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特開2023-148938硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148938
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/36
C08K3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057233
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】小武海 恒
(72)【発明者】
【氏名】秋山 学
(72)【発明者】
【氏名】水野 息吹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CC08W
4J002CD06X
4J002DG047
4J002DJ016
4J002EH078
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD158
4J002GF00
4J002GP03
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】経時安定性に優れ、長期間の保存後でも凝集し難い硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明による硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂および2種類以上のフィラーを含み、
前記2種類以上のフィラーは異なる化合物からなり、
前記2種類以上のフィラーは異なる平均粒子径D50を有し、かつ、前記2種類以上のフィラーの平均粒子径D50が2.0μm以下であり、
前記硬化性樹脂組成物は、マイクロトラックを用いて測定した際の粒度分布におけるピークが1つであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂および2種類以上のフィラーを含む硬化性樹脂組成物であって、
前記2種類以上のフィラーは異なる化合物からなり、
前記2種類以上のフィラーは異なる平均粒子径D50を有し、かつ、前記2種類以上のフィラーの平均粒子径D50が2.0μm以下であり、
前記硬化性樹脂組成物は、マイクロトラックを用いて測定した際の粒度分布におけるピークが1つであることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記2種類以上のフィラーの合計配合量は、前記硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、20.0~90.0質量%である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記2種類以上のフィラーが、無機フィラーおよび有機フィラーからなる群から選択される少なくとも2種である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機フィラーが、シリカ、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト、タルク、および炭酸カルシウムからなる群から選択される、請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂が、カルボキシル基含有樹脂を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化性樹脂組成物は、パルスNMRを用いて測定した緩和時間が25.0ミリ秒以下である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えることを特徴とする、ドライフィルム。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする、硬化物。
【請求項9】
請求項7に記載のドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られることを特徴とする、硬化物。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物を備えることを特徴とする、プリント配線板。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物を備えることを特徴とする、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、該硬化性樹脂組成物を用いたドライフィルム、硬化物、およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ほとんどのプリント配線板のソルダーレジストには、高精度、高密度化の観点から、液状アルカリ現像型ソルダーレジストインキが使用されており、具体的には前記インキを印刷、乾燥後の塗膜を露光、現像することにより画像形成し、加熱硬化して得られる。
【0003】
ソルダーレジストの特性の改良手段の一つとして、従来、フィラーがソルダーレジストに配合されてきた。各種フィラーには一長一短あるところ、近年、エレクトロニクス機器の軽薄短小化に伴うプリント配線板の高密度化に伴うソルダーレジストの作業性の向上や高性能化を目的として、ソルダーレジストに複数種類のフィラーを配合することによって、フィラーの効果を高めることが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、フィラーの充填量を上げるために、一次粒径が異なる2種以上のフィラーを含む光硬化性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-81612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らは、光硬化性樹脂組成物に粒径が異なる2種以上のフィラーを配合した場合、光硬化性樹脂組成物中で2種以上のフィラーの安定性が悪化し、一定期間の保存後に光硬化性樹脂組成物が凝集する事例が発生するという課題を知見した。光硬化性樹脂組成物が凝集した場合、正常な生産物とはならず、その結果、生産計画を見直す必要に迫られる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、経時安定性に優れ、生産計画を遂行し易い硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、該樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層を有するドライフィルム、該樹脂組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究した結果、異なる化合物からなり、かつ、異なる特定の平均粒子径D50を有する2種類以上のフィラーを含む硬化性樹脂組成物において、硬化性樹脂組成物の分散状態を調節し、マイクロトラックを用いて測定した際の粒度分布におけるピークを1つにすることによって、分散安定性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明による硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂および2種類以上のフィラーを含む硬化性樹脂組成物であって、
