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  • 特開-蒸着マスク 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023149108
(43)【公開日】2023-10-13
(54)【発明の名称】蒸着マスク
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20231005BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231005BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057500
(22)【出願日】2022-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 義和
(72)【発明者】
【氏名】山田 智久
(72)【発明者】
【氏名】前田 大輔
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC42
3K107CC45
3K107GG33
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BD01
4K029CA01
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱変形が抑制された蒸着マスクを提供する。
【解決手段】蒸着マスク10は、被蒸着基板上に蒸着により薄膜パターンを成膜するための開口部のパターンを有し、ポリアミック酸由来のポリイミドを含む樹脂層24を備える。樹脂層24は下記式(1)で表される構造単位を含むポリアミック酸由来のポリイミドを含む。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被蒸着基板上に蒸着により薄膜パターンを成膜するための開口部のパターンを有する樹脂層を備え、
前記樹脂層が下記式(1)で表される構造単位を含むポリアミック酸由来のポリイミドを含む、蒸着マスク。
【化1】
式(1)において、Xは、下記の式(3)および(3’)から選ばれる少なくとも1つの4価の有機基を表し、Yは、下記の式(P)で表される基またはF含有有機基を表し、かつ、nは、繰り返し単位の数を表す正の整数である。
【化2】
【化3】
【化4】
式(3’)において、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~3の1価アルキル基を表す。
式(P)において、Rは、Cl、または炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表す。また、式(P)において、mは、0~4の整数を表し、rは1~3の整数を表す。
【請求項2】
蒸着源に相対する前記樹脂層の面の少なくとも一部に積層されている金属層をさらに含む、請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記樹脂層がシリカ粒子を含む、請求項1または2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記シリカ粒子の表面が、炭素数6-18の芳香族基を2つ有するか、または、炭素数7-18の芳香族基を1つ有するアルコキシシラン化合物で修飾されている、請求項3に記載の蒸着マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置の製造工程において、TFT等のスイッチ素子が形成された装置基板上に必要な画素のみに必要な有機層を積層するために蒸着マスクが用いられる。当該蒸着マスクとして、従来、メタルマスクが用いられていたが、近年より精細なマスク開口部のパターンを形成するため、メタルマスクに代わって樹脂フィルムがマスク材料として用いられる傾向にある。
また、製品の大型化あるいは装置基板サイズの大型化にともない、蒸着マスクに対しても大型化の要請があり、軽量化の観点からもマスク材料として樹脂フィルムが注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-14620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来よりマスク材料として用いられる樹脂フィルムは、熱変形を抑制する観点から、線膨張率のさらなる低下が求められている。
本発明は上述のような課題を鑑みたものであり、熱変形が抑制された蒸着マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、蒸着マスクである。被蒸着基板上に蒸着により薄膜パターンを成膜するための開口部のパターンを有する樹脂層を備え、前記樹脂層が下記式(1)で表される構造単位を含むポリアミック酸由来のポリイミドを含む。
【化1】
式(1)において、Xは、下記の式(3)および(3’)から選ばれる少なくとも1つの4価の有機基を表し、Yは、下記の式(P)で表される基またはF含有有機基を表し、かつ、nは、繰り返し単位の数を表す正の整数である。
【化2】
【化3】
【化4】
式(3’)において、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~3の1価アルキル基を表す。
式(P)において、Rは、Cl、または炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表す。また、式(P)において、mは、0~4の整数を表し、rは1~3の整数を表す。
