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特開2023-148961炭化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148961
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】炭化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/956 20170101AFI20231005BHJP
【FI】
C01B32/956
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057261
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】増田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】牛田 尚幹
(72)【発明者】
【氏名】諌山 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 未那
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146MA14
4G146MB02
4G146MB18A
4G146MB19A
4G146MB26
4G146NA04
4G146NA25
4G146NA28
4G146PA03
4G146PA06
4G146PA08
4G146PA10
4G146PA13
(57)【要約】
【課題】触媒担体や半導体製造装置用部品(ウエハーフォーク、チャック、突き上げピン等)の材料として好適に用いられる炭化ケイ素粒子を提供する。
【解決手段】本発明の炭化ケイ素粒子は、α-SiCの二次粒子からなり、質量比で、Alの含有率が150ppm以下、Yの含有率が150ppm以下、Bの含有率が150ppm以下、Siと結合していないCの含有率が0.15%以下、Caの含有率が50ppm以下、Crの含有率が50ppm以下、Feの含有率が50ppm以下、Niの含有率が50ppm以下であり、D50%粒子径に対するD90%粒子径の比(D90/D50)が2.5以下であり、比表面積が0.90m2/g以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-SiCの二次粒子からなり、
質量比で、Alの含有率が150ppm以下、Yの含有率が150ppm以下、Bの含有率が150ppm以下、Siと結合していないCの含有率が0.15%以下、Caの含有率が50ppm以下、Crの含有率が50ppm以下、Feの含有率が50ppm以下、Niの含有率が50ppm以下であり、
D50%粒子径に対するD90%粒子径の比(D90/D50)が2.5以下であり、
比表面積が0.90m2/g以下である炭化ケイ素粒子。
【請求項2】
SiO2の含有率が0.10質量%以下である請求項1記載の炭化ケイ素粒子。
【請求項3】
微小圧縮試験により測定した顆粒強度が25MPa以上である請求項1または2記載の炭化ケイ素粒子。
【請求項4】
D50%粒子径が0.5μm以上で、D94%粒子径に対するD50%粒子径の比(D50/D94)が3以上であるα-SiCの一次粒子を用い、
焼結助剤、バインダ、および分散剤を用いずに、前記一次粒子の造粒を行って造粒物を得、得られた造粒物を焼結することで、請求項1~3のいずれか一項に記載の炭化ケイ素粒子を製造する炭化ケイ素粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素粒子は、高硬度で、耐摩耗性および摺動性に優れ、耐熱性も高く、化学的に安定している。炭化ケイ素粒子の用途が、触媒担体や半導体製造装置用部品(ウエハーフォーク、チャック、突き上げピン等)の材料である場合、高純度で流動性に優れる多孔質炭化ケイ素粒子が望まれる。なお、炭化ケイ素粒子は、半導体製造装置用部品を形成する金属基複合材料(MMC)の強化材として使用される。
しかし、上記用途に適した、高純度で流動性に優れる多孔質炭化ケイ素粒子の従来品は存在しない。
【0003】
特許文献1には、平均粒径が5~60μmで細孔径が1μm以下の内部細孔体積が0.02cm3/g以下、且つ、比表面積が1m2/g以下で平均(短径/長径)アスペクト比が0.65以上である球状α型炭化ケイ素が記載されている。