前記2種類以上のフィラーは異なる化合物からなり、
前記2種類以上のフィラーは異なる平均粒子径D50を有し、かつ、前記2種類以上のフィラーの平均粒子径D50が2.0μm以下であり、
前記硬化性樹脂組成物は、マイクロトラックを用いて測定した際の粒度分布におけるピークが1つであることを特徴とする。
【0010】
本発明の態様においては、前記2種類以上のフィラーの合計配合量は、前記硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、20.0~90.0質量%であることが好ましい。
【0011】
本発明の態様においては、前記2種類以上のフィラーが、無機フィラーおよび有機フィラーからなる群から選択される少なくとも2種であることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、前記無機フィラーが、シリカ、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト、タルク、および炭酸カルシウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、前記硬化性樹脂がカルボキシル基含有樹脂を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、前記硬化性樹脂組成物は、パルスNMRを用いて測定した緩和時間が25.0ミリ秒以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の別の態様によるドライフィルムは、第一のフィルムと、前記第一のフィルム上に形成された前記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の別の態様による硬化物は、前記硬化性樹脂組成物、または、前記ドライフィルムの樹脂層を硬化させて得られることを特徴とする。
【0017】
本発明の別の態様によるプリント配線板は、前記硬化物を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、経時安定性に優れ、長期間の保存後でも凝集し難い硬化性樹脂組成物を提供することにある。このような硬化性樹脂組成物は、正常な生産物となり、その結果、生産計画を遂行し易いものである。また、本発明によれば、該樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層を有するドライフィルム、該樹脂組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、および、該硬化物を有するプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[硬化性樹脂組成物]
本発明による硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂と、2種類以上のフィラーを含有するものである。本発明による硬化性樹脂組成物は、下記の物性を満たすものであればよく、光重合開始剤、増感剤、熱硬化触媒、着色剤等をさらに含有してもよい。また前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂、カルボキシル基含有樹脂および光重合性モノマーのいずれか1種を含有していてもよく、複数種の組合せであってもよい。本発明による硬化性樹脂組成物は、下記の物性を満たすことで、経時安定性に優れ、長期間の保存後でも凝集し難いものである。そのため、正常な生産物となり、その結果、生産計画を遂行し易くなる。
【0020】
[物性]
(粒度分布)
本発明の硬化性樹脂組成物は、マイクロトラックを用いて測定した際の粒度分布におけるピークが1つであることを特徴とする。異なる化合物からなり、かつ、異なる特定の平均粒子径D50を有する2種類以上のフィラーを用いた場合、従来の硬化性樹脂組成物においては粒度分布におけるピークが2つ以上存在していた。
一方、本発明においては、粒度分布におけるピークを1つにすることによって、硬化性樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。このことは必ずしも明らかではないが以下のように推測される。すなわち、上述のような硬化性樹脂組成物の粒度分布におけるピークが2つ以上存在する場合、2種類以上のフィラーの分散が不十分であり、また、異なる化合物からなるフィラー間の相互作用や各フィラーの凝集によって、時間の経過とともに分散状態が悪化する。一方、硬化性樹脂組成物の粒度分布におけるピークが1つの場合、2種類以上のフィラーの分散が十分であり、異なる化合物からなるフィラーであっても1種類のフィラーの集団のように存在することで、長期間の経過後であっても分散状態が維持され易いものと考えられる。しかしながら、あくまでも推測の域であり、必ずしもこの限りではない。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物は、マイクロトラックを用いて測定した際の粒度分布におけるピークが、好ましくは0.1~1.0μm、より好ましくは0.2~0.9μm、さらに好ましくは0.3~0.7μmの範囲内に存在する。硬化性樹脂組成物ピークが上記数値範囲内に存在すれば、硬化性樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。
【0022】
本発明において、硬化性樹脂組成物の粒度分布は、以下の条件でマイクロトラックを用いて測定したものである。まず、以下の使用機器および備品類を用意する。
・粒度分布計:日機装株式会社製 マイクロトラック MT3300EX
・循環装置:日機装株式会社製 ASVR
次に、以下の手順で測定条件を入力する。マイクロトラックの付属のソフト(「粒度分布測定」)を立ち上げ、SET UPの画面から進み、測定条件設定のオプションから時間設定を行う。Setzero時間を30sec.、測定を30sec.、測定回数を2回とする。次に分析条件を入力する。分析情報において、粒子屈折率を1.81(固定値:全無機物の屈折率の平均値)、粒子の特徴において透過性を透過、形状を非球形とする。また溶媒情報において、DPM(ジプロピレングリコールメチルエーテル)を選択し、溶媒屈折率を1.42とする。次にスケール設定を入力する。粒径範囲において、最小粒径を0.021μm、最大粒径を704μmとする。次にサンプリングシステムを入力する。ASVRの洗浄回数を4回、流速を50%、超音波出力を40W、超音波時間を300sec.とする。すべての測定条件を入力したら、測定条件の設定において、保存を押して閉じる。
