本体10の積層フィルム110に折れ及びシワが生じることを抑えられるため、積層フィルム110を構成する樹脂層、特にバリア層の一部に破断(クラック)が生じることを低減することができる。これにより、加熱処理用バッグ1は、滅菌処理前後において外観の変化が生じることを抑えることができると共に、バリア性を維持することができる。
【0077】
加熱処理用バッグ1は、溶着部は22をポート20の平面視において菱形状に形成され、対向する一対の角部を湾曲して形成することができる。これにより、接続部22は、開口部13と接する部分に4つの平面を有し、開口部13と溶着する部分に湾曲した部分を少なくすることができるため、接続部22に溶着された開口部13を構成する積層フィルム110に撓み等の変形をより生じ難くして、折れ及びシワの発生をより抑えることができる。よって、加熱処理用バッグ1は、滅菌処理時に、ポート20に溶着したバッグ本体10に折れ及びシワが生じることをより低減することができる。
【0078】
加熱処理用バッグ1は、シール層をポリエチレン樹脂で構成することができる。ポリエチレン樹脂は、柔軟性を有し、バリア層に含まれる環状ポリオレフィン系樹脂と高い密着性を有することができるため、接続部22に溶着された開口部13を構成する積層フィルム110に撓み等の変形が生じても、バリア層との間に隙間が生じたり、シール層が割れることを抑えることができるため、折れ及びシワの発生をさらに抑えることができる。よって、加熱処理用バッグ1は、滅菌処理時に、ポート20に溶着したバッグ本体10に折れ及びシワが生じることをさらに低減することができる。
【0079】
加熱処理用バッグ1は、バリア層を環状ポリオレフィン系樹脂で構成することができる。環状ポリオレフィン系樹脂は、高いバリア性を有すると共に、積層フィルム110における最内層としてシーラント層として用いることができる。よって、加熱処理用バッグ1は、積層フィルム110の層構成の選択を増やすことができると共に、内容物の外部への漏洩を確実に抑えることができる。
【0080】
加熱処理用バッグ1は、滅菌処理時に加熱しても、ポート20が溶着される開口部13を構成する積層フィルム110に折れ及びシワが生じることを低減できるため、高温(例えば、120℃以上)に加熱される滅菌処理用のバックとして好適に用いることができる。
【0081】
加熱処理用バッグ1は、上記のような特性を有することから、薬剤又は栄養剤等を含有する薬液、輸液等を収容する薬液バッグ等の滅菌処理が施されるバッグとして好適に用いることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、ポート20の接続部22は、平面視において、略菱形状としているが、略三角形等、他の形状に形成されていてもよい。
【0083】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【実施例0084】
以下、例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの例により限定されるものではない。
【0085】
<実施例1>
[加熱処理用バッグの作製]
(積層フィルムの作製)
積層フィルムを構成する各層の作製に用いる、第1シール層形成用組成物、第2シール層形成用組成物及びバリア層形成用組成物を作製した。
【0086】
(1)第1シール層形成用組成物の作製
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、ニポロン-Z、東ソー社製、MFR:1.4g/10min、密度:0.915g/cm3、曲げ弾性率:170MPa、引張り強度:17MPa、引張り伸び:420%、融解ピーク温度128℃)と、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、ニポロン-Z、東ソー社製、MFR:1.1g/10min、密度:0.930g/cm3、曲げ弾性率:360MPa、引張り強度:21MPa、引張り伸び:460%、融解ピーク温度130℃)を等量で混合した混合物を第1シール層形成用組成物として用いた。
【0087】
(2)第2シール層形成用組成物の作製
第1シール層形成用組成物と同様の2種類のメタロセン系LLDPEを混合した混合物を第2シール層形成用組成物として用いた。
【0088】
(3)バリア層形成用組成物の作製
環状オレフィン系ポリマー(COP)1(ZEONOR(登録商標)、日本ゼオン株式会社製、密度1.02g/cm3、ガラス転移温度:136℃)と、環状オレフィン系ポリマー(COP)2(ZEONEX(登録商標)、日本ゼオン株式会社製、密度1.02g/cm3、ガラス転移温度:136℃)とを、70質量%:30質量%となるように配合して、環状オレフィン系樹脂層形成用組成物を作製した。
【0089】
(4)積層フィルムの作製
Tダイ式多層製膜機を用いて、第1シール層形成用組成物、第2シール層形成用組成物及びバリア層形成用組成物を共押出工法により、第1シール層、バリア層及び第2シール層がこの順に積層された積層フィルムを作製した。第1シール層、バリア層及び第2シール層の各層の厚みは、70μm、25μm及び155μmとした。
【0090】
積層フィルムを構成する、第1シール層、バリア層及び第2シール層の各層の組成は、第1シール層形成用組成物、バリア層形成用組成物及び第2シール層形成用組成物のそれぞれの組成に対応する。
【0091】
(バッグ本体の作製)
製造した積層フィルムを用いて、最内層である第1シール層同士を重ね合わせ、開口部を除いて積層体の外周をヒートシールし、外寸が242mm×131mm、容積:310mLとなるバッグ本体であるパウチを作製した。
