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▶ 雪印メグミルク株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148888
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】チーズ類
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A23C19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057166
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】持地 恭子
(72)【発明者】
【氏名】下村 純美
(72)【発明者】
【氏名】坂上 麻子
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001EC99
(57)【要約】
【課題】チーズ類が含有する全ての風味成分のうち、チーズ類からリリースされる風味成分を想定して、ビールと合うために適切な特性を有するチーズ類を得ることを課題とする。
【解決手段】本発明に係るチーズ類は、チーズ類の抽出液に、遊離アミノ酸量が100μg/mL以上、10,000μg/mL以下、脂質量が、0.1mg/g以上、80mg/g以下、食塩量が、0.05g/100g以上、1.0g/100g以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーズ類の抽出液に、遊離アミノ酸量が100μg/mL以上、10,000μg/mL以下、脂質量が、0.1mg/g以上、80mg/g以下、食塩量が、0.05g/100g以上、1.0g/100g以下である、チーズ類。
【請求項2】
基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、苦味後味測定値が1mV以上、40mV以下、旨味後味測定値が-70mV以上、-10mV以下である、請求項1に記載のチーズ類。
【請求項3】
チーズ類を所定温度の純水に添加する工程と、
添加した前記チーズ類を粉砕する工程と、
粉砕したチーズ類を遠心分離して固形と上層の脂肪を分離除去する工程と、を含み、
得られた水層をチーズ抽出液として味の強さを測定する方法。
【請求項4】
前記所定温度が、10~40℃である請求項3に記載の測定する方法。
【請求項5】
前記チーズ抽出液の遊離アミノ酸量が、100μg/mL以上、10,000μg/mL以下である請求項3または4に記載の測定する方法。
【請求項6】
前記チーズ抽出液の脂質量が、0.1mg/g以上、80mg/g以下である請求項3~5のいずれか1項に記載の測定する方法。
【請求項7】
前記チーズ抽出液の食塩量が、0.05g/100g以上、1.0g/100g以下である請求項3~6のいずれか1項に記載の測定する方法。
【請求項8】
前記チーズ抽出液に浸した味覚センサーをビールですすぎ、後味を測定したとき、基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、苦味後味測定値が1mV以上、40mV以下、旨味後味測定値が-70mV以上、-10mV以下である請求項3~7のいずれか1項に記載の測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールのおつまみとして食するナチュラルチーズ、ポーションタイプやブロックタイプのプロセスチーズや、チーズフード、乳等を主原料とする食品(以下、「チーズ類」と称す)に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールとともに、チーズや菓子、サラミ等が食されているが、ビールには、独特な苦味があり、継続してビールを飲むことが苦手な人もいる。そこで、ビールと一緒に食することで、ビールの苦味を低減し、ビールを継続して飲むことができる食品の開発が期待される。
しかし、食品の風味は、風味成分や物性に影響されるため、ビールと相性の良いチーズは、チーズ類が含有する全ての風味成分のうち、咀嚼によって、チーズ類からリリースされる風味成分を想定して、適切な特性を有するチーズ類を製造することが求められている。
【0003】
従来より、特定の食品や飲料と合う、または相性のよいものの判別や製造方法に関連した技術がある。