続いて、以下の手順でサンプルの調整を行う。スクリュー瓶にサンプル(硬化性樹脂組成物)を0.3g秤取り、スポイトを用いて30gのジプロピレングリコールメチルエーテルを少しずつ添加し、スクリュー瓶の振とうによりサンプルを溶解させて調整サンプルを作製する。調整サンプルは外部分散や予備分散を行わない。次に調整サンプルの測定を行う。マイクロトラックの付属のソフトの粒度分布測定をクリックしサンプルローディングの画面を開く。本体のサンプル投入口にスポイトを用いて調整サンプルを数滴滴下する。前記サンプルローディングの画面において、赤色の指示バーが表示されたら、赤色から緑色の範囲内に入るまで、前記サンプル投入口に調整サンプルを滴下する。前記緑色の範囲内に入ったら、測定ボタンを押して、測定を開始する。サンプルの調整から調整サンプルの測定までは5分以内に行う。以上の操作により測定された粒度分布におけるピーク数を確認する。
本発明では粒度分布のグラフにおいて、ピークが1つであるとは、極大値が1つであることを言い、ピークが2つ以上であるとは、極大値が2つ以上であることを言う。
【0023】
本発明において、硬化性組成物の粒度分布におけるピークの数およびその位置は、例えば、硬化性組成物の分散・混合方法を変更したり、硬化性組成物中の各成分の種類やその配合量を変更したりすること等によって調節することができる。
【0024】
(緩和時間)
本発明の硬化性樹脂組成物は、パルスNMRを用いて測定した緩和時間が好ましくは25.0ミリ秒以下であり、より好ましくは20.0ミリ秒以下であり、15.0ミリ秒以下である。パルスNMRを用いて測定した緩和時間を上記数値以下に調節することで、硬化性樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。
【0025】
パルスNMR測定法(Nuclear Magnetic Resonance)とは、分子運動性の評価指標である1H核の緩和時間(スピン-格子緩和時間:T緩和時間)及びスピン-スピン緩和時間(T緩和時間)を取得することに特化した手法である。本発明におけるパルスNMRを用いて測定した緩和時間とは、T緩和時間とする。
【0026】
パルスNMR測定法は、硬化性樹脂組成物に含まれる成分の分子運動に対して非常に敏感で、例えば硬化性樹脂組成物に含まれる2種類以上のフィラーの複雑な相互作用の全体像を、定量化して把握する測定手法として好適である。特に、前記T緩和時間は、硬化性樹脂組成物の分散状態を評価する指標として好適である。溶媒が多量に含まれる硬化性樹脂組成物の分散状態は、下記のように、溶媒分子の運動性に着目することでより適切に評価することができる。
【0027】
硬化性樹脂組成物におけるフィラーの表面には、フィラーと強く相互作用する溶媒分子が存在する。前記強く相互作用する溶媒分子はフィラーとの相互作用により非常に短いT緩和時間を有する。前記強く相互作用する溶媒分子は、前記強い相互作用を伴わない溶媒分子、いわゆるフリーの溶媒分子と非常に短い時間で交換するため、本発明においてパルスNMR測定では、前記強く相互作用する溶媒分子等の成分と、前記強い相互作用を伴わない溶媒分子等の成分とが平均化されたT緩和時間が観測される。
【0028】
このように、フィラーと強く相互作用する溶媒分子が多い場合や、フィラーと相互作用する成分のT緩和時間が短い場合は、フィラーとの相互作用を伴わない溶媒分子のみの場合よりも、T緩和時間が短くなる。すなわち、硬化性樹脂組成物におけるフィラーと強く相互作用する溶媒分子が多い、すなわち、フィラーの分散状態が良好な場合には、T緩和時間が短くなると考えられる。この現象をもとに、T緩和時間を指標に硬化性樹脂組成物の分散状態を評価することができる。
【0029】
前記パルスNMR測定でのパルス系列としては、例えばハーンエコー法、ソリッドエコー法、CPMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法)、90゜パルス法等の中から適宜選択することができる。
【0030】
前記パルスNMR測定は、例えば、以下の測定装置および測定条件で行うことができる。
[測定装置]
TD-NMR分析装置Spin Track(Resonance Systems社製、測定核種は1H核)
(基本構成)
・メイン電子ブロック
・サンプル温度コントローラー
・マグネットシステム
・PC
[測定条件]
・パルス系列:CPMG法
・共鳴周波数:20MHz
・測定温度:30℃
・測定試料の量:1.0cm
【0031】
以下、本発明による硬化性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0032】
[硬化性樹脂]
硬化性樹脂としては、熱や光等が作用することにより硬化する樹脂であれば特に限定されることなく用いることができる。具体的には、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を用いることができる。硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂をそれぞれ単独で用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0033】
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、公知のものをいずれも用いることができる。硬化性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂を含むことにより、硬化塗膜の耐熱性を向上させることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂を使用できる。特に好ましいのは、分子中に複数の環状エーテル基または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性樹脂は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0035】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0036】
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695、および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0037】
多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0038】
分子中に複数の環状チオエーテル基を有する化合物としては、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0039】
メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂としては、メチロールメラミン化合物、メチロールベンゾグアナミン化合物、メチロールグリコールウリル化合物およびメチロール尿素化合物等が挙げられる。