また、特許文献1には、上記球状α型炭化ケイ素の製造方法として、平均粒径が1μm以下でα型結晶である原料炭化ケイ素のスラリーをスプレードライして多孔質で球状の粒子を得る工程と、得られた多孔質で球状の粒子を焼結する工程を含む方法が記載され、実施例の製造方法においては、スプレードライを分散剤および焼結助剤をスラリーに添加して行っている。
【0004】
特許文献2には、焼結助剤およびバインダを用いず炭化ケイ素粉末(一次粒子径D50:0.26μm)のみを焼結することで得られた二次粒子は、D50が43.2μmであり、比表面積は0.98m2/gであったことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-95637号公報
【特許文献2】WO2020/194974号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、触媒担体や半導体製造装置用部品(ウエハーフォーク、チャック、突き上げピン等)の材料として好適に用いられる炭化ケイ素粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、α-SiCの二次粒子からなり、質量比で、Alの含有率が150ppm以下、Yの含有率が150ppm以下、Bの含有率が150ppm以下、Siと結合していないCの含有率が0.15%以下、Caの含有率が50ppm以下、Crの含有率が50ppm以下、Feの含有率が50ppm以下、Niの含有率が50ppm以下であり、D50%粒子径に対するD90%粒子径の比(D90/D50)が2.5以下であり、比表面積が0.90m2/g以下である炭化ケイ素粒子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、触媒担体や半導体製造装置用部品(ウエハーフォーク、チャック、突き上げピン等)の材料として好適に用いられる炭化ケイ素粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の炭化ケイ素粒子の表面のSEM画像である。
図2】実施例2の炭化ケイ素粒子の表面のSEM画像である。
図3】実施例3の炭化ケイ素粒子の表面のSEM画像である。
図4】実施例4の炭化ケイ素粒子の表面のSEM画像である。
図5】比較例1の造粒後の状態を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定はこの発明の必須要件ではない。
【0011】
〔構成〕
本実施形態の炭化ケイ素粒子は、α-SiCの二次粒子からなり、質量比で、Alの含有率が150ppm以下、Yの含有率が150ppm以下、Bの含有率が150ppm以下、Siと結合していないCの含有率が0.15%以下、Caの含有率が50ppm以下、Crの含有率が50ppm以下、Feの含有率が50ppm以下、Niの含有率が50ppm以下であり、D50%粒子径に対するD90%粒子径の比(D90/D50)が2.5以下であり、比表面積が0.90m2/g以下である。
【0012】
本実施形態の炭化ケイ素粒子において、D50%粒子径に対するD90%粒子径の比(D90/D50)は1.1以上2.5以下であることが好ましい。「D90/D50」が2.5以下であると、顆粒崩れ(二次粒子を形成している一次粒子の一部が崩れ落ちること)が生じないで顆粒形状が維持できるため、流動性の低下を抑制できる。また、「D90/D50」が1.1以上であると最密充填の観点より充填性が向上する。なお、D50及びD90は、例えばレーザー回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置により測定されたもので、炭化ケイ素二次粒子の体積基準の積算粒子径分布における小粒径側からの累積50%粒子径、累積90%粒子径をそれぞれ意味する。
【0013】
本実施形態の炭化ケイ素粒子において、比表面積は0.10m2/g以上0.90m2/g以下であることが好ましい。比表面積が0.90m2/g以下であると、高温環境下での経時変化に対応し易くなり、0.10m2/g以上であると顆粒の空隙が大きくなり、触媒担体、半導体製造装置用部品の材料として好適となる。また、比表面積は0.20m2/g以上0.85m2/g以下であることがより好ましく、0.30m2/g以上0.80m2/g以下であることが特に好ましい。比表面積は、例えば下記実施例に記載の方法で測定される。