例えば、特許文献1は、コーヒーと食品との相性診断方法および相性診断装置に関し、コーヒーの味、食品の味をそれぞれ味認識装置で測定後、複数の味の測定値のバランスから相性を判断する方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、和食にも相性がよく、嗜好性に富み、軽やかな花香様の香りを有する茶を抽出できる、新たな茶葉に関し、脂質、タンニン、親水性低分子茶ポリフェノール、準親水性低分子茶ポリフェノールの含有割合を調整することで、新たな茶葉の製造方法を開示している。
しかしながら、これらの先行技術は、いずれもビールとチーズの相性に関するものではなく、かつ、食品から咀嚼中にリリースされる風味成分を対象にしたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6475174号
【特許文献2】特許第5368652号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した通り、先行技術には、いずれもビールとチーズの相性に関するものはなく、かつ、食品から咀嚼中にリリースされる風味成分を加味し、対象にしたものはない。
本発明は、チーズ類が含有する全ての風味成分のうち、チーズ類からリリースされる風味成分を想定して、ビールと一緒に食することで、ビールを継続して飲むことができる、ビールと相性の良いチーズ類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明には以下の構成が含まれる。
<1> チーズ類の抽出液に、遊離アミノ酸量が100μg/mL以上、10,000μg/mL以下、脂質量が、0.1mg/g以上、80mg/g以下、食塩量が、0.05g/100g以上、1.0g/100g以下である、チーズ類。
<2> 基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、苦味後味測定値が1mV以上、40mV以下、旨味後味測定値が-70mV以上、-10mV以下である、<1>に記載のチーズ類。
<3> チーズ類を所定温度の純水に添加する工程と、
添加した前記チーズ類を粉砕する工程と、
粉砕したチーズ類を遠心分離して固形と上層の脂肪を分離除去する工程と、を含み、
得られた水層をチーズ抽出液として味の強さを測定する方法。
<4> 前記所定温度が、10~40℃である<3>に記載の測定する方法。
<5> 前記チーズ抽出液の遊離アミノ酸量が、100μg/mL以上、10,000μg/mL以下である<3>または<4>に記載の測定する方法。
<6> 前記チーズ抽出液の脂質量が、0.1mg/g以上、80mg/g以下である<3>~<5>のいずれか1項に記載の測定する方法。
<7> 前記チーズ抽出液の食塩量が、0.05g/100g以上、1.0g/100g以下である<3>~<6>のいずれか1項に記載の測定する方法。
<8> 前記チーズ抽出液に浸した味覚センサーをビールですすぎ、後味を測定したとき、基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、苦味後味測定値が1mV以上、40mV以下、旨味後味測定値が-70mV以上、-10mV以下である<3>~<7>のいずれか1項に記載の測定する方法。
【発明の効果】
【0008】
チーズ類が含有する全ての風味成分のうち、チーズ類からリリースされる風味成分を想定して、ビールと合うために適切な特性を有するチーズ類を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書においては、発明の態様に分けて説明をしているが、それぞれの態様に記載の事項、語句の定義、及び実施形態は、他の態様においても適用可能である。
【0010】
(測定方法)
(1)チーズ類を所定温度の純水に添加する工程
本発明が対象とする「チーズ類」とは、ナチュラルチーズのほか、ポーションタイプやブロックタイプのプロセスチーズ、チーズフード、乳等を主原料とする食品を意味する。例えばクリームチーズ、モッツァレラ、リコッタ、マスカルポーネ、フロマージュ・ブランなどのフレッシュチーズ、カマンベール、ブリーなどの白カビチーズ、ゴルゴンゾーラ、スチルトン、ロックフォールなどの青カビチーズ、リヴァロなどのウォッシュチーズ、プロボローネ、ゴーダなどのセミハードチーズ、グラナ、エメンタール、チェダーなどのハードチーズなどのナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフードや乳等を主原料とする食品などすべてのチーズ類等を含む。
