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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023148967
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】匂い放出装置及び匂い検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20231005BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N1/00 F
A61B10/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057273
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000241485
【氏名又は名称】豊田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今枝 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】早川 和美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】中条 朱希
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩直
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AB25
2G052AD22
2G052AD42
2G052FD01
2G052FD17
2G052JA09
(57)【要約】
【課題】検査において生じていた曖昧さを排除することが可能な、匂い放出装置を提供する。
【解決手段】匂い放出装置10は、空気と混合させることにより匂いの素を任意の倍率に希釈する希釈部130と、希釈部130による希釈倍率を変化させる制御部110と、匂いの素を希釈部130に供給する匂い供給部120と、希釈部130の匂いの流路に残留した匂いを排出させる排出部140と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と混合させることにより匂いの素を任意の倍率に希釈する希釈部と、
前記希釈部による希釈倍率を変化させる制御部と、
前記匂いの素を前記希釈部に供給する匂い供給部と、
前記希釈部の匂いの流路に残留した匂いを排出させる排出部と、
を備える、匂い放出装置。
【請求項2】
前記希釈部は、所定の温度に加熱されている、請求項1に記載の匂い放出装置。
【請求項3】
前記希釈部は、複数の流路を備える、請求項1に記載の匂い放出装置。
【請求項4】
前記希釈部で希釈された匂いを含んだ気体を所定の湿度に加湿する加湿装置をさらに備える、請求項1に記載の匂い放出装置。
【請求項5】
前記排出部は、前記希釈部で希釈された匂いが放出されると直ちに前記希釈部の匂いの流路に残留した匂いを排出させる、請求項1に記載の匂い放出装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の匂い放出装置が放出した匂いを嗅いだ被検査者に、正解の選択肢、不正解の選択肢、匂いを感じなかった選択肢、匂いを感じたが何のにおいか分からない選択肢を提示する提示部と、
前記提示部が提示した選択肢に対する前記被検査者の選択結果に応じて、前記匂い放出装置が放出する匂いの前記希釈部による希釈倍率を、前記制御部の制御により変化させる変更部と、
を備える、匂い検査装置。
【請求項7】
前記提示部は、各前記選択肢を文字又は画像で提示する、請求項6に記載の匂い検査装置。
【請求項8】
前記変更部は、前記被検査者に応じて前記匂い放出装置が放出する匂いの種類又は希釈倍率を変化させる、請求項6に記載の匂い検査装置。
【請求項9】
前記変更部は、前記匂い放出装置が匂いを放出している間に当該匂いの希釈倍率を変化させる、請求項6に記載の匂い検査装置。
【請求項10】
前記提示部が提示した選択肢に対する前記被検査者の選択結果に応じて、前記被検査者の嗅覚の検知閾値及び認知閾値を決定する決定部をさらに備える、請求項6に記載の匂い検査装置。
【請求項11】
前記決定部は、前記被検査者が匂いを感じないと回答した次の段階の濃度において、不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からないという選択肢を選択した場合、当該濃度を前記被検査者の検知閾値とし、前記被検査者が不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からない選択肢を選択した次の段階の濃度において、正解の匂いの選択肢を選択した場合、当該濃度を前記被検査者の認知閾値とする、請求項10に記載の匂い検査装置。
