(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149014
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】反応槽用の液位測定器具、及び、反応槽の液位測定方法
(51)【国際特許分類】
G01F 23/00 20220101AFI20231005BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20231005BHJP
C22B 3/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01F23/00 B
C22B23/00 102
C22B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057331
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】大道 陽平
【テーマコード(参考)】
2F014
4K001
【Fターム(参考)】
2F014AB02
2F014AB03
2F014AB04
4K001AA07
4K001AA19
4K001BA02
4K001DB03
4K001DB14
4K001DB23
4K001DB24
(57)【要約】
【課題】例えば、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出処理を行うオートクレーブ等の反応槽における定期的な休転補修時等、反応槽の内部の液位が一定以下の低位となっている状態においても、正確に液位の測定を行うこと。
【解決手段】棒状の支柱11と、複数の液体採取容器12と、を備え、複数の液体採取容器12は、支柱11の下部側末端111及び下部側寄りの一部の範囲内に、全ての液体採取容器12の開口部121が支柱11上部側方向に向けられた状態で、支柱11の中心軸方向に沿って、支柱11の側面に一定間隔で設置されている、液位測定器具1とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽用の液位測定器具であって、
棒状の支柱と、
複数の液体採取容器と、を備え、
複数の前記液体採取容器は、前記支柱の下部側末端及び下部側寄りの一部の範囲内に、全ての前記液体採取容器の開口部が支柱上部側方向に向けられた状態で、前記支柱の中心軸方向に沿って、前記支柱の側面に、一定間隔で設置されている、
液位測定器具。
【請求項2】
前記支柱の上部側の先端には、吊りロープが接合されている、
請求項1に記載の液位測定器具。
【請求項3】
前記液体採取容器及び前記支柱は、何れも、
ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂のうちから選ばれる耐酸性樹脂である、
請求項1に記載の液位測定器具。
【請求項4】
前記吊りロープが、
ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂のうちから選ばれる耐酸性樹脂である、
請求項2に記載の液位測定器具。
【請求項5】
反応槽の液位測定方法であって、
請求項1から4の何れかに記載の液位測定器具を反応槽の内部に鉛直方向に沿って挿入し、前記支柱の下部側末端を前記反応槽の底面に接触させた後に引き上げる、
反応槽の液位測定方法。
【請求項6】
ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出処理に用いるオートクレーブの液位測定方法であって、請求項3又は請求項4に記載の液位測定器具をオートクレーブの内に鉛直方向に沿って挿入し、前記支柱の下部側末端を前記オートクレーブの底面に接触させた後に引き上げる、オートクレーブの液位測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応槽用の液位測定器具、及び、反応槽の液位測定方法に関する。本発明は、詳しくは、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出処理に用いるオートクレーブ等、高温・強酸性のスラリーを処理対象とする大型の反応槽の液位の測定に好適な、反応槽用の液位測定器具、及び、反応槽の液位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬方法として、略円筒形の圧力容器を横向きにした横長形状のオートクレーブ(
図4参照)を利用した高圧酸浸出法(HPAL法)が知られている(特許文献1参照)。
図4に示す通り、オートクレーブ2の内部は、開閉自在なスラリー移送用通液口を有する堰によって長手方向に連続する複数の貯留部21(21A~21F)に区分されており、硫酸と共に装入されたニッケル酸化鉱石のスラリーは、これら複数の貯留部21(21A~21F)の上流側から下流側に向けて堰をオーバーフローしながら順次移送されるが、一部は上記の通液口を通過することで下流側に移送される。オートクレーブの内部において、このようにして各貯留部で高圧酸浸出が行われた後、最も下流側の貯留部21Fに到達したスラリーは、オートクレーブの上部から垂下する抜出管22を介して抜き出される。この抜出管を介したスラリーの抜出量は、上記の最も下流側の貯留部のスラリーの液面高さ(以下、「液位」とも言う。)に応じて調整される。