【0011】
プロセスチーズ類の原料チーズとしては、通常のプロセスチーズ類の製造で用いられるものであれば特に限定されず、例えば、硬質又は半硬質のナチュラルチーズ等のいずれでも、あるいはこのようなチーズを組み合わせたものであっても使用することができる。また、プロセスチーズ類を原料の一部として用いることも可能である。プロセスチーズ類の溶融塩、乳化剤としては、通常のプロセスチーズ類の製造で用いられるものであれば特に限定されず、例えば、クエン酸塩、リン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル等のいずれでも、あるいはこのような溶融塩、乳化剤を組み合わせたものであっても使用することができる。
【0012】
副原料として脱脂粉乳などの乳製品、乳成分、安定剤、乳化剤、澱粉、加工澱粉、植物性脂肪、貝汁、貝柱、穀類、糖質類、香辛料、香料等、一般にプロセスチーズ類の製造に用いられる副原料はいずれも使用可能である。これらの副原料は物性調整や風味調整を目的として使用されるが、特に必要が無ければ用いなくてもよい。
所定温度とは、好ましくは10~40℃、より好ましくは35~40℃である。この範囲を外れると、チーズを咀嚼中に、口内で溶出する成分範囲を逸脱するため好ましくない。
【0013】
(2)添加した前記チーズ類を粉砕する工程
チョッパー、グラインダーなどの粉砕機を用いることもできるが、口中咀嚼を模した粗い粉砕であれば、特に限定されるものではない。細かくしすぎると口腔中の咀嚼でリリースされる成分と異なる。
【0014】
(3)粉砕したチーズ類を遠心分離して固形と上層の脂肪を分離除去する工程
遠心分離は、7000rpmで10分間行い上層をスパーテルで除去後、中間層を市販のコーヒーフィルター(珈琲パチット(大紀商事社製))にて濾したが、特に限定されるものではない。
【0015】
(チーズ抽出液)
本発明の測定対象となるチーズ抽出液については、以下のように作製する。
チーズ30gをパウチ袋に入れ、40℃に設定した純水120gを加え、密封した後、常温に戻してストマッカー(400ストマッカー Seward社製)で粗く粉砕する。ここで、粉砕は200rpmに設定したストマッカーで10秒間チーズを粉砕させる。プロセスチーズ1片を飲み込むまでのおおよその咀嚼回数として33回咀嚼相当と換算して粉砕時間を設定したものである。大きな固形物を除いて50mLファルコンチューブに入れ、7000rpmで10分間遠心分離する。続いて、乳脂肪である上層を除去し、中間の水層をコーヒーフィルターでろ過し、チーズ抽出液サンプルとする。
【0016】
(遊離アミノ酸)
本発明の遊離アミノ酸は、チーズ抽出液を用い、たんぱく質を除去後、遊離アミノ酸を定量する。本発明におけるチーズ類においては、チーズ抽出液中の遊離アミノ酸量は100μg/mL以上、10,000μg/mL以下が好ましく、500μg/mL以上、8,000μg/mL以下がより好ましく、500μg/mL以上、5,000μg/mL以下がさらに好ましい。
遊離アミノ酸量がこの範囲を外れると、味覚センサーにおいて旨味後味や苦味後味が所定の値にならず、また、多い場合にはチーズとしての風味バランスを欠くため、好ましくない。
【0017】
(脂質)
本発明の脂質は、チーズ抽出液を用い、レーゼゴットリーブ法にて定量する。本発明におけるチーズ類においては、チーズ抽出液中の脂質量は0.1mg/g以上、80mg/g以下が好ましく、0.15mg/g以上、3.0mg/g以下がより好ましく、0.20mg/g以上、1.0mg/g以下がさらに好ましい。
脂質量がこの範囲を外れると、味覚センサーにおいて旨味後味や苦味後味が所定の値にならず、また、多い場合にはチーズとしての風味バランスを欠くため、好ましくない。
ここで、「レーゼゴットリーブ法」とは、脂肪球被膜を破壊してから溶媒で脂肪を抽出し、溶媒を除いて脂肪を定量する方法である。
【0018】
(食塩)
本発明の食塩は、チーズ抽出液を用い、電位差滴定法にて定量する。本発明におけるチーズ類においては、チーズ抽出液中の食塩量は0.05g/100g以上、1.0g/100g以下が好ましく、0.1g/100g以上、0.3g/100g以下がより好ましい。
食塩量がこの範囲を外れると、味覚センサーにおいて旨味後味や苦味後味が所定の値にならず、また、多い場合にはチーズとしての風味バランスを欠くため、好ましくない。