【0014】
本実施形態の炭化ケイ素粒子は、SiO2の含有率が0.10質量%以下であることが好ましい。SiO2の含有率が0.10質量%以下であると、必要な純度が得られ易い。また、SiO2の含有率は0.05質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以下であることが特に好ましい。SiO2の含有率は、例えば下記実施例に記載の方法で測定される。
本実施形態の炭化ケイ素粒子は、微小圧縮試験により測定した顆粒強度が25MPa以上であることが好ましい。顆粒強度が25MPa以上であると、顆粒崩れを抑制し易い。また、顆粒強度は30MPa以上であることがより好ましく、35MPa以上であることが特に好ましい。また、顆粒強度の上限は特に限定されないが、200MPa以下とすることができる。
【0015】
本実施形態の炭化ケイ素粒子は、複数のα-SiCの一次粒子により構成された二次粒子である。一次粒子のD50%粒子径(一次D50)に対する二次粒子のD50%粒子径(二次D50)の比(二次D50/一次D50)は、150以下であることが好ましい。「二次D50/一次D50」が150以下であると、必要な多孔性が得られ易い。また、「二次D50/一次D50」は5以上150以下であることがより好ましく、6以上100以下であることが特に好ましい。一次粒子径、及び二次粒子径は、例えば下記実施例に記載の方法で測定することができる。一次粒子とは単一の粒子、二次粒子とは複数の一次粒子が凝集および結合した粒子をいう。
【0016】
本実施形態の炭化ケイ素粒子は、D50%粒子径が0.5μm以上で、D94%粒子径に対するD50%粒子径の比(D50/D94)が3以上であるα-SiCの一次粒子を用い、焼結助剤、バインダ、および分散剤を用いずに、上記一次粒子の造粒を行って造粒物を得、得られた造粒物を焼結することで製造することができる。
D50%粒子径が0.5μm以上のα-SiCの一次粒子を用いた場合、適切な大きさの空隙が形成され易い傾向がある。D50%粒子径が3.2μm以下のα-SiCの一次粒子を用いた場合、顆粒崩れが生じないで顆粒形状が維持され易い傾向がある。また、使用するα-SiCの一次粒子のD50%粒子径は、1.0μm以上3.0μm以下であることがより好ましく、2.0μm以上2.8μm以下であることが特に好ましい。
【0017】
また、「D50/D94」が3以上のα-SiCの一次粒子を用いることで、焼結助剤、バインダ、分散剤等を使用しないで造粒することが容易になる。焼結助剤、バインダ、および分散剤の少なくともいずれかを使用しないことで、得られる二次粒子の純度を高くすることができる。また、使用するα-SiCの一次粒子の「D50/D94」は、4以上50以下であることがより好ましく、5以上10以下であることが特に好ましい。
【0018】
〔作用、効果〕
本実施形態の炭化ケイ素粒子は、α-SiCの二次粒子からなり、質量比で、Alの含有率が150ppm以下、Yの含有率が150ppm以下、Bの含有率が150ppm以下、Siと結合していないCの含有率が0.15%以下、Caの含有率が50ppm以下、Crの含有率が50ppm以下、Feの含有率が50ppm以下、Niの含有率が50ppm以下であり、D50%粒子径に対するD90%粒子径の比(D90/D50)が2.5以下であり、比表面積が0.90m2/g以下である。
また、本実施形態の炭化ケイ素粒子は、D50%粒子径が0.5μm以上で、D94%粒子径に対するD50%粒子径の比(D50/D94)が3以上であるα-SiCの一次粒子を用い、焼結助剤、バインダ、および分散剤を用いずに、この一次粒子の造粒を行って造粒物を得、得られた造粒物を焼結する方法で得られたものである。
【0019】
本実施形態の炭化ケイ素粒子は、比表面積が0.90m2/g以下であるα-SiCの二次粒子で構成されているため、MMCの強化材として使用される場合には、MMC材を製造する際の加熱時の経時変化が抑制され、高温環境用の触媒担体として使用される場合には、使用時の経時変化が抑制される。
本実施形態の炭化ケイ素粒子は、上記方法で得られたものであり、使用するα-SiC一次粒子のD50%粒子径を0.5μm以上とすることで、MMCの強化材および触媒担体として良好な空隙を有するものとなっている。
【0020】