【0040】
イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート化合物を配合することができる。ポリイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;並びに先に挙げたイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体およびイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0041】
ブロックイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物を用いることができる。イソシアネートブロック剤と反応し得るイソシアネート化合物としては、例えば、上述のポリイソシアネート化合物等が挙げられる。イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤;ラクタム系ブロック剤;活性メチレン系ブロック剤;アルコール系ブロック剤;オキシム系ブロック剤;メルカプタン系ブロック剤;酸アミド系ブロック剤;イミド系ブロック剤;アミン系ブロック剤;イミダゾール系ブロック剤;イミン系ブロック剤等が挙げられる。
【0042】
熱硬化性樹脂の配合量は、組成物中に後述するカルボキシル基含有樹脂を含む場合、カルボキシル基含有樹脂に含有されるカルボキシル基1molあたりに対し、反応する熱硬化成分の官能基数が0.5~2.5molが好ましく、より好ましくは0.8~2.0molである。
【0043】
[光硬化性樹脂]
光硬化性樹脂とは、エチレン性不飽和基を有する化合物であり、ポリマー、オリゴマー、モノマーなどが挙げられ、それらの混合物であってもよい。光硬化性樹脂を含むことにより、硬化膜の強度を向上させることができる。光硬化性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
エチレン性不飽和基を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマー、光重合性モノマー等を用いることができる。この中でも、硬化塗膜の架橋性や硬化性をより付与できる点において、光重合性モノマーを用いることが好ましい。
【0045】
光重合性オリゴマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーである。光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。光重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
光硬化性樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは3~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。光重合性モノマーの配合量は、3質量%以上の場合、光硬化性が良好であり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像において、パターン形成がし易い。一方、20質量%以下の場合、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られ易い。
【0048】
硬化性樹脂は、硬化性樹脂組成物に対しアルカリ現像性を付与できる点において、アルカリ可溶性基を有するアルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物が挙げられる。中でも、下地との密着性が向上するため、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂であると好ましく、特に現像性に優れるため、カルボキシル基含有樹脂であることがより好ましい。以下、カルボキシル基含有樹脂について、説明する。
【0049】
[カルボキシル基含有樹脂]
カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種樹脂を使用できる。カルボキシル基含有樹脂は分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するものであっても有さないものであってもよいが、特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂が、光硬化性や耐現像性の面から好ましい。なお、本発明の硬化性組成物がカルボキシル基含有樹脂を含む場合、アルカリ現像する用途だけでなく、アルカリ現像しない用途に使用してもよい。エチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いる場合、組成物を光硬化性とするためには、後述する分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する化合物、即ち光重合性モノマーを併用する必要がある。カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0050】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂(低級アルキル(メタ)アクリレートとして、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる)。
【0051】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0052】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0053】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0054】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0055】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0056】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0057】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0058】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0059】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0060】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0061】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0062】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0063】