【0003】
ここで、上記のオートクレーブ2のような大型の反応槽においては、定期的な休転補修が行われている。この休転補修時には、オートクレーブ内部の液を全量払い出した後、底部のマンホール23を開放し、内部に入って種々の補修作業が行われる。底部のマンホール23を開放するにあたって、仮に内部に液溜まりがあった場合には、高温・強酸性の液が周囲に飛散することによる安全面のリスクや、オートクレーブ下部の防液堤外部に高温・強酸性の液が漏れ出すことによる環境面のリスクが顕在化する恐れがあることから、底部マンホールを開放する前に、内部に残存する液溜まりがないことを確認することが重要である。
【0004】
近年においては、オートクレーブ内の液位の測定には、高温高圧下でも液位の計測を安定して行うことが可能な放射線式レベル測定器が広く用いられている(特許文献2参照)。この放射線式レベル測定器は、放射線源と受信器とがオートクレーブを挟んで対向するように配置されており、オートクレーブ内の液位の高低に応じて増減する放射線のカウント数を検出してこれを液位に換算するものである。
【0005】
上述の放射線式レベル測定器は、
図6(b)に示すように、反応槽3の内部の液位が一定以上のレベルである通常の操業中には、線源部31から発出されて検出部32にて検出される放射線量から、タンク内のスラリー量を正確に測定することができる。しかしながら、上述の休転補修時の前後のように、反応槽3の内部の液位が一定以下の低位となった場合には、正確な液位の測定が行い得なくなる(
図6(a)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-025143号公報
【特許文献2】特開2017-146221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、例えば、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出処理を行うオートクレーブ等の反応槽における定期的な休転補修時等、反応槽の内部の液位が一定以下の低位となっている状態においても、正確に液位の測定を行うことができる液位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、棒状の支柱と、複数の液体採取容器と、を備える、液位測定器具によって上記課題を解決できることに想到するに至り、本発明を完成した。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1) 反応槽用の液位測定器具であって、棒状の支柱と、複数の液体採取容器と、を備え、複数の前記液体採取容器は、前記支柱の下部側末端及び下部側寄りの一部の範囲内に、全ての前記液体採取容器の開口部が支柱上部側方向に向けられた状態で、前記支柱の中心軸方向に沿って、前記支柱の側面に、一定間隔で設置されている、液位測定器具。
【0010】
(1)の液位測定器具によれば、反応槽の内部の液位が一定以下の低位となっている状態においても、正確に液位の測定を行うことができる。
【0011】
(2) 前記支柱の上部側の先端には、吊りロープが接合されている、(1)に記載の液位測定器具。
【0012】
(2)の液位測定器具によれば、支柱長さを取扱い性に優れる長さ(一例として2~3m程度)に規定した上で、ロープの長さを適宜最適化することにより、オートクレーブ等の大型の反応槽を含めて、様々なサイズの反応槽において、当該反応槽の内部の液位が一定以下の低位となっている状態においても、正確に液位の測定を行うことができる。
【0013】
(3) 前記液体採取容器及び前記支柱は、何れも、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂のうちから選ばれる耐酸性樹脂である、(1)に記載の液位測定器具。
【0014】
(3)の液位測定器具によれば、軽量で、且つ、耐酸性に優れる上述の各樹脂で採取容器、及び、支柱を構成することにより、測定対象のスラリーが強酸性である場合において、(1)又は(2)に記載の液位測定器具の取り扱い性と、装置の耐久性と測定作業の安全性とを、高い水準で両立させることができる。
【0015】
(4) 前記吊りロープが、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂のうちから選ばれる耐酸性樹脂である、(2)に記載の液位測定器具。
【0016】
(4)の液位測定器具によれば、軽量で、且つ、耐酸性に優れる上述の各樹脂でロープ、採取容器、及び、支柱を構成することにより、測定対象のスラリーが強酸性である場合において、(2)に記載の液位測定器具の取り扱い性と、装置の耐久性と測定作業の安全性とを、高い水準で両立させることができる。
【0017】
(5) 反応槽の液位測定方法であって、(1)から(4)の何れかに記載の液位測定器具を反応槽の内部に鉛直方向に沿って挿入し、前記支柱の下部側末端を前記反応槽の底面に接触させた後に引き上げる、反応槽の液位測定方法。
【0018】
(5)の液位測定方法によれば、反応槽の内部の液位が一定以下の低位となっている状態においても、正確に液位の測定を行うことができる。
【0019】