「電位差滴定法」とは、硝酸酸性の試料液中に測定電極である銀-塩化銀電極と比較電極を挿入し、撹拌しながら硝酸銀標準溶液で滴定すると、塩化物イオンが減少し、塩化銀(AgCl)の沈殿が生成する。塩化物イオンの濃度と電位変化(mV)に対応する電位変化曲線を作成して、当量点付近の電位変化から硝酸銀滴定の終点を求め、硝酸銀標準溶液の滴定量から塩化物イオンの濃度を求めたのち、塩化物イオンの濃度から塩化ナトリウム含有量を算出する手法である。
【0019】
(味覚センサー)
本発明の味覚センサーは、味認識装置 TS-5000Z(インテリジェントセンサーテクノロジー社製)を用いる。何千種類とある呈味物質について、個々に応答する高選択性ではなく、類似した味に類似した応答をする広域選択性を持つ人工脂質模型味覚センサーを用いる。味覚センサーは、様々な呈味物質と静電相互作用や疎水性相互作用をすることにより脂質膜の膜電位が増減する。その膜電位変化を検出するものである。
【0020】
本発明では、旨味後味と苦味後味を測定する。後味とは、飲み込んだ後にも続く味わいであり、サンプルが口に入ったときに感じる味わいとは区別される。
旨味後味は、味認識装置上では、旨味コクと表記される。持続性のある旨味、旨味の余韻を指す。センサーAAEを用いて測定する。苦味後味は、味認識装置上では、苦味と表記され、一般食品に見られる後味の苦味を指す。センサーC00を用いて測定する。
【0021】
一般的な測定方法は以下である。
味覚センサーを基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)に浸して膜電位Vrを得る。サンプルに浸すと膜電位がVsに変化する。Vr-Vsは先味と呼ばれるサンプルが口に入ったときに感じる味わいの強度に相当する。その後センサーを基準液で簡単にすすぎ、再度基準液に味覚センサーを浸して膜電位Vr’を得る。Vr’-Vrが後味に相当する。
本発明では、サンプルにチーズ抽出液、すすぎに用いる液を基準液からビールに変え、チーズを食べた後にビールを飲んで感じる後味に相当するものを測定したと考える。
【0022】
基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)にセンサーを浸し電位を測定しVrを得た後、センサーをチーズ抽出液に浸す。その後、ビールでセンサーをすすいでから、基準液にて洗浄し、基準液にセンサーを浸して電位を測定しVr’を得る。Vr’-Vr(mV)を後味として表す。
本発明におけるチーズ類は、サンプルの箇所に基準液を用いた測定値を基準とし、旨味後味が-70mV以上、-10mV以下、好ましくは-30mV以上、-10mV以下、より好ましくは-25mV以上、-10mV以下、かつ、苦味後味:1mV以上、40mV以下、好ましくは1mV以上、10mV以下、より好ましくは3mV以上、9mV以下である。ここで、値が低いほど、後味が強いことを意味する。
【0023】
(官能評価)
本発明における官能評価は以下の方法で実施する。
本発明が対象とする「ビール」とは、酒税法上のビールのほか、発泡酒やビール風味のアルコール飲料(通称、第3のビール)およびビール風味のノンアルコール飲料を意味する。
ビールのみを5口を飲用するセッションの後、口中をノンソルトクラッカー(ヤマザキビスケット社製)でリセットしてから、チーズを1片食して、ビール(アサヒビール社)を1口飲用するセッションを実施する。どちらのセッションにおいても、ビールを1口飲む度に、「続けてビールを飲みたいか」を-3~3点の7段階で評価する。各セッション終了後に、「ビールとの相性」を-3~3点の7段階で評価する。また、一口目においては「苦味」および「旨味」の評点を0~5点の6段階で評価した。
【0024】
本発明におけるチーズ類は、ビールのみを飲用したセッションと比較して、チーズを食してからビールを飲んだセッションの方が5口とも、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均が高い。
また、チーズを食してからビールを飲んだセッションでは、1口から5口まで評価を進めた時、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均は、トレンド検定による低下傾向は認められない(p>0.05)。低下傾向があればそのチーズは続けてビールを飲みたくないチーズであり、低下傾向が認められないことは、本発明におけるチーズ類が、続けてビールを飲みたいチーズである為と言える。