【請求項12】
前記決定部は、被検査者の嗅覚年齢を推定する、請求項10に記載の匂い検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匂い放出装置及び匂い検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の嗅覚機能を検査するための技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、嗅覚機能の検査に使用される嗅覚検査装置が開示されている。特許文献1で開示された嗅覚検査装置は、既知のにおい質を収容する複数のにおい質ボンベの切り替え、又は、におい質気体の流量との比の制御によって、濃度または強度が規定されたにおい質気体を発生させて、におい質気体または無臭気体を被検査者に交互に供給し、被検査者がにおい質を嗅いだときに意思表示できる構成を有している。
【0004】
特許文献2には、キャリアガス流路に開閉弁を介してバイアルを多数並列設置し、各バイアルに連通させた排出管を選択混合部の各対応ポートに連結させると共に、該ポートを排出ポートに連通させる一方、各ポートに連通した配管にメイクアップガスポートより分岐した分岐管を接続した揮発性成分の計測装置が開示されている。
【0005】
日本においては、T&Tオルファクトメータを用いた検査手法が、嗅覚機能検査の基準となっている。T&Tオルファクトメータは、5種類の基準臭それぞれについて8段階の濃度が設定されており、細長い濾紙(におい紙)の先端に基準臭をつけ、濃度の薄い方から被検査者に提示することで被検査者の検知閾値及び認知閾値を検査する。検知閾値は、何かにおいを感じる濃度の閾値であり、認知閾値は、何のにおいかを判断できる濃度の閾値である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6695609号公報
【特許文献2】特許第6086677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、T&Tオルファクトメータを用いた検査手法は被検査者の自覚に依る検査でありながら、検査する医師の判断に委ねられることもあるので、客観性に乏しい。またT&Tオルファクトメータを用いた検査手法は、被検査者が回答の正誤判断に迷うことが多く、結果に影響を及ぼしていた。つまり、従来の検査手法は検査結果に曖昧さが包含されているものであった。
【0008】
本発明は、検査において生じていた検査結果の曖昧さを排除することが可能な、匂い放出装置及び匂い検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のある観点に係る匂い放出装置は、空気と混合させることにより匂いの素を任意の倍率に希釈する希釈部と、前記希釈部による希釈倍率を変化させる制御部と、前記匂いの素を前記希釈部に供給する匂い供給部と、前記希釈部の匂いの流路に残留した匂いを排出させる排出部と、を備える。
【0010】
前記希釈部は、所定の温度に加熱されていてもよい。
【0011】
前記希釈部は、複数の流路を備えていてもよい。
【0012】
前記希釈部で希釈された匂いを含んだ気体を所定の湿度に加湿する加湿装置をさらに備えていてもよい。
【0013】
前記排出部は、前記希釈部で希釈された匂いが放出されると直ちに前記希釈部の匂いの流路に残留した匂いを排出させてもよい。
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明のある観点に係る匂い検査装置は、上記匂い放出装置が放出した匂いを嗅いだ被検査者に、正解の選択肢、不正解の選択肢、匂いを感じなかった選択肢、匂いを感じたが何のにおいか分からない選択肢を提示する提示部と、前記提示部が提示した選択肢に対する前記被検査者の選択結果に応じて、前記匂い放出装置が放出する匂いの前記希釈部による希釈倍率を、前記制御部の制御により変化させる変更部と、を備える。
【0015】
前記提示部は、各前記選択肢を文字又は画像で提示してもよい。
【0016】
前記変更部は、前記被検査者に応じて前記匂い放出装置が放出する匂いの種類又は希釈倍率を変化させてもよい。
【0017】
前記変更部は、前記匂い放出装置が匂いを放出している間に当該匂いの希釈倍率を変化させてもよい。
【0018】
前記提示部が提示した選択肢に対する前記被検査者の選択結果に応じて、前記被検査者の嗅覚の検知閾値及び認知閾値を決定する決定部をさらに備えてもよい。
【0019】