(6) ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出処理に用いるオートクレーブの液位測定方法であって、(3)又は(4)に記載の液位測定器具を前記オートクレーブ内に鉛直方向に沿って挿入し、前記支柱の下部側末端を前記オートクレーブの底面に接触させた後に引き上げる、オートクレーブの液位測定方法。
【0020】
(6)の液位測定方法によれば、測定対象のスラリーが強酸性であるオートクレーブにおいて、オートクレーブの内部の液位が一定以下の低位となっている状態においても、安全、且つ、正確に液位の測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、例えば、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出処理を行うオートクレーブ等の反応槽における定期的な休転補修時等、反応槽の内部の液位が一定以下の低位となっている状態においても、正確に液位の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本発明の液位測定器具の要部の構成の説明に供する部分拡大斜視図である。
【
図3】本発明の液位測定器具における液体採取容器の配置ピッチの説明に供する図面である。
【
図4】本発明の液位測定器具及び液位測定方法の好適な適用対象である、オートクレーブの縦断面図である。
【
図5】
図4のオートクレーブを用いた浸出工程が行われるニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの一般的な工程フロー図である。
【
図6】従来公知の放射線式レベル測定器の動作態様を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の液位測定器具及び液位測定方法は、各種の工業用の反応槽の内部に収容された液相の液位を測定するための技術的手段である。本発明は、特には、高圧酸浸出処理を用いたニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける浸出工程での処理に使用するオートクレーブ内のスラリーの液位の測定に特に好ましく用いることができる。
【0024】
以下においては、本発明の液位測定器具及び液位測定方法を、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにて使用するオートクレーブにおいてスラリーの液位の測定に用いる場合の実施形態について、その詳細を説明する。但し、本発明の適用対象は上記のオートクレーブに限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更を加えながら、様々な反応槽の液位に測定に用いることができる。以下においては、先ず、本発明の好適な適用対象である、オートクレーブを用いて行われる高圧酸浸出法によるニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの概要について説明し、その後に、本発明の液位測定器具及び液位測定方法について詳細に説明する。
【0025】
<ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス>
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスは、
図5に示す通り、原料のニッケル酸化鉱石のスラリー(以下、単に「鉱石スラリー」とも言う)に硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す浸出工程S1、得られた浸出スラリーを多段洗浄しながら浸出液と浸出残渣とに固液分離する固液分離工程S2、得られた浸出液に中和剤を添加してpHを調整することで不純物元素を含む中和澱物をスラリーの形態で分離してニッケル及びコバルトを含む中和終液を得る中和工程S3、得られた中和終液に硫化剤を添加することでニッケル及びコバルトの混合硫化物を生成させる硫化工程S4が、順次行われるプロセスである。
【0026】
[浸出工程]
浸出工程S1は、ニッケルやコバルトを含有する鉱石スラリーを、加圧反応容器であるオートクレーブに硫酸等の酸と共に装入して浸出処理を施す工程である。
【0027】
浸出工程S1では、先ず、処理対象となる鉱石スラリーを、例えば耐圧容器からなるヒータータンクにポンプを介して装入し、高圧蒸気等を該ヒータータンク内に吹き込むことによって鉱石スラリーを所望の高温高圧条件にまで昇温及び昇圧させる。次に、所望の高温高圧力条件に調整した鉱石スラリーを、撹拌機を備えた耐圧容器からなるオートクレーブ2(
図4参照)に装入する。このオートクレーブ2に装入した鉱石スラリーには、過剰の硫酸を添加すると共に高圧蒸気を吹き込む。これにより、鉱石スラリーは高温高圧下において撹拌されながら酸処理が施され、鉱石に含まれるニッケルやコバルト等の金属の浸出が行われる。その結果、ニッケルやコバルトを含有する浸出液と、ヘマタイト等を含有する浸出残渣とからなる浸出スラリーが生成される。
【0028】
上記のオートクレーブ内の浸出処理では、例えば下記式1~3の浸出反応と下記式4~5の高温熱加水分解反応が生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われる。
(式1)
MO+H2SO4⇒MSO4+H2O
(式中、Mは、Ni、Co、Fe、Zn、Cu、Mg、Cr、Mn等を表す)
(式2)