このように、チーズとビールの相性評点平均は0点を上回るので、ビールとの相性がよいと言える。
【0025】
ここで、トレンド検定とは、3群以上の群間比較において、データの増加や減少の変化傾向の検出を行う手法である。例えば投薬量とその効果、子供の成長など時系列データにおける増減傾向を検証する際に用いられるものである。
本発明におけるチーズ類は、「苦味」の評点平均は、ビールのみを飲用した時と比較して、チーズを食してからビールを飲んだ時は0.5ポイント以上下がり、チーズによって、ビールの苦味が低減したといえる。
「旨味」の評点平均は、ビールのみを飲用した時と比較して、チーズを食してからビールを飲んだ時は0.5ポイント以上上がり、チーズによって旨味が増加したといえる。
【0026】
(チーズ類の製造方法)
ナチュラルチーズ、プロセスチーズの製造は、定法に従うことにより行う。チーズフード、乳等を主原料とする食品は、プロセスチーズの製造方法に準じる。
【実施例0027】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
本実施例において、以下のサンプルを用いた。
プロセスチーズ原料用ナチュラルチーズ50%、熟成ゴーダチーズ36%、溶融塩2%、pH調整剤0.2%、添加水11.8%とし、縦型せん断式乳化機にて、700~900rpmで加熱溶融した。85℃に到達後、1500rpmで30秒間攪拌した。加熱乳化後、アルミ箔ポーション容器にて包装し、5℃で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
このチーズをチーズ抽出液とし、各種分析に供したところ、以下の通りであった。
遊離アミノ酸 4014μg/mL
脂質 0.73mg/g
食塩 0.26g/100g
サンプルの箇所に基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、旨味後味 -17.8mV、苦味後味 8.1mVであった。ここで、「基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として」とは、測定毎に、基準液測定で得た値(mV)を0として、サンプルを用いた測定値が、何mVの差異があるかを算出した。
【0029】
ビールは、アサヒスーパードライ(アサヒビール社)を用い、官能評価は、パネル31名を対象とし、5口飲食して実施した。
ビールのみを飲用したセッションと比較して、チーズを食してからビールを飲んだセッションの方が、5口とも、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均が高かった。
また、チーズを食してからビールを飲んだセッションでは、1口から5口まで評価を進めた時、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均は、トレンド検定による低下傾向は認められなかった(p>0.05)。
チーズとビールの相性評点平均は、1.32点だった。
苦味の評点はビールのみで3.1点、チーズを食した後では1.9点だった。旨味の評点はビールのみで2.1点、チーズを食した後では2.8点だった。
【0030】
(実施例2)
本実施例において、以下のサンプルを用いた。
プロセスチーズ原料用ナチュラルチーズ82.5%、溶融塩2.1%、pH調整剤0.6%、添加水14.8%とし、縦型せん断式乳化機にて、700~900rpmで加熱溶融した。85℃に到達後、1500rpmで30秒間攪拌した。加熱乳化後、アルミ箔ポーション容器にて包装し、5℃で24時間以上冷却し、プロセスチーズを得た。
このチーズをチーズ抽出液とし、各種分析に供したところ、以下の通りであった。
遊離アミノ酸 2884μg/mL
脂質 0.92mg/g
食塩 0.24g/100g
サンプルの箇所に基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、旨味後味 -12.3mV、苦味後味 5.45mVであった。
官能評価は、パネル30名を対象として実施例1と同様に行った。
【0031】
ビールのみを飲用したセッションと比較して、チーズを食してからビールを飲んだセッションの方が、5口とも、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均が高かった。