【0092】
(加熱処理用バッグの作製)
バッグ本体の外周シール幅が5mmとなるようにトリミングした後、バッグ本体の開口部に
図5に示す形状を有するポート1(高密度ポリエチレン(HDPE)を用いて成形した成形品、平面視略菱形状で短軸側の角部に丸みを有する。)の溶着部を溶着し、加熱処理用バッグを作製した。加熱処理用バッグは6個作製し、6個の加熱処理用バッグを実施例1-1~1-6とした。作製した加熱処理用バッグを順番に評価した時は、評価順に実施例1-1~1-6とした。作製した加熱処理用バッグを同時に評価した時は、取り出した順に実施例1-1~1-6とした。
【0093】
[滅菌処理後の外観の評価]
作製した6個の加熱処理用バッグを高圧蒸気滅菌器に入れて、下記滅菌処理条件で滅菌処理を行なった。滅菌処理後、加熱処理用バッグを高圧蒸気滅菌器から取り出して、冷却水によりパウチの温度を速やかに下げて、滅菌処理後における加熱処理用バッグのポートの溶着部付近の折れ及びシワの有無をそれぞれ観察し、下記評価条件に基づいて評価した。また、実施例1-1のバッグ本体の外観を観察した部分拡大図を
図8に示す。なお、折れ及びシワは、積層フィルムを構成するバリア層に破断(クラック)が生じる可能性がある指標とでき、特に外観で白色に変色している場合には、バリア層が破断していることの指標とできる。
(滅菌処理条件)
・滅菌処理条件1:121℃、16分
(評価条件)
A:折れ及びシワはない。
B:折れ及びシワは一部あるが、目視で白色は確認できず、商品として影響ない。
C:折れ及びシワがあり、目視で白色は確認でき、商品として支障ある。
【0094】
加熱処理用バッグの包装体の層構成、ポートの種類、加熱処理用バッグの滅菌処理後のポートの溶着部付近の折れ及びシワの有無の観察結果を表1に示す。
【0095】
<実施例2>
実施例1において、滅菌処理条件1を下記の滅菌処理条件2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行い、6個の加熱処理用バッグを実施例2-1~2-6とした。加熱処理用バッグの包装体の層構成、ポートの種類、加熱処理用バッグの滅菌処理後のポートの溶着部付近の折れ及びシワの有無の観察結果を表2に示す。
(滅菌処理条件)
・滅菌処理条件2:1回目(123℃、1分)、2回目(121℃、16分)
【0096】
<実施例3>
実施例1において、滅菌処理条件1を下記の滅菌処理条件3に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行い、6個の加熱処理用バッグを実施例3-1~3-6とした。加熱処理用バッグの包装体の層構成、ポートの種類、加熱処理用バッグの滅菌処理後のポートの溶着部付近の折れ及びシワの有無の観察結果を表3に示す。
(滅菌処理条件)
・滅菌処理条件3:1回目(123℃、1分)、2回目(121℃、20分)
【0097】
<実施例4>
実施例1において、滅菌処理条件1を下記の滅菌処理条件4に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行い、6個の加熱処理用バッグを実施例4-1~4-6とした。加熱処理用バッグの包装体の層構成、ポートの種類、加熱処理用バッグの滅菌処理後のポートの溶着部付近の折れ及びシワの有無の観察結果を表4に示す。
(滅菌処理条件)
・滅菌処理条件4:1回目(滅菌処理条件2)、2回目(滅菌処理条件3)
【0098】
<比較例1>
実施例1において、バッグ本体の開口部に溶着するポートの種類をポート1から
図9に示すような円筒状に形成されたポート2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行い、8個の加熱処理用バッグを比較例1-1~1-8とした。加熱処理用バッグの包装体の層構成、ポートの種類、加熱処理用バッグの滅菌処理後のポートの溶着部付近の折れ及びシワの有無の観察結果を表5に示す。また、比較例1-1のバッグ本体の外観を観察した部分拡大図を
図10に示し、
図10の一部(破線部分)の部分拡大図を
図11に示し、
図11の一部(破線部分)の部分拡大図を
図12に示す。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
表1~4より、各実施例では、それぞれの滅菌処理後においても、加熱処理用バッグのポートの溶着部付近には折れ及びシワは観察されなかった。また、いずれの実施例においても、同じ滅菌処理条件で滅菌処理した6個の加熱処理用バッグのポートの溶着部付近の積層フィルムに折れ及びシワは観察されなかった。
【0105】
一方、比較例1では、同じ滅菌処理条件で滅菌処理した8個の加熱処理用バッグのうち4個の加熱処理用バッグのポートの溶着部付近の積層フィルムに折れ及びシワは観察され、外観で白色に変色している箇所が多く確認された。積層フィルムの折れ及びシワの白色に変色した部分を顕微鏡で観察した結果、バリア層のクラックが確認された。
【0106】
よって、各実施例の加熱処理用バッグは、バッグ本体をシール層にLLDPEを用い、バリア層にCOPを用いた積層フィルムを用いて作製したバッグ本体の開口部に4つの平面を有する略菱形の接着部を有するポート1を溶着することで、ポートの溶着部付近の積層フィルムに折れ及びシワが発生する割合を低減することができる。このため、各実施例の加熱処理用バッグは、薬液バッグとして用いる場合、薬液バッグを構成するバッグ本体が滅菌処理後もポートの溶着部付近に折れ及びシワの発生を抑えることができるため、薬液を長期間安定して保存でき、薬液バッグとしての機能を維持できるといえる。