【0006】
上記態様の蒸着マスクにおいて、蒸着源に相対する前記樹脂層の面の少なくとも一部に積層されている金属層をさらに含んでもよい。また、前記樹脂層がシリカ粒子を含んでもよい。また、前記シリカ粒子の表面が、炭素数6-18の芳香族基を2つ有するか、または、炭素数7-18の芳香族基を1つ有するアルコキシシラン化合物で修飾されていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱変形が抑制された蒸着マスクに関する技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)実施形態1に係る蒸着マスクを樹脂層側から平面視したときの平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すA-A線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0010】
(蒸着マスク)
図1(a)実施形態に係る蒸着マスク10を樹脂層24側から平面視したときの平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すA-A線に沿った断面図である。
【0011】
蒸着マスク10は、複数のマスク本体20と、複数のマスク本体20を囲むようにその周囲に配置された補強用の枠体30とを含む。枠体30によりマスク本体20が緊張した状態で固定保持される。
【0012】
マスク本体20は、蒸着源に相対する樹脂層24の主面面側に金属層22が積層されたハイブリッドマスクである。マスク本体20では、被蒸着基板上に蒸着により薄膜パターンを成膜するための開口部Pが樹脂層24に設けられるとともに、金属層22に当該開口部Pを内包する貫通孔Qが形成されている。
【0013】
金属層22の材料は特に限定されないが、たとえば、ステンレス鋼、鉄ニッケル合金、アルミニウム合金等が適用可能である。特に、鉄とニッケルを主とする合金であるインバー合金は、線膨張係数が比較的小さく、熱変形を抑制する観点で好ましい。枠体30と接する部分において、金属層22と枠体30とが接合されている。
【0014】
樹脂層24の材料については後述する。
【0015】
枠体30は、低熱線膨張係数を有する金属板材で形成される。枠体30を構成する金属板材としては、ニッケル-鉄合金であるインバー材やニッケル-鉄-コバルト合金であるスーパーインバー材等が挙げられる。
【0016】
(蒸着マスクの製造方法)
実施形態に係る蒸着マスクの製造方法の一例を以下に述べる。
まず、金属箔状の金属層22の上に樹脂層24を積層する。積層方法としては、金属層22の上に樹脂層24を貼付する方法や、樹脂層24の上に金属層22をメッキにより形成する方法などが挙げられる。
樹脂層24とは反対側の金属層22の主表面にレジスト(図示せず)を塗布した後、露光処理および現像処理により、当該レジストのうち、金属層22に形成されるべき貫通孔Qに対応する部分が除去される。
続いて、レジストが除去された部分において露出する金属層22の部分をエッチング処理により選択的に除去することにより、金属層22に所定パターンの貫通孔Qが形成される。
続いて、貫通穴Qに内包される樹脂層24の領域にレーザー光を照射し、所定パターンの開口部Pを形成することにより、マスク本体20が形成される。
得られたマスク本体20を枠体30に位置合わせし、枠体30と接する部分において、金属層22と枠体30とを接合する。金属層22と枠体30とを接合する方法は特に限定されないが、接着剤により接合する方法や、溶接により接合する方法などが挙げられる。
【0017】
(蒸着マスク用樹脂組成物)
樹脂層24の形成に用いられる蒸着マスク用樹脂組成物について説明する。
実施形態に係る蒸着マスク用樹脂組成物は、式(1)で表される構造単位含むポリアミック酸と、有機溶媒とを含む。
【0018】
式(1)において、Xは、式(3)の4価の芳香族基を表し、Yは、式(P)で表される基を表す。
【化5】
式(1)において、Xは、下記の式(3)および(3’)から選ばれる少なくとも1つの4価の有機基を表し、Yは、下記の式(P)で表される基またはF含有有機基を表し、かつ、nは、繰り返し単位の数を表す正の整数であり、本実施形態で使用されるポリアミック酸の重量平均分子量に応じて定められる。
【化6】
【化7】
【化8】
式(3’)において、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~3の1価アルキル基を表す。
また、式(P)において、Rは、Cl、または炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表し、好ましくは、F、Clを表す。また、式(P)において、mは、0~4の整数を表し、好ましくは0~2を表し、より好ましくは0~1を表し、特に好ましくは0を表す。また、前記の式(P)において、rは1~3の整数を表す。
なお、炭素数1~3のアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、およびi-プロピルが包含され、好ましくは、炭素数1~3のアルキル基は、メチルであり、より好ましくは、メチルである。
【0019】
