(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148831
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】レーダシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/931 20200101AFI20231005BHJP
【FI】
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057081
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山村 隆介
(72)【発明者】
【氏名】眞子 凌
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD05
5J070AD10
5J070AE07
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH31
5J070AH35
(57)【要約】
【課題】安価な構成で車両の周囲の状況を正確に把握できるとともに該状況に合わせた車両の走行が可能となるレーダシステムを提供すること。
【解決手段】レーダシステム1は、電磁波の送受信により車両の周囲に存在する物体を点群として取得するレーダ装置10を備え、車両に搭載されるレーダシステム1であって、互いに異なる状態を有する隣り合う領域の境界41,43付近を走査する信号処理部16と、走査の結果に基づいて取得される境界情報に基づいて障害物検知ないし走行面形状把握を行い、車両の状態を制御する車両制御部29と、を備えるレーダシステム。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の送受信により車両の周囲に存在する物体を点群として取得するレーダ装置を備え、車両に搭載されるレーダシステムであって、
互いに異なる状態を有する隣り合う領域の境界付近を走査する走査部と、
前記走査の結果に基づいて取得される境界情報に基づいて前記車両の状態を制御する車両制御部と、を備えるレーダシステム。
【請求項2】
前記走査部は、少なくとも前記レーダ装置に設けられ、
前記点群の仰角を特定する仰角処理を実行した後に、前記仰角処理の結果に応じて設定した条件に基づいて前記点群の水平角を特定する水平角処理を実行する請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
前記レーダ装置は、水平角方向よりも仰角方向の角度分解能が高い請求項1又は2に記載のレーダシステム。
【請求項4】
前記レーダ装置は、複数のアレイアンテナが配列されるアンテナ部を有し、
前記アンテナ部は、仰角方向において水平角方向と同数以上の前記アレイアンテナが配列され、仰角方向に配列された開口が水平角方向に配列された開口よりも大きい請求項1~3のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項5】
仰角方向に配列される前記アレイアンテナ間の間隔は、送信される前記電磁波の波長以上であり、かつ前記点群の仰角を特定する仰角処理における有効角度範囲が、グレーティングローブを含まず、かつ前記境界付近を含むように設定される請求項1~4のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項6】
前記境界情報に基づいて前記境界付近に存在する障害物を検出する障害物検出部を更に備え、
前記車両制御部は、前記障害物検出部によって前記障害物が検出された場合に、前記車両の前記障害物との衝突を回避する制御を実行する請求項1~5のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項7】
前記境界情報は、前記車両が走行する地表面の状態に関する情報である請求項1~6のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項8】
前記境界情報に基づいて少なくとも前記境界付近を含む前記車両の周囲のマップを生成するマップ生成部と、
生成された前記マップ内の前記車両の走行予定方向における前記地表面の傾斜の変化に基づいて、走行中の前記車両の転倒の可能性を判定する転倒可能性判定部と、を更に備え、
前記車両制御部は、前記転倒可能性判定部によって前記車両の転倒の可能性があると判定された場合に、前記車両の転倒を回避する制御を実行する請求項7に記載のレーダシステム。
【請求項9】
前記境界情報に基づいて少なくとも前記境界付近を含む前記車両の周囲のマップを生成するマップ生成部と、
前記車両の姿勢に関する車両姿勢情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
生成された前記マップ内の前記車両の走行予定方向における前記地表面の傾斜と前記車両姿勢情報に基づいて特定される前記車両の傾斜との差分に基づいて、走行中の前記車両の転倒の可能性を判定する転倒可能性判定部と、を更に備え、
前記車両制御部は、前記転倒可能性判定部によって前記車両の転倒の可能性があると判定された場合に、前記車両の転倒を回避する制御を実行する請求項7に記載のレーダシステム。
【請求項10】
前記転倒可能性判定部は、前記車両の走行速度も加味して前記車両の転倒の可能性を判定する請求項8又は9に記載のレーダシステム。
【請求項11】
前記マップ生成部及び前記車両制御部を備えるECUユニットと、を更に備え、
前記レーダ装置は、前記境界情報に基づいて前記境界付近に存在する障害物を検出する障害物検出部を有し、
前記マップ生成部は、取得した前記境界情報を複数のサイクル分にわたり時間的に重畳することで前記マップを生成する請求項8~10のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項12】
前記マップ生成部及び前記車両制御部を備えるECUユニットと、
前記境界付近を含む前記車両の周囲の画像を撮像する撮像装置と、を更に備え、
前記マップ生成部は、前記撮像装置によって撮像された前記画像と前記レーダ装置によって取得された前記境界情報に基づいて前記マップを生成する請求項8~10のいずれか一項に記載のレーダシステム。
【請求項13】
前記ECUユニットは、前記マップ生成部によって生成された前記マップを予め取得した前記境界付近を含むマップ情報と照合することで現時点における前記車両の位置を推定する請求項11又は12に記載のレーダシステム。
【請求項14】
前記車両制御部を備えるECUユニットと、を更に備え、
前記ECUユニットは、車両の姿勢に関する車両姿勢情報を含む車両情報と前記レーダ装置によって取得された前記境界情報を取得し、
前記レーダ装置は、前記車両情報を取得し、
前記レーダ装置及び前記ECUユニットは、前記車両情報を用いて前記境界情報を補正する請求項1~7に記載のレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、路上走行を行う一般自動車以外のモビリティにおいても、安全運転支援、自動運転化の重要性が高まっている。例えば、採掘現場における特殊車両、工事や工場内の運搬のための作業車、農場における農業機械等の様々なモビリティの高度化が進んでいる。その中でこれらを実現すべく、様々な形態のセンサやセンサを含んだ車両構成が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、農場の農業機械において、ステレオカメラ等で空間位置測定を行い、圃場の農作物の中から人を検出する技術が記載されている。特許文献2には、自動車用レーダにおいて、下方で連続的に検出される物標を地面として除去する技術が記載されている。特許文献3には、船舶において、IMUとしてジャイロセンサによって、ロール角、ピッチ角、ヨー角等の機器自体の姿勢情報を取得し、仰角において機器の姿勢の影響を除去する補正の事例が記載されている。引用文献4には、作業機械において、レーザセンサの路面点群情報から、路面に対する車体ピッチ角の変動を是正する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-58099号公報
【特許文献2】特開2018-116028号公報
【特許文献3】特開2021-71800号公報