前記決定部は、前記被検査者が匂いを感じないと回答した次の段階の濃度において、不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からないという選択肢を選択した場合、当該濃度を前記被検査者の検知閾値とし、前記被検査者が不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からない選択肢を選択した次の段階の濃度において、正解の匂いの選択肢を選択した場合、当該濃度を前記被検査者の認知閾値としてもよい。
【0020】
前記決定部は、被検査者の嗅覚年齢を推定してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、検査において生じていた曖昧さを排除することが可能な、匂い放出装置及び匂い検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る匂い検査システムの概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係る匂い放出装置の構成例を示す図である。
図3】実施形態に係る匂い放出装置の構成例を示す図である。
図4】実施形態に係る匂い検査装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る匂い検査装置の機能構成例を示すブロック図である。
図6】実施形態に係る匂い検査装置による嗅覚検査処理の流れを示すフローチャートである。
図7】匂い放出装置が放出する匂いの種類及びそれぞれの匂いの濃度の例を示す説明図である。
図8】嗅覚検査を行う際に、匂い検査装置が表示する画面の例を示す図である。
【0023】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0024】
図1は、本実施形態に係る匂い検査システムの概略構成を示す図である。図1に示した匂い検査システム1は、匂い放出装置10と、匂い検査装置20と、を備える。
【0025】
匂い放出装置10は、匂い検査システム1を使用して嗅覚検査を受ける被検査者に対して匂いを放出する装置である。匂い放出装置10は、嗅覚検査の際に、匂いの素となる香料を所定の倍率に希釈して放出する。
【0026】
匂い検査装置20は、被検査者の嗅覚検査に用いられる装置であり、例えばパーソナルコンピュータ、ワークステーション等のコンピュータである。匂い検査装置20は、匂い放出装置10が放出した匂いがどんな匂いであるかを被検査者に回答させることで、被検査者の嗅覚を検査するための装置である。匂い検査装置20は、被検査者に匂いを回答させる際に、正解の匂いの図柄、不正解の匂いの図柄、匂いを感じたが何の匂いか分からないという選択肢、及び無臭であるという選択肢を提示する。匂い検査装置20は、不正解の匂いの図柄を複数提示する。匂い検査装置20は、被検査者の回答に応じて、匂い放出装置10から放出する匂いの濃度を上げたり、被検査者の嗅覚の判定を行ったりすることができる。
【0027】
本実施形態に係る匂い検査システム1を用いた嗅覚検査の概要を示す。被検査者に嗅覚検査を行う際に、検査システム1は、匂い放出装置10から匂いを段階的に濃くして放出し、被検査者が匂いを感じないと回答した次の段階の濃度において、不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からないという選択肢を選択した場合、その濃度を被検査者の検知閾値とする。また、検査システム1は、匂い放出装置10から匂いを段階的に濃くして放出し、被検査者が不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からない選択肢を選択した次の段階の濃度において、正解の匂いの選択肢を選択した場合、その濃度を被検査者の認知閾値とする。
【0028】
本実施形態に係る匂い検査システム1は、係る構成を有して、被検査者に対して匂いの濃度を順次濃くしながら嗅覚検査を行うことで、被検査者の検知濃度及び認知濃度を客観的に求めることができる。
【0029】
続いて、本実施形態に係る匂い放出装置10の構成例を説明する。
【0030】
図2は、本実施形態に係る匂い放出装置10の構成例を示す図である。匂い放出装置10は、制御部110、匂い供給部120、希釈部130、排出部140、及び匂い放出部150を備える。
【0031】
制御部110は、任意の流量に調整したエアーを匂い供給部120及び希釈部130に供給する。制御部110は、エアーが流れるパイプ111、パイプ111に流れるエアーの流量を計測する流量計112、パイプ111に流れるエアーの流量を調整する電磁バルブ113、及び希釈部130の最終段に加湿したエアーを供給する加湿装置114を備える。