また、チーズを食してからビールを飲んだセッションでは、1口から5口まで評価を進めたとき、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均はトレンド検定による低下傾向は認められなかった(p>0.05)。
チーズとビールの相性評点平均は、1.80点だった。
苦味の評点はビールのみで2.9点、チーズを食した後では1.9点だった。
旨味の評点はビールのみで1.5点、チーズを食した後では2.5点だった。
【0032】
(実施例3)
本実施例において、以下のサンプルを用いた。
チェダーチーズ 41%、溶融塩 2%、pH調整剤 0.2%、寒天 0.4%、加工デンプン 12%、食物繊維 13%、風味物質 1%、添加水 30.4%を材料とし、縦型せん断式乳化機にて、1500rpmで加熱攪拌した。90℃達温後、30秒間加熱保持することで、充分に加熱乳化した。加熱乳化後、アルミ箔ポーション容器にて包装し、5℃で24時間以上冷却し、プロセスチーズ類を得た。
上記のチーズをチーズ抽出液とし、各種分析に供したところ、以下の通りであった。
遊離アミノ酸 764μg/mL
脂質 0.27mg/g
食塩 0.22g/100g
サンプルの箇所に基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、旨味後味 -13.8mV、苦味後味 4.2mVであった。
官能評価は、パネル5名を対象として実施例1と同様に行った。
【0033】
ビールのみを飲用したセッションと比較して、チーズを食してからビールを飲んだセッションの方が、5口とも、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均が高かった。
また、チーズを食してからビールを飲んだセッションでは、1口から5口まで評価を進めたとき、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均はトレンド検定による低下傾向は認められなかった(p>0.05)。
チーズとビールの相性評点平均は、0.60点だった。
苦味の評点はビールのみで3.8点、チーズを食した後では2.6点だった。
旨味の評点はビールのみで1.6点、チーズを食した後では3.0点だった。
【0034】
(実施例4)
本実施例において、以下のサンプルを用いた。
ゴーダチーズ9%、チェダーチーズ 34%、溶融塩 2%、pH調整剤 0.1%、寒天 0.4%、加工デンプン 12%、食物繊維 14%、添加水 28.5%を材料とし、縦型せん断式乳化機にて、1500rpmで加熱攪拌した。90℃達温後、30秒間加熱保持することで、充分に加熱乳化した。加熱乳化後、アルミ箔ポーション容器にて包装し、5℃で24時間以上冷却し、プロセスチーズ類を得た。
上記のチーズをチーズ抽出液とし、各種分析に供したところ、以下の通りであった。
遊離アミノ酸 3351μg/mL
脂質 0.57mg/g
食塩 0.16g/100g
サンプルの箇所に基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、旨味後味 -21.17mV、苦味後味 4.4mVであった。
【0035】
(比較例1)
本比較例において、フレッシュチーズの例としてFromage Frais Onctueux MG40%(Isigny社)を用いた。
上記で得たチーズをチーズ抽出液とし、各種分析に供したところ、以下の通りであった。
遊離アミノ酸 50μg/mL
脂質 0.07mg/g
食塩 0.02g/100g
サンプルの箇所に基準液(30mM KCl、0.3mM L(+)‐酒石酸水溶液)を用いた測定値を基準として、旨味後味 -6.5mV、苦味後味 0.5mVであった。
官能評価は、パネル5名を対象として実施例1と同様に行った。
【0036】
ビールのみを飲用したセッションと比較して、チーズを食してからビールを飲んだセッションの方が、5口とも、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均が低かった。
また、チーズを食してからビールを飲んだセッションでは、1口から5口まで評価を進めたとき、「続けてビールを飲みたいか」の評点平均はトレンド検定による低下傾向は認められた(p<0.05)。
チーズとビールの相性評点平均は、-2.20点だった
苦味の評点はビールのみで3.2点、チーズを食した後では2.8点だった。旨味の評点はビールのみで1.4点、チーズを食した後では0.8点だった。