【特許文献4】特開2019-178972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、カメラを用いるので天候等の条件により検出の限界がある。特許文献2の技術では、レーダ装置によって下方除去判定が実行されているが、処理が複雑である。特許文献3及び特許文献4の技術では、3DLidarを用いており、より安価な構成で車両の周囲の状況を把握するという点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、安価な構成で車両の周囲の状況を正確に把握できるとともに該状況に合わせた車両の走行が可能となるレーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電磁波の送受信により車両の周囲に存在する物体を点群として取得するレーダ装置を備え、車両に搭載されるレーダシステムであって、互いに異なる状態を有する隣り合う領域の境界付近を走査する走査部と、前記走査の結果に基づいて取得される境界情報に基づいて前記車両の状態を制御する車両制御部と、を備えるレーダシステムに関する。
【0008】
前記走査部は、少なくとも前記レーダ装置に設けられ、前記点群の仰角を特定する仰角処理を実行した後に、前記仰角処理の結果に応じて設定した条件に基づいて前記点群の水平角を特定する水平角処理を実行してもよい。
【0009】
前記レーダ装置は、水平角方向よりも仰角方向の角度分解能が高くてもよい。
【0010】
前記レーダ装置は、複数のアレイアンテナが配列されるアンテナ部を有し、前記アンテナ部は、仰角方向において水平角方向と同数以上の前記アレイアンテナが配列され、仰角方向に配列された開口が水平角方向に配列された開口よりも大きくてもよい。
【0011】
仰角方向に配列される前記アレイアンテナ間の間隔は、送信される前記電磁波の波長以上であり、かつ前記点群の仰角を特定する仰角処理における有効角度範囲が、グレーティングローブを含まず、かつ前記境界付近を含むように設定してもよい。
【0012】
前記境界情報に基づいて前記境界付近に存在する障害物を検出する障害物検出部を更に備え、前記車両制御部は、前記障害物検出部によって前記障害物が検出された場合に、前記車両の前記障害物との衝突を回避する制御を実行してもよい。
【0013】
前記境界情報は、前記車両が走行する地表面の状態に関する情報であってもよい。
【0014】
前記境界情報に基づいて少なくとも前記境界付近を含む前記車両の周囲のマップを生成するマップ生成部と、生成された前記マップ内の前記車両の走行予定方向における前記地表面の傾斜の変化に基づいて、走行中の前記車両の転倒の可能性を判定する転倒可能性判定部と、を更に備え、前記車両制御部は、前記転倒可能性判定部によって前記車両の転倒の可能性があると判定された場合に、前記車両の転倒を回避する制御を実行してもよい。
【0015】
前記境界情報に基づいて少なくとも前記境界付近を含む前記車両の周囲のマップを生成するマップ生成部と、前記車両の姿勢に関する車両姿勢情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、生成された前記マップ内の前記車両の走行予定方向における前記地表面の傾斜と前記車両姿勢情報に基づいて特定される前記車両の傾斜との差分に基づいて、走行中の前記車両の転倒の可能性を判定する転倒可能性判定部と、を更に備え、前記車両制御部は、前記転倒可能性判定部によって前記車両の転倒の可能性があると判定された場合に、前記車両の転倒を回避する制御を実行してもよい。
【0016】
前記転倒可能性判定部は、前記車両の走行速度も加味して前記車両の転倒の可能性を判定してもよい。
【0017】
前記マップ生成部及び前記車両制御部を備えるECUユニットと、を更に備え、前記レーダ装置は、前記境界情報に基づいて前記境界付近に存在する障害物を検出する障害物検出部を有し、前記マップ生成部は、取得した前記境界情報を複数のサイクル分にわたり時間的に重畳することで前記マップを生成してもよい。
【0018】
前記マップ生成部及び前記車両制御部を備えるECUユニットと、前記境界付近を含む前記車両の周囲の画像を撮像する撮像装置と、を更に備え、前記マップ生成部は、前記撮像装置によって撮像された前記画像と前記レーダ装置によって取得された前記境界情報に基づいて前記マップを生成してもよい。
【0019】
前記ECUユニットは、前記マップ生成部によって生成された前記マップを予め取得した前記境界付近を含むマップ情報と照合することで現時点における前記車両の位置を推定してもよい。
【0020】
前記車両制御部を備えるECUユニットと、を更に備え、前記ECUユニットは、車両の姿勢に関する車両姿勢情報を含む車両情報と前記レーダ装置によって取得された前記境界情報を取得し、前記レーダ装置は、前記車両情報を取得し、前記レーダ装置及び前記ECUユニットは、前記車両情報を用いて前記境界情報を補正してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、安価な構成で車両の周囲の状況を正確に把握できるとともに該状況に合わせた車両の走行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーダシステムを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。
【
図3】水平角処理後に仰角処理を実行する処理の一例を示す説明図である。
【
図4】水平角処理前に仰角処理を実行する処理の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の構成の一例を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の構成の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の信号処理部が仰角処理によって取得した信号のスペクトルの一例を示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の信号処理部が仰角処理を行う有効角度範囲の一例を示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のデータ処理部の機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るECUユニットの機能ブロックの構成を例示するブロック図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るECUユニットによる転倒可能性の判定基準を説明するための模式図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るレーダ装置の信号処理部による点群情報取得処理の概要を例示するフローチャートである。
【
図13】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のデータ処理部による障害物検出0処理の概要を例示するフローチャートである。
【
図14】本発明の一実施形態に係るECUユニットによる衝突防止処理の概要を例示するフローチャートである。
【
図15】本発明の一実施形態に係るECUユニットによる転倒防止処理の概要を例示するフローチャートである。
【
図16】本発明の一実施形態に係るECUユニットによる自己位置推定処理の概要を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
本実施形態に係るレーダシステム1は、車両に搭載され、車両の前方に存在するリスク、例えば障害物や走行面の危険を検出し、車両の状態を制御するシステムである。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーダシステム1の模式図である。
図1に示すように、本実施形態のレーダシステム1は、レーダ装置10と、上位装置であるECU(Electric Control Unit)ユニット20と、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)30と、カメラ40と、を備える。レーダシステム1が搭載される車両は特に限定されず、例えば一般車両であってもよく、建設機械や土木機械、運搬車両、農業機械等の作業車両であってもよい。また、車両の操作者に通知することも車両の状態の制御に含む。
【0025】
レーダ装置10は、電磁波の送受信により車両の周囲の物体を点群として取得する。レーダ装置10は、車両の前方に存在する物体を検出できる位置に配置される。レーダ装置10は、ECUユニット20に電気的に接続され、取得した点群に関する点群情報や該点群情報に基づいて検出した物標に関する物標情報をECUユニット20に送信する。レーダ装置10の構成については後述する。