【0032】
匂い検査システム1を使用して嗅覚検査を行う場合、制御部110は、電磁バルブ113を調整することで、匂い検査装置20からの指示に基づいて希釈部130に供給するエアーの量を調整する。例えば、匂い供給部120に置かれている匂い成分を1000倍に希釈するよう匂い検査装置20からの指示があった場合、制御部110は、匂い供給部120の匂い成分を1000倍に希釈するよう、希釈部130に供給するエアーの量を調整する。
【0033】
匂い供給部120は、匂い成分の基となる液体の香料121が置かれている。香料121は、制御部110からのエアーの供給に応じて匂い成分が希釈部130に供給される。匂い供給部120は所定の温度、例えば室温より数度~10数度程度高い温度に加熱されてもよい。匂い供給部120が所定の温度に加熱されることで、加熱しない場合と比較して、匂い成分が希釈部130に供給されやすくなる。
【0034】
なお、香料121は、バブリングなどにより揮発量が制御されてもよい。また、香料121の成分のうち、閾値が低く吸着しやすい成分は、吸着体に保持させた上で、成分が保持された吸着体にエアーを通し、匂い供給部120から放出させてもよい。
【0035】
希釈部130は、匂い供給部120から供給される匂い成分を、制御部110から供給されるエアーにより所定の倍率に希釈する。希釈部130は、匂い供給部120から供給される匂い成分と、制御部110から供給されるエアーとを混合する希釈チャンバ131と、不要な匂い成分を除去する活性炭132と、匂い成分とエアーとが混合された気体を匂い放出部150から放出させるバルブ133と、を備える。バルブ133には、加湿装置114で加湿された空気が供給され、気体が加湿された状態で匂い放出部150から放出される。気体が加湿された状態で匂い放出部150から放出されることで、気体が加湿されない場合と比較して、被検査者の検査時の鼻腔の乾燥を抑えることができる。なお、加湿装置114は所定の方向、例えば斜めに取り付けられることが望ましい。
【0036】
本実施形態では、希釈部130は、匂い供給部120から供給される匂い成分を、3つの希釈チャンバ131により3段階に混合することで、順に匂い濃度を低下させる。希釈チャンバ131の数は係る例に限定されるものではない。また、制御部110に設けられるパイプ111の分岐の数は、希釈チャンバ131の数に応じて設けられる。また、希釈チャンバ131において混合された気体は、前段の匂い供給部120又は希釈チャンバ131に逆流しない様に弁が設けられうる。
【0037】
希釈部130は、所定の温度、例えば室温より数度~350数度程度高い温度に加熱されてもよく、好ましくは、室温より150度~200度程度高い温度に加熱されてもよい。匂い供給部120と希釈部130とは、別々に制御されてもよく、共に制御されてもよい。
【0038】
排出部140は、希釈部130に残留したエアーを排出する。希釈部130に残留したエアーを排出するのは、連続して嗅覚検査を行う際に、希釈部130にエアーが残っていると正確な倍率で希釈が出来ない可能性があるからである。排出部140は、パイプ141、パイプ141に流れるエアーの流量を計測する流量計142、パイプ141に流れるエアーの流量を調整する電磁バルブ143、及びパイプ141のエアーを外部に放出するポンプ144を備える。パイプ141、流量計142、電磁バルブ143及びポンプ144は、希釈部130のラインのそれぞれに対して設けられる。図2に示した例では、パイプ141、流量計142、電磁バルブ143及びポンプ144は、それぞれ4つ設けられている。従って、排出部140は、希釈部130のラインのそれぞれに残留した、匂い成分を含んだエアーを独立して排出させることができる。なお、排出部140が排出したエアーは、図示しない容器などに蓄積させてもよい。
【0039】
匂い放出部150からは希釈部130で希釈された匂い成分が放出される。被検査者は、匂い放出部150に鼻腔部を当てることで、匂い放出部150から放出される匂いを嗅ぐことができる。なお、匂い放出部150から匂い成分が放出されると、排出部140は直ちに希釈部130のラインのそれぞれに残留した、匂い成分を含んだエアーを排出してもよい。排出部140は直ちにエアーを排出することで、連続した検査の際に装置内に匂いが残ることを防ぐことが出来る。
【0040】
匂い放出装置10は、図2に示した構成を有することで、任意の倍率に希釈された匂い成分を匂い放出部150から放出させることができる。
【0041】
匂い放出装置10は、制御部110、匂い供給部120、希釈部130、及び排出部140を複数系統備えることで、1つの系統から匂いを放出しつつ、他の系統を洗浄し、残留した匂い成分を排出させるようにしてもよい。