本発明に使用できるカルボキシル基含有樹脂は、上記列挙したものに限られない。また、上記列挙したカルボキシル基含有樹脂は1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0064】
本発明において、炭酸ナトリウム水溶液等の弱アルカリ現像液を用いる際の現像性とレジストパターンの描画性を考慮すると、カルボキシル基含有樹脂の酸価は30~150mgKOH/gの範囲であることが好ましく、50~120mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価は高いほど現像性は向上するものの、現像液による露光部の溶解が進むために、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離する場合がある。
【0065】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に1,500~150,000の範囲であり、1,800~100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000以上のカルボキシル基含有樹脂を用いることにより、解像性やタックフリー性能を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下のカルボキシル基含有樹脂を用いることにより現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0066】
カルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは20~75質量%であり、さらに好ましくは20~50質量%である。10質量%以上とすることにより硬化塗膜の強度を向上させることができる。また80質量%以下とすることで硬化性樹脂組成物の粘性が適当となり加工性が向上する。
【0067】
[フィラー]
フィラーとしては、異なる化合物からなる2種類以上のフィラーを用いる。2種類以上のフィラーは、無機フィラーおよび有機フィラーのいずれも用いることができる。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト、タルク、および炭酸カルシウム等が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステルウレタン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリエステルアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマー、およびフェノキシ系ポリマー等が挙げられる。これらの中でも、分散性の観点より、無機フィラーが好ましく、シリカおよび硫酸バリウムがより好ましい。
【0068】
2種類以上のフィラーは、異なる平均粒子径D50を有するものである。さらに、2種類以上のフィラーの平均粒子径D50は、分散性の観点より、2.0μm以下であり、好ましくは0.1μm以上1.5μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上1.0μm以下である。フィラーの平均粒子径とは、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(D50)であり、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社製のMicrotrac MT3300EXIIが挙げられる。なお、フィラーの各平均粒子径の値は、硬化性樹脂組成物を調整(予備撹拌、混練)後のフィラーを上記のようにして測定した値をいうものとする。
【0069】
2種類以上のフィラーの合計配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは20.0~90.0質量%であり、より好ましくは20.0~80.0質量%である。
【0070】
フィラーの表面処理の有無は特に限定されないが、分散性を高めるための表面処理がされていてもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。フィラーの表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機のフィラーの表面を処理することが好ましい。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物は、以下の任意成分を含んでもよい。
【0072】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、カルボキシル基含有樹脂や光重合性モノマーを露光により反応させるためのものである。光重合開始剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0074】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、OXE02、株式会社ADEKA製N-1919、アデカアークルズ NCI-831、NCI-831E、常州強力電子新材料社製TR-PBG-304などが挙げられる。
【0075】
その他、特開2004-359639号公報、特開2005-097141号公報、特開2005-220097号公報、特開2006-160634号公報、特開2008-094770号公報、特表2008-509967号公報、特表2009-040762号公報、特開2011-80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0076】
光重合開始剤の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。光重合開始剤の配合量は、0.1質量%以上の場合、硬化性樹脂組成物の光硬化性が良好となり、耐薬品性等の塗膜特性も良好となる。一方、10質量%以下の場合、レジスト膜(硬化塗膜)表面での光吸収が良好となり、深部硬化性が低下しにくい。
【0077】
上記した光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0079】
[熱硬化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物には、熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくともいずれか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0080】
さらに、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。熱硬化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