本実施形態で用いる式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸の重量平均分子量は、10,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましく、20,000以上がさらに好ましく、30,000以上がより一層好ましい。一方、本実施形態で用いるポリアミック酸の重量平均分子量の上限値は、通常2,000,000以下であるが、蒸着マスク用樹脂組成物(ワニス)の粘度が過度に高くなることを抑制することを再現性よく得ること等を考慮すると、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは200,000以下である。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算して得られたものである。
【0020】
本実施形態で用いるポリアミック酸は、式(1)で表される繰り返し単位を、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、より一層好ましくは少なくとも80モル%、さらに好ましくは少なくとも90モル%含有する。このような量で、ポリアミック酸を用いることで、蒸着マスクに適した特性を持つ樹脂層を再現性よく得ることができる。
【0021】
本実施形態の好ましい態様によれば、ポリアミック酸は、式(1)で表される繰り返し単位のみからコポリマー、すなわち、これら繰り返し単位が100モル%で含有されるポリマーである。このとき、このポリアミック酸における式(1)で表される構造単位は、式(1)で表される繰り返し単位のうちの特定の1種類のみからなるのではなく、2種以上の式(1)の繰り返し単位によるランダム若しくはブロック共重合体構造を有するのが好ましい。使用可能な式(1)の繰り返し単位の種類は、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは2~3である。
【0022】
本実施形態の好ましい態様によれば、蒸着マスク用樹脂組成物は、式(1-1)および式(1-2)で表される構造単位を含むポリアミック酸であって、その重量平均分子量が10,000以上であるポリアミック酸と、有機溶媒とを含む。
【化9】
式(1-1)および式(1-2)において、Xは、上述の式(3)および(3’)から選ばれる少なくとも1つの4価の有機基を表し、Yは、前記した式(P1)または(P2)で表される基を表し、好ましくは式(P1)で表される基を表し、Yは、上述の式(P3)で表される基を表す。
【化10】
式(P1)、式(P2)および式(P3)において、R、R、R、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、F、Cl、炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表し、好ましくは、F、またはClを表す。また、m1、m2、m3、m4、m5およびm6は、同一であっても異なっていてもよく、0~4の整数を表し、好ましくは0~2の整数を表し、より好ましくは0または1を表し、特に好ましくは0を表す。
また、式(1-1)および式(1-2)において、n1、n2は、各繰り返し単位の数を示し、n1/n2=1.7~20の条件を満たす。ここで、前記のn1/n2の数値範囲の下限値は、好ましくは2.1、さらに好ましくは2.2、より一層好ましくは2.3である。一方、n1/n2の数値範囲の上限値は、好ましくは19、より好ましくは18である。
適度な線膨脹係数、耐熱性、引張強度を有する樹脂層を再現性よく得ることを考慮すると、n1/n2は、2.1~7.5を満たすことが好ましく、2.1~6.8を満たすことがより好ましく、3.2~6.0を満たすことがより一層好ましく、3.2~5.1を満たすことがさらに好ましい。
【0023】
本実施形態で用いるポリアミック酸は、式(1-1)および式(1-2)で表される繰り返し単位を、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、より一層好ましくは少なくとも80モル%、さらに好ましくは少なくとも90モル%含有する。このような量で、ポリアミック酸を用いることで、蒸着マスクに適した特性を持つ樹脂層を再現性よく得ることができる。
【0024】
本実施形態の特に好ましい態様によれば、ポリアミック酸は、式(1-1)および式(1-2)で表される繰り返し単位のみからコポリマー、すなわち、これら繰り返し単位が100モル%で含有されるポリマーである。
【0025】
本実施形態で用いるポリアミック酸の重量平均分子量は、10,000以上である必要があり、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上、より一層好ましくは30,000以上である。一方、本実施形態で用いるポリアミック酸の重量平均分子量の上限値は、通常2,000,000以下であるが、蒸着マスク用樹脂組成物(ワニス)の粘度が過度に高くなることを抑制することや引張強度が高い樹脂層を再現性よく得ること等を考慮すると、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは200,000以下である。
【0026】
本実施形態のより好ましい態様によれば、ポリアミック酸は、式(2)で表される構造単位をさらに含むことができる。
【化11】
式(2)において、Xは、上述した式(3)および(3’)から選ばれる少なくとも1つの4価の有機基を表し、Yは、下記の式(P4)で表される基を表し、かつ、nは、繰り返し単位の数を表す。
【化12】