【0042】
図3は、本実施形態に係る匂い放出装置10の構成例を示す図である。図3に示した匂い放出装置10は、制御部110A、110B、匂い供給部120A、120B、希釈部130、排出部140A、140B、及び匂い放出部150を備える。図3に示した匂い放出装置10は、制御部110A、匂い供給部120A、及び希釈部130からなる系統と、制御部110B、匂い供給部120B、及び希釈部130からなる系統とから、それぞれ異なる匂いを放出する。
【0043】
制御部110Aは、エアーが流れるパイプ111A、パイプ111Aに流れるエアーの流量を計測する流量計112A、パイプ111Aに流れるエアーの流量を調整する電磁バルブ113A、及び希釈部130の最終段に加湿したエアーを供給する加湿装置114Aを備える。同様に、制御部110Bは、パイプ111B、流量計112B、電磁バルブ113B、及び加湿装置114Bを備える。
【0044】
匂い供給部120Aは、匂い成分の基となる液体の香料121Aが置かれている。また匂い供給部120Bは、香料121Aとは異なる匂い成分の基となる液体の香料121Bが置かれている。
【0045】
希釈部130は、匂い供給部120から供給される匂い成分と、制御部110から供給されるエアーとを混合する希釈チャンバ131A、131Bと、不要な匂い成分を除去する活性炭132A、132Bと、匂い成分とエアーとが混合された気体を匂い放出部150から放出させるバルブ133A、133Bと、を備える。
【0046】
排出部140Aは、パイプ141A、パイプ141Aに流れるエアーの流量を計測する流量計142A、パイプ141Aに流れるエアーの流量を調整する電磁バルブ143A、及びパイプ141Aのエアーを外部に放出するポンプ144Aを備える。同様に、排出部140Bは、パイプ141B、流量計142B、電磁バルブ143B、及びポンプ144Bを備える。
【0047】
なお、制御部110と匂い供給部120、制御部110と希釈部130、希釈部130と排出部140は、それぞれコネクタで接続されており、取り外しが可能であるよう構成されている。
【0048】
匂い放出装置10は、図3に示した構成を有することで、任意の倍率に希釈された匂い成分を匂い放出部150から放出させることができる。また、匂い放出装置10は、図3に示した構成を有することで、1つの系統から匂いを放出しつつ、他の系統を洗浄し、残留した匂い成分を排出させることができる。
【0049】
続いて、匂い放出装置10を用いて被検査者の嗅覚検査を行う匂い検査装置20の構成例を説明する。
【0050】
図4は、匂い検査装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0051】
図4に示すように、匂い検査装置20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、ストレージ24、入力部25、表示部26及び通信インタフェース(I/F)27を有する。各構成は、バス29を介して相互に通信可能に接続されている。
【0052】
CPU21は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU21は、ROM22またはストレージ24からプログラムを読み出し、RAM23を作業領域としてプログラムを実行する。CPU21は、ROM22またはストレージ24に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM22またはストレージ24には、被検査者の嗅覚検査を行う嗅覚検査プログラムが格納されている。
【0053】
ROM22は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM23は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ24は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0054】
入力部25は、マウス等のポインティングデバイス、およびキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0055】
表示部26は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部26は、タッチパネル方式を採用して、入力部25として機能しても良い。
【0056】
通信インタフェース27は、匂い放出装置10等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0057】