熱硬化触媒の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは0.1~8質量%であり、より好ましくは0.3~5質量%である。
【0082】
[着色剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、着色剤を配合することができる。着色剤としては、特に限定されず、赤、青、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよいが、環境負荷の低減や人体への影響が少ない観点からハロゲンを含有しない着色剤であることが好ましい。
【0083】
赤色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等があり、具体的には以下のようなカラ-インデックス(C.I.;ザ ソサイエティ オブ ダイヤーズ アンド カラリスツ(The Society of Dyersand Colourists)発行)番号が付されているものが挙げられる。
【0084】
モノアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269等が挙げられる。また、ジスアゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 37,38,41等が挙げられる。また、モノアゾレーキ系赤色着色剤としては、Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68等が挙げられる。また、ベンズイミダゾロン系赤色着色剤としては、Pigment Red 171,175,176、185、208等が挙げられる。また、ぺリレン系赤色着色剤としては、Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224等が挙げられる。また、ジケトピロロピロール系赤色着色剤としては、Pigment Red 254,255,264,270,272等が挙げられる。また、縮合アゾ系赤色着色剤としては、Pigment Red 220,144,166,214,220,221,242等が挙げられる。また、アントラキノン系赤色着色剤としては、Pigment Red 168,177,216、Solvent Red 149,150,52,207等が挙げられる。また、キナクリドン系赤色着色剤としては、Pigment Red 122,202,206,207,209等が挙げられる。
【0085】
青色着色剤としてはフタロシアニン系、アントラキノン系があり、顔料系はピグメント(Pigment)に分類されている化合物が挙げられ、例えば、Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60。染料系としては、Solvent Blue 35,63,68,70,83,87,94,97,122,136,67,70等を使用することができる。上記以外にも、金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0086】
黄色着色剤としてはモノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等が挙げられ、例えば、アントラキノン系黄色着色剤としては、Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202等が挙げられる。イソインドリノン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 110,109,139,179,185等が挙げられる。縮合アゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 93,94,95,128,155,166,180等が挙げられる。ベンズイミダゾロン系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181等が挙げられる。また、モノアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,104,105,111,116,167,168,169,182,183等が挙げられる。また、ジスアゾ系黄色着色剤としては、Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198等が挙げられる。
【0087】
その他、紫、オレンジ、茶色、黒等の着色剤を加えてもよい。具体的には、Pigment Black 1,6,7,8,9,10,11,12,13,18,20,25,26,28,29,30,31,32、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet13,36、C.I.Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73、PigmentBrown 23,25,カーボンブラック等が挙げられる。
【0088】
着色剤の配合量は、硬化性樹脂組成物全量あたり固形分換算で、好ましくは0.1~2.0質量%であり、より好ましくは0.3~1.5質量%である。
【0089】
[有機溶剤]
本発明の硬化性樹脂組成物には、組成物の調製や、基板やフィルムに塗布する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
有機溶剤の配合量は、特に限定されず、硬化性樹脂組成物を調製し易いように目的の粘度に応じて適宜設定することができる。
【0091】
[その他の添加成分]
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、光開始助剤、シアネート化合物、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いてもよい。
【0093】
[調製方法]
本発明の硬化性樹脂組成物の調製には、各成分を秤量、配合した後、撹拌機にて予備撹拌する。続いて、混練機にて各成分を分散させ、混練を行うことで調製することができる。分散方法を変更することで、硬化性樹脂組成物の粒度分布におけるピークの数や位置を調節することができる。
【0094】
上記の混練機としては、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、3本ロールミル、2本ロールミル等を挙げることができる。これらの中でも、分散性を向上させるためには、ビーズミルを用いることが好ましい。ビーズミルのビーズの種類や粒径等の分散条件は、目的とする粘度に応じて適宜設定することができる。
【0095】
[用途]
本発明による硬化性樹脂組成物は、ソルダーレジストやカバーレイ、層間絶縁層等のプリント配線板の永久被膜としてのパターン層を形成するために有用であり、特にソルダーレジストの形成に有用である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、薄膜でも膜強度に優れた硬化物を形成できることから、薄膜化が要求されるプリント配線板、例えばパッケージ基板(半導体パッケージに用いられるプリント配線板)におけるパターン層の形成にも好適に用いることができる。