式(P4)において、R、およびRは、同一であっても異なっていてもよく、F、Cl、炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表す。Rは、好ましくはF、またはClを表す。Rは、好ましくは、F、またはClを表す。R’は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を表し、より好ましくは、水素原子を表す。さらに、lおよびmは、同一であっても異なっていてもよく、0~4の整数を表し、好ましくは0~2を表し、より好ましくは0~1を表し、特に好ましくは0を表す。
【0027】
式(1)で表される構造単位に加えて、式(2)で表される構造単位を含む場合、n、n3は、好ましくはn3/(n+n3)≦0.2、より好ましくはn3/(n+n3)≦0.1、より一層好ましくはn3/(n+n3)≦0.05を満たす。このような範囲であると、適度な線膨脹係数、耐熱性、引張強度を有する樹脂層を再現性よく得る上で有利である。
【0028】
式(1-1)および式(1-2)で表される構造単位に加えて、式(2)で表される構造単位を含む場合、n1、n2、n3は、好ましくはn3/(n1+n2+n3)≦0.2、より好ましくはn3/(n1+n2+n3)≦0.1、より一層好ましくはn3/(n1+n2+n3)≦0.05を満たす。このような範囲であると、適度な線膨脹係数、耐熱性、引張強度を有する樹脂層を再現性よく得る上で有利である。
【0029】
本実施形態で用いるポリアミック酸は、式(1)で表される構造単位、または式(1-1)および式(1-2)で表される構造単位以外にも、他の構造単位(繰り返し単位)を含んでもよい。このような他の構造単位の含有量は、50モル%未満である必要があり、40モル%未満であることが好ましく、30モル%未満であることがより好ましく、20モル%未満であることがより一層好ましく、10モル%未満であることがさらに好ましい。
【0030】
このような他の構造単位としては、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2-メチル-1,4-フェニレンジアミン、5-メチル-1,3-フェニレンジアミン、4-メチル-1,3-フェニレンジアミン、2-(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレンジアミン、2-(トリフルオロメチル)-1,3-フェニレンジアミンおよび4-(トリフルオロメチル)-1,3-フェニレンジアミン、ベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジフェニルエーテル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、5-アミノ-2-(3-アミノフェニル)-1H-ベンゾイミダゾール、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンといったジアミンと、ピロメリット酸無水物(PMDA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物といった酸二無水物とから誘導される構造などが挙げられる。
【0031】
本実施形態の好ましい態様によれば、本実施形態で用いるポリアミック酸は、酸二無水物としての3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(式(4))と、ジアミンとしての、p-フェニレンジアミン(pPDA)(式(5))および4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル(DATP)(式(6))とを反応させることで得ることができる。
【化13】
【0032】
上記反応において、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、p-フェニレンジアミン(pPDA)および4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル(DATP)からなるジアミンの仕込み比(モル比)は、所望するポリアミック酸の分子量や構造単位の割合等を勘案して適宜設定することができるが、アミン成分1に対して、通常、酸無水物成分であるBPDA0.7~1.3程度とすることができ、好ましく0.8~1.2程度である。
【0033】
一方、ジアミンであるpPDAとDATPの仕込み比は、DATPの物質量(m)を1とした場合に、pPDAの物質量(m)を、通常1.7~20程度とすることができるが、好ましくは2.1~20、より好ましくは2.2~20、より一層好ましくは2.3~19、さらに好ましくは2.3~18である。すなわち、mとmは、通常、m/m=1.7~20であり、好ましくは2.1~20であり、より好ましくは2.2~20であり、より一層好ましくは2.3~19であり、さらに好ましくは2.3~18である。
【0034】
本実施形態のより好ましい態様によれば、酸二無水物としての3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、ジアミンとしての、p-フェニレンジアミン(pPDA)および4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル(DATP)と、さらに2-(3-アミノフェニル)-5-アミノベンズイミダゾール(APAB)(式(7))とを反応させることで得ることができる。
【化14】