具体的には、上記方法で得られた炭化ケイ素粒子の場合、炭化ケイ素粒子に金属を含浸させてMMC材を製造する際に、金属が含浸し易くなる。すなわち、上記方法で得られた炭化ケイ素粒子は、金属を含浸させるために好適な、微細過ぎない空隙が形成されたものとなる。
また、上記方法で得られた炭化ケイ素粒子の場合、炭化ケイ素粒子を触媒担体として使用する際にガス流通性が向上して、触媒の活性を高めることができる。すなわち、上記方法で得られた炭化ケイ素粒子は、ガス流通性の向上に好適な、微細過ぎない空隙が形成されたものとなる。
よって、本実施形態の炭化ケイ素粒子は、触媒担体や半導体製造装置用部品(ウエハーフォーク、チャック、突き上げピン等)の材料として好適に用いることができる。
【実施例0021】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0022】
〔炭化ケイ素二次粒子の製造〕
<α-SiCの一次粒子の準備>
α-SiCの一次粒子として、(株)フジミインコーポレーテッド製の「GC#6000(商品名)」、「GC#8000(商品名)」、および「GC#10000(商品名)」を用意した。
各一次粒子の粒度分布を、マイクロトラック・ベル(株)製のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置「MT-3300」を用いて測定し、D3%粒子径、D50%粒子径、およびD94%粒子径を調べた。なお、ここで調べたD3%粒子径、D50%粒子径、およびD94%粒子径は、体積基準の積算粒子径分布において大径側からの積算頻度が3%、50%、94%となる粒子径である。
また、「GC#6000(商品名)」と「GC#10000(商品名)」を質量比でGC#6000:GC#10000=76.92:23.08の割合で混合した。混合された一次粒子の粒度分布を、上記と同じ方法で測定し、D3%粒子径、D50%粒子径、およびD94%粒子径を調べた。
【0023】
<実施例1>
先ず、上記混合されたα-SiC一次粒子のみを原料粉末として、水等の溶媒に分散させてスラリーを得た。このスラリーをディスク方式のスプレードライヤに供給して造粒を行い、α-SiC一次粒子のみからなる造粒物を得た。
次に、得られた造粒物を、富士電波工業(株)製の抵抗加熱式焼結炉「FVS-R」を用いて焼結し、焼結顆粒(二次粒子)を製造した。焼結炉の運転条件は、雰囲気アルゴン、焼結温度1850℃、焼結時間4時間である。
得られた焼結顆粒を、ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製の遠心粉砕機を用いて解砕した。遠心粉砕機の回転速度は12000rpmである。その後、目開き106μmのふるい網を用いて、粒度調整を行った。このようにして実施例1の炭化ケイ素二次粒子を得た。
【0024】
<実施例2>
上記混合されたα-SiC一次粒子のみからなる造粒物を焼結温度1950℃で焼結した以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2の炭化ケイ素二次粒子を得た。
<実施例3>
「GC#8000(商品名)」のみを原料粉末として実施例1と同じ方法で造粒物を得、得られた造粒物を焼結温度1950℃で焼結した以外は、実施例1と同じ方法で、実施例3の炭化ケイ素二次粒子を得た。
<実施例4>
「GC#10000(商品名)」のみを原料粉末として実施例1と同じ方法で造粒物を得、得られた造粒物を焼結温度1950℃で焼結した以外は、実施例1と同じ方法で、実施例4の炭化ケイ素二次粒子を得た。
【0025】
<比較例1>
「GC#6000(商品名)」のみを原料粉末として実施例1と同じ方法で造粒物を得ようとしたが、造粒物を得ることはできなかった。
<比較例2>
比較例2用のα-SiCの一次粒子として、(株)フジミインコーポレーテッド製の「GC#40000(商品名)」を用意した。このα-SiC一次粒子のD50%粒子径は0.26μmである。
「GC#40000(商品名)」のみを原料粉末として実施例1と同じ方法で造粒物を得、得られた造粒物を焼結温度1900℃で焼結した以外は、実施例1と同じ方法で、比較例2の炭化ケイ素二次粒子を得た。
【0026】
〔炭化ケイ素二次粒子の物性測定〕
<粒子径>