2Fe(OH)3+3H2SO4⇒Fe2(SO4)3+6H2O
(式3)
FeO+H2SO4⇒FeSO4+H2O
(式4)
2FeSO4+H2SO4+1/2O2⇒Fe2(SO4)3+H2O
(式5)
Fe2(SO4)3+3H2O⇒Fe2O3+3H2SO4
【0029】
浸出工程S1における硫酸の添加量には特に限定はないが、鉱石中の鉄が浸出されるように過剰に添加するのが好ましい。具体的には、得られる浸出液のpHが0.1~1.0となるように硫酸の添加量を調整するのが好ましい。これにより、ニッケル及びコバルトを不純物成分と共に含む浸出液と、ヘマタイト等を含む浸出残渣とからなる浸出スラリーが生成される。得られた浸出スラリーは、次工程の固液分離工程S2において固液分離処理を施す前に、予備中和処理を施して浸出反応に関与しなかった余剰の硫酸を部分的に中和するのが好ましい。この予備中和処理の条件としては、例えば浸出スラリーのpHが2.8~3.2程度となるように中和剤を添加するのが好ましい。
【0030】
[固液分離工程]
固液分離工程S2は、沈降分離装置等の固液分離手段に浸出工程S1で得られた浸出スラリーを導入することで、多段洗浄を行うと共に、ニッケルやコバルト等の有価金属を含む浸出液の浸出残渣からの固液分離を行う工程である。尚、上記の洗浄水には湿式製錬プロセスに悪影響を及ぼさないものを用いることが好ましく、例えば後述する硫化工程S4で得られる低pHの貧液を繰り返して利用することができる。
【0031】
[中和工程]
中和工程S3は、固液分離工程S2においてシックナーのオーバーフロー液として回収された浸出液に炭酸カルシウム等の中和剤を添加して中和処理を施し、不純物元素としての3価の鉄を含む中和澱物を析出させる工程である。この中和処理の処理液のpHは好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以上3.5以下、最も好ましくは3.1以上3.2以下の範囲内になるように中和剤の添加量を調整するのが好ましい。この中和処理後は、中和澱物を含むスラリーを例えばシックナー等の固液分離装置に導入することで中和澱物を除去し、ニッケル及びコバルト回収用の母液となる中和終液を回収する。
【0032】
[硫化工程]
硫化工程S4は、中和工程S3の固液分離装置から回収された中和終液としてのニッケル及びコバルト回収用母液(硫化反応始液)に対して、硫化剤を添加して硫化処理を行うことによって硫化反応を生じさせ、硫化反応始液中に含まれるニッケル及びコバルトを混合硫化物として固定化する工程である。硫化反応の終了後のニッケル及びコバルトの混合硫化物を含むスラリーを固液分離装置に導入することで混合硫化物を回収することができる。
【0033】
<液位測定器具>
本発明の液位測定器具は、反応槽内の液位を測定するために用いる器具である。測定対象となる反応槽の好例として、ニッケル酸化鉱石の高圧酸浸出処理に用いる上述のオートクレーブを挙げることができる。本発明の液位測定器具は、特に、オートクレーブ等の反応槽における定期的な休転補修時等、反応槽の内部の液位が一定以下の低位となっている状態においても、正確に液位の測定を行うことができる点を機能面における主たる特徴とする。
【0034】
図1~3に示す液位測定器具1は、本発明の液位測定器具の好ましい実施形態の一例である。オートクレーブ等の反応槽用の液位測定器具である液位測定器具1は、
図1に示す通り、棒状の支柱11と、支柱11に等間隔で設置されている複数の液体採取容器12と、を備える。そして、液位測定器具1の支柱11の上部側の先端には、吊りロープ13が接合されていることが好ましい。
【0035】
支柱11の長さは特に限定されず、使用対象とする反応槽の深さに応じて適宜最適に設計することができる。具体的には、支柱11の長さは、適用対象とする反応槽の深さの80%以上とすることが好ましい。一方で、液位測定器具1は測定作業者の手作業により取り扱われることが想定されていることから、作業時の取扱い性を良好に維持する観点からは、支柱11の長さは3m以内とすることが好ましい。
【0036】
ここで、上記のオートクレーブ等、適用対象の反応槽の深さが4m程度以上である場合には、長さを3m以下とした支柱11の上部側の先端に、更に任意の長さの吊りロープ13を接合することで、取扱い性を良好に維持したまま、反応槽の底部側近傍域における液位の測定を正確に行うことができる。
【0037】
支柱11の材料は、必要な強度や測定対象とする液相に対する耐性を有するものであれば、その限りにおいて特に限定されないが、重量を小さく抑えて作業者の取扱い性を良好に維持する観点から、樹脂性とすることが好ましい。又、測定対象のスラリーが強酸性である場合にも使用可能とするために、耐酸性に優れる樹脂とすることがより好ましい。支柱11の材料として好ましい耐酸性樹脂として、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂のうちから選ばれる樹脂を支柱11の材料として用いることができる。中でも、耐酸性、耐熱性、経済性をバランスよく兼ね備えるポリプロピレンを、支柱11の材料として特に好ましく用いることができる。
【0038】
支柱11に封数設置される液体採取容器12の形状は、上部側に液相を流入させる開口部121が形成されていて流入した液相を内部に貯留できる容器であれば特に限定されないが、例えば、