上記反応において、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、p-フェニレンジアミン(pPDA)、4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル(DATP)および2-(3-アミノフェニル)-5-アミノベンズイミダゾール(APAB)からなるジアミンの仕込み比(モル比)は、所望するポリアミック酸の分子量や構造単位の割合等を勘案して適宜設定することができるが、アミン成分1に対して、通常、酸無水物成分であるBPDAを0.7~1.3程度とすることができ、好ましく0.8~1.2程度である。
【0035】
一方、ジアミンであるpPDAとDATPとAPABの仕込み比は、pPDAの物質量(m)とDATPの物質量(m)とAPABの物質量(m)の合計を1とした場合に、APABの物質量(m)が、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下、より一層好ましくは0.05以下である。すなわち、mとmとmは、好ましくはm/(m+m+m)≦0.2を、より好ましくはm/(m+m+m)≦0.1を、より一層好ましくはm3/(m1+m2+m3)≦0.05を満たす。
【0036】
上述の反応は溶媒中で行うことが好ましく、溶媒を使用する場合、その種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば、各種溶剤を用いることができる。
具体例としては、m-クレゾール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-プロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-イソプロポキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-sec-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、3-tert-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピルアミド、γ-ブチロラクトン等のプロトン性溶剤等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよく、通常0~100℃程度であるが、得られるポリアミック酸のイミド化を防いでポリアミック酸単位の高含有量を維持するためには、好ましくは0~70℃程度であり、より好ましくは0~60℃程度であり、より一層好ましくは0~50℃程度である。
反応時間は、反応温度や原料物質の反応性に依存するため一概に規定できないが、通常1~100時間程度である。
【0038】
以上説明した方法によって、目的とするポリアミック酸を含む反応溶液を得ることができる。
【0039】
本実施形態においては、通常、上記反応溶液をろ過した後、そのろ液をそのまま、または、希釈若しくは濃縮し、蒸着マスク用樹脂組成物(ワニス)として用いる。このようにすることで、得られる樹脂層の耐熱性、引張強度あるいは線膨張係数特性の悪化の原因となり得る不純物の混入を低減できるだけでなく、効率よく組成物を得ることができる。
希釈や濃縮に用いる溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、上記反応の反応溶媒の具体例と同様のものが挙げられ、それらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
これらの中でも、平坦性の高い樹脂層を再現性よく得ることを考慮すると、用いる溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンが好ましい。
【0041】
また、本実施形態においては、上記反応溶液を常法に従って後処理してポリアミック酸を単離した後、単離したポリアミック酸を有機溶媒に溶解または分散させることで得られるワニスを、蒸着マスク用樹脂組成物として用いてもよい。この場合、平坦性の高い薄膜を再現性よく得ることを考慮すると、ポリアミック酸は有機溶媒に溶解していることが好ましい。溶解や分散に用いる有機溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、上記反応の反応溶媒の具体例と同様のものが挙げられ、それらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
ポリアミック酸のワニス総質量に対する濃度は、作製する薄膜の厚みやワニス粘度等を勘案して適宜設定するものではあるが、通常0.5~30質量%程度、好ましくは5~25質量%程度である。
【0043】
また、ワニスの粘度も、作製する薄膜の厚み等勘案し適宜設定するものではあるが、特に5~50μm程度の厚さの樹脂層を再現性よく得ること目的とする場合、通常、25℃で500~50,000mPa・s程度、好ましくは1,000~20,000mPa・s程度である。
ここで、ワニスの粘度は、市販の液体の粘度測定用粘度計を使用して、例えば、JIS K7117-2に記載の手順を参照して、ワニス温度25℃の条件にて測定することができる。好ましくは、粘度計としては、円錐平板型(コーンプレート型)回転粘度計を使用し、好ましくは同型の粘度計で標準コーンロータとして1°34‘×R24を使用して、ワニス温度25℃の条件にて測定することができる。このような回転粘度計としては、例えば、東機産業株式会社製TVE-25Hが挙げられる。