【0026】
IMU30は、三次元的な動きを計測するための加速度センサやジャイロセンサ等により構成される。IMU30によって車両の姿勢を示す車両姿勢情報が検出される。IMU30は、ECUユニット20に電気的に接続され、検出した車両姿勢情報をECUユニット20に送信する。車両姿勢情報としては、例えば水平面に対する車両の傾斜の情報等が挙げられる。またIMUに限らず車両姿勢情報として参考可能な情報源であれば構わない。例えばヨーレイトセンサやGPS等。また車両姿勢情報に、走行速度等の走行情報を加えて車両情報として扱っても良い。
【0027】
カメラ40は、車両の周囲の画像を撮像する。カメラ40は、ECUユニット20に電気的に接続される。カメラ40によって撮像された画像は、ECUユニット20に送信され、物標の検出やマッピング等の処理に用いられる。
【0028】
ECUユニット20は、レーダ装置10やIMU30、カメラ40等から取得する情報に基づいて車両の状態を制御する。また、ECUユニット20は、レーダ装置10から取得した点群情報やIMU30から取得した車両姿勢情報を用いて車両の周囲のマップを生成するマッピング処理や物標を検出する物標化処理等を実行する。ECUユニット20の構成については後述する。
【0029】
次に、レーダ装置10の構成について
図2を参照しながら説明する。
図2は、レーダ装置10の構成例を示す図である。また、以下で示すレーダ構成は一例であってこれに限るものではない。
【0030】
レーダ装置10は、変調部11と、局部発信部12と、アンテナ部13と、復調部14と、ADCコンバータ15と、信号処理部(走査部)16と、データ処理部17と、を備える。これらのいくつかがIC内部に一体的にくみこまれていても良い。
【0031】
変調部11と、局部発信部12により所定の周波数に変調された高周波信号を、アンテナ部13に供給する。なお、周波数変調等の他の方式として、パルス変調や位相変調や多値変調等様々な変調を行うようにしてもよい。
【0032】
アンテナ部13は、電磁波を送信する送信アンテナ132と、送信アンテナ132が送信した電磁波の物体6による反射波を受信する受信アンテナ133によって構成される。送信アンテナ132は、複数のアンテナ素子で構成されるアレイアンテナが複数の系列として配置される。また受信アンテナ133も構成配置に差異はあるも同様である。アンテナ部13は、局部発信部12から供給される周波数変調信号を電磁波として車両の周囲に向けて送信するとともに、車両の周囲の物体6によって反射された反射信号を捕捉し、電気信号に変換する。
【0033】
アンテナ部13からの電気信号は、増幅部(図示省略)によって電力が増幅され、復調部14に供給される。復調部14は、増幅部から供給される電気信号を局部発信部12から供給される局発信号を用いて復調し、ADコンバータ15に供給する。
【0034】
ADコンバータ15は、復調部14から供給される電気信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して信号処理部16に供給する。
【0035】
信号処理部16は、ADコンバータ15から供給されるデジタル信号に対して距離処理、速度処理、角度処理等を実行し、位置情報が特定された点群を取得する。信号処理部16によって取得された点群は、データ処理部17に送信され、データ処理部17によって物標化される。データ処理部17の構成については後述する。
【0036】
信号処理部16によって実行される距離処理は、送信波と反射波の周波数差から物体6までの距離に相当する距離データを複数の測定期間それぞれにおいて求める処理である。速度処理は、複数の測定期間それぞれで繰り返し求めた複数の距離データを処理することで物体6の速度に相当する情報を求める処理である。この処理によってデジタル信号は、レーダ装置10からの距離と相対速度が特定されたいわゆるレンジドップラと言われる信号となる。そして、信号の方向を算出すべく、角度処理を実施する。
【0037】
角度処理は、点群の角度を特定する処理である。角度処理には、点群の仰角を特定する仰角処理と、点群の水平角を特定する水平角処理がある。本実施形態に係る信号処理部16は、水平角処理の前に仰角処理を実施する。信号処理部16による角度処理の詳細について、
図3及ぶ
図4を用いて水平角処理が先である例と対比しながら説明する。
【0038】
図3は、人等の障害物2よりも低背な農作物3が生育する農場において水平角処理の後に仰角処理を実施する処理の一例を示す説明図である。
図4は、障害物2よりも低背な農作物3が地表面から伸びる農場において水平角処理の前に仰角処理を実行する処理の一例を示す説明図である。
図3及び
図4はいずれもレーダ装置10から見込んだ状況を示す。
図3及び
図4における破線の矢印B1は最初に行う角度処理を示し、実線の矢印B2は破線の矢印B1の処理の後に行う角度処理を示している。なお、
図3及び
図4における紙面上下方向が仰角方向を示し紙面左右方向が水平角方向を示している。また初めに行われる角度処理は各アレイアンテナの系列毎に間引きなく行われるが、後に行う角度処理は初めに行った角度処理結果を活用し間引くことが可能である。また、本明細書において地表面とは、車両の走行面を指し、土面、砂利道、舗装路、草面、圃場等様々な走行面を含むものとする。レーダ装置10の車両への搭載位置は通常地表面からある程度の高さに設定されることから、
図3及び
図4における境界43以下の層A1は地表面から伸びる農作物3よりレーダ装置10に近い範囲の車両の走行面を示している。
【0039】
ここで、自走する車両に搭載されるレーダ装置においては周辺の障害物2との衝突を回避すべく障害物検知が一般的になされる。この場合、水平面における検知角度範囲が広く設定されており、広範囲な水平角から方向を特定することが通常最初に行われる。しかしながら、農場では、地表面であり走行面である層A1、地表面から伸びる農作物3が存在する層A2、該農作物3の真上の層A3等の上下方向に区画されるそれぞれ異なる状態の領域が存在する。例えば農作物3が存在する層A2と農作物3の真上の層A3との境界41付近に存在する農作業中の人等の障害物2を正確に検出できない場合がある。
【0040】
本実施形態では、信号処理部16は、互いに異なる状態を有する隣り合う領域である層A1と層A2の境界43付近及び層A2と層A3との境界41付近を走査する。即ち、障害物検出だけではなく、地表面を含めた周辺構造の把握も目的としており、地表面側方向即ち、俯角側にも詳細に方向特定を行うものである。このため走査の結果に基づいて取得される境界情報から、層A2と層A3との境界41の情報を詳細に把握することで障害物2を確実に検出でき、かつ境界43以下の見込み角となる走行面である層A1の形状も高い精度で把握することができる。なお、本明細書では、仰角俯角も併せて仰角と表現している。また境界付近とは、例えば境界43だけでなく、地表面42を含む層A1と層A2を含む領域であり、また例えば境界41だけでなく、層A2と、農作物3の真上の層A3を含む領域である。また境界情報としては、例えば信号処理部16によって取得される位置情報が特定された点群に関する点群情報であってもよく、点群から境界を直接求める手段でもよく、複数の点群に基づいて物標化された物標に関する物標情報であってもよい。また境界情報は、層A2の有無にかかわらず、層A1と層A3の境界といえる車両が走行する地表面42の状態に関する情報としての点群情報であってもよく、物標情報であってもよい。地表面42の状態に関する情報としては、例えば車両の走行面の凹凸や傾き等の情報が挙げられる。本案では、互いに異なる状態を有する隣り合う領域の境界情報に基づき、障害物検知や走行面の形状把握、またその両方の実施を実現し、リスク回避のための車両制御を可能化する。
【0041】
図3に示すように、水平角処理を行った後に仰角処理を行う場合、初めに行う水平角処理の完了段階すなわち水平角特定段階では、点群の仰角方向は特定できておらず、各仰角方向に配置されたアレイアンテナ系列の各々の成分や平均振幅程度しか把握できない。後に行う処理として仮に、先に求めた何らかの水平角振幅ピーク方向成分に限定し仰角処理を実施する場合、対象を水平ピーク方向に絞る、いわゆる間引いた状態で処理を進めることとなる。仰角方向の特性に特徴をもつ場合であっても、平均的な水平角振幅がピークとならない状況では除去されることになる。このため、