上記の嗅覚検査プログラムを実行する際に、匂い検査装置20は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。匂い検査装置20が実現する機能構成について説明する。
【0058】
図5は、匂い検査装置20の機能構成の例を示すブロック図である。
【0059】
図5に示すように、匂い検査装置20は、機能構成として、提示部201、変更部202及び決定部203を有する。各機能構成は、CPU21がROM22またはストレージ24に記憶された嗅覚検査プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0060】
提示部201は、嗅覚検査のための画面を表示部26に提示する。提示部201が提示する嗅覚検査のための画面は、匂い放出装置10が放出する匂いの正解の選択肢、匂い放出装置10が放出した匂いではない不正解の選択肢、匂いを感じるが何の匂いか分からない旨の選択肢、匂いを感じない旨の選択肢を含んだ画面である。提示部201が提示する画面の例は後述する。
【0061】
変更部202は、匂い放出装置10が放出する匂いの濃度の変更を匂い放出装置10に指示する。匂い検査システム1で被検査者の嗅覚検査を行う場合は、まず匂い放出装置10が放出できる最も低い濃度の匂いを匂い放出装置10から放出させて、被検査者に匂いを嗅がせて、提示部201が提示した選択肢を被検査者に選択させる。変更部202は、提示部201が提示した選択肢の被検査者の選択に応じて、匂い放出装置10が放出する匂いの濃度の変更を匂い放出装置10に指示する。
【0062】
変更部202は、匂い放出装置10が匂い放出部150から匂いを放出している間に、当該匂いの希釈倍率を変化させてもよい。匂い放出部150から匂いを放出している間に匂いの希釈倍率を変化させることで、検査中の濃度の変化を被検査者が感じたかどうかの検査を行うことができる。
【0063】
決定部203は、提示部201が提示した選択肢に対する被検査者の選択結果に応じて、被検査者の嗅覚の検知閾値及び認知閾値を決定する。決定部203は、被検査者が匂いを感じないと回答した次の段階の濃度において、不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からないという選択肢を選択した場合、その濃度を被検査者の検知閾値とする。また、決定部203は、被検査者が不正解の匂いの選択肢、又は匂いを感じたが何の匂いか分からない選択肢を選択した次の段階の濃度において、正解の匂いの選択肢を選択した場合、その濃度を被検査者の認知閾値とする。
【0064】
決定部203は、提示部201が提示した選択肢に対する被検査者の選択結果に応じて、被検査者の嗅覚年齢を推定してもよい。決定部203は、被検査者の嗅覚年齢を推定する際に、匂い成分の濃度と、当該濃度の匂いを検知できる年齢との対応関係に関する情報を用いてもよい。
【0065】
匂い検査装置20は、図5に示した構成を有することで、濃度を段階的に上げながら匂い放出装置10から放出された匂いを被検査者に嗅がせて、被検査者の匂いの検知閾値及び認知閾値を一度の検査で求めることができる。匂い検査装置20は、図5に示した構成を有することで、検査において生じていた曖昧さを排除した嗅覚検査を行うことが可能となる。
【0066】
次に、匂い検査装置20の作用について説明する。
【0067】
図6は、匂い検査装置20による嗅覚検査処理の流れを示すフローチャートである。CPU21がROM22又はストレージ24から嗅覚検査プログラムを読み出して、RAM23に展開して実行することにより、嗅覚検査処理が行なわれる。なお、匂い検査装置20による嗅覚検査処理が行われる際には、予め、希釈部130に残留した気体を排出部140により排出させておく。
【0068】
匂い検査装置20は、まずステップS101において、匂い放出装置10が放出できる最も低い濃度の匂いを匂い放出装置10から放出させる。濃度の下限は匂いの素によって異なり得る。具体的に、匂い検査装置20は、匂い放出装置10が放出できる最も低い濃度となるように制御部110を制御して、エアーを希釈部130に供給させた上で、希釈部130のバルブ133を開放させて、匂い放出部150から匂いを放出させる。
【0069】
続いて、匂い検査装置20は、ステップS102において、匂い放出装置10が放出した匂いに対する被検査者の選択肢が、匂いを感じた旨の回答であるかどうか判断する。匂いを感じた旨の回答は、正解の選択肢、不正解の選択肢、匂いを感じたが何の匂いか分からないという選択肢のいずれかを選択したことである。
【0070】
ステップS102の判断の結果、被検査者の選択肢が、匂いを感じた旨の回答であれば(ステップS102;Yes)、匂い検査装置20は、ステップS103において、匂い放出装置10が放出した匂いの濃度を、被検査者の匂いの検知閾値とする。