【0044】
以上説明した本実施形態の蒸着マスク用樹脂組成物を金属層22に塗布して加熱することで、高い耐熱性と、低線膨張係数とを有するポリイミドを含む樹脂層24を得ることができる。樹脂層24の線膨張率としては、3ppm/K以下が好ましく、2ppm/K以下がより好ましく、1ppm/K以下がさらに好ましい。
【0045】
(シリカ粒子)
本実施形態の蒸着マスク用樹脂組成物は、他の成分として、シリカ(二酸化ケイ素)粒子、または表面が特定のアルコキシシランで修飾されたシリカ粒子(以下、表面修飾シリカ粒子という場合がある)を含むことが好ましい。
シリカ粒子および表面修飾シリカ粒子は目的等に応じてその平均粒子径を適宜選択できる。中でも平均粒子径は、より高透明な薄膜を得る観点から、1nm~100nmであることが好ましく、1nm~60nmであることがより好ましく、9nm~60nmであることがさらに好ましく、9nm~45nmであることが特に好ましい。
なお、本明細書においてシリカ粒子および表面修飾シリカ粒子の平均粒子径とは、シリカ粒子および表面修飾シリカ粒子をそれぞれ用いて窒素吸着法により測定された比表面積値から算出される平均粒子径値である。
【0046】
シリカ粒子として、例えば、上記平均粒子径の値を有するコロイダルシリカを好適に使用でき、該コロイダルシリカとしては、シリカゾルを用いることができる。シリカゾルとしては、ケイ酸ナトリウム水溶液を原料として公知の方法により製造される水性シリカゾルおよび該水性シリカゾルの分散媒である水を有機溶媒に置換して得られるオルガノシリカゾルを使用することが出来る。
また、メチルシリケートやエチルシリケート等のアルコキシシランを、アルコール等の有機溶媒中で触媒(例えば、アンモニア、有機アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒)の存在下において加水分解し、縮合して得られるシリカゾル、またはそのシリカゾルを他の有機溶媒に溶媒置換したオルガノシリカゾルも用いることができる。
これらの中でも本実施形態では、分散媒が有機溶媒であるオルガノシリカゾルを用いることが好ましい。
【0047】
上述のオルガノシリカゾルにおける有機溶媒の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等の低級アルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の直鎖アミド類;N-メチル-2-ピロリドン等の環状アミド類;γ-ブチロラクトン等のエーテル類;エチルセロソルブ、エチレングリコール等のグリコール類、アセトニトリル等が挙げられる。
水性シリカゾルの分散媒である水の置換や、目的とする別の有機溶媒への置換は、蒸留法、限外濾過法等による通常の方法により行うことができる。
上記のオルガノシリカゾルの粘度は、20℃で、0.6mPa・s~100mPa・s程度である。
【0048】
上記オルガノシリカゾルの市販品の例としては、例えば商品名MA-ST-S(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)(現:日産化学(株)、以下同様)製)、商品名MT-ST(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MA-ST-UP(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MA-ST-M(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MA-ST-L(メタノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST-S(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST-UP(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST-L(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名IPA-ST-ZL(イソプロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名NPC-ST-30(n-プロピルセロソルブ分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名PGM-ST(1-メトキシ-2-プロパノール分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名DMAC-ST(ジメチルアセトアミド分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名XBA-ST(キシレン・n-ブタノール混合溶媒分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名EAC-ST(酢酸エチル分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名PMA-ST(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MEK-ST(メチルエチルケトン分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MEK-ST-UP(メチルエチルケトン分