図2に示す液体採取容器12のように、コップ型の容器であってもよいし、或いは、試薬用のサンプルボトル等のボトル型の容器を利用することもできる。
【0039】
液体採取容器12の容量は、使用対象とする反応槽の深さに応じて適宜最適に設計することができる。一例として、深さ4mのオートクレーブに用いる場合であれば、液体採取容器12の容量は、取扱い性と測定精度とのバランスから、50ml以上150ml以下とすることが好ましい。
【0040】
液体採取容器12の材料も、必要な強度や測定対象とする液相に対する耐性を有するものであれば、その限りにおいて特に限定されないが、支柱11と同様に、上述の耐酸性樹脂、即ち、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂のうちから選ばれる何れかの樹脂とすることが好ましい。
【0041】
液位測定器具1においては、液体採取容器12は、
図1~
図3の各図面に示すように、支柱11の下部側末端及び下部側寄りの一部の範囲内において、全ての液体採取容器12の開口部121が支柱11の上部側方向に向けられた状態で、支柱11の中心軸方向に沿って、支柱11の側面に一定間隔で設置されている。支柱11への液体採取容器12の設置方法は、接合部分の耐久性を担保できる限りにおいて特に限定されず、公知の接着、溶着、緊定、懸吊等の接合手段によることができる。
【0042】
支柱11に対する液体採取容器12の配置範囲は、より詳しくは、支柱11の下部側末端111を起点として、上部側末端112までの支柱11の全長の50%以上80%以下の高さまでの範囲を上限とすることが好ましい。液位測定器具1は、主として、反応槽下部に残存する比較的少量の低位の液位を測定することを主たる目的とするものであることから、液体採取容器12の配置範囲を上記範囲とすることで、十分な作用効果を享受することができるからである。
【0043】
又、支柱11に対する液体採取容器12の配置間隔(
図3に示す配置ピッチp)も、使用対象とする反応槽の深さに応じて適宜最適に設計することができるが、一例として、深さ4mのオートクレーブに用いる場合であれば、液位の測定精度を適切に維持する観点から、複数の液体採取容器12の配置ピッチは、10cm以上30cm以下とすることが好ましい。尚、液体採取容器12の設置数は特に限定されないが、上記において説明した好ましい設置範囲内において、上記配置ピッチで設置した場合に必然的に必要となる個数が設置されることが好ましく、尚且つ、少なくとも3つ以上の液体採取容器12を設置するようにすることが好ましい。
【0044】
吊りロープ13の長さは特に限定されず、使用対象とする反応槽の深さ及び支柱11の長さに応じて適宜最適に設計することができる。具体的には、支柱11の長さが適用対象とする反応槽の深さの80%程度である場合において、吊りロープ13の長さを、当該反応槽の深さの50%以上70%以下程度とすることが好ましい。上記のオートクレーブ等、適用対象の反応槽の深さが4m程度以上である場合には、液位測定器具1をこのように構成することによって、取扱い性を良好に維持したまま、反応槽の底部側近傍域における液位の測定を正確に行うことができる。
【0045】
吊りロープ13の材料は、必要な強度や測定対象とする液相に対する耐性を有するものであれば、支柱11や液体採取容器12と同様に、軽量で耐酸性に優れる耐酸性樹脂、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂のうちから選ばれる樹脂を用いることが好ましく、中でも、耐酸性、耐熱性、経済性をバランスよく兼ね備えるポリプロピレンからなり、直径が3mm以上7mm以下のロープを特に好ましく用いることができる。
【0046】
<液位測定方法>
本発明の液位測定方法は、上記において詳細を説明した本発明の液位測定器具を用いて行うことができる。液位測定器具1を用いて、本発明の液位測定方法を実施する場合、先ず、液位測定器具1を反応槽の内部に鉛直方向に沿って挿入し、支柱11の下部側末端111を反応槽の底面に接触させる。そして、その後に液位測定器具1を反応槽から引き上げる。
【0047】
次に、引き上げた液位測定器具1の複数の液体採取容器12のうち、下部側末端111から数えて何番目の液体採取容器12まで、スラリーが流入しているかを確認する。これにより、反応槽の内部に残存するスラリー等の液位を必要十分な精度で安全に測定することが出来る。
【0048】
尚、
図4に示すオートクレーブ2のような強酸性のスラリーを取り扱う大型の反応槽が適用対象であり、定期的な休転補修時における内部の液溜まりの有無の確認を行う場合であれば、液位測定器具1にて測定された液位が所定の高さを超えていた場合には、液だまりの存在を推認し、液だまりの消滅が推認されるが無くなるまで、液の払い出しを繰り返し行う。液位が十分に低下して液だまりの消滅が推認された後に、オートクレーブ2の下部のマンホール23を開いて、作業者が、オートクレーブ2の内部に入るようにすることによって、安全に補修作業を行うことが出来る。
【符号の説明】
【0049】
1 液位測定器具
11 支柱
111 (支柱の)下部側末端
112 (支柱の)上部側末端
12 液体採取容器
121 開口部
2 オートクレーブ
21 貯留部
22 抜出管
23 マンホール
3 反応槽
31 線源部
32 検出部
S1 浸出工程
S2 固液分離工程
S3 中和工程
S4 硫化工程