得られた各炭化ケイ素二次粒子の粒子径(D50%粒子径、D90%粒子径)を、株式会社堀場製作所製のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-300を用いて測定した。比較例2についてはD50%粒子径のみを測定した。なお、ここで調べたD50%粒子径、およびD90%粒子径は、体積基準の積算粒子径分布において小径側からの積算頻度が、50%、90%となる粒子径である。
【0027】
<比表面積>
得られた各炭化ケイ素二次粒子の比表面積を、株式会社マウンテック製の全自動BET比表面積測定装置「Macsorb(登録商標)」を用いて測定した。
【0028】
<顆粒強度>
得られた各炭化ケイ素二次粒子の顆粒強度を、(株)島津製作所製の微小圧縮試験機「MCT-200」を用いて測定した。微小圧縮試験の方法は、以下の通りである。
先ず、各炭化ケイ素二次粒子を微小圧縮試験機に付属の顕微鏡で観察し、観察視野においてD50%粒子径の各測定値程度の寸法の粒子を無作為に5-10個選択した。次に、選択した各粒子の顆粒強度を微小圧縮試験機で測定し、それら測定値の平均値をフィラーの顆粒強度とした。測定条件は、負荷速度12.96mN/秒、負荷保持時間1秒である。
【0029】
<SEM画像>
得られた各炭化ケイ素二次粒子の表面のSEM画像を200倍で撮影した。その画像を、実施例1については図1に、実施例2については図2に、実施例3については図3に、実施例4については図4に示す。また、比較例1については、造粒工程後の状態を200倍で撮影したSEM画像を図5に示す。
【0030】
<不純物含有量の測定>
得られた各炭化ケイ素二次粒子の不純物を、(株)島津製作所製の誘導結合プラズマ発光分光分析装置「ICPS-8100」を用いて測定した。また、SiO2の含有率は「JIS R 1616」に準拠して測定した。また、Siと結合していないCの含有率は「JIS R 6124」に準拠して測定した。
【0031】
各炭化ケイ素二次粒子の原料および焼成温度を表1に、物性の測定結果を表2に示す。なお、比較例1では造粒物が得られなかったため、表2には実施例1~4と比較例2の結果が示されている。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1に示すように、実施例1~4で原料として用いたα-SiC一次粒子は、「D50%粒子径が0.5μm以上で、D94%粒子径に対するD50%粒子径の比(D50/D94)が3以上」を満たすが、比較例1および2で原料として用いたα-SiC一次粒子はこれを満たさない。
また、表2の結果から、上記構成を満たすα-SiC一次粒子を原料として用いて、α-SiC一次粒子の造粒および焼結を行うことで、下記の条件1~6を全て満たす実施例1~4の炭化ケイ素粒子が得られることが分かる。
【0035】
(条件1)
質量比で、Alの含有率が150ppm以下、Yの含有率が150ppm以下、Bの含有率が150ppm以下、Siと結合していないCの含有率が0.15%以下、Caの含有率が50ppm以下、Crの含有率が50ppm以下、Feの含有率が50ppm以下、Niの含有率が50ppm以下である。
(条件2)
D50%粒子径に対するD90%粒子径の比(D90/D50)が2.5以下である。
(条件3)
比表面積が0.90m2/g以下である。
(条件4)
SiO2の含有率が0.10質量%以下である。
(条件5)
微小圧縮試験により測定した顆粒強度が25MPa以上である。
(条件6)
一次粒子のD50%粒子径(一次D50)に対する二次粒子のD50%粒子径(二次D50)の比(二次D50/一次D50)が150以下である。
【0036】
また、実施例1~4の炭化ケイ素粒子は、D50%粒子径に対するD90%粒子径の比(D90/D50)が1.48以上2.17以下であり、比表面積が0.58m2/g以上0.85m2/g以下であり、SiO2の含有率が0.02質量%であり、顆粒強度が25.75MPa以上68.41以下であり、「二次D50/一次D50」が7.04以上65.55以下である。
また、実施例1~4の炭化ケイ素粒子は、焼結助剤、バインダ、および分散剤を含まないものであるため、α-SiCの純度が高く、不純物の混入が問題となる用途にも好適に使用できる。
そして、実施例1~4の炭化ケイ素粒子は上記物性を有することにより、高純度かつ流動性に優れる多孔質粒子となっているため、触媒担体や半導体製造装置用部品(ウエハーフォーク、チャック、突き上げピン等)の材料として好適に用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5