図3に示すように、障害物2の検出が必要な場合でも、例えば層A2の〇で示される箇所に強い反射があった場合においては、水平角〇方向においてのみ仰角処理がなされ、障害物2に対応する点群に対する仰角処理が行われない場合がある。
【0042】
一方で、
図4に示すように水平角処理の前に仰角処理を行う場合、仰角方向の特徴を最初に把握することが可能であり、この段階で仰角方向として振幅ピークの判定や、特定の仰角方向に限定することが可能である。即ち、仰角処理を実行した後に、仰角処理の結果に応じて設定した条件に基づいて水平角処理を実行することで境界情報を取得することができる。例えば、
図4に示すように、農機へ設置し、農場での作業を想定する場合、レーダ装置10の車両への設置位置や角度から概ね層A1の走行面に相当する仰角は想定され、層A1の走行面の成分として分離することが可能であり、走行面形状の詳細分析が必要な場合は、この仰角成分に着目した水平角処理が可能となる。また地表面に生育する農作物3の高さも仰角処理によって把握が可能となる。例えば広域な農場では農作物3の高さが、農機の進行方向におおよそ一定となることが想定される。仰角処理により走行中に農作物3の概ねの高さ情報が把握できれば、その高さ以上の仰角成分は農作物3由来ではないことが想定される。人よりも低背な農作物3が生育する農場で障害物2としての人を検出対象とした場合、層A2と層A3との境界41及び層A3における境界41付近の角度領域に着目した水平角処理を実施することが可能となる。ここで着目とは、水平角処理を実施する条件を仰角処理のピーク判定だけでなく、特定仰角度範囲においてスレッシュホルドや検出方法を変更する事、また特定仰角の水平角処理の結果をすべて活用する等、特定仰角度条件を用いた何らかの処理である。これらにより、
図4に示すように、障害物2の検出が必要な場合、例えば層A2の〇で示される箇所に強い反射があった場合においても、初めに仰角処理がされることで、層A3を切り出すことが可能となり、障害物2に対応する点群を取得することができる。
【0043】
いずれも受信した信号を仰角情報の特徴をもって判断する場合、仰角特性が不明な段階で間引くことはできず、水平角処理より仰角処理を先に実施することが好適である。なお、水平角処理と仰角処理いずれもこれらを間引かずにすべて実施する場合、前述の角度処理の順番は特に影響しない。しかし、現実のレーダにおいては処理を軽減すべく、この2つの処理の間においてスレッシュホルドや条件を設定することで処理の数を間引くことがメモリ容量低減や処理時間低減に対して有用である。即ち、上述した信号処理部16に処理によって注意する層A2と層A3との境界41付近の境界情報をとらえ、効率よく正確に層A2と層A3との境界41に存在する障害物2を検出することができる。或いは、層A1の走行面の形状の詳細分析が可能となる。本実施形態ではこれらの間引きを、対象としたアプリケーションに適して実施できるよう、興味の評価対象である仰角特性においてスレッシュホルドや条件の設定を行うものである。
【0044】
また、仰角処理、水平角処理の一連の処理は基本的な計測サイクル内で実施される。仰角処理、水平角処理のうち、水平角における合成開口処理を行うことも可能ではあるが、基本的な計測サイクルを超える時系列データの取り扱いにメモリや高度な処理が必要となり得る。これらをレーダシステム1におけるエッジであるレーダ装置10で実施することはコストの観点で難しい。レーダ装置10は基本的な計測サイクルにおいて、上述の処理により、2次元の角度処理を効率よく少ない負荷で行う。
【0045】
次に、好適なアンテナ部13の詳細な構成について
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5及び
図6は、送信アンテナ132及び受信アンテナ133の複数のアレイアンテナ配列131の一例を示す概略図である。なおここでは各々アレイアンテナの形状ではなく、各々アレイアンテナの位相中心の配置として131を示している。
図5は仰角方向よりも水平角方向に配列されるアレイアンテナ配列131の方が多い送信アンテナ132及び受信アンテナ133を示し、
図6は水平角方向よりも仰角方向に配列されるアレイアンテナ配列131の方が多い送信アンテナ132及び受信アンテナ133を示している。なお、ここで各々送信アンテナ132、受信アンテナ133は、各々D1、D2、ないしD2、D1と異なる方向に割り当てても良い。また、送信アンテナと受信アンテナの掛け合わせ特性がレーダにおけるアンテナ特性となる。
【0046】
本実施形態に係るレーダ装置10は、送信アンテナ132及び受信アンテナ133の構成により、水平角方向よりも仰角方向の角度分解能が高く設定されている。送信アンテナ132及び受信アンテナ133は、仰角処理を重視し、レーダ装置10の構成においても水平角方向に比較し、仰角方向において角度分解能がよい構成をとる。例えば、送信アンテナ132及び受信アンテナ133は、
図5及び
図6に示すように水平角方向のアレイアンテナ配列における開口D2にくらべ仰角方向のアレイアンテナ配列の開口D1を大きくとった構成であってもよい。この構成において、仰角処理を行う際の角度分解能を比較的狭く設定することが可能となり、より仰角方向において信号を分解した分析が可能となる。
【0047】
また、例えば送信アンテナ132及び受信アンテナ133は、
図6に示すように水平角方向に比較し、仰角方向に比較的多い系列数にてアレイアンテナ配列131を配置する構成であってもよい。レーダ装置10において設置できるアレイアンテナ配列131の数は限られている中、水平角方向よりも仰角方向にアレイアンテナ配列131を多数配置することによって、比較的仰角方向における角度性能の向上を図ることができる。
【0048】
また、
図6に示すように、仰角方向のアレイアンテナ配列間の間隔(隣接するアレイアンテナ配列の位相中心同士の間隔である)dを略λ(送信される電磁波の波長)以上とする構成が好適である。レーダ装置10において設置できるアレイアンテナ配列131の数が限られている中、アレイアンテナ配列間隔dを一般的な略λ/2の構成から大きくすることで、アレイアンテナ配列の開口D1を大きくすることができ、角度分解能の向上を図ることが可能である。これらにより、コスト増に繋がるアレイアンテナ配列131の数の増大を抑えつつ、仰角方向において信号を分解が有効なアプリケーションにレーダを適用することが可能となる。
【0049】
ここで、アレイアンテナ配列間の間隔dを略λ/2の構成から大きくする場合における課題とその解決方法について
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7は、信号処理部16が仰角処理によって取得したスペクトルの一例を示すグラフである。
図8は、信号処理部16が仰角処理を行う有効角度範囲Rを示す図である。なお、
図7及び
図8における一点鎖線L0は仰角0deg、実線L1は実像のピークPが検出される仰角、破線L2はグレーティングローブのピークPが検出される仰角を示す。
【0050】
通常アレイアンテナ配列間の間隔dをλ/2程度とする理由は、アンテナ視野内にグレーティングローブが入らないようにするためであり、この間隔dを拡大することでグレーティングローブが視野内に入ることとなる。角度処理をFFT(Fast Fourier Transform)によって行う場合、エイリアシングともいえる。角度処理の結果、
図7に示すように本来は真の対象物の方向にのみピークPが見られるような結果であったものが、間隔dの拡大によって、視野内の別の方向にピークPがみられ、対象物の角度方向特定にアンビギュイティが発生する。仮に間隔dをλ程度まで大きく拡張した場合、視野範囲内において概ねアンビギュイティが発生し、複数のピークPが見られる状況でどちらが信号由来であるか区別をつけることは通常困難である。
【0051】
本実施形態では、上記一般課題において、仰角方向において間隔dの拡張を行うものである。上記複数ピークPがみられる状況において、この適用例では水平周辺ないし下方方向たとえば地表面からの反射信号はあるにしても、水平方向から上方は上空であったり、地表面に比べ広い空間であったりするため、反射信号はほぼ無いものと仮定する。仰角処理により特定される仰角方向の有効角度範囲Rを地面側にオフセットさせた設定とし、上方角度としての出力を無効とする。即ち、レーダ装置10は、仰角処理において特定する有効角度範囲Rを地表面42側にオフセットさせて設定する。これにより仰角処理結果、検出された信号の方向が複数定義される中、例えば地表面42側からの信号を上空からの信号として見誤ることがなくなる。農場や作業場の環境の特徴にあわせ、水平角方向から地表面42の形状までを詳細に分析するアプリケーションに好適な構成となる。また本実施形態では、上記仰角方向の高分解能化により精度を高めた仰角情報を参考にした上で、スレッシュホルドや条件設定を行った後に水平角処理を行う、という手順を組み合わせることで、より効果を得ることが可能となる。