【0096】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜のパターン層を形成する用途だけでなく、パターン層を形成しない用途、例えばモールド用途(封止用途)に用いることができる。
【0097】
[ドライフィルム]
本発明の硬化性樹脂組成物は、第一のフィルムと、この第一のフィルム上に形成された上記硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。ドライフィルム化に際しては、本発明の硬化性樹脂組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後膜厚で、1~150μm、好ましくは5~60μmの範囲で適宜選択される。
【0098】
第一のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第一のフィルムとして使用することもできる。
【0099】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0100】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0101】
第一のフィルム上に本発明の硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜からなる樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第二のフィルムを積層することが好ましい。剥離可能な第二のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、保護フィルムを剥離するときに樹脂層と第一のフィルムとの接着力よりも樹脂層と保護フィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0102】
第二のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0103】
ドライフィルムを用いてプリント配線板上に硬化塗膜を作製するには、ドライフィルムから第二のフィルムを剥離し、ドライフィルムの露出した樹脂層を回路形成された基材に重ね、ラミネーター等を用いて貼り合わせ、回路形成された基材上に樹脂層を形成する。次いで、形成された樹脂層に対し、露光、現像、加熱硬化すれば、硬化塗膜を形成することができる。第二のフィルムは、露光前または露光後のいずれかで剥離すればよい。
【0104】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記本発明の硬化性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものである。硬化条件等の製造条件については[プリント配線板]にて後述する。本発明の硬化物は、プリント配線板や電子部品等に好適に用いることができる。
【0105】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得られる硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で15~90分間、組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0106】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0107】
ドライフィルムの基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0108】
本発明の硬化性樹脂組成物を基材上に塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。装置としては、熱風循環乾燥炉として、ヤマト科学株式会社製DF610等が挙げられる。
【0109】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3.0質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像してもよい。
【0110】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1,000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。装置としては、メタルハライドランプ搭載の露光装置として、株式会社オーク製作所製HMW-680-GW20等が挙げられる。
【0111】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0112】
さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃の温度で30~90分間)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射(例えば、1,000~2,000mJ/cm)、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化) させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化塗膜を形成する。装置としては、高圧水銀ランプを用いたUVコンベアとして、株式会社オーク製作所製QRM-2082等が挙げられる。
【0113】
上記内容は光硬化型熱硬化型の樹脂組成物による硬化塗膜の形成方法であるが、光硬化のみや熱硬化のみの場合は以下のとおり、製造することができる。
光硬化のみの場合、本発明の硬化性樹脂組成物を基材上にパターン印刷等で塗布した後に活性エネルギー線(例えば、1,000~2,000mJ/cm)を照射して硬化させることにより、硬化塗膜を形成する。
一方、熱硬化のみの場合、本発明の硬化性樹脂組成物を基材上にパターン印刷等で塗布した後に加熱硬化(例えば、100~220℃の温度で30~90分間)させることにより、硬化塗膜を形成する。
【実施例0114】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0115】
(カルボキシル基含有樹脂の樹脂ワニス1の合成)