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、商品名MEK-ST-L(メチルエチルケトン分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)および商品名MIBK-ST(メチルイソブチルケトン分散シリカゾル、日産化学工業(株)製)、PL―1-IPA(イソプロパノール分散シリカゾル、扶桑化学工業(株)製)、PL―1-TOL(トルエン分散シリカゾル、扶桑化学工業(株)製)、PL―2L-PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカゾル、扶桑化学工業(株)製)、PL―2L-MEK(メチルエチルケトン分散シリカゾル、扶桑化学工業(株)製)、PL―3-ME(メタノール分散シリカゾル、扶桑化学工業(株)製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本実施形態において二酸化ケイ素、例えばオルガノシリカゾルとして使用される上記製品に挙げたような二酸化ケイ素は、二種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
本実施形態において、無機微粒子の修飾に用いるアルコキシシラン化合物(以下、特定アルコキシシランと称する)として、炭素原子数6乃至18の芳香族基を2つ有するアルコキシシラン化合物、または、炭素原子数7乃至18の芳香族基を1つ有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。
上記炭素原子数6乃至18の芳香族基としては、フェニル基、および、後述の炭素原子数7乃至18の芳香族基が挙げられる。炭素原子数7乃至18の芳香族基としては、ベンゼン環を2つ乃至3つ有する基、および、縮環したベンゼン環を2つ乃至4つ有する基などが挙げられる。中でも、炭素原子数7乃至18の芳香族基としてビフェニル基を有する、下記式(S1)で表される構造を有するアルコキシシランが好ましい。
【化15】
式(S1)において、RとRはそれぞれ独立して、炭素原子数1~3のアルキル基であり、Wは1~3の整数であり、Yは0~2の整数であり、且つ、W+Y=3であり、Zはハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基および炭素原子数1~10のアルコキシ基からなる群から選ばれる基を表し、mは0乃至5の整数を表し、但しmが2以上の整数の場合、Zは同一または相異なる基であってよい。中でもmが0である(ビフェニル基が置換されていない)アルコキシシランが好ましい。
【0050】
上記式(S1)で表されるアルコキシシラン化合物の例としては、4-ビフェニルトリメトキシシラン、4-ビフェニルトリエトキシシラン、3-ビフェニルトリメトキシシラン、3-ビフェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
特定アルコキシシランで表面が修飾されたシリカ粒子は、特定アルコキシシランとシリカ粒子とを接触させることで調製することができる。特定アルコキシシランとシリカ粒子とを接触させると、例えば、特定アルコキシシラン中のシラノール基またはアルコキシシリル基が、シリカ粒子表面に存在するヒドロキシ基と縮合反応して結合し、特定アルコキシシランで表面が修飾されたシリカ粒子が形成されると考えられる。
具体的には、例えば、シリカ粒子のコロイド溶液と、予め準備した特定アルコキシシラン溶液とを混合することで、特定アルコキシシランで表面が修飾されたシリカ粒子を調製することができる。コロイド溶液と特定アルコキシシラン溶液の混合は常温で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。反応効率の観点から、混合は加熱しながら行うことが好ましい。混合を加熱しながら行う場合、その加熱温度は溶媒等に応じて適宜選択することができる。加熱温度は例えば、60℃以上とすることができ、溶媒の還流温度であることが好ましい。
【0052】
特定アルコキシシランとシリカ粒子との混合割合は、目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、シリカ粒子の特定アルコキシシランに対する質量比(シリカ粒子/特定アルコキシシラン)が、70/30~99/1であることが好ましく、70/30~90/10であることがより好ましく、80/20~90/10であることがさらに好ましい。ここで、シリカ粒子の質量数は、シリカ粒子の組成式をSiO2として算出する。
【0053】
本実施形態の蒸着マスク用樹脂組成物において、シリカ粒子または表面修飾シリカ粒子の含有量は、式(1)で表される構造単位含むポリアミック酸100質量部に対して、20~100質量部が好ましく、20~80質量部がより好ましく、30~70質量部がさらに好ましい。シリカ粒子または表面修飾シリカ粒子の含有量を上記範囲とすることにより、蒸着マスク用樹脂組成物を用いて得られる樹脂層の線膨張率を損なうことなく、強度をより一層高めることができる。
【0054】
本実施形態の蒸着マスク用樹脂組成物がシリカ粒子または表面修飾シリカ粒子を含む場合には、当該蒸着マスク用樹脂組成物において好適に用いられるポリイミドはフッ素を有することが好ましい。これによれば、ポリイミドとシリカ粒子または表面修飾シリカ粒子との相溶性を高めることができる。この結果、シリカ粒子または表面修飾シリカ粒子の凝集を抑制し、蒸着マスク用樹脂組成物を用いて得られる樹脂層において、シリカ粒子または表面修飾シリカ粒子の分散性を良好に保つことができる。