【0052】
レーダ装置10のデータ処理部17について説明する。
図9は、データ処理部17の機能ブロック図である。
【0053】
データ処理部17は、信号処理部16によって距離や角度等の位置情報が特定された点群を物標化する処理、障害物検出処理等を実行するとともに、点群情報や物標情報、障害物検出処理の結果をECUユニット20等に送信する処理を実行する。データ処理部17は、例えば、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入出力ポート等を有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。データ処理部17は、各種プログラムをメモリ等の記憶領域から適宜読み出して実行することにより、レーダ装置10の各種機能を実現している。
【0054】
データ処理部17は、点群情報取得部171と、車両情報取得部172と、物標化処理部173と、障害物検出部174と、通信処理部175と、を備える。
【0055】
点群情報取得部171は、信号処理部16からレーダ装置10からみた位置情報が特定された複数の点群に関する点群情報を取得する処理を実行する。
【0056】
車両情報取得部172は、車両の走行速度等の走行情報や車両姿勢情報を含む車両情報を取得する。車両姿勢情報は、IMU30から取得される。IMU30によって検出された車両姿勢情報を、ECUユニット20を介して取得する処理を実行する。
【0057】
物標化処理部173は、点群情報取得部171によって取得された点群と、車両情報取得部172によって取得された車両姿勢情報に基づいて、物標を検出する物標化処理を実行する。具体的には、物標化処理部173は、車両姿勢情報を用いて点群情報取得部171によって取得された複数の点群の位置を車両の姿勢を反映した位置に補正する。そして物標化処理部173は、補正された複数の点群に対して物標化を行う処理を実行する。例えば物標化処理部173は、複数の点群に対して所定の処理を行い複数の点群をグループ化することによってグループ化された複数の点群を物標として検出してもよい。所定の処理とは、例えば点群間の距離に基づいてグループ化するクラスタリング等の公知の方法であってもよい。
【0058】
障害物検出部174は、物標化処理部173によって検出された物標が障害物2であるか否かを判定することで障害物2を検出する。例えば障害物検出部174は、検出された物標の形状やサイズ等の情報と予め記憶された障害物2の形状やサイズ等の情報を対比して障害物2であるか否かを判定してもよい。
【0059】
通信処理部175は、点群情報取得部171によって取得された点群情報や物標情報、障害物2の検出結果をECUユニット20に送信する処理を実行する。
【0060】
次に、上述した特性を有するレーダ装置10によって取得された精度の高い境界情報を利用する処理について説明する。
【0061】
まず、ECUユニット20の構成について説明する。ECUユニット20は、レーダ装置10からの点群情報及び物標情報、障害物2の検出結果、IMU30等からの車両情報等に基づいて、衝突防止処理やマッピング処理、転倒防止処理、自己位置推定処理、画像処理等を実行する。そして、ECUユニット20は、これらの処理の結果に基づいて車両の状態を制御する処理を実行する。
【0062】
ECUユニット20は、例えば、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入出力ポート等を有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。ECUユニット20は、各種プログラムをメモリ等の記憶領域から適宜読み出して実行することにより、上述した各種処理を実現している。なお、本実施形態に係るECUユニット20には、画像処理等を行うGPU(Graphics Processing Unit)が搭載されていても構わない。このような高い処理能力を有するGPUを、レーダ装置10で取得した点群情報を用いたマッピングや自己位置推定等の処理に用いることで、効率的に演算することが可能となる。なお、ECUユニット20は、画像処理用のGPUが搭載された画像処理ユニットを含めたものであるが、GPUが搭載された画像処理ユニットが別のユニットとして存在し、ECUユニット20と接続される構成であってもよい。
【0063】
ECUユニット20の機能的構成について説明する。
図10は、ECUユニット20の各種機能を実行するための機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0064】
ECUユニット20は、
図10に示すように、点群情報取得部21と、車両情報取得部22と、物標情報取得部23と、画像取得部46と、マップ生成部24と、物標化処理部25と、障害物検出部26と、転倒可能性判定部27と、自己位置推定部28と、車両制御部29と、を備える。ただし上記すべての機能をECUユニット20内に含むことに限定するものではない。またECUと称さずとも、レーダ装置10に接続しレーダ装置10より上位側でレーダ装置10より潤沢なリソースにて処理する装置であれば構わない。
【0065】
点群情報取得部21は、入出力ポート等を介してレーダ装置10から点群情報を取得する処理を実行する。
【0066】
車両情報取得部22は、車両情報を取得する処理を実行する。車両情報としては、車両の走行速度等の走行情報や車両姿勢情報等が挙げられる。車両姿勢情報は、IMU30から取得される。
【0067】
物標情報取得部23は、レーダ装置10によってグループ化された複数の点群である物標に関する物標情報を取得する処理を実行する。
【0068】
画像取得部46は、カメラ40によって撮像された画像を取得する処理を実行する。カメラ40によって撮像された画像は、地表面42や農作物3や障害物2等を含む車両の周囲の画像である。
【0069】
マップ生成部24は、点群情報取得部21によって取得された点群情報と車両情報取得部22によって取得された車両姿勢情報等に基づいて車両の周囲のマップを生成する。具体的には、マップ生成部24は、車両姿勢情報及びレーダ装置10の車両への取り付け位置等の情報を用いて、点群情報取得部21によって取得された点群情報を絶対座標系における点群情報に補正する。そして、マップ生成部24は、補正された点群情報を複数のサイクル分にわたり時間的に重畳することで、車両の走行時に動的なマップを生成してもよく、画像取得部46によって取得された画像と補正された点群情報に基づいて動的なマップを生成してもよい。この結果、絶対座標系での地表面42の形状の把握が可能となる。即ち、転倒の可能性を判定するための重力に従った絶対的な地表面42の形状の把握が可能となる。
【0070】
物標化処理部25は、点群情報取得部21によって取得された点群情報と、車両情報取得部22によって取得された車両姿勢情報等に基づいて、物標を検出する物標化処理を実行する。具体的には、物標化処理部25は、車両姿勢情報等を用いて点群情報取得部21によって取得された複数の点群の位置を車両の姿勢を反映した位置に補正する。そして物標化処理部25は、補正された複数の点群に対して物標化を行う処理を実行する。例えば物標化処理部25は、複数の点群に対して所定の処理を行い複数の点群をグループ化することによってグループ化された複数の点群を物標として検出してもよい。所定の処理とは、例えば点群間の距離に基づいてグループ化するクラスタリング等の公知の方法であってもよい。
【0071】
障害物検出部26は、物標化処理部25によって検出された物標が障害物2であるか否かを判定することで障害物2を検出する。例えば障害物検出部26は、検出された物標の形状やサイズ等の情報と予め記憶された障害物2の形状やサイズ等の情報を対比して障害物2であるか否かを判定してもよい。
【0072】
転倒可能性判定部27は、地表面42を走行する車両が転倒する可能性を判定する処理を実行する。転倒可能性判定部27は、マップ生成部24によって生成されたマップのみに基づいて走行中の車両が転倒する可能性を判定してもよく、マップ及び車両情報の両方に基づいて走行中の車両が転倒する可能性を判定してもよい。
【0073】