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキサイド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(アイカ工業株式会社製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、固形分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキサイドが平均1.08モル付加しているものであった。次いで、得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキサイド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルフォスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させた。このようにして、固形分酸価88mgKOH/g、固形分71%、重量平均分子量2,000のカルボキシル基含有樹脂ワニス1を得た。
【0116】
[実施例1、比較例1]
(硬化性樹脂組成物の調製)
各組成物について、下記表1の処方例1に示す配合に従って各成分を配合し、さらに必要に応じて有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)を配合し、撹拌機にて予備混合した。続いて、処方例1の各成分を分散機で分散させ、混練して、硬化性樹脂組成物を調整した。なお、実施例1および比較例1の組成物の各成分は同一であるが、分散方法が異なる。実施例1はビーズビル、比較例1は3本ロールミルにて分散させた。
【0117】
【表1】
【0118】
表1中の配合量は、質量部を示す。
表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
※1:上記で合成したカルボキシル基含有樹脂ワニス1、配合量は固形分換算の値
※2:シリカ(平均粒子径D50:0.93μm)
※3:硫酸バリウム(平均粒子径D50:0.27μm)
※4:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
※5:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1
※6:2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパン
※7:Pigment Blue 15:3
※8:Pigment Yellow 147
※9:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-770)
※10:メラミン
【0119】
(粒度分布の測定)
実施例1および比較例1の各硬化性樹脂組成物について、以下の通り、粒度分布を測定した。測定結果を表2に示した。
まず、以下の使用機器および備品類を用意する。
・粒度分布計:マイクロトラック・ベル株式会社製 マイクロトラック MT3300EX
・循環装置:マイクロトラック・ベル株式会社製 ASVR
次に、以下の手順で測定条件を入力する。マイクロトラックの付属のソフト(「粒度分布測定」)を立ち上げ、SET UPの画面から進み、測定条件設定のオプションから時間設定を行う。Setzero時間を30sec.、測定を30sec.、測定回数を2回とする。次に分析条件を入力する。分析情報において、粒子屈折率を1.81(固定値:全無機物の屈折率の平均値)、粒子の特徴において透過性を透過、形状を非球形とする。また溶媒情報において、DPM(ジプロピレングリコールメチルエーテル)を選択し、溶媒屈折率を1.42とする。次にスケール設定を入力する。粒径範囲において、最小粒径を0.021μm、最大粒径を704μmとする。次にサンプリングシステムを入力する。ASVRの洗浄回数を4回、流速を50%、超音波出力を40W、超音波時間を300sec.とする。すべての測定条件を入力したら、測定条件の設定において、保存を押して閉じる。
続いて、以下の手順でサンプルの調整を行う。スクリュー瓶にサンプル(硬化性樹脂組成物)を0.3g秤取り、スポイトを用いて30gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少しずつ添加し、スクリュー瓶の振とうによりサンプルを溶解させて調整サンプルを作製する。調整サンプルは外部分散や予備分散を行わない。次に調整サンプルの測定を行う。マイクロトラックの付属のソフトの粒度分布測定をクリックしサンプルローディングの画面を開く。本体のサンプル投入口にスポイトを用いて調整サンプルを数滴滴下する。前記サンプルローディングの画面において、赤色の指示バーが表示されたら、赤色から緑色の範囲内に入るまで、前記サンプル投入口に調整サンプルを滴下する。前記緑色の範囲内に入ったら、測定ボタンを押して、測定を開始する。サンプルの調整から調整サンプルの測定までは5分以内に行う。以上の操作により測定された粒度分布におけるピーク数を確認し、下記基準で評価する。
(評価基準)
○:ピーク数が1つ。
×:ピーク数が2つ以上。
【0120】
(パルスNMRによる緩和時間の測定)
実施例1および比較例1の各硬化性樹脂組成物について、以下の測定装置および測定条件で、パルスNMRによる緩和時間を測定した。測定結果を表2に示した。
[測定装置]
TD-NMR分析装置Spin Track(Resonance Systems社製、測定核種は1H核)
(基本構成)
・メイン電子ブロック
・サンプル温度コントローラー
・マグネットシステム
・PC
[測定条件]
・パルス系列:CPMG法
・共鳴周波数:20MHz
・測定温度:30℃
・測定試料の量:1.0cm
具体的には、以下の手順で測定を行った。
まず、装置後ろの電源を入れた後10秒待ち、前面の電源を入れ、マグネット温度が30℃に安定していることを確認する。次にPCの電源を入れ、測定用のソフトを立ち上げる。次に、シグナル確認サンプルとして、グリセリンを底面から約8~10mm入れたNMRチューブ(チューブ径10mm)を装置にセットし、シグナルの確認を行う。次に「T_CPMG.app」拡張子を選択する。次に共鳴周波数を決定する(20MHz)。次に測定サンプルとして、シグナル確認サンプルとは別のNMRチューブ(チューブ径10mm)に、硬化性樹脂組成物を底面から約8~10mm入れ、装置にセットする。次に緩和時間の測定条件を入力し、PC画面左下の「上矢印」クリックで測定を開始する。測定値は、3回測定した平均値を採用する。その測定結果を下記式に当てはめて緩和時間Tを求める。
y(t)=aexp(-t/T)+y
y(t):時間tの時の強度
:定数
t:測定時間
:緩和時間
:収束した時の強度
【0121】
(経時安定性の評価)
実施例1および比較例1の各硬化性樹脂組成物について、23℃±3℃の温度下で、保管室において160ml黒ポリ容器に100ml入れて、中蓋をしてねじ込みキャップで蓋をした状態で7日間静置した。その後に、容器の蓋を開けて目視により分離状態を評価した。評価結果を表2に示した。
○:硬化性樹脂組成物は7日経過後に凝集していなかった。
×:硬化性樹脂組成物は7日経過後に凝集していた。
【0122】
【表2】
【0123】
表2から明らかなように、実施例の硬化性樹脂組成物は経時安定性に優れ、長期間の保存後でも凝集し難いため、正常な生産物となり、その結果、生産計画を遂行し易くなる。一方、比較例の硬化性樹脂組成物は経時安定性に劣り、短期間の保存後でも分離し易いため、正常な生産物とはならず、その結果、生産計画が崩れ易くなる。