たとえば、式(1)におけるYとして、以下の式(Y-1)~(Y-34)からなる群から選ばれる2価の基が挙げられる。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
式(Y-1)~(Y-34)中、*は結合手を表す。
【0055】
本実施形態の蒸着マスク用樹脂組成物中に含むポリアミック酸をイミド化させる方法としては、金属層22に塗布した蒸着マスク用樹脂組成物をそのまま加熱する熱イミド化、および、蒸着マスク用樹脂組成物中に触媒を添加し加熱する触媒イミド化が挙げられる。
【0056】
ポリアミック酸の触媒イミド化する場合には、本実施形態の蒸着マスク用樹脂組成物中に触媒を添加し、攪拌することにより触媒が添加された蒸着マスク用樹脂組成物を調整した後、金属層22へ塗布、加熱することで樹脂層24が得られる。触媒の量はアミド酸基の0.1から30モル倍、好ましくは1から20モル倍である。また触媒が添加された蒸着マスク用樹脂組成物中に脱水剤として無水酢酸等を加えることもでき、その量はアミド酸基の1から50モル倍、好ましくは3から30モル倍である。
【0057】
イミド化触媒としては三級アミンを用いることが好ましい。三級アミンとしては、ピリジン、置換ピリジン類、イミダゾール、置換イミダゾール類、ピコリン、キノリン、イソキノリンなどが好ましい。
【0058】
熱イミド化、および触媒イミド化時の加熱温度は、450℃以下が好ましい。450℃を超えると、得られる樹脂層が脆くなり、蒸着マスク用途に適した樹脂層を得ることができない場合がある。
また、得られる樹脂層の耐熱性と線膨張係数特性を考慮すると、塗布した蒸着マスク用樹脂組成物を50℃~100℃で5分間~2時間加熱した後に、そのまま段階的に加熱温度を上昇させて最終的に375℃超~450℃で30分~4時間加熱することが望ましい。
特に、塗布した蒸着マスク用樹脂組成物は、50℃~100℃で5分間~2時間加熱した後に、100℃超~200℃で5分間~2時間、次いで、200℃超~375℃で5分間~2時間、最後に375℃超~450℃で30分~4時間加熱することが好ましい。
加熱に用いる器具は、例えばホットプレート、オーブン等が挙げられる。加熱雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
【0059】
樹脂層24の厚さは、特に蒸着マスクとして用いる場合、通常1~60μm程度、好ましくは5~50μm程度であり、加熱前の塗膜の厚さを調整して所望の厚さの樹脂層を形成する。
【0060】
以上説明した樹脂層24は、蒸着マスクとして必要な各条件を満たし、特に、3ppm/Kという極めて低い線膨張率を有するため、熱変形が抑制された蒸着マスクとして使用するのに最適である。
【0061】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0062】
上述した実施形態の枠体30は開口を有する額縁状の形状であるが、当該開口部分に横枠や縦枠を形成し、当該横枠や縦枠と金属層22とを接合してもよい。これによれば、枠体30によるマスク本体20の強度を高めることができ、ひいては、マスク本体20がたわむことを抑制し、平坦度を高めることができる。
【0063】
また、上述した実施形態では、マスク本体20の全体において、金属層22と樹脂層24とが積層されているが、樹脂層24の一部に金属層22が積層され、樹脂層24の他の部分が単独でマスクとして用いられる形態であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 蒸着マスク、20 マスク本体、22 金属層、24 樹脂層、30 枠体
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被蒸着基板上に蒸着により薄膜パターンを成膜するための開口部のパターンを有する樹脂層を備え、
前記樹脂層が下記式(1)で表される構造単位を含むポリアミック酸由来のポリイミドを含む、蒸着マスク。
【化1】
式(1)において、Xは、下記の式(3)および(3’)から選ばれる少なくとも1つの4価の有機基を表し、Yは、下記の式(P)で表される基表し、かつ、nは、繰り返し単位の数を表す正の整数である。
【化2】
【化3】
【化4】
式(3’)において、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~3の1価アルキル基を表す。
式(P3)において、R 、R およびR は、同一であっても異なっていてもよく、F、Cl、炭素数1~3のアルキル基、またはフェニル基を表し、好ましくは、F、またはClを表す。また、m4、m5およびm6は、同一であっても異なっていてもよく、0~4の整数を表し、好ましくは0~2の整数を表し、より好ましくは0または1を表し、特に好ましくは0を表す。
【請求項2】
蒸着源に相対する前記樹脂層の面の少なくとも一部に積層されている金属層をさらに含む、請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記樹脂層がシリカ粒子を含む、請求項1または2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記シリカ粒子の表面が、炭素数6-18の芳香族基を2つ有するか、または、炭素数7-18の芳香族基を1つ有するアルコキシシラン化合物で修飾されている、請求項3に記載の蒸着マスク。