マップのみに基づいて判定する場合、例えばマップ内の車両の走行予定方向における地面の傾斜の絶対値に基づいて車両の転倒の可能性を判定してもよい。具体的には地表面42の傾斜が許容値を超える場合に、車両が転倒する可能性があると判定してもよい。また例えば、走行予定方向における地表面42の傾斜の変化に基づいて車両の転倒の可能性を判定してもよい。具体的には、例えば現時点での車両の近傍の地表面42の傾斜と車両の走行予定方向における地表面42の傾斜の差分が第1許容値を超える場合に、車両が転倒する可能性があると判定してもよい。
【0074】
またマップ及び車両情報の両方に基づいて判定する場合、例えばマップ内の車両の走行予定方向における地表面42の傾斜と、車両姿勢情報に基づいて特定される車両の傾斜との差分に基づいて、走行中の車両の転倒の可能性を判定してもよい。具体的には、マップ内の車両の走行予定方向における地表面42の傾斜と、車両姿勢情報に基づいて特定される車両の傾斜との差分が第2許容値よりも大きい場合に、車両が転倒する可能性があると判定してもよい。またこのとき、車両の走行速度を加味して車両の転倒の可能性を判定してもよい。具体的には、車両の走行速度が速いほど第2許容値を小さく設定してもよい。即ち、車両の走行予定方向における地表面42の傾斜と車両の傾斜との差分が比較的小さい場合であっても、車両の走行速度が速いと転倒の可能性があると判定されることになる。
【0075】
自己位置推定部28は、現時点の車両の位置を推定する処理を実行する。自己位置推定部28は、ECUユニット20のメモリ等に予め記憶された精度の高い静的なマップ情報と、マップ生成部24によって生成されたマップとに基づいて、現時点で車両が存在する位置である自己位置を推定する。マップ生成部24によって生成された動的なマップを予め記憶された静的なマップ情報と照合することで、自己位置の推定が可能となる。自己位置推定部28によって現時点の車両の位置が把握できるので、静的なマップ情報を活用した車両の走路推定が可能となる。
【0076】
車両制御部29は、障害物検出部26や転倒可能性判定部27から情報等に基づいて、車両の状態を制御する処理を実行する。車両制御部29は、例えば障害物検出部26が車両の前方に存在する障害物2を検出した場合に、車両の駆動を制御して走行中の車両を停止させてもよく、車両を制御して障害物2を検出したことを車両の操作者に通知する制御を実行してもよい。
【0077】
また、車両制御部29は、例えば転倒可能性判定部27によって車両が転倒する可能性があると判定された場合に、車両の転倒を回避する制御を実行してもよい。車両の転倒を回避する制御としては、例えば車両の走行速度を落とす制御をしてもよく、車両の走行を停止させる制御をしてもよく、転倒の可能性があることを車両の操作者に通知する制御をしてもよい。なお、車両の操作者に通知する制御としては、例えば警報を発生させる処理や操作者が視認可能な位置に配置されるディスプレイやミラー等に障害物2を検出したことや転倒の可能性があることを表示する処理であってもよい。
【0078】
本実施形態に係るレーダシステム1による転倒防止処理について
図11を参照しながらさらに詳しく説明する。
図11は、レーダシステム1を搭載した走行中の作業車両5の各地点における転倒の可能性の判定結果を示す模式図である。なお、判定結果は、紙面において各作業車両5の右斜め上に示される丸、三角、Xである。丸は転倒の可能性が無いことを示し、Xが転倒の可能性があることを示し、転倒の可能性はないと判定されるが丸に比べると転倒のリスクがあることを示している。
【0079】
レーダ装置10が搭載された車両は自動車用道路だけでなく、農場や作業場や採掘現場等においては、地表面42の傾斜や凸凹、略鉛直方向下方に延びる段差等で車両自体の転倒の危険個所が存在する。ここでレーダシステム1が地表面42の形状を把握することで、この転倒危険を回避すべく、事前に警報ないし制御を行うことも可能となる。なお、本明細書では、地表面42の傾斜、凹凸、段差を含めて傾斜という。
【0080】
ここで車両の転倒リスクに関して考察する。地表面42の形状が許容できないほどの傾斜をもつ場合、転倒することは明確なリスクであり、これが検出された場合に操作者への警報を含む車両の制御は当然有用である。最終的に転倒とは、車体下方部に対して車体上方部が加速度をもち、車体接地部を起点に車両自体が回転することといえる。すなわち、傾斜が急激に変化する場合、その変化自体が加速度発生の要因となり、転倒の危険につながると考えられる。
【0081】
地表面42の形状をもとに把握可能な地表面42の傾斜の変化を、この車両の制御における判定条件に加味する。
図11に示すように傾斜が継続する区間422においては、傾斜分だけ車両自体に転倒リスクは発生しているが、特に傾斜に入る段階や傾斜の変化する状況において、追加で車体上体側での加速度が発生しうる。これらに対し、一定傾斜区間に比べ、リスクの高い傾斜変化区間(例えば、区間421と区間422の間)において、より警報や車両の制御をしやすくするような条件を加えることで、転倒防止のアプリケーションの実用性を増すことができる。
【0082】
また地表面42の傾斜と作業車両5自体の傾斜の差分も、この作業車両5の制御における判定条件に加味することも可能である。具体的には、作業車両5が地表面42の水平な区間421を走行しており、現時点で作業車両5の姿勢が水平であるものの、区間422のように走行予定方向の地表面42に傾斜がある場合、車体が今後地表面42の形状に沿って車体が傾く可能性があることを示唆しており、この変化に伴い追加で車体上体側の加速度が発生しうる。また車体の傾きと走行予定の地表面42の形状の傾斜を対比してそのギャップが大きい地点(例えば、区間421と区間422の間)において、より警報や制御をしやすくするような条件を追加することで、転倒防止のアプリケーションの実用性を増すことができる。
【0083】
また取得した地表面42の傾斜の最も極端なケースは傾斜が鉛直に近くなる箇所すなわち段差423である。本実施形態に係るレーダ装置10では仰角方向に特性を優先させており、段差423とみられる箇所を精度よく分析し、この段差423の落差ないし高さの程度把握が可能である。この段差423の程度により、警報や制御をしやすくするような条件を追加することで、転倒防止のアプリケーションの実用性を増すことができる。
【0084】
さらに取得した地表面42の傾斜程度だけでなく、作業車両5の走行速度も、この警報や制御における判定条件に加味することも可能である。具体的には、同程度の傾斜の場合においても、作業車両5の走行速度が速い場合、より転倒のリスクが高まる。また同程度の段差423の場合においても、作業車両5の走行速度が速い場合、より転倒のリスクが高まる。車両の状態を把握するセンサからは、IMU30等の車両姿勢情報だけでなく、走行速度も取得可能である。よって今後走行予定の地表面42の傾斜の程度に、現在の走行速度の程度を、警報や制御をしやすくするような条件に追加することで、転倒防止のアプリケーションの実用性を増すことができる。
【0085】
以上、地表面42の傾斜だけでなく、傾斜の変化、あるいは車体姿勢と傾斜の対比を加えることや車両の走行速度も条件に加えることで、転倒回避の機能性向上を図ることが可能である。
【0086】
次に、レーダシステム1による各種処理の流れの一例について説明する。まず、レーダ装置10による点群情報取得処理の流れの一例について
図12を参照しながら説明する。
図12は、信号処理部16による点群情報取得処理の概要を例示するフローチャートである。
【0087】
ステップS11において、信号処理部16は、受信アンテナ133によって受信され、ADコンバータ15によって所定の周期でサンプリングされたデンタル信号を取得する。
【0088】
ステップS12において、信号処理部16は、アンテナ部13からの送信波と反射波の周波数差から物体6までの距離に相当する距離データを複数の測定期間それぞれにおいて求める距離処理を実行する。
【0089】
ステップS13において、信号処理部16は、ステップS12で求めた複数の測定期間それぞれで繰り返し求めた複数の距離データを処理することで物体6の速度に相当する情報を求める速度処理を実行する。
【0090】
ステップS14において、信号処理部16は、点群の仰角方向を特定する仰角処理を実行し、仰角方向における角度情報及び振幅情報を取得する。
【0091】
ステップS15において、信号処理部16は、水平角処理を実行し、水平角方向における角度情報及び振幅情報を取得する。このとき水平角処理では、ステップS14で取得した仰角方向における角度情報及び振幅情報に基づいて水平角方向の角度処理を実行する仰角の位置を選択する。ステップS12~ステップS15の処理によって位置情報が特定された点群が取得される。