【0071】
一方、ステップS102の判断の結果、被検査者の選択肢が、匂いを感じた旨の回答でなければ(ステップS102;No)、匂い検査装置20は、ステップS104において、匂い放出装置10が放出する匂いの濃度を1段階上昇させて、被検査者に選択肢を再度選択させて、ステップS101の匂い放出装置10からの匂いの放出処理に戻る。匂い検査装置20は、匂い放出装置10が放出する匂いの濃度を1段階上昇させる際に、希釈部130に残留した気体を排出部140により排出させる。
【0072】
ステップS103に続いて、匂い検査装置20は、ステップS105において、匂い放出装置10が放出した匂いに対して、被検査者が正解の選択肢を回答したかどうか判断する。
【0073】
ステップS105の判断の結果、被検査者が正解の選択肢を回答していれば(ステップS105;Yes)、匂い検査装置20は、ステップS106において、匂い放出装置10が放出した匂いの濃度を、被検査者の匂いの認知閾値とする。
【0074】
一方、ステップS105の判断の結果、被検査者が正解の選択肢を回答していなければ(ステップS105;No)、匂い検査装置20は、ステップS107において、匂い放出装置10が放出する匂いの濃度を1段階上昇させる。匂い検査装置20は、匂い放出装置10が放出する匂いの濃度を1段階上昇させる際に、希釈部130に残留した気体を排出部140により排出させる。続いて、匂い検査装置20は、ステップS108において、匂い放出装置10から匂いを放出させて、被検査者に選択肢を再度選択させて、ステップS105の判断処理に戻る。
【0075】
図7は、匂い放出装置10が放出する匂いの種類及びそれぞれの匂いの濃度の例を示す説明図である。匂い放出装置10が放出する匂いの種類は、T&Tオルファクトメータで使用されている匂いである。匂い放出装置10は、5種類の匂いを、図7に示した8段階の濃度で放出するよう設定されている。
【0076】
匂い検査装置20は、係る処理を実行することで、検査において生じていた曖昧さを排除した嗅覚検査を行うことが可能となる。
【0077】
続いて、嗅覚検査を行う際に、匂い検査装置20が表示部26に表示する画面の例を示す。
【0078】
図8は、嗅覚検査を行う際に、匂い検査装置20が表示部26に表示する画面の例を示す図である。図8には、匂い放出装置10が放出した匂いがどんな匂いだったかを被検査者に回答させるための画面の例が示されている。匂い検査装置20は、選択肢として、正解、不正解、匂いを感じたが何の匂いか分からない、無臭である、の4種類の選択肢を表示部26に示している。選択肢は、絵柄と文字でもよく、絵柄のみでもよく、文字のみでもよく、いずれかの組み合わせでも良い。また、匂い検査装置20は、表示部26に表示する選択肢の数に制限はなく、放出する匂いの種類や設定する濃度の数に応じて決めればよい。
【0079】
本実施形態に係る匂い検査システム1は、匂い放出装置10から放出させる匂いの種類又は濃度、及び匂い検査装置20が提示する選択肢を自由に変更することができる。従って、本実施形態に係る匂い検査システム1は、匂い放出装置10又は匂い検査装置20の設定を任意に変更することにより、1日数回、または、毎日においを被検査者に嗅がせることによって、被検査者の嗅覚及び認知機能のトレーニングにも利用することも可能である。
【0080】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した嗅覚検査処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、嗅覚検査処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0081】
また、上記各実施形態では、嗅覚検査処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これら各種の変更例または修正例についても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0083】
1 匂い検査システム
10 匂い放出装置
20 匂い検査装置
110 制御部
111 パイプ
112 流量計
113 電磁バルブ
114 加湿装置
120 匂い供給部
121 香料
130 希釈部
131 希釈チャンバ
132 活性炭
133 バルブ
140 排出部
141 パイプ
142 流量計
143 電磁バルブ
144 ポンプ
150 匂い放出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8