【0092】
ステップS16において、信号処理部16は、信号の振幅等の強度情報に基づいてデータ処理部17に送信する点群を選択する閾値処理を実行する。具体的には、データ処理部17は、信号の強度が所定の閾値以上の点群を選択し、データ処理部17に送信する。ステップS16の処理の後、点群情報取得処理においてレーダ装置10が実行する処理が終了する。なお、所定の閾値だけでなく、動的に変動するものや相対的にもとめる閾値でもよい。またステップS16に至るまでの前の過程で閾値処理やCFAR処理によって点群を絞ってもよい。
【0093】
次に、レーダ装置10の信号処理部16によって取得された境界情報を効率的に活用する各種アプリケーションの処理の流れの一例について説明する。
【0094】
まず、レーダ装置10及びECUユニット20による衝突防止処理について
図13及び
図14を参照しながら説明する。
図13は、データ処理部17による障害物検出処理の概要を例示するフローチャートである。
図14は、ECUユニット20による衝突防止処理の概要を示すフローチャートである。
【0095】
図13に示すように、ステップS21において、データ処理部17の点群情報取得部171は、信号処理部16によって位置情報が特定された複数の点群に関する点群情報を取得する。
【0096】
ステップS22において、車両情報取得部172は、IMU30によって検出された車両姿勢情報等を、ECUユニット20を介して取得する。
【0097】
ステップS23において、物標化処理部173は、ステップS21で取得された点群情報と、ステップS22で取得された車両情報に基づいて物標を検出する物標検出処理を実行する。具体的には、物標化処理部173は、車両情報を用いて複数の点群の位置を車両の姿勢を反映した位置に補正する。そして、補正された複数の点群をクラスタリング処理等によって点群間の距離等の基準でグループ化された複数の点群を物標として検出する。
【0098】
ステップS24において、障害物検出部174は、ステップS23で検出された物標が障害物2であるか否かを判定する。障害物検出部174は、物標が障害物2であると判定した場合(ステップS24;YES)、処理をステップS25に移行させる。一方で、障害物検出部174が、物標が障害物2でないと判定した場合(ステップS24;NO)、レーダ装置10が実行する障害物検出処理が終了する。
【0099】
ステップS25において、通信処理部175は、ステップS24における検出結果をECUユニット20に送信する。即ち、通信処理部175は、障害物2が検出されたという情報をECUユニット20に送信する。ステップS25の処理の後、障害物検出処理においてレーダ装置10が実行する処理が終了する。
【0100】
ECUユニット20による衝突防止処理の流れの一例について
図14を参照しながら説明する。
【0101】
ステップS31において、ECUユニット20は、ステップS25でレーダ装置10から送信された障害物2の検出結果を取得する。即ち、ECUユニット20は、レーダ装置10によって障害物2が検出されたという情報を取得する。
【0102】
ステップS32において、車両制御部29は、車両の動作を制御して、障害物2と衝突を回避する制御を実行する。例えば車両制御部29は、障害物2を検出したことを車両の操作者に通知するための警報を発生させてもよく、走行中の車両を停止させてもよい。
【0103】
図13及び
図14に示す例では、エッジであるレーダ装置10が点群情報の取得、該点群情報の物標化、障害物2の検出の一連の処理を実行し、障害物2の検出結果がECUユニット20に供給されるので、迅速に衝突防止処理を行うことができる。
【0104】
次に、ECUユニット20による転倒防止処理の流れの一例について
図15を参照しながら説明する。
図15は、ECUユニット20による転倒防止処理の概要を示すフローチャートである。
【0105】
ステップS41において、ECUユニット20の点群情報取得部21は、レーダ装置10からステップS21で取得された点群情報を取得する。
【0106】
ステップS42において、車両情報取得部22は、車両の走行速度及び車両姿勢情報を含む車両情報を取得する。
【0107】
ステップS43において、マップ生成部24は、ステップS42で取得した車両情報及びECUユニット20のメモリに記憶されたレーダ装置10の車両への取り付け位置等の情報を用いて、ステップS41で取得した点群情報を絶対座標系における点群情報に補正する。
【0108】
ステップS44において、マップ生成部24は、ステップS43で補正された点群情報を時間的に重畳することで、走行中の車両の動的なマップを生成する。
【0109】
ステップS45において、転倒可能性判定部27は、地表面42を走行する車両が転倒する可能性を判定する。例えば転倒可能性判定部27は、ステップS42で取得した車両情報とステップS44で生成したマップに基づいて車両の転倒の可能性を判定する。具体的には、マップ内の車両の走行予定方向における地表面42の傾斜と、車両姿勢情報に基づいて特定される車両の傾斜との差分が、車両の走行速度に応じて設定された許容値よりも大きい場合に、車両が転倒する可能性があると判定する。なお、許容値は、車両の走行速度が速いほど小さい値に設定される。転倒可能性判定部27は、車両が転倒する可能性があると判定した場合(ステップS45;YES)、処理をステップS46に移行させる。一方で、転倒可能性判定部27は、車両が転倒する可能性がないと判定した場合(ステップS45;NO)、ECUユニット20が実行する転倒防止処理が終了する。
【0110】
ステップS46において、車両制御部29は、車両の動作を制御して、車両の転倒を回避する制御を実行する。例えば車両制御部29は、車両が転倒する可能性があることを車両の操作者に通知するための警報を発生させてもよく、走行中の車両を停止させてもよく、走行速度を落としてもよい。
【0111】
次に、ECUユニット20による自己位置推定処理の流れの一例について
図16を参照しながら説明する。
図16は、ECUユニット20による自己位置推定処理の概要を示すフローチャートである。
【0112】
ステップS51において、ECUユニット20の点群情報取得部21は、レーダ装置10からステップS21で取得された点群情報を取得する。
【0113】
ステップS52において、車両情報取得部22は、車両姿勢情報を取得する。
【0114】
ステップS53において、マップ生成部24は、ステップS42で取得した車両姿勢情報及びECUユニット20のメモリに記憶されたレーダ装置10の車両への取り付け位置等の情報を用いて、ステップS51で取得した点群情報を絶対座標系における点群情報に補正する。
【0115】
ステップS54において、マップ生成部24は、ステップS53で補正された点群情報を時間的に重畳することで、走行中の車両の動的なマップを生成する。
【0116】
ステップS55において、自己位置推定部28は、ステップS54で生成した動的なマップをECUユニット20のメモリに予め記憶された静的なマップ情報と照合することで、自己位置の推定を行う。その後、ECUユニット20が実行する自己位置推定処理が終了する。マップ情報と自己位置推定によって走路推定を行うことが可能となる。
【0117】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0118】
本実施形態に係るレーダシステム1は、電磁波の送受信により車両の周囲に存在する物体6を点群として取得するレーダ装置10を備え、車両に搭載されるレーダシステム1であって、互いに異なる状態を有する隣り合う領域の境界41,43付近を走査する信号処理部16と、走査の結果に基づいて取得される境界情報に基づいて車両の状態を制御する車両制御部29と、を備える。
【0119】
これにより、比較的物体6を認識し難い上下方向に区画される異なる領域の境界付近に関する境界情報に基づいて車両の状態を制御するので、レーダを用いた安価な構成で車両の周囲の状況を正確に把握できるとともに該状況に合わせた車両の走行が可能となる。
【0120】
本実施形態に係るレーダシステム1において、信号処理部16は、少なくともレーダ装置10に設けられ、点群の仰角を特定する仰角処理を実行した後に、仰角処理の結果に応じて設定した条件に基づいて点群の水平角を特定する水平角処理を実行する。
【0121】
これにより、仰角処理後の情報に基づいて点群の水平角処理を実行するので、注視すべき仰角方向、必要な点群に着目し、水平角処理を行うことが可能となる。それ以外の不要な情報においては水平角処理を間引くことができ、確実に検出するとともに処理負荷を軽減できる。
【0122】
本実施形態に係るレーダシステム1において、レーダ装置10は、水平角方向よりも仰角方向の角度分解能が高い。
【0123】
これにより、仰角方向の角度分解能が向上し、高さに特徴のある物体6の区別が容易となる。よって、上下方向に区画される異なる領域の境界に存在する物体6をより確実に検出できる。
【0124】
本実施形態に係るレーダシステム1において、レーダ装置10は、複数のアレイアンテナ配列131が配列されるアンテナ部13を有し、アンテナ部13は、仰角方向において水平角方向と同数以上のアレイアンテナ配列131が配置され、仰角方向における配列された開口D1が水平角方向における配列された開口D2よりも大きい。
【0125】
これにより、仰角処理の角度分解能が向上し、例えば境界付近の地表面42と同じ高さに分布する物体6から、高さに特徴のある物体6を区別し、検出することを容易にする。また例えば農場において、層A2に存在する農作物3から層A2と層A3の境界41付近に存在する人を区別し、検出することが容易となる。
【0126】
本実施形態に係るレーダシステム1において、仰角方向に配列されるアレイアンテナ131間の間隔dは、送信される電磁波の波長以上であり、かつ点群の仰角を特定する仰角処理における有効角度範囲Rが、グレーティングローブを含まず、かつ境界41,43付近を含むように設定される。
【0127】
これにより、アレイアンテナ131の数を増やさずに仰角方向の角度分解能を向上させることができ、より高さに特徴のある物体6の区別が容易となる。有効角度範囲Rがグレーティングローブを含まないように設定されるので、その反面発生するアンビギュイティに対しては、例えば地表面42への点群や物標の存在を仮定することで回避でき、注視する点群や物標が下方側に存在する作業場に最適化できる。
【0128】
本実施形態に係るレーダシステム1は、境界情報に基づいて境界41,43付近に存在する障害物2を検出する障害物検出部174,26と、を更に備え、車両制御部29は、障害物検出部174によって障害物2が検出された場合に、車両の障害物2との衝突を回避する制御を実行する。
【0129】
これにより、安価な構成でより確実に障害物2との衝突を防止できる
【0130】
本実施形態に係るレーダシステム1において、境界情報は、車両が走行する地表面42の状態に関する情報である。
【0131】
これにより、例えば車両が走行する地表面42の形状や農場で作業を行う作業者をより正確に把握できる。
【0132】
本実施形態に係るレーダシステム1は、境界情報に基づいて少なくとも地表面42を含む車両の周囲のマップを生成するマップ生成部24と、生成されたマップ内の車両の走行予定方向における地表面42の傾斜の変化に基づいて、走行中の車両の転倒の可能性を判定する転倒可能性判定部27と、を更に備え、車両制御部29は、転倒可能性判定部27によって車両の転倒の可能性があると判定された場合に、車両の転倒を回避する制御を実行する。
【0133】
これにより、マップ化された地表面42の傾斜の変化をリスクとして把握でき、加速度の発生による転倒の危機の回避が可能となる。
【0134】
本実施形態に係るレーダシステム1は、境界情報に基づいて少なくとも地表面42を含む車両の周囲のマップを生成するマップ生成部24と、車両の姿勢に関する車両姿勢情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部22と、生成されたマップ内の車両の走行予定方向における地表面42の傾斜と車両姿勢情報に基づいて特定される車両の傾斜との差分に基づいて、走行中の車両の転倒の可能性を判定する転倒可能性判定部27と、を更に備え、車両制御部29は、転倒可能性判定部27によって車両の転倒の可能性があると判定された場合に、車両の転倒を回避する制御を実行する。
【0135】
これにより、地表面42を含む範囲でマップ化した情報により、傾斜だけでなく傾斜の変化をリスクとして把握できる。また車両姿勢情報との対比により、車両の傾斜変化想定のリスクとして把握でき、加速度の発生による転倒の危機の回避が可能となる。
【0136】
本実施形態に係るレーダシステム1において、転倒可能性判定部27は、車両の走行速度も加味して車両の転倒の可能性を判定する。
【0137】
これにより、車両の走行速度も考慮して、より高い精度で転倒の可能性を判定できる。
【0138】
本実施形態に係るレーダシステム1は、マップ生成部24及び車両制御部29を備えるECUユニット20と、を更に備え、レーダ装置10は、前記境界情報に基づいて境界41,43付近に存在する障害物2を検出する障害物検出部174を有し、マップ生成部24は、取得した境界情報を複数のサイクル分にわたり時間的に重畳することでマップを生成する。
【0139】
これにより、即時性が要求されるアプリケーションにおいては、場合によってレーダシステム1のエッジ側(レーダ装置10側)で実施し、一方、即時性は低く時間重畳やメモリを使用するアプリケーションにおいては少なくともこれらに適した上位側(ECUユニット20側)で実施できる。これらでアプリケーションに適した処理をシステムとして行う。
【0140】
本実施形態に係るレーダシステム1は、マップ生成部24及び車両制御部29を備えるECUユニット20と、地表面42を含む車両の周囲の画像を撮像するカメラ40と、を更に備え、マップ生成部24は、カメラ40によって撮像された画像とレーダ装置10によって取得された境界情報に基づいてマップを生成する。
【0141】
これにより、画像を含むレーダシステム1の構成において、画像処理に必要な潤沢な処理リソース上で点群のマッピング処理等を実施することでリソースを効率よく活用することができる。
【0142】
本実施形態に係るレーダシステム1において、ECUユニット20は、マップ生成部24によって生成されたマップを予め取得した境界43付近を含むマップ情報と照合することで現時点における車両の位置を推定する。
【0143】
これにより、レーダ装置10を用い精度よく取得した地表面42を含む周辺情報を用い、3Dマップ対比により自己位置推定を行うことで、走路推定アプリケーションが可能となる。
【0144】
本実施形態に係るレーダシステム1は、車両制御部29を備えるECUユニット20と、を更に備え、ECUユニット20は、車両の姿勢に関する車両姿勢情報を含む車両情報とレーダ装置10によって取得された境界情報を取得し、レーダ装置10は、車両情報を取得し、レーダ装置10及びECUユニット20は、車両情報を用いて境界情報を補正する。
【0145】
これにより、取得した境界情報に対してレーダ装置10が搭載された車両の傾斜分による見誤りを、システムにおける適切な箇所で補正できる。
【0146】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0147】
上記実施形態では、レーダシステム1は、IMU30及びカメラ40を備えていたが、IMU30及びカメラ40の少なくともいずれかを備えない構成であってもよい。
【0148】
上記実施形態では、仰角方向に配列されるアレイアンテナ間の間隔dが送信される電磁波の波長以上であったが、波長以下であってもよく、仰角処理における有効角度範囲を限定しないでもよい。例えば、仰角方向に配列されるアレイアンテナ間の間隔dを送信される電磁波の波長の半分以下とし、仰角処理における有効角度範囲を限定しない構成であってもよい。
【0149】
上記実施形態では、レーダシステム1が衝突防止処理及び転倒防止処理の両方を実施していたが、何れか一方のみの処理を実施可能な構成としてもよい。例えば、レーダシステム1が障害物検出部174,26の両方を備えない構成であってもよく、転倒可能性判定部27を備えない構成であってもよい。
【0150】
また例えば、レーダシステム1が障害物検出部174,26のいずれか一方を備えない構成であってもよい。
【0151】
また例えば、ECUユニット20がマップ生成部24及び転倒可能性判定部27を備えない構成であってもよく、自己位置推定部28を備えない構成であってもよい。
【0152】
また例えば、レーダ装置10が物標化処理部173を備えず、ECUユニット20がレーダ装置10から点群情報を取得し、該点群情報を用いて物標化処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0153】
1 レーダシステム
10 レーダ装置
16 信号処理部(走査部)
29 車両制御部